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2018年9月9日日曜日

南シナ海でイギリス海軍揚陸艦「アルビオン」航行…米国主導の「中国包囲網」に英参戦か―【私の論評】日米英同盟と、中国の対立はシーパワーとランドパワーとの必然的なせめぎ合い(゚д゚)!

南シナ海でイギリス海軍揚陸艦「アルビオン」航行…米国主導の「中国包囲網」に英参戦か

8月3日晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 南シナ海での軍事的覇権を強める中国に対し、国際的圧力が強まっている。中国が一方的に領有権を主張する南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で、英海軍が最近、揚陸艦「アルビオン」を航行させたのだ。ドナルド・トランプ米政権は南シナ海で「航行の自由」作戦を展開し、「中国包囲網」を強化している。英国の動きは対中包囲網に参戦するサインなのか。

 アルビオンの行動は6日、ロイター通信が関係筋2人の話として報じた。同艦は、地上部隊を洋上から上陸用舟艇やヘリコプターを使って展開させる揚陸艦。国連安保理決議に基づき、北朝鮮の密貿易「瀬取り」を阻止するため、5月から極東展開していた。

 記事によると、アルビオンは日本周辺での活動を終え、ベトナムのホーチミンに向かう途中、パラセル諸島近くを航行し、3日にホーチミンに到着した。関係筋は、中国が警告のため、フリゲート艦1隻とヘリコプター2機を派遣したと明らかにした。

 英海軍報道官は「アルビオンは国際法・規範に完全にのっとり、『航行の自由』について権利を行使した」と説明したが、中国は反発を強めている。

 中国外務省の華春瑩報道官は6日の記者会見で、「中国の主権を侵害する行為であり、断固として反対する」と述べた。

中国外務省の華春瑩報道官

 習近平国家主席は2015年10月、英国を公式訪問した。この際の高圧的な態度に、英国内で中国への批判が高まったとされる。

 英国の狙いについて、国際政治学者の藤井厳喜氏は「現在のメイ英政権は、中国にべったりだった前のキャメロン政権に比べると、少し距離を取るようになっている。英国は世界中に小さな領土があるため、『航行の自由』という問題については米国寄りのスタンスを取り、中国に『国際法を守れ』という圧力をかけているのではないか」と解説する。

 昨年から、日英防衛協力は確実に進んでいる。2020年までには、英空母「クイーン・エリザベス」の太平洋展開も予定されている。米国主導の「中国包囲網」に英国も加わるのか。

【私の論評】日米英同盟と、中国の対立はシーパワーとランドパワーとの必然的なせめぎ合い(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、藤井厳喜氏が「英国は世界中に小さな領土がある」と述べていましたが、実際どの程度あるのか以下に地図を掲載します。


上の地図で赤い部分が、イギリスの海外領土、緑はイギリス本国、青はイギリスの王室属領です。全部が島嶼です。太平洋にはイギリス領はありません。

太平洋にはイギリスの領土がないにも関わらず、イギリスは、わざわざ揚陸艦を航行させたわけですから、やはり『航行の自由』を守れという無言の圧力を中国にかけるためであったと判断するのが妥当だと思います。

以前このブログでも述べたように、日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒していますし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのす。

また、日英はともに米国の重要な戦略的パートナーです。日英はそれぞれ米国と深い同盟関係で結ばれ、情報や軍事、外交などあらゆる分野で深い協力関係にあります。つまり、日英が今、同盟関係に進もうとするのは歴史の偶然ではなく、地政学的な必然です。

日本と英国は事実上すでに同盟関係にあります。その同盟関係にあるイギリスが今回南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で、揚陸艦「アルビオン」を航行させたことには、大きな意義があります。

日米はともに英国と同盟関係にあります。これは事実上日米英の同盟が出来上がってると言っても良いです。

現在の世界情勢は第二次世界大戦直前の様相を呈しています。つまり英を軸としたシーパワー同盟側に味方するのか、それともドイツを中心とするランドパワー側につくかという状況に似てきたということです。

国の構成は違いながら、シーパワーかランドパワーに別れているということでは、非常に似ています。

現在のシーパワー側は、まずは日米英が同盟を結んでいます。ランドパワーは中国です。ロシアは、日米が味方に引きずり込もうとしています。米露首脳会談で、すでにロシアはシーパワー側についたという見方もあります。

ドイツは、元々はランドパワーの国であったためか、つい最近までは、中国に接近していましたが、今後どうなるかはわからない状況です。ただし、ドイツがシーパワー側に完璧に離反し、中国と軍事同盟を結ぶことはないと考えられます。

英国はEU離脱で、ドイツ欧州大陸側にはつかず日本と米国を選びました。昨年、英国首相が、日本国にやってきて、安倍総理と会談し、実質的に日英は実質的に同盟関係に入りました。南シナ海に英国空母の派遣は、この同盟関係に基づくものです。

さて、大東亜戦争直前の日本は、シーパワーの国出会ったにも関わらず、ランドパワー側のドイツについて、結局敗北しました。

今回は、シーパワーである日米英同盟の結束をさらに深め、さらにロシア・フランスなどのランドパワーの国々も味方につけ、ランドパワーからシーパワーの国になろうとする中国を完全に封じ込め弱体化させていくべきでしょう。

ただし、シーパワーとランドパワーは地理的条件で決まってしまうかといえば、そうではありません。そもそも、シーパワーはランドパワーの上位互換です。

アメリカは本来陸軍国でしたし、日本もそうでした。ランドパワー国家が資本を蓄積して海軍を充実させ得た状態がシーパワーなのです。

かつてのソ連、現在のロシアは、結局現在の中国の航空母艦「遼寧」の原型である空母しかつくれなかったことが象徴するように、ランドパワーの国からシーパワーの国になることはできませんでした。

現在は中国がそれを目指して努力を続けています。シーパワー国家は海軍より先に、他国に比し突出した資本が存在しています。中国はそうなれるかどうかは、現在は定かではありません。

もし、中国がシーパワーの国になったとすれば、これは中国が主張していたように、世界の半分を支配する覇権国家になるかもしれません。

そうなれば、日本の北海道の釧路は、中国の一帯一路の拠点港とされることになるかもしれません。釧路からどこへ向かうかと言えば、北極海を通過して、欧州大陸へ向かい、ランドパワーとしての中国と、ランドパワーの欧州大陸を結びつけ世界の半分を支配することになるのです。

現在のシーパワーの国々である、日米英はとてもそのようなことは、許容できるものではありません。中国が新たなシーパワー国になることを阻止し、ロシアのように、ランドパワーの国から一歩も出られないようにするため、日米英が同盟関係になり、中国を囲い込もうとするのは、当然といえば当然です。

日米英同盟と、中国の対立はシーパワー国と将来シーパワー国になろうとするランドパワー国である中国との必然的なせめぎ合いなのです。このあたりを理解しておかないと、世界情勢は理解できないでしょう。

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2018年1月28日日曜日

トランプ大統領がTPP復帰検討「有利な条件なら」 完全否定から大転換した理由―【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!


ダボス会議で演説したトランプ大統領は、「米国でビジネスを行うには最良の時期だ」と訴えた
 ドナルド・トランプ米大統領は、米CNBCテレビのインタビューで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への復帰を検討する用意があると表明した。復帰を完全否定していた従来の政権方針を大転換する発言といえる。米国の復帰が実現すれば、アジア太平洋地域をカバーする貿易・投資ルール確立という、TPPの本来の目的が達成されそうだ。

 「米国にとってより有利な条件になるならば、TPPをやる」

 トランプ氏は25日、スイス・ダボスで行われたインタビューでこう語った。トランプ氏がTPP復帰に言及したのは初めて。復帰を検討する具体的な条件には言及しなかった。

 トランプ氏は大統領就任直後の昨年1月、TPPから永久に離脱するとの大統領令に署名した。通商政策では2国間交渉を重視し、日本とは自由貿易協定(FTA)も視野に経済対話を始めた。

 通商政策の柱とする2国間交渉が思うように進まないなか、米国を除くTPP参加11カ国が新協定に合意し、早ければ2019年に発効する見通しになったことが、復帰検討の背景にあるとみられる。

 ただ、トランプ氏は「現在のTPPはひどい協定だ」と従来の認識を改めて強調し、離脱を決めた昨年の政権の判断を肯定した。

 TPPを推進する安倍晋三政権としては、米国の再加入に向け、関係が良好なトランプ政権への働きかけを強める方針だ。

 トランプ政権はこれまで、TPPや、気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」などの多国間協定に敵対的な姿勢を示してきた。ところが、トランプ氏は今月中旬、パリ協定についても「ことによっては復帰も考えられる」と復帰の可能性に言及していた。

 トランプ氏は現在、スイスでの世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加している。

【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!

TPPといえば、ひところTPP芸人と呼ばれる「TPPに加入すれば日本は完璧に米国の属国になる」という極論を吐く一団がいました。

そもそも、TPPとは何かといえば、通商交渉です。戦後の通商交渉の歴史を少しでもかじれば、どういう流れかわかるはずですが、なぜかこれら芸人たちは大騒ぎを繰り返しました。私も、一時この大騒ぎに取り込まれそうになりました。

そうして、これらの芸人たちは、トランプ氏が大統領になった直後TPPから離脱することを公表して以来誰も信用しなくなりました。

TPP芸人らによれば、TPPはアメリカが日本を再占領する亡国最終兵器だったはずです。

一時期、善良な人の無知に付け込み、恐怖で人を煽る「TPP商法」がかなり流行っていました。
不可思議なTPP芸人の主張
TPP芸人の主張は、「TPPは日本の国体を破壊する」、「TPPに交渉参加を表明した瞬間、日本は抜けられなくなりアメリカの言いなりになる」、「TPPにはISD条項と言う恐ろしい条項があり、関税自主権が無くなる」等など、とてつもないデマを飛ばしていました。
TPPなどという国際的な行政問題などに普通の人間が関心を持つはずもないですし、その実体についても知らないのが当たり前です。TPP芸人どもが悪徳商法として成功したのは、単なるマイナー問題を、さも国際政治的な大問題の如く信じ込ませたという一点につきると思います。
その人たち、今はどんな言論をしているのでしょうか。涼しい顔をして、何もなかったような顔をしています。

私は、TPPに関してはこのブログにはあまりとりあげませんでした、というのも反対論者の語ることが胡散臭いと思ったからです。

通商交渉の歴史をたどれば、TPPのような交渉は賛成の立場の側が通すのに苦労する条約だからです。にもかかわらず、反対派はすべての戦力をTPP反対に注げと煽っていました。

この有様は、戦前、「英米の世界支配に対抗せよ」と言いながら、ソ連の存在を華麗にスルーした偽装転向右翼と同じような臭いを感じさせました。

戦前日本にはスターリンのソ連を華麗にスルーした偽装転向右翼が存在した
TPPは成長市場であるアジア地域で遅れていた知的財産保護などのルールを作りました。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れました。TPPが棚上げとなれば各国の国内改革の動きも止まってしまうことになります。

TPP合意を機に、日本の地方の中小企業や農業関係者の海外市場への関心は高まっていました。電子商取引の信頼性を確保するルールなどは中小企業などの海外展開を後押しするものです。日の目を見ないで放置しておくのは、本当に勿体無いです。

さて、米国が離脱したままTPP11が発効して、それに対して中国が入りたいという要望を持つことは十分に考えられます。

ただし、中国はすぐにTPPに加入させるわけにはいかないでしょう。中国が加入するには、現状のように国内でのブラックな産業構造を転換させなければ、それこそトランプ氏が主張するようにブラック産業によって虐げられた労働者の労働による不当に安い製品が米国に輸入されているように、TPP加盟国に輸入されることとなり、そもそも自由貿易など成り立たなくなります。


このあたりのことを理解したため、トランプ大統領は、TPPに入ることを決心するかもしれません。そもそも、政治家としての経験のないトランプ大統領は、これを理解していなかっただけかもしれません。だからこそ、完全否定から大転換したのかもしれません。

そうして、これを理解して、それが米国の利益にもなると理解すれば、意外とすんなり加入するかもしれません。

中国がどうしても、TPPに参加したいというのなら、社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れたのと同じように、中国国内の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないでしょう。

それによって、中国自体の構造改革が進むことになります。こうして、TPPにより、中国の体制を変えることにもつなげることも可能です。

しかし、改革を実行しない限りTPPは中国抜きで、自由貿易を進めることになり、結果として環太平洋地域において、中国包囲網ができあがることになります。

大統領に就任した直後のトランプ大統領は、このような可能性を見ることができなかったのでしょう。しかし、最近はその可能性に目覚め、完全否定から大転換したのでしょう。

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2014年5月13日火曜日

上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!

上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」


経済評論家の上念司氏は、南シナ海(南沙諸島、西沙諸島)で軍事的圧力を強めている中国に対抗するには、中国に接しているトルコやモンゴルなどの陸の国を経済的に支援して発展させることが解説しています。

上念司氏は、現在はベトナムやフィリピンが主導してASEANの海洋国家で対中国包囲網を敷いていますがそれではまだ不足で、日本は地政学を利用しランドパワーの国に支援して発展させれそれだけ軍事費に使える予算が増えるため、中国に対する圧力が増えて海に出てくる力を弱めることができると説明しています。

【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!

上の上念氏の動画でも言っているように、確かにソ連が崩壊してロシアになって以来、中国を取りまくランドパワーは格段に落ちて、それが中国の海洋進出に拍車をかけているのは事実です。

特に冷戦崩壊後のロシアの弱体ぶりに関しては、このブログにも以前掲載しました。そのURLを以下に掲載します。
旧ソ連と同じ罠にはまった中国、米国の仕掛けた軍拡競争で体力消耗―露メディア―【私の論評】ロシアの弱体化を吐露する記事、中国を封じ込めることと引き換えにロシアとの領土交渉を!!
現在、ロシアのGDPは日本の3分の1以下なのです。日露戦争の頃は、ロシアのGDPは日本の8倍でした。100年間(正確には80年間)で日露の国力は大逆転したのです。


 2010年各国のGDP
1.アメリカ
2、中国
3.日本   5兆4500億ドル
4、ドイツ
5、フランス
6、イギリス
7、ブラジル
8、イタリア
9、カナダ
10、インド

・ ロシア  1兆4650億ドル
こんな国が、アメリカなみの、ミサイル防衛網など、構築できるわけがありません。それから、中国が世界第二位の経済大国になったのは、日本のおかげでもあります。それは、このブログに、何回か掲載してきたことですが、日銀が、いつまでも、執拗に増刷拒否など金融引締めをするものですから、固定相場制の中国は、自国の元を好きなだけ、擦りまししても、日本の円が担保となり、インフレを免れてきたということです。しかし、それも、最近では、効き目がなくなりつつあります。日本銀行がまともになったら、中国は、あっという間に、経済大国の座からすべり落ちることでしょう。
ロシアの弱体化は明らかです。現状の小国ロシアに、領土問題などで譲歩する必要など全くありません。日本は、日本銀行に金融引締めをやめさせ、円高誘導をやめさせ、また、世界第二位の経済大国に返り咲くべきです。それに、いますぐするしないは、別にして、核武装の論議をはじめるべきです。それだけで、ロシア、中国、北朝鮮はかなり脅威に感じることでしょう。
こうしたことを背景にして、日本は、弱体化が明らかになった、ロシアと領土交渉を有利にすすめるべきです。そうして、これは、他国ならどこの国でもやっていることです。日本だけができないとか、やってはいけないなどということはないはずです。そのためにも、一日でもはやく、新たな憲法を制定すべぎではありますが、今の日本国憲法の範囲でもできることは、すぐにも実行すべきと思うのは、私だけでしょうか? 
ロシアは、人口も少なくなりました。現在のロシアの人口は、1億4千万人です。これは、現在の日本の人口1億2千万よりわずかに多い程度です。

ソ連崩壊以来、いくつかの国が分離したとはいえ、その広大な領土にわずか、1億4千万人の人口です。ロシアは多民族国家なので、支配階級である、ロシア人は、日本人と同程度の状況です。さらに、国境の溶解現象も起こっています。

かつての中ソ国境紛争の係争地だった黒瞎子島は今では観光地になっている

国境の溶解現象とは、中ロ国境を中国人が多数超えてロシア領内に入り、様々経済活動をしているため国境そのものが曖昧になっていることをさします。

黒竜江とウスリー江を挟んだ対岸は、中国有数の農業地帯であり、 渤海、金以来のさまざまな民族の興亡の地として歴史に残る遺跡も多いです。 わずかに川ひとつ隔てただけで、一方は衣食を外からの供給に仰ぎつつ資源を略奪しつづけ、 年々人口を減らしつづけているシベリアであり、一方は年々人口を急増させつつある 黒龍江省です。

ロシア側の、全シベリアの人口を総和しても、数十分の一の面積しかない黒龍江省の半分にしかならないのです。この救いがたい落差は、 つまるところ社会的な圧力になります。ソ連政府はだからこそ国境地帯に厳しい軍事的な緊張を 作り出すことによって、中国からの圧力に対抗していたといえるでしょう。

 国境を挟んだ中国側の吉林省、遼寧省と北朝鮮、 内モンゴル自治区とモンゴル、新彊とカザフスタンおよびウズベキスタン、中国の雲南省とミャンマー、 中国の広東省とベトナムなどを比較してみると、常に面積の少ない中国側の各省が人口ではるかに勝っていることがわかります。

 この明白な不均衡こそが、国境を超えて大量の中国人が流出あるいは進出しつつある 根本的な原因です。この点から言えば、シベリアも例外ではないばかりではなく、 最も典型的なものです。ソ連の軍事的圧力が解消し、 国境貿易が開始されたことは、この過程を一気に促進させました。


中越国境の橋

 ソ連の崩壊によってシベリアのロシア人社会は、直ちに危機に陥いりました。 政府は給与を支払うことができず、多くの労働者が引き上げていきました。 シベリアに市場はなく、シベリア鉄道もいたるところで寸断されようとしていました。 だから、中国からの輸入が不可欠のものとなりましたが、一方で中国に売り渡すものを シベリアのロシア人社会は何も持っていませんでした。その結果、 中国人がシベリアに入り込んできて、役に立つものを探し出し、作り出してゆくしかなくなりました。

こうして、国境溶解が進んていきました。この国境溶解は、無論中国にとっては、軍事的脅威がなくなったことを意味します。

特に現在のロシアは、ご存知のようにウクラナイ問題を抱えており、中ロ国境にソ連時代のように大規模な軍隊を駐留させておけるような余裕はありません。

かつてのソ連の脅威がなくなったどころか、国境溶解でロシア領内にまで浸透できるようになった中国は、この方面での軍事的脅威は全くなくなったということです。

各地で軍事的な脅威がなくなった中国は、これら国境地帯にかつのように大規模な軍隊を派遣する必要もなくなり、従来から比較すると経済的にも恵まれてきたため、海洋進出を開始刷るだけの余裕を持ち、実際に海洋進出を始めました。

中国に国境を接する国々である、ロシア、ベトナム、モンゴル、インド、トルコなどが、経済発展をして軍事的にも余裕ができ、中国に対峙することが可能になれば、中国はこれらの国々の脅威から自分を守るために、国境に軍隊を派遣セざるを得なくなり、海洋進出などしている余裕はなくなります。

昨年インドは中印国境の警備兵を5万人増兵
日本としては、これらの国々に経済援助や、技術援助、軍事援助などしてこれらの国々のランドパワーを強化することにより、中国の海洋進出の夢と野望を打ち砕くことができます。そうして、日本はデフレさえ脱却できれば、そのような支援を実施することは十分に可能です。

こんなことを考えると、安全保障のことを考えても、デフレからの脱却を遠のかせるような、消費税増税などやっている場合ではないのです。いますぐにでも、消費税増税の悪影響食い止めるためにも、公共工事の供給制約がある現在、政府はすぐにでも、所得税減税、給付政策を行うべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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