2019年12月2日月曜日

中国の息の根、止めてやる。香港人権法案を成立させた米の本気度―【私の論評】日本は習近平を国賓として迎えることを拒否し、本気度を示せ(゚д゚)!

中国の息の根、止めてやる。香港人権法案を成立させた米の本気度



混乱が続く香港情勢を受け、ついに11月27日、「香港人権法案」に署名したトランプ大統領。これにより、香港問題は新たなステージに突入したことになりますが、識者は今後の動きをどう見るのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんは今回、メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、香港へのアメリカの介入により、「米中の対立が経済問題から人権・自由といった価値観の問題へと明確に転換した」と断言するとともに、香港デモが長期化する背景について解説しています。


※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年11月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。



プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】アメリカで「香港人権法案」が成立、今後何が起こるのか?

トランプ大統領は、アメリカ議会を圧倒的賛成多数で通過した「香港人権法案」に署名したことで、同法案が成立しました。

トランプ大統領の署名で香港人権法が成立-中国はあらためて報復警告

この法案は、香港に高度の自治を認めた「一国二制度」が守られているかどうかについて、毎年の検証を義務付けるとともに、香港の「基本的自由・自治」が損なわれたり、市民の人権が侵害されたりした場合、その責任者や当局者、加担した企業などに制裁を科すものです。

また、アメリカは一国二制度を前提に、香港の関税などを中国本土よりも優遇していますが、中国の支配が強まった場合には、優遇制度の見直しも示唆しており、そうなると、資源や穀物など、ドル決済のために香港経由で輸入をしている中国にも大きなダメージとなる可能性があります。

中国はこの法案に猛烈に反対していましたが、成立したことで、香港問題はさらに大きな転機を迎えたことになります。

11月24日に行われた区議会選挙では、民主派が改選452議席のうち80%をこす380議席以上に達し、圧勝しました。民主派にとっては、アメリカのこの決定は追い風になります。

しかし選挙結果を受けて会見を開いた香港行政庁感の林鄭月娥(キャリー・ラム)は、政府に対する有権者の不満を認め、抗議参加者に対して平和的な対話を呼び掛けたものの、新たな譲歩は一切示しませんでした。

香港行政長官、新たな譲歩示さず-騒乱と暴力続く恐れ

そのため、まだまだ混乱は続くと見られていましたが、ここへアメリカが介入してくることになるわけであり、米中貿易戦争という「経済」の問題から、「人権・自由」といった価値観の問題へと明確に転換したことになるわけです。

私は、米中貿易戦争は単なる貿易や経済の問題ではないと言ってきましたが、まさしく価値観や文明をめぐる衝突が展開されることになったわけです。そしてこれは、台湾問題にもつながっていきます。

この香港問題は、どういう結末を迎えようと、21世紀の人類史に残る事件となるに違いありません。デモの長期化は21世紀の一事件にとどまらず、今後の一大課題として提起されるでしょう。

もともと香港は珠江デルタに位置する人口5,000人の漁村でした。アヘン戦争(英語ではTrade War)後、イギリスが最初に欲しがっていたのは長江出口の船山群島でしたが、南京条約で香港の割譲が決まりました。1997年に返還された際、香港の人口が既に700万人以上、かつての1,000倍を超えていました。

アヘン戦争後は香港以外にも、各大都市に租界(外国人居留地)が設けられて「東洋の宝石」と呼ばれ、反中勢力の駆け込み寺となりました。。そこは生命財産を守られる「自由の地」であり、中国人にとってのユートピアでもあったのです。

今でも中国中国人にとっての「桃源郷」は中国以外の地であり、中国人の3人に2人が「祖国」から逃げ出したいと考えています。大手ネット「網易」の調査によれば、「生まれ変わっても中国になりたくない」理由のトップは「人間としての尊厳がない」からだといいます。日本は中国と近すぎるため、なるべく遠くに逃げたい中国人にとって、欧米がユートピアとなります。

易姓革命を繰り返してきた中国は、決して安定するところはありません。「中国の振り子」といわれるように、中華人民共和国になってからも、大躍進政策から文化大革命、天安門事件といった動乱を繰り返し、改革開放、さらには習近平政権を経て、左のコミュニズムからファシズムの全体主義へと大きく転換してきました。

これほど激しく揺れ動く背景には、中国国内の内ゲバも大きく関係しています。中央の覇権主義と、地方との争いは、数千年をへて現在も続いている。晋や明の時代には、地方分権といった「一国二制度」もありましたが、ほとんど有名無実化しました。

現在の香港問題をみるときは、こうした史実をふまえることが不可欠です。

香港デモの主役を見ると、多くが返還後に愛国教育を受けた若者たちです。武装警察の暴走や暴力、女性へのセクハラなども数多く報道されています。ただし、香港デモについての日本の報道については、「なぜ香港返還後に愛国教育を受けた若者たちが命をかけてまで中国に対抗しているのか」「香港人の要求は、単に『一国二制度』維持の約束を守れということではないのか」「警察がなぜ同胞の香港人をここまで弾圧するのか」といった視点に欠けており、ややもするとデモ側の行動を単なる「暴動」として報じるケースも見られます。

中国政府はしきりに恫喝を繰り返していますが、人民解放軍が暴乱鎮圧に来るのは「いつ」なのかが注目されています。もちろん第二の天安門事件を起こすのは避けたいでしょう。軍を動員すれば「一国両制」の看板を下ろさざるをえなくなるし、香港経由で行ってきた科学技術の横取りも不可能になります。

デモが長期化したのには様々な理由があります。香港は都市国家だからこそ独自の存在なのであって、中国の一都市になったらその輝きを失うのは間違いありません。それをいちばん知っているのは中国であり、だからこそ「一国両制」という策を出したのです。

秦の始皇帝の天下統一後、「統一」こそが最高の政治的価値となりました。武帝の代には、それまで見向きもされなかった孔子や孟子らの儒家思想が「天下統一」のための国教とされるようになったのです。しかし中国はモザイク国家であり、求心力と遠心力の反発によって一治一乱・一分一合のような統一と分断を繰り返しています。


易姓革命を繰り返す王朝の皇帝にとって統一は夢ですが、熱力学の法則によればエネルギーは拡散し無秩序へと向かうのであって、統一など「百害あって一理なし」です。また歴史学者アーノルド・J・トインビーは、小国乱立から統一帝国の出現へというプロセスが「文明没落の現象」だと説いています。人類学や生物学でも、生存の原理は多様性を守ることにあり、統一は淘汰や退化、死滅につながるとされます。

現在、香港や上海でも独立を目指す動きが相次ぎ、かつて五胡の反乱を「五胡乱華」と呼んだのにならって「五独乱華(チベット・ウイグル・モンゴル・香港・上海)」とマスメディアは報じています。

香港デモの長期化は、世界潮流としてのナショナリズムがユーラシア大陸の東側まで及んできたことを意味しており、人類の夢と中国の夢による「文明の衝突」「文化摩擦」も背景にあります。

香港問題が、中国の国内問題という一言で片付けられないのは、こうしたアイデンティティーの対立が根底にあるからなのです。


【私の論評】日本は習近平を国賓として迎えることを拒否し、本気度を示せ(゚д゚)!

「香港人権・民主主義法」の成立をもって米国は、香港の人権、自由、民主主義を守る姿勢を明確に示しました。同時に、中国政府の弾圧政策を容認しないことも示したことになります。

しかし、日本政府は、これまで香港情勢に対しては「懸念」を表明するだけで、なにもしてきませんでした。さらに、安倍政権は、来春、中国の習近平主席を“国賓”として迎えるというのだから、常軌を逸していると言わざるをエません。

なぜなら、そのことで日本が世界に人権と自由、民主主義を破壊する中国の行動を認めるメッセージを送るということになるから。習近平 “国賓”来日は、はっきり言って亡国行為といっても良いかもしれません。

なぜそういえるのでしょうか、それは最近の2ヶ月間を振り返ってみれば、わかることです。これについては、このブログにも断片的は掲載してありますが、以下に2ヶ月分をまとめて掲載します。

[10月16日]米国務省は、米国駐在の中国外交官に対し、米国の政府職員や地方の州、市などの地方自治体の職員と面会したり、米国の大学や研究機関を公式訪問したりする際に、国務省に事前に届け出ることを義務づけると発表。

この措置は、1979年の米中国交樹立以来、初めて取られた措置。旧冷戦でソ連に対して取ったものと同じで、中国はこれにより、明らかに米国の敵国となったのです。


[10月24日]イク・ペンス副大統領が、ウィルソンセンターで「対中冷戦宣言」第2弾とも言うべき演説を行いました。

ペンス副大統領は、中国を「安全保障と経済上の競争相手」と位置付け、対決姿勢を明確に打ち出しました。そうして、中国政府を、宗教の自由を圧迫し、100万人のウイグル・ムスリムを監禁・迫害していると非難しました。そのため先月、トランプ大統領は中国の監視等に関わる公安部門と8つの企業に制裁を加えたと述べましたた。

(この企業とは、監視カメラ大手のハイクビジョンや顔認証大手のセンスタイムなど。これらの企業がファーウェイと同じくエンティティー・リスト入りしました)

さらに、ペンス副大統領は、台湾を「中華文化における民主と自由の灯台の一つ」とし、台湾支持を明確化しました。さらに、香港のデモにも言及し、香港市民の人権と自由、民主主義を守るため米国はメッセージを発し続けるとしました。

このペンス演説で特筆すべきは、尖閣諸島問題にも触れ、中国の行動を非難したことです。

[11月5日]米議会で中国の人権状況を監視する「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会」(CECC)は米国税関・国境警備局(CBP)に書簡を送り、拘束されているウイグル族の強制労働により製造された衣料品の輸入を禁じるよう要請しました。

すでに、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによって、ウイグル製の「新疆綿」を使用したアパレルメーカーが告発されており、そのなかには日本の「ユニクロ」や「無印良品」も含まれていました。


[11月16日]ニューヨーク・タイムズが、電子版で、中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル族を強制的に収容していることを示す内部文書400ページ余りを入手したと報道。

 中国政府がテロ対策を目的に職業訓練を行っていると主張する施設では、外部と通信が遮断され、厳格な規律の下で、徹底した“思想教育”が行われていると指摘。2014年、習近平主席は新疆ウイグル自治区で行った演説で、取締りについて「いっさい容赦するな」などと指示したといいます。

[11月22日]米連邦通信委員会(FCC)は、政府の補助金「Universal Service Fund」(USF)を受ける通信事業者が、ファーウェイやZTEから製品やサービスの購入を禁止することを決定しました。

これにより、5Gと安全保障において、中国企業の排除を決定的に行っていくことがはっきりしました。

以上のように、表向きの貿易戦争とは別に、米国は対中冷戦を戦っているのです。この戦争は長期戦であり、中国経済が米国覇権を脅かさない程度に衰退するか、北京政府が体制崩壊するまで続きます。貿易戦争の矢面にはトランプ大統領が立っていますが、米中冷戦は、共和党も民主党も一枚岩で、議会をあげての戦いです。

さて、この間、日本はなにをしていたのでしょうか。 

外交的には韓国との「 GSOMIA」問題がありましたが、対中政策は一貫して「友好関係」維持でした。

[10月22日]天皇陛下の「即位礼正殿の儀」(即位の礼)に、中国から王岐山国家副主席が来日し参列。

王岐山氏は、政治局常務委員を引退したものの、その後も党内序列を超えた別格の存在。平成2年11月の即位の礼には当時の呉学謙副首相が参列しましたが、王岐山氏はそれより格上。このような大物を出してきたことは、米中冷戦で窮地に陥りそうな中国が日本を懐柔しようという意図が見え見えです。

[10月25日]ロイターが英半導体設計大手ARMが、ファーウェイへの半導体技術の供給を継続すると表明したと報道。

英ARMは、ファーウェイ傘下の半導体企業ハイシリコンに、同社が製造する半導体のアーキテクチャーを提供しています。これがないとファーウェイは機器をつくるのが困難になります。いわば、窮地にあるのに、英企業ということで米国の規制外にあることを理由に供給を継続しました。しかし、英ARM は、ソフトバンクグループが巨額買収した、いわば日本企業です。


[11月4日]安倍首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合のために訪問したバンコク郊外で中国の李克強首相と約25分間会談。

李首相は12月に中国・成都で日中韓首脳会談を開く方針を表明し、安倍首相はこれを期待すると表明。また、来春に予定する習近平国家主席の“国賓”来日に向けて協力することも確認しました。この日中韓首脳会談は、約2年ぶりのことになります。

[11月25日]安倍首相は、中国の王毅国務委員兼外相と官邸で会談。来春に予定する習近平国家主席の国賓としての来日に向けた連携を確認した。

この会談の冒頭で、安倍首相は習氏の“国賓”来日について「日中新時代にふさわしい、有意義なものになるよう双方で努力していきたい」と述べ、これに対して、王氏は「中日関係は当面、正常な発展軌道に戻った。安倍首相が重要な役割を果たしたことに称賛の意を申し上げたい」と応じました。

安倍首相が、習近平主席の来日を正式に要請したのは、今年6月のG20サミット(大阪)での習主席との会談の席でした。すでに、香港ではデモが始まり、米議会は超党派で「現在の危険に関する委員会:中国」(Committee on the Present Danger:China)を設置していまし。

米議会は超党派で"Committee on the Present Danger:China"を設置

米議会で、このような委員会が設置されたことは、第二次世界大戦後、3度しかありません。


1回目は1952年、トルーマン政権のときで、これは朝鮮戦争の勃発を受けて、ソ連の脅威に対抗するために設置されました。2回目は1976年、レーガン政権時で、このときもソ連の脅威に対処するためでした。3回目は2004年、ブッシュ・ジュニア政権時で、このときはテロとの戦いが目的で設立されました。

安倍首相が言う「日中新時代」とは何なのでしょうか。

米国の明確な敵となった中国に対し、米国との「希望の同盟」(安倍首相自身が米議会の演説で述べた言葉)を維持しながら、さらに仲良くしていくということなのでしょうか。

トランプとも習近平とも仲良くしたい。もし、それができれば、安倍総理は大物宰相といえるかもしれません。

大阪G20 左からトランプ大統領,安倍総理,習近平主席

しかし、歴史的に見て、2大国のどちらにもいい顔をして媚びへつらった国は、たいてい滅んでいる。ただし、以前このブログに掲載したように、安倍政権の中国に対する現在の対応は、戦術的なものという可能性もあります。戦略的には中国を脅威とみなしていることには変わりないという見方もできます。


しかし、いくら戦術的なものであったとしても、米国と比較すれば、あまりに中国に対して譲歩しすぎているようにみえます。

国賓について宮内庁のホームページに以下のように掲載されています


「国賓とは、政府が儀礼を尽くして公式に接遇し、皇室の接遇にあずかる外国の元首やこれに準ずる者で、その招へい・接遇は、閣議において決定されます。皇室における国賓のご接遇には、両陛下を中心とする歓迎行事、ご会見、宮中晩餐、ご訪問がありますが、両陛下はじめ皇族方は心をこめて国賓のご接遇をなさっています」。

ところで、ファシズムは次のように定義できます。

国家主義的な独裁を永遠の統治原理としつつ、資本主義のエネルギーを抑圧体制活性化のために用いる体制。

現代中国こそは典型的なファシズム体制であり、習近平氏こそは世界最大のファシストであす。

そうした人物への「心をこめた接遇」を政府が天皇皇后両陛下に強いることは許されないです。

誰を国賓とし、誰をしないか、線引きは簡単です。香港人権法設立を機会として、「普通選挙を実施している国の首脳」を国賓招待とする際の第1条件にすれば良いです。


多くの人が勘違いしていますが、中国には先進国でいうところの、政治家は1人も存在しません。なぜなら、中国では先進国では当たり前になっている普通選挙が実施されていないからです。ロシアですら、選挙が行われているのに、中国ではありません。主席を選ぶのも選挙ではなく、指名制です。

正確にいうと、中国には政治家は存在せず、存在するのは官僚だけです。習近平も政治家ではなく、最高級官僚です。毛沢東も、鄧小平も正確には政治家ではありません。

首脳間でいかにウマが合わなかったとしても、普通選挙で選ばれた大統領や首相は、その国の国民の意思を反映した存在です。両陛下が温かく接遇されることが、民主国家日本の理念に叶います。

世界的にこれだけ中国共産党政権への批判が高まっている時に、そのトップの国賓招待はありえないです。この機会に原則を確立すべきです。

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