2018年1月15日月曜日

スリランカの港に中国旗 99年間譲渡「一帯一路」債務重く“借金のカタ”に奪われる―【私の論評】日印の逆サラミ戦術は功を奏するか(゚д゚)!



 スリランカ政府は、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港を中国国有企業へ引き渡し、現地紙によると今月1日、港湾当局の建物に中国国旗が掲げられているのが確認された。債務の返済に窮したスリランカが“借金のカタ”に海のインフラを奪われた形だ。南アジアで中国と主導権を争うインドは、対抗するように近隣の空港の権益を買い入れる計画を進める。かつての小さな漁村は国同士の思惑がぶつかり合う舞台となっている。

ハンバントタ港は海上シルクロードの再重要地点。一方、同港は
内戦終了時のラージャパクサ前大統領の利権貪る地でもある
 スリランカ国営企業と中国国有企業は昨年7月、スリランカ側が中国側に港の管理会社の株式の70%を99年間譲渡することで合意した。11億2千万ドル(約1240億円)の取引の合意文書に調印し港は先月、中国側に渡っていた。

 そもそも、港は親中派のラジャパクサ前政権時代に着工されたが、約13億ドルとされる建設費の大半は中国からの融資だ。しかし、最高6・3%にも上る高金利は財政が苦しいスリランカにとって「悪夢」とされ、リースの形で中国に引き渡されることとなった。

 現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国に乗った結果、港を明け渡した格好で、国内でも批判が噴出。昨年末からは職を奪われることに危機感を募らせた港湾労働者がストライキを断続的に起こしており、政府は経済効果を繰り返し強調して批判の沈静化に躍起だ。

スリランカのマッタラにあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港で、最初の利用者となる
同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の到着を待つ僧侶たち(2013年3月18日)
 こうした動きに対してインドは、ハンバントタ港から約20キロの距離にあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港の権益の購入に関心を示している。空港はラジャパクサ前大統領の肝いりで建設されたが、利用客は1日10人ほどに低迷し、一時はコメの貯蔵庫として利用されるありさまだった。インドにとって空港入手による経済的利益があるとは考えにくく、中国のハンバントタ支配に対する牽制(けんせい)の意味合いが強い。

 インド洋では中国の潜水艦航行が常態化するなど、インドにとって座視できない状況が続く。「このままでは、南アジアで中国の好きなようにされてしまう」(インド紙記者)という危機感があるようだ。

【私の論評】日印の逆サラミ戦術は功を奏するか(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にもあるように、インド洋での中国の影響力を削ぐため、インドは世界で最も利用者の少ない空港を買収する計画です。
1日あたり100万人を受け入れるべく設計されたスリランカのマッタラ・ラジャパクサ国際空港は、 同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の肝入りで、2013年に開港しました。ところが、この空港 は全く機能しておらず、1日あたりの利用者はわずか10人ほどです。
それでもインドは共同事業者として3億ドル(約340億円)を出資、一時は米の備蓄庫として使われていたこのスリランカ南部にある約2000エーカー(約800万平方メートル)の空港を、40年間借り受ける予定です。
インドがこの空港を将来的にどう使うのか、計画はよく見えない。航空学校? インドの新しい新婚旅行先? 利益を生む可能性はほとんどないように見える。だが、今回の契約のポイントはそこではない。
インド洋の戦略に詳しいオーストラリア国立大学のデビッド・ブリュースター(David Brewster)氏は、シンクタンクが運営するメディア『The Interpreter』にこう書いています。
代わりに、今回の買収の背景には、中国が運営するハンバントタ港に近いことがあるようです。港は空港から車で30分ほどの距離にあります。
中国がアジアとヨーロッパを結ぶ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進める中、インドやアメリカ、日本は、中国がスリランカの港を軍事拠点として使うつもりではないかとの懸念を抱いています。でも、空港へのアクセスがなければ、その可能性も大きく阻まれます。
ブリュースター氏は以下のように述べています。
海外の海軍拠点はもちろん、物流施設にとっても、人や物に空から容易にアクセスできることが重要だ。海軍の拠点であれば、沿岸の空中監視能力も必要になる。ハンバントタ港に近い空港をコントロールできれば、港の使い道に関しても、インドがある程度の影響力を持つことができる。 
空港抜きでは、中国海軍がハンバントタをその重要な拠点として開発することも難しくなる。要するに、インドは3億ドルで空港を買うことで、中国の海軍拠点をブロックしている。
インド洋で影響力を増す中国を、インドが脅威とみなしていることには根拠があります。

アメリカ国防総省の2015年のレポートは、インド洋で中国のミサイル潜水艦が活動していることを認めています。
その前の年には、スリランカとの関係を強化しており、これはインドに混乱を与えました。中国はコロンボ港に軍艦や潜水艦を入港させ始めました。

中国がおよそ14億ドルを融資して建設が進められていた、スリランカ南部のハンバントタ港。 シーレーン・海上交通路の要衝で、南アジア最大級の港です。中国は昨年から、 この港を99年間にわたって管理運営することで、スリランカ政府と合意する見通しであると公表していました。
スリランカが中国政府にハンバントタ港の運営を正式に譲り渡したのは、最近のことです。中国の国有企業、招商局集団(China Merchants Group) に、11億ドルで99年間リースされます。

この契約により、中国は世界で最も交通量の多い運輸ルートへのアクセスだけでなく、インド洋に面した数十カ国に対するアクセスを手に入れました。これには中国が急速にその影響力を高めているアフリカ諸国の他、人口が多く、市場規模も大きいインド、パキスタン、バングラデシュも含まれます。

フィナンシャル・タイムズは、中国が運営するこの港は「地域全体のサプライチェーンを改善し、より低い価格を実現し、貿易量を大幅に成長させるだろう」と述べています。

「中国による港の買収は、特にインド洋周辺での中国政府の戦略的、経済的な存在感の高まりを懸念するインドの不安を掻き立てた」アジア・太平洋地域のニュースに詳しい雑誌『The Diplomat』の安全保障担当の編集者アンキット・パンダ(Ankit Panda)氏はこう書いています。

インドでは、ハンバントタ港の買収は、中国の海上交通路戦略「真珠の首飾り」の一環と捉えられています。

1つ1つの真珠は、中国の軍事資産やインド洋やアジア太平洋の同盟国を意味し、それをつなげることでインドを取り囲もうというものです。マレーシアやパキスタン、バングラデシュ、ミャンマーもこれに含まれます

中国は昨年の夏、初の海外軍事基地をインドのすぐ西に位置するジブチに設置しました。

ジブチ(Djibouti)の地図上の位置
このジブチにおいては、日本政府は、昨年アフリカ東部ソマリア沖アデン湾での海賊対処活動を展開するためジブチにある自衛隊の活動拠点に隣接する土地をジブチ政府から新たに借り上げることで合意しました。日本政府関係者が昨年11月18日、明らかにしました。周辺国の治安悪化などに備え拠点を拡大し、邦人保護施設を整備することなどを検討します。

借り上げたのは現在の活動拠点に隣接する約3ヘクタールの土地で、日本、ジブチ両政府間で交渉を進め、11月に手続きを済ませました。
政府は平成23年からジブチ国際空港北西地区の約12ヘクタールの敷地を借り上げて自衛隊初の本格的な海外拠点として運用しています。海賊対策に従事する航空機の駐機場や司令部庁舎、隊員の宿舎などを設置。安倍晋三首相は25年に同施設で隊員を激励しました。

25年ジブチで自衛隊員を激励する安倍首相
このような、インドによるほとんど乗降客のいない空港の取得、日本によるジブチの土地取得など、当然のことながら、中国を意識してのことです。

そうして、このような日印の行動は、私は中国のサラミ戦術に対抗する逆サラミ戦術であると思います。

この逆サラミ戦術とは、私の造語です。これについては以前このブログに掲載したことがあります。
中国、印北東州で道路建設 インド側反発「インフラ整備で領有権主張する常套手段」―【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国のサラミ戦術と逆サラミ戦術に関する部分のみを以下に引用します。
サラミ戦術(サラミせんじゅつ、ハンガリー語: szalámitaktika [ˈsɒlɑ̈ːmitɒktikɒ] サラーミタクティカ)とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。
私はサラミ戦略に対しては、「逆サラミ戦略」という戦略を採用すべきだと思います。 それは、さきほどのバス停を動かした婆さん(ブログ管理人注:自分の家の入り口より10mくらい離れたバス停を毎日5mmずつ移動して、自分の家に持ってきた婆さんの話)のたとえでいえば、バス停が動いたと認識した段階で、それを元に戻すのです。元に戻すにしても、いきなり元の位置に戻すというのではなく、これも一度に5mm程度を戻すのです。 
これは、婆さんが毎日5mm動かしているとすると、ある時点で、婆さんが日々5mm移動しても、バス停は全く動かなくなることを意味します。そうすると婆さんは、動かしても無駄だと思うようになり、諦めてしまいます。 
諦めた後でも、毎日5mmずつ動かすのです。そうして、元の場所に戻ったら動かすのをやめるのです。このやり方を「逆サラミ戦略」とでも名付けたいと思います。
要するに、中国がサラミ戦術で何かをやりはじめたら、それをに対抗する措置もこちら側も必ずとるということです。中国がスリランカの港を手に入れたら、インドは空港を手に入れる。中国が、ジブチに海軍基地をつくれば、日本はジブチの基地を拡充するなどのことを必ずするのです。

そうして、中国のサラミ戦術のように、いきなり軍事基地化などするのではなく、十年、二十年、長ければ数十年もかけてそれを少しずつ実行するのです。1年、2年ではあまり目立った変化ではないのですが、20年もすれば大きな変化になっているという具合に実行するのです。

とにかく、中国が何かをすれば、日印だけではなく、日米中露印豪ASEAN諸国などが合同で、これに対してして中国のサラミ戦術のように対抗策を長年かけてすこしずつ実行するのです。

そうして、これは、中国が一見南シナ海で成功しているようにみえる、サラミ戦術のように、徐々にボディーブローのように効いてくることでしょう。

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2018年1月14日日曜日

南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」―【私の論評】ルットワックの真骨頂は綺麗事を排して、リアリズムに徹すること(゚д゚)!

南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」
エドワード・ルトワック (米CSIS戦略国際問題研究所シニア・アドバイザー)
グアムから朝鮮半島にかけて行われた米韓合同軍事演習
<2年ぶりの南北会談はまたも問題先送りで終わるだろう。北朝鮮がアメリカに届く核ミサイルを完成させる前に、核関連施設を破壊すべきだ>
1月9日、韓国と北朝鮮による2年ぶりの南北高官級会談が行われているが、結果は今までと同じことになるだろう。北朝鮮の無法なふるまいに対し、韓国が多額の援助で報いるのはほぼ確実だ。かくして、国連安保理がようやく合意した制裁強化は効力を失う。一方の北朝鮮は、核弾頭を搭載した移動発射式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を複数配備するという目標に向けて着実に歩みを進めていくだろう。

北朝鮮の過去6回の核実験はいずれも、アメリカにとって攻撃に踏み切る絶好のチャンスだった。イスラエルが1981年にイラク、2007年にシリアの核関連施設を爆撃した時のように。いかなる兵器も持たせるべきでない危険な政権が、よりによって核兵器を保有するのを阻止するために、断固として攻撃すべきだった。幸い、北朝鮮の核兵器を破壊する時間的余裕はまだある。米政府は先制攻撃をはなから否定するのではなく、真剣に考慮すべきだ。

当然ながら、北朝鮮を攻撃すべきでない理由はいくつかある。しかしそれらは、一般に考えられているよりはるかに根拠が弱い。北朝鮮への軍事行動を思い止まる誤った理由の一つは、北朝鮮が報復攻撃をしてくるのではないかという懸念だ。

ソウルが火の海になっても

アメリカの情報機関は、北朝鮮がアメリカ本土に到達しうる核弾頭を搭載した弾道ミサイルをすでに開発したと言ったと伝えられる。しかし、これはほぼ間違いなく誇張だ。むしろ、将来の見通しとでもいうべきものであり、迅速な行動によってまだ回避できる。

北朝鮮が、長距離弾道ミサイルの弾頭に搭載しうる小型化可能な核兵器を初めて実験したのは2017年9月3日。そして、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の初の本格実験を行ったのは2017年11月28日。それから今までの短期間で核搭載のICBMを実用化することなど不可能だ。

北朝鮮を攻撃すれば、報復として韓国の首都ソウルとその周辺に向けてロケット弾を撃ち込む可能性はある。南北の軍事境界線からわずか30キロしか離れていないソウルの人口は1000万人にのぼる。米軍当局は、そのソウルが「火の海」になりかねないと言う。だがソウルの無防備さはアメリカが攻撃しない理由にはならない。ソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいからだ。

約40年前、当時のジミー・カーター大統領が韓国から駐留米軍を全面撤退すると決めた際(最終的には1師団が残った)、アドバイザーとして招かれた国防専門家たち(筆者自身を含む)は韓国政府に対し、中央官庁を北朝鮮との国境から十分に離れた地域に移転させ、民間企業に対しても移転のインセンティブを与えるよう要請した。

避難シェルター設置の義務化も促した。例えばスイスのチューリッヒは、新しく建築される建物は独自のシェルターを設置しなくてはならない。さらに今の韓国には、イスラエルが開発したロケット弾迎撃システム「アイアンドーム」を安く購入するという選択肢もある。アイアンドームは、人の住む建造物を狙って北朝鮮がロケット弾攻撃をしてきた場合、9割以上の確率で迎撃できる能力を持つ。

イスラエルが開発したロケット弾迎撃システム「アイアンドーム」
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
しかし、韓国政府は過去40年にわたり、これらの防衛努力を一切行ってこなかった。ソウル地区には「シェルター」が3257ヵ所あることになっているが、それらは地下商店街や地下鉄の駅、駐車場にすぎず、食料や水、医療用具やガスマスクなどの備蓄は一切ない。アイアンドームの導入についても、韓国はそのための資金をむしろ対日爆撃機に注ぎ込むことを優先する始末だ。

北は軍事技術を売却している

今からでも北朝鮮によるロケット砲やミサイル攻撃に備えた防衛計画を韓国が実行すれば、犠牲者を大幅に減らすことができる。支柱や鉄骨を使ってあらゆる建物を補強するのも方法の1つだ。3257基の公共シェルター(避難施設)に生活必需品を備蓄し、案内表示をもっと目立たせることもそうだ。当然、できるだけ多くの住民を前もって避難させるべきだ(北朝鮮の標的に入るおよそ2000万人の市民は、南へ30キロ離れた場所に避難するだけでも攻撃を免れられる)。

とはいえ、長年にわたってこうした対策を怠ってきたのが韓国自身である以上、最終的に韓国に被害が及ぶとしてもアメリカが尻込みする理由にはならない。北朝鮮の核の脅威にさらされているアメリカと世界の同盟国の国益を考えれば当然だ。北朝鮮はすでに独自ルートでイランなど他国に弾道ミサイルを売却している。いずれ核兵器を売却するのも目に見えている。

アメリカが北朝鮮に対する空爆を躊躇する理由として、成功が極めて困難だから、というのも説得力に欠けている。北朝鮮の核関連施設を破壊するには数千機の戦略爆撃機を出動させる必要があり不可能だ、というのだ。しかし、北朝鮮にあるとされる核関連施設はせいぜい数十カ所で、そのほとんどはかなり小規模と見てほぼ間違いない。合理的な軍事作戦を実行するなら、何千回もの空爆はそもそも不要だ。

アメリカの軍事作戦の不合理さが露呈するのは、今回が初めてではない。米空軍は昔から、標的を絞った限定攻撃の代わりに、「敵防空網制圧」(SEAD)の実施を主張してきた。敵防空網制圧とは、米軍パイロットの身の安全を守るため、敵国の防空レーダーや地対空ミサイル、滑走路、戦闘機を余さず破壊するという、いかにも奇抜な作戦だ。北朝鮮の防空レーダーやミサイル、戦闘機はひどく老朽化し、電子機器もずいぶん前から交換されずに古いままであることを考慮すれば、米空軍が示した条件は何もしないための口実にすぎない。確かに限定攻撃だと手押し車の1台や2台は見逃すかもしれないが、今はまだ、北朝鮮には核弾頭を搭載したミサイルの移動式発射台が存在しない。叩くのは今のうちだ。

北朝鮮空軍のミグ21戦闘機

中国も北朝鮮を見放した

アメリカが北朝鮮への空爆を躊躇する唯一の妥当な理由は、中国だろう。だがそれは別に、中国がアメリカに対抗して参戦してくるからではない。中国がなんとしても北朝鮮を温存するという見方は、甚だしい時代錯誤だ。もちろん中国としては、北朝鮮の体制が崩壊し、北朝鮮との国境を流れる鴨緑江まで米軍が進出してくる事態を決して望まない。だが戦争行為の常套手段である石油禁輸を含め、中国の習近平国家主席は国連安保理で採択された対北朝鮮経済制裁の強化を支持する姿勢を見せており、核問題をめぐって北朝鮮を見放し始めている。アメリカが北朝鮮の核関連施設を先制攻撃すれば中国が北朝鮮を助けに行く、という見方は的外れだ。

今のところ、北朝鮮に対する先制攻撃という選択肢を米軍幹部が排除しているのは明らかに見える。だが、北朝鮮が核兵器を搭載可能な長距離弾道ミサイルを実戦配備するまでに残された月日でアメリカが北朝鮮を空爆すれば、果てしない危険から世界を救える。

インド、イスラエル、パキスタンの3カ国が核兵器を保有しているのは事実だが、今のところ破滅的結果を招いていない。3カ国は北朝鮮にないやり方で、自国の信頼性を証明してきた。北朝鮮のように、大使館でヘロインや覚醒剤などのいわゆる「ハードドラッグ」を売ったり、偽造紙幣で取引に手を染めたりしない。3カ国とも深刻な危機に見舞われ、戦争すら経験したが、核兵器に言及すらしなかった。ましてや金正恩のように、核攻撃をちらつかせて敵を脅すなどあり得ない。北朝鮮は異常だ。手遅れになる前に、アメリカの外交政策はその現実を自覚するべきだ。

From Foreign Policy Magazine

【私の論評】ルットワックの真骨頂は綺麗事を排して、リアリズムに徹すること(゚д゚)!

ルトワックの上記の提言に関しては、乱暴であるという意見も多いです。織田邦男元空将の意見はその典型的なものです。以下にその意見を述べている動画を掲載します。


上の動画は、日本の安全保障を考える上で、非常に参考になることが多いです。特に、米国ではなく、日本の安全保障については参考になることが多いです。しかし、ルトワック氏の提言は乱暴であると簡単に言うことができるのでしょうか。私自身は、腑に落ちないところがあります。

織田邦男元空将は、米国が現時点で北を攻撃することは、予防的攻撃になるとして、これは国際法違反であると断じています。そうして、先制攻撃は国際法に照らして合法ですが、予防的攻撃は違法だと断じています。しかし、私はそのようにきっぱりと割り切れるものではないと思います。

私自身は、現在米国が北を攻撃したとしても、予防的先制攻撃ということで国際法違反になるかどうかは別にして、多くの国々から批判を受けるということにはならないのではないかと思います。

結論から言って、国家元首が核で周辺国を脅し、兄を暗殺し、叔父を処刑し、国内での人権侵害は常軌を逸するレベルです。そんな国に核兵器を持たせたままで良いのでしょうか。

北朝鮮がもし完全な核兵器保有国となれば、韓国や日本はもちろん、全世界にとっても非常に危険な状態が生まれます。

そもそも、朝鮮民主主義人民共和国は、異常な国、無法の国です。先程は述べませんでしたが、日本国民の拉致事件もその一例です。政府が工作員を日本国内に潜入させ、罪のない日本人男女を冷酷に拉致して、そのまま長い年月の間むごたらしく拘束するという非人道的な行為を他のどの国家がするでしょうか。

核兵器についても、金正恩委員長は核を使用するという脅しを平然と語ります。国際社会の要請に逆らって核兵器を開発した国は北朝鮮だけではありません。しかし、たとえばインド、パキスタン、さらにはイスラエルなど、あるいは好戦的な対外姿勢をとる中国でさえも、国家首脳が核兵器の威力を外部に向けて宣伝して、威嚇の手段にするようなことはしていません。北朝鮮は異常です。異様な危険国家、犯罪国家です。だからその核武装は軍事手段に訴えてでも阻止すべきです。

それとともに、韓国に関するルトワック氏の見解ですが、これも一概に否定できないと思います。軍事でも経済でも韓国は強い力を持っています。しかしその力を使って、目前に迫った北朝鮮の核武装という重大危機を除去しようという国家的な意思がいまだにまとまっていません。それは韓国内で、自国の基本的なあり方をめぐって意見の分裂があり、国としての結束が決定的に欠けるからです。

韓国の文在寅政権に対しては、トランプ大統領自身も「appeasement」(宥和)という言葉を使い、軟弱すぎると非難したこともありました。「宥和」とは、第2次世界大戦前にイギリスのチェンバレン首相がドイツのヒトラーに対して必要以上の譲歩をしたときによく使われる表現です。その際のイギリスの過剰な譲歩がナチス・ドイツを増長させ、侵略へと駆り立てたとされています。

そうして、「国家としての結束の欠落」といった場合、最近では、「日韓合意」において韓国が日本に対してみせる態度の特徴であるようにもみえます。

韓国は、自分の首都すら守る意志がないにもかかわらず、日本に対する軍事攻撃の準備にだけは妙に熱 心です。

下の写真は去年6月15日に行われた竹島周辺を艦隊で通過する韓国海軍の訓練風景です。


もちろん、「訓練」と言う名の挑発行為です。駆逐艦や海洋警察の巡視船など7隻と、P3C哨戒機やF15K戦闘機など海・空軍機4機を投入した大規模なものでした。

わが国は、北の脅威も考慮に入れた上で冷静に対応したか良いようなものの国際常識では係争地でこんなまねをすれば開戦事由になりかねません。

この6月の前後は「週刊弾道ミサイル」といっていいような、北のミサイル実験が頻発していた頃です。 間違いなく、日米韓でもっとも緊密に協力すべき時期でした。なぜこの時期に、わが国にこのようなことを仕掛けたのか理解に苦しみます。

ルトワック氏は国際制裁が、韓国の裏切りによって破綻するだろうと予言していました。いくら国連決議を積み上げようと、制裁強化を叫ぼうと、韓国がそれをいっさい無効にしてしまうと読んでいます。

ブログ冒頭のルトワックの寄稿は、1月9日の板門店で開かれた南北会談以前に書かれたものでしょうが、まさにルトワックの観測どおりとなりました。

韓国は北の冬季五輪への参加の見返りとして、「南北関係のすべての問題はわが民族が当事者として解決する」という凶悪なまでに間抜けな言質を与えてしまっています。

この条項は、国連制裁決議を韓国は破壊して、北の核ミサイル開発を間接に「支援」するという意思表示にほかなりません。これでは、文在寅は自由主義陣営に後ろ足で砂をかけて、北と一緒に「わが民族」の側に与すると宣言したに等しいです。

以上のようなことを考慮すれば、ルトワックがソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいと言うのも無理はないと思います。韓国のこの状況はこれからも変わらないでしょう。

ただし、私は北に「ソウルを火の海」とするような攻撃能力はないと思っています。詳述は別の機会に譲りますが、北の通常兵器による攻撃能力はとうに錆び付いて陳腐化しており、ほとんど使い物にならないと考えられています。

先日、マティスがソウルへの反撃については対処方法があると発言しましたが、米軍はMOABなどを使って38度線に張りついた北の砲撃部隊は、短時間で制圧できると考えているようです。

MOABはアメリカ空軍が開発した現在、通常兵器としては史上最大の破壊力を持つとされる爆弾
ルトワックはこのまま北の時間稼ぎを許せば、もう軍事的手段をとりようがない時期になると見ています。

それは過去の北の暴走に対して、米国がなすすべもなく「戦略的忍耐」という美名の不作為を重ねてきた結果として、現在のこじれきった状況があるからです。

ルトワックの真骨頂は綺麗事を徹底的に排して、リアリズムに徹するという思考型式です。 

ルトワックは著書『戦争にチャンスを与えよ』のなかで、欧米型民主主義の頭デッカチが、かえって中東に災厄をもたらしたと断じています。 

たとえばイラクです。独裁者フセインを排して民主主義を導入しようとした結果、スンニ派とシーア派の果てしなき宗教紛争の地獄の釜の蓋を開けてしまいました。 

イラクだけにとどまらず、米国はリビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、パレスチナ、そしてシリアなどで、こんなことなら昔の独裁者が統治していたほうがましだった、と住民たち言われるような状況を生み出してしまいました。 

そしてとどのつまりISというモンスターを生み出し、テロリストを退治するためにロシアの中東介入を許すはめになっていきました。 

ルトワックは、イラクには介入するな、するなら今の世代が消えて新世代に替わる半世紀は駐屯する覚悟で介入しろと主張していました。 

また、善意のNGOがテロリストにいいように利用され、紛争をいっそう血生臭くしたことも厳しく批判しています。 

私は、朝鮮半島でも米国が中途半端なことをすれば、後々現在の中東と同じようなことになり、禍根を残すことになると思います。

それを考えれば、いまのままであれば、たとえ韓国や日本に被害が出たとしても、米国はルトワックが主張するように、北の核施設を爆撃するべきだと思います。

もし、今年中にも爆撃をせずに、北を放置しておけば、北の思う壺にはまり、米国は北の核を容認するようなことにでもなれば、米国はまた第二のISを生み出してしまうことになるかもしれません。オバマ流の綺麗事では、世界の混迷は深まるばかりだと思います。

今すぐ攻撃すべきかどうかは別にして、米国による北爆撃は選択肢としてはいつでも実行できるように準備しておくべき筋のものと思います。

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2018年1月13日土曜日

池坊保子氏「モンゴル人は狩猟民族のDNA」発言の見識―【私の論評】相撲界こそ真のマネジメントを学びそれを運用すべき(゚д゚)!

池坊保子氏「モンゴル人は狩猟民族のDNA」発言の見識

池坊保子 日本相撲協会・評議員会議長
「(モンゴル人は)狩猟民族だからね。勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれないわ」

『週刊文春』1月18日号

年始からの名言、珍言、問題発言を振り返る。年をまたいでも一向に収束する気配がない大相撲に関する騒動。そんな中、日本相撲協会の中でも強い権限を持ち、貴乃花親方を批判し続けてきた池坊保子氏が問題発言をぶっ放した。
日本相撲協会の臨時評議員会後、記者会見する池坊保子議長
池坊氏は『週刊文春』の取材で、張り手やかち上げなどを繰り返す横綱白鵬の取り口を「(ルールが)ある以上は『張り手した』と、ガーガー(批判を)言わないで。理事会で取り上げてほしい」と擁護。その上で、「(モンゴル人は)狩猟民族だからね。勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれないわ」と語った。

池坊氏の発言に対して、評論家の荻上チキ氏は「どの地域にもいろんな農耕のスタイルがあり、いろんな放牧のスタイルもあり、いろんな狩猟のスタイルなどなどもあるわけですね。なのになぜ、日本人は狩猟ではなく農耕民族で、たとえば○○は狩猟で……みたいな分け方をした上で、だからこういう風な行動になるんだ、みたいな一括りにする議論がいまだに生存しているのかがわからない」と強く批判(TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』1月10日)。さらに「『民族』と『DNA』ってどんな関係があるんだ?」「早くそういった文明論は滅びてほしいなと思っている」とも語った。

理事解任の処分を受けた貴乃花親方
 なお、池坊氏は第一次安倍政権下で相撲協会の監督官庁でもある文科省の副大臣を務めていた。こんなに見解の浅い人が日本の教育をつかさどる省庁の要職を務めていたとは信じられない。

【私の論評】相撲界こそ真のマネジメントを学びそれを運用すべき(゚д゚)!

(モンゴル人は)狩猟民族という発言には、本当に驚きました。モンゴル人というと、私はが一番先に思い浮かべるのは、遊牧であり、遊牧をなりわいとしてきた多くのモンゴル人は遊牧民族というのならわかりますが、どう考えても狩猟民族ではないと思います。これは、はっきりとした間違いです。

その珍妙な知識から、「勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれない」として、「張り手」を擁護するというのもどうもわかりません。

これじゃ血液型性格診断などと何も変わりないではありませんか。むしろ、「張り手」を禁止するとか、あるいはその逆に「張り手」を解禁にするなどのことでもしたほうがまだましです。

そもそも、モンゴル人に対する理解が最初から間違っています。以下の動画をご覧いただくと、モンゴル人のことがある程度理解できます。



この動画で、宮脇淳子先生は、「遊牧民であるモンゴル人は、人と同じことをしない。人と同じことをしていては、餌である草原がなくなった場所にしか行くことしかできなくなる。人が来ていないところにの良い所に行くには、人と同じことをしていてはできない」と述べています。日本のモンゴル専門家がそういうのですから、やはりモンゴル人は狩猟民族とはいえないと思います。

元々は遊牧民でったモンゴル人の住居「ゲル」
なお、モンゴルについて詳細を知りたいかたは、是非宮脇先生の著書をご覧になってください。以下のサイトも参考になります。


相撲界については、以前もこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
貴乃花親方を公開説教、笑う白鵬と緊張感ない力士たち 暴力問題の再発防止研修のはずが…―【私の論評】まともな「組織の精神」を根付けなければ抜本的解決にはならない(゚д゚)!
日馬富士
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、相撲界は組織としてみた場合、健全な「組織の精神」を保っているとはいえないようであることを掲載しました。相撲界全体、そうして理事会、評議員会も組織です。いかなる組織もマネジメントの原則を適用することができます。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「組織の精神」について一部この記事から引用します。

"
組織は以下の4点を満たさなければ健全な精神を持っているとは言えません。
①組織の焦点は成果に合わせなければならない 
②組織の焦点は機会に合わせなければならない
人事に関わる意思決定は組織の信条と価値観に沿って行わなければならない
④真摯さこそが唯一絶対の条件である
これだけだと、何のことかわからないと思いますので、以下に簡単に説明します。

組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。天才に頼ることはできない。天才はまれである。あてにできない。凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。同時に、組織の役目は人の弱みを無意味にすることである。要するに、組織の良否は、そこに成果中心の精神があるかどうかによって決まる。(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)
人間は多様です。しかも、でこぼこした存在です。あることを得意とし、あることは不得意とします。得意なことを伸ばすのは簡単ですが、不得意なことを直すのは至難です。そこで不得意なことを意味のないものとし、得意なものを引き出して組み合わせることが必要になります。
ところが、組織の中に、何事も成果を中心に考え、行動するという成果中心の精神が根付いているならば、人びとの得意なことだけを組み合わせるという手品が、いとも簡単に行えます。
成果中心の精神を持つための方法は簡単です。第1に、あらゆることの焦点を成果に合わせることです。第2に、あらゆることの焦点を機会に合わせることです。第3に、人事は真摯さを絶対の条件として行うことです。
ドラッカーは、実例をもって教えています。かつての帳簿係が組織の成長に伴い、50歳で経理担当役員になったものの、仕事をこなせなくなりました。人は変わらないのに、仕事が変わったのです。だが、彼はずっと真摯に働いてきました。
ドラッカー氏は、そのような真摯さに対しては、真摯さをもって報いなければならないといいます。ただし、彼を担当役員のままにしておいてはならないのです。仕事上差し支えがあるだけではありません。士気を低下させ、マネジメントへの不信をもたらすことになります。
しかし、退職させるのも間違いです。正義と礼節にもとることになります。
成果中心の精神を高く維持するには、配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定こそ、最大の管理手段であることを認識する必要がある。それらの決定は、人間行動に対して数字や報告よりもはるかに影響を与える。組織の中の人間に対して、マネジメントが本当に欲し、重視し、報いようとしているものが何であるかを知らせる。(『マネジメント[エッセンシャル版]』)
「組織の精神」について、詳細を知りたいかたは、当該記事をご覧いただくか、これは元々ドラッカーのマネジメントの原則ですので、ドラッカーの書籍を御覧ください。

「組織の精神」など、マネジメントの原則を知りそれをまともに運用できなければ、組織は腐ります。ドラッカー流のマネジメントは、非常に優れていると思うのですが、まだ経験の浅い若手の企業人などに、ドラッカーの書籍を読ませて、意見などを聴くと、字面は追いかけてわかったようなつもりになっているようですが、その実ほとんど理解しない人も結構います。

また、企業の経営者の中には、ドラッカーの書籍など一度読んだこともないのに、おどろくほどドラッカー的な考え方をして、経験的にマネジメントの原則を身につけている人もいます。

上記のような錯誤を公然と口にしたり、昨年の研修会の発言などから、おそらく池坊氏はマネジメントなどとは程遠い人物であるように思います。

ドラッカー氏は、マネジメントには3つの役割と2つの次元があるとしています。

3つの役割とは、以下のようなものです。
(1)組織は、組織に特有の使命、すなわちそれぞれの目的を果たすために存在する。 
(2)仕事を通じて働く人を生かす。組織こそ自己実現を図る手段である。 
(3)自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献する。
2つの次元とは以下のようなものです。
(1)時間の要素が介在する。存続と健全さを犠牲にして、目先の利益を手にすることに価値はない。しかし未来は現在からしか到達できないので、基礎をしっかりさせなければならない。 
(2)マネジメントは管理する。成果の小さな、縮小しつつある分野から、成果の大きな、増大する分野に資源を向けなければならない。そのために昨日を捨て、明日を創造しなければならない。
しかし、ドラッカー氏は、マネジメントは絶対かつ無条件のものではなく、果たすべき役割によって決定されるべきだとしています。

ドラッカーのマネジメントの定義は、「目的を果たす」、「人を生かす」、「社会貢献」、「未来を見据える」、「昨日を捨て、明日を創造する」、しかも「果たすべき役割」で変化するという柔軟性を主張する内容であり、まさに「戦略的」で、「人を生かし」、「能動的」に「変革」し、変化にも柔軟に対応するという包括的な意味を持っているのです。

いわゆる、多くの人が誤解している「マネジメント=管理」あるいはせいぜい「PDCAサイクル」ではないことが、良くご理解いただけるものと思います。

これを良く知れば、池坊氏はドラッカー氏の説くところの真の意味のマネジメントについてあまりにも無知なのでしょう。そもそも、人の強みを活かすことの重要性などあまり認識していないかもしれません。管理することだけが、マネジメントであると思い込んでいる節があります。

これは、評議会や理事会も多くの人がそうなのでしょう。彼らは、ドラッカーのマネジメントの定義を肝に銘じて、日頃実行している己のマネジメントを大いに恥じ、反省して、真のマネジメントを実行するよう努力しなければならないでしょう。何よりも自分たちは、マネジメントをする主体であることを理解すべきです。

そのためには、まず自らを厳しく反省し、マネジメントの真に意味するところを厳しく学ぶべきなのです。

では、どのようにして学ぶか。トップはマネジメントの真の意味を、あらゆる機会を通じて理事や親方に知らしめ、学ばさなければならないのです。そうして、池坊氏は本来その役割を果たすべきなのです。

そうして、これには手法が重要です。馬を水場に引いてきても、水を欲さない馬は水を飲まないです。馬に水を飲ませるには、運動をさせたり、炎天下に放置したりして喉を乾かすようにすればよいのです。

同じように、理事や親方に水を飲むように諭す必要がありますが、諭しても飲まない場合は喉を乾かせばよいわけです。例えば会議の席上や力士たちの面前で、「マネジメント」に対する無知さ加減を暴き、大恥をかかせるという手もあります。

これはひとつの方法ですが、一旦恥をかけばそれを契機にドラッカーなどの経営書をひもとくとか、一見全く関係ないようにみえる外の組織のマネジメントに関する講義を受講するとか、仲間と勉強会を開いて議論をするとかを始めるきっかけになります。その他に、喉を乾かすようにする方法はいくらでもあります。

日本相撲協会は昨年12月「暴力問題の再発防止について」と題した研修会を、東京・両国国技館で開いていましたが、これは非常にお粗末なものでした。

相撲界の講習などでも、ドラッカーの主張する真のマネジメントを習得するコースを組み込むべきです。それらのきっかけを作るのは、組織のトップに他ならないです。彼ら自身が、まず気づき、厳しく学ばなければならないのです。そこがスタートです。トップがそのことに気づかない場合は、相撲界も悲劇の道を歩まざるを得ないです。

相撲界の評議会や理事会にも、「組織の精神」を健全に保つためにも、真のマネジメントについて学んで、実行すべきことが充用でることを一刻も早くそれに気づいて欲しいものです。

そうして、これは無論相撲界だけではなく、あらゆる組織にあてはまることでもあります。

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2018年1月12日金曜日

謝った「ノストラダムス」作家 財政破綻の予言も外れっぱなし、そろそろ謝罪していいのでは―【私の論評】財政破綻派は謝罪しないというなら破綻して無害な存在になれ(゚д゚)!

謝った「ノストラダムス」作家 財政破綻の予言も外れっぱなし、そろそろ謝罪していいのでは

ノストラダムスの肖像画 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 1970年代に『ノストラダムスの大予言』がベストセラーになった作家、五島勉氏のインタビューが話題になっている。「1999年7月に人類が滅亡する」と信じた子供や若者は多かったが、現実にはならず、五島氏は「当時の子供たちには謝りたい」と述べたという。

五島勉さん。昨年88歳になった
 一方、経済分野での有名な「予言」といえば、「日本の財政は破綻する」というものだ。これもノストラダムスと同様、現実にはなっていないのだが、謝罪した人がいるとは聞いたことがない。

 財政破綻の問題は、一部の好事家だけの対象ではなく、経済学者の間でも心配する声は大きい。東京大学金融教育研究センターでは、主要な国内経済学者をメンバーとして「『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会」を2012年6月から14年10月まで開催していた。その問題意識は「もはや『このままでは日本の財政は破綻する』などと言っている悠長な状況ではない」とし、「財政破綻後の状況や破綻後に直面する国民的課題・政策課題に焦点を合わせた議論・研究を開始する必要がある」というものだった。

『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会のメンバーリスト
 経済学者による「財政破綻本」もかなり出ている。10年11月には『日本経済「余命3年」』、13年2月には『金融緩和で日本は破綻する』という書名の本も出版されたが、破綻は現実には起こらなかった。財政破綻は面白い材料なのか、ほかにも類書は少なくない。



 財政破綻を20年近くも主張している国会議員もいる。筆者が国会に参考人として呼ばれた際、「予言は当たっていない」と指摘すると、「当たっていないことは認めるが、言わざるを得ない」と述べていた。実現したら困るので、根拠がなくても言う必要があるというのでは、ノストラダムスの予言と大差ない。

 元財務官僚の筆者の経験からいっても、財政当局は、国内では財政破綻論は増税の根拠にできるので、放置している。むしろ、財政破綻論を書きたい著者には財政資料をレクチャーするなどして後押しすることもある。10年6月の『絶対に受けたい授業「国家財政破綻」』はその典型例だが、一方で「財政破綻しない」という筆者の意見も掲載されている希有な本だ。


 財政破綻を信じる人はさまざまだ。財務当局やマスコミが訴える「財政危機論」を信じているだけの人も多い。

 東大の研究会の場合、債務残高対国内総生産(GDP)比が他国に比べて大きく、財政が維持できないことが数式で示されている。しかし、その式が成立するには、単なる債務残高ではなく「ネット債務残高」である必要がある。

 バランスシート(貸借対照表)の右側(負債)だけでなく、左側(資産)を含めた両方を見る必要があるのに、東大の研究会では誤解しており、その誤解が直されないままその後の議論が行われている。

 間違った前提から正しい結論は導かれないので、予測が外れるのはある意味当然だ。東大の研究会は活動を停止したらしいが、関係者は謝罪してもいいのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財政破綻派は潔く謝罪せよ(゚д゚)!

ブロク冒頭の記事にでてくる、五島勉氏のインタビューでの謝罪とは、週刊文春のインタビュー記事にでてくるものです。その記事は文春オンラインでも読むことができます。以下のそのリンクを掲載します。


作家・五島勉インタビュー #1

以下に文春オンラインのインタビュー記事から、五島氏の謝罪の部分だけ掲載します。

五島 弁解するわけではないんだけど、私は「大予言」シリーズの初巻の最後に、「残された望みとは?」という章を書いていて、予言を回避できる方法がないか考えようと言ってるんです。もちろん、米ソの対立とか核戦争の恐怖とかがあって、ノストラダムスが警告した状況が来ることは間違いない。それは破滅的なことかもしれないけど、みんながそれを回避する努力を重ねれば、部分的な破滅で済むんだということを書いたんです。だからこの本は、実は部分的な破滅の予言の本なんです。 
 だけど、私がこの本を書くとき、ノンフィクション・ミステリーという手法に挑戦したことで誤解を生んでしまった。ミステリーが最後にどんでん返しをするように、初めに全滅するんだと書いておいて、最後になって人類が考え直して逆転して、部分的な破滅で済むんだと、それに向かって努力しなければならないと書いたんです。だけど、ここのところをみんな読まないんです。 
―― たしかに多くの人が、1999年7月に全滅するんだと信じていましたね。 
五島 ただ、私はそのことをちゃんと主張できるけど、当時の子どもたちがね。まさかこんなに子どもたちが読むとは思わなかった。なんと小学生まで読んで、そのまま信じ込んじゃった。ノイローゼになったり、やけっぱちになったりした人もいて、そんな手紙をもらったり、詰問されたりしたこともずいぶんありました。それは本当に申し訳ない。当時の子どもたちには謝りたい。
私は、「ノストラダムスの大予言」と、その続編の「続ノストラダムスの大予言Ⅱ(五島氏著)」も読みました。そのため、五島氏の主張は理解していました。

その当時の理解は、確かに世界の破滅はあり得るが、努力すればそれは回避できるだろうというものでした。



そうして、成年に達ししばらくすると、この書籍のことはほとんど忘れてしまいました。特に経営学の大家ドラッカーの書籍を読むようになってからは、ほとんど忘れてしまいました。

特にドラッカー氏が著書の中で未来予測について、以下のように語っていることを知り、未来予測は全く無意味であることを納得しました。

「未来を予測しようとすることは、夜中にライトをつけず、リアウィンドウを見ながら田舎道を運転するようなものだ。」

日本が滅多なことで財政破綻しないことはこのブログでも何度か掲載してきました。以下に新たにその根拠を掲載します。日本が財政破綻しないことなど、1分もあれば論破できます。

その意味では、この書籍は今の私にとっては、何の影響力もありません。おそらく、多くの人がこのような状況にあるものと思います。

それでも、五島氏は謝罪と、あの書籍の意図したことをはっきりとインタビューで応えています。これは、なかなかできないことなのかもしれません。

実際、多くの「財政破綻論者」が今でも謝罪などしていません。しかし、「日本が財政破綻しないこと」はあまりにもはっきりしており、このブログでも何度かその理由を掲載してきました。本当にこれは、1分もあれば論破できることです。以下に再度論破してみせまょう。

細かな数字は脇に置いて、日本の借金は1000兆円とされます。一人当たり800万円となり、一般家庭に置き換えて、給料が40万円なのに90万円の使っていて、1000万円の借金がある。だから破綻する。こう脅す説明では「日本の資産」について触れません。

無駄な支出は減らすべきですが、日本には大雑把にいって700〜800兆円の「資産」があります。こういうと、財政破綻論者は「ドヤ顔」で、資産はすぐ売れるとは限らないからやっぱり危ないといいます。しかし、それも論破できます。「資産」といった場合様々なものがありますが、日本政府の資産で一番大きいの純金融資産です。すぐに換金できるものがほとんとです。

金融資産とは、政策投資銀行(旧日本開発銀行)やUR都市機構(旧住都公団)などの特殊法人、独立行政法人に対する貸付金、出資金です。

もしそれらを回収したらどうなるかといえば、仮にこれらを民営化か廃止すれば回収ということになりますが、政府が破綻するということはまったくなく、役人の天下り先がなくなるだけの話です。

つまり、日本の借金なるものは200〜300兆円で、これはかなり大きいと見る人もいるかもしれませんが、世界水準でGDP比で見れば、決して突出した数字(割合)ではありません。このような見方をすれば、米英よりも少ないです。

財政破綻派が、1000兆円の借金と切り出した時点で「嘘」と思って間違いないです。

さらに、借金といえばサラ金や銀行からの借り入れをイメージしますが、日本国の借金の大半は「国債」によります。日本国債を買うのは国民や国内企業・金融機関です。外国の機関投資家などが購入するのはほんの数%にすぎません。これをわかりやすく例えれば、親が子どもから金を借りているようなものです。

つまり家庭内でお金が循環しているということで、これで家計が破綻した事例などありません。

「財政破綻論」を主張していた方々は、高橋洋一氏が主張しているようにやはり謝罪すべきと思います。そうでないと、主張していた方々自身が次のステップに進むことができないでしょうし、何よりも多くの人々に誤解を与えたままになってしまいます。

私の経験でいうと、私の母がなくなってから少ししてから、もう使わなくなった母のお茶の道具類を、古物商に引き取りにきていただいたのですが、その時の鑑定士が女性でしたが、その女性が「円が心配、無価値になるのでは」と語っていました。この女性は日本の財政破綻を心配しているようでした。

その、女性はそのような心配は全くないことを、上記のような説明も加えながら話をしました。このような無用な心配を多くの人々にさせるのは、本当に良くないことだと思います。財政破綻派があくまで謝罪しないというのなら、ご自身が破綻すべきと思います。

破綻して、発言力も何もなくなり、無害な存在になっていただきたいです。

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2018年1月11日木曜日

中国共産党が恐れる郭文貴を直撃 「宿敵・王岐山を絶対潰す」―【私の論評】郭文貴氏未報道は、日本メディアの偏向を暴露(゚д゚)!


郭文貴
 「ニイハオ、ニイハオ。我是郭文貴」--マンハッタンの五番街に面し、セントラルパークを見下ろす高級コンドミニアムの18階。そのフロアをまるごと所有する男が、合掌をして笑顔で出迎えた。

 男の名は郭文貴(かくぶんき)。身体は筋肉質で、胸元に山吹色のネクタイが輝く。不動産開発業や投資によって180億元(約3054億円、一昨年時点)の資産を築いた大富豪だが、初対面では礼儀正しい印象の人物だ。

 だが彼の素顔は、かつて北京五輪がらみの公共事業に食い込み、中国の情報機関である国家安全部(国安部)や公安部とも協力してきた筋金入りの政商である。2014年、親交のある国安部元副部長・馬建の失脚を前に海外へ逃亡した。

 やがて昨年春、自身が中国政府に国際指名手配を受けた前後から、郭文貴は様々なメディアや自身名義のYouTubeなどで多数の党高官のスキャンダルの「爆料」(暴露)を開始。中国政界に激震をもたらしはじめた。

 特に苛烈な攻撃を加えたのは、習近平政権第1期に党中央紀律検査委員会(中紀委)を率いて汚職摘発の辣腕を振るった王岐山(おうきざん)と、公安・司法部門のトップだった孟建柱(もうけんちゅう)だ。

王岐山(おうきざん) 写真はブログ管理人挿入
 郭は王岐山について、大手エアライン海南航空との一族ぐるみの癒着、隠し子の存在や女優との醜聞を暴露。また孟建柱についても、愛人と隠し子問題、江沢民派による権力奪取目的の秘密会合「南普陀会議(※注1)」への出席などを明らかにした。

 【※注1/習政権の成立前、江沢民派が開いたと郭が主張する秘密会議。胡錦濤の腹心・令計画の息子の暗殺が決定されたという(公的には事故死とされる)】

 内容の信憑性に疑問の声も上がるが、稀代の梟雄・郭文貴の弁才がフルに発揮されたネット動画には独特の魅力もあり、国内外の多数の中国人を惹きつけている。

 中国共産党が最も恐れる男・郭文貴。2018年、彼が採る次の一手は何か? ニューヨークで2時間にわたり本人に直撃した。

孟建柱(もうけんちゅう)
 --一連の暴露で、王岐山と孟建柱への攻撃が特に激しい理由は何でしょうか?

 「3点ある。第一は法治に反した王岐山らへの反抗だ。中紀委を握った王の権力は肥大し、反腐敗を口実にやりたい放題だった。孟建柱も警察機構・検察院・裁判所を押さえていた。連中は強大な権力を背景に国家を盗み取った「盗国賊」だ。こうした悪人どもに打撃を与えるには、秘密の暴露こそ最強の攻撃なのだ。

 第二は、私自身や大事な人たちへの迫害だ。王岐山らは私の帰国を要求し、家族と200人余りの従業員を脅迫した。彼らを守らなくてはならない。また、私の中国国内の資産の差し押さえも不当で、断固抗議する。

 第三に、私は中国の情報機関に長年協力してきたので、王岐山や孟建柱の過去を知っている。2000年代後半、馬建と当時の中紀委はすでに王や孟の乱倫や汚職を調査していたのだ」

 --仮に弱みを握られていたなら、壮絶な逆襲を受けるのは明らかなのに、王岐山らはなぜ郭さんの摘発を考えたのでしょう?

 「ここまでの逆襲は予想外だったのだろう。普通、中紀委や公安に逆らう中国人は皆無だからな。

 しかも、私は2006年の劉志華(※注2)の失脚の際も、当時の北京市長だった王岐山とやり合っている(笑)。まさか2度も逆らうとは思わなかったに違いない」

 【※注2/北京市元副市長。五輪インフラ整備に携わったが失脚。郭が籠絡していたとの説がある】

 --習政権第2期、王岐山は常務委員(党最高幹部)に残留せず、孟建柱も中央委員を外れました。暴露の影響はあると思いますか?

 「当然だ。なかでも王岐山は海南航空との癒着問題、孟建柱は彼の隠し女児と南普陀会議への参加が決定的なダメージになった」

 --他にも様々な党幹部の醜聞を公開しています。次のターゲットは?

 「それは言えない(笑)。大事なのは、私の家族や従業員や資産に害を与えているのは誰かということだ」

 --習近平の一族にも汚職疑惑があります。従来、習を直接批判していないのはなぜでしょうか?

 「習主席に善悪の評価を下すのはまだ早い。仮に彼がヒトラー式の独裁をしたり、世界の平和を乱すなら問題だが、そうではないから。私は習主席が中国の法治・民主・自由にどのような姿勢を示すか注目している」

習近平
 --一連の暴露行為の情報ソースは何ですか?

 「多くのチャンネルがある。王岐山の海南航空癒着問題を例にすれば、国安部の馬建が以前から調べ上げていた。また富豪ゆえの人脈もある。

 私は海航の幹部何人かと親しく、また日米を含めた各国に、同社の関係者と私の共通の友人が何人もいる。王ではつかみ切れない世界だろう(笑)。ただ、最も重要なソースは国安部経由で得ている」

 --党幹部が政敵の失脚を目的に情報提供する例は?

 「無数にある。習主席のスキャンダルが最も多いが、他にも様々だ。党高官の99%は問題を抱えているからな(笑)。ただ、私は他人の政争の道具にされるのはゴメンだから、それらはほぼ使わない。

 なにより、連中のリークは正義が目的ではないので嘘が交じる。私は過去の暴露において嘘を言ったことはなく、不確かな情報は使っていないのだ」

 --あなたが暴露した情報に、嘘は一切ないと?

 「ない。(昨年5月)中国の国安部の連中が私に「これ以上暴露をするな」と交渉に来たのが何よりの証拠だ。仮に私の話が嘘なら、彼らはそんなことを言わない」

范冰冰(ファン・ビンビン)
 --郭さんは昨年7月、王岐山が有名女優でハリウッドにも進出した范冰冰(ファン・ビンビン)の性接待を受けたことを匂わせ、ツイッターに「ハメ撮り現場」の写真を投稿しましたが、それは彼女の映画の一場面を切り取ったものでした。あれは嘘ではありませんか。

 「一種の「釣り」だ。画像には彼女の特徴が写っており、見る者が見れば意味がわかる。私はその証拠動画を持っている」

 --ならば、なぜ動画を公開しないのですか?

 「流せばアメリカでは犯罪になる。これはポルノの流出だ。范冰冰は(権力者の毒牙にかかった)被害者であり、加害者ではない。彼女を傷つけるに忍びない」

 --そうなのでしょうか?

 「多くの人が虚々実々の印象を受けることは理解する。だが、私が動画を持っていることは事実。それ以上に、王岐山が強大な権力を有し、傍若無人に好色にふけったことは事実なのだ。私の主張は、結論から見ればなんら間違ってはいない」

 --暴露を9か月間も続けていると、ネタ切れをしたり情報の質が下がる恐れはありませんか?

 「いくらでも語るべき情報はある。なにより、党の上層部には真の『パンドラの箱』が存在するのだが、私は現時点でそれを開けていない。彼らが最も恐れる情報はまだ公開していない」

 --公開する予定は?

 「各国の政府がそれを知りたいと言うならば、協力して答える気はある」

■取材・文/山久辺参一(ジャーナリスト)

※SAPIO2018年1・2月号

【私の論評】郭文貴氏未報道は、日本メディアの偏向を暴露(゚д゚)!

ブログ冒頭のSAPOの郭文貴氏に対するインタビューの動画の掲載されたTweetを以下に掲載しておきます。


中国外交部スポークスマン陸慷の定例会見によると、昨年4月18日、北京政府は、国際刑事警察機構(INTERPOL)を通じて、米国へ逃亡中の中国の大富豪、郭文貴(別名、郭浩雲。1967年生まれ)を指名手配しました。

郭文貴氏は、平成26年(2014年)の長者番付で、個人資産155億元(約2500億円)を所有し、それでも中国では74位の富豪です。中国共産党の金まみれの闇は深いです。

郭の「爆料」は中国内外で爆発的な注目を集めていますが、その評価に対しては真っ二つに割れています。中後の若者に多い否定派は「暴露の内容はまるでスパイ小説のよう。現実離れしている。ウソも多い」「耳目を引く話やもったいぶった言い方で注目を集めているだけだ」と疑いの目を向けています。

実際、彼の暴露には不正確なものも含まれているのでしょうが、全てを虚偽と否定することは難しいです。例えば中国の大手航空会社、海南航空が王が私腹を肥やす手段になっているという暴露です。

海南航空はこれを否定しましたが、その後、経歴不詳の「神秘の投資家」が大株主にいることが判明しました。これだけでも怪しさ満点ですが、その後の展開はさらに不可思議でした。郭の暴露後、この神秘の投資家は保有株を慈善団体などに贈与したのです。その結果、中国で最も成長力のあるこの航空会社は慈善団体が筆頭株主となっているのです。

この一事をもってみてもわかるとおり、郭の暴露がすべて現実離れしているわけではないことがわかります。中国の現実こそが現実離れしているのです。

郭を批判する者は「中国に荒唐無稽な現実があるとしても、批判者までもがそれに乗っかる必要はない」と言っているようですが、では彼らは中国に何らかの変化をもたらすことはできたのでしょうか。

米国や欧州には無数の中国民主化団体がありますが、天安門事件以来約30年間、亡命した民主活動家たちは内輪で盛り上がるだけで何の成果も上げることはできませんでした。一方、郭はたった1人でこのムーブメントを作り上げたのです。

郭文貴氏にとってはTwitterも強力な武器だ
先進国の民主主義社会において、フェイクニュースを駆使するのは許されることではありません。しかし、一党独裁の強大国に立ち向かおうとする時、きれいごとだけで勝てると思うのは愚か者でしょう。

そうしてあの魯迅も「フェアプレーには早すぎる」と喝破しています。こと中国に限っては、相手がフェアな土台に乗って初めてこちらもフェアプレーをするべきと考えるのが妥当です。

郭は「習近平には反対しない、敵は王岐山だ」と言い続けてきたましたが、これも巧妙な分断工作とみるべきでしょう。ただし、昨年8月18日のネット番組で郭は新たな姿勢を示しています。すなわち、「今秋の十九大後に習近平は政治改革を行うべきだ」。もし習近平が政治改革を行わなければ、郭の矛先は習に向かう、としていました。

怪しげな暴露とゴシップを駆使して中国の体制転換を促そうとする郭文貴。果たして今後、どのような結末を迎えるのでしょう。

このように中国内外では注目の的なのに、中国の現指導部に配慮する日本のメディアは郭文貴を全く取り上げません。日本では、昨年は「もりかけ」騒動であけくれましたが、これによって結局安倍首相が関与したという物証はいまだにあがっていません。

中国の現体制の闇は、安倍首相や現政権などとは比較の対象ともならないくらい、巨大なものです。そうして、調べればそれなりの物証があがってきます。

というより、現在の中国の体制は、民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされておらず、この点から腐敗や悪がはびこるのは必然です。

私は、今や中国政府の報道するニュースソースよりも、郭文貴氏を含めた、ネットからの情報のほうがよほど正確だし、現実に即していると思います。

そうして、日本以外のメデイアはこれらも報道しています。かといって、中国政府からニュースソースを遮断されたという話はききません。

しかし、日本のマスコミは現指導部に対する配慮からでしょうか、これらをほとんど報道しません、このことからも日本のメディアはかなり偏向していることがわかります。

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2018年1月10日水曜日

仏女優C・ドヌーブさん、男性の「女性口説く権利」を擁護―【私の論評】ポリティカル・コレクトネスなどクソ食らえ(゚д゚)!


仏女優のカトリーヌ・ドヌーブさん(2017年2月14日撮影、資料写真)
フランスを代表する女優のカトリーヌ・ドヌーブ(Catherine Deneuve)さんが9日、男性には女性を「口説く自由」が認められるべきと、仏女性ら100人が連名で発表した書簡で述べた。この中でドヌーブさんらは、セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)をめぐる一連のスキャンダルによって新たな「ピューリタニズム(清教徒の思想)」に拍車がかかっていると非難した。

書簡は一連のセクハラの「告発」を嘆く内容で、ドヌーブさん他、約100人のフランス人女性作家や役者、学者らが連名で発表。仏紙ルモンド(Le Monde)に掲載された。告発の流れは、米ハリウッドの元プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)氏が、数十年にわたり性的暴行やいやがらせをしていたとの訴えがきっかけとなって起きた。

こうした告発の波を「魔女狩り」と称し、性的自由を脅かすものだと主張する書簡には、「レイプは犯罪だが、誰かを口説こうとするのは、たとえそれがしつこかったり不器用だったりしても犯罪ではないし、紳士的な男らしい攻めでも違う」「誰かの膝に触ったり唇を盗もうとした途端に、男性たちは罰されて職場を追放されている」とつづられていた。

公開書簡はまた、ハッシュタグ「#MeToo(私も)」などのソーシャルメディアのフェミニスト運動を「禁欲的な…清浄化の波」と批判しており、「女性が、特にキャリアの上で性的暴力の犠牲となったことへの合法的で必要な抗議」が魔女狩りに変わってしまっているとも指摘した。

「女性に声を上げさせようとする解放への働きかけが、今や逆に作用しており、人々に『正しく』発言することを強要し、それに同調しない人々を黙らせ、(新しい現実に)寄り添わない人を共謀者や裏切り者として位置づけている」 (c)AFP/Fiachra GIBBONS / Jessica LOPEZ

【私の論評】ポリティカル・コレクトネスなどクソ食らえ(゚д゚)!

このニュースをTwitterで知った私は、すぐに以下のようなTweetをしました。
フランスやイタリアでは、女性を口説くのは、礼儀であるともされています。フランスやイタリアで、すべての男が女性を口説かなくなったら、とんでもないことになりそうです。

そのようなことが、世界中に広まって、それが普通になってしまったとしたら、世界はとんでもないことになるでしょう。

現在の日本にそのような風潮が広まってしまえば、少子高齢化にさらに拍車がかかってとんでもないことになりそうです。

それを考えると、カトリーヌ・ドヌーブさんの主張は当然のことだと思います。カトリーヌ・ドヌーブさんというと、フランスのミュージカル有名なミュージカル「シェルブールの雨傘」で主演女優をされた方です。

すべての台詞にメロディがつけられ語りが一切無い完全なミュージカル 1964年のフランス映画です。とにかくすべてにおいて美しい映画でした。後世に残したい名作です。久しぶりに彼女の顔を見ました。そうして、面影がまだ残っていることに驚嘆しました。

以下に映画「シェルブールの雨傘」より、抜粋した動画を掲載します。


このようなフランスの「美」を代表するような大女優が、男性の「女性口説く権利」を擁護したというのですから、その影響力も大きいと思います。

世の中がおかしなことにならないように、この主張が多くの人々に理解されると良いと思います。

このポリティカル・コレクトネスという病気、最近では日本でも無縁ではなくなってきました。たとえば、以下の記事のようことがありました。
ゼロ戦展示で論議「戦争美化になる」「史実を隠すな」 愛知県が“苦肉”の暫定展示 
間近に見ることができるゼロ戦。当時の最高の技術水準がわかるが、展示にあたっては
「戦争美化につながる」と反対の声もあった=愛知県豊山町のあいち航空ミュージアム
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の開発をきっかけに航空産業の発展を期して愛知県が昨年11月、豊山町にオープンした航空博物館「あいち航空ミュージアム」に、第二次大戦時の戦闘機「ゼロ戦」の復元機が展示されました。 
展示に際しては「戦争賛美につながる」などと反対の声が出るなど議論もありましたが、かつて世界の航空界をリードした技術の結晶として暫定公開にこぎ着けました。現代の若者にも人気を集める「ゼロ戦」。訪れた人からは「史実を隠してはならない」「公開で戦争は絶対あってはならないと訴えることも大切」といった声が聞かれました。
ドイツなどでは、メッサーシュミットなどの機体を陳列することにほとんど異論はでないそうです。イギリスでもそうです。実際、第二次世界多飲中のドイツの名機であ、メッサーシュミット Me109が、英国王立空軍博物館に展示されています。それが以下の写真です。


それにしても、もし零戦展示が戦争美化と言うなら、瓶詰・缶詰、トレンチコート、ランドセルなども使用禁止を訴えるべきということになってしまいます。これらの品々は「戦争」の中で開発、使用されたものです。

瓶詰めの開発者 ニコラス・アペール

零戦展示反対派は、これをどのように捉えるのでしょうか。ちなみに瓶詰めは、19世紀、ナポレオンの軍用食保存技術の公募に応じてアペールによって発明された瓶詰を湯煎し食品を長期保存する方法です。これは、金属容器を使う缶詰のルーツでもあるのです。

瓶詰が使われるようになった当初はコルク栓で、その上から蝋を垂らすことで密封していました。後にねじ巻式の蓋が開発され、瓶詰の蓋の主流となっています。現在でも、コルク栓が使われている瓶詰は存在します。

軍用・携帯用としては重くて割れやすい事から缶詰に取って代わられましたが、家庭用としては再度蓋ができて中身が見える事、空いた瓶を転用できる事などから現在も広く用いられています。

さて、話が少しずれてしまいましたが、上で現在の日本に女性を口説くことを忌避するような風潮が広まってしまえば、少子高齢化にさらに拍車がかかってとんでもないことになりそうであることを主張しました。

そうして、これと零戦の展示への異論(すなわち戦争忌避)とは一見関係ないように見えまずか、これは多いに関係しているところがあります。

エドワード・ルトワック氏
それは、米国の戦略家であるルトワック氏の『戦争にチャンスを与えよ』という書籍を読んでいるときに感じました。

著者のエドワード・ルトワック氏はルーマニア生まれの戦略家で、本の帯にある写真を見るとムキムキのマッチョで、いかにも喧嘩が強そうな風貌です。

本書の自伝的部分を読むと、確かに喧嘩っ早いです。少年のころ入ったイタリアの学校で、発音がおかしいと言って馬鹿にしたクラスメイトをぼこぼこに殴って退学になったそうです。

移ったイギリスの学校でも同様ないきさつで暴力沙汰を起こしました。ところが、イギリスの学校は彼を退学にしませんでした。

その理由が面白いです。学校の校長は彼の両親を呼んで、こう言ったそうです。「お宅の息子さんはまだ英語がうまく喋れないようだし、授業についてこれるかどうかも分かりません。それでも彼は大丈夫です。彼は自分の世話を自分でできるからです」

方法はどうあれ、自分に降りかかった問題を自分で解決する気力と能力がある。そういう人間を評価するのがイギリス人だとすれば、そこにイギリスという国の強さがあると、筆者は考えているように見えます。

人生のマネジメントは国家のマネジメントにつながり、それはさらに国家と国家とが渡り合う戦略につながります。その戦略によって、小さな島嶼国家が大英帝国として世界に君臨したのです。

そういう世界の現実を見るとき、戦争にはそれなりの意義があると、筆者は言うのです。戦争の意味は、戦う双方が気力でも物資でも疲弊し尽くすところにあります。そこでやっと停戦に至り、戦後の復興に取り組むことができ、平和が訪れます。。

「戦争にチャンスを与えよ」とは、そういう意味なのです。

その視点から見ると、国連やNGO、米ソなどの大国が他国の戦争に介入して無理やり休戦に持ち込むのは、戦争の真の目的を達成させないばかりか、むしろ戦争状態を長引かせ、本当の平和をもたらさないので最悪だとルトワックは指摘しています。その典型が朝鮮半島だとも言えるかもしれません。

これがルトワックの論法です。極論にも思えますが、論旨は清々しいほどに明瞭です。この他にも筆者独自の戦略論が展開されますが、いずれも論旨は明瞭。「なるほど、そうか~」と唸ることも再三でした。

例えば、今の日本は北朝鮮の脅威に対して、「何もしていない」。最悪の対応をしていると指摘しています。

ルトワックによれば、国と国との関係でできることには、
① 降伏
② 先制攻撃
③ 抑止
④ 防衛
などがありますが、現状の日本はこのどれも選択していません。今の日本の北朝鮮に対する対応は、「まあ大丈夫だろう」という無責任な態度だというのです。

そう言われれば確かに、北朝鮮がミサイルを飛ばす度に日本政府は、「遺憾だ。断固抗議する」とは談話を発表するものの、実質的には上の4つのうち、どれも選択していないようです。

さらに、もう一つ、面白いと思ったのは、「男は戦いを好み、女は戦士を好む」という筆者の人間観です。

男たちが戦争を嫌うようになれば、女たちは愛すべき戦士を失い、子どもを産まなくなるとしています。

これが今、ヨーロッパをはじめ、多くの先進諸国で起こっている「少子化」現象なのです。日本も、もちろん例外ではありません。

これは一見極論のように思えますが、考えるべき点も多いです。女性はどのような男性の子どもを産みたいと思うか、ということです。

そうして、ブログ冒頭の記事おけるカトリーヌ・ドヌーブさんの男性の「女性口説く権利」を擁護するという発言は、背後にはやはりこのようなことを意識しているのではないかと私は思いたいです。

伊藤博文 1841年10月
そうして、ルトワック氏はこの書籍で、戦争が平和につながり、平和が戦争につながるとも主張しています。長い間平和が続きすぎると、それが戦争の温床となるというのです。

実際、過去の歴史を紐解いてみると、確かに平和が長く続くと、戦争が起こっています。

男が一切戦いをしなくなり、戦士がこの世から姿を消し、男は女性を口説かなくなり、女性は戦士を失い、子どもを産まなくなり、それでも平和が続くと、やがて戦争になるということなのでしょう。

そう考えると、最近の若者の草食化などを考えると、日本はこのままでは、戦争に巻き込まれるのではないかと思ってしまいます。

これは、どこかで軌道修正しないと大変なことになりそうです。まさに「ボリティカル・コレクトネスなどクソ食らえ」と言う精神が今こそ必要なのかもしれません。

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2018年1月9日火曜日

中国、印北東州で道路建設 インド側反発「インフラ整備で領有権主張する常套手段」―【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!



インドが実効支配し中国も領有権を主張する印北東部アルナチャルプラデシュ州で、中国の作業員グループがインドが主張する実効支配線を越えて道路を建設していたことが判明し、インド側が反発を強めている。歴史的に国境をめぐって摩擦が続く両国だが、インフラを整備して領有権を主張する中国の手法に反発は根強く、火種は今年もくすぶり続きそうだ。

 インド英字紙インディアン・エクスプレスなどによると、工事が発覚したのは昨年12月28日。中国人数人のグループが中国南西部チベット自治区から、同州側に1キロほど入り、重機を使って600メートルほど道路を建設していた。

 一団はインドの国境警備隊に発見されて中国側に戻ったが、立ち去った際に掘削機などをその場に残していったという。同紙はインド政府高官の「このような一方的な活動は激しく非難される」というコメントを掲載し、反発している。

 両国は昨夏に中印ブータンが国境を接するドクラム地区で、約2カ月半にわたって軍が対峙したが、発端は中国軍が道路の建設を始めたことだった。「それだけに今回の動きには敏感にならざるを得ない。インフラ整備を進めて領有権を主張するのは中国の常套手段だ」とインド紙記者は分析する。

 インド側の反発に中国側も敏感に対応した。中国外務省の耿爽報道官は3日の記者会見で、道路作業員についての言及は避けつつも、「中国はいわゆるアルナチャルプラデシュ州という存在を認めていない」と改めて強調した。中国は同州を「蔵南」(南チベット)と呼んで自国領土と主張しており、2016年には中国軍が実効支配線を越えて約45キロ侵入し、数日駐留した経緯がある。

 インドが実効支配し中国も領有権を主張する印北東部アルナチャルプラデシュ州で、中国の作業員グループがインドが主張する実効支配線を越えて道路を建設していたことが判明し、インド側が反発を強めている。歴史的に国境をめぐって摩擦が続く両国だが、インフラを整備して領有権を主張する中国の手法に反発は根強く、火種は今年もくすぶり続きそうだ。

 インド英字紙インディアン・エクスプレスなどによると、工事が発覚したのは昨年12月28日。中国人数人のグループが中国南西部チベット自治区から、同州側に1キロほど入り、重機を使って600メートルほど道路を建設していた。

 一団はインドの国境警備隊に発見されて中国側に戻ったが、立ち去った際に掘削機などをその場に残していったという。同紙はインド政府高官の「このような一方的な活動は激しく非難される」というコメントを掲載し、反発している。

 両国は昨夏に中印ブータンが国境を接するドクラム地区で、約2カ月半にわたって軍が対峙したが、発端は中国軍が道路の建設を始めたことだった。「それだけに今回の動きには敏感にならざるを得ない。インフラ整備を進めて領有権を主張するのは中国の常套手段だ」とインド紙記者は分析する。

 インド側の反発に中国側も敏感に対応した。中国外務省の耿爽報道官は3日の記者会見で、道路作業員についての言及は避けつつも、「中国はいわゆるアルナチャルプラデシュ州という存在を認めていない」と改めて強調した。中国は同州を「蔵南」(南チベット)と呼んで自国領土と主張しており、2016年には中国軍が実効支配線を越えて約45キロ侵入し、数日駐留した経緯がある。

【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!

2016年の人民解放軍によるアルナチャルプラデシュ州侵入については、このブログでもとりあげました。
孤立浮き彫りの中国 ASEAN懐柔に失敗 あの外相が1人で会見の異常事態―【私の論評】海洋戦略を改めない限り、これから中国は大失態を演じ続けることになる(゚д゚)!
中国の王毅外相
この記事は、2016年6月15日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では当時の南シナ海での中国の侵略に加えて、当時人民解放軍がインドのアルナチャルプラデシュ州に侵入していたことを掲載しました。その部分のみ以下に引用します。
インドと中国が領有権を争い、インドの実効支配下にある印北東部アルナチャルプラデシュ州に今月(一昨年6月)9日、中国人民解放軍が侵入していたことが分かりました。印国防省当局者が15日、産経新聞に明らかにしました。中国は、インドが日米両国と安全保障で連携を強めていることに反発し、軍事的圧力をかけた可能性があります。 
中国兵約250人は、州西部の東カメン地区に侵入し、約3時間滞在しました。中国兵は3月にも、中印とパキスタンが領有権を主張するカシミール地方でインドの実効支配地域に侵入し、インド軍とにらみ合いになっていました。アルナチャルプラデシュ州への侵入は、最近約3年間、ほとんど確認されていませんでした。
アルナチャルプラデシュ州 地図の赤い斜線の部分
 ドクラム地区への人民解放軍の侵入もこの記事でとりあげています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中印紛争地区、離脱合意のはずが「中国固有の領土だ」 軍駐留を継続、トンネル建設も着手か―【私の論評】この動きは人民解放軍による尖閣奪取と無関係ではない(゚д゚)!

この記事は、昨年12月3日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくもとして、一部を以下に引用します。
インド、中国、ブータンの国境付近のドクラム地区で中印両軍の対峙(たいじ)が続いた問題をめぐり、中国側が最近、「ドクラム地区は固有の領土」と改めて発言し、軍隊駐留を示唆したことが波紋を広げている。中国軍が付近でトンネル建設に着手したとの報道もあり、インド側は神経をとがらせる。双方「要員の迅速離脱」で合意したはずの対峙だが、対立の火種はくすぶり続けている。
 中国国防省の呉謙報道官は11月30日の記者会見で、ドクラム地区をめぐり、「冬には撤退するのが慣例だが、なぜ(部隊が)依然、駐留しているのか」と質問され、「中国の領土であり、われわれはこの原則に従って部隊の展開を決定する」と応じた。

中国国防省の呉謙報道官

 ドクラム地区はヒマラヤ山脈の一角に位置し、冬は積雪のため部隊配備が困難となる。中国側は現在も軍隊が駐留していることを否定せず、配置を継続させることを示唆した格好だ。 
 発言にインドメディアは反応し、PTI通信は「中国が軍隊を維持することを示唆」と呉氏の発言を報じた。中国側の動きに敏感になっていることがうかがえる。 
 ドクラム地区では、中国軍が道路建設に着手したことを契機に6月下旬から中印両軍のにらみ合いが発生。8月28日に「対峙地点での国境要員の迅速な離脱が合意された」と宣言され、事態は収束したかのように見えた。
この中国のやり方、本格的な衝突にまではならないように、すこしずつ国境をずらしているようなものです。南シナ海でも、最初は人一人がようやっと、上陸できるようなところに掘っ立て小屋を立て、人一人を交代で常駐させるようにして、中国の占拠がはじまりました。

あれから、何十年もたって、今では環礁が埋め立てられ、港はもちろんのこと空港まで整備している有様です。

この戦術何やら、どこかで聴いた話と似ています。それは、バス停をずらした婆さんの話です。以下にその話を掲載します。

むかしむかし、小さな駄菓子屋を一人できりもりしているばあさんがいました。その駄菓子屋は広い道路に面していて近くに中学校もあったのですが、売り上げは思わしくなくばあさんは質素な暮らしを強いられていました。 
その中学校は田舎の中学校のため、バスで通学している学生も多かったのです。バス停はばあさんの店から十メートルほど離れたところにあり、登下校の時間になると学生たちで賑わっています。あの学生たちが店に来てくれれば……。そう考えたばあさんは一計を案じました。その日から、毎日夜になるとこっそりとバス停を店の方向に動かしたのです。バレないように、一日に五ミリずつ。 
そして数年後。バス停はばあさんの店の真ん前に移動し、店はバス待ちの学生たちで賑わうようになった、といいます。 
この話は、本当なのかどうかはわかりませんが、何かを一気に動かすと多くの人々に気付かれるのですが毎日少しずつ動かしていると意外とバレないものなのです。カツラも同じです。ある日突然、急激に髪の毛が増えるとこれは絶対にカツラだとバレます。だから少しずつ植毛していき、不自然にならないように増やしていくのです。

それはともかく、この現象はやはり人間の認識能力の盲点を突いたものでしょう。大脳の空間識野は、特に急激な変化、すなわち微分情報を抽出するように働きます。それゆえ、微分量が少ない緩やかな変化は認識されにくくなっているのです。

なぜこのような働きをするようになったのかは、進化論で簡単に説明がつきます。ある動物の認識する外界は、動くものと動かないものに大別されます。動かないものというのは、大地・山・樹木などです。これらはその動物にとって、友好的ではないが敵対的でもありません。中立なのです。ゆえに、特殊な場合をのぞいてはこれらの動かないものに注意する必要はないです。

これに対して動くものは要注意です。動くものは、さらに三種類に分けられます。すなわち、敵・餌・同種の異性です。敵からは逃げねばならぬし、餌と同種の異性は追いかけねばならないです。これらを素早く発見することは、生きていくためには重要な能力です。したがって、動くもの、すなわち微分量が大きいものを認識する能力が進化の過程で身についたのでしょう。



これと、似たような話で、「サラミ戦術」というのがあります。サラミ戦術(サラミせんじゅつ、ハンガリー語: szalámitaktika [ˈsɒlɑ̈ːmitɒktikɒ] サラーミタクティカ)とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。


ロバート・ハディック米特殊作戦司令部の契約要員が、2014年11月24日付のナショナル・インタレスト誌に、「中国のサラミ戦術に対抗する6つの方策」という論説を寄せています。
ロバート・ハディック氏

戦争の理由になるには小さすぎる行動も、積み重なると、相当な戦略的変化になります。この中国のサラミを切るような戦術に対抗するには、ハディック次の6つのことをすべきであるとしています。
第1:東・南シナ海での漁船団を拡大すること。中国の民間船舶プレゼンスに対抗し、国家安全保障上の優先事項として漁船団を拡大すべきである。これは法執行および沿岸警備の船舶(白塗りの船舶)のプレゼンスも正当化する。 
第2:海洋での法執行と沿岸警備の能力、プレゼンスを拡大すべきである。各国は軍艦よりも非軍事的な船舶(白塗り船舶)に予算を回すことで、より速く能力改善を達成し得る。中期的には中国の海軍の能力増強に隣国は対抗しえない。しかし白塗り船舶での競争はより有利に行える。 
第3:米国と同盟・パートナー国の海洋当局(軍も含む)は情報交換、将校交流、多数国間訓練を拡大すべきである。これは低コストの能力向上になる。 
第4:米国などは、即時情報共有システムを樹立すべきである。事件の時の対応に役立つ。 
第5:米国と同盟・パートナー国の政策・企画担当者は多数国間の危機対応の準備をすべきである。 
第6:地域の関心国をこの構想に加わるように招請し、この構想への国際的支持を広めるべきである。
この対抗策というのも、悪くはないとは思いますが、これではあの傍若無人な中国に対しては不十分だと思います。ただし、ロバート・ハディック氏は、中国がいわゆる「サラミ戦術」を用いているということを多くに人々に認識させたという点で、大きく貢献したと思います。そうして、中国は南シナ海でも、尖閣でも、中印国境でもこのような戦略をとっています。

私はサラミ戦略に対しては、「逆サラミ戦略」という戦略を採用すべきだと思います。 それは、さきほどのバス停を動かした婆さんのたとえでいえば、バス停が動いたと認識した段階で、それを元に戻すのです。元に戻すにしても、いきなり元の位置に戻すというのではなく、これも一度に5mm程度を戻すのです。

これは、婆さんが毎日5mm動かしているとすると、ある時点で、婆さんが日々5mm移動しても、バス停は全く動かなくなることを意味します。そうすると婆さんは、動かしても無駄だと思うようになり、諦めてしまいます。

諦めた後でも、毎日5mmずつ動かすのです。そうして、元の場所に戻ったら動かすのをやめるのです。このやり方を「逆サラミ戦略」とでも名付けたいと思います。

ただし、現実にはバス停とは異なるので、もっと複雑なものになるでしょう。尖閣であれば、最初は尖閣諸島に何らかの理由をつけて、とにかく人を常駐させるようにします。次の段階では、少人数の武装兵力を常駐させるようにします。

そうして、最終的に尖閣を要塞化するのですが、要塞化するまでに20年〜30年かけるようにするのです。尖閣諸島付近の海域にも、自衛隊の艦艇や空母が日々往来するようにしますが、そうなるまでにやはり、数十年の年月をかけるのです。そうこうしているうちに、中国は尖閣を諦めることでしょう。諦めなければ、本格的な武力衝突になりますが、そうなったら、それでやむを得ないという精神で望めば良いのです。

そのときは、尖閣を日々往来する艦艇、空母、尖閣の要塞が一気に火蓋をきり、尖閣付近の中国軍を一掃すれば良いだけのことです。しかし、こうした覚悟は中国にも事前に十分に伝わることでしょう。いままで、他国にそのようなことをされたことがないので、中国は思い違いをしてきたものと思います。そうして、オバマの戦略的忍耐がこれに拍車をかけたのです。



ブログ冒頭の記事の事例では、アルナチャルプラデシュ州で、中国の作業員グループがインドが主張する実効支配線を越えて道路を建設したという事例では、掘削機など捕獲し、道路は破壊し、今度は逆に中国領に数百メートルインド側が中国領内に進み、その地点に掘削機を置くようにします。

中国側が何も言ってこなければ、インド側はそこに居座りつづます。中国側がクレームを言ってくれば、削岩機をそこに残して、元の国境線内に戻すようにします。このようなことを繰り返し、中国側が1mmもインド側に入ってこれないようします。

南シナ海の場合は、中国の環礁を多数の艦艇で取り囲み、燃料・食料・水などを補給できないようします。その場合、中国側の平和的な撤退は許すようにします。その後は、米国や近隣諸国が中国の環礁を共同管理し、破壊するなり、軍事基地として使うなりします。

ただし、こうしたことをするにしても、あくまでもサラミ戦術で数十年かけて行うようにします。オバマの戦力的忍耐を元に戻すには、これくらい長い年数をかける必要があります。ただし、諸状況が好転すれば、その時点では速度をはやめるべきですが、基本はあくまで逆サラミにすべきです。

とにかく、中国が今後も国境線を破るようなことをすれば、このようにすべて逆サラミ戦術で押し返すのです。それも、日米印露豪、ASEAN諸国すべてが合同でこれを行うのです。

この中で、露はすでに、中国と国境問題を解決ずみです。ソ連時代には国境紛争がありました。しかし、2004年、中国とロシアは国境問題を最終決着させ、国境河川の中州である黒瞎子島/大ウスリー島・タラバロフ島の半分などが中国に引き渡されました。

中露の国境紛争は、さかのぼれば17世紀から存在し、たび重なる武力衝突をも引き起こしてきました。にもかかわらず、最後は“交渉”によって決着するという、きわめて珍しいケースとなっています。これについては、本日述べると長くなるので、いずれ日を改めてまた掲載しようと思います。

大規模紛争や本格的戦争にならずに、中国の野望を完璧に打ち砕くには、このようなやり方が有効だと思います。

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