2018年10月31日水曜日

TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!


TPPの年内発効が決まり、記者会見する茂木敏充経済再生担当相=
31日午前、東京外千代田区の中央合同庁舎第8号館

茂木敏充(としみつ)経済再生担当相は31日、東京都内で記者会見し、米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)について、日本時間の12月30日午前0時に発効すると発表した。域内の工業製品や農産品の関税は段階的に引き下げられ、投資や知的財産権保護など幅広い分野で高水準のルールを定めた。世界の国内総生産(GDP)の約13%を占め、総人口で約5億人を抱える巨大な自由貿易圏が誕生する。

 茂木氏は会見で「保護主義が強まる中、自由で公正な21世紀型のルールが確立するという強いメッセージの発信になる」と、発効の意義を強調した。

 また、茂木氏は新規加盟を希望する国の手続きなど今後の運営の詳細を協議する閣僚級の「TPP委員会」を来年1月にも日本で開催する方針も明らかにした。参加国の拡大により、保護主義の対抗軸となる経済圏づくりを目指す。



 日本は自動車など工業製品の輸出で追い風となるが、牛肉など安い農産品の流入で国内農業は打撃を受ける可能性もある。

 昨年1月にTPPから離脱した米国の製品は域内で関税引き下げの恩恵を受けられず、不利になる。日本は米国との関税交渉を来年1月中旬以降に開始する見通しで、引き続き米国にTPP復帰を促す考えだ。

 TPP11は6カ国以上の国内手続きが終了してから60日後に発効する。6カ国目となるオーストラリアが手続きを完了したため、年内に発効することになった。

 参加国で手続きを終えたのはオーストラリアのほか、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダの6カ国。ベトナムも11月半ばに手続きを終える見通しで、残るブルネイ、チリ、ペルー、マレーシアも手続きを進める。

【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!

オバマ前政権が推進してきたTPPには、「中国包囲網」という裏の目的がありました。

中国は、日本、韓国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の締結を主導して進めています。RCEPは「中国版TPP」ともいえる通商協定です。日本政府がTPP協定に固執し続けたのも、RCEPがアジアの通商ルールとして定着することを阻止するためでした。


TPPには、「国有企業の優遇禁止」や「知的財産の保護」などのルールが盛り込まれていますが、これはこのルールを守っていない中国を念頭に置いています。つまり今のままでは中国はTPPに参加できないため、こうしたルールを守るよう、中国に暗に迫っていたということです。

ところが、アメリカがTPPを離脱したことで、「中国包囲網」としてのTPPの有効性は、かなり毀損されました。

トランプ大統領が「TPPは正しい考え方ではなく、我々は貿易でTPP以上の成果を得られる」とTPPを否定する理由は、関税自主権を行使して、中国などとの貿易不均衡を是正したいからです。昨年のアメリカの対中貿易赤字は3470億ドル(約40兆円)。これを関税などによって解消しようというのが、米国の対中貿易戦争です。

「弱いアメリカ」がTPP参加国とともに中国経済に対抗する方針から、「強いアメリカ」として二国間交渉で中国に臨む方針に変わったということのようです。そうして、米国は実際に対中国貿易戦争を開始しました。これは、もうトランプ政権による貿易戦争の次元から、超党派の米国議会による経済冷戦の次元にまで高まっています。

1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、TPPからの正式離脱に関する大統領令に署名した

おそらく、中国の体制が変わるまで、かなり長い間、米国は対中国制裁をやめないどころか、あらゆる手段を講じて、中国を追い詰めるでしょう。

中国は、アメリカを抜いて世界の覇権を握ることを目指していますが、まだ米国と全面対決できるほどの力はありません。

米国が問題視している国際貿易機関(WTO)で規定されていない、知的財産権や技術移転要求については、日本は米国に協調できます。その手段として考えられるのがTPPの活用です。米国が中国に対して懸念していることのすべてはTPP協定でカバーしています。

タイ、インドネシア、台湾、英国、コロンビアなどを加入させてTPPが拡大し、また米国がTPPに復帰するなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなります。その時、中国に知的財産権や投資についての高度な規定を課すことができます。努力すべきはTPP参加国の拡大です。

ただし、中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。

この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。

最悪、米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。

この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPPは加盟国だけではなく世界にとって、有用な協定になる可能性が高まってきたのは事実です。
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2018年10月30日火曜日

原告勝訴で前代未聞の判断 「解決済み」請求権問題蒸し返す【私の論評】韓国が慰安婦・徴用工問題を蒸し返し続けるなら、国交断絶で良い(゚д゚)!

原告勝訴で前代未聞の判断 「解決済み」請求権問題蒸し返す

30日、判決が言い渡される前に韓国最高裁前で集会を開く原告側の支援者ら

 韓国人の元徴用工が新日鉄住金を相手取った訴訟で、韓国最高裁は原告勝訴とし、1965年の日韓請求権協定で「解決済み」である請求権問題を蒸し返した。同協定に基づけば、個人が訴えを起こそうが、請求権は法的には救済されないもので、前代未聞の判断だ。

 労働動員者(徴用工)への補償問題は、日韓国交正常化交渉での主要議題だった。日本側は根拠のある請求権を持つ個人への直接支払いを提案。しかし、韓国側が個人を含むすべての請求権に関わる資金を韓国政府に一括し支払うことを要求。日本側がこれを受け入れ、請求権協定に従い最終的に、無償の3億ドルは韓国政府に支払われた。

 韓国政府も当時、「我々が日本国に要求する請求権に国際法を適用してみれば、領土の分離分割に伴う財政上及び民事上の請求権解決の問題なのだ」(1965年の韓日会談白書)と明言している。民事上の請求は請求権協定で解決したことを韓国側も認めたわけで、韓国は日本政府による個人への補償を拒み、韓国政府が義務を負うことを選んだ。

 それから40年の2005年。盧武鉉(ノムヒョン)大統領(当時)は日韓国交正常化に至る外交文書を公開し、当時の確約を再確認しつつも、日本の「謝罪と賠償」の必要性を訴えた。12年5月、上告審で最高裁は戦時の徴用だけでなく「植民地支配(日本の統治)」の不法性にまで解釈を拡大し「損害賠償請求権が請求権協定で解決されたとみるのは難しい」とし、高裁に差し戻した。

 ただ、韓国政府は「日本は何も償っていない」という協定を無視した世論にも関わらず、国家間の合意上、「請求権問題は解決済み」との立場は守ってきた。だが、ここに来て国際条約(請求権協定)をほごにする司法判断が出た。

 最高裁判決を前に韓国では、朴槿恵(パククネ)前政権の意向をくみ、元徴用工訴訟の判決を先延ばししたとして、最高裁所属機関の幹部が逮捕され、今回の原告勝訴の可能性がさらに高まった。

 慰安婦問題同様、韓国で徴用工問題は国民感情や日本への不満を基に叫ばれている。「日本との歴史問題をめぐる国民感情を重視した判決」と韓国国内の事情を問題視されても仕方がない。韓国最高裁の判決は、国民情緒を理由に国際常識をひっくり返し、法の枠組みを壊そうとする国際常識への挑戦でもある。

【私の論評】韓国が慰安婦・徴用工問題を蒸し返し続けるなら、国交断絶で良い(゚д゚)!

韓国外務省報道官は30日の会見で「今回の判決が韓日関係に否定的な影響を及ぼさぬよう両国の知恵を集める必要性を日本側に伝えている」と指摘。韓国政府の立場について「判決を機にさまざまな検討がなされる予定だ」と述べました。

文大統領は歴史認識と経済を切り離す日本との“ツー・トラック外交”を掲げています。また、小渕恵三首相と金大中大統領(いずれも当時)が発表した「日韓パートナーシップ宣言」から20周年の今年を機に、未来志向の日韓関係を志向しています。

韓国は今後、日本に何らかの歩み寄りをするかもしれないです。しかし、国家間合意を平然と覆す国の主張は、日本にはこれ以上通じないです。未来志向どころか慰安婦問題同様、韓国は徴用工問題での誤解も国際的に拡散することでしょう。

今後、日本企業を相手取った他の訴訟でも同様の判決が相次ぐ恐れがあり、企業側の韓国内の資産が差し押さえられる事態も想定されます。日本からの投資は萎縮することになるでしょう。

元来、政権が変わったら前政権が行った政策は覆しても構わない、という発想が韓国政治の特徴である。ところが国際社会では、前政権の外交上の約束事は次の政権も引き継がなくてはいけないのが鉄則です。

日本も民主党政権時の政策の尻拭いを現政権がしています。米国ではトランプ政権がオバマ政権の尻拭いをしています。それが国際社会における当然の姿勢です。つまり1965年の日韓請求権協定の破棄は外交的にはありえない、恥ずべき行為の極みです。そのことを韓国は知るべきです。

この問題について、安倍晋三首相は本日の衆院本会議で日本維新の会の馬場伸幸幹事長の質問に答えて、「1965年の日韓請求権協定で、完全かつ最終的に解決しており、この判決は国際法に照らしてありえない判断」と述べました。そのうえで「日本政府として毅然として対応する」と語りました。

本日国会で「毅然として対応すると」語った安倍総理

河野外務大臣は「極めて遺憾で、断じて受け入れられない」としたうえで、「国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然(きぜん)とした対応を講ずる」とした談話を発表しました。

この中で河野外務大臣は、今回の判決について「日韓請求権協定に明らかに反し、日本企業に対し不当な不利益を負わせるものであるばかりか、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって、極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできない」と強く批判しています。

そして「韓国が直ちに国際法違反の状態を是正することを含め、適切な措置を講ずることを強く求める。直ちに適切な措置が講じられない場合には、日本として、日本企業の正当な経済活動の保護の観点からも、国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然ととした対応を講ずる」としています。

また外務省は、この問題に万全の体制で臨むため、30日付けで、アジア大洋州局に「日韓請求権関連問題対策室」を設置しました。


このまま韓国が、この問題を蒸し返し続ければ、最終的には国交断絶ということになるかもしれません。しかし、そうなっても困るのは韓国であって、日本はまったく国益を損なうことはありません。

そもそも昨年1月9日、韓国・釜山(プサン)の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことへの対抗措置の一環として、長嶺駐韓大使らが日本にしばくら帰国していましたが、政治的に何の支障も生じていませんでした。

経済的には、支障どころか日本には大きな利益があります。例えば、日本が資本財の輸出を制限するだけで、韓国経済は壊滅的な打撃を受けます。

電機業界をはじめ、日本メーカーと韓国メーカーは熾烈な競合関係にありながら、韓国は日本から半導体の原材料や生産設備などの資本財を大量に輸入して製品(消費財)を生産し、世界のマーケットシェアを日本メーカーから奪ってきました。

そこで日本が韓国への資本財の輸出を制限すれば、サムスンやLGをはじめとする韓国メーカーは生産が滞り、窮地に立たされるのは火を見るより明らかです。その反面、日本メーカーが世界市場を奪回することが可能となります。

資本財の輸出制限は本来、世界貿易機関(WTO)協定違反です。ところが、断交という安全保障上の理由であれば可能です。韓国の貿易依存度は40%超(日本の約3倍)です。牽引するサムスンやLGが国際競争力を失えば、韓国全体が大打撃を受けるのは当然です。

そうして、現在はご存知のように米中は貿易戦争を実施しており、これははなから米国が有利であり、中国は苦戦しています。

韓国の主な取引先は中国、米国、日本です。中国への依存度は26%と非常に高いです。そう簡単に縁を切れるような数字ではありません。

中国シフトを継続すれば、間違いなく米国から干されることになります。ところが、韓国にとって米国は安全保障上で欠かせない国です。

近いうちに韓国は米中から「踏み絵」を踏まされることになる。いつもの蝙蝠外交がどこまで通じるかはわからないですが、苦渋の決断を迫られることでしょう。しかし、米中のどちらを取るにしても、韓国経済にとっては良いことはありません。
米中対立は韓国にとっては災いでしかありません。中国経済が失速すれば韓国市場も投げ売りされます。実際 韓国の株価指数が10月に入って世界主要指数のうち最も大きく下落したことが分かっています。韓国経済と株式市場の魅力が落ち、外国人の韓国市場離れ、すなわち「コリアパッシング」現象が発生したからだと指摘されています。 韓国では、米国・中国株式市場が少しでも下がれば急落し、これら株式市場が反騰してもそれほど上昇しません。

さらに、徴用工問題は、今後日韓通貨スワップの再開の最大の障害となる可能性があります。

韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は22日、「まだ条件がそろっていない」としつつも「日本との通貨スワップ協定はいくらでも再開の可能性がある」と述べていました。

韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁

しかし、安倍政権が続く限りは日韓通貨スワップ再開の可能性は限りなくゼロに近いと思います。いや、むしろ、「日本が日韓通貨スワップ協定を再開するための障壁」があまりにも多すぎ、パッと思いつく限りでも、10個や20個は列挙できる程です。以下に列挙してみます。
  • 2015年12月の「日韓慰安婦合意」を誠実に履行しようとしないこと。
  • 2016年12月に釜山の総領事館前に新たな慰安婦像設置を許したこと。
  • 慰安婦問題を蒸し返そうとしていること。
  • 韓国が国を挙げて、全世界で慰安婦像の設置を強行していること。
  • 高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の運用を妨げていること。
  • 竹島を不法占拠していること。
  • 北朝鮮に対する「最大限の圧力」という国際的な協調を乱したこと。
  • 仏像を日本から盗み出して返そうとしないこと。
  • 「徴用工問題」というありもしない問題を捏造して日本を糾弾していること。
  • 日本海という呼称を「東海」という名称に勝手に書き換えようとしていること。
  • 旭日旗を「戦犯旗」などと呼んで侮辱していること。
ここにきて、今回の判決です。これでどうして日本が日韓通貨スワップに応じることができるというのでしょうか。

この通貨スワップは、通貨危機(為替レートの暴落)に陥った緊急時に通貨を融通し合う協定ですが、韓国経済の破綻より先に日本が韓国ウォンとの両替を必要とするような日は絶対に訪れないでしょう。しかし、国交断絶すれば、韓国側に一方的に利がある協定に日本は付き合わなくて済みます。

このブログでも掲載してきたように、韓国国内では若年層(15~24歳)の失業率が2ケタを超えるまでに悪化するなど、若者の就職難が続いています。最近日本では留学生と称した労働者の流入が増加し、日本人の雇用を脅かしています。断交となれば、韓国からのそれら移民まがいの労働者の流入もカットできる。日本にとってはまさにいいことずくめです。

韓国が、いつまでたっても、慰安婦問題、徴用工問題を蒸し返し続けるなら、日本は国交断絶をすれば、それで良いのです。これによって、日本は沈みゆく泥舟による被害を最小限にとどめることがてきます。

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2018年10月29日月曜日

メルケル独首相、与党党首再選を断念 首相は継続…後継選び議論加速―【私の論評】「ぶったるみドイツ」の原因をつくったメルケルの敗退は当然(゚д゚)!


ドイツのメルケル首相=29日、ベルリン

ドイツのメルケル首相は29日、自身が率いる保守系政党、キリスト教民主同盟(CDU)の党首再選を断念する意向を固めた。首相職は続ける考え。独メディアが一斉に報じた。2005年以降、首相として13年間にわたってドイツのかじを取り、欧州政治に大きな影響を与えてきたメルケル氏の後継者選びをめぐる議論が加速する。

 CDUは12月上旬に党大会を開き、2年に1度の党首選挙を行う予定で、メルケル氏の態度が注目されていた。DPA通信などによると、メルケル氏は29日の党内の会合で党首選には出馬せず、後継に道を譲る用意があると伝えた。

 メルケル氏は00年以降、18年間、党首を務めてきた。首相任期は21年秋まで。独メディアはこれまで今期が最後になるとの見方を伝えてきた。

 ドイツでは28日、西部ヘッセン州の州議会選挙が行われ、CDUは第1党の座を維持したが、得票率は27%で13年の前回選挙から約11ポイント減り、過去約半世紀で最低水準に低迷した。メルケル氏はこれを受け、党首選不出馬の決断を下したもようだ。

 4期目のメルケル氏は昨秋の総選挙後、半年間の難交渉の末に中道左派の社会民主党との連立政権樹立にこぎつけたが、政権内は移民・難民政策などをめぐる内輪もめが絶えず、今月14日の南部バイエルン州の州議会選でも連立与党2党が大敗。メルケル氏の求心力低下が鮮明になっていた。

【私の論評】「ぶったるみドイツ」の原因をつくったメルケルの敗退は当然(゚д゚)!

このブログでは最近ドイツのことはを「ぶったるみドイツ」として批判してきました。その記事のリンクを掲載します。
なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!
中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!
中国との対決に備え、米国が空軍も大増強へ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」ほど酷くはないが日本の防衛予算にも問題あり(゚д゚)!

詳細は、これらの記事をご覧いただくものとして、ドイツの緊縮ぶり等に触れている部分をこれらの記事から引用します。
ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したが、その有効性は疑問視されるばかりです。 
ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。 
こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。
ドイツの主力戦車「レオパルド2」
昨年10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなったのです。 
ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っています。
ドイツ海軍の通常動力型潜水艦212型。ドイツが設計 建造しドイツの優れた造艦技術と
最先端科学の集大成であり、世界で初めて燃料電池を採用したAIP搭載潜水艦である。
紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっています。ところがドイツ海軍には、この事故で作戦投入可能な潜水艦が一隻もなくなってしまったというのです。 
Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめました。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模的にもに小さいです。 
212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びました。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度です。 
ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定ですかが再配備に公試数か月が必要だとされています。
そうして、このような緊縮をしているドイツが、中国と自由貿易を促進しようと企てていました。
ドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が9日(7月)、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意しました。両首脳は米国との貿易戦争が本格化する中、多国間の貿易秩序に関与していく姿勢を強調しました。 
これは、11日のブリュッセルでのNATO首脳会談の直前のことです。米国が、対中国貿易戦争をはじめたばかりのこの時期に、ドイツがこのようなことをしたわけですから、トランプ大統領としては、ドイツに対して恨み節の一つも言いたくなるのは、当然といえば当然です。 
メルケルと李克強

現在のドイツ軍は創設以来最悪の状況なのではないかと思います。 そうして、EUでも中国に対する警戒心が高まっている最中にこの有様です。

そのEUが現在おかれている課題を簡単に以下にまとめておきます。
ユーロ圏は全体として、少なくとも趨勢的停滞の初期の段階にあります。ユーロ圏の現状のインフレ率は、低すぎでありECB目標の半分しかなく、これに対処するには財政刺激策が必要です。 
欧州内での相対的な物価・賃金が適正ではありません。以下に2015年 EU諸国の手取り平均月収の表をあげておきます。
平均賃金表
2015年 EU諸国の手取り平均月収(米ドル、ユーロ)

南欧ではさらに引き下げが必要ですが、そうするよりは、ドイツが好景気になりインフレが高進する方が実現しやすいでしょう。そうして、銀行システムは公的資金注入が必要です。
こうした欧州の状況に、ドイツの緊縮はどう作用するのでしょうか。これも下に簡単にまとめておきます。

ドイツの緊縮が欧州全体の需要を弱め、低金利にもかかわらず、他国にも緊縮を押し付けてしまうことになっています。ドイツが好景気・高インフレになれば、それが南欧での高インフレにもなるのですが、ドイツが緊縮してしまうので、それも起こらないのです。ドイツが銀行救済でベイル・インを求めており、問題が長期化しかねない状況です。
このような状況です。ドイツの緊縮は国内では、安全保障に大きなしわ寄せをもたらすだけではなく、他国にも悪影響を及ぼしているのです。

ドイツの緊縮は異常です。他国とはまるで違った世界にでも住んでいるようです。この状況を改善するには、メルケルが首相のままでは駄目だという声が大きくなり、与党CDUは最近の選挙で過去約半世紀で最低水準に低迷したのでしょう。

この他にも、メルケルには移民問題での不手際もありましたが、やはり緊縮財政に対する批判が最も大きく根の深いものでした。

この「ぶったるみドイツ」問題は、日本とも無縁ではありません。なぜなら、来年の10月から日本が予定通り10%増税をしてしまえば、ドイツと同じように緊縮財政に大きく一歩踏み出すことになるからです。

緊縮財政とは、政府支出の削減や増税といった手段で政府の財政を均衡させる試みのことです。

緊縮財政においては公的支出が縮小され、具体的には公務員の人員削減や給与カット、インフラストラクチャー投資への予算削減などが行われます。消費税などの間接税や法人税も増税される可能性があります。富裕層に対する富裕税も検討されます。

研究や教育への政府支出の削減の結果として、研究プロジェクトの規模縮小や学費の値上げが起こる可能性もありますが、教育費には配慮して値上げされない場合もあります。

実体経済に与える影響が大きいため、不況下ではなく緊縮財政の施行は世論の反発を受けるでしょうが好景気下でするのが理想です。しかし数年後の経済成長率を悪化させ逆効果となる可能性もあります。

緊縮財政政策の推進者らは政府の負債を家計のクレジットカードの請求書に喩えたがります。彼らの意図は、政府の財政拡張が利払いの増加を促すために国が破綻するのだとするシナリオを人々に植えつけることです。

 政府財政を家計と混同して議論することは無意味です。なぜなら政府は徴税だけでなく、債券の発行、紙幣増刷、さらには経済成長(による増収)によって資金調達できるからです。政府が借金を拡大させて投資をすれば、経済成長が起こりGDPが拡大して公的債務対GDPは減少します。

自国通貨建ての債務で政府が債務不履行になることはありえないです。例えばFRBの議長を務めたアラン・グリーンスパンも述べるように米国政府は通貨発行権限を有し、債務不履行に陥る確率はゼロです。セントルイス連邦準備銀行も同様のことに言及しています。

来年10月から、本当に日本もさらに緊縮財政にのめり込めば、安倍総理にもメルケル首相と同じ運命が待ち受けることになるかもしれません。

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2018年10月28日日曜日

安倍首相 インド首相を別荘招待で関係強化へ―【私の論評】今回の会談は自国の都合だけで動く中国に勘違いさせないという意義もある(゚д゚)!

安倍首相 インド首相を別荘招待で関係強化へ



安倍総理大臣は、28日、日本を訪れているインドのモディ首相を、外国の要人としては初めて山梨県にあるみずからの別荘に招き、夕食をともにしたうえで、29日には、東京で首脳会談に臨み、安全保障や経済分野での関係強化を確認することにしています。

インドのモディ首相は、27日夜、特別機で羽田空港に到着し29日までの日程で日本に滞在する予定で、28日は、富士山が見える山梨県のホテルで、安倍総理大臣と非公式の昼食会を行うことにしています。

そして、産業用ロボットメーカーの工場を視察したあと、山梨県鳴沢村にある安倍総理大臣の別荘で、夕食をともにします。安倍総理大臣がみずからの別荘に、外国の要人を招くのは初めてで、個人的な信頼関係をさらに深めるとともに、高い経済成長を続けるインドを重視する姿勢をアピールしたい考えです。

両首脳は、29日、12回目となる首脳会談に臨み、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた安全保障分野での協力や、日本企業の進出の促進など、政治、経済両面で連携を強化していくことで合意する見通しです。

さらに、RCEP=東アジア地域包括的経済連携を年内に実質的な合意へと導くため、国内の産業界を中心に慎重な意見が出ているインドからも協力を取り付けたい考えです。

インド側の狙いは

経済発展の加速を政権の最優先事項に掲げるモディ首相は日本をパートナーとして重視する姿勢を示し、日本企業の積極的な投資を呼びかけてきました。今回の安倍総理大臣との首脳会談でもインフラの整備や製造業の育成、それにAI=人工知能の技術を使った開発を進めるために日本側の協力を求めるものとみられます。

また、モディ政権はミャンマーと国境を接する北東部をインドと東南アジアを結ぶ戦略的に重要な地域と位置づけて開発を進めています。この地域のインフラ整備などにおいても日本からのさらなる支援を取り付けたい考えです。

インド西部のムンバイとアーメダバードを結ぶ新しい高速鉄道は日本の新幹線技術を導入する予定で2023年の操業開始に向けて今後の具体的な計画を話し合う見込みです。

首脳会談では安全保障も重要なテーマになる見通しです。インド洋とその沿岸地域では中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を推進するため港湾や道路などのインフラ整備を進めているほか、海軍の艦船を展開させて急速に影響力を強めていてインドはこうした動きを警戒しています。

インドはインド洋で日本・アメリカと3か国合同の軍事演習を定期的に行っているほか11月には陸上自衛隊と初めての合同訓練を行うなど日米との連携を深めています。中国の海洋進出の動きを念頭に、安全保障の分野でも日本との関係を強化したい考えです。

【私の論評】今回の会談は自国の都合だけで動く中国に勘違いさせないという意義もある(゚д゚)!


インドのモディ首相が2014年の就任以来、安倍晋三首相と毎年、互いの国を訪問し合うシャトル外交を続けています。これは、南アジアへの浸透を図る中国を念頭に、日本との関係を強化するのが狙いです。

インドは今年に入り、中国とも関係改善を進めていますが、一方で自国周辺に影響力を及ぼしている中国への警戒は緩めていません。

モディ氏は今年4月、中国・武漢で中国の習近平国家主席と会談。昨年、2カ月以上にわたり係争地ドクラム(中国名・洞朗)高地で中印両軍がにらみ合った局面からの関係改善で一致しました。6月には中国主導の国際金融機関アジアインフラ投資銀行(AIIB)から融資を引き出しました。

一方、中国がインド周辺に海洋拠点を築く「真珠の首飾り」戦略に対し、インドは警戒感を隠していません。外務省高官は「中国との関係改善は地域の安定に資する。ただ、中国には(周辺国との)調和が必要だ」と指摘しました。

日印両国は、米国、オーストラリアと共に、中国の海洋進出をけん制する「自由で開かれたインド太平洋」戦略を共有するパートナーです。インド外務省当局者によると、インドの隣国スリランカでは、日印が協力して液化天然ガス施設整備を進めており、今回の日印首脳会談でも同様の協調支援推進について協議する見通しだ。

ただ、スリランカでは26日、親インドのウィクラマシンハ首相が解任され、親中国のラジャパクサ前大統領が首相に就任、政権が親中路線に進む可能性が指摘されています。中国の進出へのインドの懸念が消えない中で「5年間の蓄積」(外務省高官)がある日本との関係強化は欠かせません。

スリランカのジャパクサ新首相

安倍総理は先日中国訪問し、首脳会談を行ったばかりです。これに関しては、保守派の人々の中にも、「安倍首相の訪中は中国に良いこと尽くしの展開となった。中国を助ける通貨交換協定は再開され、「第三国市場での協力」の名目で日本は事実上一帯一路に参加。おまけに、安倍首相自身は習近平との会談では一帯一路を評価する発言をした。そこまで中国に迎合して関係改善する必要性は日本にあるのか??」(石平氏ツイート)等の批判があります。

しかし、これは早計な判断だと思います。そもそも、日中首脳会談を実施した直後に日印首脳会談を実施するということにもそれなりに安倍総理の意図があったと思います。

どの国のどのリーダーにも固有の立場と、思惑があります。中国と対立しているモディ首相も上で述べたように、今年の4 月に習近平と会談しています。敵対する国の首脳と会談をするのは、相手の腹を探るという意味合いがあります。安倍総理も今回の会談では、無論習近平の腹を探ったに違いありません。

私としては、今回の安倍総理の訪中は、自民党の大物議員であり親中派でもある二階氏を配慮したものと思います。何しろ、二階氏は自民党総裁選で、安倍総理に味方し大きな力となっています。

二階氏(左)と習近平(右)

今回の訪中には、当然のことながら二階氏の尽力があったからこそ実現したものでしょう。これに応えなければ、人の道に反します。さらには、今後の政権運営に支障をきたす可能性もあります。

ただし、安倍総理は日中首脳会談後の記者会見では、一帯一路とは一言も言わずに、新たな第三国インフラ整備で強力すると語っています。しかもこれは、民間企業が自己責任で行うことを意味しています。つまり日本の民間企業が、中国に利するようことをして、米国の制裁対象になったにしても、それは自己責任であり、泣き言を言うなということです。

そうして、安倍総理は中国で事業を展開する日本の民間企業やこれからそうしようとする日本企業に対して何もしないで冷たく突き放しているというわけではありません。

日中通貨スワップ協定により、中国で事業を営む日本企業等で人民元が不足した際に、日銀は円を人民銀行に渡して人民元を受け取り、中国に進出している日系金融機関に人民元を供給できるようにしました。対中投資を増加する企業のため、人民元の流通を確保して日系企業がビジネスをしやすい環境を整えるようにしています。

これだけ、面倒を見るのだから、後は自己責任でやってくれということでしょう。これで、二階氏を含めた親中派の議員に対しては十分に義理を果たしたというわけです。

私としては、現段階で、日中友好でぬか喜びをして、本気で中国でビジネスをしようなんて経営者はどこかいかれているし、それを許容する会社もどこかタガが緩んでいるとしか考えられないです。このような認識しか持てないような企業は、中国との問題は抜きにしても、たとえ現在や過去が有名・優良企業だとしても、将来性はないでしょう。私は、たとえばトヨタなどかなり危ないと思います。あまり中国にのめり込むと、米国の制裁対象になるかもしれません。

さて、安倍総理がこのようなことをしたとしても、元々ビジネスマンのトランプ大統領や自ら中国で中印首脳会談をしたモディ首相にしても、よもや安倍総理が本気で中国と接近するとは考えないでしょうが、それでも、安倍総理はその懸念を完全払拭するためと、それと自国の都合だけで動くことが多い中国に勘違いさせないために、恒例となっているインド首相訪日の日程を意図に今のタイミングにした私は思います。

防衛省は19日、陸上自衛隊とインド陸軍の初めての共同訓練を27日~11月18日に実施すると発表しました。インド東部のミゾラム州で、テロ対策を想定して突入訓練や射撃訓練をします。訓練名は「ダルマ・ガーディアン18」。陸自隊員約30人、インド陸軍からも約30人参加します。今後の定例化も検討しています。この日程も、まるで図ったかのようです。

「陸軍記念日」で更新するインド陸軍

その上で、安倍総理はモディ首相とと具体的に対中対策について話し合い、全世界にアピールしていくのでしょう。安倍総理はこの会談と、その後の行動で対中国囲い込み戦略をさらに鮮明にしていくでしょう。

今回の会談は、日印間でのやりとりも重要なのですが、中国を含む他国に勘違いさせないという大きな意義あるものと思います。

中国という国は、他国の都合などお構いなしに、勝手に自国の都合で動き、過去の歴史まで平気で自分の都合良いように修正する国柄です、安倍総理がたとえ日中会談で「一対一路」という言葉を一切使わなかったにしてもそのまま放置しておけば、「日本は一対一路」に協力するなどといいかねません。さらに、他国にまで「日本は一対一路」に協力するからなどといいふらし、都合の良いように日本を利用する可能性もあります。

安倍総理としては、今回日印会談において、そんなことはあり得ないことを明確にし、さらに対中国囲い込み戦略を鮮明にし、中国に利用されるようなことは完璧に封じるでしょう。

そうして、そのクライマックスは習近平の訪日の時になるでしょう。これには、二階氏がまた尽力することになるでしょう。この前後にもやはり何かがあるでしょう。ひよっとすると、来れないかもしれません。あるいは他の人間がくることになるかもしれません。色々な意味で・・・・・・・・。

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2018年10月27日土曜日

日本メディアが報じない「トランプ支持急上昇」の裏事情―【私の論評】上昇は偶然ではなく必然!リベラル派が期せずして火をつけた(゚д゚)!

日本メディアが報じない「トランプ支持急上昇」の裏事情

ヒントは2つの「カ」 

歳川 隆雄

"眠れる保守層"が動き出した

日本ではほとんど報道されていない上に、国民の過半は関心がないのかもしれない。ドナルド・トランプ米大統領の支持率がここにきて上昇しているのだ。

トランプ大統領の(ときに根拠は不明の)過激発言が保守派支持層を熱狂させている

米調査会社リアル・クリア・ポリティクスは10月23日、主要メディアの世論調査結果を集計、その平均値を発表した。昨年1月のトランプ政権発足後、6月4日に次ぐ最高値44.3%だった。驚きである。

当然ながら保守系FOXテレビは最高値の47%、そしてトランプ大統領に対する厳しい報道姿勢のCBSテレビが最低値の42%。

その理由を探ってみると、ヒントは二つの「カ」であることが分かる。

一番目の「カ」は、先にトランプ大統領から米連邦最高裁判事に指名されて、10月6日の米連邦議会上院本会議で賛成50票、反対48票の賛成多数によって承認されたブレット・カバノー氏(53)のことだ。カバノー氏の「カ」である。

あらためて指摘するまでもなく、学生時代の知人女性への性的暴行疑惑や最高裁判事としての適性を巡り、野党民主党だけでなく一部特定メディアから批判の集中砲火を浴びた同氏は、外交・安保政策はもとより銃規制、妊娠中絶問題を含む宗教政策から環境問題に至るまでトランプ大統領好みの超保守派である。

「反トランプ」を明確にしているCNNテレビなどは上院採決当日、キャピトル・ヒル(米議会)周辺が「Shame on you」(恥を知れ!)を連呼し、承認反対のプラカードを掲げた女性たちによって包囲されている映像(フェイク臭い!?)を繰り返し流していた。

米最高裁を取り囲んだ女性たち (ブログ管理人注:米テレビドラマ「ハンドメイズ・ティル」のパクリか?

こうした抗議活動の盛り上がりに危機感を抱いたのがホワイトハウスと与党共和党執行部である。上下院ともに共和党が多数派である現在の米議会勢力図が11月6日の中間選挙で覆されるとの危機感がそれだ。そうでなくても、下院での逆転は不可避との見方が支配的である。

ところが、カバノー氏指名が承認されない可能性が強まったことで、それまで”眠っていた”保守系有権者がトランプ大統領の扇情的な民主党批判によって目を覚まし、中間選挙に関心を抱くようになったのだ。事実、不在者投票手続きをする有権者が急増している。

「テロリストが来る!」と危機を煽る大統領

次の「カ」は、先週からこれまた繰り返しニュース映像で報じられている「カラバン問題」である。「カラバン」とは、ペルシャ語の「カールヴァーン(隊商)」が由来で大量の移動(長い列)を意味する。

強圧政治の中米ホンジュラスから米国へ向けてグアテマラを経てメキシコ南部を北上している移民集団約1万人の映像(写真)を観られた方も多いと思う。

メキシコ国境を超えた「カラバン」

12月1日に就任するメキシコのロペスオブラドール次期大統領が移民に寛大な姿勢を示していることもあり、北上する移民集団は日を追うごとに増え続けている。

中東シリアや北アフリカ(特にリビア)からの大量の難民が地続きのトルコ経由で中欧のハンガリーや地中海を渡って南欧のイタリアなどに移入した昨年来、欧州諸国連合(EU)では大きな社会問題となったことに無関心だったのが米国人である。

それでもリベラル系の民主党支持者は人権問題として少なからぬ関心を向けていた。ところが、他人事ではなくなってきたのである。メキシコからさらに北上すれば、厳しい国境警備があるものの、そこはカリフォルニア州である。

まさに民主党支持者が多い西海岸の有権者たちは、傍とトランプ大統領が2016年大統領選で掲げた公約「メキシコとの国境に壁を作る」を思い出したに違いない。と同時に、自分たちがその公約は馬鹿げたものだと反対したことを。

亡命希望の大量移民がメキシコとの国境に集結することが現実味を帯びてきたのだ。トランプ大統領は「カラバン」の中に犯罪者、テロリスト、中東からの亡命者も含まれていると根拠希薄な主張を繰り返し、断固として国境を守るとアピールしているのだ。

9月末時点で下院435議席中、予想獲得議席が民主党206、共和党は189とされていたのが、この騒ぎを通じて民主党205、共和党198と差が大幅に縮小した。接戦区は32で、そのうちの30選挙区が共和党現職である。下院は現職不利がセオリーなので民主党優勢に変わりはない。だからこそ「カラバン」問題で危機感を煽っているのだ。

一方、上院の予想獲得議席は共和党50、民主党44だが、接戦州6議席のうち現職は民主党4、共和党2であり、ミズーリ、ノースダコタ、インディアナ州の民主党現職が苦戦している。この3州で民主党が敗れると、共和党が最大55対45で大勝することになる。トランプ大統領弾劾などあり得ないことなのだ。

【私の論評】上昇は偶然ではなく必然!リベラル派が期せずして火をつけた(゚д゚)!

上の記事の執筆者である、歳川氏は、トランプ大統領の支持が高まっていることを語っているのですが、それにしても上の論調では、根底にはそもそもトランプ大統領などあってはならない存在であるかのような日本では定説となっている考え方に立脚しているような論調です。

このブログでは過去何度も、米国のメディアは偏っていることを掲載してきました。米国のメディアのほとんどはリベラル派で占められていることを掲載してきました。

米国の大手新聞は、100%がリベラル・メディアです。リベラルであっても、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のような比較的まともなメデイアもありますが、ほとんどのメディアは偏っています。

大手テレビ局では、フォクスTVが唯一保守系であり、他はリベラルで席巻されています。このような状況では、トランプ大統領に対して敵対的とさえいえるような報道を米国メディアがするのは当然ともいえます。

そうして、ネットや小さな新聞やテレビなどの他のメディアを含めても、米国のメディアの9割はリベラル・左派系であり、残り1割が保守系です。このような中では、保守層が声をあげても、かき消さてしまっていたというのが実情でした。

メディアの報道をのみをみている限りでは、保守層の見方・考え方はかき消されて無きがごとくの現状でした。

しかし、人口でみれば、少なくとも米国の人口の半分は保守層に占められています。この半分の声がかき消されてきたのです。しかし、保守層が少なくと人口の半分はいることが、保守系のトランプ大統領が誕生したことで証明されたと言っても良いと思います。

このようなことを知った上で、我々日本人は、米国メディアの報道をみるべきなのですが、日本のメディアは米国メディアの報道をそのまま日本国内で報道する傾向が強いです。

ブログ冒頭の記事も、そうした傾向に影響されたものであると考えられます。

ブレッド・カバノー氏

ブレット・カバノー氏がなぜ力になったのか、何の説明もしていません。これに関しては以前このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米議会で人気コメディアンなど数百人逮捕 キャバノー最高裁判事候補に抗議―【私の論評】この世界は、個人中傷キャンペーン等の嘘もすぐに見破られるところとなった(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、そもそも 被害を受けた女性とされる人の証言が全くあやふやであることと、米国では司法関係者も政治職についたりするので、キャバーノ氏は過去24年にわたり6回もFBIの身辺調査を受けているにもかかわらず、今回いわれているような事柄が何もでてきていなかったということを掲載しました。

元々、カパノー氏は清廉潔白であり、公平な人物との評価の高い人物でした。だからこそ、トランプ大統領が、最高裁判事に指名したのです。

このような人物を中傷することで、「またリベラルにいいようにされる」と危機感を抱いた保守派が団結したのです。だから、キャバノー氏が中間選挙の追い風になったのです。

次に、「カラバン問題」に関しても、「ランプ大統領は「カラバン」の中に犯罪者、テロリスト、中東からの亡命者も含まれていると根拠希薄な主張を繰り返し、断固として国境を守るとアピールしている」としていますが、これも本当に根拠希薄な主張であるといえるかどうか、冷静に判断すべきです。

まずは、「カラバン」の中にテロリストや中東からの亡命者が全く存在しないという主張は正しいでしょうか。私は、その可能性は全く否定することはできないと思います。

そもそも、安全保障などはあらゆる可能性を検討すべきものであり、最初からそのようなことはあり得ないなどとして、検討するなどということは間違いです。大量の移民・難民が押し寄せればその中にはテロリストどころか、武装難民も存在するかもしれないことは否定できません。これは人種差別ではありません。国を守るということを前提とすれば、当然て出て来る懸念です。

米国のマット・ガエッツ下院議員(共和党)はツイッターに、主催者がキャラバン参加者の女性と子供にお金を渡している動画を投稿し、大規模移民団の背後に政治的な動機があることをほのめかしました。またそのツイートでは「Soros?」と書き、ジョージ・ソロス氏の支援する団体との関連をほのめかしていましたが、オープン・ソサエティ財団はすぐさま同団体とソロス氏の一切の関与を否定するリプライを返しています。




ガエッツ議員はその後、ホンジュラスの政府当局者から入手した動画であることを明かしました。

報道でもキャラバン主催者がすでに逮捕されたことが伝えられていますが、デイリー・シグナルで、ヘリテージ財団のアナ・キンタナ氏がその主催者について、「左翼団体が絶望と貧困を利用してこれ見よがしの行動を取るもう1つの例」だと指摘しています。以下に記事から引用します。
最近起きたこの移民キャラバンは、左翼団体が絶望と貧困を利用してこれ見よがしの行動を取るもう1つの例だ。エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスが位置する中央アメリカの北部三角地帯は、世界で最も暴力的な地域だ。多国籍組織犯罪グループと暴力的ストリートギャングが、こうした貧困にあえぐ国を不安定にしている。このために住民の大多数が、脆弱で生存の手段がほとんどないままにされている。 
残念ながら当事国政府には、こうした課題に対処する能力と、場合によっては政治的な意志が欠如している。 
今年の3月初めの移民キャラバンと全く同じように、この行進の主催者は貧しい中米の人たちを兵器化している。このキャラバンは、ホンジュラスの元国会議員であり、急進左派のリブレ党員のバルトロ・フエンテス(Bartolo Fuentes)が主催したものだ。彼は16日にグアテマラ当局によって、違法入国のために拘留された。 
リブレは政党ではなく攪乱運動だ。2011年にマヌエル・セラヤ(Manuel Zelaya)元大統領が創設した。2009年、セラヤは憲法に基づく秩序と法の支配を損なおうと何度も試みた後に、権力の座から追われた。セラヤは、キューバとベネズエラのカストロとマドゥーロのようなラテンアメリカの社会主義政権の支持者だ。 
リブレは2013年と2017年の大統領選挙で敗北してから、混乱と不安定を生み出す社会運動に転換した。 
またキンタナ氏は、今回のキャラバンが米国の中間選挙とメキシコ大統領の交代に合わせたものだと指摘し、主催者の関心は「移民の幸せよりも混乱を引き起こすことにあるのは明白だ」としている。
これが正しいかどうかは別にして、移民キャラバンは過去のEUへのキャラパンを想起させるものですし、 綺麗事のようにこれらを受け入れたEUが今や移民・難民問題で頭を悩ましているのも事実です。

今回のキャラバン騒動によって大統領選中に、「メキシコとの国境に壁を作る」と主張していたトランプ大統領の発言を米国マスコミはまるでトランプ氏を「気狂いピエロ」のように報道していましたが、今になってみるとその妥当性がある程度実証されたような形になっています。

米国は「移民の国」です。米国市民の多くの先祖は移民です。米国の「建国の理念」に賛同する移民たちが、米国に活力を与え、発展させてきました。ただ、トランプ大統領は選挙戦のときに移民は合法でなければならないとしていました。トランプ氏が「不法移民を強制送還させる」と主張していたことは、当然といえば当然です。


リベラル派はトランプ氏の「メキシコ国境に壁を作る」という発言を揶揄していたが・・・・

米国では1年以上もあり得ないトランプ氏の弾劾がまことしやかに語られています。そもそも、米国の歴史では一人の大統領も弾劾されていません。さらに、1年以上もリベラルが「疑惑が深まった」として、追求してきたにもかかわらず、何の物的証拠も未だにみつかりません。

さらに、キャバーノ氏のような保守の理想像ともいえる清廉潔白の士が、中傷されてみたり、EUで先んじて発生した移民問題が現実のものになる可能性もあるとの認識が高まれば、保守層の心には嫌がおうでも火がつくのは当然です。

また、保守派、リベラル派に限らず今や不法移民問題は、大きな関心事になっていることは間違いないです。それに対して、リベラル派は明確な答えも指し示していません。トランプ大統領は多少乱暴と思えるときもありますが、明確に答えを出しています。

さらに、トランプ氏は中国の卑劣な知的財産権の侵害や、中国の対米工作を暴き、批判して、それだけではなく、貿易戦争を開始しました。

そうして、これはいまや米議会が超党派で、中国叩きのコンセンサスができあがり、ペンス米副大統領が「冷戦Ⅱ」と呼ぶ、息の長い覇権争いになっています。この冷戦Ⅱは、中国の体制が変わるまで続くでしょう。

これでは「トランプ支持急上昇」は当然といえば、当然です。リベラル派が期せずして、火をつけたのです。これは日本でも同じようなことがおこっています。

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2018年10月26日金曜日

安倍首相が習近平主席と会談、日中新時代へ「競争から協調へ」など新3原則確認 李首相には「人権状況注視」言及―【私の論評】習近平は結局安倍総理に鼻であしらわれた(゚д゚)!



    中国を公式訪問中の安倍晋三首相は26日、習近平国家主席と北京市の釣魚台国賓館で会談し、新たな日中関係の構築に向け「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」とする3つの新たな原則を確認した。安倍首相はこれに先立つ李克強首相との会談で、ウイグル族への弾圧などを念頭に「中国国内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と述べた。

 安倍首相は習氏に「私の訪問を契機に競争から協調へ日中関係を新しい時代へと押し上げていきたい。日中はパートナーであり、互いに脅威とはならない。自由で公正な貿易体制を発展、進化させていかなければならない」と述べた。習氏は「中日関係が長期にわたり健全かつ安定的に発展することは両国人民の根本的利益になる」と応じた。

 李氏との会談では、今後5年間で3万人規模の青少年の相互訪問や交流を実施することで一致し、日本側は訪日中国人に対するビザ発給要件の緩和を決めた。両首相は共同記者発表で、金融危機時に互いの通貨を融通し合う通貨スワップ(交換)協定を中央銀行間で締結したことも明らかにした。上限額は平成25年に失効した旧協定の10倍の約3兆4千億円規模とする。

 中国側は東京電力福島第1原発事故後から続く日本産食品に対する輸入規制の緩和について、科学的な評価に基づき積極的に考えると表明した。両国の周辺海域での救難時の協力の円滑化・効率化を図る海上捜索・救助(SAR)協定の締結にも合意。6月に運用開始した防衛当局者間の海空連絡メカニズムに関し、年内の会合開催やホットラインの早期設置も確認した。

 東シナ海での資源開発をめぐっては「交渉の早期再開を目指して意思疎通を強化する」ことで一致するにとどまった。

【私の論評】習近平は結局安倍総理に鼻であしらわれた(゚д゚)!

安倍総理の訪中は、私が予想していた通りの展開となったと思います。これについては、識者の人々が懸念を表明していました。たとえば、石平氏は日本が中国の「一対一路」に協力するという言質を取られるのではないかとか、「自由貿易」の大義名分を振りかざして日本を米中貿易戦争に巻き込もうとするなどの懸念を表明していました。

それについては、詳細は以下の記事をご覧になってください。
【石平のChina Watch】安倍首相を待つ2つの罠
私は、石平氏がこの懸念をツイッターでも表明していたので、「米国が対中国貿易戦争を実行している最中でもあり、世界中の国々と対中国包囲網を築いてきた安倍総理が間違ってもそのようなことをすることはないだろう」とリプライをしました。

さて、今回の習近平主席と李克強首相の会談後の記者会見においては、日中双方から「一対一路」という言葉は一言も出ませんでした。さらに、「自由貿易 」に関しても、具体的には一言も出ませんでした。

安倍総理からは、「自由で公正な貿易体制の発展」という言葉への言及はありましたが、それは原則論を言っただけであって、具体的に中国と自由貿易の促進について話あうだとかすすめるなどの話は一切ありませんでした。

安倍晋三首相は今年1月10日、官邸で自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長と面会し、昨年末に中国で行った中国共産党との定期対話「日中与党交流協議会」の報告を受けました。

首相は中国が提唱する経済圏構想「一帯一路」に関し「中国側の考え方もかなり整理されてきている。個別の案件について日本で対応できるものはきちっと対応していきたい」と述べ、協力する姿勢を示したとされています。習近平国家主席との日中首脳交流についても「しっかり取り組む」と意欲を示していました。面会後、両幹事長が記者団に明らかにしました。

結局これは、自民党内の実力のある親中派政治家に対する安倍総理の懐柔策のようなものであり、今回の中国訪問もその延長なのかもしれません。今回の、安倍総理の訪中では、民間レベルでは具体的な話もでていましたが、国レベルでは、何ら具体的な内容はありませんでした。それでも、親中派の大物議員の面子は十分にたったと思います。おそらく、習近平の面子もある程度たったのかもしれません。

ただし、この面子たるや何の裏付けもな、空虚なものであり、実としては何もないようです。

今回の安倍総理の訪中では、特に「一対一路」の話が具体的には何も出てきませんでした。米国との貿易戦争が始まったばかりの中国で、経済の失速感が鮮明です。7~9月期国内総生産(GDP)は減速し、上海株や人民元も下落基調です。経済と外交の柱とした「一帯一路」戦略は丸5年が経過し、各国を借金漬けにする実態が明るみに出て各国から総スカンをくらっています。


習政権の経済外交戦略も行き詰まりが鮮明になってきました。習主席は2013年9月、「シルクロード経済ベルトを建設しよう」と宣言。翌10月には海上ルートの構想を披露、後に合わせて「一帯一路」と命名しました。

港湾や高速鉄道などのインフラ投資に着手し、17年までに累計800億ドル(約9兆円)超を投資し、協力協定を結んだ国や国際機関は8月下旬時点で103に達し、地域は南米や北極に及びます。

しかし、巨額投資を受け入れた国々は財政状況が悪化、潤うのは事業を担う中国企業だけだとの不満が募っています。

マレーシアではマハティール首相が財政悪化懸念を理由に、中国との鉄道建設計画を中止すると発表。モルディブでも大統領選で脱中国依存を訴える野党候補が勝利しました。

中国の投資を歓迎してきた欧州連合(EU)も明らかにスタンスを変えました。アジアと欧州を結ぶインフラの強化に向けた新戦略を打ち出しましたが、一帯一路への警戒心があらわになりました。

欧州連合は、中国など他国と「対抗する考えはない」とするものの、投資や支援の根底にあるのは「自由や民主主義、法の支配、人権の尊重」だとわざわざ説明。経済性や予算、環境などの面で「持続可能」なものにすると述べるなど中国の神経を逆なでするような内容でした。

こうしたなか、26日に予定される日中首脳会談で、日中の中央銀行間で円と人民元を融通し合う通貨交換協定の再開で合意する見通しだ。かつての協定の30億ドル(約3300億円)相当から約10倍の3兆円規模に拡大する方向で調整しています。

この通貨スワップについても、特に保守系の人で問題とする人も多いようですが、これは実は中国というよりも日本の企業に利するところが多いです。

2018年5月9日に行われた日中首脳会談では、以下の3項目で合意したとされています。
  • 中国は日本に対して2000億元(約3.4兆円)のRQFII(Renminbi Qualified Foreign Institutional Investor、人民元適格外国機関投資家)枠を付与する
  • 日中双方は、人民元クリアリング銀行の設置、円‐元の通貨スワップ協定の締結のための作業を早期に完了させる
  • 中国は日系金融機関への債券業務ライセンスを早期に付与するとともに、日本の証券会社等の中国市場参入に関する認可申請を効率的に審査する
通貨スワップ協定とは、この3項目中に2番目に記載されている、「人民元クリアリング銀行の設置」に関連するものです。

中国の通貨・人民元は典型的な「ソフト・カレンシー」であり、中国からは外貨流出リスクがあるため、日本との通貨スワップ締結によって、通貨不安が一時的に鎮静化する効果は得られます。その意味で、「日本が中国を一方的に救済・支援する」という性格があることは間違いありません。

ただ、もう1つの深刻な問題は、日本の銀行が発行した「パンダ債」と呼ばれる債券にあります。三菱UFJ銀行(本稿では以下「BTMU」)と、みずほ銀行(本稿では以下「MHBK」)は今年1月16日、「本邦初のパンダ債」を発行。両社とも、自社のウェブサイトでこのことを誇らしげに報道発表しています。

パンダ債によって資金調達の多様化が図られて良いようにも思えるのだか・・・・・・

2017年日本と中国の金融当局は、日本企業が中国で人民元建ての債券、いわゆる「パンダ債」を発行できるようにすることで合意しました。

端的にいえば、この両社の行動は、とても正気の沙汰とは思えません。というのも、この「パンダ債」とは、「中国国外の企業が中国本土で発行する人民元建ての債券」のことであり、中国の金融市場が未成熟であることなどを考えれば、きわめてリスクの高い行為だからです。

香港あたりのオフショア市場で人民元建て債券を発行するのなら話はわかります。しかし、中国本土の資本市場は外国に解放されておらず、何らかのショックが生じたときに資金調達ができなくなるリスクは先進国と比べて際立って高いのです。

無論発行するのは銀行の自己責任において発行するわけですが、それにしても日本の銀行が資金調達に困難を極めれば、日本国内にも信用不安が及ぶことになります。そのための担保としての通貨スワップという面があるのです。

つまり、今回のスワップは、むしろ日本政府の側に、締結するインセンティブがあるのです。報道機関がなぜこの重要な「パンダ債問題」についてまったく報道しないのでしょうか?報道機関の皆さんが、あまりにも金融のことを知らなすぎるのではないでしょうか。まあ、三菱UFJ銀行やみずほ銀行ですら、ある意味金融に無知ですから、致し方ないのかもしれません。

それに、3.4兆円という金額は、確かに中国内日本の銀行などの企業に融通するには十分でしょうが、中国という国家レベルでの金融にはないよりはましかもしれませんが、焼け石に水にすぎません。これを考えれば、今回の通貨スワップが一方的に中国を利するだけのものであると判断するのは早計でしょう。

さて、一帯一路でも中国のおごりや自国企業優先の姿勢が反感を買っており、貿易戦争があっても味方がおらず、中国はできれば日本に泣きつこうとしていると見て間違いないです。

トランプ政権というより、米国議会は中間選挙後も中国と手打ちにするつもりはなく、徹底的に中国をたたくことでしょう。元々中国の経済統計は出鱈目なのですが、それにしてもごまかしの数値を出すにしてもあまりかけ離れていては矛盾を露呈するので、さすがに成長率は来年には6%を割ることも予想されます。

中国では昔から「保8」という言葉があり、発展途上の中国では成長率が8%を割ると、まともに雇用も吸収できない状態になるので、成長率8%は政府の責任で守るという意味で「保8」という言葉ができたのです。

中共は保8を守れなくなったどころか来年は6%以下になったと公表せざるをえなくなる?

日本感覚だと、6%を割るという成長でも、凄まじい成長率ということになりますが、中国では現在でも6%を割るということは、とんでもない低成長なのであり、鄧小平の改革開放経済以降で最悪の事態になるということです。人民元も大混乱することになるでしょう。

今回は、はっきりいえば、習近平は結局安倍総理に体裁よく鼻であしらわれたということです。習政権の野望はついえてしまうことになるでしょう。

しかし、ここでも中国というか中共の大きな誤算があります。習近平が失脚したにしても、中国の体制が変わらなければ、米国の対中国冷戦Ⅱは、継続されるということです。

中国は、大国(人口の多い国)ゆえに自国内の都合を優先して動くという習性がありますが、今度ばかりはそうはいかないことを思い知らされることになります。

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2018年10月25日木曜日

冷戦Ⅱ?米中関係の新たな時代の幕開け―【私の論評】冷戦Ⅱは、先の冷戦と同じく米国が圧勝!中国には微塵も勝ち目なし(゚д゚)!

冷戦Ⅱ?米中関係の新たな時代の幕開け

岡崎研究所

 10月4日、ペンス副大統領は米国の保守系シンクタンクであるハドソン研究所で、トランプ政権の対中政策に関して、約43分間にわたる演説を行なった。米国政府の対中政策として包括的な演説であり、以下に要点を紹介する。なお、ペンス副大統領は11月中旬に来日予定である。

10月4日の、ペンス副大統領の演説は中国を名指しで具体的に非難するものだった

・トランプ政権は、昨年4月6日に米国で、11月8日に中国で、米中首脳会談を開催し、個人的信頼を築きながら対中関係を優先的に推進してきた。しかし中国は、政治的、経済的、軍事的手段及びプロパガンダを利用して、米国における自国の利益や影響力を高めようとした。

・昨年12月にトランプ大統領が発表した国家安全保障戦略では、「大国間競争」の時代が明記された。これら外国勢力は国際秩序を自国に有利になるように変えようとしている。この戦略で、トランプ大統領は、米国が中国に対して新アプローチを採用したことを明らかにした。

・1949年、中国共産党は政権を取るなり、独裁膨張主義に走るようになった。ともに戦った第二次世界大戦から5年しか経っていないにもかかわらず、米中両国は朝鮮半島で戦火を交えた。父は現地で参戦した。1972年、中国との敵対関係は終わり、ほどなく米中は国交回復した。ソ連が崩壊後、自由中国の出現は不可避と思ったが、希望は満たされなかった。自由の夢は中国の人々からは遠ざかったままだ。

・この17年間で中国のGDPは9倍になり、今や世界第2の経済大国である。その成功は米国の対中投資に依るところも大きい。中国共産党は、自由で公平な貿易とは相いれない政策を行なった。それには、関税、為替操作、知的財産権の窃取、技術移転の強要、産業補助等が含まれる。米国の対中貿易赤字は、昨年は3750憶ドルで、これは全世界の半分を占めた。トランプ大統領曰く、25年間で「米国は中国を再建してあげた」のである。

・中国共産党は、「メイド・イン・チャイナ2025」計画で、世界の最先端産業のロボット、AI、バイオ産業等の90%を占めようとしている。中国は、米国の財界に、中国でビジネスをしたいなら企業秘密を渡すよう要請する。

・中国は、その経済力を軍事力にも使用した。中国の国防予算は、他のアジア諸国のそれを合算したものに相当する。中国は、日本が施政権下におく尖閣諸島周辺に定期的にやってくる。南シナ海には人工島を作り対艦・対空ミサイルを配備した。自由航行作戦を展開している米国艦船に中国艦船が接近してきた。

・中国共産党は、自国民への規制、人権弾圧も強化している。チベットの仏教徒は、政府の弾圧に抗議して、過去10年で約150人が焼身自殺した。新疆では、約100万人のウイグルのイスラム教徒が収容所に入れられた。先月、中国最大のキリスト教地下教会群が閉鎖させられた。

・中国は、米国の大学、学者、メディア、シンクタンク等に、影響力を行使しようとする。資金援助をして親中派を増やしたり、また、反中派には中国に招待すると言ってサイバー攻撃をかけたりする。ビザ更新等で圧力をかけることもある。米国内の留学生や中国人団体等が中国共産党の諜報機関的役割を果たすこともある。

・米国の今年の中間選挙、2020年の大統領選挙に、共和党やトランプ大統領が勝利しないように、プロパガンダを仕掛けている。

・トランプ政権は、中国が公平、相互的かつ主権を尊重するように、様々な措置を取っている。2560憶ドル相当の品目に課す関税措置、レーガン政権以来の軍備費拡大、対米投資委員会の規制強化、司法省の中国メディアへの措置等がそうである。米国は、決して屈することはない。

参考:White House‘Remarks by Vice President Pence on the Administration’s Policy Toward China’October 4, 2018

 上記の演説内容で特徴的なのは、今回、ペンス副大統領は、中国の政治的、経済的、軍事的、社会的行動の具体例をかなり挙げて、中国を名指しで非難したことである。「攻撃」や「盗んだ」、「債務外交」等、否定的言葉が目についた。中国のことを「中国共産党」と呼ぶこともマイナスの意味合いを持つ。

 米国の論調は、このペンス演説を、米中関係の新たな時代の幕開けと見ている。例えば、10月4日付でワシントン・ポスト紙コラムニストのジョッシュ・ロウギン氏は、米中関係はこれによりリセットされたと述べている。また、10月8日付ウォールストリート・ジャーナル紙にはウォルター・ラッセル・ミード教授が、このペンス演説は1972年のキッシンジャー訪中のように米中関係を決定的に変えるもので、この米中関係を「冷戦Ⅱ」であると呼んだ。

 この冷戦Ⅱはおそらく進行し加速する。冷戦Ⅱの事象は、演説で述べられこことだけではない。10月10日、司法省は、中国情報機関高官による産業スパイを摘発したことを公表した。同じく10日、財務省は対米投資規制の詳細を発表し、半導体、情報通信、軍事など 27産業を規制対象に指定した。9月20日には、中国がロシアから SU-35戦闘機とS-400地対空ミサイルを購入したことに関連して人民解放軍に制裁を発動した。

 こうしてみると、冷戦Ⅱは既に、米中対立が貿易戦争の枠を超えてきていることがわかる。さらに、貿易戦争自体、早期に収拾されることは期待できず、覇権争いになってきていることがうかがえる。事実、ペンス演説でも、昨年12月にトランプ大統領が発表した国家安全保障戦略に触れ、世界的に影響力を行使し国際秩序を自身の良いように変えようとしている大国がある、と指摘された。

 ペンス副大統領は、11月、シンガポール及びパフア・ニュー・ギニアで開催されるASEANやAPEC(アジア太平洋経済協力会議)など、アジア地域で行われる多国間会議に、大統領の代理で米国を代表して出席すると言う。自由で開かれたインド太平洋地域に関する演説も準備中だそうだ。安倍総理も同様の会議に参加予定である。

【私の論評】冷戦Ⅱは、先の冷戦と同じく米国が圧勝!中国には微塵も勝ち目なし(゚д゚)!

ペンス副大統領の演説は、以前もこのブログで紹介しましたが、演説内容の詳細までは掲載しませんでしたので、本日は上の記事を掲載することにさせていただきました。

というのも、この演説は歴史に残るものになると予想されるからです。しかも、米国の圧倒的勝利になることが最初から明らかだからです。

本日は、なぜそういうことがいえるのかを具体的に解説します。

米国経済はトランプ政権になってから力強い成長を続けています。米国は、貿易戦争によるマイナス面は気にする必要など全くありません。

さらに、中国の輸出依存度が24.1%であるのに対して、米国の輸出依存度はたった9.4%です。どちらに軍配が上がるかは最初から明らかです。

ちなみに日本の貿易依存度は14.6%です。20数年前までは、8%台でした。通説の「日本は輸出(貿易)立国」であるという話は全くの間違いです。ましてや、日本の高度成長は貿易によってもたらされたというのも間違いです。日本も米国にならぶ内需大国であるということができます。


そうして内需大国であるということは、悪いことではありません。なぜなら、経済の大半が自国内で完結してしまうので、外国の影響を受けることが少ないです。それは、極端にグローバル化をすすめた韓国が現状どうなっているかを見れば明らかです。ただし、ギリシャのような国はまた別です。自国内の経済の規模もかなり小さく、外需もめぼしいものがないです。

さらに、中国が13億人を養う食料を集めるのにかなりの輸入で四苦八苦しているのに対して、米国はあり余る食料を輸出しています。

また、世界最大の産油国は現在ロシアです。サウジアラビアではありません。さらに、来年(2019年)には米国が世界最大の産油国になる見込みです。近年のシェール・オイルの開発・増産が寄与しています。

エルサレムに米国の駐イスラエル大使館を移したことは暴挙とされましたが、これは米国が、湾岸戦争の時のように、産油国であるアラブ諸国に気を使う必要など無くなったからできたことです。

それに対して、中国の2018年7月の原油の国内生産量は日量375万バレルです。そして、税関発表の輸入量は同850万バレル。全体の7割の原油を輸入に頼っている状況です。

この弱点ゆえ、今回の米国との貿易戦争においても輸入原油は報復関税の対象リストに入れることができなかったのです。

日本やドイツが第2次世界大戦を起こした大きな理由の1つが、石油などのエネルギー確保のためであることはよく知られた事実です。共産主義中国もこの生命線を今まさにつかれているのです。

誰もが認める最新兵器に支えられた軍事力はもちろんのこと、前述の食料・エネルギー、さらにはシリコンバレーの頭脳など、どこをとっても世界最強国である米国に対して、中国はエネルギーも食料も自立できないですし、軍事力も遠く及ばず、しかも自国の優秀な頭脳はシリコンバレーに吸い上げられています。

この中国が米国に刃向かったのは無謀以外の何ものでもありません。

過去を振り返ると自由主義を信奉する米国は、もともと共産主義独裁国家を毛嫌いしていました。
ただ、米中国交回復以後は米国は「豊かになれば共産主義独裁国家もいつか民主化するのでは無いか?」という考えで積極的に中国の発展を支援しました。米国だけでは無く欧州でもその考えが主流でした。
ところが、中国は一人あたりのGDPなどでは、未だ日米は愚か他の先進国には及ばない状況ながらも、人口が13億以上と多いため、総体のGDPでは米国の背中が見えるほど巨大になったにもかかわらず、共産主義中国の民主化は一向に進展せず普通選挙さえいまだに実現されていません。行われているのは共産党が仕切る人事と幹部の指名です。
それどころか、習近平氏は、大躍進と文化大革命で中国人民を大量虐殺した毛沢東を目指すとまで言い始めています。
テロ容疑者として中国に逮捕された15歳から30歳のウィグル人男性たち
さらに、中国によるウイグルに対する弾圧は見過ごせない状況になってきています。また、尖閣や、南シナ海などでの領土的野心を隠さない行為も米国を大いに刺激しています。。
多くの日本人同様、多数の米国民も「共産主義中国に恩をあだで返された」と感じています。

中国が豊かになれば、いずれ先進国並みに、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がされるのではないかという甘い考えが幻想であることが分かれば、共産主義中国にどのように米国が対応すべきかは明らかです。

関税だけでは無く、中国企業の米国内の活動そのもの国防上の観点から大幅に規制しようとするZTEに対するようなアクションは、まさに「戦争に備える国防問題」なのです。

北朝鮮のICBMが米国本土に届くかもしれないということが話題になり、それを阻止することもトランプ大統領にとって重要課題ですが、共産主義中国の核兵器やICBMは、米国にとってそれをはるかに上回る現実の軍事的脅威です。

ただ、現在、徴兵制を停止(制度そのものは現在も存続。停止したのは議員の息子が徴兵されることによって、ベトナム反戦運動が激化したため)している米国が、米国の若者の血を大量に流す本物の戦争を長期間続行するのは、国民からの人気を人一倍気にするトランプ大統領が避けたいことです。

北朝鮮や共産主義中国などのならず者国家は、その事情を見透かしているところがあります。

しかし米国は、どのような国も太刀打ちできない最新兵器に裏打ちされた強大な軍事力だけでは無く、血を流さない戦争=「無血戦争」においても圧倒的な強さを持っています。

「貿易戦争」もその1つですし、本当の戦争で言えば「海上封鎖」に相当するような「経済制裁」も、ボディーブローのようにじわじわ効いてくる効果的な戦略です。対北朝鮮では、この戦略を極めて有効に活用しています。

世界最大の金融街 ウォール・ストリート

しかし、「無血戦争」における米国最大の武器は「金融」です。世界の資金の流れを支配しているのは間違いなく米国です。戦争用語の「制空権」ならぬ「制金権」を米国が握っているのです。

そもそも、米国ドルは国際決済で、最も用いられています。人民元の信用度は現在まだ高いですが、それは中国がおびたたしい量のドルと、米国債を所有していることによるものです。これがなくなれば、人民元は紙切れです。

米国はドルが足りなくなれば、勝手に自分で刷り増すことができますが、中国にはそれができません。やれば、単なる偽札づくりです。

このこと一つとっても、米国の「制金権」は圧倒的であり、中国は足元にも及ばないことが理解できます。

その他にも例えば、北朝鮮やイランの高官の口座を経済制裁の一環として凍結したというようなニュースを聞くことがあります。その時に、「どうやって口座を調べたのだろう」という疑問を持つ人も多いのではないかと思います。

このような人物が本名で海外に口座を開くとは考えにくく、当然偽名やトンネル会社などを使用します。しかし、そのような偽装をしても、FBIやCIAの捜査官は、例えば田中一郎という口座名義人が、実は大原浩であるということを、口座間の送金履歴、入出金履歴などを解析して簡単に見つけ出すことができるのです。この基本技術は、30年ほど前から実用化されているといわれています。

その後、日本でもテロ対策、マネー・ロンダリング対策で銀行口座開設や送金の際の本人確認が非常に厳しくなって「面倒くさい」と思っている方も多いと思います。これは日本政府や銀行協会の方針でというよりも、米国の指示によるものです。つまり日本だけでは無く世界的な現象なのです。

これは以前、スイスのプライベートバンクの匿名性が攻撃され、口座情報が丸裸にされたのもこの戦略と関係があります。ナチス残党の秘密口座などがやり玉に挙がっていましたが、本当のところは、米国の敵国(実は同盟国も……)の指導者の口座情報を得るための手段であり、米国はスイス政府に猛烈な圧力をかけたのです。

結局、少なくとも米国の同盟国・親密国においては、どのような偽装をしても米国の監視の目からは逃れられないということです。

そして、北朝鮮、共産主義中国など米国と敵対している国々のほとんどの幹部は、汚職で蓄財した個人資産を時刻に保管しておくには適さないです。いつ政権が転覆したり革命が起きるかわからないので、米国やその同盟国(親密国)の口座に保管をするしかないのです。

米国と敵対する国々の指導者の目的は、もちろん国民の幸福では無く、建前は色々と言っていますが、個人の蓄財と権力の拡大ですから、彼らの海外口座の個人資産を締めあげれば簡単に米国にひれ伏すことになります。

そんなことによりも、彼らの海外口座の個人資産を凍結したり、あるいはサイバー攻撃により消滅させるようなこともできると思います。私は、そのうち習近平をはじめとする、中国の幹部の中で、不正に蓄財した財産を消滅させられて、無論誰に訴えることもできず希望を失って発狂する者もでてくるのではないかと思っています。

さらに、米国はすでに挙党一致で、議会主導で中国を叩いています。一方の中国は、未だに権力闘争が続いていて、とても一致協力して米国と闘う体制にはなっていません。そのうち、冷戦Ⅱを権力闘争に利用し、習近平派を潰そうとする輩が目立つようになることでしょう。

その時には、習近平派は失脚するかもしれません。しかし、中国は次の体制になっても、基本的には中国共産党一党独裁は変えないでしょうから、その後も冷戦Ⅱが続き、いずれソ連崩壊の二の舞いを舞うことになるでしょう。

その後は、中国もかなり弱体化し、現ロシアなみのGDPに落ち込むことになるでしょう。ちなみに、現ロシアのGDPは韓国よりも少し少ないくらいです。韓国は、東京都なみのGDPです。今やロシアは、どうあがいても米国に立ち向かうことはできません。ロシアの人口は1億4千万人で、日本より二千万人多いくらいで、中国は13億を超えていますから、そこまではいかなくとも、かなり弱体化することになるでしょう。

孫子は「戦わずして勝つ」ことを最良の戦略としていますが、まさに多くの手法を駆使した「無血戦争」で、連勝を続けているトランプ氏は、歴代まれに見る策士なのかもしれません。

1989年のベルリンの崩壊と1991年のソ連邦の崩壊で冷戦が終了し、共産主義国家はいずれ消え去ると思われていました。ところが共産主義国家群はしぶとく生き残り、共産主義中国のように国家資本主義体制ともいえる体制に移行して、一時的に繁栄する国まで出てきました。

しかし、全体主義的・専制主義的国家が現代の先進的経済社会で繁栄し続けることはありえないです。

小手先で市場化・民主化を気取っても、「国家の繁栄」によって人民が民主化、政治と経済の分離、法治国家化をを要求するようになることが、共産党にとって最大の脅威なのです。それが達成されてしまえば、中共は統治の正当性を失うことになります。そうなば、中共は崩壊するしかありません。だから、結局経済的繁栄よりも一党支配による独裁を選ばざるを得ないのです。

1936年ナチス政権下で行われたベルリンオリンピック
全体主義国家であった、ナチス・ドイツはベルリンオリンピック開催後10年以内に崩壊しました。同じ全体主義国家であった、ソビエト連邦も、モスクワオリンピック開催後ほぼ10年で崩壊しました。

中国は、2008年に北京オリンピックが開催されて、今年で10年ですが、中国の場合はさすがに崩壊しませんでしたが、今年は事実上崩壊が決まった年となりました。

中間選挙でのトランプ氏の行く末が注目を浴びていますが、それがどうなろうと、あるいはトランプ氏が来年の選挙で大統領になろうとなるまいと、そうして、習近平が失脚しようがしまいが、長年準備されてきた「対中無血戦争」は、中国が全面降伏するまで延々と続くことになります。

この戦争は「自由主義社会」と「全体主義(専制主義)」との全面対決であり、ペンス副大統領が言うように、冷戦Ⅱ(無血戦争)と呼ぶことができます。そして勝敗は初めから分かっています。

米国が勝ち、中国が負けるのです。ペンス副大統領は、勝ち戦をすると言っているのです。

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2018年10月24日水曜日

習近平の「自力更生」は「中国製造2025」を達成することを指す―【私の論評】技術の漏洩を防げば「中国製造2025」は最初から頓挫することはわかりきっている(゚д゚)!

習近平の「自力更生」は「中国製造2025」を達成することを指す


10月23日、「港珠澳大橋」開通を祝う習近平国家主席

習近平が最近よく言う「自力更生」は、決して文革時の毛沢東返りではなく、「中国製造2025」によりコア技術の自給自足達成を指している。「中国製造2025」を見なければ中国も米中関係も日中関係も見えない。

◆「中国製造2025」に対する鮮明なメッセージ_新華網

その証拠に、2018年5月8日の中国政府の通信社「新華社」電子版「新華網」の報道を見てみよう。「“中国製造2025”:困難に遭い、自ら強くなる」というタイトルで「中国製造2025」と「自力更生」の関係が書いてある。文字だけでなく写真に大きく「中国製造2025」とあるので、一目瞭然だろう。なお、中国語では「製造」は「制造」と書く。

小見出しには「2018年は絶対に普通ではない年になる!」とあり、冒頭に、おおむね以下のような趣旨のことが書いてある。

――いまわれわれは国家戦略「中国製造2025」を推進しており、改革開放40周年を迎えようとしている。ある国が、わが国に高関税をかけて、わが国のハイテク製品輸出に徹底的な打撃を与えようとしている。どこまでもつきまとう執拗な封鎖を通して、われわれは「困難から抜け出すには、ただ一つ、自力更生以外にない」ということを知らなければならない!

ここにある「ある国」とは、言うまでもなく「アメリカ」のことである。

アメリカが中国のハイテク製品に高関税をかけ、ハイテク製品製造のためのコア技術であるアメリカ製半導体の対中輸出に規制を掛けていることに対して、それなら「自力更生」以外にないと言っているのである。

この報道一つを見ただけでも、「自力更生」とは「中国製造2025」を達成して、中国のハイテク産業のコア技術に関する自給自足を指していることが歴然としている。

◆東北視察で習近平が「自力更生」を呼びかけた_新華網
2018年9月25日から28日にかけて、習近平国家主席は中国の東北三省を視察した。その模様を新華網が報道した。

それによれば、習近平は国有の重工業製造企業である「中国第一重型機械集団有限公司(略称:一重集団)」を訪問した際に以下のように述べている。

――いま国際社会では一国主義、貿易保護主義の風潮が高まっているが、われわれは必ず自力更生の道を断固として歩まなければならない。中国が本当に発展しようと思うならば、最終的には自分自身に頼るしかない。

◆習近平が広東視察で「自力更生」を呼びかけた_CCTV
 2018年10月22日、習近平は広東省珠海の視察を行なった。ここは改革開放の地として、習近平の父親・習仲勲が「経済特区方案」をトウ小平に提起し、そこから改革開放が始まった記念の場所の一つである。だから、2014年12月、国家主席就任後に最初に視察した場所も、ここ広東だった。

10月23日、中央テレビ局CCTVの「時政新聞眼」という番組は、習近平の広東視察を特集し、習近平が述べた以下の言葉で番組を締めくくっている。

――大国から強国になるには、必ず実体経済を発展させなければならず、いかなる時も実態から離れて虚構に走ってはならない。製造業は実体経済の中の一つの重要なキーで、必ず自力更生によって奮闘し、中国自身によるイノベーションを獲得していかなければならない。真に中華民族の偉大なる復興を目指すなら、自らがイノベーションを勝ち取っていく気骨と気概を持たなければならない。

◆「中国製造2025」発布直前から「自力更生」を提唱_人民網
中国共産党機関紙「人民日報」電子版「人民網」は、2015年2月16日に「習近平:コア技術は周辺に頼るな、自力更生あるのみだ」というタイトルの記事を掲載した。

「中国製造2025」が発布されたのは2015年5月。

しかし、10月23日付けコラム<背景には「中国製造2025」――習近平による人民の対日感情コントロール>に書いたように、2013年に習近平は既に「中国製造2025」に関して「製造強国戦略研究」という重大諮問プロジェクトを立ち上がらせている。2014年には答申を受けているので、2015年2月の時点で「中国製造2025」に関して「自力更生」を強調するのは当然のことだ。

◆「自力更生」の相手国が日本からアメリカに!

このとき「周辺に頼らない」としていた相手国は「日本」だった!

 <背景には「中国製造2025」――習近平による人民の対日感情コントロール>に書いたように、発端は2012年9月の「反日デモ」で、「メイド・イン・チャイナ」か「メイド・イン・ジャパン」かが問題になったのだ。だからコア技術を「メイド・イン・チャイナ」に持っていくべく立てた国家戦略だった。

ところがアメリカにトランプ大統領が現れて、中国の国家戦略「中国製造2025」が持っている恐るべき狙いを見抜いてしまったものだから、トランプは猛然と「中国製造2025」を完遂させまいと中国への攻撃を始めた。武力攻撃をするわけにはいかないので、「貿易」という手段を使って中国の国家戦略を潰しにかかっているわけだ。

そうしないと、中国がやがて半導体産業というコア技術においても宇宙支配においても、そしてやがては軍事においてもアメリカを凌駕し、地球は中国の天下になると、トランプは警戒しているのである。

アメリカ・ファーストにより「再び偉大なるアメリカを取り戻す」と宣言したトランプは、なんとしても「中国製造2025」を潰したい。

「それならば」とばかりに、習近平は日本に近づいてきた。

◆「自力更生」は文革の再来ではない
習近平の「自力更生」を文革(文化大革命)の再来とか、個人崇拝させるための毛沢東返りなどと批判している一部の中国研究者あるいはメディアは、目を覚まして習近平の正体を見抜かなければならない。そもそも文革は「政府(劉少奇国家主席)を倒すこと」が目的だったので、文革にたとえること自体「習近平が政府(習近平国家主席)を倒そうとしている」ということにつながり、中国の何たるかを全く理解してないとしか言いようがない。それを無視して、習近平の権力闘争とか我欲に目を向けさせたいあまり、習近平の正体が見えないように仕向けている。そのような矮小化が、どれほど大きな損害を日本にもたらすか、気が付いてほしい。 

「中国製造2025」を直視しなければ、中国のなんたるかも見えなければ、米中関係も日中関係も、いま「どこにいるのか」が見えないのである。

より多くの日本人が、どうか真実を見る勇気を持ってくれることを、切に望む。

【私の論評】技術の漏洩を防げば「中国製造2025」は最初から頓挫することはわかりきっている(゚д゚)!



これまで中国は「 世界の工場」と呼ばれ、製造業の規模で世界一の地位を占めてきました。しかし、それは、豊富な労働力と低賃金に支えられた労働集約型の製造業でした。

製造プロセスの管理やオペレーションの最適化の面では、ドイツ、米国 、日本などの後塵を拝してきました。

「中国製造2025」は、この状態を大きく変え、2045年に「製造強国のトップ」になることを目指すものです。

そのため、ITやロボット、AIを活用した「技術密集型/知能的集合型」の産業にシフトするといいます。

情報技術と製造技術の融合による製造方法の実現が主軸なので、中国版「インダストリー4.0」と呼ばれることもある。あるいは、「データ駆動型の製造プロセス」と言われることもあります

これに関しては、中国は有利であると思われている点があります。それは、膨大なデータを国家主導でなんの制限もなく取得できるという点です。これは、人権を尊重する先進国ではなかなかできないことです。

最近、フェイスブックが情報流出問題で揺れています。米大統領選挙でトランプ陣営が契約していたデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカ(CA)が、フェイスブック利用者の個人情報を不正収集していたと報道されました。

社会的な批判が高まり、その結果フェイスブックの株価が下落しています。

これは、フェイスブックという一企業の問題ではない。広く社会体制と技術の関係にかかわる問題です。

すでに述べたように、AIの機械学習のためにはできるだけ大量のデータが利用できることが望ましいですが、この点において、日米やヨーロッパ社会が中国と比較して、不利な立場に置かれているのは、否定できない事実です。

この問題をどう解決していくかは、現代技術の最大の問題でしょう。

もちろん、個人の権利の 尊重や多様性の維持は、健全な社会のために絶対に必要なことです。

個人情報の乱用を避けつつ、米国がAIの開発で中国より優位に立つためには、米国社会の持つ多様性を活用する必要があります。

まったく新しい発想のために社会の多様性が必要であることは、例えば、ライト兄弟による動力飛行機の開発が示しています。当時、エンジンを積んだ物体が飛行するのは、不可能と言われていました。ライト兄弟が初飛行に成功した後でさえ、そのような考えが、専門家の間では支配的でした。

このような「異端の」発明は、全体主義国家や大企業からは出てきません。多くの独創的なアイディア発明は 、社会の大勢とは異質の部分から出てくるのです。

PCも、インターネットも、AIも、米国社会の多様性の中から生み出されたものです。共産党独裁政権に支配されている中国社会で生まれたものではありません。

中国は、生み出された技術を進歩させることには優れているかもしれません。しかし、まったく新しいことを生み出す力はありません。

情報技術の場合には、創造性がとりわけ重要な意味を持ちます。したがって多様性は本質的に重要であるはずです。

これは、1980年代に日本と米国の間で生じた問題と似ている。日本は産業技術を改良し、生産工程を改善して能率を上げ、米国製品を市場から駆逐しました。

しかし、長期的に見れば、は新しい産業を発達させることによって成長しました。

いま、それと同じことが米国と中国の間で起ころうとしているのかもしれないです。それも、さらに大きくて深い次元でそれが起きようとしているかもしれません。

ただし、当時の日本と現在の中国とは全く異質です。現在の中国は未だに、民主化も、政治と経済の分離も、法治国家化もなされていません。しかし、1980年代の日本はすでになされていたどころではなく、実施されてからかなり時間がたっていました。

第二次世界大戦前から、現在の中国よりははるかに実施され、戦後さらに実行され、当時の日本では民主化、政治と経済の分離、法治国家化は、わざわざ言うまでもなく、当然のことになっていました。

ここが、日米を含む世界の先進国と、中国の大きな違いです。これらが前提となる社会でなけば、とても多様性が保たれる社会とはなりません。まさに、中国はそのような暑苦しい社会であり、建国以来毎年2万件も暴動があり、2010年あたりからは10万件を超えたといわれています。

この暴動を現在の中国は、社会変革などをつうじて改善・改革するなどということはせず、城管、警察、人民警察を用いて徹底的に弾圧してきました。このような社会で「製造2025」が成功するとはとても思えません。


これがどのように進展していくかを現時点で正確に見通すことは難しいですが、多様性を許容しない中国社会が、どこかで本質的な限界に直面するのは確実です。

そもそも、先進国が豊かになったのにはわけがあります。それは、民主化と、政治と経済の分離、法治国家化を当然のこととしたため、多くの中間層を輩出し、それらが自由に経済・社会活動を行ったため、の結果です。

先進国でも、過去には中国共産党のように、まともな国の体裁をなしおらず、人民を弾圧して意のままにするという傾向がありましたが、国民国家が誕生するにおよび、国家を強くするため、富ませるために、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めていったので、国民国家として強くなり豊かになったのです。

中国は豊かになったのは、このようなプロセスを経たわけではありません。多くの人口をかかえ、無尽蔵の市場が存在すると考えた米国などが中国の将来を期待して天文学的な投資をしたからです。そうして、米国などは中国が豊かになれば、先進国と同じような体制に変わることを期待しましたが、その期待はいまのところ完全に裏切られてしまいました。

中国には、国民国家の軍隊すら存在しません。国民国家の軍隊の主な任務は、国民の財産、生命を守ることですが、人民解放軍は、軍隊ではなく共産党の私兵であり、しかも、このブログでも過去に掲載したように、その実体は様々な事業を営む武装した商社でもあります。ただし、最近は習近平が人民解放軍が事業をすることを禁止しています。

人民解放軍は軍隊もどき

このような異常で異様な社会で、新たなライフスタイルが生まれ、それに適したものが製造されたりすることなど想像できません。人民を弾圧するための全く新しいイノベーションはできても、新たな価値を創造して、富をもたらすことなどできません。できるのは、せいぜい、効率を良くすることです。

現在主流である、スマホはAppleが最初に市場に出し、大成功しました。実は、フィンランドのノキアは、IPhoneと同じようなスマホのプロトタイプをAppleより先に、開発していましたが、市場に出す時期を誤り、大失敗しました。

当時の中国では、たとえ経済が現在と同じくらいの水準にあったとしても、スマホなど開発などできなかったでしょう。ただし、すでに出来上がった技術をもとに様々な改善や付加をするということには長けているようですが、自ら新しいものを開発することはできないようです。

米国は、社会の多様性を維持し、さらに発展させ、それが産業社会の新しい発展のために不可欠であることを、実績で示していくべきです。ただし、先進国は中国が技術を盗んだり、タダ乗りすることは、当然のことながら、排除すべきでしょう。

このあたりさえしっかりしておけば、私は「中国製造2025」は失敗すると思います。せいぜい現在私達の頭の中にある様々な新技術をさらに改造して発展させることはできても、それ以上のことは何もできません。

考え見てください。古代にAIがあったとして、大量の奴隷のデーターを集めて、分析したとして、それで何が生まれるというのでしょうか。せいぜい、奴隷が仕事をサボっているかいなかが詳細にわかるだけで、それでは何の富も生み出すことはありません。

しかし、奴隷が市民となり、生活の糧を得て、ある程度以上の余裕を持ち自ら何かを作り出したり、社会に役立つことを考えて、実行したりし、そこにAIが加われば、大きな富を生み出す機会はかなり増えることになります。

中国にはこのような考えはないようです。国家主導で、金をつかってAIを導入し、まともな社会構造も形成せずに、国家主導で人民を鼓舞すれば、何かが変わると信じているようですが、そんなことはありません。

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