2018年9月8日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?―【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?

 「本当は火の車なのに、よく言うね」。そう思ったのは、中国の習近平国家主席の大盤振る舞い発言だ。習氏は自身が提唱してからまる5年経つ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」について、北京で開かれた「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合で、今後3年間で600億ドル(約6兆6000億円)をアフリカ向けに拠出すると発表したのだ。

 「一帯一路」は中国のマネーパワーによって推進される、とは一般的な見方なのだが、だまされてはいけない。本グラフを見ればそのパワーは張り子の虎同然であることがはっきりする。



 外貨準備など中国の対外資産は外貨が流入しないと増えない。流入外貨をことごとく中国人民銀行が買い上げる中国特有の制度のもと、中国当局は輸出による貿易黒字拡大と、外国からの対中投資呼び込みに躍起となってきた。ところが、2015年以降は資本逃避が激しくなり、最近でも3000億ドル前後の資本が当局の規制をかいくぐって逃げている。

 そこで、習政権が頼るのは債券発行や銀行融資による外国からの資金調達である。対外金融債務はこうして急増し続け、外国からの対中投資と合わせた対外負債を膨らませていることが、グラフから見て取れる。主要な対外資産から負債を差し引いた純資産は今やゼロなのだ。

 今後は「債務超過」に陥る可能性が十分ある。米トランプ政権は年間で3800億ドルの対中貿易赤字を抱えており、少なくてもそのうち2000億ドル分を一挙に削減しようとして、中国からの輸入に対し矢継ぎ早に制裁関税をかけている。中国の海外との全取引によって手元に残るカネ(経常収支)は縮小を続け、ことし6月までの年間で683億ドル、昨年年間でも1650億ドルである。対米黒字が2000億ドル減れば、中国の対外収支は巨額の赤字に転落してしまう。しかも、外国からの投資も大きく減りそうだ。米中貿易戦争のために対中投資が割に合わなくなる恐れがあるからだ。

 習氏が一帯一路圏などへの投融資を増やそうとするなら、外国からの借り入れに頼るしかないが、それなら高利貸しかサラ金並みの金利でないと、自身の負債が膨張してしまう。現に、中国による一帯一路圏向けの借款金利は国際標準金利の数倍に達しているとみられる。

 そればかりではない。習氏は外貨が手元になくても、「資金拠出します」と言ってみせるからくりを用意している。港湾や高速道路、鉄道などインフラを融資付きで受注する。受注者は中国の国有企業、それに融資するのは中国の国有商業銀行、従事する労働者の大半は中国人である。

 とすると、受注側の資金決裁はすべて人民元で済む。そして、負債はすべて現地政府に押し付けられ、しかも全額外貨建てとなる。中国はこうして「一帯一路への支援」を名目に、外貨を獲得するという仕掛けである。安倍晋三政権も経団連も「一帯一路に協力」とは、甘すぎる。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

中国はブログ冒頭の記事のような有様ですが、では日本はどうなのかといえば、財務省は5月25日、2017年末における対外資産負債残高を発表し、日本は27年連続で世界最大の債権国となったことがわかっています。発表によれば、対外資産残高は前年比2.7%増の1012兆4310億円、対外負債残高は同5.2%増の683兆9,840億円となり、対外純資産残高は同2.3%減の328兆4470億円となりました。


中国メディアの快資訊は5月25日、日本が27年連続で世界一の純債権国となったことに対し、「日本が失われた20年に陥っているなんて、大嘘だ」と主張する記事を掲載しました。

これは、実際には大嘘ではありません。日本は過去においては、国内では金融政策、財政政策において大失敗しました。デフレ傾向なのに、日銀は金融引締め的な政策ばかり実施し、財務省は緊縮財政を行いました。そのため、日本の国内経済は手酷い停滞を余儀なくされました。

記事は、中国人は近年、日本に対して大きな誤解を抱いているとし、それは、日本の経済成長率が低迷していることを「日本衰退」と思い込んでいることだと指摘。日本は国内の経済成長は確かに低迷しているが、海外への投資を通じて、海外で大きな利益を得ているのだと伝え、「中国の対外純資産残高および海外での投資活動は日本の足元にも及ばないのが現状なのだ」と指摘しました。

続けて、日本が海外に大量の資産を保有しているのは、「日本は国土が小さく、天然資源も少ないうえ、国内市場は縮小傾向にあるため、日本企業が海外に活路を見出したため」であると主張。海外での経済活動はGNPには含まれるが、GDPには含まれないと伝え、中国もGDPばかりではなく、GNPも強化していくべきだと論じました。

先にも述べたように、国内経済は疲弊しましたが、日本の大手企業などは、失われた20年より前から、そうして失われた20年中も、海外投資で手堅く稼いできたというだけのことです。

ただし、失われた20年で国内はすっかり疲弊してしまいまい、国民にとってはとんでもないことになってしまいましたから、これは日本国政府がどうしようもなくボンクラであり、民間企業が賢かったということであり、決して褒められたことではありません。

ただし、中国政府としては、人民のことなどどうでもよく、自分たちが儲かれば良いということからすれば、これは本当に羨ましいことなのかもしれません。

中国の対外純資産残高は16年末は日本に次ぐ世界第2位となりましたが、17年末はドイツに抜かれて再び3位に転落しました。財務省によれば、中国の17年末の対外純資産残高は約204兆円であり、日本と中国の差はまだ大きいものの、中国も近年は海外進出を積極化していることから、この差は縮小していく可能性もあるとしていますが、それは甚だ疑問です。

なぜなら、国内でデフレ時に緊縮財政を行うような、日本の財務省の分析、しかも中国の分析など到底信用できないからです。

以下、中国の公表するGDPなどの統計数値が正しいものとして分析してみます。現在、中国の対外純資産(対外資産-対外債務)の規模は、日本、ドイツに続く世界3位となっていますが、対外資産が生み出す収益である第1次所得収支は、恒常的な赤字となっています。


ここで、米国が断トツのマイナスになっていますが、これは当然といえば、当然です。なぜなら、米国は基軸通貨国でもあるからです。このあたりの詳細は本題とは直接関係ないので説明しません。

中国の、第1次所得収支が、恒常的な赤字その理由には以下の2つがあります。まず、中国の成長率ひいては投資収益率は海外平均に比べ高いです。2015~17年平均の名目経済成長率は、米国やドイツの3.6%、日本の2.1%に対し、中国は7.9%と高い。外国から中国に対して行う投資の収益率は高く、国際収支上は中国の対外支払額が大きくなる一方、相対的に利回りの低い先進国などに投資する中国側の受け取りは小さくなります。

これは、たとえ7.9%が嘘であったとしても、中国の経済の伸び率がある程度高いというのならあてはまることです。

2番目に、中国では外国への直接投資や証券投資での運用は相対的に小さく、大規模な外貨準備で運用する点が特徴となっています。外貨準備は国債などの外国資産で運用されるため、安全性が高いですが、収益率は一段と低くなります。

中国では、所得収支が赤字を続けるほか、海外渡航や知的財産権使用に関連したサービス収支の赤字も拡大しています。貿易収支はこれらを上回る黒字を計上してきたが、所得水準の向上などによる輸入増で黒字幅が縮小し、全てを合計した経常収支の黒字が縮小しています。

今後も経常収支の黒字を維持するためには、日本やドイツと同様に所得収支を黒字化する必要があります。中国内外の利回り格差の解消は難しいですが、対外資産の運用を政府の外貨準備から企業による直接投資・証券投資にシフトしていくことが考えられます。その実現には、為替管理の緩和などを通じて企業の海外投資を自由化する政策が求められるだけでなく、米国をはじめ、諸外国における中国の投資への警戒感を和らげることも課題となってくるでしょう。

対外資産の運用を政府によって実行すれば、最初から大失敗するのは明らかです。日本でいえば、財務省が一手に対外資産の運用を引き受けるようなものであり、官僚が運用して成功する見込みは全くありません。

多数の経験豊富な、民間企業がしのぎを削って競争しながら、実施するからこそうまくいくのです。その中には失敗するものもあれば、成功するものもあります。日本の場合は、成功する企業の割合がたまたま多いということです。

一帯一路圏への直接投資は、いくら投資したとしても、利回りが低くすぎで、たとえ習近平が狡猾に、中国企業に受注させたにしても、元々利回りが低いことには変わりはなく、実際は収益性が乏しいということです。それに、当該国の政府や企業にも、ある程度は儲けさせてやらなければ、長続きするプロジェクトにはなりません。そうなれば、ますます利回り率は低くなります。

かつて、中国が国内に投資して発展したように、国内投資に回帰すれば良いとも思うのですが、それも無理のようです。

なぜなら、中国では、大きなインフラ投資は一巡してもうめぼしいものはないからです。今更、たとえばさらに鬼城をたくさんつくるというわけにはいかないからです。それなら、人に投資するとか、産業構造を変えることに投資すれば良いと思うのですが、それも無理なようです。

中国の全国各地にみられる鬼城(ゴーストタウン)

なぜなら、産業構造を変えるには、中国の民主化、政治と経済の分離、法治国家化がどうしても必要不可欠なのですが、それを実行するとなると、中共の本質を変えなければならないからです。

現在先進国といわれる国々は、これらを実施して、いわゆる多数の中間層を輩出し、それらが活溌な政治・経済活動をすることにより、富を築いて先進国のなったのですが、現在の中国はまだその前の段階であり、しかも中共が体制を変えようとしません。

変えれば、自分たちの統治の正当性を失い崩壊してしまうことを恐れているので、結局何もできず、一帯一路でお茶を濁しているのでしょうが、それもうまくはいきそうもありません。

結局中国はミンスキー・モーメント、てっとりばやくいうとバブルが膨らむだけ膨らんで、崩壊する時の瞬間のことですが、これ迎えるしかないのでしょう。その瞬間の後には中国は中進国の状態から抜け出すことができずに、永遠に中所得国の罠から抜け出すことができなくなることでしょう。

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