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2018年9月8日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?―【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?

 「本当は火の車なのに、よく言うね」。そう思ったのは、中国の習近平国家主席の大盤振る舞い発言だ。習氏は自身が提唱してからまる5年経つ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」について、北京で開かれた「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合で、今後3年間で600億ドル(約6兆6000億円)をアフリカ向けに拠出すると発表したのだ。

 「一帯一路」は中国のマネーパワーによって推進される、とは一般的な見方なのだが、だまされてはいけない。本グラフを見ればそのパワーは張り子の虎同然であることがはっきりする。



 外貨準備など中国の対外資産は外貨が流入しないと増えない。流入外貨をことごとく中国人民銀行が買い上げる中国特有の制度のもと、中国当局は輸出による貿易黒字拡大と、外国からの対中投資呼び込みに躍起となってきた。ところが、2015年以降は資本逃避が激しくなり、最近でも3000億ドル前後の資本が当局の規制をかいくぐって逃げている。

 そこで、習政権が頼るのは債券発行や銀行融資による外国からの資金調達である。対外金融債務はこうして急増し続け、外国からの対中投資と合わせた対外負債を膨らませていることが、グラフから見て取れる。主要な対外資産から負債を差し引いた純資産は今やゼロなのだ。

 今後は「債務超過」に陥る可能性が十分ある。米トランプ政権は年間で3800億ドルの対中貿易赤字を抱えており、少なくてもそのうち2000億ドル分を一挙に削減しようとして、中国からの輸入に対し矢継ぎ早に制裁関税をかけている。中国の海外との全取引によって手元に残るカネ(経常収支)は縮小を続け、ことし6月までの年間で683億ドル、昨年年間でも1650億ドルである。対米黒字が2000億ドル減れば、中国の対外収支は巨額の赤字に転落してしまう。しかも、外国からの投資も大きく減りそうだ。米中貿易戦争のために対中投資が割に合わなくなる恐れがあるからだ。

 習氏が一帯一路圏などへの投融資を増やそうとするなら、外国からの借り入れに頼るしかないが、それなら高利貸しかサラ金並みの金利でないと、自身の負債が膨張してしまう。現に、中国による一帯一路圏向けの借款金利は国際標準金利の数倍に達しているとみられる。

 そればかりではない。習氏は外貨が手元になくても、「資金拠出します」と言ってみせるからくりを用意している。港湾や高速道路、鉄道などインフラを融資付きで受注する。受注者は中国の国有企業、それに融資するのは中国の国有商業銀行、従事する労働者の大半は中国人である。

 とすると、受注側の資金決裁はすべて人民元で済む。そして、負債はすべて現地政府に押し付けられ、しかも全額外貨建てとなる。中国はこうして「一帯一路への支援」を名目に、外貨を獲得するという仕掛けである。安倍晋三政権も経団連も「一帯一路に協力」とは、甘すぎる。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

中国はブログ冒頭の記事のような有様ですが、では日本はどうなのかといえば、財務省は5月25日、2017年末における対外資産負債残高を発表し、日本は27年連続で世界最大の債権国となったことがわかっています。発表によれば、対外資産残高は前年比2.7%増の1012兆4310億円、対外負債残高は同5.2%増の683兆9,840億円となり、対外純資産残高は同2.3%減の328兆4470億円となりました。


中国メディアの快資訊は5月25日、日本が27年連続で世界一の純債権国となったことに対し、「日本が失われた20年に陥っているなんて、大嘘だ」と主張する記事を掲載しました。

これは、実際には大嘘ではありません。日本は過去においては、国内では金融政策、財政政策において大失敗しました。デフレ傾向なのに、日銀は金融引締め的な政策ばかり実施し、財務省は緊縮財政を行いました。そのため、日本の国内経済は手酷い停滞を余儀なくされました。

記事は、中国人は近年、日本に対して大きな誤解を抱いているとし、それは、日本の経済成長率が低迷していることを「日本衰退」と思い込んでいることだと指摘。日本は国内の経済成長は確かに低迷しているが、海外への投資を通じて、海外で大きな利益を得ているのだと伝え、「中国の対外純資産残高および海外での投資活動は日本の足元にも及ばないのが現状なのだ」と指摘しました。

続けて、日本が海外に大量の資産を保有しているのは、「日本は国土が小さく、天然資源も少ないうえ、国内市場は縮小傾向にあるため、日本企業が海外に活路を見出したため」であると主張。海外での経済活動はGNPには含まれるが、GDPには含まれないと伝え、中国もGDPばかりではなく、GNPも強化していくべきだと論じました。

先にも述べたように、国内経済は疲弊しましたが、日本の大手企業などは、失われた20年より前から、そうして失われた20年中も、海外投資で手堅く稼いできたというだけのことです。

ただし、失われた20年で国内はすっかり疲弊してしまいまい、国民にとってはとんでもないことになってしまいましたから、これは日本国政府がどうしようもなくボンクラであり、民間企業が賢かったということであり、決して褒められたことではありません。

ただし、中国政府としては、人民のことなどどうでもよく、自分たちが儲かれば良いということからすれば、これは本当に羨ましいことなのかもしれません。

中国の対外純資産残高は16年末は日本に次ぐ世界第2位となりましたが、17年末はドイツに抜かれて再び3位に転落しました。財務省によれば、中国の17年末の対外純資産残高は約204兆円であり、日本と中国の差はまだ大きいものの、中国も近年は海外進出を積極化していることから、この差は縮小していく可能性もあるとしていますが、それは甚だ疑問です。

なぜなら、国内でデフレ時に緊縮財政を行うような、日本の財務省の分析、しかも中国の分析など到底信用できないからです。

以下、中国の公表するGDPなどの統計数値が正しいものとして分析してみます。現在、中国の対外純資産(対外資産-対外債務)の規模は、日本、ドイツに続く世界3位となっていますが、対外資産が生み出す収益である第1次所得収支は、恒常的な赤字となっています。


ここで、米国が断トツのマイナスになっていますが、これは当然といえば、当然です。なぜなら、米国は基軸通貨国でもあるからです。このあたりの詳細は本題とは直接関係ないので説明しません。

中国の、第1次所得収支が、恒常的な赤字その理由には以下の2つがあります。まず、中国の成長率ひいては投資収益率は海外平均に比べ高いです。2015~17年平均の名目経済成長率は、米国やドイツの3.6%、日本の2.1%に対し、中国は7.9%と高い。外国から中国に対して行う投資の収益率は高く、国際収支上は中国の対外支払額が大きくなる一方、相対的に利回りの低い先進国などに投資する中国側の受け取りは小さくなります。

これは、たとえ7.9%が嘘であったとしても、中国の経済の伸び率がある程度高いというのならあてはまることです。

2番目に、中国では外国への直接投資や証券投資での運用は相対的に小さく、大規模な外貨準備で運用する点が特徴となっています。外貨準備は国債などの外国資産で運用されるため、安全性が高いですが、収益率は一段と低くなります。

中国では、所得収支が赤字を続けるほか、海外渡航や知的財産権使用に関連したサービス収支の赤字も拡大しています。貿易収支はこれらを上回る黒字を計上してきたが、所得水準の向上などによる輸入増で黒字幅が縮小し、全てを合計した経常収支の黒字が縮小しています。

今後も経常収支の黒字を維持するためには、日本やドイツと同様に所得収支を黒字化する必要があります。中国内外の利回り格差の解消は難しいですが、対外資産の運用を政府の外貨準備から企業による直接投資・証券投資にシフトしていくことが考えられます。その実現には、為替管理の緩和などを通じて企業の海外投資を自由化する政策が求められるだけでなく、米国をはじめ、諸外国における中国の投資への警戒感を和らげることも課題となってくるでしょう。

対外資産の運用を政府によって実行すれば、最初から大失敗するのは明らかです。日本でいえば、財務省が一手に対外資産の運用を引き受けるようなものであり、官僚が運用して成功する見込みは全くありません。

多数の経験豊富な、民間企業がしのぎを削って競争しながら、実施するからこそうまくいくのです。その中には失敗するものもあれば、成功するものもあります。日本の場合は、成功する企業の割合がたまたま多いということです。

一帯一路圏への直接投資は、いくら投資したとしても、利回りが低くすぎで、たとえ習近平が狡猾に、中国企業に受注させたにしても、元々利回りが低いことには変わりはなく、実際は収益性が乏しいということです。それに、当該国の政府や企業にも、ある程度は儲けさせてやらなければ、長続きするプロジェクトにはなりません。そうなれば、ますます利回り率は低くなります。

かつて、中国が国内に投資して発展したように、国内投資に回帰すれば良いとも思うのですが、それも無理のようです。

なぜなら、中国では、大きなインフラ投資は一巡してもうめぼしいものはないからです。今更、たとえばさらに鬼城をたくさんつくるというわけにはいかないからです。それなら、人に投資するとか、産業構造を変えることに投資すれば良いと思うのですが、それも無理なようです。

中国の全国各地にみられる鬼城(ゴーストタウン)

なぜなら、産業構造を変えるには、中国の民主化、政治と経済の分離、法治国家化がどうしても必要不可欠なのですが、それを実行するとなると、中共の本質を変えなければならないからです。

現在先進国といわれる国々は、これらを実施して、いわゆる多数の中間層を輩出し、それらが活溌な政治・経済活動をすることにより、富を築いて先進国のなったのですが、現在の中国はまだその前の段階であり、しかも中共が体制を変えようとしません。

変えれば、自分たちの統治の正当性を失い崩壊してしまうことを恐れているので、結局何もできず、一帯一路でお茶を濁しているのでしょうが、それもうまくはいきそうもありません。

結局中国はミンスキー・モーメント、てっとりばやくいうとバブルが膨らむだけ膨らんで、崩壊する時の瞬間のことですが、これ迎えるしかないのでしょう。その瞬間の後には中国は中進国の状態から抜け出すことができずに、永遠に中所得国の罠から抜け出すことができなくなることでしょう。

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2017年10月1日日曜日

中韓メディアが警戒、小池氏は「安倍首相より右寄り」 日本政治の右傾化懸念する声続出―【私の論評】北朝鮮版ヤルタ会談に参加することが安倍首相の真の狙い(゚д゚)!

中韓メディアが警戒、小池氏は「安倍首相より右寄り」 日本政治の右傾化懸念する声続出


2005年総務省が作成した動画「希望の党」後編は

 韓国、中国メディアが、小池百合子都知事率いる「希望の党」に強い関心を寄せている。安倍晋三首相よりも「右寄り」との批評もあり、日本政治の右傾化を懸念する声が続出している。

「関東大震災朝鮮人虐殺を否定し、平和憲法改定に賛成する極右志向の小池百合子・東京都知事が代表を務める党だ」

韓国紙、ハンギョレ新聞は9月28日、希望の党への警戒心をあらわにした。

中央日報は、小池氏が安倍首相よりも右寄りの評価を受けているとし、「野党側も改憲論者一色で、平和憲法の価値を守ろうとする勢力の影響力が落ちている」と指摘し、「日本政治の右傾化がさらに加速すれば、東北アジアの緊張が一層高まる」と危ぶんだ。

中国メディアでも、同様の懸念が上がっていると報じられている。

【私の論評】北朝鮮版ヤルタ会談に参加することが安倍首相の真の狙い(゚д゚)!

中国メディアは、小池百合子氏が国政参加の意図を示す前から、小池氏に対して警戒感を露わにしていました。

以下にそれに関連した、チャイナ・レコードの日本語版の記事を引用します。これは、今年の3月4日のものです。
中国メディアが小池都知事の発言にかみつく=「右翼の女知事が…」
3日、中国共産党系の環球網は、東京都の小池百合子知事が「靖国参拝に異論はない」と発言した
ことについて、「右翼の女知事が宣言」との見出しで批判的に伝えた。写真は小池都知事。
2017年3月3日、中国共産党系の環球網は、東京都の小池百合子知事が「靖国参拝に異論はない」と発言したことについて、「右翼の女知事が宣言」との見出しで批判的に伝えた。

小池知事は2日の都議会で靖国神社の参拝について問われた際、「私たちが享受している平和と繁栄が戦没者の方々の尊い犠牲のうえに築かれている。終戦の日の靖国参拝に異論はない」と答えた。

記事は小池知事について「2016年7月31日に初の女性都知事に就任。日本のタカ派の政治家として繰り返し靖国神社に参拝し、平和憲法の改正、集団的自衛権の解禁などを叫び、強硬な対外政策を主張している」などと紹介している。

また、靖国問題については「靖国神社には第2次世界大戦の多くのA級戦犯が合祀(ごうし)されている。同神社への参拝は、長年、日本の一部の政治家たちの票集めや右翼思想を展開するための“個人のパフォーマンス”になっている。日本の政治家のたび重なる参拝が、日本と中国、韓国などのアジアの国との関係を破壊している」などとしている。
このように、中国は小池百合子氏を「右翼の女知事」などとして忌み嫌っています。それは、そうでしょう。靖国参拝は当然のこととして、元々改憲論者でもあり、核武装論者でもあります。

もし、日本が改憲して、普通の国並に安全保障ができるようになれば、中国としては国家戦略の変更を迫られます。さらに、日本が核武装したりすれば、国家戦略を根底から変えなければならなくなります。

だから、中国としては小池氏が国政に参加することについても、危惧の念を抱いていることでしょう。

ただし、中国は現在のところ、この憎いはずの、小池氏をあまり批判しようとしません。実際、中国の意思を最優先にする、朝日新聞は以下のような記事を掲載しています。
「希望の党、中間層に新たな選択肢」 中国メディア分析
 国営中国中央テレビは、特派員が東京から報告。安倍晋三首相の狙いについて「北朝鮮情勢の緊迫で回復した支持率と野党の準備不足を利用して、自らの政権基盤を固め直して憲法改正の主導権を回復すると同時に、森友学園と加計学園のスキャンダルの追及から逃れようとした」と紹介した。 
 だが小池百合子東京都知事が率いる「希望の党」の登場で状況が一変したと指摘。「安倍政権に不満を持ちながら、力のある野党がないと考えていた中間層に新たな選択肢を与えた」と述べ、安倍首相の狙い通りにはいかない可能性が高いと分析している。 
 また「世論調査で安倍首相への不信感が高まっており、政治的な寿命は長くない」という日本の専門家の言葉も伝えた。 
 一方、「小池新党は急ごしらえで、多くの現実問題にぶつかっている」(新華社ネット版)との指摘や、小池氏らの保守的な政治理念を指摘し、「最大野党も右翼政党になる可能性があり、東アジアの平和と安定への危険信号を意味する」と警戒する専門家の分析も出ている。(北京=延与光貞)
このように、中国では今のところ、表立って小池百合子氏を徹底的に糾弾しようという様子はありません。それはどうしてなのでしょうか。

本日は、それついて掲載します。まずは、これを理解するためには、すでに米国等による北朝鮮への攻撃はすでに規定事実であることを知らなければなりません。これを前提にしないと理解できません。

北朝鮮問題はいよいよ膠着状態に陥ってきています。トランプ政権は手詰まりになる一方、中国は躊躇し、ロシアが主導権を握りつつあります。そうして、現状ではほとんど金正恩の勝ちと言えるほどです。

しかし、北朝鮮のような弱小国が核とミサイルを手にしつつあるからと言って、周辺の大国がそろって不満を募らせている状態が長続きするはずはないです。いずれ必ず均衡は崩れます。周辺大国が共通の利害を見極めて、不満があっても妥協の解決策が成立する可能性は高いです。

北朝鮮のミサイル
加えて、中国やロシアにとっては、いまが事態を動かす絶好のチャンスでもあります。なぜなら、韓国に親北容共の文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生したからです。中ロが北朝鮮を無難な緩衝材に戻すには、金正恩後の北朝鮮に自分たちに都合の良い政権を作らなければならないです。それには文政権の下で韓国と北朝鮮が統一されるのが、もっとも望ましいのではないでしょうか。

先の大戦の後、旧ソ連の後押しで誕生した北朝鮮という国はなぜこれまで生き延びられてきたのでしょうか。それは、米国の圧力にさらされたソ連や中国が、それぞれ自国の「緩衝材」として北朝鮮に利用価値を見出してきたからに他なりません。

ソ連や中国が米国等に攻められたとき、北朝鮮は身代わりの戦場となって敵の侵攻を食い止める。いざとなったら、北朝鮮が中ソの鉄砲玉となって突撃する。中ソはそのような役割を北朝鮮に期待してきました。

ところが、いま北朝鮮は中ロなどお構いなしで、核とミサイルの開発にまい進しています。これは、中ロから見れば「子分が親分の言うことを聞かず、勝手に怖い飛び道具を手に入れようとしている」ようなものです。

北朝鮮が核ミサイルを手にすると、北の照準はソウルと東京、ワシントンだけに向くとは限らないです。その気になれば、北京とモスクワだって狙えるのです。北朝鮮は中ロにとっても潜在的な脅威になっているのです。

現在の北朝鮮は米国はもとより、中国やロシアをも潜在的な敵に回しています。中ロは表向き、北朝鮮を舞台裏で支援しているかのように見えます。ところが、実はいつ金正恩を裏切ってもおかしくないです。

金正恩と核・ミサイルを除去、あるいは自分たちが完全に支配したうえで、北朝鮮を元の無害な緩衝材状態に戻す。それが中ロにとってベストシナリオのはずです。

ロシアには、そもそも北朝鮮という国を金日成を使って建国したのは自分たちだ、という思いがあります。中国も、金日成は大口を叩いて朝鮮戦争を始めてみたものの、米国に押し返されて敗北寸前だったのを人民解放軍を派遣して救ったのはオレたちだ、と思っています。実際、中国は当時、戦死者数十万人ともいわれる大変な犠牲を払いました。

ロシアや中国は「金正恩がそんな恩義も忘れて、オレたちの言うことを聞かず、核ミサイルを手に入れようとするのは許せない」と内心、思っているはずです。

ヤルタ会談
戦争の勝敗が決しようとするとき、優勢にある勝者の側は最後の一戦を交える前に、あらかじめ敗者の扱いを決めておくものです。先の大戦では1945年2月のヤルタ会談がそうでした。これは当時の米英ソ連の首脳が占領後の日本の取扱いについて協議するため、クリミア半島の避暑地、ヤルタに集まった会談です。

ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相、スターリン・ソ連首相の3人は戦後の国連創設とともに、ドイツ降伏後3カ月以内のソ連による日本に対する参戦(秘密条項)、戦後ドイツの米英ソ仏4カ国による分割統治、ポーランドの扱いなどを決めました。

その結果、千島列島や南樺太のソ連帰属が決まり、ドイツは4つに分割されました。一方、朝鮮半島については当面、連合国の信託統治とすることで3首脳が合意しました。日本が降伏した後、同12月に開かれた米英ソ3国外相会談で中国を加えた4カ国が最長5年間、信託統治することが決まりました。

この信託統治案は朝鮮人の間で激しい反対運動が起きて挫折してしまいました。朝鮮半島は結局、45年から3年間の連合軍軍政期を経て、南北に分断したまま48年、韓国と北朝鮮が建国されました。これが朝鮮半島の歴史です。

この例にならえば、金正恩を除去した後の北朝鮮をどうするか、について米中ロが合意できれば、金正恩や核とミサイルの除去が現実になるかもしれません。朝鮮半島に関して、米中ロによる現代版の「ヤルタ協定」が成立する可能性があるのです。

1945年当時とは違って、いま中ロが露骨に朝鮮半島に介入して傀儡政権を作るわけにはいきません。そんな企てには米国も乗れないです。しかし、文政権による南北統一であれば民族自立の大義名分が立ちます。

中ロが後ろ盾になって文政権による南北統一を目指すのです。米国もこれなら容認します。そのような合意ができれば、そのプロセスの前提として金正恩除去という選択肢も現実味を帯びてくることでしょう。

米国は文政権による南北統一シナリオを容認できるでしょうか。「核ミサイルの本土到達阻止」こそが米国の最優先事項である点を考えれば、金正恩と核・ミサイルさえ確実に除去できるのなら、米国が同意する可能性は小さくないでしょう。

文在寅
一方、中ロの長期的な戦略目標は東アジアにおける米国の影響力排除です。金正恩除去によって自国に対する潜在的脅威を取り除くとともに、それに乗じて米国の影響力も減らせれば言うことはないです。具体的に言えば、韓国からの米軍撤退です。

中ロは米国が金正恩と核・ミサイルの除去を求めるなら、この際、値段を釣り上げて、朝鮮半島からの米軍撤退を取引条件に言い出す可能性もあります。

文政権の親・中ロ路線を考えれば、文政権が米軍撤退に傾く可能性がゼロとは言えないです。韓国が中ロ側につくというのは、本質的にそういう話です。そうなると、日本は戦後最大の危機に陥ります。

基地を受け入れる側の韓国が米軍撤退を言い出せば、米国は同盟国とはいえ旗色が悪くなります。文政権は朝鮮半島を統一した民族の正統政権として、米軍撤退も掲げて装いも新たに一躍、東アジアのど真ん中に登場する形になります。

こんなシナリオは日本にとって、どんな意味を持つでしょうか。核を持つ中ロと、核・ミサイルを廃棄したところで、開発能力を維持する韓国が日本海を挟んで日本に対峙するのです。日本には、安全保障環境が一変する「戦後最大の危機」と言っても良いです。

習近平は秋の共産党大会を終えれば、フリーハンドを握ります。プーチンのロシアは北朝鮮との定期航路を開設し、硬軟両用の構えを整えています。秋から事態は動き出す公算が高いです。

しかし、ここで状況を一変させる方法があります。それは、「北朝鮮版ヤルタ会談」に日本も参加するということです。

米国一国では、確かに北朝鮮問題では立場が弱いです。なぜなら、中国やロシアは北朝鮮と国境を接する国々です。米国はそうではありません。北朝鮮の核と核ミサイルが一掃されれば、米国が北朝鮮問題に強く関わることには根拠が薄弱になります。

しかし、日本は違います。日本は現在でも中国と対峙しています。さらに、ロシアとは対峙はしていませんが、北方領土問題もあります。それに朝鮮半島は海を挟んではいますが、日本は隣国です。

日本が、半島情勢に大きな影響を受けることは中ロともあからさまに否定はできません。そうなると、日本と安保条約を結んでいる同盟国である米国は、北朝鮮崩壊後も半島情勢に関わることは、不自然なことではありません。

米国は文在寅政権は、すでにあてにしていません。そもそも、北朝鮮情勢に対する対応が、ハチャメチャです。先日も北朝鮮人道支援で、米国の不興を買いました。

特に、現状ではトランプ大統領の安倍総理に対する信頼はかなり厚いです。日米が協調して、「北朝鮮版ヤルタ会談」をすすめれば、日米にとって有利にならないまでも、日米にとって不利になるような会談内容にはならないことが考えられます。

中ロを相手に米国と半島問題について、「北朝鮮版ヤルタ会談」を行うときには、日本が参加していれば、米国としても交渉をすすめやすいです。

また、ロシアは日本に対して、中国封じ込めを期待しています。9月28日ロシア紙イズベスチヤは「与党の基盤を強化すれば、安倍晋三首相は不満を持つ憲法の改正に取り組める」と指摘しました。また北朝鮮の核・ミサイル問題に関連し、「日本海にロケットが飛べば飛ぶほど、過去の軍事力を復活させようとする安倍首相の努力を、日本人は必要なものだと考えるようになる」と報じました。

欧米諸国は、ウクライナ問題でロシアとは疎遠になっていますが、安倍総理はプーチン氏と会談をするなどして、今でも友好を保っています。

このようなことから、「北朝鮮版ヤルタ会談」に、安倍総理が参加すれば、中国封じ込めという観点から、日・米・露の三者を安倍総理がまとめて、「北朝鮮版ヤルタ会談」を中国封じ込めに有利な内容にできる可能性が高まります。

安倍総理は北朝鮮版ヤルタ会談で中国包囲網をさらに強力にできるか?
そうして、安倍総理が今回衆院解散を決めた大義はここにあります。まさに、「国難突破解散」であり、安倍総理はこの「北朝鮮版ヤルタ会談」に参加することを狙っているのです。

そうして、現状では、「北朝鮮版ヤルタ会談」に参加して、米中ロに伍して、会談を少しでも日本にとって有利になるようにできるのは、安倍総理のみです。

小池百合子氏を他党のリーダーではとても勤まりません。第一、トランプ大統領は、安倍晋三氏以外には、この大役を担うことを許さないでしょう。

中国は、来るべき「北朝鮮版ヤルタ会談」には、安倍晋三首相には是が非でも参加させたくないでしょう。だからこそ、今回の衆院選で、対抗馬である小池「希望の党」が大勝して、安倍総理ではなく小池百合子氏が日本の首相になれば、安倍首相は「北朝鮮版ヤルタ会談」には出られなくなるか、小池百合子氏が会談に出ても、何ら主導力を発揮できないとみているのでしょう。

だからこそ、「右翼の女性知事」が国政に出て、大躍進することは目先では、中国にとっては利益であると考えられるので、小池氏ををあまり批判しないのです。

しかし、中国には誤算があります。おそらく、今回の選挙では、どんなに「希望の党」が善戦したとしても、政権交代には至りません。

たとえ、自民党がかなり議席数を減らしたにしても、「希望の党」与党第一党にはなりません。

どのみち、小池氏はバリバリの保守であることから、安倍総理が「北朝鮮版ヤルタ会談」に参加することには大賛成です。仮に、「希望の党」が野党第一党になったにしても、与党と、野党第一党の両方が日本が「北朝鮮版ヤルタ会談」に安倍首相が参加することには賛成します。

他の弱小野党がいくら反対しても、安倍総理は「北朝鮮版ヤルタ会談」に出席することになるのです。ヤルタ会談に出るためには、日本も北朝鮮に対する制裁にかなり貢献しなければなりません。これにも、「希望の党」は大賛成することでしょう。

この会談は中国にとっては、実りが少ないものになることでしょう。「北朝鮮版ヤルタ会談」は「ヤルタ会談」と同じく歴史に残るものになることは間違いないです。

これによって、アジアの秩序が変わることは間違いないです。この会談により、冷戦が終了した後も、アジアにそのまま残った負の遺産が解消されることを期待しています。

そうしてこれは声を大にして言いたいのですが、日本の政治家はあまりにも平和ボケになりはてたので、安倍総理がこのようなことを目論んでいることなど、少しも思いが至らないようです。まあ、衆院が終わったら、また国会で、どう考えても最初から「筋悪」の「森・加計」問題でもつついて、無駄時間を費やし、重要なことは何もせず、民進党のように滅びの道を歩むことになるでしょう。サヨウナラ😁

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