2018年1月28日日曜日

トランプ大統領がTPP復帰検討「有利な条件なら」 完全否定から大転換した理由―【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!


ダボス会議で演説したトランプ大統領は、「米国でビジネスを行うには最良の時期だ」と訴えた
 ドナルド・トランプ米大統領は、米CNBCテレビのインタビューで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への復帰を検討する用意があると表明した。復帰を完全否定していた従来の政権方針を大転換する発言といえる。米国の復帰が実現すれば、アジア太平洋地域をカバーする貿易・投資ルール確立という、TPPの本来の目的が達成されそうだ。

 「米国にとってより有利な条件になるならば、TPPをやる」

 トランプ氏は25日、スイス・ダボスで行われたインタビューでこう語った。トランプ氏がTPP復帰に言及したのは初めて。復帰を検討する具体的な条件には言及しなかった。

 トランプ氏は大統領就任直後の昨年1月、TPPから永久に離脱するとの大統領令に署名した。通商政策では2国間交渉を重視し、日本とは自由貿易協定(FTA)も視野に経済対話を始めた。

 通商政策の柱とする2国間交渉が思うように進まないなか、米国を除くTPP参加11カ国が新協定に合意し、早ければ2019年に発効する見通しになったことが、復帰検討の背景にあるとみられる。

 ただ、トランプ氏は「現在のTPPはひどい協定だ」と従来の認識を改めて強調し、離脱を決めた昨年の政権の判断を肯定した。

 TPPを推進する安倍晋三政権としては、米国の再加入に向け、関係が良好なトランプ政権への働きかけを強める方針だ。

 トランプ政権はこれまで、TPPや、気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」などの多国間協定に敵対的な姿勢を示してきた。ところが、トランプ氏は今月中旬、パリ協定についても「ことによっては復帰も考えられる」と復帰の可能性に言及していた。

 トランプ氏は現在、スイスでの世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加している。

【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!

TPPといえば、ひところTPP芸人と呼ばれる「TPPに加入すれば日本は完璧に米国の属国になる」という極論を吐く一団がいました。

そもそも、TPPとは何かといえば、通商交渉です。戦後の通商交渉の歴史を少しでもかじれば、どういう流れかわかるはずですが、なぜかこれら芸人たちは大騒ぎを繰り返しました。私も、一時この大騒ぎに取り込まれそうになりました。

そうして、これらの芸人たちは、トランプ氏が大統領になった直後TPPから離脱することを公表して以来誰も信用しなくなりました。

TPP芸人らによれば、TPPはアメリカが日本を再占領する亡国最終兵器だったはずです。

一時期、善良な人の無知に付け込み、恐怖で人を煽る「TPP商法」がかなり流行っていました。
不可思議なTPP芸人の主張
TPP芸人の主張は、「TPPは日本の国体を破壊する」、「TPPに交渉参加を表明した瞬間、日本は抜けられなくなりアメリカの言いなりになる」、「TPPにはISD条項と言う恐ろしい条項があり、関税自主権が無くなる」等など、とてつもないデマを飛ばしていました。
TPPなどという国際的な行政問題などに普通の人間が関心を持つはずもないですし、その実体についても知らないのが当たり前です。TPP芸人どもが悪徳商法として成功したのは、単なるマイナー問題を、さも国際政治的な大問題の如く信じ込ませたという一点につきると思います。
その人たち、今はどんな言論をしているのでしょうか。涼しい顔をして、何もなかったような顔をしています。

私は、TPPに関してはこのブログにはあまりとりあげませんでした、というのも反対論者の語ることが胡散臭いと思ったからです。

通商交渉の歴史をたどれば、TPPのような交渉は賛成の立場の側が通すのに苦労する条約だからです。にもかかわらず、反対派はすべての戦力をTPP反対に注げと煽っていました。

この有様は、戦前、「英米の世界支配に対抗せよ」と言いながら、ソ連の存在を華麗にスルーした偽装転向右翼と同じような臭いを感じさせました。

戦前日本にはスターリンのソ連を華麗にスルーした偽装転向右翼が存在した
TPPは成長市場であるアジア地域で遅れていた知的財産保護などのルールを作りました。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れました。TPPが棚上げとなれば各国の国内改革の動きも止まってしまうことになります。

TPP合意を機に、日本の地方の中小企業や農業関係者の海外市場への関心は高まっていました。電子商取引の信頼性を確保するルールなどは中小企業などの海外展開を後押しするものです。日の目を見ないで放置しておくのは、本当に勿体無いです。

さて、米国が離脱したままTPP11が発効して、それに対して中国が入りたいという要望を持つことは十分に考えられます。

ただし、中国はすぐにTPPに加入させるわけにはいかないでしょう。中国が加入するには、現状のように国内でのブラックな産業構造を転換させなければ、それこそトランプ氏が主張するようにブラック産業によって虐げられた労働者の労働による不当に安い製品が米国に輸入されているように、TPP加盟国に輸入されることとなり、そもそも自由貿易など成り立たなくなります。


このあたりのことを理解したため、トランプ大統領は、TPPに入ることを決心するかもしれません。そもそも、政治家としての経験のないトランプ大統領は、これを理解していなかっただけかもしれません。だからこそ、完全否定から大転換したのかもしれません。

そうして、これを理解して、それが米国の利益にもなると理解すれば、意外とすんなり加入するかもしれません。

中国がどうしても、TPPに参加したいというのなら、社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れたのと同じように、中国国内の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないでしょう。

それによって、中国自体の構造改革が進むことになります。こうして、TPPにより、中国の体制を変えることにもつなげることも可能です。

しかし、改革を実行しない限りTPPは中国抜きで、自由貿易を進めることになり、結果として環太平洋地域において、中国包囲網ができあがることになります。

大統領に就任した直後のトランプ大統領は、このような可能性を見ることができなかったのでしょう。しかし、最近はその可能性に目覚め、完全否定から大転換したのでしょう。

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