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2020年6月6日土曜日

香港デモ同様の手口か。全米に広がる暴動の裏に中国「関与」の噂―【私の論評】米国人の中共に対する憤りは、コロナ禍も相まってますます激烈になる(゚д゚)!

香港デモ同様の手口か。全米に広がる暴動の裏に中国「関与」の噂

米国の暴動

燎原の火のごとく全米中に広がり、収集がつかない状況となっている大規模な暴動。各地で放火や略奪が多発していますが、その裏に「あの国」の関与が囁かれ始めているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、「デモ隊のなかに中国からの指示を受けた工作員が紛れ込んでいてもなんら不思議ではない」としてそう判断する理由を記すとともに、日本に対しても尖閣海域でも不穏な動きを見せる中国への警戒を呼びかけています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年6月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】中国のアメリカ暴動への関与疑惑が出はじめた

トランプ大統領SNS投稿 暴動起こしている人たち「急進左派」

ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が偽札使用の容疑で拘束した男性の首を圧迫し死亡させた事件をきっかけに、全米で大きな暴動が発生しています。抗議デモに便乗して店を襲撃、略奪を行う輩や破壊活動を行うアナーキストなども入り混じって、アメリカは大変な混乱状態にあります。

これほどまでに騒動が大きくなった一因には、新型コロナウイルスによる失業拡大で、貧困層のフラストレーションがたまり、人種差別による事件をきっかけにそれが一気に爆発したと言われています。

発展途上国など、コロナ災禍により多くの被害が生じた地域や国では、これから経済的なダメージが本格化すると見られており、このアメリカの混乱が他国へと広がれば、感染と同じくらい、あるいはそれ以上に世界情勢は大きなショック状態に陥ることが懸念されます。中国発の新型コロナの怖さは、負の連鎖がどこまでも続くことです。

この状況に、トランプ大統領はツイッターで、暴動を起こしている者を「アナーキスト」として、「野党・民主党が主導する都市や州は、ミネアポリスの州兵の鎮圧を参考にすべきだ」と述べました。

このようなアメリカの状況について、中国は積極的に国内で報道しています。香港での人権弾圧をアメリカから批判されているだけに、「アメリカも人のことをいえるのか」ということを、国内にアピールする狙いがあるのでしょう。

以前、アメリカがウイグルでの人権弾圧を批判し、人権侵害に関わった当局者に制裁発動をするための「ウイグル人権法案」を可決した際には、中国政府は「アメリカは先住民を虐殺したではないか、こんな法案をつくる資格があるのか」と反発しました。

ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を虐殺した」と言い始めた中国

とはいえ、150~400年前の先住民弾圧と、現在の少数民族弾圧を同一に語るのは、明らかに欺瞞です。それならば清末のイスラム教大虐殺の洗回を中国はどのように考えているのか。そもそも中華歴代王朝は周辺民族をすべて野蛮な夷狄として扱ってきました。夷狄とは、その文字を見てもわかるように、禽獣のことです。

米中の民族問題は、それぞれまったく異なるものです。中国のほうは非漢族の言語を潰して漢化させる同化主義であり、民族浄化でもあります。

それはともかく、中国は自らの正当性を主張するために、とにかく屁理屈をこねて、相手の不当性を訴えます。

中国南部広東省の省都広州にある「リトルアフリカ」の路上に集まる人々(2018年3月2日)

以前のメルマガで、中国ではアフリカ系の黒人が新型コロナ感染の第2波の元凶であるかのように目され、入店拒否や住居からの退避、さらには集団隔離が行われているということをお伝えしました。こうした黒人差別によって、中国はアフリカ諸国から抗議を受けています。

「銃殺してしまえ」…コロナ禍の中国で深刻な黒人差別が始まった

そうした批判を交わすため、さかんにアメリカでの黒人差別の様子や、それによって大きな暴動が起こっていることを報じているわけです。

こうしたやり方は、中国の「三戦」という戦術に基づいたものです。これは、2003年に修正された「中国人民解放軍政治工作条例」のなかに盛り込まれた、人民解放軍の戦術です。

この三戦とは、世論戦、心理戦、法律戦の3つのことです。世論線とは国内および国際世論に影響を及ぼし、自分たちへの支持を築くこと、心理戦は威嚇や脅迫、恫喝などによって相手の士気を低下させること、そして法律戦は国際法や国内法を利用して、相手の不当性に非を鳴らすとともに、自らの絶対的な正当性を主張することです。そのためにはどんな屁理屈も厭わない。

たとえば、南シナ海の領有権については、「古文書に書いてある」などという不確かな情報を根拠に、とにかく「漢の時代から管理していた」などと主張し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所から「中国の主張に根拠なし」という判決が下されれば、西側諸国が勝手に決めた国際法に従う必要はないとし、「そんな判決は紙くずだ」と吐き捨て、まったく判決を守ろうとしません。

言い換えれば、あくまで自己中心的で、自分の都合いいように何でも解釈するということです。

今回のアメリカでの暴動についても、中国はアメリカの黒人差別を人権問題だとして、ウイグルや香港問題に口を挟むなと牽制するつもりなのでしょう。

ところで、この全米での暴動について、中国が裏で関与しているのではないか、という噂があちらこちらから出てきています。

私もよく知る元中国人の石平氏は自身のツイートで「アメリカの『抗議者』、どういうわけか中国共産党党旗、中国の国旗を掲げている。暴動の背後に中共の暗影があるのではないかとの疑惑が深まっている」と述べ、ジャーナリストの門田隆将氏もこの投稿をリツイートしながら、「やはりというべきか“中国の関与”が取沙汰されてきた。SNS上の映像では中国語が飛び交い、抗議者の掲げる旗に中国国旗も」と指摘しています。

ジャーナリスト・門田隆将氏 米国全土の暴動で「“中国の関与”が取沙汰されてきた」

以前、香港デモでは変装した香港警察や中国軍がデモ隊に潜り込ませ、過激な暴動を演出したことがありました。香港人は英語が話せるのに、彼らはまったく英語を話せなかったことから、大陸の中国人だということがバレたことがありました。

こうしたことも、世論戦の一環なのです。そのため、アメリカでのデモ隊のなかに中国からの指示を受けた工作員が紛れ込んでいても、なんら不思議ではありません。

台湾も、中国から多くのフェイクニュースを流されており、蔡英文政権も中国発のフェイクニュースによって扇動されないよう注意を呼びかけています。

武漢発のパンデミックを利用して、中国は南シナ海だけでなく、尖閣海域にも手を伸ばしているという、不穏な動きがあります。日本は中国の火事場泥棒への警戒を緩めてはいけません。

【私の論評】米国人の中共に対する憤りは、コロナ禍も相まってますます激烈になる(゚д゚)!

上の黄文雄氏の記事では、香港デモでは変装した香港警察や中国軍がデモ隊に潜り込ませ、過激な暴動を演出したことがあったとしています。これは、いかにもありそうな話で、中国が、そのようなことをしていたとしても驚くには、値しません。

しかし、現実の中国はそれ以上のことをしていました。デモが10週目に入ろうとしていた、昨年の8月10日に、中国政府は米国が香港の抗議デモを扇動しているとして非難を強めました。

同9日には全身黒ずくめの数百人の参加者が市内の国際空港に集まり、3日間の座り込みを始めました。週末に予定されていたいくつかのデモが地元警察によって禁止されたことで、さらなる衝突につながる可能性がありました。中国政府は数日前、香港警察が騒動を沈静化できなければ直接介入に踏み切る用意があると警告しました。

中国本土と香港の中国政府系メディアは同8日と9日、香港の米総領事館員ジュリー・イーデー氏がホテルのロビーで反対派の主要人物らと面会した写真を公開しました。5年前に香港を揺るがした抗議デモの主導者、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)の姿もありました。

中国の国営英字紙チャイナデイリーなど本土のメディアはこの面会を、米国の「黒い手」が抗議活動の背後にある証拠だと論じました。一部のメディアはイーデー氏の経歴や子供の名前も公表しました。

国営の中国中央テレビ(CCTV)は同9日、米中央情報局(CIA)は2000年代に旧ソ連諸国で起きた抗議活動「カラー革命」を扇動したことで知られると伝えました。中国政府は今週、香港の騒乱はカラー革命の様相を呈しているとの見方を示しました。

香港の米総領事館員の報道官は、イーデー氏はコメント要請に応じられないと述べました。

黄氏は9日、自身も自身の団体も全米民主主義基金や米政府から資金を受け取っておらず、また米総領事館からも物資や助言を受けていないと述べました。

昨年の香港デモで星条旗を掲げる参加者達

確に香港のデモでは、デモ隊の中には米国の星条旗を掲げる人たちもいましたが、それは米国に煽られたということではなく、米国の支援も期待していることを表明したものであると思われます。実際その後米国では11月に香港人権・民主主義法が成立しました。

この法律に対しても、中国は「内政干渉」だと強く抗議をしました。しかし、国際法においては、人権に関わるものに関して、内政干渉には当たらないとされています。

ここで、国際法の適用などの可否などの判断はしませんが、それにしても確かなことがあります。中国が米国が香港のデモを煽ったとか、内政干渉であると主張するなら、国際司法裁判所などに提訴すれば良いと思うのですが、なぜかそのようなことはしないですし、国際法という言葉も用いることはありません。

そもそも、中国は南シナ海の領有に関して、上の記事にもあるように国際司法裁判所に提訴され、「中国の南シナ海領有に関しては、全く根拠がない」との裁定を下されています。にも関わらず、中国はその裁定を守るどころか、最近でも南シナ海の実効支配地域の軍事化を強化している有様です。

それに、中国は未だに、米国が香港デモを煽ったと言う証拠をあげていません。もしあげていたとすれば、これをもとに、米国を徹底的に叩いていたでしょう。


中国が米国の暴動を裏で煽っているとすれば、その理由は明らかです。上で、黄文雄氏が述べている理由もありますが、そのほかにもトランプ大統領の再選阻止という目的もあるでしょう。

ただし、次の大統領が仮にトランプ氏以外の、バイデン氏やその他の人になったとしても、今後の米国の対中国政策はあまり変わらず、中国に対して厳しいものになるでしょう。なぜなら、米国では既に議会が上下院ともに、中国に対して厳しい見方をしているからです。

それよりも何よりも、米国人の多くが、今や中国に対して、厳しい見方をしているからです。今回の米国内の暴動が、中共によって煽られたことが、今後の調査などで明らかになれば、米国人の中国に対する憤りは、中共がもたらしたコロナ禍も相まってますます激烈になるでしょう。

さて、最後に新唐人テレビの動画を掲載します。


この動画では、ホワイトハウス付近の放火現場で飛び交う中国語をはじめ、 暴動の背後に中共の鬼影があることが示されています。

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2020年4月8日水曜日

新型コロナウィルス騒動の裏で、中国に「宮廷クーデター」の匂い!?―【私の論評】コロナ禍は過去の世界大戦のように、終息後の世界の秩序を変える(゚д゚)!

新型コロナウィルス騒動の裏で、中国に「宮廷クーデター」の匂い!?


《本記事のポイント》
  • 携帯解約から"推計"される"真"のコロナ死亡者数
  • 外交部内にも路線対立か?
  • 「宮廷クーデター」の動きも!?
最近、中国では携帯電話を解約した人が急増したという。

「中国移動(チャイナモバイル)」は、ユーザー数9億4216万人を誇るが、1月と2月併せて800万人もユーザーが減っている。「中国聯通(チャイナユニコム)」は、1月と2月併せてユーザー数が780万人減少した。「中国電信(チャイナテレコム)」は、1月にユーザーが前月比43万人増えたが、2月になると560万人も減少している。

これらをあわせると、大手3社だけを見ても、2カ月で2097万人のユーザーが減少したのである。なぜ、これほど多くの携帯所有者が契約を解約したのか。

携帯解約から"推計"される"真"のコロナ死亡者数

この"ご時世"であることも考えると、想定される理由は、以下の5つだ。
(1)「新型コロナウィルス」(以下、「新型コロナ」)に感染し、長期間にわたる入院・隔離を余儀なくされた。
(2)「新型コロナ」のため収入が減り、携帯料金が払えなくなった。
(3)「新型コロナ」で死亡した。
(4) 海外へ長期渡航(出張・旅行)した。
(5) 罪を犯し入獄した。
最悪の、そして読者の多くが想像するケースは、(3)の「死亡説」だろう。さすがに解約した2097万人すべてが「新型コロナ」で死亡したとは考えにくいかもしれないが、その10分の1の人間がそうだとしたら、209万7000人死亡である。100分の1だとしても、20万9700人死亡だ。恐ろしい話ではないか。

中国の内部は、当局が発表するよりもはるかに混乱していることがうかがえる。

外交部内にも路線対立か?

それは、政局についても言える。近頃、中国外交部(外務省)の様子がおかしいのだ。

3月12日、外交部新聞局の趙立堅報道官は、自身のTwitterで「『新型コロナ』は米軍が武漢市に持ち込んだかもしれない」と書き込んだ。

この発言を受けて翌13日、崔天凱駐米大使は、米国務省に呼び出された。そして、記者に趙立堅の主張にいかなる根拠があるのかと尋ねられたが、崔大使は「彼に尋ねたらどうか」「私は中国国家元首と中国政府を代表してここ(アメリカ)にいる」とつっぱねている。

趙立堅氏と崔天凱氏の主張に違いが生じているわけだが、中国共産党の中に路線対立が存在する事を暗示しているのだろうか。

他にも中国内では、"内乱"の匂いがある。

「宮廷クーデター」の動きも!?

毛沢東らと共産革命に参加した長老らの子弟である「太子党・紅二代」に、任志強という人物がいる。任氏は王岐山副主席と親しい間柄である。

同氏が最近、SNSで習近平主席を「裸になっても皇帝を演じ続ける道化師」と揶揄した。そのため3月12日、当局に拘束されたという。

任氏は2016年にも、習主席のプロパガンダ政策を非難するコメントをネットに投稿し、1年間の党観察処分を受けている。

他方、中国でも数少ない独立系メディア「陽光衛視集団」の陳平主席が、WeChat(中国版Twitter)で、中国共産党に対し「政治局拡大会議」を開催するよう求めた。

「政治局拡大会議」には、歴代の国家主席や首相などの長老が参加する。そして陳平氏は、李克強首相(共青団)、汪洋政治局常務委員(同)、および王岐山副主席の3名を「政治局拡大会議開催小組」に指名している。

つまり、習主席に不満を持つ長老達を巻き込んで、主席を引き摺り下ろす算段ではないだろうか。これは一種の「宮廷クーデター」である。ちなみに陳平氏は、自由主義者だと言われている。

もちろん、李首相や汪常務委員、それに王副主席らが、本当に政治局拡大会議開催を望んでいるかどうかはわからない。しかし、もし本当に「宮廷クーデター」が画策されていれば当然、習主席はそれを断固阻止しようと動いているに違いない。

「政治局拡大会議」が開催されてしまえば、おそらく「反習近平派」の勝利となるのではないか。習主席が経済不況・米中貿易戦争・アフリカ豚コレラ・香港問題・新型コロナなどの責任を取らされることは必至である。

逆に、拡大会議が開かれなければ、「習近平派」の勝利となる。その場合には、「習近平派」による「反習近平派」への弾圧が起こるかもしれない。「習近平派」は「反腐敗運動」の名の下、「反習近平派」を政治的に葬るだろう。

中国国内では、熾烈な党内闘争が展開されている。

アジア太平洋交流学会会長
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。2020年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

【私の論評】コロナ禍は過去の世界大戦のように、終息後の世界の秩序を変える(゚д゚)!

上の記事の内容は、このブログにも掲載したジャーナリスト、福島 香織氏の記事『
中国で飛び交い始めた「習近平政権ピンチ」の噂』ともかなり、符合するところがあります。やはり中国国内で、熾烈な島内権力闘争が行われているのは確かなようです。
中国で1月から2月の間に、2000万人以上のユーザーが携帯電話の解約をしていたことは、以下の動画でも示されています。以下の動画は3月29日にアップロードされたものです。


武漢の武漢の葬儀場で、携帯電話が山積みにされている動画が掲載されています。この動画は、日本国内でもテレビで報道されました。非常にショッキングなものでした。

中国でのコロナウイルスの被害は、中国の公式発表などとは異なり、甚大なものだったことがわかります。

上の記事で、澁谷氏が述べているように、"「政治局拡大会議」が開催されてしまえば、おそらく「反習近平派」の勝利となるのではないか。習主席が経済不況・米中貿易戦争・アフリカ豚コレラ・香港問題・新型コロナなどの責任を取らされることは必至である。

逆に、拡大会議が開かれなければ、「習近平派」の勝利となる。その場合には、「習近平派」による「反習近平派」への弾圧が起こるかもしれない。"というのは、間違いなさそうです。

いずれにせよ、現状の中国は熾烈な権力闘争が繰り広げられており、習近平派も半習近平派も、持てる能力を最大限に活用し、戦いを繰り広げていることでしょう。敗北すれば、政治生命を失うばかりか、本当に命を奪われかねないですから、凄まじい戦いになっていることは間違いありません。

このような最中、海上自衛隊の護衛艦「しまかぜ」が3月30日夜、鹿児島県屋久島の西約650キロの東シナ海(公海上)で中国籍の漁船と衝突しました。死者や行方不明者はいませんでした。

これに先立ち海上自衛隊のP-3C哨戒機が3月18日、沖縄県・宮古島の南東約80キロの海域を東進する中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイII級フリゲート2隻、フチ級補給艦1隻を確認しました。これらの艦艇は、沖縄本島と宮古島の間の海域を北上して、東シナ海へ航行したといいます

そうして本日午前、沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船4隻が日本の領海に侵入し、第11管区海上保安本部が直ちに領海から出るよう警告を続けています。

実は、中国軍は2月、世界最強の米軍にも仕掛けていました。

米CNN(日本語版)は2月28日、「中国軍、太平洋で米哨戒機に軍用レーザー照射」とのタイトルで、中国海軍の駆逐艦が前週、太平洋上空を飛行する米海軍の哨戒機P-8に対し、軍事用のレーザーを照射したと報じました。

米海軍の哨戒機P-8

こレラの動きに対して、中国はコロナ禍にあっても、なおこのような傍若無人な振る舞いをしている、コロナ禍に乗じて、尖閣を乗っ取る腹ではなかろうか、などと考える人もいるかもしれません。

しかし、私自身は、そうは考えていません。現状の中国は、発表しないものの、おそらくコロナ禍で世界一の死者を出していて、それは人民解放軍も例外ではないでしょう。おそらく、米軍よりも感染者数が多くなっているに違いありません。

しかし、習近平はそのようなことはお首にも出さず、中国国内の感染者数を偽るだけではなく、人民解放軍にも感染者がいないかのように装っているだけでしょう。

では、なぜ最近中国による尖閣等への挑発が繰り返されているかといえば、習近平が、人民解放軍の海軍司令官を陸軍出身に代えたため、海軍には不満が溜まっているからかもしれません。

一連の動きは、海軍の一部や管轄下の組織による『暴発』の可能性があります。軍を掌握しきれていない習氏への『嫌がらせ』かもしれないです。中国海軍は予算配分も待遇も不満が鬱屈してい。その表れかもしれないです。

習近平は、イタリアなど感染でかなり弱体化した国々などに、微笑外交で、医療器具を提供したり、医療チームを送っています。私は、これは外交ではなく、国内向けのブロパガンダの側面が強いのではないかと思います。

中国は、もともと外交は二の次で、自国の都合で動く習性があります。とにかく、統治の正当性を自ら高めるために、様々なことを実行し、国内権力闘争に勝つためには、外交すら利用するのです。

そのため習近平は、国内感染が完璧に終息したようにみせかけ、被害も想定よりは少ないようにみせかけ、さらには微笑外交に打ってでて、国内での統治の正当性を高め、半習近平派を牽制しているのでしょう。

そうして、反習近平派は海軍を抱き込み、尖閣諸島付近で示威行動をしてみたり、挙げ句の果てに米軍にレーダー照射をして、習近平を牽制し、自らの統治の正当性を高める挙にでているとみられます。

中国は現在コロナ感染と、権力闘争にあけくれ、疲弊しています。ここは、米国や先進国にとって付け入る隙です。

中国が内部に権力闘争に明け暮れている間に、コロナウイルス対策をすすめ、早めに終息させ、まずは世界のサプライチェーンから中国を外し、その後も中国を徹底的に封じ込めるのです。

新型コロナウイルス事態で、国際紛争よりも蓋然性の高いパンデミックや自然災害対処への必要性を理解した世界各国は、中国の息のかかったWHOにより、徒に犠牲者が増えたことを決して忘れないでしょう。

そうして、現在の国際連合(United Nations :直訳は連合国)、本来は第二次世界大戦中の戦勝国のものであり、戦勝国が打ち立てた戦後秩序を守るのが、主目的だったはずなのに、いつの間にか中国が浸透していたことに今更ながら、再認識するでしょう。

そのため、現在の国際連合を廃止し、新たな国際機構の設立を考えるでしょう。

国際連合の大改革を行う場合は、国際連合を機能不全にしてきた戦勝国支配体制とそれらの国による安全保障理事会における拒否権の廃止が必須の条件になるでしょう。

世界各国は新たな国際組織が、パンデミックや自然災害対処を即応性をもって十分に行えるようにその機構・機能を強化する必要があります。

そのためには、国連軍に相当する常設の①医療・災害対処機構・部隊の常設、②パンデミック対処のためのワクチン・薬剤の研究開発機関の設立、③そのための財源の確保などが不可欠でしょう。

そうして、新たな国際組織には、当然のことながら、大陸中国は排除し、台湾を加えるべきでしょう。

米国のコロナ炎上で、今の米国には、日本をコロナから救う余力はないようです。日本は、独自で何とかしなければなりません。この事態をどう受け止めるべきでしょうか。これは安倍総理も第一次内閣のときには語っていた「戦後レジーム」からの脱却の良い機会になるかもしれません。

日本としては、米国抜きで日本独自の力と方法でコロナ禍を戦い抜き、勝利をおさめ、戦後のマッカーサー統治以来失った「自分自身・家族・社会・国は自分で守る」という気概を国民が取り戻す好機になるに違いありません。

とにかく、コロナ禍は疫病ですが、これは過去の世界大戦のように終息後の世界を大きく変えることになるのは間違いないです。

このことを理解していないと、コロナ禍終息後の世界の新秩序づくりに乗り遅れてしまうことになりかねません。このようなことを言うと、日本は必ず乗り遅れると考える人もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。新たな秩序をつくるには、米国をはじめ多くの国々がのたうちまわり、失敗をいくつも重ねた上でつくっていくことになるでしょう。

何しろ新しい秩序の世界は、未だ誰も見たことのない風景であることは間違いないのですから。

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2020年3月28日土曜日

東京五輪延期の裏で官邸内部に異変…消えた“菅総理”の目、7月に“減税総選挙”か―【私の論評】国民生活のことなど全く考えず省益だけを追求する歪んだ怪物のような財務省(゚д゚)!

東京五輪延期の裏で官邸内部に異変…消えた“菅総理”の目、7月に“減税総選挙”か
文=渡邉哲也/経済評論家

東京五輪の延期を発表する安倍晋三首相

 東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期されることになった。これは、アメリカなど国際社会の要請を受ける形での決定であり、日本にとってはベストな選択といえるだろう。そして、史上初の五輪延期という決定を通して、安倍政権の内部で起きている変化が見えてくる。

 新型コロナウイルスの感染拡大が取り沙汰されていた2月下旬、永田町周辺では飯島勲内閣官房参与の姿が見え隠れし始め、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の動きが変化した。2月29日に安倍首相は記者会見を行い、感染拡大防止策をはじめ、学校の一斉休校要請、緊急の経済財政対策、立法措置などについて発表し、自ら指揮を執る形での危機対応に転換した。

 また、3月5日に行われた未来投資会議では、産業界の中国依存の是正や生産拠点の日本回帰などについて述べている。これらの動きは、大規模な政策転換であり、内部政治の大きな変化を意味するものだ。

“菅首相”の可能性が消滅した理由

 安倍首相は2019年9月の内閣改造の際、派閥均衡人事を行い、次のリーダー候補を競わせる形をとった。加藤勝信厚生労働大臣、茂木敏充外務大臣、岸田文雄自民党政務調査会長、河野太郎防衛大臣らが、そうである。

 一方で、二階俊博自民党幹事長をあえて据え置き、菅義偉官房長官も留任させた。菅官房長官は自派閥の創設に有利になる幹事長を希望していたが、そのポストには二階氏を続投させたわけだ。菅氏は官房長官という要職に就いている限り、自派閥を立ち上げることはできない。この人事には、安倍首相の菅官房長官に対する本質的な懸念があったとも言われている。

 代わりに、菅官房長官に近い人物に3つの大臣ポストが与えられた。菅原一秀経済産業大臣、河井克行法務大臣、小泉進次郎環境大臣だ。しかし、菅原・河井の両大臣はスキャンダルで辞任し、初入閣を果たした小泉環境相も株が急落している。これらの現状を見る限り、一時は「ポスト安倍の最有力候補」とも言われた菅氏に次期首相の目はなくなったと言ってもいいだろう。

 また、IR(統合型リゾート)の問題をめぐっても、事実上の旗振り役を務めていた菅官房長官と二階幹事長についてさまざまな噂が飛び交い、実質的に暗礁に乗り上げていることで、カジノ利権による利益は期待できなくなった。さらに、新型コロナウイルスの対応で自民党内からも反発が生まれ、安倍首相がどのような判断を下すかが注目されていたわけだ。

 党内政治は「派閥の論理」と「数合わせ」で決まる。現政権は安倍・麻生の二派閥と二階派による数合わせでできており、それにより党内の圧倒的過半数を維持し、党内運営を潤滑にしてきた。ただし、一方では、二階幹事長の中国寄りの姿勢などが保守層の反発を招いていたわけだ。

首相官邸の内部で起きていた“異変”

 そうした空気を一変させたのが、安倍首相の2月末の会見であった。菅・二階切り――これには党内的なリスクはあるが、そのままでは時間切れになるだけであったため、自派閥に応援を求め、官邸内部にも手を入れた。そして、経済産業省出身の今井尚哉氏首相補佐官、警察庁出身の北村滋国家安全保障局長が主導する体制に切り替えたわけだ。

 同時に、安倍・麻生に東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長を加えた3人体制で、国際社会との連携を強めていった。それは、新型コロナウイルスの対応に関しても、東京五輪の延期においても同様だ。いずれも非常に舵取りが非常に難しい問題であるが、現時点ではベストな方法を選択できている。

 東京五輪の延期に伴い問題は山積しているが、今後はもちろん新型コロナウイルス感染症への対策も加速すべきだ。治療薬の確定と治療ガイドラインの早期確立が実現すれば、季節性インフルエンザの水準までリスクを軽減できるだろう。

 そうなれば、その後は現金給付などの消費喚起策を実施するとともに、消費税減税と憲法改正を争点にして、7月頃に解散総選挙というシナリオを描くこともできる。その場合は、安倍首相の自民党総裁4選とセットで悲願の憲法改正も現実味を帯びてくるだろう。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】国民生活のことなど全く考えず省益だけを追求する歪んだ怪物のような財務省(゚д゚)!

政府の経済対策は、消費減税なしで所得制限現金給付ということに落ち着きそうです。事業費でリーマン超えでも、真水は15兆円程度でしょう。真水で20兆円程度までお終いになる可能性が台大です。これは、せいぜいGDPの4%なので、米国のGDP10%などと比較するとかなりお粗末な対策です。


経済対策には大別すれば(1)公共事業(2)減税・給付金(3)融資・保証-があります。真水としては、(1)のうち用地取得費(事業費の2割程度)を除いた部分と(2)の全額、(3)は含まないことが多いです。

実際の政策としては、(2)でも消費に回らないと短期的にはGDP創出につながらないし、(3)がないと企業倒産につながり雇用の喪失を通じてGDPへ悪影響が出ます。その意味では、全ての政策が相まって重要なのですが、真水の考え方はマクロ経済政策としての有効需要増をGDPに対する比率で表すことができます。

今回のような経済ショックがあると、GDPの一定割合の有効需要が失われ、GDPが低下します。それは、GDPが減少すると失業率が上昇する「オークンの法則」から分かるように、雇用の喪失を意味します。雇用を確保するために、どの程度の経済対策が必要かを検討する際、真水の考え方は好都合です。

「オークンの法則」とは、、一国の産出量と失業の間に経験的に観測される安定的な負の相関関係のことです。いずれの国でも成り立っている法則です。

たとえば、米国では、おおよその傾向はGDPの2%減少が失業率の1%上昇になっています。日本の場合、雇用は比較的安定しているので、さらに大きなGDP減少でないと失業率は1%上昇しません。例えば、最近ではおおむねGDPの8%減少が失業率の1%上昇になっています。

オークンの法則

どの先進国でも、雇用の確保はマクロ経済政策の基本中の基本です。経済ショックが各国のGDPに与える悪影響も均一ではなく、またそれが失業に与える悪影響も同じではありません。しかし、雇用の確保という観点からみれば、経済ショックに対する各国のマクロ政策はおのずと「相場観」が出てきます。そうした議論のためにも真水の考え方で経済対策を見た方が適切だといえます。

日本では、事業費の数字を出し、経済対策を大きく見せる傾向があります。しかし、真水の数字を使ってGDPに対する割合で見たほうが、より適切に日本の世界の中での位置付けが分かりやすくなるはずです。それでみると、日本の経済対策は欧米諸国より一桁違っており、コロナ・ショックを甘く見ていると言わざるを得ないです。

そうして、なぜそうなっているかといえば、省益しか頭にない、愚鈍な財務省が盲目的に増税と緊縮財政をすることのみに固執し、多くの政治家やマスコミがこれに惑わされ、コロナ・ショックや増税10%の悪影響があってもお粗末極まりない経済対策でも、何とかなると思い込まされているからです。

増税の悪影響は凄まじく、このブログでも掲載したように、実質GDP成長率は前期比年率▲7.1%に第1次速報値同▲6.3%から下方修正となっています。

これは、消費税増税への対策としてポイント還元を実施したのですが、これが完璧に失敗したことを示しています。

これに関しては、もしコロナウイルスの問題がなければ、かなり大きな話題になっていた可能性がありますが、現状はコロナウイルスの問題が大きく、その影に隠れてあまり大きな話題にはなっていません。財務省としては、胸をなでおろしていることでしょう。

しかし、この大失敗と、今回のコロナショックで日本経済が未曾有の大ショックに見舞われるのは明らかです。

今回の、減税なしのお粗末な給付金対策等では、景気の悪化を食い止めることはできないでしょう。

安倍総理としても、これについては遅かれ早かれ気づいていると思います。多くの無能ではない政治家達も気づいているか、気づきつつあるものと思います。

これが、今後4月、5月となるにつれて明らかになるでしょう。それでも、愚鈍な財務官僚が考えを変えず、省益に拘泥していれば、それを断ち切るしかありません。

愚鈍で利省的な財務官僚の思い通りさせないため、安倍総理は消費税減税と、他の積極財政を公約に掲げ7月に解散総選挙を実行すべきです。

入省したての頃は善良だったはずの彼らがなぜ歪んだ怪物になるのか?

省益しか頭にない、しかも省益を考えるにしても最悪の悪手しか打とうとしない愚鈍財務省には、最近ではさすがに東大生も就職先としてあまり重視していないようです。さもありなんです。現状の財務省に入省してしまえば、馬鹿になるだけです。正しい判断です。

今のままでは、財務官僚というだけで、マクロ経済を理解しない愚鈍で常識なしであるとか、国民生活のことなど全く考えず省益だけを追求する歪んだ怪物であるとみなされるようになるかもしれません。いや、すでにもうそうなりかけています。

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2019年7月20日土曜日

中国が"米国を圧倒すること"はあり得るか―【私の論評】日本は中国に対しては表では親和的に、裏では習近平が最も恐れる輸出制限・制裁の準備を粛々と進めよ(゚д゚)!

中国が"米国を圧倒すること"はあり得るか

日本は中国に対する幻想を捨てよ

静岡大学教授/文化人類学者 楊 海英
楊 海英氏

米中覇権争いが繰り広げられるが、中国の実力とはどれほどのものか。静岡大学教授で文化人類学者の楊海英氏は「中国が将来、米国を圧倒することはあり得ない」という。その理由とは――。

日本は将来、米中のどちら側につくのか

米中2大国の覇権争いが世界から注目されている。経済の分野では「貿易戦争が発動された」とか、先端科学技術分野では、「5世代移動通信システム(5G)開発の主導権をめぐって対立している」といった報道が多い。そして、将来はどちらが勝つのかという結果まで、日本では予想され始めた。結果を予測する際の隠れた目的は、日本は米中のどちら側につくのかという死活の問題も絡んでいるのではないか。

私は中国が将来、米国を圧倒することはあり得ない、と判断している。そう考える理由を以下に述べておく。私が依拠している情報はすべて、中国で生まれ育ち、そして30年間にわたって、研究者として現地で調査してきた経験に基づいている。

本末転倒の使命感が中国のウソの発展を支えた

第1に、中国は国内総生産(GDP)の数字が世界第2位だ、と自他ともに認めているが、実際は水増しされた統計によって得られた数字である。1991年からほぼ毎年のように中国の各地方で現地調査に行ってきたが、その都度、知人の幹部(公務員)はいかに上級機関から言われた「任務を達成」するかで頭を抱えていた。

天災や社会的動乱など、どんな理由があっても、前年度より「成長」していなくてはならなかった。北部中国の場合は旱魃(かんばつ)が数年間続いたり、民族問題が勃発(ぼっぱつ)して生産ラインが止まったりすることはよくあるが、それでも「成長」し続けなければならない。南部には水害がある。それでも、「成長」は幹部の昇進に関わるだけでなく、社会主義中国の「発展」を示す指標とされている。

「中国の共産党政府が13億もの人民を養っている」という独特な使命感を誇示するためにも、「成長」と「発展」は欠かせない。人民が政府と党を養っているとは、とうてい考えられない。この本末転倒の使命感が虚偽の統計とウソの発展ぶりを支えてきたし、これからも変わらない。つまり、中国には米国と対峙しうる充分な国力は備わっていないということである。

近代社会は米国も日本も、そして西洋諸国も、産業革命以来に数百年の歳月を経て、少しずつノウハウを蓄積して発展してきたが、中国はそうしたプロセスを無視しようとしている。共産党の指導部の野心が正常な発展を阻害していると判断していい。

あらゆる経済活動の権利を握っているのは共産党

第2に、中国が口で言っていることと、実際に実行していることとは、すべて正反対であると世界は認識すべきである。このことは、「大国」としての中国に世界をリードできるソフト・パワーがあるかどうかを試す試金石でもあるからだ。

例えば、「米国は自由貿易を阻害している」とか、「中国は世界の自由貿易の促進に貢献している」とか、中国はよく国際会議の場で主張する。ここ数年、トランプ政権が誕生してからは、さらにこうした主張を広げている。ときにはまるで前政権のオバマ大統領の自由貿易促進演説を剽窃(ひょうせつ)したかのような言い方を中国の習近平国家主席は口にする。しかし、事実はむしろ逆である。

 まず、中国は国内で自由貿易を実施していない。あらゆる経済活動の権利を握っているのは、中国共産党の幹部たちとその縁故者たちで、一般の庶民が中小企業を起こすのも、厳しい審査が設けられている。国営の大企業は共産党の資金源である以上、中小企業や個人の経済活動はすべて国営企業を支えるために運営しなければならない。
ジャック・マーはなぜ引退せざるを得なかったのか

 それでも、個人が持続的に努力してある程度裕福になると、政府からつぶされる危険性が迫ってくる。利益を党に寄付し、経営者も党員にならなければならない。従業員の数も一定程度に達すると、共産党の支部を設け、党の指導を受けなければならなくなる。いわゆる「党の指導」とは、企業の利潤を政府と結びつけることである。経営者個人の自由意思で経済活動が行われていないのが実体である。
アリババの創業者 ジャック・マー会長
 世界的なIT企業に成長したアリババの経営者、ジャック・マーの例が典型的だ。まだ、50代半ばという若さで経営権をすべて譲って、引退せざるを得なくなった。引退しなければ、腐敗だの、汚職だので逮捕される危険性があったからだろう。言い換えれば、政府はこれ以上、アリババのようなIT企業が国際舞台で成長しつづけるのに危機感を覚えたからである。

米中の対峙は異なる体制の深刻なイデオロギー戦だ

 次に、当然、中国は国際貿易の面でも自由なやりとりを許していない。例えば、外国企業が中国で投資して得た利益を自国には持ち出せない。引き続き中国国内で投資し、事業を拡大せざるを得ない。本国への資金の還流は厳しく制限されている。

 そして、情報化時代の現在、データの流通はさらに厳しく制限されている。中国で蓄積されたデータを国際社会で運用しようとすると、「安全性に問題がある」としてあの手この手で阻止される。

 このように、資金・データ、物流など、あらゆる面で中国こそ自由貿易に逆行する活動を白昼堂々と展開しているにも関わらず、米国を批判するのは、自国の汚い手口を隠すためだと理解しなければならない。

 実は、日本を含む国際社会も中国の手口、言行不一致を知っていながら、あえて批判したり、反論したりしないのも、これ以上不利益を被らないようにするためだろう。中国も国際社会の弱みを知っているから、自国の行動を是正しようとは思っていない。

 しかし、トランプ大統領はちがった。国内において自国民の自由な経済活動を制限し、少数民族を抑圧し、国際的には自由主義陣営に脅威を与えているのは、一党独裁が原因である、と認識している。トランプ政権の本音は、ペンス副大統領の演説やその側近たちのスピーチから読み取れる。

 つまり、米国と中国との対峙は決して「貿易戦争」だけではない。異なる体制がもたらす、深刻なイデオロギー戦である。そして、このイデオロギー戦はどちらかが体制を転換しない限り、解決の見通しは立たない。

独裁政権に媚びを売っても日本の国益にならない

 では、日本はどうすべきか。2大国の対立の陰に潜みながら、勝った側につこうという戦術は無意味である。どちらが人類の歩む道を阻害しているかを判断して、二者択一の決断を早晩しなければならないだろう。そのためには、現在の日本で流行っている軽薄な言説を改めるべきであろう。それは以下の2点である。

 第1は、トランプ大統領は商人だから、なんでも利益優先で「取引」しようとしている、という誤読である。日本には日本の国益、中国には共産党の党利党益があるのと同様に、米国にも国益があって当然だ。世界の多くの国々が米国を指導者とする自由と人権、民主と平等という理念を共有している以上、日本も米国と歩調を合わせ、同盟を強化するしかない。同盟関係を裏切って、独裁政権に媚(こ)びを売っても、日本の国益にはならない。

歴代の共産党指導者は真の友好を求めてきたか

 第2に、ツイッターなど最新の技術を駆使するトランプ大統領は「変幻自在」で先行き不透明で、内心が読み取れない、と日本のメディアはよく語る。これも同盟国としてあるまじき批判といえよう。

 では、毛沢東をはじめ、歴代の中国共産党の指導者は日本国民に胸襟(きょうきん)を開いて、真の友好を求めてきたことがあるのか。ツイッターも電子メールが出現した時代と同様で、一種のツールでしかない。日本は米国に対する先入観と、中国に対する幻想を放棄しない限り、米国が中国を完全に圧倒した暁には、見放されるかもしれない。

 もちろん、自発的に「中国の朝貢(ちょうこう)国」になる道も残されている。そうなれば、100万人単位で強制収容されているウイグル人のように、おおぜいの心ある日本人は自国の領土内で、中国共産党の刑務所に閉じ込められるだろう。

今こそ、日本人に「第2の維新」が迫ろうとしている。
楊 海英(よう・かいえい)
静岡大学教授/文化人類学者
1964年、南モンゴル(中国・内モンゴル自治区)出身。北京第二外国語学院大学日本語学科卒業。1989年に来日。国立民族学博物館、総合研究大学院大学で文学博士。2000年に帰化し、2006年から現職。司馬遼太郎賞や正論新風賞などを受賞。著書に『逆転の大中国史』『独裁の中国現代史』など。

【私の論評】日本は中国に対しては表では親和的に、裏では習近平が最も恐れる輸出制限・制裁の準備を粛々と進めよ(゚д゚)!

上の記事では、「日本は米国に対する先入観と、中国に対する幻想を放棄しない限り、米国が中国を完全に圧倒した暁には、見放されるかもしれない」としています。

確かに、日本国内は言うに及ばず、自民党内にも親中派・媚中派の政治家が存在します。しかし、少なくとも安倍総理とその取り巻きは違います。なぜなら、日本の対韓国輸出規制強化は、中国も意識したものであると考えられるからです。

米国のトランプ政権も、日本の対韓国輸出規制強化は、中国に対する牽制にもなるものととらえているでしょう。日本は対韓国規制を公表する前に、当然のことながら同盟国である米国に対して、これについて連絡しているでしょう。その上で韓国に対して、厳しい態度で臨んでいるわけですから、米国はこの制裁を対中国牽制にもなるとみて歓迎しているものと思います。

日本が韓国に輸出する規制対象3品目のひとつ「フッ化水素」の一部が中国に輸出され、韓国の半導体製造大手サムスン電子やSKハイニックスの中国工場で使われています。両社は半導体の10~20%を中国で生産しているとみられます。日本政府が8月末にも韓国をホワイト国指定から外し中国工場への先端材料の供給が滞るなら中国にも影響がでそうです。

このことは、最初から日本政府も当然のことながら理解していたでしょう。

中国メディアの今日頭条は14日、日本による対韓国輸出規制強化問題に関して「日韓の反応から力の差が分かる」と紹介する記事を掲載しました。

記事はまず、今回の日本の制裁があるまでは、韓国の半導体は「世界で揺るがぬ地位」を確立し、「日本を超えた」とも言われていたと紹介。そのため、半導体の3品目が制裁対象になっただけで国を揺るがす問題になったことを意外に感じた中国人は多かったと指摘しました。

韓国国内では、政府や企業が抗議をし、WHOに提訴を発表し、国民は日本製品不買運動に参加しています。「これだけの反応があったということは、日本がそれだけ韓国に打撃を与えた証拠」だと伝えました。それに引き換え、日本では大きな反応は起きていないです。「韓国からの報復は想定内」で、それでも制裁に踏み切ったのは「韓国の手の内にあるカードが少ないことを知っていたから」だと推測しています。

韓国は、日本とは違い決定打になるようなカードを持っていないと言えるでしょう。記事は、韓国の半導体製品でもスマホでも、輸出を止めたところで日本に打撃を与えるには及ばず、日本は他国から輸入すれば良いだけの話だと指摘しています。一方の韓国は、今回規制された3品目のかなりの部分を日本の輸入に依存しており、大きな打撃となるのは明らかです。

記事は結論として、日本の今回の規制に伴う2国間の反応の違いで、「日韓の実力差」が明らかになったと結論付けました。韓国のある分野が日本を超えたように見えたのは表面的で、日本の実力が見えていなかっただけだと分析しています。これは中国も同様で「ピークは過ぎたとはいえ、日本の実力を甘く見てはいけない」と注意を呼び掛けています。

韓国国内では国民の間でも不買運動が行われているようですが、反応が激しければそれだけ日本から受けた打撃の大きさを示してしまうと言えるでしょう。この事実は、日本を落ちぶれた先進国と見くびることさえあった中国人にも、少なからず衝撃を与えているようで、今まで見えにくかった日本の実力の一端を見せつけたと言えるのかもしれないです。

そうして、これは他ならぬ中共の幹部たちも気づいていることでしょう。日本からの部品や素材がなければ、韓国のようにお手上げになることはまだまだあります。特に工作機械など日本の独壇場です。これをストップされれば、韓国も中国もそれこそお手上げになりすま。

そうして、中国の製造技術にはとんでもない未成熟な部分があります。それについては以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【石平のChina Watch】中国製造業のアキレス腱―【私の論評】集積回路、ネジ・ボルトを製造できない国の身の丈知らず(゚д゚)!
深セン市にある「中興通訊」の本社
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
 中国は今、海外から大量の集積回路を輸入しており、2017年の集積回路輸入数は3770億枚に上っている。中国製のラジオ、テレビ、通信機、コンピューターなどのあらゆる電子機器の心臓部分の集積回路は海外からの輸入に頼っているのである。輸入が一旦途切れてしまうと、中国企業はスマートフォンの一つも作れない。それがすなわち、先端領域における中国製造業の「寒い」現状である。 
 しかし中国国内企業は今まではどうして、自国産の集積回路の開発と製造に力を入れてこなかったのか。 
 集積回路の開発には莫大(ばくだい)な資金と時間が必要とされるが、金もうけ主義一辺倒の中国企業からすれば、それなら海外から部品を調達した方が早いし、知的財産権がきちんと保護されていない中国の状況下では、自力で開発した製品も競合業者によって簡単にコピーされてしまう。 
 だから中国国内企業の誰もが自力開発に力を入れたくないのだが、その結果、集積回路のような、製造業が必要とする最も肝心な部品は外国企業に頼らざるをえない。中国製造業の最大のアキレス腱(けん)は、まさにこういうところにあるのである。
さらに、もっと驚くべきことがあります。それを以下に引用します。
中国が製造できないのは集積回路だけではありません、多少とも先端技術などを要するものは製造できません。たとえば、中国はネジやボルトに関しては日本からの輸入に頼っています。 
中国メディアの捜狐は昨年11月10日、空母や戦闘機、高速鉄道に使われているボルトはどれも輸入品という「直視しなければならない現実」に関する記事を掲載しました。 
中国の機械工業の進歩は目覚ましく、利益率・輸出額ともに増加しているといいますが、戦闘機などに使用されるねじ・ボルトなどの部品は「ほぼ100%輸入」に頼っているというのです。記事は、中国で生産されている部品はいずれも精度の低いものばかりで、高速鉄道などに求められる精度や耐久性の高い部品は、日本や他国に頼るしかないと指摘しました。
日本製のネジ
例えば、中国の戦闘機「Jー20」のボルトはどうしても最高級の水準が求められ、ねじはすべて高温・腐食にも耐えるチタン製でなければならないといいます。しかし、中国にはこうした高いレベルのねじの生産技術も生産ラインもないと嘆きました。軍事分野以外でも、高速鉄道、長征7号ロケットにも海外から輸入した高品質のボルトが大量に使われているといいます。 
では、なぜ中国国内では生産できないのでしょうか。記事は、化学工業、冶金、鍛造の技術が遅れていることが原因だと分析。日本などのように「専門分業」ができておらず、製品システムや品質が不健全で、専門分野での研究が不足しており経験も足りないため、製造能力が低いのだとしました。

こうした現状に、中国のネット上では「作れないのではなく作りたくないだけ」、「ボルトなどの部品は買えば良い」などの意見があると紹介。しかし、これらの意見はいずれも現実を直視していないと切り捨てました。
ネジ・ボトルというと、日本では東京の大田区や大阪の東大阪の先端的な中小企業の独壇場です。中国にはそのような中小企業は育っていないのです。

無論、中国でも普通のネジは作成できますが、戦闘機や高速鉄道などの使用に耐えるネジは未だに製造できないのです。

中国や韓国の場合、日米では当たり前のように製造しているもので、製造が困難なものが多くあります。

このあたりを輸出規制すれば、韓国の製造業は崩壊、中国も「製造2025」などといっておられなくなります。このことを中共は良く理解していると思います。今頃習近平は頭を悩ませていると思います。

習近平

日本のマスコミは、中国は最近日本にすり寄ってきているなどと報道していますが、現実はそうではありません。尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で先月10日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは60日連続で、平成24年9月の尖閣諸島国有化以降で最長の連続日数を更新しました。

このような状況では、とても中国が日本にすり寄ってきたなどとは解釈できません。このようなことがなくならない限り、日本は中国が日本にすり寄ってきたなどと解釈すべきではないのです。

中国はすり寄り姿勢をみせつつ、尖閣での示威行動は改めないわけですから、日本としても中国と表では習近平を招くなどのことをしながら、いつでも中国に対して、輸出制限や、制裁をできるように準備をすすめるべきです。

それを日本が準備していることを米国に知らせれば、米国としても中国に対する大きな牽制になるということで大歓迎することでしょう。

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2018年12月18日火曜日

中国の微笑外交の限界―【私の論評】微笑外交の裏に日米離反の意図、北朝鮮に対する敵愾心、台湾に対する領土的野心あり(゚д゚)!

中国の微笑外交の限界

岡崎研究所

ミンシン・ペイ教授

11月19日付のProject Syndicateのサイトに、米国カリフォルニア州にあるクレアモント・マッケナ大学のミンシン・ペイ教授が、「中国の魅力攻勢の限界」と題する論説を寄稿した。その要旨、以下の通り。

・中国は過去10年間、東アジア諸国に対し強い態度で接してきたが、ここ数か月、微笑外交をするようになった。何が変わったのか。

・2013年、中国は日本の尖閣列島を含む東シナ海に一方的に防空識別圏を設定した。翌年には、領有権争いのある南シナ海に人工島を建設した。そして、2016年には、在韓米軍にミサイル防衛システムを設置することに対抗して韓国に制裁を課した。

・しかし、今、様相は変わってきた。先月、安倍総理は、日本の首脳としては7年ぶりに、北京を訪問した。そして、習近平の訪日は来年予定されている。中国首脳の訪日は10年振り以上である。

・先週、中国の李克強首相はシンガポールを訪れ、両国間の新FTAに署名した。中国は、TPPに対抗して、RCEPの署名も望んでいる。

・中国の新たな非対立的アプローチは、中国指導部の心や目的が変わったからではない。それは、地域の地政学的環境の変化による。この6か月間で、米国は40年間の中国関与政策を止め、中国封じ込め戦略に転じた。中国は、米国との競争激化で、地域の友人を得ようと必死である。

・このような中国の微笑外交の中身は明確である。多くのアジア諸国の第1の貿易相手国である中国は、シンガポールとこの程行なったように、魅力的貿易項目を提示する。

・中国のもう一つのやり方は、首脳レベルの外交を展開することである。韓国、インドネシア、ベトナム、日本等地域の主要国に焦点を当てている。11月20-21日には習近平がフィリピンを訪問する。これらを通じて中国は友好ムードを作りたい。その間、宣伝機関には、攻撃的広報を止めさせる。

・一時的に中国は領有権の主張を抑制するかもしれない。例えば、2012年にフィリピンから奪ったスカボロー礁への人工島建設を中断したり、尖閣諸島への船舶派遣を抑えて日本との対立を避けたりするかもしれない。

・東アジア諸国は中国の新外交を今の所プラスに受け止め、中国の攻撃的態度の一時停止を歓迎している。が、だからと言って、これら諸国が米中対立の中で、どちらか一方に付きたがっているわけではない。ただ、中国覇権の蔭にいたいという国はほとんどない。いざ米中対立が激化すれば、日本、韓国、ベトナム、マレイシア、シンガポールは米国を支持するだろう。

・もし中国が頼れる友人を得たいなら、安全保障、特に領土問題で譲歩すべきである。例えば、尖閣問題で、中国が脅威とならないことを日本に理解してもらうとか、南シナ海問題で仲裁裁判所の判決を受諾して東南アジア諸国を安心させるとか、である。

・今のところ、習近平から譲歩の様子は見られない。中国が戦術的アプローチに固執する限り、その程度の果実しか得られないし、米中対立の中では、まだまだ不十分である。

出典:MINXIN PEI ‘The Limits of China’s Charm Offensive’ Project Syndicate, November 19, 2018

 ペイ教授の指摘は、鋭い。米中対立が激化すると、中国は、アジア諸国に対して微笑外交になり、米中が協調しているか米国が強く出ない時は、近隣諸国に対して、強圧的態度で臨む。日本を含むアジア諸国は、米中対立を決して好むわけではないが、中国が脅威となって行動することは困る。ここにジレンマが生じる。

 この中国外交のアプローチの変化には、騙されないことが重要である。ペイ教授も指摘しているように、中国の表面的変化に惑わされるのではなく、真の意図、目的を見失なわないことが重要である。

 実際に、中国の動きを見ていると、微笑外交に転じても、反日教育がなくなったわけでもなければ、尖閣諸島周辺への船舶の出入りが少なくなったわけでもない(この点、ペイ教授の観察は必ずしも正しくない)。

 甘い経済の提案も、いつそれが変化してしまわないか、気を付けながら慎重に進めるべきだろう。

【私の論評】微笑外交の裏に日米離反の意図、北朝鮮に対する敵愾心、台湾に対する領土的野心あり(゚д゚)!

米国と貿易問題をめぐる対立が深まる中、中国はインドと日本に歩み寄りを見せてきました。習近平国家主席は今年4月、インドのモディ首相と握手し、関係改善を印象付けました。

また、李克強(リー・カーチアン)首相は就任以来初めて、中国の首相としては8年ぶりに今年の5月に日本を訪問しました。10月には、安倍総理は、日本の首脳としては7年ぶりに、北京を訪問しました。

トヨタ自動車北海道の訪問を終え、沿道の同社社員らに
手を振る中国の李克強首相=5月11日、北海道苫小牧市

これは、明らかに米中関係の悪化によるものです。アメリカは昨年末から国防などの安全保障面でも対中強硬策に転じていましたが、さらに対中国貿易戦争を開始しました。

ここで、一見中国の微笑み外交とは関係なくもみえる、北と中国との関係が悪化した要因などを分析します。

2002年9月、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)(元)総書記は、中国遼寧省丹東と隣接する北朝鮮の新義州(シニジュ、しんぎしゅう)を特別行政区(特区)と定めて経済開発を試みようとしました。

それは中国からの「改革開放をしろ」という絶え間ない要求に応じたものでしたが、それでいて「中国外し」のために通貨は米ドルにして、おまけに特区長官の任命に当たり、中国には一切相談せずに、敢えてオランダ籍の中国人(楊斌)を選びました。

楊斌氏

オランダ籍であることから、新義州経済開発特区には、中国以外に西側諸国を招いて、中国が中心にならないように仕掛けをしていたのです。

このことを知った中国は激怒し、楊斌を脱税や収賄など多数の違法行為により逮捕投獄してしまったのです。それにより新義州経済開発特区構想は潰れてしまったのですが、注目しなければならないのは、このとき金正日は日本に対して何をしたかです。

小泉元首相の訪朝を、金正日は受け入れたのです。そして拉致被害者を一部返し、また拉致行為に関しては「特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走って日本人を拉致した」と認めて謝罪しました。

ここで重要なのは、北朝鮮の最高人民会議常務委員会が新義州特区設立の政令を発布したのが2002年9月12日で、小泉元首相が平壌(ピョンヤン)を訪問して金正日元総書記に会ったのが2002年9月17日であるという事実です。

つまり、北朝鮮が「中国外し」をするときは、日本に対しては門戸を開こうとするのです。

楊斌が拘束されたのは2002年10月4日で、11月27日には逮捕投獄されました。小泉元首相が訪朝した9月17日には、楊斌が逮捕されるとはまだ思っていなかった金正日は、経済特区を開発するに当たり、「中国外し」をしておいて、対日融和策に出たということになります。

それを知っている中国は、今回もまた北朝鮮が対日融和策を取る可能性があることを見越して、北朝鮮に先手を打たれまいとして「対日融和策」に出ようとしているのです。

事実5月4日、習近平国家主席は安倍首相からの電話会談申し入れを受け入れ、日中首脳としては初めての電話会談を行いました。

電話をする安倍総理

これは5月2日から3日にかけて、王毅外相が訪朝し、金正恩(キム・ジョンイル)委員長と会談したことと深く関係しています。

王毅外相訪朝の真の目的は、あくまでも4月27日の南北首脳会談で採択された板門店(パンムンジョム)宣言の中で謳われた「中国外し」を回避させることにありました。

すなわち宣言では、「南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした」とある。中国を外す3者会談の可能性を示唆しました。

中国にとって、中国を排除することなど絶対にあってはならないのです。王毅外相は「中国を外すな」と説得するために金正恩委員長に会ったのです。表面上は熱い抱擁を交わし、非核化など、聞こえの良い「きれいごと」に関して意思確認をしたと言っているのですが、実際は違います。

事実、5月3日の聯合ニュースは「訪朝の中国外相 朝鮮半島問題での「中国外し」回避に総力」と報道しており、中国国内でも、板門店宣言以来、「3者会談とは何ごとか」といった趣旨の報道がめだちます。

中国の外交部などを通した発表としては、せいぜい「中国は半島問題の解決に長いこと大きな貢献をしてきた」という類のことしか言ってないですが、中国政府系あるいは中国共産党系メディアは、識者のコメントとして多くのことを書かせていまする。中朝蜜月を披露した手前、政府自身がストレートに北朝鮮を責めるわけにはいかないのです。

そこで、「3者」と言い出したのが北なのか南なのかに注目が集まる中、「北である」という確信を持っている論評を数多く掲載させています。その主たる論拠を以下に列挙します。
1.1984年1月、北朝鮮は中央人民委員会と最高人民常設会議の連合会議を開催し、「朝米韓」3ヵ国による平和体制への移行を協議すべきだと決議した。朝米の間で平和協定締結を論議し、朝韓の間で北南相互不可侵条約を結んだ後に、朝韓が政治協商会議を開催し「高麗連邦国家」建国を論議すべきとしている。 
2.1994年、北朝鮮は中国に対して「軍事停戦委員会」の駐板門店・中国代表が中国に撤退するように要求してきた。北朝鮮は中国が安全保障上北朝鮮に介入する法的地位を保有することを望んでいない((筆者注:1991年12月に旧ソ連が崩壊すると、1992年8月、中国は韓国と国交を樹立。北朝鮮、「戦争中の敵国(韓国)と国交を樹立した」と中国に激怒)。
3.1996年4月、クリントン米大統領と韓国の金泳三(キム・ヨンサム)大統領が韓国の済州(チェジュ)島で共同声明を発表し、北朝鮮が唱える「3者会談」による平和体制以降を否定し、「中国を入れた4者会談」を提案した。
4.しかし2007年の第2回南北首脳会談において発表された共同声明では、再び「3者または4者による首脳会談を通して休戦体制を平和体制に転換させる」とした。 
5.従って、今般の板門店宣言における「3者会談」の可能性を提起したのは、明らかに北朝鮮側であることが明確である。
以上が、中国政府が識者らに論じさせた根拠の骨格です。

4月29日に韓国政府筋が韓国メディアに一斉に「2007年の南北首脳会談で"3者"を提起したのは金正日」と報道させていました。これは今般の板門店宣言における「3者」提起が、決して韓国側ではないということを韓国政府が中国に知らせたかったためだと考えられます。

ただし、中国はもっと詳細に、「犯人」が北朝鮮であることを十分に分析し、知っていたということができると思います。

そのようなことから、今年3月25日から27日にかけて北京を電撃訪問して中朝蜜月を演じた金正恩に対して、中国は心の奥では不信感を拭えていなかったようです。

金正恩は「朝鮮半島の非核化と平和体制構築のプロセスにおいて、北朝鮮だけでは北朝鮮の自国の利益を保持することはできないので、何としても中国の後ろ盾が必要だ」というせっぱ詰まった気持から習近平に会い、その救いを求めたはずだと中国は言います。だというのに、その一方では、結局金正日以来の北の考え方は変わってはいない、というのが中国の大方の見解です。

何しろ江沢民時代から北朝鮮が表面上見せた中国への熱烈な友好的姿勢は際立っており、最高指導者となってからの金正日は7回にもわたって訪中しています。その間、江沢民や胡錦濤と、どれだけ熱い握手を交わしてきたことでしょう。

だからこそ、金正恩の電撃訪中に当たって、中国は「中国が主導する6者会談」復帰を前提として金正恩に要求したわけです。またもや「3者」に持っていこうとする北朝鮮の策略を防いだはずでした。
しかし金正恩の方が、策略において上手だったことになります。

このようなこともあり、さらに最近の米国による対中政策が厳しさを増してきたことから中国は勢い、日本に本格的に秋波を送るようになったのです。

中国の日本に対する微笑み外交は、すでに昨年から実施されていました。日中両政府は、沖縄県・尖閣諸島のある東シナ海での偶発的な衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の構築と早期運用に向けて「前向きな進展」があったと発表しました。

「海空連絡メカニズム」とは、自衛隊と中国軍が接近時の連絡方法などをあらかじめ定め、衝突を防ぐ仕組みです。中国・上海で昨年12月5、6日開かれた、日中の外務、防衛、海上保安当局などの高級事務レベル海洋協議で、主要論点がほぼ一致したといいます。

現在習政権と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の関係は上でも述べたように、劣悪で『事実上の敵』といえます。加えて、習氏は2020年以降、本気で台湾を取りに行こうとしています。

こうなると、中国人は『敵の敵は味方』のフリをするモードになります。日本政府や自衛隊に笑顔で接近して、話し合いの環境をつくろうとします。彼らの本音は、日本人を油断させて『日米同盟の分断』と『自衛隊内のシンパ構築』を狙っているのです。

習氏は昨年10月の共産党大会で、「3つの歴史的任務の達成」を宣言しました。この1つに「祖国統一の完成」があり、武力侵攻も含めた「台湾統一」と受け止められています。

「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮に対しては、米国の軍事的制圧も視野に入ってきています。中国は、緊迫する東アジア情勢の中で巧妙に立ち回り、台湾統一の邪魔になる「日米同盟の分断」に着手したのかもしれません。

習氏にとって、安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領が体現している『日米同盟の絆』は脅威です。ここにクサビを打ち込もうとしているのです。中国人は『台湾は中国の一部。尖閣諸島は台湾の一部』と考えています。

無人島の尖閣諸島は後回しにして、台湾を先に取ろうと考えているのかもしれません。

このようにみていくと、中国の日本に対する微笑外交の背後には、様々なものが隠されていることがわかります。特に、中国の北朝鮮に対する敵愾心、台湾に対する領土的野心、日米離反の意図を忘れるべきではありません。

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2018年11月13日火曜日

中国の「微笑外交」の裏に隠された“意図”―【私の論評】微笑に騙されない安倍総理は「自由で開かれたインド太平洋」構想を着実に進める(゚д゚)!

中国の「微笑外交」の裏に隠された“意図”

岡崎研究所

安倍総理は、10月25日から26日にかけて中国を訪問、習近平国家主席および李克強首相との首脳会談に臨んだほか、日中財界のトップも多数参加した「第三国市場協力フォーラム」や北京大学での学生との交流に参加するなどした。



日中首脳会談等で合意した主要点、日本側が主張した注目点をごく掻い摘んで紹介すると、次の通り。

・第三国民間経済協力を推進(上記「第三国市場協力フォーラム」もその一環)、日中イノベーション協力対話を新たに創設。日本側は、開放性、透明性、経済性、対象国の財政の健全性の4つを条件に、質の高いインフラ事業に限り日中の企業間協力を支援(「第三国市場協力フォーラム」における安倍総理のスピーチ)。

・通貨スワップ協定(互いの通貨が不足した日中の金融機関に対して同通貨を供給する)の締結・発効。

・日本産食品の輸入規制の緩和に向けて積極的に検討。

・RCEPの早期妥結及び日中韓FTAの交渉加速化を目指す。WTO改革を推進する。

・WTOをはじめとする多角的自由貿易体制を一貫して重視する日本の立場を説明すると同時に、補助金や知的財産権を含む問題について中国側が更なる改善を図っていくことが重要である旨指摘。

・「東シナ海の安定なくして真の関係改善なし」との日本側の問題意識を伝達。

・本年5月に合意した防衛当局間の海空連絡メカニズムの初の年次会合の年内開催で一致。日中海上捜索・救助(SAR)協定に署名。

・東シナ海における資源共同開発に関する「2008年合意」について、実施に向けた交渉の早期再開を目指す。

・安倍総理から、米国との同盟関係を外交安全保障の基軸としつつ,アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献するとの日本の立場について説明。

・朝鮮半島の非核化に向けて、関連安保理決議の完全な履行の重要性を改めて確認。拉致問題に関する日本の立場につき、中国側は理解し支持する。

参考:外務省ホームページ

日中間で意思疎通を密にするということ自体は良いことである。安倍総理は「日中間の対話は常にオープンである」と言ってきた。今回の首脳会談は、それを実行に移したものであり、国際社会に対し日本がいたずらに対決姿勢を望んでいるわけではないことを示すことができた。日本の外交力強化に資することが期待される。

日中関係の改善は、中国側により多くの動機がある。第一は、米中貿易摩擦であるが、その他にも、国内経済の停滞傾向にあり、一帯一路が思うように進展せず、北朝鮮問題等も抱え、対外関係の新たな展開を図るために日中関係の見直しが有利と考えたのであろう。

合意内容の中では、第三国における民間経済協力と知的財産の問題に特に注目したい。

上述の通り、開放性、透明性、経済性、対象国の財政の健全性の4つを条件に協力する用意があるとしている。これらは、まさに一帯一路をはじめとする中国の経済戦略が抱える問題点である。日中が協力することで中国によるインフラ投資が国際水準を満たすようになれば結構であるが、協力が限定的なものにとどまるとしても、問題提起をしていくことは良いことである。

中国による知的財産侵害の問題については、安倍総理は率直に指摘をした。米中貿易摩擦の一つの大きな要因は知的財産である。米中間での動きも睨みつつ、それを背景に日中交渉を進めて行くことが期待される。

今回の日中首脳会談では「競争から協調へ」ということが謳われ、日中関係の改善、友好ムードが指摘されたが、最も重要なのは、戦略的背景、地政学的構造である。この点、中国側の「微笑外交」の裏に、日米の離間の意図が隠されていることを忘れるべきではない。例えば、Global Times(共産党の機関紙人民日報系の環球時報の英語版)は、10月25日付け社説‘Internal factor promotes China-Japan ties’で「日本の対中政策が米国の影響から脱することができるかどうかが日本の外交的独立の試金石となる」と書き、同26日付け社説‘Unraveling thorny knot of China-Japan ties worth doing’では「米国は日中関係に戦略的に負の影響を与えてきた」「長期的には日本は米国との関係で厄介ごとが増えるだろう。米軍の日本駐留は、日本の主権を大いに損ねてきた」などと書いている。日中関係推進に当たっては、米国との連携を密にして動くことが最重要である。今回は、10月16日に谷内国家安全保障局長が訪米し、ボルトン国家安全保障補佐官に事前説明を行っている。

中国が地域を「支配」し、世界中で自由、人権、民主主義や法の支配などに基づかない影響力を行使しようとしている状況に変化がない以上、日中関係も根本的な改善には向かうことはないと見るべきであろう。

【私の論評】微笑に騙されない安倍総理は「自由で開かれたインド太平洋」構想を着実に進める(゚д゚)!

このブログに過去に何度か掲載してきたように、中国が民主化、経済の政治の分離、法治国家化を進めようとする意志がない以上、日中関係には根本的な改善はあり得ないとみるべきです。

そうして、実際安倍総理は、そのように中国をみているようです。

本日安倍晋三首相は午前、首相官邸でペンス米副大統領と会談しました。終了後、首相は「北朝鮮の完全な非核化に向け、国連安保理決議の完全な履行が必要だとの認識で一致した」と表明。2人は拉致問題の早期解決に向けた連携の強化でも一致しました。日米が目指す「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進に向けた連携を確認する共同声明を発表しました。


共同記者発表で、首相は「ペンス氏との緊密な調整は日米同盟の強固な絆を示すものだ。自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、インフラやエネルギー分野で緊密に連携していく」と説明。ペンス氏も「ここまで強かった日米同盟はかつてない。日米は自由で開かれたインド太平洋地域を現実のものとするビジョンを共有している」と応じました。

首相は年明けにも始まる日米間の新たな通商交渉に関し、「双方の利益となるように日米間の貿易や投資を拡大し、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現する」と述べました。

米中間選挙では、与党・共和党が下院で過半数を失い、トランプ政権が通商問題でさらなる強硬姿勢をとることが懸念されています。こうした現状も踏まえ、日本政府は「強固な日米同盟」を内外に発信したい考えです。

ペンス氏はトランプ大統領の名代として、シンガポールで開く東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議への出席を前に来日しました。首相との会談に先立ち、麻生太郎副総理兼財務相とも会談しました。

今回の会談で最重要はやはり「自由で開かれたインド太平洋」構想の再確認のようです。安倍総理がこの構想を打ち出してから2年で、この構想が着実に形になりつつあります。


日本、米国、インド、オーストラリアの4カ国は11月13日に、シンガポールで開催予定の第13回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議を控え、インド太平洋地域における海洋安全保障と経済開発プロジェクトを推進させる構えです。

安倍首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想は、地域インフラ発展における4カ国の協力構想の創設戦略のことです。同海域における中国進出を念頭にしており、各国安全保障政策のみならず軍事戦略にも影響しています。

この構想は日本の安倍総理が言い出したということで、かなり円滑に推進されるようになりました。これが、米国が言い出した場合は、インドやASEAN諸国は米国に対する反発も多いので、うまくはいかなかったでしょう。

日本がこれらの国々と、米国とをうまく橋渡しをすることにより、この構想は着実に前進しています。そのため、トランプ政権も安倍政権には一目置き、頼りにしているところがあります。


さて、マイク・ペンス米副大統領は11月10日、米アラスカで記者団に対して、インド太平洋地域における中国共産党政府によるプレゼンス(存在感)が高まる中、米国がインド太平洋地域で最大600億ドル(約6兆8千億円)のインフラ整備支援を行う計画があると述べました。

ホワイトハウスによると、トランプ大統領はASEANおよびアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の出席を見送り、ペンス副大統領が代理出席します。

ペンス副大統領は11日に、インド太平洋地域に対する米国のコミットメント(かかわりあい)は「かつてないほど強い」と述べ、大統領の首脳会議の欠席はアジア軽視では「全くない」と強調しました。

インド紙タイムズ・オブ・インディアによると、米国の国防総省上級幹部はインド太平洋司令部が4カ国と協調的な安全保障の枠組みを構築することに積極的だといいます。

同紙によると米国防総省高官は、南シナ海の南沙諸島の軍事拠点化を進める中国について、「排他的で独占的な」政権が「強引な戦略で国際的なルールを破壊しようとしている」と批判しました。

インドは日米のインド太平洋戦略の軍事発展化に慎重な姿勢を示しています。インド国務院アリス・ウェルス高官は同紙に対し「4カ国は互恵的な計画として協力する構想を共有する。海上安全保障の促進のみならず、海洋分野の開発や経済プロジェクトも含まれる」と述べました。

しかし、ウェルス高官は「避けられない事態に応じて」軍事戦略への進展は排除しませんでした。

米国とインドは毎年2カ国軍事演習を行っています。来年はベンガル湾で水陸両用訓練を行う予定。日本とインドは11月1日から2週間、インド北部ミゾラムで初めてとなる二国間軍事訓練「ダーマ・ガーディアン2018」を行っています。

11月9日、ワシントンで行われた米中外交安全保障対話で、米国は中国に対して、南シナ海に設置されたミサイルシステムを撤去するよう直接要求しました。国務省は声明で、インド太平洋において「いかなる国も脅迫や恫喝で問題を解決するべきではないとの考えを確認した」と述べました。

ポンペオ米国務長官は米中対話後の記者会見で、「中国の南シナ海での活動と軍事拠点化に引き続き注意を払う。また、過去に中国が締結した条件を履行するよう促していく」と述べました。

読売新聞10日付によると、同紙が入手したというASEAN議長声明草案には、中国を念頭に「緊張を高め、平和を損ないかねない」単独行動を批判する文言を入れる方向で調整しているとされています。

ASEAN議長声明草案には、中国を批判する文言が入るか入らないかは今のところはわかりませんが、それがどうなろうとも、日本、米国、インド、オーストラリアの4カ国は「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進し、インド・太平洋地域から中国の覇権を葬り去るでしょう。

米国は、現在対中国「冷戦Ⅱ」を実行しています。これは、中国が体制を変えるか、体制を変えないならば、他国に影響力を行使できない程に経済力を削ぎ落とすまで、続けられます。

その一方で、日米印壕は、「自由で開かれたインド太平洋」を維持するため、中国が現在以上の暴虐を防ぐ役割を協同で担うことになります。

「冷戦Ⅱ」の画像検索結果
ペンス副大統領は「冷戦Ⅱ」という言葉を発した

米国の「冷戦Ⅱ」は、少なくとも10年、長ければ20以上継続され、必ず結論はでます。

中国が体制を変えれば、中国がつくった南シナ海の環礁の埋立地を自ら撤去し、中国が自力で元の環礁に戻すことになるでしょう。

中国により軍事基地化された南シナ海の環礁ファイアリクロス(2017年12月14日CSIS公表)
中国が体制を変えなかったとしたら、経済がかなり弱体化し他国への影響力を失い、南シナ海の中国の埋立地はそれを維持するだけでも莫大な経費がかかり、中国にとっても無意味になります。

しかし、その時になっても維持していれば、日米壕印の連合国が南シナ海の埋立地を海上封鎖し、埋立地の軍事基地を無効化した後に、上陸し中国軍の武装解除をし、その後に埋立地を破壊し元の環礁に戻すことなるでしょう。このようなことをしても、その時には、中国は力を失い、なすがままにされるしかなくなっているはずです。そもそも、環礁を元に戻すだけの経済力もないかもしれません。

いずれにせよ、20数年後くらいには中国の覇権は南シナ海から排除され、埋立地は元の環礁に戻ることになるでしょう。

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2018年9月8日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?―【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?

 「本当は火の車なのに、よく言うね」。そう思ったのは、中国の習近平国家主席の大盤振る舞い発言だ。習氏は自身が提唱してからまる5年経つ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」について、北京で開かれた「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合で、今後3年間で600億ドル(約6兆6000億円)をアフリカ向けに拠出すると発表したのだ。

 「一帯一路」は中国のマネーパワーによって推進される、とは一般的な見方なのだが、だまされてはいけない。本グラフを見ればそのパワーは張り子の虎同然であることがはっきりする。



 外貨準備など中国の対外資産は外貨が流入しないと増えない。流入外貨をことごとく中国人民銀行が買い上げる中国特有の制度のもと、中国当局は輸出による貿易黒字拡大と、外国からの対中投資呼び込みに躍起となってきた。ところが、2015年以降は資本逃避が激しくなり、最近でも3000億ドル前後の資本が当局の規制をかいくぐって逃げている。

 そこで、習政権が頼るのは債券発行や銀行融資による外国からの資金調達である。対外金融債務はこうして急増し続け、外国からの対中投資と合わせた対外負債を膨らませていることが、グラフから見て取れる。主要な対外資産から負債を差し引いた純資産は今やゼロなのだ。

 今後は「債務超過」に陥る可能性が十分ある。米トランプ政権は年間で3800億ドルの対中貿易赤字を抱えており、少なくてもそのうち2000億ドル分を一挙に削減しようとして、中国からの輸入に対し矢継ぎ早に制裁関税をかけている。中国の海外との全取引によって手元に残るカネ(経常収支)は縮小を続け、ことし6月までの年間で683億ドル、昨年年間でも1650億ドルである。対米黒字が2000億ドル減れば、中国の対外収支は巨額の赤字に転落してしまう。しかも、外国からの投資も大きく減りそうだ。米中貿易戦争のために対中投資が割に合わなくなる恐れがあるからだ。

 習氏が一帯一路圏などへの投融資を増やそうとするなら、外国からの借り入れに頼るしかないが、それなら高利貸しかサラ金並みの金利でないと、自身の負債が膨張してしまう。現に、中国による一帯一路圏向けの借款金利は国際標準金利の数倍に達しているとみられる。

 そればかりではない。習氏は外貨が手元になくても、「資金拠出します」と言ってみせるからくりを用意している。港湾や高速道路、鉄道などインフラを融資付きで受注する。受注者は中国の国有企業、それに融資するのは中国の国有商業銀行、従事する労働者の大半は中国人である。

 とすると、受注側の資金決裁はすべて人民元で済む。そして、負債はすべて現地政府に押し付けられ、しかも全額外貨建てとなる。中国はこうして「一帯一路への支援」を名目に、外貨を獲得するという仕掛けである。安倍晋三政権も経団連も「一帯一路に協力」とは、甘すぎる。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

中国はブログ冒頭の記事のような有様ですが、では日本はどうなのかといえば、財務省は5月25日、2017年末における対外資産負債残高を発表し、日本は27年連続で世界最大の債権国となったことがわかっています。発表によれば、対外資産残高は前年比2.7%増の1012兆4310億円、対外負債残高は同5.2%増の683兆9,840億円となり、対外純資産残高は同2.3%減の328兆4470億円となりました。


中国メディアの快資訊は5月25日、日本が27年連続で世界一の純債権国となったことに対し、「日本が失われた20年に陥っているなんて、大嘘だ」と主張する記事を掲載しました。

これは、実際には大嘘ではありません。日本は過去においては、国内では金融政策、財政政策において大失敗しました。デフレ傾向なのに、日銀は金融引締め的な政策ばかり実施し、財務省は緊縮財政を行いました。そのため、日本の国内経済は手酷い停滞を余儀なくされました。

記事は、中国人は近年、日本に対して大きな誤解を抱いているとし、それは、日本の経済成長率が低迷していることを「日本衰退」と思い込んでいることだと指摘。日本は国内の経済成長は確かに低迷しているが、海外への投資を通じて、海外で大きな利益を得ているのだと伝え、「中国の対外純資産残高および海外での投資活動は日本の足元にも及ばないのが現状なのだ」と指摘しました。

続けて、日本が海外に大量の資産を保有しているのは、「日本は国土が小さく、天然資源も少ないうえ、国内市場は縮小傾向にあるため、日本企業が海外に活路を見出したため」であると主張。海外での経済活動はGNPには含まれるが、GDPには含まれないと伝え、中国もGDPばかりではなく、GNPも強化していくべきだと論じました。

先にも述べたように、国内経済は疲弊しましたが、日本の大手企業などは、失われた20年より前から、そうして失われた20年中も、海外投資で手堅く稼いできたというだけのことです。

ただし、失われた20年で国内はすっかり疲弊してしまいまい、国民にとってはとんでもないことになってしまいましたから、これは日本国政府がどうしようもなくボンクラであり、民間企業が賢かったということであり、決して褒められたことではありません。

ただし、中国政府としては、人民のことなどどうでもよく、自分たちが儲かれば良いということからすれば、これは本当に羨ましいことなのかもしれません。

中国の対外純資産残高は16年末は日本に次ぐ世界第2位となりましたが、17年末はドイツに抜かれて再び3位に転落しました。財務省によれば、中国の17年末の対外純資産残高は約204兆円であり、日本と中国の差はまだ大きいものの、中国も近年は海外進出を積極化していることから、この差は縮小していく可能性もあるとしていますが、それは甚だ疑問です。

なぜなら、国内でデフレ時に緊縮財政を行うような、日本の財務省の分析、しかも中国の分析など到底信用できないからです。

以下、中国の公表するGDPなどの統計数値が正しいものとして分析してみます。現在、中国の対外純資産(対外資産-対外債務)の規模は、日本、ドイツに続く世界3位となっていますが、対外資産が生み出す収益である第1次所得収支は、恒常的な赤字となっています。


ここで、米国が断トツのマイナスになっていますが、これは当然といえば、当然です。なぜなら、米国は基軸通貨国でもあるからです。このあたりの詳細は本題とは直接関係ないので説明しません。

中国の、第1次所得収支が、恒常的な赤字その理由には以下の2つがあります。まず、中国の成長率ひいては投資収益率は海外平均に比べ高いです。2015~17年平均の名目経済成長率は、米国やドイツの3.6%、日本の2.1%に対し、中国は7.9%と高い。外国から中国に対して行う投資の収益率は高く、国際収支上は中国の対外支払額が大きくなる一方、相対的に利回りの低い先進国などに投資する中国側の受け取りは小さくなります。

これは、たとえ7.9%が嘘であったとしても、中国の経済の伸び率がある程度高いというのならあてはまることです。

2番目に、中国では外国への直接投資や証券投資での運用は相対的に小さく、大規模な外貨準備で運用する点が特徴となっています。外貨準備は国債などの外国資産で運用されるため、安全性が高いですが、収益率は一段と低くなります。

中国では、所得収支が赤字を続けるほか、海外渡航や知的財産権使用に関連したサービス収支の赤字も拡大しています。貿易収支はこれらを上回る黒字を計上してきたが、所得水準の向上などによる輸入増で黒字幅が縮小し、全てを合計した経常収支の黒字が縮小しています。

今後も経常収支の黒字を維持するためには、日本やドイツと同様に所得収支を黒字化する必要があります。中国内外の利回り格差の解消は難しいですが、対外資産の運用を政府の外貨準備から企業による直接投資・証券投資にシフトしていくことが考えられます。その実現には、為替管理の緩和などを通じて企業の海外投資を自由化する政策が求められるだけでなく、米国をはじめ、諸外国における中国の投資への警戒感を和らげることも課題となってくるでしょう。

対外資産の運用を政府によって実行すれば、最初から大失敗するのは明らかです。日本でいえば、財務省が一手に対外資産の運用を引き受けるようなものであり、官僚が運用して成功する見込みは全くありません。

多数の経験豊富な、民間企業がしのぎを削って競争しながら、実施するからこそうまくいくのです。その中には失敗するものもあれば、成功するものもあります。日本の場合は、成功する企業の割合がたまたま多いということです。

一帯一路圏への直接投資は、いくら投資したとしても、利回りが低くすぎで、たとえ習近平が狡猾に、中国企業に受注させたにしても、元々利回りが低いことには変わりはなく、実際は収益性が乏しいということです。それに、当該国の政府や企業にも、ある程度は儲けさせてやらなければ、長続きするプロジェクトにはなりません。そうなれば、ますます利回り率は低くなります。

かつて、中国が国内に投資して発展したように、国内投資に回帰すれば良いとも思うのですが、それも無理のようです。

なぜなら、中国では、大きなインフラ投資は一巡してもうめぼしいものはないからです。今更、たとえばさらに鬼城をたくさんつくるというわけにはいかないからです。それなら、人に投資するとか、産業構造を変えることに投資すれば良いと思うのですが、それも無理なようです。

中国の全国各地にみられる鬼城(ゴーストタウン)

なぜなら、産業構造を変えるには、中国の民主化、政治と経済の分離、法治国家化がどうしても必要不可欠なのですが、それを実行するとなると、中共の本質を変えなければならないからです。

現在先進国といわれる国々は、これらを実施して、いわゆる多数の中間層を輩出し、それらが活溌な政治・経済活動をすることにより、富を築いて先進国のなったのですが、現在の中国はまだその前の段階であり、しかも中共が体制を変えようとしません。

変えれば、自分たちの統治の正当性を失い崩壊してしまうことを恐れているので、結局何もできず、一帯一路でお茶を濁しているのでしょうが、それもうまくはいきそうもありません。

結局中国はミンスキー・モーメント、てっとりばやくいうとバブルが膨らむだけ膨らんで、崩壊する時の瞬間のことですが、これ迎えるしかないのでしょう。その瞬間の後には中国は中進国の状態から抜け出すことができずに、永遠に中所得国の罠から抜け出すことができなくなることでしょう。

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2018年7月31日火曜日

日銀官僚の理不尽な行動原理 金融機関重視する裏に天下り…政策に悪影響なら本末転倒だ―【私の論評】日銀は銀行ではなく日本国民のために、金融政策に集中すべき(゚д゚)!

日銀官僚の理不尽な行動原理 金融機関重視する裏に天下り…政策に悪影響なら本末転倒だ

高橋洋一 日本の解き方

日銀は31日の金融政策決定会合で、「0%程度」としている長期金利の
誘導目標の柔軟化を正式決定した。一定の金利上昇を容認する。写真は
記者会見する黒田東彦総裁=同日午後、日銀本店

日銀は30、31日の金融決定政策会合で、「金融政策を柔軟化する」「緩和長期化が金融機関に与える副作用の対策を検討する」などと報じられた。マスコミ報道で「副作用」といっても、「市場機能の低下」「金融機関経営に及ぼす影響」など抽象的な表現しか出てこないことがほとんどだ。

 「金融機関経営に及ぼす影響」とは、マイナス金利になっていることで、この運用金利では調達金利との利ざやが小さく、金融機関は儲からないということだ。

 「市場機能の低下」と、もっともらしいことをいうが、これも金融機関の儲けがなくなると、金融資本市場がうまく回らないという市場関係者の思い込み(自己保身)に過ぎない。

 実際には、日銀が金融機関から「この金利水準では儲からないから何とかしてくれ」と常日頃、愚痴を聞かされているので、それを「副作用」と表現しているだけだ。「市場機能の低下」は付け足しでしかないのだが、日銀としては金融機関のために金融政策を行うとは言えない建前があるので、市場機能の問題を前面に出して「副作用」を説明してきた。こうした複雑な背景があるので、一般の人には日銀が何を言っているのか理解できないだろう。

 日銀が金融機関を重視するのは、金融政策を行う主体であるとともに、金融機関の監督という準行政的な機能もあるからだ。前者をマネタリー、後者をプルーデンスという。

 実は、日銀内の仕事としてはマネタリーの部分はごくわずかで、多くは「銀行の中の銀行」として金融機関との各種取引を通じたプルーデンスである。プルーデンスは「日銀官僚」が天下るときにも有用であるため、日銀マンの行動に金融機関重視がビルトインされているとみたほうがいい。

 筆者は役人時代、プルーデンスは金融庁に任せればいいという考え方であったが、日銀はプルーデンス重視だった。銀行の収益悪化は、人工知能(AI)対応が遅れたという構造的な側面もあり、必ずしも低金利だけが原因とはいえない。

 プルーデンス重視が、マネタリーに悪影響を与えては本末転倒だ。マネタリーではマクロの物価と雇用だけをみていればよく、ミクロの金融機関経営は考慮されるべきではない。

 報道では副作用対策で日銀内に温度差というが、日銀プロパーはプルーデンスばかり見ているので、外部から日銀に来た人とプロパーの間でマネタリーに対する意見の差があるだけではないか。日銀は「副作用」という言葉で金融機関を支援するのはやめたほうがいい。

 現在でも、日銀は金融機関向けの当座預金に付利している。金融機関による一般事業者向けの当座預金は、臨時金利調整法により無利息であるにもかかわらずだ。日銀の付利により、金融機関は2000億円ほどの小遣いをもらっていることになる。これは、政府特権である通貨発行益の一部を金融機関に移転していることであり、国会での議論が必要だ。いずれにしても、日銀はマネタリーに特化すべきである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀は銀行ではなく日本国民のために、金融政策に集中すべき(゚д゚)!

日銀は、本日の金融決定政策会合の結果を受けて以下の文章を公表しています。以下にその文書のリンクを掲載します。
強力な金融緩和継続のための枠組み強化
この日銀公表文を全部読むと、消費増税もあり物価が上がりそうにないから金利引き上げを(準備)するというふうに見えます。しかしこれでは、ロジックが真逆です。日銀の金融機関擁護の金利引き上げと増税擁護の姿勢を変えなければ、これからも物価がこれからも上がりそうもありません。

物価が上がったから、金利を引き上げるというのが当たり前でというか、これが常道です。日銀は、これからも常道を踏まないつもりなのでしょうか。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、マネタリーではマクロの物価と雇用だけをみていればよく、ミクロの金融機関経営は考慮されるべきではない。日銀はプルーデンスではなく、マネタリーに特化すべきとしています。

この日銀は、プルーデンスに注力するあまり、過去においてはマネタリーで大失敗をしています。

GDPの伸び率がゼロだった「失われた20年」

日本はバブル崩壊後、長らくデフレに悩まされ、経済成長率も他の先進国と比して著しく低く「一人負けの状態」が続き、また失業率も高く「失われた20年」とも呼ばれてきました。その要因は何であったかといえば、結論からいえば、バブルという羹に懲りてデフレを長引かせた日銀の誤りによるものです。

①日本のバブル期は、一般的に1987(昭和62)年から1990(平成2)年までを言います。
 この間の経済指標は 経済成長率(実質)が4~5%、失業率が2~2.7%、インフレ率が0.5~3.3%とまったく問題ないレベルであり、「失業する人も少ないし、給与も上がり、みんながハッピー」の「理想的な経済」でした。

東京株式市場は1989年12月29日に3万8916円という過去最高値を付けた

②一方、資産価格である株や土地の価格だけが異常に上昇しました。

バブルとは、「資産価格の上昇」と定義できます。株価は89年末がピーク、地価はタイムラグがあり91年頃がピークとなりました。

③インフレ率が上がらず、株や土地という資産価格だけが上がる場合は、金融政策で見ると何か別の理由があると考えられます。

④その頃、証券会社は税制の抜け穴を利用した「財テク」の営業を行い、株価が異常に上昇していました

当時、大蔵省証券局は、証券会社が損失補填する財テクを営業自粛(事実上の禁止措置)させる大蔵省証券局通達を89年12月26日に出しました。これにより、その年の大納会で3万8915円となった株価は、1990年の終わりにかけて2万3000円くらいまでに下がりました

⑤他方、1990年3月に大蔵省銀行局長通達「土地関連融資の抑制について」が出されました。

これは、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える措置(いわゆる総量規制)でした。これにより地価は、その後、下落しました。

上記の④と⑤によりバブルは沈静化していきました。ところが、一方で日本銀行が同じ時期に金融引き締めをしてしまったのです。

今から考えれば、これがバブル処理における最大の失敗でした。この致命的な間違いにわってバブルの後遺症が大きくなったのです。そもそもバブルの原因は金融緩和ではありませんでした。

だから、バブルつぶしのために金融引き締めすることが正しかったはずもありません。資産バブルを生んだ原因は、法の不備を突いた営業特金や土地転がしなどによる資産売買の回転率の高さでしたが、日銀は原因分析を間違え、利上げという策を実施してしまったのです。

日銀は物価の番人ですが、物価に株や土地の資産価格は含まれていません。本来、日銀は消費者物価指数のような一般物価を眺めながら対策を講じていれば良いのですが、株価の値上がりが自分たちの金融緩和のせいだと思ってしまったのです。
ここで公定歩合と日銀の金融引き締めの経緯を辿ってみます。

公定歩合は、1980(昭和55)年8月に日銀が9%から8.25%に引き下げて以来、87年2月に3%から2.5%に引き下げるまで10回にわたり引き下げられました。これは、多分に大蔵省の要請(実態は指示に近い)によるものです。

しかし日銀は、バブル当時の1989年5月に公定歩合を2.5%から3.25%に引き上げ、同年10月も引き上げました。さらに、バブル退治の「平成の鬼平」と言われた三重野康氏が同年12月に日銀総裁となり、就任直後の12月に引き上げ、さらに90年3月にも引き上げました。バブルがほぼ沈静化した8月にも引き上げ、公定歩合は6%となりました。

バブル退治の「平成の鬼平」と言われた三重野康氏

一般物価ではなく、株や土地の値上がりに対しては、日銀ではなく大蔵省や国土庁(現・国土交通省)がまず対応すべきものです。少なくとも、90年8月の利上げは不要だったと言わざるを得ないですが、さらに大きな問題は91年7月に6%から5.5%に下げるまでに時間がかかったことです。

下げのタイミングが遅れると、その後の引き下げは後追いとなって景気が回復に寄与することはありません。このように大蔵省との対抗心から、バブル期に日銀は金融引き締めという間違った金融政策をしました。このような経緯から、かつては大蔵省は金融緩和が好き、日銀は金融引き締めが好き、という本当にバカげた話が語られるようになってしまいいました。

過去にこのような大失敗をした日銀です。銀行に泣付かれてまたまた、マネタリーを間違えるということもなきにしもあらずです。マネタリーは雇用と物価、特に物価の上昇・下降速度をみていれば、間違いようがありません。少なくとも上記のような、とりかえしのつかない「失われた20年」を招いてしまうようなことはあり得ません。

にもかかわらず、日銀は、間違えってしまったのですから、いかに日銀のマネタリーの部分に、プルーデンスの部分が大きく影響していたかを示すものです。

二兎を追う者は一兎も得ずという諺もあります。もともとの日銀官僚は、まともに数字も読めず、20年間も金融政策を間違えてきたのですから、日銀にはそういう体質が深く染み付いていると考えるべきです。政治家や国民がぼんやりしていると、日銀はまた「失われた20年」どころか、「失われた40年」を招いてしまうかもしれません。

これから、ふたたび誤った金融政策が行われないためにも何とかして、日銀を金融政策に集中させ、過去の間違いを繰り返させるべきではありません。

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