2018年8月24日金曜日

【米中貿易摩擦】手詰まり中国 時間稼ぎ トップ会談で「休戦」狙う―【私の論評】中国のミンスキー・モーメントが世界のナショナリズム回帰への先鞭をつける(゚д゚)!

【米中貿易摩擦】手詰まり中国 時間稼ぎ トップ会談で「休戦」狙う 


 米中両国は23日、160億ドル(約1兆8千億円)相当の追加関税第2弾を発動した。中国の習近平政権は「米中貿易戦争を望まないが、恐れてはいない」(外務省)と強気の姿勢を示すが、米国の2千億ドル規模となる第3弾の制裁にまともには太刀打ちできないのが実情だ。トランプ米大統領との首脳会談に持ち込み、北朝鮮問題などを取引材料に“休戦”を狙う。

 マルパス米財務次官、中国の王受文商務次官らが米首都ワシントンで開催中の貿易協議では、通商に加えて為替問題も議論されているもようだ。米側は、中国当局が貿易摩擦の悪影響を補うため、通貨・人民元を対ドルで安く誘導しているとみているが、中国側は「為替操作はしていない」との立場だ。対米輸出品の関税が引き上げられる中、元高ドル安になれば輸出品の価格競争力はますます損なわれてしまう。

 中国紙の環球時報は23日、「米中とも対話の意思があることを内外に示す必要に迫られている」として協議継続への期待を示した。背景には貿易摩擦による景気減速への懸念がある。中国株は下落傾向が続き、経済が悪化すれば社会不安を招きかねない。

米国の対米貿易戦争で追い詰められる習近平

 中国は当初、160億ドル相当の報復関税の対象に原油を含んでいたが、最終的に外した。原油価格上昇による中国経済へのダメージを懸念した可能性も指摘されている。

 今月中旬に終わったとみられる中国共産党の重要会議「北戴河(ほくたいたいが)会議」は米中問題が主要テーマになり、緊張した雰囲気だったと伝えられている。

 習国家主席への個人崇拝を批判する動きもある中、「党内対立の激化は米国を利するだけだ」として、習指導部は事態収拾を図ったもようだ。

 11月6日の米中間選挙後に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)や20カ国・地域(G20)首脳会議の場で米中首脳会談を開催し、北朝鮮問題での協力強化などをちらつかせながら、休戦への道筋をつける戦略とみられる。

【私の論評】中国のミンスキー・モーメントが世界のナショナリズム回帰への先鞭をつける(゚д゚)!

中国国内金融学者の賀江兵氏

中国国内金融学者の賀江兵氏はこのほど、アメリカにある中国語メディア「新唐人テレビ」の取材で、米中貿易戦を今後2カ月以内に解決しなければ、中国経済が「崩壊モード」に突入するとあらためて警告しました。

賀氏はかつて、中国メディア「華夏時報」金融部の主任を務めていました。現在相次ぐ破綻する個人間で投資を仲介する融通事業、「P2P(ピア・ツー・ピア)金融」サイトのリスクについて、4年前にすでに警告していました。中国で近年、その発言が注目されています。

米中貿易戦の激化で中国株式市場が低迷し、対ドルでの人民元相場が急落しました。賀江兵氏は、2カ月後に控える米国の中間選挙後、中国経済が崩壊モードに進むとみています。

「与野両党のどちらが勝っても、トランプ政権が引き続き対中貿易制裁を進めていく」としています。

民主党が勝つ場合、党内の親中派がトランプ政権の対中政策にブレーキをかけるよう、中国は働きかけるとみられます。しかし、対中問題において、与野党は歩調を合わせています。同氏は「民主党も中国に対して警戒感を強めている。米国では、今や親中派議員には票が集まらない」と指摘しています。

「選挙後、貿易戦による票への影響などの懸念材料がなくなる。トランプ氏は中国にこれまで以上の圧力をかけていくだろう」と中国がこの2カ月の間に貿易摩擦を解決する必要があると述べました。

今年6月、賀江兵氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)を通じて、中国経済のミンスキー・モーメントを警告する評論を発表しました。同氏は「ミンスキーモーメントがやってきた。(株安・元安という)市場の激しい反応から見れば、中国経済のバブル崩壊はすでに始まった」と警鐘を鳴らしました。

ミンスキー・モーメント(ミンスキーの瞬間)とは、信用循環または景気循環において、投資家が投機によって生じた債務スパイラルによりキャッシュフロー問題を抱えるポイントのことです。

経済成長は一般に債務の増加を伴います。企業部門は設備投資、家計は住宅投資など固定資本形成を行い、その多くは債務(クレジット)で賄われるからです(金融レバレッジ)。債務との見合いで有効な資産が増え、所得の増加や資産からの収益で債務が返済可能である限り問題はありません。

しかし、経済成長に伴う社会の楽観的な雰囲気は時に行き過ぎ、過剰な固定資本形成と資産価格の高騰が起こります。これが資産バブルです。たとえバブルであっても、旺盛な固定資本形成が行われている限り、それ自体が需要を生み出すので、国内総生産(GDP)で計測された経済成長率は高まります。

もっとも、明らかに過剰な固定資本形成は、最終的には生産設備の稼働率の大幅な低下、あるいは投資のインカム(配当や賃料などの)リターンの低下を招き、資産価格が下落に転じる局面が到来します。

時価評価した資産価値が低下する一方、債務はキャッシュで返済しない限り減少しないので、企業や家計の時価ベース自己資本(純資産)の減少が始まることになります。つまり評価損失の発生です。

その損失増加を食い止めるために資産の売却が始まれば、同様の状態にある他の債務者も売り急ぐので、売りが売りを呼んで資産価格の急落となり、債務超過となった企業や家計は債務の返済が不能となります。その結果、銀行をはじめ信用供与者の不良債権が急増し、信用収縮、債務者の破綻、失業者の増加というバブル崩壊過程に特有の現象が続くことになります。

住宅ローン形態での家計債務の膨張を中心とした2000年代の米国のバブルでは、07年前後がミンスキーモーメントだった。これが、日本ではリーマンショックにつながっていきました。企業部門の不動産関連投資と債務膨張を主とした日本のバブルでは、1990年代初頭がミンスキーモーメントだったと言えるでしょう。

賀氏は、2カ月以内に貿易戦の打開策がなく、米政府がより強力な制裁措置を行えば、中国経済のバブルが崩壊モードに突入するとの見解を示しました。

米政府は7月と今月23日に、合計500億ドル相当の中国輸入品に対して追加関税を課しました。

「この影響で、バブルがほとんど見られない中国株式市場まで下落した。貿易戦が続くと、深刻な住宅バブル、債務問題、人民元の過剰供給による金融バブルが次々と崩壊する」

賀氏は、中間選挙後、米政府による対中貿易制裁の強化で、中国国内のインフレ圧力が一段と強まると懸念しています。同氏は、インフレ圧力が「中国経済が崩壊モードに進む」要因の1つだとしました。

世界最大の食糧輸入国である中国では、大豆価格が急騰すれば、家畜の飼料価格や大豆関連製品の値上がりを招く。他の輸入農産品、燃料についても同じです。
インフレの対策は、中央銀行による利上げ実施などです。賀氏によると、景気鈍化が進む中国で利上げを実施すると、すでに高い法人税に頭を抱える企業は次々と経営破綻に追い込まれ、実体経済は現状より一層冷え込むことになります。一方で、「当局は、企業を救済する資金力がないうえ、膨大な地方政府の債務を抱えている」といいます。

賀氏は取材中、自身について「中国経済崩壊論を主張する者ではなかった」とし、過去2年間中国経済の実態を考察して「悲観的になった」と述べました。

中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁

ミンスキー・モーメントの脅威を主張するのは、無論賀江兵氏だけではありません。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は19日、過度の楽観主義が資産価格の突然の大幅下落を引き起こしかねないと警告しました。

周総裁は「ミンスキー・モーメント」として知られる概念を使って脅威を指摘しました。

周総裁は第19回共産党大会に合わせて行われたイベントで質問に答え、「景気循環を増幅する要素が経済にあまりに多く存在すれば、景気変動のぶれが大きくなる」と発言。

「物事が円滑に進んでいるときに過度に楽観的であれば緊張が高まり、それが急激な調整につながる可能性がある。ミンスキー・モーメントと呼ばれる状況で、われわれは特にこれを防がなければならない」と述べました。

同総裁は価格が急落する可能性のある資産クラスを具体的に挙げることはありませんでした。企業と家計の債務リスクを広く警告した上で、一部企業の資本効率の低さと不適切な直接ファイナンスなどを背景に企業の借り入れは「非常に高水準」だと指摘。

家計の債務については非常に大きいとは言えないが急増しているとの認識を示し、「家計部門のレバレッジ縮小を進めるわけではないが、レバレッジの質を注視する必要がある」と述べました。

中国経済がミンスキー・モーメントを迎えることは、実は貿易戦争の前にもいわれていたことです。これはいず起こったのでしょうが、貿易戦争がそのきっかけをつくるかもしれないことは確かなようです。

習近平氏は当初、米中貿易戦争を楽観していた節が窺えるます。これを反映して、5~7月にかけ非金融貸出(社債+影の銀行貸出)を急速に絞った結果、企業の資金繰りに大きな影響を及ぼしています。デフォルトの多発がそれを物語っています。

中国銀行保険監督管理委員会(注:日本の金融庁)の当局者は23日、「中国の銀行セクターが新たに大規模な不良資産へのエクスポージャーにさらされていると警告した。また、銀行セクターは現在のところ、より大きな規模で融資の拡大を実施することに困難を抱えているとの認識を示した」(『ロイター』8月23日付)。

金融当局者が、「新たに大規模な不良資産へのエクスポージャー(リスク)にさらされている」と発言するのは、相当な危機レベルに達している証拠です。通常なら、このような重大な事実は隠すものです。だが、もはや隠しきれなくなった、とも読めます。

これを反映して、中国政府は各地方政府に調査団を派遣して地方経済の実態調査に乗り出している。「中国国務院(内閣に相当)は、主要政策の実施状況を調べるために国内各地に31の調査団を派遣した。調査団は各省で10~12日間にわたり、面談や事前連絡なしでの企業訪問などを通じた調査を行う予定」(『ロイター』8月22日付)という緊迫した雰囲気を伝えています。

中国経済はいずれ、かなり深刻な「ミンスキー・モーメント」を迎えるのは確かなようです。

こうしたこともあるので、習近平としては、トランプ大統領とのトップ会談で「休戦」っているのでしょうが、トランプ大統領はその手にはのらないでしょう。

なぜなら、トランプ大統領の貿易戦争の狙いはまさに、中国経済に甚大な被害を与えることが目的であり、このような事態がおこることは織り込み済みというか、これを起こすことがトランプの狙いだかです。

トランプ大統領

過去の、中国はまだ借り入れが増えている段階でした。しかし、ミンスキー・モーメント以降は、不良債権を処理せざるを得なくなり、実体経済が悪化し、企業が倒産、大量の解雇者が出て、失業者が急増、個人破産も急増し、自殺・暴動が起き、そうなると中国は軍事力でこれを抑えつけるしかなくなるでしょう。

軍事力で押さえつけなければならないとなると、必然的に軍隊が力を持つことになり、7つの大軍区は分裂してしまう可能性もあります。

2017年4月27日に行った外交演説でドナルド・トランプ大統領は、以下のように述べています。
我々は最早グローバリズムという誤ったイデオロギーによって国家を破壊し、米国の国民をその犠牲者としてはならない。国民国家こそ幸福と調和の真の基礎を成すものである。私は国際的組織というものを信用していない。
これはナショナリズムという言葉こそ使わなかったものの、まさしくアンチ・グローバリズムであり、国家の再建を意味するものです。また、米・英・中・露は、タックスヘイブンを潰そうとしていることも、猛威を振る舞った金融グローバリズムを崩壊させるものとなるでしょう。

これからは、世界の国々は自由貿易をしつつも、ナショナリズムの時代になっていくことでしょう。勿論、急に何もかもが変わっていくわけではないはずですが、徐々に変わっていくことになるでしょう。

私は、中国のポスト・ミンスキー・モーメントがその先鞭をつけるものではないかと思います。

トランプの戦いは、まさに悪い面でのグローバリズムの申し子でもある中国を潰しナショナリズムに復帰した世界を再構築することなのです。

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