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2019年11月30日土曜日

【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応―【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!

【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応

テレビで報道されたゲオルギエワIMF専務理事の声明

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」との見解を示した。

 こうした発言については日本の財務省の影響が大きいことはこれまでにも本コラムに書いてきたが、この時期に出てくる背景は何だろうか。

 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わせたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見した。

 対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策について政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。

 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧を使ってでも消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシもある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとなる。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。

 なお、日本のマスコミが「ワシントン発」としてIMFのニュースを流すときは、IMF理事室がソースであることが多い。そこでは財務省からの日本人出向者が勤務しており、日本語で対応してくれるので、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されている。

 今回の専務理事の発言も財務省からのレクの結果だろうが、今は補正予算で「真水」10兆円という意見が、自民党と公明党から出ている。

財務省からレクを受ける共産党議員団ら

 自然災害が相次ぎ、予備費の枠では抜本的な対応ができないことも理由の一つだが、本コラムでも指摘したように国土交通省の公共投資の採択基準が時代に合わなくなっていることもある。つまり、公共投資の費用便益基準の算出に必要な将来割引率が4%と高すぎるのだ。これを15年も見直さなかった国交省の怠慢もある。この見直しが大型補正予算を後押ししている。

 市場金利はマイナスなので、絶好の将来投資機会という主張に財務省は防戦一方だ。冒頭のようなIMF専務理事の発言を利用したいと思っても不思議ではない。さらに、補正予算は今の臨時国会ではなく、年明けの通常国会冒頭という時間延ばし戦術もありだ。後は、来年度予算との取引で沈静化を図るのだろう。

 もっとも、来年の通常国会冒頭での補正予算は、安倍晋三政権にとっては衆院解散の絶好の口実にもなりうるので、財務省の対応は政治的には絶妙だといえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!

冒頭の記事で高橋洋一氏の結論部分の「もっとも、来年の通常国会冒頭での補正予算は、安倍晋三政権にとっては衆院解散の絶好の口実にもなりうるので、財務省の対応は政治的には絶妙だといえる」という結論は非常に興味ぶかいです。

高橋洋一氏は、年内の解散はないと見ているということだと思います。あるとすれば、来年の通常国会の冒頭であるとみているということです。

では、実際衆院の解散はあるのでしょうか。

公明党の山口那津男代表は27日、東京都内で講演し、年内や来年1月の通常国会冒頭での衆院解散に否定的な見方を示しました。12月に中国で予定される日中韓首脳会談をはじめとする外交日程を挙げて「重要な外交課題がめじろ押しだ。すっぽかして解散というわけにはいかない」と述べました。

開催国・チリの治安悪化で中止となった今月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を代替地で開催する可能性にも触れて「時期は予測がつかないが、日本の都合だけでは解散しにくい」と指摘しました。

山口氏は憲法改正論議を巡り、野党が主張する首相の解散権制約には慎重姿勢を表明しました。

その山口代表が29日の党会合で、28日夜に安倍晋三首相と会食したことを報告しています。「(国会)会期末、政府・与党で緊張感を持ってしっかり当たっていこうと確認し合った」と説明。両氏が一対一で夕食を共にするのは珍しく、公明党内では衆院解散などが話題になったのではないかとの臆測も出たそうです。

公明党幹部によると、28日の会食は首相からの呼び掛けで約2時間行われました。山口氏は首相と昨年11月に政権幹部らとともに夕食を共にしたことがあります。ただ、第2次安倍政権発足後の7年間近くで両氏が夜に2人で会食するのは初めてといいます。定期的な昼食会は首相官邸で行われています。

山口公明党代表と安倍総理

無論、「解散は時の首相の専権事項」で、安倍首相も訪米中の9月下旬の記者会見では「頭の片隅にも、真ん中にもない」とこれまでどおりの表現で年内解散を否定していました。

ところが、2夜連続で開催された衆参与党国対幹部との懇親会では、「あいさつと解散は急に来る」(10月8日)、「12月の選挙に勝ったことがある」(10月9日)と述べ、出席者をざわめかせました。

確かに、第2次安倍政権発足直前も含めた3回の衆院選のうち、2012年は12月16日(11月16日解散)、2014年は12月14日(11月21日解散)が投開票日で、いずれも自民が圧勝しています。このため、それまでは「単なる与太話」とされてきた12月15日衆院選説が、にわかに現実味を帯びてきました。

ただし、12月中旬選挙となると、11月には解散していなければならず、本日はもう11月30日なので、その目はほとんどなくなったと見るべきでしょう。

消費税増税を受け、衆院解散・総選挙は遠のいたとの見方が広がっています。政府・与党内では、来年秋以降との観測も多いようです。一方、増税の影響が顕在化する前の今年12月か来年1月の通常国会冒頭の解散も一部では取り沙汰されています

消費税は時の与党に国政選挙での苦戦を強いてきました。導入直後の1989年の参院選で自民党は大敗。10%までの引き上げを決めた旧民主党は2012年の衆院選で壊滅的敗北を喫しました。その後を受けた安倍内閣が連勝したことは、2度の増税延期と無縁ではありません。

そこで有力視されるのが来年秋以降です。「増税直後の選挙は負ける」とみて、東京五輪・パラリンピックを間に挟み、増税の影響を薄める狙いがあります。年明けからは五輪準備が本格化し、物理的にも解散が難しくなります。公明党が要請した軽減税率の仕組みは複雑で、「混乱が生じれば支持者が離れる」(同党関係者)との懸念もあり、こうした見方を後押ししています。

ただし、増税の影響が表れる10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表されるのは来年の2月17日です。このため「数字が出る前に解散を打った方がいいのではないか」(自民党関係者)との声もあります。野党側は立憲民主、国民民主両党が会派合流を決めたものの、離党の動きが出るなど臨戦態勢が整わず、与党にとっては好条件です。

1月解散となると、まさに選挙戦の最中にGDPの速報値が発表されることになるわけですが、その時に何の経済対策も打っていなければ、与党が大敗北となることが予想されます。

総選挙の開票開始後間もなく、自民党大敗の趨勢が判明、当選者もまばらな
ボードをバックに質問を受ける同党の麻生太郎総裁=2009年8月31日

しかし、そのときに真水の10兆円の対策を打つことを公約とすれば、話は随分と変わってきます。特に、先日もこのブログでも説明したように、現状では国債の金利はマイナスであり、国債を大量に刷ったとしても何の問題もありません。これは、多くの人に理解しやすいです。10兆円どころか、もっと多くを刷れる可能性もあります。

この対策とともに、日銀がイールドカーブ・コントロールによる現状の引き締め気味の金融政策をやめ、従来の姿勢に戻ることになれば、このブログにも以前掲載したように、マクロ経済的には増税の悪影響を取り除くこともできます。

安倍政権がこれを公約として、丁寧に政策を説明すれば、十分勝てる可能性はあります。来年秋以降ということになると、経済がかなり悪くなっていることが予想され、自民党の勝ち目は半減する可能性が大です。秋以降でなくても、選挙が後になれば、なるほど増税の悪影響がでてきます。

そうなると、いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高いのではないでしょうか。

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