2018年8月23日木曜日

【主張】台湾に断交圧力 地域の安定損なう動きだ―【私の論評】これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政府が判断すれば、牽制・制裁の対象になる(゚д゚)!

【主張】台湾に断交圧力 地域の安定損なう動きだ

中米全図 地図はブログ管理人挿入 以下同じ

 中国が、中米エルサルバドルとの国交を樹立した。これに伴いエルサルバドルは、外交関係のあった台湾と断交した。

 台湾の孤立化を狙う中国が仕掛けた、露骨な圧力外交の結果だ。

 台湾を外交承認する国は17カ国と過去最少を更新した。蔡英文政権下での断交は5カ国にのぼる。今年はすでに3カ国という異常なペースだ。世界2位の経済力を外交カードに台湾の外交関係を奪う戦術といえる。

 蔡総統が談話で「両岸(中台)の平和への脅威だけでなく、世界的な不安定を生み出している」と反発したのは当然である。地域の安定を損ないかねない中国の行動を強く懸念する。

 日本と台湾に正式な外交関係はない。ただ、民主主義の価値観を共有する台湾への圧力に日本は無関心であってはならない。中国に自制的に振る舞うよう働きかけるべきである。

 エルサルバドルの場合、台湾はラ・ウニオン港の開発に多額の資金援助を要請されていた。だが台湾は同国の債務状況を勘案し、要請を断ったという。

 これに対して中国の王毅国務委員兼外相は、同国との国交樹立について「いかなる(経済的な)前提もない」と述べた。だが、果たしてそうなのか。

 習近平政権の広域経済圏「一帯一路」構想の対象国の中には、中国の援助でインフラ整備を進めた結果、過大な債務負担を強いられる例が後を絶たない。採算を度外視した援助をテコに勢力圏を拡大する。同様の手法で台湾との断交を促すのなら問題が大きい。

 とりわけ最近の中国の強引な外交は目に余る。

 台中で来年開催する予定だった東アジアユース競技大会が、北京での臨時理事会で取り消された背景にも中国の意向がちらつく。外国航空会社に台湾の名称表記変更を求めた問題もあった。

 今回の断交は、蔡総統が中南米歴訪から戻った直後に起きた。蔡氏のメンツを潰す狙いがあったのは明白ではないか。

 台湾に閉塞(へいそく)感を与えて政権与党の民主進歩党に打撃を与えるのが目的だ。11月に実施される台湾の統一地方選への揺さぶりもあろう。だが、露骨な圧力で、台湾の民心が中国になびくわけではあるまい。むしろ対中感情を悪化させる現実を認識すべきである。

【私の論評】これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政府が判断すれば、牽制・制裁の対象になる(゚д゚)!

トランプ政権は8日、自然災害の被災者を対象とする「一時保護資格(TPS)」制度に基づき少なくとも2001年以降米国に在留しているエルサルバドル人約20万人について、出国しなければ来年から強制送還の対象になり得ると発表しました。

ちなみに、現地時間2001年1月13日11時33分頃、中米のエルサルバドル共和国沖約50kmの太平洋を震源とする、マグニチュード7.6の地震が発生しました。死者944人、負傷者5,000人以上、液状化や土砂災害などで約108,000棟に達する家屋倒壊の被害が出ました。

2001年のエルサルバドル大地震 首都サンサルバドル西部で発生した大規模な地すべり

首都サンサルバドル西部で大規模な地すべりが発生し、ここだけで500人以上が死亡しました。また、中米を縦断する主要道路の一つであるパンアメリカンハイウェイも、斜面崩壊により寸断されました。

私は、この措置は、台湾と国交を絶ち中国との国交を樹立しようとするエルサルバドルに対する牽制であるとみています。

エルサルバドルは南米の中でも一番面積が小さく一番人口密度が多い国です。マヤの遺跡を始め見所はあり、観光客も多い中、エルサルバドルの治安はあまり良くありません。約12年間続いた内戦終結後、内戦中に流出した武器が国内に大量に存在、経済状況の停滞、犯罪集団マラスやバンダが多く大都市での犯罪が増えています。

政権当局者2人が匿名を条件に記者団に語ったところによると、01年にエルサルバドルで起きた大地震の後に米国に避難し生活と就労を認められているエルサルバドル人は19年9月9日までに出国しない場合、強制送還の対象になり得るといいます。

議会調査局によると、TPSで米国在留が認められている外国人は約32万人で、エルサルバドル人は大部分を占めています。

トランプ米大統領の決定は、一部の中米人に1990年代後半以降、TPSを適用・再認可してきた以前の米政府の立場とは距離を置くものです。1人の高官によると、トランプ政権は19年まで発効日を遅らせることにより、議会がTPS対象者への恒久的な法的解決策を策定する時間を確保するといいます。

エルサルバドルの人口は、2016年時点で、634.5万 と推計されています。TPSにもとづく在米エルサルバドル人は20万人に達するといわていますが、これは、現在の全人口の3%くらいをしめるほどの数です。

この人数が、短期間に大量にエルサルバドルに戻ってくればとんでもないことになりそうです。そもそも、地震の被害を回避するために米国に渡った人たちですから、経済的に恵まれた人々とはいえず、難民とはいいませんが、感覚としては大勢の難民が押し寄せてくるようなものかもしれません。これは、地震被害から回復しつつあるエルサルバドルにとっては大きな負担になるのは間違いありません。

米国トランプ政権としては、このような牽制をしておき、もしエルサルバドルが過度に中国に接近したり、中国に利するような行動をした場合、TPSで在留しているエルサルバドル人の本国への強制送還に踏み切る腹づもりであると考えられます。このような弱小国にまで、牽制の対象とするトランプ政権です。その決意の強さがうかがわれます。

米国にとって、イスラム国(IS)を壊滅した後、一番の敵は中国となったのです。一方、中国が『軍=外向型』に方針転換したのは、堂々と『帝国主義的、膨張主義的、軍国主義的な政策を取る』と宣言したに等しいです。

事実上崩壊したIS

米国は、中国を「脅威の本丸」とみなし、南シナ海での「航行の自由」作戦を継続しています。6月には台湾の大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)の新事務所をオープンし、開所式典には国務省代表も列席しました。さらに、事務所警護のため、国務省は海兵隊に要員派遣を要請しました。

米国としては、中国の軍事力を押さえ込むため、軍事力の基礎となる経済力を叩くために対中国貿易戦争を仕掛けたのです。これは『中国包囲網』強化の一環で、当然のことながら、『航行の自由』作戦も『台湾重視』政策も、エルサルバドルへの牽制も絡んでいるのです。

今後、貿易戦争が本格化し、米中対立が激化すれば、軍事衝突の可能性も否定できないです。

トランプ大統領の貿易アドバイザーであるピーター・ナバロ通商製造政策局長は著書『米中もし戦わば-戦争の地政学』(文芸春秋)の中で、以下のように記しています。
世界史を概観すると、一五〇〇年以降、中国のような新興勢力がアメリカのような既存の大国に対峙した一五例のうち一一例において(すなわち、七〇%以上の確率で)戦争が起きている。
中国が南シナ海で、米国の船を止めたり、航行の自由作戦を妨害、米航空機の飛行を邪魔するようなことがあれば、軍事衝突に発展する可能性は十分あります。習近平は米国が抵抗しなければ、南シナ海全体を領海化するつもりです。

前国務長官だったレックス・ティラーソン氏は、南シナ海で中国の人工島を海上封鎖することもあり得ると示唆していました。

この海上封鎖案は、ティラーソン氏が2017年1月11日に上院外交委員会で開かれた自身の指名承認に関する公聴会で言及したものです。トランプ氏の発言や米軍タカ派の意見よりもはるかに強硬なものでした。

ティラーソン氏はこの公聴会で、中国の人工島の建設・軍事化は「2014年のロシアのクリミア併合と似ている」と指摘し、米国の反応が鈍かったため「中国にごり押しさせてしまった」と、オバマ政権の対応を批判しました。

同氏はさらに、米国が対応を強めることを支持するかとの質問に対し、「我々はまず人工島建設を停止するよう求め、さらに中国の人工島へのアクセスを認めない措置をとるとの明確なシグナルを送らざるを得なくなろう」と述べました。

このティラーソン発言は、あまりに時期尚早だったのだと思います。しかし、長期的に見た場合、南シナ海で米中軍事衝突は避けられないかもしれません。ただし、現状のまま、米国が中国と軍事衝突をしてしまえば、米国も多大なコストと犠牲を強いられることになるのは明らかですから、やはり当初は中国の経済を弱体化させることを中心に当面対中国戦略を進めることになるでしょう。

中国を経済的にかなり弱体化できれば、そもそも中国自身が、海洋進出をあきらめるかもしれません。あきらめなかったとしても、経済がそれを許さなくなります。

経済が弱体化しても、中国が海洋進出を諦めない場合は、米軍による中国の人工島の海上封鎖ということは大いに有り得ることです。その時には、無論米軍と衝突することもできず、たとえ衝突してもすぐに打ち負かされて中国は自ら人工島を放棄せざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。

米トランプ政権は、ここまで見据えた上で、現在中国に対して貿易戦争を挑んでいるのです。

中国を経済的に弱体化するためには何でもありのトランプ政権

このような状況のなか、これからの米国の行動は一見全く関係ないように見えても、エルサルバドルの事例のように、対中国戦略に何らかの関係があるとみるべきです。また、これから米国は、国際緊急経済権限法(IEEPA)の発動をはじめとして、中国や中国を利する国や企業個人に対する制裁をどんどん強めていくことになると考えられます。

これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政権に判断されれば、エルサルバドルのような弱小国ですら、牽制・制裁の対象になり得るということです。

そのことを意識しているマスコミや財界人はまだ少ないようで、未だ無意味な親中・媚中派から転身できていない人が多いようです。

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