2018年10月9日火曜日

謎深まるICPO総裁の拘束 刃物の絵文字の意味は… 「権力闘争が絡んでいることは間違いない」―【私の論評】習近平一派は、もし失脚すればICPO総裁に地の果てまで追い詰められることを恐れたか?

謎深まるICPO総裁の拘束 刃物の絵文字の意味は… 「権力闘争が絡んでいることは間違いない」

孟宏偉氏

国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉(もう・こうい)総裁が先月25日から行方不明になっていた問題で、中国公安省幹部らが出席した会議で、孟氏が国家監察委員会に収賄容疑などで調べられていると報告された。ただ、中国共産党の血みどろの権力闘争や、有力財界人の不審死などが背景にあるとの見方もあり、専門家は「さらなる大物失脚につながる可能性もある」との見方を示す。

 ICPOは7日、孟氏の辞表を受理したと発表。即時の辞任で、2020年までの残りの任期を務める次期総裁を11月の総会で選ぶという。

 AP通信などによると、リヨンに残った妻が同日に会見を開き、9月25日から孟氏と連絡が取れなくなったと説明した。通信アプリを通じて孟氏から「身の危険」を知らせようとしたとみられる刃物の絵文字のメッセージを受け取ったと明らかにした。妻によると「私の電話を待って」とのメッセージの後、刃物の絵文字が送られてきたとされている。

通信アプリを通じて孟氏から妻へ「身の危険」を知らせようとしたとみられる刃物の絵文字

 孟氏の拘束の背景について「権力闘争が絡んでいることは間違いない」とみるのは中国問題に詳しい評論家の宮崎正弘氏。孟氏は04年に公安相だった周永康・元政治局常務委員に抜擢され、14年まで公安省次官を務めた。

 江沢民派の周氏は、習近平指導部が進める反腐敗闘争で汚職により摘発され、無期懲役となった。その後も側近の高官が相次いで失脚するなか、孟氏は海警局局長や中国人初のICPO総裁など要職を経験した。

無期懲役の判決が下された周永康氏(中国中央テレビから提供された映像からの静止画像、
2015年6月11日)従来は真っ黒だった髪が真っ白になっており、多くの人が衝撃を受けた

 宮崎氏は「孟氏はICPOでも海外逃亡した中国人を多く摘発した実績を持っていたが、“燃えかす”(江沢民派の残党)を排除する狙いと考えられる」と解説する。

 もう一つの焦点が、今年7月に中国海南省の大手航空会社、海航集団の王健会長が視察先のフランスで転落死したこととの関連だ。同社は習主席の盟友、王岐山国家副主席の親族と密接な関係があるとの指摘もある。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「本部がフランスにあるICPOの総裁を務める孟氏は、王氏の死亡や王岐山氏との関係について何らかの秘密を知り得た可能性もある」とみる。

 孟氏の事件が、今後の中国国内での政局に大きな影響を及ぼす可能性もあるという。

 前出の宮崎氏は「現時点では確かなことはいえないが、秋に控える党中央委員会への対策、または習氏の経済的な失策で反対派の動きを抑えるためかもしれない」と話す。

 「米国の反政府系の中国語の新聞は『第2の王立軍事件』と報じている。12年に重慶市副市長だった王氏が米総領事館に駆け込み、国家機密を米国に提供したことで、同市トップだった薄煕来氏が失脚したといわれている。孟氏もフランス当局との交流が激しくなり、中国側の情報を提供していたのではないかという話もある。今後、さらなる大物失脚につながるかもしれない」と宮崎氏は語る。

 闇は深そうだ。

【私の論評】習近平一派は、もし失脚すればICPO総裁に地の果てまで追い詰められることを恐れたか?

上の記事中国内の権力闘争の一端を垣間見せる事件だと思います。さて、孟宏偉の中国当局による身柄の拘束と、孟氏自身がICPOに辞表を提出したということで、2020年までの残りの任期を務める次期総裁を11月の総会で選ぶということですが、この事自体は世界にとって良いことのなのか悪いことなのかという問題を考えてみたいと思います。

無論権力闘争で個人の身柄を拘束するなど、とんでもないことですが、それは別においておくとして、ICPOの総裁が中国人でなくなるということ自体は、世界にとっては良いことかもしれません。

ICPOは2016年11月、インドネシア・バリ島で開いた年次総会で、中国公安省の孟宏偉次官(63)を新総裁に選出しました。中国人が総裁に就くのは初めてでした。

「ICPOは、反体制派や批判者を迫害する権威主義体制の政府に、国際的な逃亡者に関するデータベースの使用を許可するという歴史を有するようになった」

米紙ニューヨーク・タイムズの社説(2016 年12月4日、電子版)は、共産党による一党独裁の国の治安当局者が、ICPOのトップに就くことへの皮肉から始めました。

ICPO本部(リヨン)

■国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)■ 1956年に発足。フランスに本部を置き、加盟する警察の国際的な捜査協力を促進し、国際犯罪の防止や解決に向けた活動を支援している。

■孟宏偉氏■ 中国ハルビン生まれ、北京大卒。沿岸警備を担当する中国海警局、公安省などを経て、11月、国際刑事警察機構総裁。

社説は、中国やロシアがこれまで海外逃亡者に関するICPOのデータベースを乱用してきたと指摘。本来、そのシステムは、テロリストと疑われる人物へのビザ発給を未然に防ぐといった国際的な連携のためのものであるはずが、中国によって「ジャーナリストや民主活動家、人権活動家を罰するために使われてきた」としました。

その上で社説は、孟氏の総裁就任で「あらゆる人権侵害を控えるだけでなく、人権の保護を積極的に推進するというICPOの公約が、どれだけ守られるかということに疑問が生じている」と論じました。

米紙ワシントン・ポストの社説(2016年11月19日、電子版)は、ICPOが「反体制派や人権活動家、記者、ビジネスマンを含む政敵を追跡するために組織を利用する、ロシアや中国といった抑圧的な体制の国々のしもべとなってきた、と近年、厳しく批判されてきた」と指摘しました。ICPO憲章は「『世界人権宣言』の精神に基づき、すべての刑事警察間における最大限の相互協力を推進する」ことや「政治的、軍事的、宗教的な干渉はしてはならない」と唱っています。しかし、実際は有名無実化しているというわけです。

特に問題となっているのが、「赤手配書」の「悪用」です。ICPOは、加盟国の警察に対し、引渡しなどを目的に、加盟国に対して被疑者の身柄の拘束を求める「赤手配書」を発布できますが、近年、この赤手配書の数が急増しています。

ワシントン・ポスト社説は、赤手配書について調査した英国のNGOの見解として「国境を越えて活動家やジャーナリストを迫害する政治的な道具として赤手配書を使うのは、加盟国にとってたわいもないことだ」と伝えました。

2016年1月23日北京の税関が国際逮捕手配書(赤手配書)で密輸容疑者を逮捕しているところ

社説は、高まる批判に対しICPOが改革に着手したことに触れ、「孟氏が抑圧体制の中国での経験からどのような考え方を持ち込もうとも、ICPOの改革努力にブレーキをかけてはならない。改革を加速させるべきだ」と訴えました。

ただ、中国は2014年、ICPOに100枚の赤手配書を発布させています。孟氏が仮に総裁を辞任していなかったとして、ワシントン・ポスト紙の主張に沿うような組織運営を行っていたか、その後はどうなったか定かでありません。

米政府系放送局ラジオ自由アジアの記事(2016年11月11日、電子版)によると、孟氏のICPO総裁就任について、亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」の報道官は、「中国の法執行機関は中国共産党に奉仕し、ICPOを長年、異なる意見を持つ者や海外のウイグル人のリーダーを追跡するために用いてきた」「海外に安息の地を求めるウイグル人たちに恐ろしい結果をもたらすかもしれない」と語りました。

以上のような事実から、中国人がICPOの総裁であるということは世界にとって良いことではないということは明らかです。

ということは、習近平政権は期せずして、世界に貢献したということです。何と素晴らしいことではありませんか。

それにしても、中共は異形であることが理解できる記事だと思います。普通の国なら、ICPOの総裁になった人物をいくら政敵であるからといって、権力闘争で辞任させるような真似はしないでしょう。少なくとも、任期中には務め上げさせるのが普通でしょう。

こんなことをすれば、それこそ中共の面子が丸つぶれです。中共の面子とは、この程度のものというか、われわれの面子、体面などとは随分違うようです。それに、中国としては、ICPOの政治利用もできなくなるのです。彼らにとっては、権力闘争のほうがはるかに重要なのです。

これから、世界は中共の配下の中国籍の人間を国際機関のリーダーになど据えるべきではありません。こんなことをいうと、国籍差別のように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。

たとえば、アフリカなどの独裁国の国籍のものであっても、国際機関のリーダーにしても良いと思います。なぜなら、そのような場合であっても、中国のようにあからさまに政治利用されることはないからです。

しかし、中国は違います。中国の場合は、中共が任意で、戦時であろうが、平時であろうが「国防動員法」により、学生や一般人民はおろか国際機関のリーダーでも誰でも、地球上のどこの国にいようと、中共の手先として利用できるのです。そんな国の国籍のものを国際機関のリーダーにすべきではないです。

さて、ICPOの総裁は、おそらく中国人ではなくなると思われますが、では他に中国籍の国際機関の長は何人いるか調べてみました。

今のところ以下の四人です。

世界保健機関(WHO)事務局長の陳馮富珍(マーガレット・チャン)氏、国連工業開発機関(UNIDO)事務局長の李勇(リー・ヨン)氏、国際電気通信連合(ITU)の事務総局長に趙厚麟(ジャオ・ホウリン)氏、国際民間航空機関(ICAO)の事務局長柳芳氏。

世界保健機関(WHO)事務局長 陳馮富珍(マーガレット・チャン)氏

これに、今回辞任した孟宏偉を加えると、いっとき5人もの国際機関の長が中国籍だったということです。

これは、今までの世界は中共の恐ろしさを認識していかなったということだと思います。中国はみかけは繕っていますがその実、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされておらず、とてもまともな国とはいえません。

にもかかわらず、まともな国のように扱うべきではありません。異常な国は異常な国として扱うべきです。対中国貿易戦争を始めたトランプ米大統領はまさしく中国をそのように扱っています。我が国もそうすべきです。

そうして、私は今回の孟宏偉氏の失脚は単なる表面上の権力闘争だけではないと思います。もし習近平自身も含む、習近平派の人間が最悪失脚などして、国外逃亡などした場合、孟宏偉がICPO総裁であったとすれば、地の果てまで追い詰められる可能性は否定できません。そのようなことを防ぐために、はやめに芽を摘んだというのが、今回の事件の要因の一つではないかと思います。

さらに、中共の力がなかなか及ばない外国では、ICPOのほうがはるかに犯罪に関する調査能力は高く、それこそ海外での習近平派の一派や家族などの犯罪や不正行為や醜聞などの情報が収集され、それこそ、権力闘争に用いられる可能性も恐れたのではないかと思います。

もし、習近平体制が絶対のものであり、習近平が生きている限りこの体制が続くという確信が習近平にあれば、孟宏偉氏など絶対に裏切らないように因果を含めて泳がせて、政治利用した方が良いはずです。

しかし、習近平は現在の体制にそれほどの確信を抱くことはできないのでしょう。特に、最近のトランプ大統領による対中国攻勢が強まってからは、そうなのだと思います。さらに、孟宏偉氏がトランプ政権に習近平派の海外での犯罪の情報を提供することすらあり得ます。

だからこそ、トランプ大統領の対中国攻勢が苛烈になったこの時期に、孟宏偉氏を拘束したと考えられます。

もし、ICPO総裁が孟宏偉氏ではなく、習近平派の人間であれば、このようなことはしなかったでしょうし、トランプ政権による対中国攻勢がもっと緩やかなもであれば、孟宏偉氏の拘束自体がなかったかもしれません。

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