2019年11月30日土曜日

【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応―【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!

【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応

テレビで報道されたゲオルギエワIMF専務理事の声明

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」との見解を示した。

 こうした発言については日本の財務省の影響が大きいことはこれまでにも本コラムに書いてきたが、この時期に出てくる背景は何だろうか。

 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わせたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見した。

 対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策について政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。

 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧を使ってでも消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシもある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとなる。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。

 なお、日本のマスコミが「ワシントン発」としてIMFのニュースを流すときは、IMF理事室がソースであることが多い。そこでは財務省からの日本人出向者が勤務しており、日本語で対応してくれるので、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されている。

 今回の専務理事の発言も財務省からのレクの結果だろうが、今は補正予算で「真水」10兆円という意見が、自民党と公明党から出ている。

財務省からレクを受ける共産党議員団ら

 自然災害が相次ぎ、予備費の枠では抜本的な対応ができないことも理由の一つだが、本コラムでも指摘したように国土交通省の公共投資の採択基準が時代に合わなくなっていることもある。つまり、公共投資の費用便益基準の算出に必要な将来割引率が4%と高すぎるのだ。これを15年も見直さなかった国交省の怠慢もある。この見直しが大型補正予算を後押ししている。

 市場金利はマイナスなので、絶好の将来投資機会という主張に財務省は防戦一方だ。冒頭のようなIMF専務理事の発言を利用したいと思っても不思議ではない。さらに、補正予算は今の臨時国会ではなく、年明けの通常国会冒頭という時間延ばし戦術もありだ。後は、来年度予算との取引で沈静化を図るのだろう。

 もっとも、来年の通常国会冒頭での補正予算は、安倍晋三政権にとっては衆院解散の絶好の口実にもなりうるので、財務省の対応は政治的には絶妙だといえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!

冒頭の記事で高橋洋一氏の結論部分の「もっとも、来年の通常国会冒頭での補正予算は、安倍晋三政権にとっては衆院解散の絶好の口実にもなりうるので、財務省の対応は政治的には絶妙だといえる」という結論は非常に興味ぶかいです。

高橋洋一氏は、年内の解散はないと見ているということだと思います。あるとすれば、来年の通常国会の冒頭であるとみているということです。

では、実際衆院の解散はあるのでしょうか。

公明党の山口那津男代表は27日、東京都内で講演し、年内や来年1月の通常国会冒頭での衆院解散に否定的な見方を示しました。12月に中国で予定される日中韓首脳会談をはじめとする外交日程を挙げて「重要な外交課題がめじろ押しだ。すっぽかして解散というわけにはいかない」と述べました。

開催国・チリの治安悪化で中止となった今月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を代替地で開催する可能性にも触れて「時期は予測がつかないが、日本の都合だけでは解散しにくい」と指摘しました。

山口氏は憲法改正論議を巡り、野党が主張する首相の解散権制約には慎重姿勢を表明しました。

その山口代表が29日の党会合で、28日夜に安倍晋三首相と会食したことを報告しています。「(国会)会期末、政府・与党で緊張感を持ってしっかり当たっていこうと確認し合った」と説明。両氏が一対一で夕食を共にするのは珍しく、公明党内では衆院解散などが話題になったのではないかとの臆測も出たそうです。

公明党幹部によると、28日の会食は首相からの呼び掛けで約2時間行われました。山口氏は首相と昨年11月に政権幹部らとともに夕食を共にしたことがあります。ただ、第2次安倍政権発足後の7年間近くで両氏が夜に2人で会食するのは初めてといいます。定期的な昼食会は首相官邸で行われています。

山口公明党代表と安倍総理

無論、「解散は時の首相の専権事項」で、安倍首相も訪米中の9月下旬の記者会見では「頭の片隅にも、真ん中にもない」とこれまでどおりの表現で年内解散を否定していました。

ところが、2夜連続で開催された衆参与党国対幹部との懇親会では、「あいさつと解散は急に来る」(10月8日)、「12月の選挙に勝ったことがある」(10月9日)と述べ、出席者をざわめかせました。

確かに、第2次安倍政権発足直前も含めた3回の衆院選のうち、2012年は12月16日(11月16日解散)、2014年は12月14日(11月21日解散)が投開票日で、いずれも自民が圧勝しています。このため、それまでは「単なる与太話」とされてきた12月15日衆院選説が、にわかに現実味を帯びてきました。

ただし、12月中旬選挙となると、11月には解散していなければならず、本日はもう11月30日なので、その目はほとんどなくなったと見るべきでしょう。

消費税増税を受け、衆院解散・総選挙は遠のいたとの見方が広がっています。政府・与党内では、来年秋以降との観測も多いようです。一方、増税の影響が顕在化する前の今年12月か来年1月の通常国会冒頭の解散も一部では取り沙汰されています

消費税は時の与党に国政選挙での苦戦を強いてきました。導入直後の1989年の参院選で自民党は大敗。10%までの引き上げを決めた旧民主党は2012年の衆院選で壊滅的敗北を喫しました。その後を受けた安倍内閣が連勝したことは、2度の増税延期と無縁ではありません。

そこで有力視されるのが来年秋以降です。「増税直後の選挙は負ける」とみて、東京五輪・パラリンピックを間に挟み、増税の影響を薄める狙いがあります。年明けからは五輪準備が本格化し、物理的にも解散が難しくなります。公明党が要請した軽減税率の仕組みは複雑で、「混乱が生じれば支持者が離れる」(同党関係者)との懸念もあり、こうした見方を後押ししています。

ただし、増税の影響が表れる10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表されるのは来年の2月17日です。このため「数字が出る前に解散を打った方がいいのではないか」(自民党関係者)との声もあります。野党側は立憲民主、国民民主両党が会派合流を決めたものの、離党の動きが出るなど臨戦態勢が整わず、与党にとっては好条件です。

1月解散となると、まさに選挙戦の最中にGDPの速報値が発表されることになるわけですが、その時に何の経済対策も打っていなければ、与党が大敗北となることが予想されます。

総選挙の開票開始後間もなく、自民党大敗の趨勢が判明、当選者もまばらな
ボードをバックに質問を受ける同党の麻生太郎総裁=2009年8月31日

しかし、そのときに真水の10兆円の対策を打つことを公約とすれば、話は随分と変わってきます。特に、先日もこのブログでも説明したように、現状では国債の金利はマイナスであり、国債を大量に刷ったとしても何の問題もありません。これは、多くの人に理解しやすいです。10兆円どころか、もっと多くを刷れる可能性もあります。

この対策とともに、日銀がイールドカーブ・コントロールによる現状の引き締め気味の金融政策をやめ、従来の姿勢に戻ることになれば、このブログにも以前掲載したように、マクロ経済的には増税の悪影響を取り除くこともできます。

安倍政権がこれを公約として、丁寧に政策を説明すれば、十分勝てる可能性はあります。来年秋以降ということになると、経済がかなり悪くなっていることが予想され、自民党の勝ち目は半減する可能性が大です。秋以降でなくても、選挙が後になれば、なるほど増税の悪影響がでてきます。

そうなると、いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高いのではないでしょうか。

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2019年11月29日金曜日

米中対立の”最前線”台湾で多国間サイバー演習―【私の論評】日台間は、対話から実践に移るべき時が来た(゚д゚)!


 11月4日から8日にかけて、台湾と米国の共催により、多国間サイバー演習が行われた。台湾では2年に一回、サイバー攻撃に対する台湾の防衛力強化を目的にサイバー演習が行われているが、外国のチームが招待されたのは今回が初めてである。




 主催者によれば、今回の演習では、日本、マレーシア、チェコ、米国の「赤チーム」が台湾政府・軍当局と共にプレーし、台湾の金融セクターへの攻撃をシミュレートし、台湾人のみからなる「青チーム」が防衛の役割を担ったとのことである。また、その他の6カ国のサイバー関連当局者がオブザーバーとして訓練を視察した。

 台湾は中国のサイバー作戦の最前線にいる。台湾のサイバー安全保障局のハワード・ジャン事務局長によると、台湾政府のネットワークは国境外から月平均2億回スキャンされ、月に約3000万回の攻撃を受けており、その約半分は中国からのものと疑われる。2018年には、6件の深刻な侵入を含む262件の侵入があった、という。AIT(在台湾協会、事実上の米大使館)は、今回の演習について「対北朝鮮である」と言っているが、中国を対象としたものであることは明らかであろう。

 台湾において、国際的な参加も得て、米台共催でサイバーに関連した演習が行われたこと自体、一つの大きなニュースである。これは、中国が躍起になって台湾の国際的生存空間を狭めようとしていることに対する一つの応答になると思われる。

 中国は、来年の1月11日の台湾総統選挙に向けて、種々の工作を行ってくると予想される。その工作は色々な形態をとると思われるが、インターネットを通じた選挙介入がかなり大きな部分を占めることが考えられる。2016年の米大統領選挙の際には、ロシアの介入があった。自由で民主主義的な国は情報の流通が自由な開かれた社会を前提としているが、こういう社会は偽情報の拡散などに対しての脆弱性を持っている。この脆弱性を中国などが悪用しないように、サイバーによる介入を見つけ次第、暴露するなどの対応が必要になる。一方で、こちらの能力を秘匿しておく必要もあり、難しい判断もあろう。今回の演習で、台湾側の能力が向上したとしたら、良いことである。

 今回の演習は、米国が台湾のグローバル技術製造ハブに対するサイバースパイ活動を防ぐための取り組みを強化する一環でもある。台湾は、半導体の委託生産受注で重要な位置を占めている。今後の米中対立は5G技術をめぐる対立など技術覇権の争いの側面もある。台湾の技術はその中で重要である。これがサイバーで窃取されないように防護する必要がある。

 日本からのこの演習への参加者が誰であったか、つまびらかにしないが、日本がこういうことで台湾と協力することは推奨されるべきであろう。中国のサイバー攻撃は日本にも向けられ得るものである。

【私の論評】日台間は、対話から実践に移るべき時が来た(゚д゚)!

台湾では日常的に中国のサイバー攻撃を受け、かなりのマスコミが中国寄りの報道をし、フェイクニュースが垂れ流されていることに大きな危機感を抱いていました。だからこそ、冒頭の記事にもあるような、サイバー演習を実施し、日本も招かれたのです。

日本も、このような事態が「対岸の火事」として軽視できるような状況ではないことを銘記しなければならないです。

日本は、これまで中国の言う「1つの中国」を認めたことはありません。

日本や米国は台湾との断交にあたって中国が「1つの中国だ」と言っていることを尊重する、すなわち、「中国が台湾を含めて1つの中国だと言っていることを聞きました」と言っているに過ぎないのです。

日本は、台湾のみならず、日本に対する中国の軍事的脅威を見て見ぬ振りすることなく、真っ向から中国の脅威に向かい合うことが必要な時期に来ているのではないでしょうか。

1949年、米軍の台湾からの撤退後、苦境に陥った台湾の国民党軍の再建にあたり、中共軍を打ち破ることができたのは、旧日本軍の将校団で編成された軍事顧問団のお蔭だったことを知る人は少ないでしょう。

彼らは台湾で「白団(パイダン)」と言われたのですが、戦後、他のアジア諸国に残って独立を助けた日本人のように、台湾を救ったのです。



台湾の次期民進党総統候補の頼清徳氏が来日時、「日本と台湾は家族のような関係であると思っている」と述べたのですが、まさに金言でしょう。

台湾は、アジアにおける家族のような唯一の「親日国家」であり、日本とともに発展していこうと志す友人なのです。

また、台湾は、その自然、都市など発展の土壌があり、優秀な人材にも恵まれ、一緒に繁栄を築いていける国家でもあります。

台湾は、自由と民主主義を基調とする理念を共有する「共同体」であり、共産主義独裁の監視・抑圧社会の中国とは、全く異なる意識を持つ「国家」です。

特に抑圧ではなく「Freedom Nation」を目指していることこそが、台湾が同胞である本質です。本来大陸中国こそが、台湾を参考にして、大陸中国を変えていくべきなのです。この同胞を日本が見捨てるのなら、日本は長く「人類の恥」として記憶されることになるでしょう。

日本、台湾、フィリピンは、中国が東・南シナ海から太平洋に進出するための大きな障害です。

中国は、これを列島線バリアーと称していますが、これを安全に突破できなければ、海洋強国にはなれず、米国の覇権に立ち向かうことはできないと考えています。

列島線バリア

台湾はその3連のつり橋の要となる中心柱です。台湾が中国に占領されれば、中国は、台湾に対艦ミサイル、防空ミサイル、空軍、潜水艦を配置し、自由に東・南シナ海から海洋戦力を太平洋に流し込むことができるようになるでしょう。

こうなれば米軍は、グアムあるいはハワイ以東に下がらざるを得なくなります。そして、日本は中国の軍事的影響下に置かれ、白旗を上げることになるでしょう。

日本は、米国の同盟国であり、米中対決は、他人事ではなく日本の問題そのものです。米中対決の間に漁夫の利を得ようなどと思わないことです。

米国は、40年ぶりに「現在の危機に関する委員会:中国」(元々は対ソ連として立ち上げられた委員会)を立ち上げ、最終的には中国の共産主義体制が諸悪の根源というところまで追求する決意です。

「現在の危機に関する委員会:中国」会長のブライアン・ケネディ氏

米海軍は6月4日にテロの戦いの時に掲げた「ガラガラヘビ」の海軍旗から元の「国籍旗」、すなわち、大国間競争に入ったと言う旗に変わりました。

6月4日はミッドウエー海戦の初日であり、米海軍が太平洋の覇権を日本から奪い取った日でもあります。

日本は、目を閉じても、この嵐は簡単には過ぎ去ることはありません。

この期に及んでも中国へ向かう自殺行為は直ちにやめ、唯一の友好国である台湾を本気で助けるべきです。

助けるといっても、単に台湾と安全保障に関する対話をするという次元から米国のように、実際に武器を提供したり、米国の台湾旅行法の日本版を作成し、さらに台湾に関与していく政策を実行すべきです。

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2019年11月28日木曜日

10兆円補正予算へ弾み、渡辺議員の国会質疑に見る「政治家の思惑」―【私の論評】日本の政治家も納得すれば、経済的にまともな行動をとることもある(゚д゚)!


世耕弘成参院幹事長

 自民党の世耕弘成参院幹事長は11月22日の会見で、政府が策定中の経済対策に関連し、2019年度補正予算は、国による財政支出である「真水」で10兆円規模、事業費20兆円規模が必要との考えを述べた。

 またインフラや学校用パソコン普及のために必要なら特例国債(赤字国債)を発行すべきとの見解を示した。

 この発言に先立ち20日には、自民・公明両党の幹事長・国会対策委員長が都内ホテルで会談し、真水ベースで10兆円の補正予算を政府に求めることで一致していた。

 大型予算編成を目指した政治の動きが加速している。


「真水10兆円」のかけ声
大型補正編成に動きだす


 「真水」というのは、正式な定義はないが、補正予算額のうち実際にGDP(国民総生産)を押し上げる部分をいう。

 例えば、公共投資のうち用地費を除いた部分や、財政投融資などの融資部分は除くのが一般的だ。いわゆる事業規模との対比で真水という表現が用いられている。

 政治が動き出した伏線は、13日に行われた「国土強靱化」を推進する党所属議員と経済界との会合での、二階俊博自民党幹事長の発言だ。
 二階氏は、公共事業費の増大を警戒する財務省に対して「財務省に政治をやってもらっているんじゃない。ケンカしなきゃいかんところはケンカする」と、予算確保に強い決意を示した。

 国土強靭化といえば、運輸大臣を務めた二階氏の肝いりの事業だが、財務省は積極財政に消極的なところがあり、国土交通省も財務省に従い「恭順の意」を示してきた。
渡辺議員の質問が“引き金”
「4%割引率は高過ぎる」


 状況を一変させることになったのが、渡辺喜美議員(みんなの党)の11月7日の参議院財政金融委員会での質問だ。

 渡辺議員は、かつてみんなの党代表として、政界のキャスティングボートを握っていたが、党内紛によって政治的にはかつてのパワーはない。しかし、20年ほど前には「政策新人類」といわれたように、政策にはめっぽう明るい政策通だ。

 この時の質疑は、前回(2019年11月14日付け)の本コラム「公共投資拡充はMMTよりも『4%割引率』の見直しが早道」でも紹介したが、渡辺議員は、麻生財務相に今のマイナス金利環境を活用しゼロ金利まで国債を無制限発行したらどうかと迫った。

 麻生財務相、「意見として聞いておく」と答えたが、そう発言せざるを得なかったのは、ロジカルには渡辺議員の意見を否定できないけれど、勘弁してくれというものだろう。

 渡辺議員は、国交省に対しても、公共事業の採択基準のB/C(費用便益分析)について、国債発行金利などのコスト(C)算定の際、将来のコストを現在価値に直す割引率が4%で維持されていることについて、今のマイナス金利の状況では高すぎる点を指摘した。

 それに対して、国交省の担当者は15年ほど見直していないが、有識者で議論すると言わざるを得なかった。国交省は割引率4%が高すぎると、事実上、認めたということだ。

 前回の本コラムで書いたように、割引率4%は今の金利環境では高すぎて、日本の公共投資を過小にしてきた。まともに見直すと、採択可能な公共事業は今の3倍以上になるだろう。

 ということは、ここ数年間、発行額が6兆円程度で推移してきた建設国債は、20兆円以上も発行できることを意味する。


マイナス金利のもとで
政治家にもわかりすい理屈


 渡辺議員は、21日の参議院財政金融委員会でも追及している。
渡辺喜美議員

○渡辺喜美議員 
 この前の積み残しの話でありますが、公共事業評価の割引率が4%だと。15~16年前の数字でありますが、最近の国債実質利回りで計算すると、この割引率はどれくらいになりますか。

○政府参考人
  公共事業評価に関する国土交通省の統一的な取扱いを定めました公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針というものを平成16年に策定しておりまして、社会的割引率につきましては、10年物の国債の実質利回りなどを参考に、全事業統一的に4%と設定しております。

 その当時の議論において参考とした10年物の国債の実質利回りでございますけれども、平成5年から平成14年までの10年間の平均値3.0%、また、昭和58年から平成14年までの20年間の平均値3.52%などとなっております。

 現在の利回りを用いて最近の10年間、20年間の数値を同じように試算いたしましたところ、平成20年から平成29年度までの10年間の平均値0.87%、平成10年から平成29年までの20年間の平均値1.83%となっているところでございます。


○渡辺喜美議員
  だったら、そういう簡単な計算で出るのだったら、この割引率変えたらいかがですか。

○政府参考人
 いずれにいたしましても、さまざまな御意見のある中、社会的割引率の考え方を含む事業評価手法の在り方につきましては、国土交通省で設置いたしています学識経験者などで構成されている公共事業評価手法研究委員会などにおきまして、今後も引き続き議論してまいりたいと考えております。

 この議論は、政治家にとっては、財政赤字を積極肯定する考え方として今もてはやされているMMT(現代貨幣理論)よりはるかにわかりやすく実践的な議論だ。

 政治家は役人に歳出拡大などを要求するが、役人もロジックで政治家の要求を跳ね返すやり方を身につけている。政治家は情には強いがロジックには弱いからやりこめられることが多いのだが、割引率の議論はわかりやすいロジックだ。

 国会で役人がうまく答弁できず、逃げられないでいるのは、政治家もすぐわかる。

 7日や21日の参議院財政金融委員会での、渡辺議員に対する国交省の担当者の答弁は、15年間も割引率を見直さずにすみません、すぐに見直します、というふうに政治家には聞こえたはずだ。

 そして、その結果、公共投資が大幅に増えることも政治家であればピンときたはずだ。

 さらに、渡辺議員は安倍首相とは旧知の仲なので、ひょっとしたら、質問をした裏で、渡部議員と安倍首相が連携して動いているかもしれないと憶測する政治家もいるだろう。

 こうなると、政治家の動きは素早い。いずれにしても今年は災害が続いて被害も大きかったから、割引率の議論がされたことで、公共投資を増やせる理屈も明快になった。
「10兆円真水補正予算」へと弾みがついた形だ。
守勢に回った財務省
本予算で“取引”狙う?


 21日の参議院財政金融委員会で、渡辺議員は財政投融資の制度を使って、地方公共団体がこのマイナス金利の恩恵を受けられるような具体的な提案もしている。

 国がマイナス金利で国債を発行し、それで調達した資金を同じマイナス金利で国が地方に貸し付けるのだ。

 これに対して財務省は、国にはマイナス金利の恩恵があることは認めつつも、地方のためにはやらないという乱暴な議論で反対している。

 マイナス金利での国から地方への貸し出しは、法律が要求している安全確実な方法ではないというのだ。

 しかし、一方で国がマイナス金利で恩恵を受けていることは認めているので、財務省の論法は詭弁にしか聞こえない。

 資金の運用は、調達とのセットで考えるべきで、調達コストも運用コストもともに同じでマイナスであれば、安全確実な運用ともいえる。

 財務省は、借金だけを強調しその裏にある資産を言及しないのといつもと同じ論法で、運用利回りだけのマイナス面を強調し、その裏にあるマイナス金利での調達のプラス面をあえて隠して答弁している。だから、詭弁に聞こえるのだ。

 いずにしても、渡辺議員が国会で質問したことで、財務省は、マイナス金利や高すぎる割引率の問題を突かれると守勢に立たざるを得ないことがわかってしまった。これは政治家を大いに勢いづかせただろう。

 財務省は今後、政治の圧力にどう対抗するのだろうか。

 補正予算案の提出は今の臨時国会ではなく、年明けの通常国会冒頭にして、とりあえず時間を稼ぎ、後は、来年度の本予算の編成で、歳出規模をそこそこ増やしたり、個別案件で政治に配慮したりという「取引」で、大型補正の議論の沈静化を図ろうとするのだろう。

 もっとも、通常国会冒頭での補正予算案提出は、安倍政権にとっては解散の絶好の口実にもなり得るので、財務省の対応は政治的には絶妙だ。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】日本の政治家も納得すれば、経済的にまともな行動をとることもある(゚д゚)!

先日このブログでは、10兆円規模の補正などというチマチマしたことをしないで、国債の金利がゼロになるまでというと、高橋洋一氏の試算によれば、103兆円までは刷れるということなので、どんどん国債を刷って100兆円基金でも設置して、大型の経済対策を打つべきであるとの主張をしました。

ただし、10兆円の真水ということになると、消費増税▲5兆円の悪影響をマクロ的には払拭できるということになります。この記事では、「安倍晋三首相から経済対策の指示は出ておらず、現時点でその必要性も感じない」という麻生財務大臣の発言も取り上げましたが、これは言うまでもなく問題外の発言です。

10%への消費増税では個人消費などの落ち込みで、▲5兆円程度の悪影響があるとされていましたので、当面は与党内で10兆円を目指すとの認識なのだと思います。この場合公共事業の採択基準のB/C(費用便益分析)について、国債発行金利などのコスト(C)算定の際、将来のコストを現在価値に直す割引率が4%が15年くらい見直されていないのがネックだったのですが、渡辺喜美議員の質問等で、よくやく見直し作業に入りつつあるということです。

今回の10%増税では消費税増税前の駆け込み需要も少なかった

消費者物価指数は、世の中のいろいろな品目(消費税非課税品目、消費税課税品目、消費税軽減税率品目)について加重平均で算出していることに留意し、総務省の試算により今回の消費増税の結果を機械的に算出すると、10月の消費者物価総合への寄与度は0・77%です。

他方、今回の消費増税では、幼児教育・保育無償化も実施されています。総務省の試算では、10月の消費者物価総合への寄与度はマイナス0・57%とされています。

このため、今回の消費増税の消費者物価への影響は、本来の影響0・77%から、無償化の影響も考慮して0・57%を引いた0・20%としているのです。

実際、今月の消費者物価指数統計では、無償化の効果が出た教育は前年同月比マイナス7・8%、諸雑費でもマイナス2・9%となっています。

なお、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)では、前年同月比0・4%上昇だが、消費増税などの影響を除くと上昇率は0・2%。消費者物価指数(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)では、前年同月比0・7%上昇ですが、消費増税などの影響を除くと上昇率は0・4%。いずれにしても、物価の動きは弱く、消費増税による景気後退を示唆するものです。

今回の消費増税による景気後退により、インフレ率は年間でゼロ%台半ばのマイナス効果があるでしょう。さらに今のイールドカーブコントロール(長短金利操作)による金融政策もインフレ率を押し上げるには力弱く、若干マイナスに作用すると思います。

これだけをみれば、デフレ脱却は夢のまた夢です。しかし、今のマイナス金利環境を生かして、補正予算で真水10兆円という大型規予算が実行されれば、話は別です。実際の補正予算は、今の臨時国会か来年の通常国会で召集日を前倒しして、1月上中旬から審議開始し、成立となるでしょう。

もし10兆円補正であれば、景気回復によりインフレ率に対する影響はプラス1%台半ばの上昇効果になるでしょう。そうであれば、補正予算通過後から景気回復とともにインフレ率は上がり出すはずです。

財政出動とともに引き締め気味の金融政策を見直すと、現在ほぼゼロのインフレ率ですが、2年で2%程度は視野に入ってくることになります。

それにしても、今回の渡辺喜美議員の、質問の内容は与党のマクロ経済には疎い政治家たちちにも、国債がマイナス金利のもとでの理屈はかなり理解しやすかったとみえて、実際与党内では、10兆円の補正予算に向けて動き出しているわけですが、政治家も正しい理解に基づけば、正しい方向に向けて動くことが証明されたともいえます。

このようなことなしに、ただ赤字国債を刷っても大丈夫だから剃れといっても、政治家は動かないようです。やはり、誰にでもわかるように理屈を説明するという努力はこれからも続けていくべきなのだと思います。

そうして、誰にでもわかるような理屈で政治家を説得していくという努力はいつか報われるのだと思います。

今回の補正予算10兆円で、経済がうまく周り、景気が上向き、国債を大量に発行しても害がないことが政治家や多くの国民に理解されれば、次の段階ではたとえ赤字国債を発行しても、不完全雇用下にあり、外国からの調達ではないという条件を満たせば、次世代のつけにはならないことも理解されるのではないかと思います。そうなれば、何が何でも増税しなければならないという考え方も払拭されるのではないかと思います。

これに関しても、ただ単に多くの政治家に識者が説明するということもやるべきではありますが、それ以外に今回渡辺喜美氏がしたような国会での質問のような、政治的な配慮が必要なのかもしれません。自民党の中でも、小泉環境大臣のように、従来は国債は将来の国民のつけになると発言していた議員も多いのですが、さすがに今回は何もいいません。

小泉環境大臣

私は、多くの政治家がマクロ経済をほとんど理解できない状況に前々から危機感を感じていました。財務省の屁理屈により、これからも何度も増税され、日本はどこまでも無間地獄に落ちこみ、とんでもないことになるのではないかという恐怖感さえ覚えていました。

しかし、今回の出来事により、そうではない場合もあることを知り、かなり勇気づけられました。まだまだ、経済に関してはやりようがあるのだと納得しました。

志のある政治家は、今後も諦めることなく、渡辺氏のように国会で有意義な活動をしていただきたいものです。間違ってももシュレーダーを見学にいくなどという馬鹿マネはしないでいただきたいです。

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2019年11月27日水曜日

【新・悪韓論】韓国・文政権“逆ギレ”で東京五輪ボイコットも!? 国民の“恨”を晴らす謀略として… 識者「日本は冷静に逆手を取れ」―【私の論評】韓国が危険だと考えるなら、無理して東京五輪に来るべきではない(゚д゚)!


2020年東京五輪の開閉会式などが行われる新国立競技場。文大統領率いる韓国は参加するのか
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、自縄自縛に陥っている。米国の「強烈な圧力」に屈服して、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を維持したことが暴露され、保守陣営だけでなく、支持基盤の左派陣営からも批判が集中しているのだ。韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長は、いわゆる徴用工問題の解決策として、日韓の企業と個人の寄付金を賠償金代わりにする案をまとめたが、日本は国際法違反の愚策には、決して乗れない。こうしたなか、政権維持と、国民説明を追加の「恨」を晴らす謀略として「2020年東京五輪・パラリンピックのボイコット」が考えられるという。韓国事情に精通するジャーナリストの室谷克実氏が考察した。


 自作自演して「被害者」のふりをする。被害者としての対抗措置を打ち出して自画自賛する。ところが、自縄自縛に陥り自爆。すると今度は「精神的勝利感」を確保するために、ファンタジーの言い訳を乱造する…。

 GSOMIAをめぐる韓国・文政権の動きは、戦後の日韓関係史の中で見れば「いつものパターン」に過ぎない。

 しかし、注意すべきは、彼らが「精神的勝利感」(別名=道徳的優位)に浸って満足しているわけではないことだ。心の中では「実質的敗北感」に打ちひしがれて、「恨」(ハン)をため込んでいる。「恨」に基づく攻撃が向かう先は、米国と日本だ。

 今回のGSOMIA措置での自爆は、国内の保守派を勢いづかせただけでなく、政権の“左翼バネ”として機能してきた正義党など従北左翼勢力をいたく失望させた。文政権としては、来年4月の国会議員選挙に向けて、破天荒の対策が必要だ。

 ところが、予算措置はすでに20年予算(1~12月)案に盛り込めるだけ盛り込んでしまっている。今年は税収減による歳入欠陥が必至の状況だが、20年予算案は税収の伸びを甘く見込んだうえ、赤字国債を増やしている。

 国家債務の増加ペースは経済開発協力機構(OECD)加盟国のなかでトップのスピードだ。もはや政府予算で国民のご機嫌を取ることはできない。

 そこで、内政の袋小路を抜け出すため、外国を標的に定めて攻撃する。これも韓国の政権の伝統的手法だが、GSOMIA措置での自爆の後とあっては、よほどの仕掛けが必要だろう。が、強引に仕掛けをつくる国だから、安倍晋三政権は油断してはならない。

 4月の国会議員選挙で、文与党が議席減となれば、もう完全な「レームダック(=死に体)」になる。

 韓国語の表現を直訳すれば「恨を解くため」、つまり恨みを晴らすため、そしてレームダックから脱出するために、文政権ができる国家レベルの措置は何かあるのか。

 ざっと展望したところ、「2020年東京五輪のボイコット」ぐらいしかなさそうだ。「隣国のボイコットに遭った不名誉五輪」ということにして、「精神的勝利感」を自己醸成する作戦だ。


文在寅

 韓国はすでに、東京五輪に関して「放射能五輪」と決め付けて世界に悪宣伝して回っている。五輪の期間中に日本が選手団に提供する食事は不安だから、自分たちで食材を輸送して調理すると宣言している。

 与党の組織は「日本の放射能汚染地図」を捏造(ねつぞう)までして「放射能五輪」の危険性を訴えている。さらに、自衛隊旗である旭日旗を「ナチス旗と同じ」と世界に触れて回り、「旭日旗を五輪会場に持ち込みさせるな」と息巻いている。

 いまのところ、韓国の政権は、与党の「東京五輪ボイコット論」とは一線を画する立場を維持している。しかし、文大統領は表舞台では「東京五輪に協力」と言いつつ、裏では福島原発の処理水を問題化せよと指示したとされる。

 それも対日牽制(けんせい)の一つとみられているが、日韓GSOMIA破棄を米国揺り動かしのテコにしようとした非常識な政権だ。韓国がどんな奇策を仕掛けてきても、冷静に逆手を取る用意をしておかなければならない。

 
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。著書・共著に『悪韓論』(新潮新書)、『崩韓論』(飛鳥新社)、『韓国リスク』(産経新聞出版)など多数。

【私の論評】韓国が危険だと考えるなら、無理して東京五輪に来るべきではない(゚д゚)!

上の記事で、室谷克実氏が語るように、韓国がどのような奇襲をかけてきても、冷静に逆手を取るには、どうしたら良いのでしょうか。一番効果があるのは、エビデンスに基づいて反撃することだと思います。

日本が、韓国のホワイト国認定の取り下げなどに韓国がいくら反撃したとしても、日本としては客観的な資料に基づいて韓国が貿易管理を実行していないこと示すエビデンスがあるからこそ、冷静に対処できるのです。

放射能等に関しても、日本側としては、客観的なエビデンスを用意して、それに基づき反論すれば、韓国は国際社会で笑いものになるだけの話です。

これは、随分前から指摘されていたことなのですが、実は韓国の首都・ソウルは、東京よりも放射線量が高いことをご存じでしょうか。日本政府観光局は、それぞれの放射線量を次のように比較しています。

2017年7月の特定日の計測結果は、東京が「0.038マイクロシーベルト」、ソウルが「0.125マイクロシーベルト」だった。ソウルは東京の3倍以上の数値となっています。

ちなみにニューヨークは「0.044マイクロシーベルト」、パリは「0.043マイクロシーベルト」、北京は「0.072マイクロシーベルト」などとなっており、世界の主要都市と比べてもソウルの放射線量が高いことがわかります。

では、なぜソウルは東京よりも放射線量が高いのでしょうか。まず挙げられるのは、そもそも韓国は「自然放射線」の量が多いということです。

「自然放射線」とは、地球が誕生したときから自然に存在する放射線のことです。「人工放射線」が医療機器や原発などによって発生するのに対し、「自然放射線」には宇宙から入ってくる宇宙放射線と土の中に存在する地殻放射線(ウラニウム、ラドン)などが含まれます。

日本の自然放射線による年間線量は約1500マイクロシーベルト(1.5ミリシーベルト、東京都観光局発表)だが、韓国はその倍の3000マイクロシーベルト(3ミリシーベルト、『世界日報』報道)です。

これは朝鮮半島の地面の大部分が、ラドンを発生する花崗岩などでできているためだとされています。

しかし、要因は自然放射線だけではありません。

韓国では人工放射線が問題となることも多々あり、むしろ見過ごせないのはこちらの方だと言えます。

例えば2011年にはソウルの蘆原(ノウォン)地区で、平均値の10倍近い放射線量が検出されたことがあります。その原因は、道路の舗装に使われたアスファルトの原料に放射性物質が混入していたことでした。

しかも、そのアスファルト全体の480トンのうち280トンは、蘆原区庁裏の空き地に少なくも2年半以上放置されたのでした。

また、2015年には京畿道のあるアパートで通常の5倍近い放射線量が計測されたこともありました。こちらも同様に、外壁に使われたセメントに放射性物質が混入していたことが原因とされています。

さらに、2016年11月には韓国原子力研究院が放射性廃棄物を無断廃棄していたとして、職員5人が行政処分を受けています。

こうしたずさんな管理がソウルの放射線量の高さに影響している可能性がないとは言い切れないです。

そもそも、韓国は原発が多い国でもあります。

韓国には2019年時点で運転可能な原発が24基あります。これは世界で6番目に多い数ですが、見過ごせないのはその密集度です。



原発が密集していることについては、文在寅大統領も「我が国は全世界で原子力発電がもっとも密集した国」と語っているほどです。

それだけに万が一事故が発生した場合には「想像を絶する被害につながり得る」(文大統領)が、韓国の原発では事故や故障が多発しているのが実情です。

1978年に稼働を開始した古里原発1号機だけでこれまで130件以上が発生しいることを考えると、その数が非常に多いことは想像に難くないです。

「原子力発電の故障により放射線量が高くなっているのではないか」と追及された事実は見つけられませんでしたが、その可能性は否定できないでしょう。

自然放射線に人為的な原因も重なって放射線量が日本よりも高くなっている韓国。韓国人が日本の放射線量に過敏に反応するのは、自国の惨状から目を背けたいという意思の表れでもあるのかもしれないです。

このような韓国で、日本の放射能に関して、とんでもない捏造がなされていました。韓国の与党「共に民主党」の「日本経済侵略対策特別委員会」が9月26日、福島第1原発の事故による「放射能汚染マップ」を公表しました。2020年に開かれる東京オリンピック・パラリンピックの会場の位置がマッピングされ、周辺の放射線量が色で示されています。

「ともに民主党」による「放射能汚染マップ」

朝鮮日報によると、地図は、日本の市民団体が公開している資料を基に制作されたといいます。

この汚染マップ、放射能を同心円状の分布として公開する時点でおかしいです。あまりの、稚拙さに絶句してしまいます。

特別委の委員長を務めるチェ・ジェソン議員は、「日本の汚染水放流までもが騒動になっているため、日本全域の水産物は東京五輪の選手団だけでなく五輪の訪問客全員に影響する」と指摘し、「今からでも安倍政権は韓国に対する経済侵略を正常化し、元の位置に戻させることが日本の国益に役立つ」と語ったといいます。

韓国政府は、日本が韓国に対する輸出管理を強化したのに対抗し、日本からの輸入食品の放射線検査を強化。放射能汚染に対する懸念の発信を続けています。

日本の外務省は9月24日から、①福島市、②福島県いわき市、③東京都新宿区と④ソウル市の放射線量を在韓国日本大使館のホームページで公開。データは、自治体や韓国原子力安全技術院など公的な数値を使用しています。

同月27日正午時点の数値は、①福島市0.135マイクロシーベルト、②いわき市0.060マイクロシーベルト、③新宿0.036マイクロシーベルト、④ソウル0.120マイクロシーベルトーーとなっています。福島とソウルの線量がほとんど変わらないことを示し、安全性をアピールする狙いです。


菅義偉官房長官は同月27日午前の閣議後記者会見で、「他国の個別政党の活動について政府としてコメントは控えたい」としつつ、「従来から我が国に対するいわれのない風評被害を助長するような動きについては、懸念を持って注視している」と述べ、不快感をあらわにしました。

また、「科学的根拠に基づいた正確な情報を国際社会に丁寧に説明していくとともに、韓国側に対しては冷静で賢明な対応を強く求めていきたい」と語りました。

政府としては、これを実行して、韓国の情報捏造を国際社会に晒すべきです。多くの日本人にとっては、韓国が東京オリンピックに参加したくないというのなら、参加しなくても良いと思っているのではないでしょうか。私もそう思います。

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2019年11月26日火曜日

ローマ教皇の政治的発言への違和感―【私の論評】強烈な違和感の正体はこれだ(゚д゚)!

ローマ教皇の政治的発言への違和感

岩田温

ローマ教皇が広島、長崎で祈りを捧げられたそうです。

私はクリスチャンではありませんから、ローマ教皇への特別な思い入れはありません。しかし、カトリックの方々が尊敬されておられる方ですから、敬意を表すべきではあろうと思います。間違っても、教皇の顔写真を燃やして芸術などと強弁するようなことがあってはならないと強く思います。

敬意は表しますが、政治的発言に違和感を覚えたのも事実です。

核兵器の廃絶に熱心なようですが、そういう主張は日本ではなく北朝鮮や中国ですべきではないかと思うのです。日本は被爆国ではありますが、核保有国ではありません。核兵器をなくせと日本で主張するのはおかしくないですか?日本は核兵器の脅威に今も曝されているのです。

日本の「リベラル」はお説を有難く拝聴しているのでしょうが、率直に言って、私は違和感を覚えました。


【私の論評】強烈な違和感の正体は、これだ(゚д゚)!

上の記事、文書だけではなく、動画を是非ご覧になってください。文章にしたものを、読むだけでは岩田氏の言いたいことの半分も伝わらないと思います。

このローマ教皇の発言に関しては、私自身もかなり違和感をおぼえたですが、そのように感じた人は私だけではないことがわかり安心しました。

これに関しては、無論岩田氏だけではなく、他の人も違和感を覚えたようです。


和尚のこの言葉と、ローマ教皇の説教とどちらが説得力があるのかといえば、それは歴然としていると思います。


難民を受け入れろという発言は、全くいただけないと思います。教皇自身も、イタリアをはじめ多くの西欧諸国で難民を多数受け入れてどうなったのかは、ご存知だと思います。


まさに、そうです。核兵器そのものは所持していても、実戦でつかうことはなかなかできないので、各国がこれに変わる強力な武器を開発中です。たとえば、AI兵器もその一つです。


高須院長の、このツイート、多くの日本人が共感すると思います。日本は、世界で唯一の被爆国です。被害国の信者に核兵器の不当性を訴えられても多くの日本人は違和感を覚えるだけでしょう。

そのようなことよりも、私が強烈な違和感を覚えるのは、フランシスコ教皇が、現在まさに迫害に苦しんでいるカトリック信者に対して明確なメッセージを送らないことです。それは他でもない香港と台湾、そして中華人民共和国の信者たちのことです。

教皇は就任以来、「宗教は人民を毒害する麻薬」であり、「カトリックは西欧列強の中国侵略の先兵だ」との歴史観を持つ中国政府と「密談」を重ねてきました。台湾の信者たちを裏切って共産中国と国交関係を結ぶのではないかと取り沙汰されたバチカンの動きに対し、台湾から反発の声があがりました。

それでも教皇は昨秋、中国政府と彼らが任命した司教の正統性を追認することで合意しました。その後、民主主義を求める香港の若者たちと市民が抗議に立ち上がって半年がたったのですが、教皇から彼らへの支援のメッセージは届いていません。

日本のカトリック人口は44万人であるのに対し、地下教会信者を含めた中国のクリスチャンは1億人に迫る勢いを見せています。習近平政権から苛烈な弾圧を受けている地下教会の中国人クリスチャンも教皇からの救いを待っているはずです。しかし、教皇は決して「内政干渉」しません。引き続き「裏取引」を進めるためなのかもしれません。

そんなことは絶対にあり得ないことですし、天皇とローマ教皇を単純に比較することなどできないことを承知の上で、敢えて言わせていただきますが、もし天皇陛下がこのような行動をされたとしたら、多くの日本人は天皇陛下を敬愛しつつも、強烈な違和感を抱くのではないでしょうか。

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2019年11月25日月曜日

国際社会で模索すべき香港デモの解決策―【私の論評】安倍政権の財界親中派への配慮は、いつまでも続かない(゚д゚)!

国際社会で模索すべき香港デモの解決策

岡崎研究所
 6カ月以上にわたる香港の抗議運動を巡る情勢は、収まる兆候を見せるどころか、益々激化、暴力も起こり、危険な状態になっている。日本人がそれに巻き込まれ、負傷する事件もあった。現況及び今後の香港情勢は、非常に憂慮される。もともと自由と民主主義を求め、2047年まで保証された「一国二制度」を維持するために平和に始まった抗議運動であり、これが、大きな流血事態を招くようなことを許してはならない。天安門事件のような事態は、中国共産党にとっても回避すべきことは言うまでもない。 

引渡法案に抗議する大勢の人々が参加した6月のデモ

 11月13日付の英フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、中国共産党政府が、香港基本法の関連規定の実現となる国家安全法の制定と香港行政長官を選出する普通選挙の導入を抱き合わせで行えないかと提案している。それがデモの平和裏の収束と流血回避の唯一の可能性だと指摘する。ただし、これは、中国共産党にとって、デモへの屈服になってしまい、中国の他の地域への波及の可能性もあり、なかなか実行は難しいだろう。そのことは、フィナンシャル・タイムズ紙の社説も認めている。しかし、国家安全法は、以前にも立法化が試みられたことがあり、内容如何にもよるが、理論的には考えられないことではないように思える。興味深い提案であり、これは、フィナンシャル・タイム紙から中国共産党政権に対するシグナルと考えても良いかもしれない。

普通選挙の実施は、デモ側の五大要求(①逃亡犯条例案の完全撤回、②警察の暴力的制圧の責任追及と独立調査委員会の設置、③デモ「暴動」認定の撤回、④デモ参加者の逮捕・起訴の中止、⑤林鄭月娥行政長官の辞任と民主的選挙の実現)の1つとなっている。兎に角、今や、香港当局がデモ隊側に何らかの譲歩をしない限り、現下の危険な事態は解決されない。それへの代案が中国共産党による軍事介入ということであれば、尚更追求すべき方策かもしれない。北京政府も、民主化を求める住民の意思を無視していては、問題は永遠に解決しないし、武力で問題は解決しないことを認識すべきだろう。

抗議デモの長期化により、香港経済が予想以上に悪化しているという。今年第 3四半期(7~9月)の成長率はマイナス3.2%(前期比)となったという。観光業も不振になっている。

国際社会、特に米国と前の統治国である英国がきちっと中国に話していくことが重要である。米国では、「香港人権・民主主義法案」が下院を通過し、上院も承認すると見られている。日本など他の諸国も、適切な形で平和裏の解決を求めていくべきだろう。

【私の論評】安倍政権の財界親中派への配慮は、いつまでも続かない(゚д゚)!

政府への抗議デモが続く香港で24日、4年に1度の区議会選挙が実施され、投票率は過去最高の71.2%でした。中間集計で民主派が300議席を獲得したのに対し、親中派は40議席に留まり、デモに強硬姿勢で臨む香港政府と中国の習近平指導部に民意が明確にNOを突きつけた形となりました。

親中国政府派の候補者が敗北したことを受けて歓声を上げる民主派の人々

ただし、区議会議員はほとんど決定権がなく、町内の顔役のような役割です。ですからこれで物事が決まるとか、状況が変わることはないですが、民意をキチンと伝えるということはできるようにはなるかもしれません。

香港市民は、現在の林鄭月娥(キャリー・ラム)香港特別行政区行政長官も含めて、行政府に対してはNOを、そうしてその裏にいる中国共産党や中国政府に対しても、NOだという民意が示されたというところも大きいです。

この選挙結果が出る直前に、まだトランプ大統領は署名していませんが、アメリカ議会で香港人権・民主主義法案の可決が行われたということが、大きく背中を押したは間違いないと思います。

米下院は、香港が高度な自治を維持しているかどうか米政府に毎年検証することを求める
「香港人権・民主主義法案」など中国への圧力を強める複数法案を可決。写真は14日に香港

特に香港中文大、理工大でのデモが激しくなって来たあたりで、デモ隊が暴力を振るっていて市民の心が離れているということを、勝手に解説する中国の専門家と称するような方がいましが、結局民意はそうではなかったということです。

むしろ、YouTube等で、警察側の暴力が動画が拡散しています。YouTubeで「香港」というキーワードを入れて検索すると、かなりの動画を見ることができます。大学構内で学生が警察に対して完全に屈している、逮捕されますという姿勢を見せている学生に向けて、硬い靴で顔を思い切り踏みつける、背骨を警棒で殴るという状況も拡散されています。

これはもう完璧に暴力による虐待であり、それに対して市民は強い危機感を持っているし、学生に対するシンパシーを持ち続けているということです。今回の区議会選挙の前段で、あのような強行策を取ったということが、逆の方向に出たしまったのでしょう。民意は行政庁からどんどん離れつつあります。むしろ、40議席を獲ったことが不思議なくらいです。

現地のメディア、或いは記者の人が伝えているネットなどを観るとと、得体の知れない投票箱が運ばれて来て、中身を調べろということになっていました。周りで監視していた市民が、そんな得体の知れないものは受け取れないと揉めていました。また、投票しに行ったら「すでに午前中に君の名前で投票されています」とあったとか、選挙そのものがどうなっているのかということも報道されています。

中国国内においては、建国以来民主的な選挙は行われていません。上は、主席から、下は下級役人まで、どのようなポストも指名によって行われています。中国には、民主的な選挙をどのようにコントロールできるのか、ノウハウがありません。

だから暴力の行使というあからさまなやり方を持ち出したのではないでしょうか。そもそも、中国では建国以来毎年平均2万件程度の暴動があったとされ、2010年あたりからは、毎年平均10万件もの暴動が発生しているといわれています。

これらの暴動を城管、公安警察(日本の警察にあたる)、武装警察、人民解放軍などを用いて、鎮圧してきたわけですから、中国からすれば、デモの鎮圧など簡単で香港のデモなど取るに足らないものと見ていたといのが、大きなミスです。

もう1つのミスは、そういう状況が必ずSNSや動画で拡散、それも瞬時に拡散されてしまうということです。中国サイドは、このあたりを甘く見ていたようです。中国本土ではネットも政府の金盾によるコントロール下にあります。だから香港のネットも簡単にコントロールできるかと思いきや、そうではなかったのです。

さらに、香港には、米国籍、英国籍等外国人が多く存在します。さらに、外見は香港人でありながら、国籍は外国という人も大勢います。これらの人々が、逐一海外に様々な情報を伝えているというところも、大陸中国とは異なるところです。



米国で、香港人権・民主主義法案が成立して、米国の香港に対する最恵国待遇が外されることが確実になって来ました。ブルームバーグが報道したところによると、東京都の担当者が香港の金融機関に対して、東京に戻って来ないかと働きかけているそうです。

東日本大震災以降、東京から避難した香港系金融機関がいくつもあるわけですが、そういう金融機関に対して東京に戻って来ないかと言うだけではなく、拠点を香港から東京に移さないかとアプローチしているそうです。

これに対して、香港在住の金融機関がかなり前向きになって来ているようです。そうなると、香港の金融センターとしての役割も危うくなります。これを中国サイドはどう見るのでしょうか。

現在香港では金融機関の多くの職員が在宅勤務のような形になっているそうですし、長期出張として東京やシンガポールなどで業務をしているところが多いそうです。その長期出張が東京への拠点の移動の1つの布石ではないかと、言われています。

在宅勤務ということは、店舗は閉鎖されていることを意味します。実質的に、金融機能は麻痺状態に陥っているのではないでしょうか。

これを中国はどう見るのでしょう
か。習近平政権は腐敗撲滅運動を実施していて、その大きな拠点が香港であるということは見抜いているようです。ただここを潰してしまうと、本土の赤い官僚貴族たちに対して、広範囲に影響があります。

香港には共産党幹部たちの隠し資産があります。そのような金融機関の動きを見てみると、事実上の内戦状態に陥っているともいえます。つまり戒厳令こそ宣告されていなですが、同じ状況にあるといえます。
米国の香港人権・民主主義法案に関しては、後はトランプ大統領の署名を残すのみですが、仮に署名しなくても、また議会で大多数で可決すれば施行することができます。

たとえ、トランプ大統領が署名を拒否したとしても、採決すれば通ってしまいますから、トランプ大統領としても署名するでしょう。そうなると、問題は日本のスタンスなのです。

来年(2020年)、習近平国家主席が国賓待遇で来日しますが、それをこのまま容認して進めて良いのかということがあります。これは考え直すべきです。

ここに来て、ようやく各政党が非難決議や談話を出し始めましたが、遅きに失した感はく免れません。

現在、各国政府、特に西側先進国はかなり強烈なメッセージを出して、中国との条約の見直し作業に入っている状況です。まさに天安門前夜と同じような状況になっているのは間違いないです。それにも関わらず、日本だけが平時と同じような状況で中国との関係を保っているということは、国際社会のなかで日本が孤立することにもなりかねません。

いままで中国に対して、対話のドアはオープンだと言いながら、言いたいことは言ってきました。どうしてここへ来て変わってしまったのでしょうか。

官邸の方針が変わったということは言えると思います。これまでは少なくとも、安全保障と経済問題はバランスを取って来ました。現在の対中政策は、安全保障問題は後退して、経済一本槍です。安全保障問題に対して消極的姿勢になったようにみえます。

しかし、これは、おそらく中国幻想の妄想から冷めやらない、財界親中派に対する配慮に過ぎないものと考えられます。安倍総理は、総理に就任してから6年間も中国に行きませんでしたが、昨年はじめて中国を訪れています。ところがその翌日に中国から帰った途端、インドのモディ首相を別荘に招待しています。この事実が、安倍外交の何であるかを象徴していると思います。

いずれ財界親中派も、世界の潮流が変わったこと、さらには、中国にはもう先がないことなどを理解することになれば、安倍政権も元の鞘にもどることになると思います。ただし現状でも中国に対する厳しい見方は変わっていないでしょう。

米国をはじめ、世界中の国々が中国に対して厳しい態度をとりつつある現在、安倍政権による財界親中派に対する配慮はいつまでも継続できないでしょう。

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2019年11月24日日曜日

消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない―【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!

消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない

麻生財務相はわかっていない

不可解な「麻生発言」

「安倍晋三首相から経済対策の指示は出ておらず、現時点でその必要性も感じない」

11月1日の閣議後、会見でこう述べたのは麻生太郎財務相である。だがこの発言が密かに、周囲の混乱を生んでいる。


麻生財務大臣

というのも麻生財務相は、今年7月の参院選当時、10月の消費増税後に世界経済が大幅悪化した場合などを念頭に「必要な事態が起きれば、それなりの対応をしようと財政当局として考えている」と発言。

今秋に追加経済対策を実施する可能性を示唆していたからだ。

奇しくも同日付の日経新聞では、「安倍晋三首相は大規模災害や来年夏の五輪後の経済成長を底上げするため、経済対策の策定を近く指示する」と報じられた。

麻生氏の発言とは正反対の趣旨である。

おまけに、こんな数字も同日、厚労省から発表された。9月の有効求人倍率で、その数値は前月比0・02ポイント低下の1・57倍となった。これだけで景気後退は断言できないが、見逃していい数字でもない。ますます麻生氏の発言の真意を計りかねるところだ。


景気後退のサイン

景気停滞について、その兆候を示す調査がちらほらと出始めている。

NHKは、消費増税から1ヵ月が経過し、小売りや外食などの主な企業50社に調査を行った。その結果は、6割の企業が増税のあと、売り上げが前の年の同じ時期よりも減少したと回答したのだ。



また、日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査では、同じく消費増税から1ヵ月で、家計支出について「変わらない」と回答したのは76%、「減らした」と回答したのは21%だった。

ちなみに'14年の消費増税時は、「変わらない」は66%「減らした」は31%だった。今回の増税は8%から10%、前回は5%から8%と、増税割合は前回のほうが大きい。増税幅と消費減少の連動を示している数字といえよう。

さらに、総務省が発表した、10月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)も見てほしい。前年同月比0・5%上昇で9月から横ばいだが、増税による押し上げを除くと0・34%で、2年3ヵ月ぶりの低い伸びだった。

また、実質消費支出でいうと、'14年は前年比マイナス2・5%であった。

ここから今回の消費増税の影響を算出してみると、およそ1・8%の消費支出マイナスになることが想定される。

先の読めない金庫番

あまりインパクトを感じない数字かもしれないが、消費以外の需要項目、民間住宅、民間設備投資、公的部門、外需がかなり頑張らないと実質GDP成長率がゼロ近辺に落ち込むレベルといえる。

米中貿易戦争にブレグジット、ホルムズ海峡の緊張や日韓関係悪化と、地政学リスクは7月の参院選時より明らかに増えている。となれば、外需だのみは通用しない。

大規模の景気対策を打たないと、来年の中盤から、つるべ落としの景気悪化になるかもしれない。にもかかわらず麻生財務相が「経済対策は不要」と言い切るのは不可解としか言いようがない。

今の臨時国会は、経産相と法相の二人が辞任する異常事態だ。その中で、補正予算を通さなければいけない。財務相ならその厳しさをわかっているはずだが、どうも先の読めない金庫番、という顔をしているのは愚かだ。

『週刊現代』2019年11月16日号より

【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!

さて、国内景気に関しては、もう一つ不安要因もあります。11月20日に発表された10月分の訪日外客数は前年同月比-5.5%と、8月分と同様に昨年の実績を下回りました。

訪日客によるインバウンド消費金額は2018年に4.5兆円と、2012年(約1兆円)から3.5兆円増えました。個人消費全体が約300兆円ですから、その1%相当を超える消費需要が過去6年で現れました。

インバウンド消費の拡大に加えて、訪日客到来によるビジネス機会の広がりが促した設備投資需要などの波及効果を含めると、インバウンド消費は2013年以降の日本経済の成長を支える牽引役となっていました。その牽引役が、足元で勢いを失っているといえます。

実際に、足元ではインバウンド需要の停滞により、旅行、化粧品関連などの企業で業績悪化が目立っています。個別企業、そして観光需要に依存している地方などには、無視できない悪影響がみられています。

ただ、韓国からの訪日客の大幅な減少だけで日本経済全体が失速する可能性は低いと、私は思います。日韓関係修復の時期は予想できませんが、訪日客全体に占めるシェアが最も大きい中国だけではなく、アジア以外からの訪日客数も順調に伸びています。足元で訪日客は一時的に減っていますが、年間ベースで減少に転じる可能性は低いとみています。

平成29年の日本人国内旅行消費額は、21兆1,130億円(前年比0.8%増)となり、うち宿泊旅行が16兆798億円(前年比0.3%増)、日帰り旅行が5兆332億円(前年比2.3%増)です。

日本人国内延べ旅行者数は、6億4,751万人(前年比1.0%増)となり、うち宿泊旅行が3億2,333万人(前年比0.7%減)、日帰り旅行が3億2,418万人(前年比2.8%増)です。



なぜか、インバウンドばかりに目がいきますが、やはり日本人の旅行者のほうが圧倒的に実数も、消費もはるかに大きいです。現状のインパウンドの4.5兆円と比較すると、20兆円規模です。



少子高齢化の影響もあってか、日本人の延べ旅行者数は、減る傾向にはありますが、消費額の推移をみると、だいたい20兆円台で推移しています。インバウンド消費(18年で4.5兆円)よりもはるかに大きいことがわかります。

インバウンド消費停滞の経済全体へ影響は限定的である一方、日本経済の成長をはっきり押し下げるのは消費増税による緊縮財政政策の悪影響です。当然日本人の国内旅行での消費も減ることになるでしょう。

インバウンド消費は、GDPの1%に過ぎないのですが、日本人による個人消費はGDPの60%を占めます。個人消費が冷え込めば、インバウンド消費がかなり増えたとしても、それは帳消しになります。

11月14日に判明した7~9月実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率+0.2%と、ほぼゼロ成長でした。個人消費は前期比+0.4%と消費増税前の駆け込み消費があったにも関わらず、低い伸びにとどまりました。

個人消費がやや伸びた一方で、在庫投資が成長押し下げ要因になっていましたが、これは駆け込み消費によって積み上がっていた在庫が大きく減少したことを示しています。このため、10~12月には個人消費が落ち込み、GDP成長率は大幅なマイナス成長になる可能性が高いとみられます。

なお、前述した訪日客の8月以降の急減は、GDP統計上では輸出にカウントされますが、輸出全体を前期比-0.3%ポイント押し下げ、7~9月の経済成長に関して若干足を引っ張った格好になります。

インバウンド消費という牽引役が勢いを失う中で、消費増税による悪影響によって2020年前半まで日本経済の停滞が鮮明になり、東京五輪の年となる2020年度のGDP成長率はほぼゼロまで減速する可能性が大きいです。ゼロどころか、マイナス成長になる可能性すらあります。

最近、一部の政治家から10兆円規模の補正予算を求める声があがっていますが、消費増税による緊縮財政を覆すような財政政策を、麻生財務大臣の発言からもうかがえるように、現在の安倍政権が行う可能性はかなり低いことでしょう。

このため、2020年にかけて日本国内には成長を押し上げる要因はほぼ見当たらず、停滞局面に入った日本経済の底入れは、米中を中心とした海外経済の減速に歯止めがかかるタイミングが決定的に影響するでしょう。10月以降勢い良く上昇してきた日本株の2020年にかけての先行きも、海外の経済・株式市場次第の状況が続くことになりそうです。

このような状況を麻生財務相はわかっていないようです。補正予算は真水10兆円で与党と財務省の間で攻防中です。この決着がつくのは、今の臨時国会か、年明けの通常国会冒頭かは今のところ不明です。

年明けになれば、通常国会の召集日が1月下旬から1月上中旬になります。現状の国債がマイナス金利なら真水10兆円なんてチマチマしたことをいわずに、国債を金利がゼロになるまで発行しつづければ、103兆円分は刷れるはずと高橋洋一氏が試算しています。

これは、以前の記事にも掲載したことなのですが、国債を擦りまくり100兆円基金を創設して、今後の有効需要確保するという手があり、実際それを実行すれば、たとえ増税したとしても、令和年間はデフレにならなくてもすむ可能性があるのですが、麻生財務大臣には、期待できそうもありません。

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2019年11月23日土曜日

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避―【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になった。日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避

記者団からGSOMIAの継続について記者団の質問に答える安倍首相=22日午後、首相官邸

 日本政府は、韓国からの輸出管理厳格化の撤回要求を拒否し続けた上、米国が韓国に圧力をかける構図を作り上げたことが、韓国政府の今回の決定につながったとみている。日本政府は貿易管理をめぐる当局間の協議再開には応じるものの、「一切妥協はしない」(政府高官)方針だ。

 「ほとんどこちらのパーフェクトゲームだった」

 韓国政府の突然の方針転換に日本政府高官はこう語った。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄通告を改めさせ、日米韓の安全保障協力が維持されるからだけではない。日本側の予想を超え、韓国が輸出管理の厳格化をめぐる世界貿易機関(WTO)への提訴手続きまで見合わせたからだ。

 韓国側は8月下旬、日本政府による対韓輸出管理厳格化への対抗措置としてGSOMIAの破棄を決定し、破棄撤回の条件として輸出管理厳格化の見直しを求めていた。

 韓国側の態度が変化したのは「ここ2、3日」(政府筋)だったという。

 日本政府は「GSOMIAと輸出管理は次元が違う」として韓国側が設定した土俵には乗らず、「賢明な対応」(菅義偉官房長官)を促し続ける戦術を徹底した。政府高官によると、米国は「トランプ米大統領は安倍晋三首相側に立つ」と韓国側に伝えており、日本政府は米国の韓国に対する圧力が非常に強かったとみている。

 日本政府は、日韓共通の同盟国である米国と課題意識を共有してきた。外交・安保関係者の間では、GSOMIAの破棄で最も影響を受けるのは米国だとの見方が強いからだ。外務省関係者は「首相はトランプ氏に対し、いかに韓国の対応がおかしいかを繰り返し説明してきた」と明かす。

 さまざまなレベルでの働きかけの結果、GSOMIAの破棄は米韓の問題でもあるとして「米国から韓国にガンガン言ってもらう」(外務省関係者)形に持ち込むことに成功した。

 文在寅政権は強気の言動を繰り返していたが、日本側のぶれない姿勢と米国の強い圧力を前に、実際は「追い詰められていた」(官邸関係者)とみられる。

 首相は22日夜、森喜朗元首相らと東京都内で会食した。出席者によると、首相はGSOMIAの失効回避について「よかった」と話していたという。(産経新聞 原川貴郎)


【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰に!日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

今回のGSOMIAの失効回避は、韓国のいわゆるバランス外交が失敗したことが露呈したと捉えるべきと思います。このバランス外交とは、なにかといえば、米と中国の間をうまくバランスをとり自国に有利になるようにする外交という言う意味です。

無論このバランス外交は成功事例もあるのですが、なかなかうまくいかないという現実があります。

韓国がいつからバランス外交的妄想に憑りつかれたのかといえば、後で述べるように髄分昔からですが、最近では記憶する限り盧武鉉大統領時代ではないかと思います。

それまで韓国は米国の忠実な同盟国として振る舞ってきたのですが、盧武鉉は強烈な反日、反米論者として登場しました。その親北姿勢は米国をハラハラさせる傍ら、彼が断固として宣言した外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大なものでした。

バランサーというのは米中とも韓国を敵に廻しては不利になるほど強力である必要があります。盧武鉉はイラク戦争に3260人もの軍隊を派遣したのですが、軍事同盟国の米国側からすれば、韓国が引き揚げれば困るほどの数ではありませんでした。

中国に対しては経済的接近を図る反面、米・日とは距離を置く路線を採りました 。米・中間のバランサーというからには当然の路線かもしれません。この路線を引き継いだのが朴槿恵大統領であり、盧泰愚政権時代に、民情首席を努めた現在の文在寅大統領です。


文在寅(左)と盧泰愚(右)

朴槿恵は、韓国がバランサーであるためには、近辺の日本ごときは「歴史を顧みない不道徳国家である」と欧米に“告げ口”して廻ることからバランス外交を始めました。しかし中韓は別にして首脳が悪口を言って廻る国家が尊敬されるはずもありません。

朴槿恵氏は外交路線として「安全保障は米国と手を携え」、「経済は中国を重視する」と称しました。メディアは「安米経中」と名付けましたが、朴氏は自らが引けば米も中も困ると考えたのでしょう。

「自らを小国と考えてはいけない。それは敗北主義だ」と強調しました。米欧と一回りしたあと15年、中国のコケ脅しのような軍事パレードに参加を強行しました。たまたま米韓の間で「高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備するのが懸案となっていました。

渋る韓国に米国が怒り、はっきり断れない韓国に中国が怒ったのです。この兵器は北朝鮮の攻撃に対して極めて有効ですが、同時に中国の攻撃をも防ぐことができます。防衛兵器の配備一つを巡っても、韓国のバランス外交は成り立たないのです。

韓国外交のどこが間違ったかは明瞭です。どこかの国と防衛条約を結んだら、敵と見做す相手国との付き合いには不都合が起こるということです。

告げ口外交を展開した朴槿恵韓国大統領(左)と、オバマ米大統領(右)

朴槿恵の弾劾・罷免の後、大統領になったのが文在寅であり、分在寅の外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大な、盧泰愚のそれを引き継いだものでした。

そのためか、朴槿恵よりもさらに大きなレベルで、バランス外交を推し進めようとしました。日本に対しても朴槿恵のような告げ口外交どころか、GSOMIA破棄を大統領選の選挙公約とし、その後も海自の哨戒機に対するレーザー照射、慰安婦問題の蒸し返し、徴用工裁判なとで、日本に対する対立姿勢を顕にしました。

挙げ句の果に、本当にGSOMIAを破棄しようとしたのですが、日本からは無視され、米国からはとてつもない圧力をかけられました。そのため、破棄はやめたのですが、これは韓国外交の完全敗北であるにもかかわらず、今回破棄は撤回するがいつでも破棄できると国内に宣伝中という有様です。

これは、結局のところ、韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になったということです。いままでも、失敗は数多あるのですが、それでもなんとなく隠すことができました。特に、韓国内では隠蔽することができました。しかし、今回ばかりはさすがに隠蔽できないようです。

韓国のバランス政策は、最近始まったものではありません。李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗の政策は、外国を利用して他の国を抑え、自国は戦わずに安全を図る「以夷制夷(いいせいい)」というものでした。これは、現在でいえばバランス外交です。

清国の勢力が優勢となると対ロ接近を図り、第1、2次朝露密約(85、86年)を結びました。日清戦争(94年)後には再びロシアに接近しました。これは清国に代わり勢力を拡大した日本のけん制が狙いでした。しかし、これは結局失敗したのは、周知の通りです。

李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗

朝鮮半島では、古代にもバランス外交をしていたという史実が残っています。しかし、バランス外交はいずれの時代も成功を収めた事例はありません。にもかかわらず、現在の韓国でもなぜバランス外交を信奉しようとするのでしょうか。理解し難いところがあります。

しかし、文在寅氏、盧武鉉氏や朴槿恵氏を笑ってはいけないです。日本の政権与党である自民党にも、かつては日米、日中と“等距離外交”をすると豪語していた三木武夫首相がいました。

福田赳夫首相は“全方位外交”と称していました。その後も中国と太い人脈を繋げておけば、いざという時に役に立つと信じる党首脳がいたものでした。谷垣禎一氏や岸田文雄外相が属する宏池会は経済重視主義で中国側を向いていましたた。

日本は中国と太い人脈を繋げておいたはずなのに、その後ごく最近まで、日中関係表向きも、裏でもかなり悪化していました。

さらに、最近では中国は表では、日本に対する擦り寄り試製をみせています。これは、当然のことながら、米国から直接冷戦を挑まれていることや、香港問題が激化しているため、この時期に対日関係まで悪くはしたくないからでしょう。

とはいいながら、裏では尖閣に対する示威行動を未だに継続しているどころかさらに激化させています。これが共産主義の本質なのです。

にもかかわらず、日本は、来年習近平を国賓として迎えることを約束しています。こんなことをすれば、米国は当然反発するでしょうし、世界に日本が中国の蛮行を認めたという誤ったメッセージを与えてしまうことになりかねません。

ただし、自民党の保守系有志議員のグループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表幹事・青山繁晴参院議員)は13日、国会内で会合を開き、中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域への公船の侵入行為や香港市民に対する弾圧姿勢を改めない限り、来春予定される習近平国家主席の国賓としての来日に反対する決議文をまとめています。

しかし、これは無論与党の中でも、一部の動きであり、自民党そのものが来日に反対しているわけではありません。

日本が、来年習近平を国賓で迎え、天皇陛下に謁見することにでもなれば、日本も米国や米国の同盟国などから、今日の韓国のような扱いを受けるようになることは必定です。韓国のように米国から大きな圧力を受けてから、迎えることをやめるよりは、自らとりやめるようにすべきです。そうすれば、中国に対してより大きな衝撃を与えることになりまり、米国や他の同盟国に好印象を与えられることになります。


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