2018年10月18日木曜日

中国の地方隠れ債務が「GDPの60%」、巨大な信用リスク伴う=米S&P―【私の論評】日本では財務官僚が必死で資産を隠し、中国では中央官僚が必死で債務を隠している(゚д゚)!

中国の地方隠れ債務が「GDPの60%」、巨大な信用リスク伴う=米S&P

マネーボイス

米格付大手S&Pグローバル・レーティングス(以下、S&P)はこのほど、中国地方政府の「隠れ債務」規模が40兆元(約648兆円)に達したとの調査報告を発表した。これによると、2017年中国の公的債務総規模は国内総生産(GDP)の60%を占めた。S&Pは中国の債務問題について、「巨大な信用リスクを伴っている」と警鐘を鳴らした。

中国の地方債務は、7月末では30兆元を超えていたが・・・・
グラフはブログ管理人挿入 以下同じ

中国の地方政府は、インフラ建設や不動産投資の資金調達のために、地方融資平台(LocalGovernmentFinancingVehicles,LGFV)を設立し、社債を発行してきた。中国当局は、この部分の社債を地方政府の債務ではないと定めている。S&Pは、こうした地方政府の隠れ債務は2017年まで、30~40兆元(約480兆~648兆円)まで膨らんだとの見方を示した。

在米中国経済学者の何清漣氏は以前、中国の公的債務による大規模な債務不履行(デフォルト)の可能性が高いと指摘した。同氏によると、世界金融危機を受けて、2009年中国当局が打ち出した景気刺激策の下で、4兆元(約64兆円)とLGFVによる20兆元(約320兆円)余りの資金が中国国内不動産市場とインフラ投資に投じられた。同氏は、中国経済は自転車操業だと批判した。

米中貿易戦の白熱化で、中国経済の鈍化が鮮明となっている。当局は景気にテコ入れするため、これまでのデレバレッジ政策(債務圧縮)から一転、緩和的な金融政策に転換した。またインフラ投資計画を拡大するため、積極的な財政政策の強化を表明した。今後地方政府が抱える債務が一段と増えると懸念されている。

最近中国当局は、金融リスクの拡大を阻止する狙いで、LGFVの破たんを容認する動きを見せている。

今年8月、中国新疆ウィグル自治区の地方政府融資平台、「新疆建設兵団第6師国有資産経営有限責任公司」は国内で発行した5億元(約80億円)規模の債券について、期限内に利払いと償還金の返済が困難だとし、実質上のデフォルトを発表した。デフォルトした初めてのLGFVとなった。

出所:ブルームバーグ
 
地方政府の債務危機拡大に警戒したS&Pは9月12日、中国の天津市、重慶市、無錫市、長沙市などのLGFV7社について、格付けを1段階引き下げた。S&Pは「中国当局のLGFVへの支援は時間の経過とともに強まる可能性がある」との見方を示した。

また米格付大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスも同日、江蘇省や湖南省などのLGFV5社の格付けを引き下げた。

9月13日、中国当局は各地方政府に対して、債務超過となったLGFVについて破産させる方針を通達した。

香港紙サウス・チャイナ・モーニングポスト(16日付)によると、S&Pのアナリストは中国のLGFVのデフォルトリスクは以前より高まっていると指摘した。

(翻訳編集・張哲)

【私の論評】日本では財務官僚が必死で資産を隠し、中国では中央官僚が必死で債務を隠している(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、中国地方政府の「隠れ債務」規模が40兆元(約648兆円)に達したとしていますが、では中国総体の債務はいったいいかほどなのでしょうか。

中国は地方政府の負債を債権と交換するなどの荒っぽい手口で不良債権率を低く見せかけていますが、過去の地方政府が野放図になしてきた銀行からの借金は、どうなったのでしょうか。累積額はいったい幾らなのでしょう。

その資金を供給した銀行も国有銀行であり、「親方五星紅旗」だから、問題はないとばかりにじゃんじゃん不動産開発、地方政府の公共事業に貸し込んできたことは周知の事実です。公表された数字では、中国の国有銀行の不良債権率、いずれも1%台です。一番悪い数字の中国農業銀行とて、1.81%(17年末)。日本の基準に照らせば、「成績優秀行」です。

ところが、しばらくして中国農業銀行は増資を静かに発表しました(3月13日)。第三者割り当てで1兆7000億円。政府系金融機関が引き受けました。というより強制的に引き受けさせられたのです。この何気ない報道からも、中国のファイナンスの実態が浮かび上がってきます。誰も信用しない統計を平気で公表する面の皮の厚さも、中国ならではの風景です。

一部の楽天的なエコノミストは1980年代のラテン・アメリカ諸国が、破産寸前に追い込まれて通貨暴落、猛烈インフレが政情不安を呼んだ事実経過を例証し、けっきょくIMFの管理下となって、経済を立て直したように中国金融の再建は可能だとしているようです。甘い見通しだと言わざるを得ないです。

中国政府の公式統計では地方政府の債務残高は12兆6000億ドルです。中央政府の負債はちなみに10兆3100億ドルです。

だからGDPの36.2%に過ぎないのであり、中国の債務バランスは健全だと、まやかしの数字を使ってその場しのぎをしてきました。いまも誤魔化しは続いています。

地方政府の隠れた債務はほかに14兆ドルと見られています。ウォール街の専門家が見積もるように中央と地方政府の債務は合計で36兆9100億ドルになる。日本円に換算すると(1ドル=105円で計算)、3975兆円、これが公的債務の累積と考えられています。

国有企業の債務は、この統計には加算されておらず、まして民間の個人消費である不動産ローンの残高などは公表がなされていません。卒倒するような禍々しい数字になるだろうと推測されます

この最悪数字を誤魔化すために中国ではシャドーバンキングが悪用され、さらには「理財商品」を預金者、投資家に売りさばいて当座の危機を回避してきました。「理財商品」の残高は17年末で53兆元(邦貨換算で900兆円)。良心的エコノミストなら気絶するかもしれません。

最近では、爆買いどころか、中国国内の消費も頭打ち傾向が歴然とでてきています。

2018年年の春節の旅行は減少傾向を鮮明にしました。海外旅行も外貨持ちだし制限にあって、限度額があるため消費は振るいませんでした。小売りはスマホ、自動車の売れ行きが鈍化しており、ここへ来て消費の頭打ち、微減がはっきりしてきました。

問題は不動産です。北京はマンション価格高騰で、目を血走らせた投資家が、建設中のマンションを買ったりしたのですが、頭金は33%、また住宅ローンの金利は5.3%です。2017年末のローン残高が40兆5000億元(一元=17円で計算しても、688兆円。日本のGDPより多いです)

いまさら指摘するまでもないですが比較材料として、日本のGDPは530兆円、2018年度予算は92兆円だ。中国が天文学的な借金を背負っている事実は、これでおわかりいただけるでしょう。それでも中国経済は大丈夫だと言いふらす人々は、何を考えているのでしょうか。甚だ疑問です。

公式資料では、政府債務残高の推移は以下のようになっています。中国のそれは出鱈目であることは言うまでもありません。

公式の資料では政府総債務残高はこのようになるが、無論中国のそれは出鱈目である

それにしても、日本と中国を比較すると面白いことがわかります。

先日、日本政府は債務と資産をあわせるとプラス・マイナスゼロであることをIMFが公表していることをこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部のみ引用します。
IMFが10日公表した世界経済生産の61%を占める31カ国の財政モニター報告書には、驚くべき指摘が並んでいる。公的部門の正味資産の合計額は101兆ドル(約1京1000兆円)に上り、合計国内総生産(GDP)の219%に相当する。一方、公的債務の合計は同94%であり、資産はその倍以上あるということになる。 
巨額の借金を抱える日本の場合、負債額はGDPの283%に相当するが、その半分以上を日本銀行を含めた政府機関が抱えている。他の資産も考慮に入れて試算すると、日本の「純資産」はほぼプラスマイナスゼロになると、IMFは指摘している。

IMF Fical Motitor 2018に掲載されたグラフ

日本は負債は大きいものの、政府が保有する資産もかなり大きいものであるのと、保有している資産は現金もしくは現金にすぐ換金できるものが7割以上を占めるほか、他の資産も優良資産です。ということは、この資産も勘定にいれると、日本が借金まみれというのは真っ赤な嘘です。

なぜこのような真っ赤な嘘をつくかといえば、財務省が省益だけを追求して、とにかく金をためこみ、それを作配して、財務官僚が引退後の天下り先で、ウルトラリッチ生活をするために真っ赤な嘘をついているのです。だから、負債ばかり大げさに言い立てているのです。

さらに、ごうつくばりの財務官僚は、さらに作配できる金の量を増やしたくて、本当は必要のない10%増税も必要だといいつのつているのというわけです。

では、中国は本当は債務があるのにないかのようにいつわるのはなぜかといえば、それは、天文学的債務があるとわかれば、海外からいずれとんでもないことなると判断され、海外にお金(ドル)が中国から外国逃げていってしまう(キャピタル・フライト)からです。だから、債務がないようにみせかけているのですが、キャピタル・フライトはどんどん加速するばかりです。

キャピタル・フライトがおきると、中央・地方を問わず、幹部の官僚らが、不正蓄財ができなくなります。それどころか、彼らにとって、蓄財装置である、中央政府や地方政府がなくなってしまいます。だからこそ、血眼になって負債を隠すのです。

ただし、彼らにとって中央政府や地方政府が蓄財装置の役割を果たさなくなったら、意外と簡単に政権の維持などあきらめて、さっさと海外に逃亡するかもしれません。

これでは、いずれは中国の金融は破綻するのは目に見えています。日本も、中国も共通しているのは、官僚が自分の都合で、国の財政などを好き勝手に動かし、情報操作までするということです。

ちなみに、中国の場合は、習近平も含めて、いわゆる政治家と思われているような人間もすべて官僚です。なぜなら、中国には選挙制度がないからです。

中国にも公務員試験があります。この試験は難関であり、まずはこの試験に合格しないと、中国では幹部にはなれません。ある程度の幹部になり、さらに上になるためには、人事によります。さらに、トップに上り詰めるためには、人民大会での指名によります。習近平が主席になったのも指名によるものです。主席以外の他の幹部も指名によります。

言葉の厳密な意味で、中国には日本をはじめとする先進国のように、選挙で選ばれる政治家は一人も存在しません。全部官僚です。

日本では、財務官僚が必死で、資産を隠し、中国では中央の官僚が、必死で債務を隠しているのです。官僚はろくなことをしないという点で、日中ともに共通があるといえるかもしれません。

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