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2019年11月2日土曜日

【日本の解き方】「デジタル人民元」の発行はドルの基軸通貨体制に脅威 FBと米政府は手を組むか―【私の論評】基軸通貨にはなり得ないデジタル人民元の末路(゚д゚)!


米ドル(上)と人民元(下)

中国の政府系シンクタンク、中国国際経済交流センターの黄奇帆副理事長が講演で、「中国人民銀行が、世界で初めてデジタル通貨を発行する中央銀行になる可能性がある」と発言したことが話題になっている。

 技術的な観点では、デジタル通貨の技術はできているので、中央銀行がその発行者になることは可能だ。単純にいえば、多くの種類があるデジタル通貨も基本は同じであり、どれかをコピーすれば新たなデジタル通貨を作ることができる。

 政府や中央銀行がデジタル通貨の発行主体になれば、民間主体のデジタル通貨が抱える問題点の多くは解消されるとともに、駆逐される可能性も高い。

 民間企業の米フェイスブックが発行を目指しているデジタル通貨「リブラ」は、米国議会で苦労している。米政府や中央銀行はリブラの発行が及ぼす影響を警戒しており、リブラの規制法ができようとしている。そこで、フェイスブックが持ち出してきたのが、中国の脅威だ。

 これは、的外れな論点ではない。リブラは複数の法定通貨で構成されたバスケットに裏付けられるが、その中に中国の人民元は含まれていない。しかし、中国人民銀行が、リブラをコピーして、各国の法定通貨に人民元を加えたデジタル通貨を作るのは難しくない。この場合、このデジタル人民元は中国がコントロールするブロックチェーン上で稼働することとなるに違いない。

 日本や欧米などの民主主義国では、ブロックチェーンは分散化され政府が管理することはあり得ないが、同じ技術でも中国では全て政府が管理することとなるだろう。

 もしデジタル人民元ができれば、米国による金融制裁を回避することも実際に可能になる。現在はドルが国際金融で基軸通貨として支配的なので、米政府が米国の銀行を抑えれば、世界中でドル決済を事実上行えなくなるが、デジタル人民元でドル支配を乗り越えられる可能性がある。

 もちろん米国もデジタル人民元にドルの有用性が吸収され、基軸通貨の立場が損なわれるおそれがあることを承知している。

 そこで、フェイスブックその他の通貨の裏付けがある安定的なデジタル通貨を規制し、民間企業であっても米政府の意のままに操ろうとしているのだろう。フェイスブックがマイクロソフトのように物分かりがよければ、規制に服する代わりに利益を保証してもらえるというわけだ。

 もっとも、フェイスブックは、規制当局の支持が得られるまではリブラの発行を遅らせる姿勢を改めて示しており、フェイスブックと米国政府は条件闘争しているようにも見える。

 結局、国際基軸通貨としてのドルの立場を守るためにも、フェイスブックと米政府が最終的には協力し、デジタル人民元の台頭を許さないと、筆者はみている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】基軸通貨にはなり得ないデジタル人民元の末路(゚д゚)!

アップルのティム・クックCEOが暗号通貨(仮想通貨)発行につき、否定的な見解を述べたことが報じられています。

今年6月、Facebookは暗号通貨プラットフォーム「Libra」を正式に発表。ブロックチェーンの管理団体「Libra Association」に参加するMastercardなどの共同創立者とともに、Libraを推進するとアナウンスしていました。

フランスの新聞Les Echosはインタビューの中で、アップルがこの動きに追随するのかと質問。それに対してクック氏は「通貨は国家の管理下に置かれるべきだと思います。民間企業グループが競合する通貨を創り出すアイディアには賛成できません」「民間企業は、このような形で権力を得ようとすべきではありません」と回答しています。

これに先立ってアップルの幹部は「暗号通貨を注視している」との趣旨を述べており、独自の暗号通貨を模索しているとの見方もありましたが、否定されたかたちです。

もっとも、クック氏の言葉は額面通りに受け取れないかもしれません。1つには、同氏がFacebookのザッカーバーグ氏とプライバシーの扱い等を巡って確執があり、当てつけを返した可能性も考えられるわけです。

もう1つは、Libraを取り巻く環境が危うさを増していること。米上院は消費者プライバシーの保護を懸念して公聴会を開催し、米政府もLibraが資金洗浄などに使われる恐れについて「非常に深刻な懸念」を表明、Libra担当者はスイスで26カ国の中央銀行幹部から質問攻めに遭うことに。そうした情勢を鑑みたのか、PayPalも撤退を表明していました。

さらに言えばクック氏は「事業を展開している現地の法律に従う」、つまり政府と対立しない方針を一貫しています。米国政府やEU諸国も大手ハイテク企業による暗号通貨に懸念を抱いているなかで、参入は問題外かもしれません。

アップルCEOティム・クック氏

ただし、仮にリブラ導入が阻止されても、他の主体が同様の仕組みを導入する可能性は残ります。

容易に想像できるのは、新興国で最初に導入される可能性です。金融システムが未発達で銀行取引にアクセスできない人が多い国々にとっては、既存の金融システムからの移行コストが相対的に小さいこともあり、スマートフォンと通信網だけで金融システムを高度化し得る可能性は魅力的でしょう。

この記事の冒頭に記事にもでてきた、リブラはビットコインと同様、ブロックチェーンの技術を使って開発される仮想通貨ですが、ビットコインとの最大の違いは、ドルやユーロなど既存通貨によって価値が担保される点である。要する、リブラはいつでもドルやユーロなどの既存通貨と交換できるということです。

リブラはリブラ協会と呼ばれるコンソーシアムが通貨を管理する予定ですが、リブラ協会はドルやユーロといった既存の法定通貨を保有し、この保有資産を裏付けにリブラを発行する仕組みとなっています。リブラと既存通貨の交換レートは変動するものの、各国通貨のバスケットになっているので、価格変動は穏やかなものになります。

IMF(国際通貨基金)には、主要通貨をバスケットにしたSDR(特別引出権)という、事実上の国際通貨がありますが、リブラはこれに近い仕組みと考えてよいです。主要通貨をベースに通貨を発行するという点では、保有するドル資産などを裏付けに、政府ではなく民間企業が通貨を発行している香港ドルとも似ています。
日本では政府が発行しないと通貨ではないといった議論をよく耳にしますが、それは単なる思い込みです。経済学的に見た場合、通貨は、それに価値があると多くの人が認識すれば、通貨として流通する性質を持っています。
政府の方が民間よりも信用度が高いので、法定通貨の方が流通しやすいのは事実ですが、民間が発行主体であっても、通貨の要件を満たさないわけではありません。
中国政府はリブラの計画をきっかけに、デジタル通貨の発行を進める決断を行ったようですが、その理由は、リブラが持つ潜在力が想像以上だったからです。

リブラについては、各国から様々な懸念が寄せられており、マネーロンダリング対策などで協議を進めていくとしています。しかし、リブラにはマネロンに関する懸念があるという各国通貨当局の説明は、額面通りには受け取らない方がよいでしょう。

もちろん、匿名性の高い仮想通貨が世界に流通すれば、犯罪資金などの温床になる可能性はありますが、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できます。

現金ほど匿名性が高く、犯罪やテロに利用しやすい決済手段はほかにないです。それにもかかわらず、現金が主な決済手段として全世界で使われている現状を考えますと、仮想通貨が普及するとマネロン対策ができなくなるというのは杞憂に過ぎません。

各国の通貨当局が本当に恐れているのは、マネロンなどではなく、リブラのような仮想通貨が普及することで、中央銀行が持つ巨大な権力が脅かされることです。

現代の金融システムは、中央銀行が通貨を一元的に管理し、傘下にある民間銀行を通じてマネーの流通をコントロールすることで成り立っています。

中央銀行はその気になれば、その国の経済を自由自在に操ることができるので、この仕組みは、中央銀行を頂点とした銀行による一種の産業支配システムと言い換えることができるかもしれません。

ところが、ここでリブラのような仮想通貨が広く流通する事態になると、状況が一変します。

中央銀行による統制が効かないマネーの比率が増えれば、金融政策の効果は半減し、中央銀行が持つ権力も大きく削がれることになります。金融機関にも十分な情報が入らなくなり、一般企業に対する支配力も大きく低下してしまうでしょう。

米国は常に巨額の貿易赤字を垂れ流していますが、それは多額のドルを世界にバラ撒いていることと同じです。つまり米国は貿易赤字を通じて全世界にドル経済圏を構築しているわけなのですが、世界経済におけるドル覇権の影響力はすさまじく、各国企業はドルなしでは経済活動を継続できません。

近年、グローバル化が進み、海外にも気軽に送金できるようになりましたが、銀行間の送金ネットワークも実は米国がドルベースで構築したものであり、ドル覇権と密接に関係しています。海外送金が簡単になったのはドルが普及したことが要因であって、多国籍という意味でのグローバル化が進んだ結果ではありません。

ドル覇権が続く限り、米国には金融機関を通じて世界のあらゆる情報が集まってきますが、インテリジェンス(諜報)の世界において、これほど有益な仕組みはほかにないでしょう。

米国のような通貨覇権国はお金の動きをチェックするだけで、全世界の情勢をほぼリアルタイムに把握できてしまうのです。そもそも、予算は国家意思といわれるように、すべての国家の政策には何らかの予算がついて初めて実行できるからです。

そうして、予算の実行にはすべてお金が絡むわけで、お金の流れをつかんでいれば、予算の実行過程まで把握できるのです。無論予算の実行には、ドルだけではなく自国通貨も使用するので、全部を把握できるとはいえませんが、それにしても全ての国が貿易をしており、その決済にはドルを使うことから、貿易に関しては把握できるわけで、その内容から自ずと、国内のこともかなりのところまで把握できるのです。

近年、このドル覇権に対して公然と挑戦状を叩き付けたのが中国です。中国は人民元をベースにした独自の銀行送金ネットワークの構築に乗り出しており、ドル覇権を周辺から突き崩そうとしています。ただし、これはいまのところ、成功しそうにはありません。

このような現実を考えると、全世界で27億人の利用者を持つフェイスブックが、本格的な仮想通貨の計画を打ち出したことのインパクトが、米中の通貨当局にとっていかに大きいことなのかお分かりいただけると思います。

これまで規模の小さい途上国は、ドル覇権の下にぶらさがる形でしか通貨システムを構築できませんでした。内戦が続き国土が荒廃したカンボジアでは、国連による暫定統治で経済を復活させましたが、金融システムはドルと現地通貨の二本立てとなっています。現在、カンボジアはめざましい経済発展を遂げていますが、これはカンボジアがドル経済圏であることと無縁ではありません。

中国はカンボジアを中国経済圏に引き入れようと、莫大な資金を投下していますが、企業における決済や預金、投資がドルになっている以上、中国もそのルールに従わざるを得ないです。通貨覇権を握っていることは、何兆円もの経済援助をはるかに上回る効果があるのです。

もしリブラが世界に普及した場合、自国通貨とリブラの二本立てで金融システムを構築する新興国が出てきても不思議ではないです。こうした新興国は、リブラを交渉材料に、ドル覇権を狙う米国と人民元覇権を狙う中国を上手くてんびんにかけ、双方から好条件を引き出そうとするでしょう。

つまりリブラという仮想通貨は、これまで構築してきたドル覇権を脅かす存在であり、そのドル覇権に対して挑戦状を叩きつけている中国にとっても、それは同じことです。

中国は発行を計画している人民元のデジタル通貨を用いて、国際的な人民元の普及を画策する可能性があります。表面上はリブラとは対立関係にありますが、この世界は「蛇の道は蛇」であり、リブラとデジタル人民元が共存することも十分にあり得ますし、米国政府が水面下でフェイスブックとの交渉を進めている可能性も否定できないです。

さらに言えば、ユーロ陣営や英国の動きにも注目する必要があります。

ユーロ圏各国は、表面的には仮想通貨規制で各国と足並みを揃えるというスタンスですが、ユーロ圏内では、ビットコインなどの仮想通貨を自由に流通させています(英国も同様)。欧州各国が、仮想通貨に対して警戒感を示しつつも、ドル経済圏に対する牽制球としての役割を仮想通貨に期待している面があるのは明らかです。

とはいいながら、先に述べたように、リブラはいつでもドルやユーロなどの既存通貨と交換できる通貨です。特に、いつでもドルと交換できるというのが強みです。

対して、中国の人民銀行が発行する仮想通貨はおそらく、ドルといつでも交換できるようにしたいのは山々でしょうが、それは現状では不可能に近いです。

リーマンショック後、人民元発行残高の100%相当のドル資産を人民銀行は保有していました。ところが、バブル崩壊不安を背景に資本の流出が激しくなりました。ドル資産は大きく減り、海外からドルを借りてようやく3兆ドル台の外貨準備を維持するありさまです。それでも人民元発行残高ドル資産比は6割まで落ちたのです。


これでは、中国が仮想通貨を発行したとしても、当然のことながら、ドルで担保することなど全くできません。

さらには、今年は中国の国内債が記録的なペースでデフォルト(債務不履行)に陥っていますが、来年はオフショア市場の番かもしれないです。現時点で「ストレスト」に分類される企業が発行したドル建て債の大量償還が近づいているためです。

ブルームバーグの集計データによると、利回りが現在15%以上のオフショア債86億ドル(約9260億円)相当が2020年に償還を迎える。言い換えると、ストレスト企業のドル建て債発行残高の約40%が来年償還となるからです。

ルームバーグの集計データによると、利回りが現在15%以上のオフショア債86億ドル(約9260億円)相当が2020年に償還を迎える。言い換えると、ストレスト企業のドル建て債発行残高の約40%が来年償還となる。

これらのことを考えると、現状ではドル建での信用がない中国の仮想通貨は仮に発行したとしても、リブラほどは普及しないことが十分考えられます。

仮想通貨自体には、現在ではあまり信用が高くはありません。それは、当然といば当然です。これは、自分におきかえて考えてみるとわかると思います。自分の給料が全部仮想通貨で支払われたとしたらどうするでしょうか。

たいていの人は仮想通貨は便利とは思うでしょうが、自分の給料が全部仮想通貨で支払われたとしたら、やはり不安を感じると思います。やはり、少なくとも一部、もしくはかなりの部分を既存の通貨に変えて、銀行に預金したいと思うのではないでしょうか。

現在の現金だって、昔は金や、銀に変換できる時代があり、それぞれ金本位制とか銀本位制と呼ばれていました。ただし、政府の発行する貨幣が長い間使われてきた実績があるので、今はなくなりました。

仮想通貨も同じことです。最初はこれで貯蓄することなどに不安を感じる人は多いでしょう。長く使われるようになって、しばらくして多くの人が安心するようになれば、ドルの保証などいらなくなるでしょうが、それまでには長くかかると認識すべきです。

現状では、人民元建てだけの信用だけでは、使い手にとってはかなり不安です。であれば、なかなか普及しないでしょう。

これから、先10年くらい中国がかつての中国のように、毎年10%程度の成長を続けるとの信頼が市場から得られれば、中国発の仮想通貨も普及する可能性はありますが、それはあり得ません。


それでも、金融システムが未発達で銀行取引にアクセスできない人が多い国々にとっては、中国の仮想通貨を使う意味は大きいかもしれません。スマートフォンと通信網だけで金融システムを高度化し得る可能性は魅力的でしょう。ただし、このような国々の多くが、仮想通貨を使うようになって、経済発展したとして、どのくらいの規模になるかという問題があります。

さらには、デジタル人民元が普及していくと、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できることから、中国国内では困る人が大勢出てくる可能性が大です。

無論中国の暗黒社会の構成員を容易に摘発しやすくなるというメリットもありますが、役人の不正や、政府要人の不正なども把握しやすくなります。中国共産党の幹部らは、現状ではメリットばかり考えているのでしょうが、彼らにとってデメリットも大きいことをいずれ痛感するようになるでしょう。

そもそも、ブロックチェーンは、常にみんなにみはられている台帳のようなものです。中国政府だけが、見張るブロックチェーンによる、仮想通貨は本当に仮想通貨といえるのかという問題もあります。

以上のことを考えると、現状では中国の仮想通貨はそれほど危険な存在とはとても思えません。ただし、将来の危険な芽を潰すという意味では、高橋洋一氏の主張するように、やはり国際基軸通貨としてのドルの立場を守るためにも、フェイスブックと米政府が最終的には協力し、デジタル人民元の台頭を防ぐことになると思います。

フェイスブックCEOのザッカーバーグ氏

さらに、リブラはドルトの交換ができるということで、発行には自ずと限界があるので、FRBの権力を脅かすまでにはならないでしょうし、フェイスブックは米国による規制等を受け入れるでしょうから、リブラがドルにとって変わるような事態にはなることはないでしょう。

さらに、ザッカーバーグ氏も、ドルに変わる通貨などという大それたことは考えていないでしょう。そんなことより、リブラを用いて、フェイスブックのユーザーにさらなるベネフィトをどのように提供していくかということに関心があることでしょう。

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2018年10月11日木曜日

中国当局者を「企業機密」スパイで逮捕 米政府―【私の論評】媚中・親中などはトレンドどころか、今や米国の制裁対象になり得る時代遅れの馬鹿のすること(゚д゚)!

中国当局者を「企業機密」スパイで逮捕 米政府

Xu Yanjun(シュイ・イェンジュン)被告 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

    米司法省は10日、GEアビエーションなど米国の複数の航空・宇宙関連企業から機密情報を盗もうとしたとして、中国の情報機関である国家安全省の当局者を逮捕、起訴したと発表した。デマーズ司法次官補は声明で「米国の犠牲で中国を発展させる経済政策の一部をなすものだ。知力の成果を盗むことは容認しない」とした。

 起訴されたのは中国東部・江蘇省国家安全庁幹部、シュイ・イェンジュン被告。4月1日にベルギーで逮捕され、今月9日に米国に身柄が引き渡された。被告は少なくとも2013年12月から米国内外の航空・宇宙関連企業で働く専門家から情報を得ようとして、大学での講演を口実に中国への旅行に招待し、旅費などを負担していた。

 被告は航空機のジェット・エンジン関連技術の取得を狙っていたという。米メディアによると、中国情報当局者の身柄が米国で訴追を受けるために移送されたのは初めて。

 ペンス副大統領は4日の対中政策演説で「中国はあらゆる手段を使って米国の知的財産を取得するよう官僚や企業に命じている」と非難。米政府として中国による知的財産の窃取に厳しい姿勢で臨んでいる。

【私の論評】媚中・親中などはトレンドどころか、今や米国の制裁対象になり得る時代遅れの馬鹿のすること(゚д゚)!

米国に対する不正行為の摘発は急速に進んでいるようです。最近は、このほかにも、米ブルームバーグはこのほど、中国の情報機関が、米コンピューター・サーバー製造大手スーパーマイクロ・コンピューター(以下、スーパーマイクロ)の中国下請け企業に対して、サーバー向けマザーボードにハッキングを可能にするマイクロチップを埋め込むよう指示したと報道しています。

これを受けて、米上院議員2人がスーパーマイクロのチャールズ・リアン最高経営責任者(CEO)宛てに、さらなる情報提供を求める書簡を出しましたた。

ブルームバーグは9日、スーパーマイクロが米大手通信会社のネットワークに提供したハードウェアから悪質なマイクロチップが見つかり、8月に除去されたと報じました。

スーパーマイクロ MicroATX マイクロATX マザーボード C7Z97-M


通信会社から調査を委託されたセキュリティー専門家はブルームバーグに対して関連文書や証拠、分析などを提示し、チップの発見を明らかにしました。今回の発見は、中国当局が「米国向けに生産されたテクノロジー製品に不正に手を加えた」ことを証明した「新たな証拠」だと同専門家は指摘しました。通信会社の社名は明かされていません。

ブルームバーグ4日の報道によると、米政府は、中国軍の工作員によるマザーボード製造段階での悪質チップの埋め込みを突き止めたと伝えました。米政府と企業の情報やデータの取得が狙いだといいます。被害企業は、アップルやアマゾンなど約30社です。

スーパーマイクロ、アップルとアマゾンはブルームバーグの報道を否定しました。

いっぽう、米上院のルビオ議員(共和党、フロリダ州選出)とブルーメンソル議員(民主党、コネティカット州選出)は9日、スーパーマイクロのリアンCEO宛ての書簡で、同社は「下請け企業に対して調査を行ったか」「ハードウェア部品改ざんの証拠が見つかったのか」などの質問リストに今月17日までに回答するよう求めました。

米上院のルビオ議員(右)とブルーメンソル議員(左)

両議員は書簡で、「国会議員として、国家安全保障の面においてわれわれが直面する潜在的な脅威に驚きを隠せない」とし、スーパーマイクロは「顧客と法執行当局、議会に完全な回答と緊急調査を提供しなければならない」と強調しました。

今後米国による中国の不正行為摘発はさら苛烈になってくことでしょう。さて、この流れは日本とも無関係ではありません。それを理解するために、過去の日本と米中の関係にまで遡ります。

米国と中国は、80年代から日本を仮想敵国とした潜在的同盟国でした。その頃の日本経済は米国を追い越さんばかりの勢いが有り、それを驚異に感じた米国はプラザ合意で円高にすることで日本の勢いを止めることに成功しました。円高と中国の人民元安は日本にダブルパンチをもたらしました。

当時米国は、中国の人民元切り下げを認めました。そのため中国は、1ドル=1人民元だった為替レートを、自分勝手に1ドル=8人民元台まで大幅に切下げていきました。そうして日本円は240円から79円まで一気に円高に持って行かれました。これで中国の労働単価は日本の30分の一にまで下がったのです。

これでは、日本の輸出産業が成り立つはずがなく、日本国内にあった製造工場は中国に引っ越していってしまいました。さらに、今世紀に入ってからは、日銀が金融引締めを強烈に実行したため、日本はデフレ・超円高とてなりこの流れを加速しました。

そうして、米国自身も中国に対して資本と技術を提供して、世界中に中国製品が溢れるようになりました。そして中国は日本を追い越して世界第二位の経済大国となり軍事大国となりました。(ただし、中国の経済などはデタラメであるため、実際はドイツ以下という説もある)

日本は、米国が目論んだ通りに停滞を余儀なくされましたが、米国は同盟国と敵対し、潜在的敵国の中国とは経済同盟を組んで日本封じ込めに成功しました。このあたりは、当時アメリカで出版された「日本封じ込め―強い日本vs.巻き返すアメリカ」というジェームス・ファローズの書籍を読んでいただければ、詳細をご理解いただけるものと思います。

90年代から始まったジャパンバッシングは、オバマ大統領の時代まで続きました。そして米国は中国とのG2戦略を打ち出して、アメリカと中国の二カ国で世界をリードしようとオバマ大統領は演説するまでに至ったのです。



アメリカと中国による日本挟撃戦略は、日本に鳩山政権を生みましたが、鳩山首相は戦後初めて米軍に出て行けと言った首相になりました。米国のG2戦略は日本の離反を招きましたが、鳩山首相はあっという間に失脚してしまいました。民主党政権は米中等距離外交を打ち出しましたが、米国はこの鳩山民主党政権に相当な危機感を持ったに違いありません。

これは中国による米政界に対する工作やロビー活動の成果と考える他はないことが明らかになりつつあります。米国には親中派人脈がありました。例えばクリントン財団に中国人が多額の寄付を行っていたことが明るみになり大問題となりました。このように、中国によるアメリカ政界買収工作は成功しました。

米国は民主国家であり、独裁国家からの買収に弱く、フランクリン・ルーズベルト政権もソ連のスパイ(コミンテルン)に相当深いところまで侵入され、工作をされ、日本との戦争を強行するに至りました。このあたりは、トランプ氏を含む米国の保守層の間ではかなり理解されるようになり、歴史の見方が従来とは変わってきています。

第5回コミンテルン(共産主義インターナショナル)のプラカード。
1924年6月17日-7月8日 モスクワで行われた。

米国はソ連に買収され中国に買収されて日本は酷い目にあってきたのです。中国ロシアにとっては日本は目の上のたんこぶであり、日本を叩くには米国を利用すれば良いと考えてきたのでしょう。韓国も同じです。

そのような視点で見るとトランプ大統領の出現は画期的ですし、中国はトランプが大統領になるとは思ってもいなかったでしょうし、トランプ大統領は中国から金をもらっていないのでしょう。

そのため、中国を叩ける初めての大統領が米国に出現したのです。トランプ大統領は政権内から親中派を一掃してボルトンなどの対中強硬派を登用しました。

そうして、このブログでも度々掲載しているように、最近の米国の中国叩きはトランプ主導というよりは、米国議会主導となり、しかも超党派の動きになっています。

米上院のルビオ議員(共和党、フロリダ州選出)とブルーメンソル議員(民主党、コネティカット州選出)は9日、スーパーマイクロに対する質問などもそれを象徴するものです。

この動きも中国は予想していなかったでしょう。中国としてはトランプ政権が短期で終われば、買収などを強化すれば、米国はまた従来の親中的になると考えていたようですが、この目論見は外れたようです。

おそらく、トランプ政権が長期になろうが、なるまいが米議会の対中政策は中国自体が変わらない限り厳しいものとなるでしょう。

そうして、先にも述べたように、米国の中国に対する不正行為の摘発はさらに苛烈さをましていくでしょう。

これは、日本にとっては非常に良いことです。ただし、一つ懸念があります。それは、日本では安倍政権は中国に対しては厳しい体制で臨んできたのですが、日本の国会議員の中には、相変わらず親中派・媚中派が存在しているということです。日本のマスコミもほとんどが親中派・媚中派です。

それは、野党は無論のこと与党自民党の中にも存在しています。彼らは、米国議会本気度を未だ理解していないようです。

そうして、最近日中関係が改善の兆しを見せています。その先駆けとなった出来事は、5月に行われた中国の李克強(リー・コーチアン)首相による訪日と日中首脳会談です。

これによって、両国政府は「第三国での日中企業による協力の可能性がある分野」について検討することで合意しました。それを受け、9月末には官民合同「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」が開催されました。

北京で開催された「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」

10月には安倍晋三首相の訪中も検討されています。「これで国内の反中勢力を押し切って、中国の経済圏構想『一帯一路』関係のインフラ案件をどんどん受注できる」という期待が日本で膨らんでいるようです。

しかし、実際に第三国での日中企業による協力などという絵空事はすぐに中国によって裏切られることでしょう。

さらにおそれるべきは、このようなことを実行すれば、中国に利することになります。そうなると、日本や日本企業は中国を利しているということで、米国の対中国戦略に離反することになります。

そうなると、日本企業や日本自体が、米国の制裁の対象となりかねないです。日中友好でぬか喜びしている、政治家や財界はこの現実を認識すべきです。

米国よる中国叩きは、現在では当の中国と中国による米国内の工作に焦点があてられています。しかし、それが一巡すると今度は海外に目が向けられることになるでしょう。

そんなときに、日本が日中友好で、中国に利するようなことをしていれば、米国はどのように見るでしょうか。さらに、日本ではスパイ防止法もなく、中国の工作員は日本国内では、日本の技術を盗み放題です。

米国が米国内で、中国の技術窃盗を取締り、米国内からは不正な窃盗を阻止したにもかかわらず、日本からは、米国ならびに日本の技術が中国により盗み放題状態になっていたとすれば、米国のドラゴンスレイヤー(対中国強行派)の日本や日本企業に対する見方は厳しいものになり、最初は批判・非難をするでしょうが、その後は米国の国益を守り、国損を防ぐために、日本に対しても厳しい制裁を課すということは十分ありえます。

もう、媚中・親中などはトレンドどころか、米国の制裁対象になり得る時代遅れの馬鹿のすることであることを認識すべきです。中国に味方をしても、そもそも元々中国は日本に益をもたらす相手ではなく、損をもたらすだすだけであり、それにさらに米国の制裁対象にでもなれば、とんでもないことになるだけであることを認識すべきです。

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2018年8月23日木曜日

【主張】台湾に断交圧力 地域の安定損なう動きだ―【私の論評】これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政府が判断すれば、牽制・制裁の対象になる(゚д゚)!

【主張】台湾に断交圧力 地域の安定損なう動きだ

中米全図 地図はブログ管理人挿入 以下同じ

 中国が、中米エルサルバドルとの国交を樹立した。これに伴いエルサルバドルは、外交関係のあった台湾と断交した。

 台湾の孤立化を狙う中国が仕掛けた、露骨な圧力外交の結果だ。

 台湾を外交承認する国は17カ国と過去最少を更新した。蔡英文政権下での断交は5カ国にのぼる。今年はすでに3カ国という異常なペースだ。世界2位の経済力を外交カードに台湾の外交関係を奪う戦術といえる。

 蔡総統が談話で「両岸(中台)の平和への脅威だけでなく、世界的な不安定を生み出している」と反発したのは当然である。地域の安定を損ないかねない中国の行動を強く懸念する。

 日本と台湾に正式な外交関係はない。ただ、民主主義の価値観を共有する台湾への圧力に日本は無関心であってはならない。中国に自制的に振る舞うよう働きかけるべきである。

 エルサルバドルの場合、台湾はラ・ウニオン港の開発に多額の資金援助を要請されていた。だが台湾は同国の債務状況を勘案し、要請を断ったという。

 これに対して中国の王毅国務委員兼外相は、同国との国交樹立について「いかなる(経済的な)前提もない」と述べた。だが、果たしてそうなのか。

 習近平政権の広域経済圏「一帯一路」構想の対象国の中には、中国の援助でインフラ整備を進めた結果、過大な債務負担を強いられる例が後を絶たない。採算を度外視した援助をテコに勢力圏を拡大する。同様の手法で台湾との断交を促すのなら問題が大きい。

 とりわけ最近の中国の強引な外交は目に余る。

 台中で来年開催する予定だった東アジアユース競技大会が、北京での臨時理事会で取り消された背景にも中国の意向がちらつく。外国航空会社に台湾の名称表記変更を求めた問題もあった。

 今回の断交は、蔡総統が中南米歴訪から戻った直後に起きた。蔡氏のメンツを潰す狙いがあったのは明白ではないか。

 台湾に閉塞(へいそく)感を与えて政権与党の民主進歩党に打撃を与えるのが目的だ。11月に実施される台湾の統一地方選への揺さぶりもあろう。だが、露骨な圧力で、台湾の民心が中国になびくわけではあるまい。むしろ対中感情を悪化させる現実を認識すべきである。

【私の論評】これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政府が判断すれば、牽制・制裁の対象になる(゚д゚)!

トランプ政権は8日、自然災害の被災者を対象とする「一時保護資格(TPS)」制度に基づき少なくとも2001年以降米国に在留しているエルサルバドル人約20万人について、出国しなければ来年から強制送還の対象になり得ると発表しました。

ちなみに、現地時間2001年1月13日11時33分頃、中米のエルサルバドル共和国沖約50kmの太平洋を震源とする、マグニチュード7.6の地震が発生しました。死者944人、負傷者5,000人以上、液状化や土砂災害などで約108,000棟に達する家屋倒壊の被害が出ました。

2001年のエルサルバドル大地震 首都サンサルバドル西部で発生した大規模な地すべり

首都サンサルバドル西部で大規模な地すべりが発生し、ここだけで500人以上が死亡しました。また、中米を縦断する主要道路の一つであるパンアメリカンハイウェイも、斜面崩壊により寸断されました。

私は、この措置は、台湾と国交を絶ち中国との国交を樹立しようとするエルサルバドルに対する牽制であるとみています。

エルサルバドルは南米の中でも一番面積が小さく一番人口密度が多い国です。マヤの遺跡を始め見所はあり、観光客も多い中、エルサルバドルの治安はあまり良くありません。約12年間続いた内戦終結後、内戦中に流出した武器が国内に大量に存在、経済状況の停滞、犯罪集団マラスやバンダが多く大都市での犯罪が増えています。

政権当局者2人が匿名を条件に記者団に語ったところによると、01年にエルサルバドルで起きた大地震の後に米国に避難し生活と就労を認められているエルサルバドル人は19年9月9日までに出国しない場合、強制送還の対象になり得るといいます。

議会調査局によると、TPSで米国在留が認められている外国人は約32万人で、エルサルバドル人は大部分を占めています。

トランプ米大統領の決定は、一部の中米人に1990年代後半以降、TPSを適用・再認可してきた以前の米政府の立場とは距離を置くものです。1人の高官によると、トランプ政権は19年まで発効日を遅らせることにより、議会がTPS対象者への恒久的な法的解決策を策定する時間を確保するといいます。

エルサルバドルの人口は、2016年時点で、634.5万 と推計されています。TPSにもとづく在米エルサルバドル人は20万人に達するといわていますが、これは、現在の全人口の3%くらいをしめるほどの数です。

この人数が、短期間に大量にエルサルバドルに戻ってくればとんでもないことになりそうです。そもそも、地震の被害を回避するために米国に渡った人たちですから、経済的に恵まれた人々とはいえず、難民とはいいませんが、感覚としては大勢の難民が押し寄せてくるようなものかもしれません。これは、地震被害から回復しつつあるエルサルバドルにとっては大きな負担になるのは間違いありません。

米国トランプ政権としては、このような牽制をしておき、もしエルサルバドルが過度に中国に接近したり、中国に利するような行動をした場合、TPSで在留しているエルサルバドル人の本国への強制送還に踏み切る腹づもりであると考えられます。このような弱小国にまで、牽制の対象とするトランプ政権です。その決意の強さがうかがわれます。

米国にとって、イスラム国(IS)を壊滅した後、一番の敵は中国となったのです。一方、中国が『軍=外向型』に方針転換したのは、堂々と『帝国主義的、膨張主義的、軍国主義的な政策を取る』と宣言したに等しいです。

事実上崩壊したIS

米国は、中国を「脅威の本丸」とみなし、南シナ海での「航行の自由」作戦を継続しています。6月には台湾の大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)の新事務所をオープンし、開所式典には国務省代表も列席しました。さらに、事務所警護のため、国務省は海兵隊に要員派遣を要請しました。

米国としては、中国の軍事力を押さえ込むため、軍事力の基礎となる経済力を叩くために対中国貿易戦争を仕掛けたのです。これは『中国包囲網』強化の一環で、当然のことながら、『航行の自由』作戦も『台湾重視』政策も、エルサルバドルへの牽制も絡んでいるのです。

今後、貿易戦争が本格化し、米中対立が激化すれば、軍事衝突の可能性も否定できないです。

トランプ大統領の貿易アドバイザーであるピーター・ナバロ通商製造政策局長は著書『米中もし戦わば-戦争の地政学』(文芸春秋)の中で、以下のように記しています。
世界史を概観すると、一五〇〇年以降、中国のような新興勢力がアメリカのような既存の大国に対峙した一五例のうち一一例において(すなわち、七〇%以上の確率で)戦争が起きている。
中国が南シナ海で、米国の船を止めたり、航行の自由作戦を妨害、米航空機の飛行を邪魔するようなことがあれば、軍事衝突に発展する可能性は十分あります。習近平は米国が抵抗しなければ、南シナ海全体を領海化するつもりです。

前国務長官だったレックス・ティラーソン氏は、南シナ海で中国の人工島を海上封鎖することもあり得ると示唆していました。

この海上封鎖案は、ティラーソン氏が2017年1月11日に上院外交委員会で開かれた自身の指名承認に関する公聴会で言及したものです。トランプ氏の発言や米軍タカ派の意見よりもはるかに強硬なものでした。

ティラーソン氏はこの公聴会で、中国の人工島の建設・軍事化は「2014年のロシアのクリミア併合と似ている」と指摘し、米国の反応が鈍かったため「中国にごり押しさせてしまった」と、オバマ政権の対応を批判しました。

同氏はさらに、米国が対応を強めることを支持するかとの質問に対し、「我々はまず人工島建設を停止するよう求め、さらに中国の人工島へのアクセスを認めない措置をとるとの明確なシグナルを送らざるを得なくなろう」と述べました。

このティラーソン発言は、あまりに時期尚早だったのだと思います。しかし、長期的に見た場合、南シナ海で米中軍事衝突は避けられないかもしれません。ただし、現状のまま、米国が中国と軍事衝突をしてしまえば、米国も多大なコストと犠牲を強いられることになるのは明らかですから、やはり当初は中国の経済を弱体化させることを中心に当面対中国戦略を進めることになるでしょう。

中国を経済的にかなり弱体化できれば、そもそも中国自身が、海洋進出をあきらめるかもしれません。あきらめなかったとしても、経済がそれを許さなくなります。

経済が弱体化しても、中国が海洋進出を諦めない場合は、米軍による中国の人工島の海上封鎖ということは大いに有り得ることです。その時には、無論米軍と衝突することもできず、たとえ衝突してもすぐに打ち負かされて中国は自ら人工島を放棄せざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。

米トランプ政権は、ここまで見据えた上で、現在中国に対して貿易戦争を挑んでいるのです。

中国を経済的に弱体化するためには何でもありのトランプ政権

このような状況のなか、これからの米国の行動は一見全く関係ないように見えても、エルサルバドルの事例のように、対中国戦略に何らかの関係があるとみるべきです。また、これから米国は、国際緊急経済権限法(IEEPA)の発動をはじめとして、中国や中国を利する国や企業個人に対する制裁をどんどん強めていくことになると考えられます。

これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政権に判断されれば、エルサルバドルのような弱小国ですら、牽制・制裁の対象になり得るということです。

そのことを意識しているマスコミや財界人はまだ少ないようで、未だ無意味な親中・媚中派から転身できていない人が多いようです。

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2017年6月10日土曜日

米政府が韓国政権に懲罰 THAAD稼働引き延ばしに在韓米軍の削減など突きつけ、米韓同盟存亡の危機―【私の論評】韓国は米中の懲罰で地獄に、赤化統一では無間地獄に(゚д゚)!


米韓首脳会談を前に、THAAD配備の対応を協議した
ティラーソン氏、トランプ氏、マティス氏(左から)
 北朝鮮の脅威を直視しようとしない韓国に対し、ドナルド・トランプ米大統領が“懲罰”に踏み切る可能性が出てきた。韓国に配備された米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」の本格稼働を遅らせようとする韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権への対応策を8日、ホワイトハウスで緊急協議したのだ。今月下旬には、米韓首脳会談が予定されている。北朝鮮の「核・ミサイル」の脅威が日々高まるなか、トランプ氏は厳しい「教育的指導」に踏み切るのか。

8日の協議には、「狂犬」の異名を持つジェームズ・マティス国防長官とレックス・ティラーソン国務長官が呼ばれた。ヘザー・ナウアート国務省報道官が記者会見で語った。

 協議の詳細は明らかにされなかったが、韓国によるTHAAD配備遅延に関することに間違いない。米国メディアの中には、文政権の対応を受けて「米韓同盟の重大な亀裂」と報じる向きもある。

 狂気の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に率いられた北朝鮮は8日、4週連続となるミサイル発射に踏み切った。ミサイルは地対艦巡航ミサイルと推定され、4月15日の金日成(キム・イルソン)主席の生誕記念日の軍事パレードで公開された、発射管を4本搭載した移動式ミサイルの可能性がある。

 トランプ政権は先週、日本海に米軍の誇る原子力空母「カール・ビンソン」と「ロナルド・レーガン」2隻を派遣し、異例ともいえる合同訓練を行った。日本の自衛隊も参加しており、8日のミサイル発射には、正恩政権が緊密な日米同盟を牽制(けんせい)する狙いがうかがえる。

 ナウアート氏は前述の記者会見で、北朝鮮のミサイル発射について、「朝鮮半島情勢を悪化させているだけだ。挑発を抑制するよう求める」と強調した。さらに、「米国はどこかの時期で対話の再開を望んでいるが、今はその状況ではない」と制裁を含めた圧力強化を進める考えを示した。

 国際社会の声に耳を傾けようとしない正恩政権に対して、トランプ政権、日本の安倍晋三政権は危機感を強めている。だが、北朝鮮に最も近く、危険にさらされているはずの韓国に、日米の緊張感が伝わっている様子はない。

 「極左・従北」で知られる文政権はTHAADに、言いがかりとしかいいようのない問題点をあげつらい、本格運用を遅延させようとしている。韓国メディアは「完全稼働は来年に持ち越される可能性が高くなった」と報じている。

 文政権が問題にしているのは、以下の2点だ。

 (1)韓国南部・星州(ソンジュ)郡の配備先への、THAADの発射台2基設置について、国防省が5月25日、青瓦台(大統領府)に報告したが、発射台4基の追加搬入が含まれていなかった。

 (2)配備地に対する適正な環境影響評価が行われていなかった。

 だが、文氏や青瓦台の主張は不可解だ。

 そもそも、THAADは6基の発射台とレーダーで一体運用されるシステムである。追加搬入された4基も、韓国のテレビ局のカメラで、車両に積載し、移動する様子が確認されている。環境影響評価も小規模ではあるが、行われている。

 北朝鮮の脅威を目の前にして、意図的に目を閉じている疑いがあるのだ。

 正恩政権は今年だけで、すでに10回のミサイル発射を繰り返している。特に5月以降では、同月14日、21日、29日、そして今月8日とペースを上げている。

 THAADは北朝鮮のミサイルに対する「防衛の要」といっていい。その本格稼働を遅らせることは、韓国国民だけでなく、約20万人ともいわれる韓国在住の米国の民間人の生命も危機にさらすことになる。「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏にとって、看過できる事態ではない。

 8日の緊急会議には、どんな意味があったのか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「このままいくと、北朝鮮に『超太陽政策』を取っている文氏の望む通り、THAADが配備されない事態となりかねない。米韓同盟は存亡の危機に立っており、トランプ氏は米韓首脳会談に向けた対応策を協議したのだろう。トランプ政権は今後、『在韓米軍の削減』や『THAADの韓国外での配備』も含めた厳しい処置を、文政権に突きつけるのではないか」と語った。

 韓国への懲罰は必至なのか。日米は韓国抜きでの対北防衛を真剣に検討する時期だろう。

【私の論評】韓国は米中の懲罰で地獄に、赤化統一では無間地獄に(゚д゚)!

現状のままだと、以前このブログにも掲載したように、朝鮮半島全体が赤化されてしまうかもしれません。このブログでは以前そのシナリオを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【痛快!テキサス親父】韓国はまさに「赤化危機」 完全な日韓合意違反、国際的信用は失墜した―【私の論評】韓国の赤化で、半島全体が支那の傀儡になる?
山の日本総領事館前に設置された慰安婦像。除幕式前から公開された
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より朝鮮半島全体の赤化のシナリオの部分のみを以下に引用します。 
金正恩は、支那の意思に逆らい、核・ミサイル開発を進めています。実戦配備されれば、北京や上海はその射程圏内となり、到底、中国として見過ごすわけにはいきません。
金正恩
しかし、中国が本気で制裁を加えれば、追い詰められた金氏が暴発して、南進しかねなくなります。そうなると、たちまち米韓軍に敗北し、朝鮮半島は韓国によって統一されてしまいます。

では、支那はどうするでしょうか。手っ取り早い方法として、北朝鮮のトップを金氏から、兄の金正男(キム・ジョンナム)氏か、中国の息のかかった人物にすげ替えることでしょう。北朝鮮を支那の傀儡にして、核・ミサイルや核施設を破棄させれば、北朝鮮の脅威はなくなるかもしれません。 
しかし、支那の本音は、別のところにあります。朝鮮半島全体を赤化して日米への楯にしたいというのが本音です。北朝鮮を傀儡化した中国は、かつて北朝鮮の金日成主席が描いたシナリオ通りに、韓国を吸収させようとするでしょう。

赤化した韓国は、THAADの導入を拒否するか、導入した後に撤去することになるかもしれません。そうして支那は、それを促すため、北朝鮮と韓国に平和条約を結ぶよう勧告するでしょう。そうして、支那は韓国に平和条約を結すべばTHADDの導入は必要ないことを強調することでしょう。

THAAD導入で支那から制裁を受け、経済面に苦しい韓国は、THAADを導入を断念すれば、韓国制裁を解くといわれれば、赤化した韓国は拒否できないことでしょう。軍事境界線に配備した長距離砲の撤去など、非核化した北朝鮮が韓国の要求をのめば、平和条約が締結される可能性はかなり高くなると思います。

平和条約締結後の韓国には、在韓米軍が存在する意義がなくなくなります。韓国は、米軍の撤退を要求するかもしれません。それに呼応して、在韓米軍は大幅に削減され、いずれ撤退することになるかもしれません。
次のステップは「南北連邦国家形成」ということになるでしょう。支那の意を受けた北朝鮮の工作員が「今こそ悲願の統一だ」と民族感情を刺激し、すでに赤化している韓国の人々は「一国・二政府・二体制での統一」という建前に熱狂することでしょう。そうして「南北朝鮮民主連邦」が実現することになります。 
そして、最終段階が「北朝鮮体制での完全統一」です。支那傀儡の北朝鮮は「一国二体制は非効率だ。一方の体制に統一しよう」と国民投票を韓国側に呼び掛けることでしょう。人口が2倍いる韓国は「北朝鮮をのみ込める」と踏んで、これに応じることでしょう。 
しかし、北朝鮮は約2000万人の有権者全員が北の体制を支持します。一方、韓国側の約4000万人の有権者はそうはいきません。仮に、投票率80%とすると投票者は約3200万人。うち、600万人以上が北の体制を支持すれば、北朝鮮側の勝利となります。

大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の人口の推移

「財閥を潰して社会格差を無くせるなら」「地獄の生活苦から抜け出せるなら」など、韓国には国全体をガラガラポンしたい衝動に駆られる住民が大勢存在します。 
国民投票で選ばれるのは、恐らく北朝鮮側の体制でしょう。そうなれば、韓国は北朝鮮にのみ込まれて「支那の属国」と化し、人々からすべての人権が剥奪されることになります。その時韓国は、真実の「HELL(地獄)のKOREA(韓国)」となるのです。 
上のシナリオは、悪夢のようですが、オバマ大統領の任期がもう少し長ければ実現したかもしれません。トランプ大統領の登場で上記のようなシナリオは成り立ちにくい状況となるでしょう。 
トランプ新大統領は、 韓国がTHAADの導入を断念したり、導入後廃棄などということは絶対にさせないでしょう。そうなれば、支那は対韓国制裁をやめることはないでしょう。 
しかし、日韓合意を簡単に翻すことができると思い込む韓国人が多数存在し、政府がそれを制御出来ない現状をみると、韓国に親北政権ができあがり、赤化した場合、似たようなシナリオで、朝鮮半島全体が赤化される可能性を否定することはできません。
このような朝鮮半島赤化のシナリオはいかにも起こりそうなことです。そうして、トラン不大統領がブログ上記のように、『在韓米軍の削減』を実施してしまえば、この赤化にさらに拍車をかけることになりそうです。

だから、私としてはこれは威嚇であって、実際に削減することはないと思います。しかし、韓国政府に対する懲罰は思い切ったことをする可能性は十分にあります。

実はもうすでに、その懲罰はすでに始まっています。

韓国企業に対する「懲罰的な反ダンピング(不当廉売)課税」が米国で増えているようです。3月20日付ソウル経済新聞によると、2016年に米国で下された韓国企業への反ダンピング課税5件(予備判定を含む)のうち4件が「不利な事実(AFA)規定」を適用した判定でした。

AFAは、訴えられた企業が十分な資料を提出しなかったり、調査に協力しなかったりする場合に最も不利な関税率を適用する規定で、「懲罰的な反ダンピング課税」と呼ばれます。

16年にAFAが適用された案件の平均関税率は43.62%でした。例えば、1年に5億米ドル(約563億円)相当を輸出する企業の場合、約2億2,000万米ドルの関税が課される計算になります。ソウル経済新聞は「これは事業を継続するかどうかを考え直すきっかけになるほどの打撃」としました。

また、AFA規定は米国以外の国でも関税法に含まれているのですが、実際に適用するケースは多くないといいます。韓国貿易協会の関係者は同紙に対し、「AFA適用是非に大きく関わる『調査協力の有無』を恣意的に解釈すると貿易摩擦が起きる可能性が高く、米国もこれまで、AFAを適用することは稀だった」と話しました。

THHADの導入を韓国が遅らせれば、遅らせるほどこのような清掃措置が増えていくことでしょう。

それでも、導入しなければ、米国はさらに厳しい金融制裁を韓国に対して課していくものと思われます。

超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。 

当時、世界の金の80%近くが米国に集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

現在では金本位制はなくなりましたが、米国が金融大国であることには変わりありません。米国国内での韓国企業による金融取引の制限や、世界各国での米国企業との金融取引を制限されたりすれば、韓国にとっては地獄です。

それに、THHAD導入ということで、中国からの懲罰も受けることになります。そうなると、中国と香港で韓国の対外貿易の31.8%。韓国の外国人観光客の45%を中国人観光客が占め、さらに平均支出の5倍消費しているという事実もあります。 

中国が、通関検査強化と観光客統制、韓国企業取り締まりを強化するなどのことをすれば、本格的な経済制裁せずとも韓国の地位失墜は不可避ということになります。

韓国としては、米国と中国のいずれにつくかということをはっきりさせなければなりません。中途半端にすれば、米中両方からの制裁でとんでもないことになります。

韓国でのTHAAD配備は遅々として進まない
米軍は韓国内に駐留はしてはいるものの、韓国経済は米中による経済制裁でとんでもない状況に追い込まれることになります。

さらに、経済がいつまでも良くならないということで、韓国国民から政府の突き上げはとんでもないレベルに達することになります。

かといつて、韓国も赤化ということになれば、それこそ、中国や北朝鮮の民主化も、政治と経済の分離も行われておらず、法治国家さえもされていないような体制が持ち込まれ、韓国は無間地獄に落ちることになります。

こんなことは、韓国民も避けたいと思っているはずです。これ打破するためには、韓国人自身が自分たちの将来をまともに考え、行動しなければなりません。米国や中国のせいに、ましてや日本のせいにしていては、この窮地を脱出することは不可能です。

もう道は見えています。まずは、韓国内の経済を良くするため、金融緩和と積極財政に踏み切ることです。そうして、外国の動向に韓国内の経済が大きく左右されないように、かつてのグローバル戦略から内需を高める方向にかじを切ることです。これは、現在の韓国の経済のレベルだと十分に功を奏するはずです。そうして、安全保証面では、米国側につき中途半端位はしないことです。

私はこれが、韓国にとって一番良い選択だと思うのですが、韓国民はどのような道を選択するのでしょうか。

北朝鮮の痩せ細った子ども。現在このような状況にはないが、その当時子どもたちだった現在の成人
にはまだ、その当時の悪影響が残っている。さらに、いつこの状況にもどるか保証の限りではない。
やはり、韓国は米中の懲罰で地獄に、そうして赤化統一で無間地獄に陥る道を選ぶのでしょうか。私には、飢餓地獄に陥りやせ細り、当局に過激な弾圧されつつ、過去の反日をしていた余裕のあった頃を懐かしむ、まさに無間地獄に落ち込んだ韓国人の姿がみえるような気がします。

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2016年12月17日土曜日

【緊迫・南シナ海】中国海軍艦船が米海軍の無人潜水機奪う 米政府は「国際法違反」と非難―【私の論評】南シナ海を中国戦略原潜の聖域にする試みは最初から頓挫か?


中国軍艦が奪った無人水中探査機の同型機
米国防総省のジェフ・デービス報道官は16日、南シナ海で米海軍の無人潜水機が、中国海軍の潜水艦救難艦に奪われたと明らかにした。米政府は国際法違反と非難し、中国政府に即時返還を要求している。

 事件があったのは15日、フィリピン北部ルソン島にあるスービック湾の北西約93キロの海域。米海軍の測量艦「バウディッチ」が、2機の無人潜水機を回収しようとしていたところ、潜水艦救難艦が約450メートルのところまで近づき、小型ボートを出して1機を奪った。

米海軍の測量艦「バウディッチ」
 バウディッチは無線で返還を求めたが、潜水艦救難艦は応答せず要求を無視した。デービス報道官は中国の行動を「国際法違反」と批判した。

 報道官によると、無人潜水機は海水の温度や塩分濃度、透明度といった「非機密扱いの情報」を収拾していた。ただ、無人潜水機によって収集された海底の地形などを含む情報は通常、潜水艦の航行や対潜水艦作戦に活用されている。

 米海軍艦船はスービック湾を使用し、その沖には中国とフィリピンが係争するスカボロー礁もあり、今回の事件の周辺海域は“前線”の一つとなっている。

【私の論評】南シナ海を中国戦略原潜の聖域にする試みは最初から頓挫か?

さて、今回の中国艦船による、無人水中探査機の強奪については、どのメディアもあまり詳しく解説してはいないものの、これは軍事的にはかなり大きな意味を持つかもしれません。

この無人潜水艦に関しては、冒頭の記事を読んでいるだけでは、どのようなものなのかあまりわからないと思います。実は、これについては以前このブログに掲載したことがあります。

女子生徒が航空機内から撮影した北朝鮮ミサイルの可能性がある
被写体。右側に飛行機雲のような筋が見える=8月24日午前。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、無人水中探査機に関する部分のみ以下にコピペします。
さて、空中のドローンに関しては、まだ、想像の域を超えていないのですが、それに良く似たものである、水中ドローンに関しては、すでに日本は開発を終えています。

それは、シーグライダーと呼ばれています。その外観はロケットに似ています。その小さな翼で水中を進み、毎時1キロメートル未満で非常にゆっくり移動します。電力消費量は極めて少ないです。

分解したシーグライダー ワシントン大学応用物理研究室が、
地球温暖化による氷河の変化を観察するため開発したもの
 結果として、それは一度に何ヶ月も海中にとどまることができます。2009年には、一挺のシーグライダーが、一回のバッテリー充電のみで大西洋を横断しました。横断には7ヶ月かかりました。
シーグライダーのおかけで、科学者たちは、以前には不可能だった多くの事ができるようになっています。シーグライダーは、海底火山を観察することができます。氷山の大きさを測ることができます。魚の群れを追うことができます。

上で掲載したシーグライダーを水中に投下するところ
さまざまな深度で水中の汚染の影響を監視することができます。科学者たちは、シーグライダーを利用して海底の地図を作成することまでも始めています。

シーグライダーはすでに、数ヶ月も継続する任務を遂行することが可能になっています。ところが、日本の研究者は現在、SORAと呼ばれる太陽光発電を使ったグライダーを開発中で、この船は再充電のために2、3日間海面に出れば、その後作業を続けられます。結果として、必要な何年も海に留まることができます。
理論的には数年間探査が続けられるソーラーパネルを装備したシーグライダー
 現在、シーグライダーを製造するにはおよそ15万ドル費用がかかるとされていますが、それがなし得ることを考えれば、その費用は非常に小さいです。シーグライダーを使えば、企業は石油とガスの探索のために海底調査ができますし、政府は軍事情報を収集できます。
シーグライダーは敵に見つかることなく海面にいる船舶や、近くを通り過ぎる有人潜水艦を特定できます。日本では、軍事転用はまだのようですが、日本の技術をもってすれば、容易にできることです。
この内容は、たまたま私が用いている英語学習教材の『毎日の英速読』というテキストから、日本語訳の部分を引用して加筆したものです。このシーグライダーもしくは、それに似たものが、今回中国の艦船に強奪されたものだと推定できます。

さて、南シナ海というと、中国がなぜ南シナ海にあれほどまでにこだわっているのか、それに関してこのブログに以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!
オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA) 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、結局中国がなぜあれほどまでに、南シナ海に執着するかといえば、中国近海や、東シナ海などは海が浅いため、そこを中国の戦略原潜(SLBM搭載)が航行した場合、日米によりいとも簡単にその行動を逐一発見されてしまうのですが、南シナ海は深いので、その深いところを航行するとなかなか発見しずらいので、ここを中国の戦略原潜の聖域にしようとしているからです。

南シナ海の平均深度は1200メートル以上です。海盆の平均水深は3500メートル、最深部は約5600メートルにも及びます。中国は戦略ミサイル原潜を4隻配備し、潜水艦発弾道ミサイルを核抑止力の重要な柱にしています。

南シナ海から米軍を追い払えば、冷戦時にソ連が戦略原潜(SLBM搭載)をオホーツク海に潜ませたのと同じように、中国は南シナ海に戦略原潜(SLBM搭載)を自由に展開できます。海南島を出発した最新型の潜水艦が深く潜航し、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通って西太平洋に抜けることが可能になるのです。

従来は深海から発射される核弾頭(SLBM)はなかなか発見できなかった
これにより、中国のSLBMは米国本土全域を標的にすることができるのです。ところがです、軍事目的のシーグライダーが南シナ海に配備されているとなると、中国のこの目論見は完全に外れてしまうことになります。

このシーグライダーは、当然中国の戦略原潜の動向もキャッチできるものと思われます。今回中国に強奪されたものはどのようなものかはわかりませんが、中国としては、このシーグライダーにかなりの脅威を感じているようではあります。

中国がせっかく、長年努力を傾注して、南シナ海を中国原潜の聖域にしようとしても、米国側に南シナ海にシーグライダーを多数設置し、中国原潜の動向を探っていたとしたら、そもそも聖域になりません。

米軍が、このシーグライダーを南シナ海の各所に多数配置して、有人潜水艦や、無人潜水艦、空中ドローン、イージス艦など多数配置して、これらを連動させるようにすれば、中国戦略原潜が不穏な動きをみせれば、すぐに撃沈できるようになります。

イージス艦、潜水艦、空中ドローン、シーグライダーの連携作戦の模式図
実際、今回中国側に捕獲されたシーグライダーがどの程度の能力のものかはわかりませんが、シーグライダーを戦術的に活用しようとするなら、今はそこまではいっていなくても、将来はそのようにするのは当然のことです。

そうして、中国では未だシーグライダーの技術は進んでいないと思われます。今回の強奪は、米軍のシーグライダーがどの程度の能力を持っているか確かめるためと、中国もシーグライダーを開発するため、技術を盗むという目的もあるものと思います。

もし、今回強奪さた米軍のシーグライダーの技術水準が高ければ、すでに中国による、南シナ海の原潜の聖域化は頓挫してしまっているかもしれません。

日本も、シーグライダーの軍事転用はすでに実行しているのかもしれません。実行していようがいまいが、日本も当然のことながら、軍事転用をして、中国原潜の動向を詳細に探索できるようにし、中国海軍を丸裸にして、日本の安全保障を確かなものにすべきです。

日米の数百ものシーグライダーが、南シナ海での中国原潜の動向を逐一探索できるようにすれば、中国の南シナ海の領有化は全く無意味なことになる可能性が大です。

それどころか、このシーグライダーのさらなる開発により、SLBMを所有する核保有国は、核戦略の見直しを迫られることになるかもしれません。

「はやぶさ」などで遠隔操作に実績のある日本が、本気で軍事シーグライダーや、軍事ドローンなどを開発したら、世界のトップレベルのものができます。そうなると、比較的低予算で、満足のいく安全保障策が実行できるようになります。

私の勝手な妄想ですが、海中では、無数のシーグライダーと自動運転魚雷が待機していて、敵が不穏な動きを見せたら、シーグライダーがそれを探知し、必要があれば、自動運転魚雷が即座に敵の艦艇などを撃沈するなどのシステムができたら良いと思います。

空中でも、少なくとも数週間から、数ヶ月くらい飛ぶこのできる軍事探査ステルス・ドローンが常時複数日本の領空・領海上を24時間飛び回り全域を哨戒し、敵が不穏な動きを見せれば、ドローンより、探査情報がこれも多数配備された日本のミサイル基地に連絡がいき、即座に敵のICBMや、SLBM、航空機などを破壊できる仕組みができたら良いと思います。このような仕組みができれば、そもそもスクランブルなど必要がなくなります。

それにしても、ここにきて、軍事技術の急展開がありそうです。そうなれば、ロシアなどの軍事技術も時代遅れになるかもしれません。そうして、日本が世界のトップクラスに躍り出るかもしれません。

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2016年1月25日月曜日

「日本以外なら中国の勝利意味する」豪潜水艦共同開発で米政府―【私の論評】世界の海から原潜が消える日も?中国が最も恐れる怪物 改「そうりゅう」(゚д゚)!


日本の「そうりゅう型」潜水艦
25日付のオーストラリアン紙は、日独仏が争うオーストラリアの次期潜水艦の共同開発相手選定で日本が選ばれなければ、日本案に反対する中国が外交的に勝利することを意味するとの米政府筋の見解を報じた。

ターンブル首相は1月中旬に訪米した際、潜水艦選定についても協議したとされる。米政府は公式には中立の立場を強調しているが、事務レベルではこうした懸念をオーストラリア側に伝えているとみられる。

米政府筋は、海上自衛隊の「そうりゅう型」ベース案を支持する理由を(1)海洋進出する中国への対抗上、最も性能が高い(2)最も相互運用性がある(3)日米豪の戦略的協力が加速される(4)日本の敗北は中国の外交、戦略的勝利を意味する-とした。

【私の論評】世界の海から原潜が消える日も?中国が最も恐れる怪物 改「そうりゅう」(゚д゚)!

上の記事を読まれても、なぜ米政府がこのような見解を発表するのか、理解できない人も多いのではないかと思います。なぜ、わざわざ、米政府がまるで日本のセールスマンでもあるかのようなことをするのでしょうか?

このようなことは、今回に限りません。随分前から、米専門家はそのような声明を出していました。そうして、今月22日も、米保守系外交誌ナショナル・インタレスト(電子版)に、アボット前豪首相の外交アドバイザーだったアンドリュー・シアラー氏と、米戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン上級副所長が寄稿していました。

その内容は、「米政府は(公式には)いずれの国にも肩入れしていないが、そうりゅう型は卓越した性能を持ち、米国製の戦闘システムを搭載して日米豪で相互運用すれば長期の戦略的利益になることに疑いはないと、米政府高官や米軍幹部はみている」との内容でした。

では、そうりゅう型潜水艦の卓越した能力とはどのようなものなのでしょうか。今日はこれについて掲載します。

日本の海上自衛隊は、今年3月には、7番艦「じんりゅう」が就役予定で、2020年までに11隻を保有する計画です。
従来はシュノーケルで空気を取り入れ、ジーゼルエンジンを稼働させ
電気を発電し、それを蓄電池に蓄え、水中ではそれを推力にもちいた
そうりゅう型潜水艦の最大の特徴は、これまで海上自衛隊が配備してきた潜水艦と異なる動力を搭載したことです。それは、AIP(Air-Independent Propulsion)、非大気依存型推進です。

これまではディーゼルエンジンを動力としていたため、大気中の酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する必要がありました。

そのためには、時々、海面近くまで浮上しなければなりませんでした。潜水艦は潜っていてこそ真価を発揮します。定期的に浮上をすれば、敵に見つかる可能性が高くなります。

一方、「そうりゅう」型はスターリングエンジンを動力としました。これは気体を温めて膨張させてピストンを持ち上げ、海水で気体を冷やして収縮しピストンを下げます。この繰り返しでエンジンを動かします。これにより、燃費もかなり良く、吸排気を必要としないため、長期間にわたる潜航が可能になりました。

09年に1番艦「そうりゅう」が就役した時点では、このエンジンは、原子力潜水艦に次いで長く海中に潜っていられため、最も無駄のない優れたエンジンとも言われていました。

現在の「そうりゅう」型潜水艦の、大型電動機には電源が三種類あります。ディーゼルエンジン、主蓄電池、AIPエンジンです。ディーゼルエンジン運転には大気が必要なので浮上中またはシュノーケルで蓄電池に急速充電します。

AIPエンジンは少量のディーゼル燃料と液体酸素を使用し長時間低速の潜航移動が可能です。その間に蓄電池は完全充電されます。蓄電池は超静粛移動や高速水中機動に使うが急速に消耗してしまいます。

以下に現行の、「そうりゅう」型潜水艦の模式図などを掲載します。

AIPを搭載した「そうりゅう」型潜水艦
スターリングエンジンを4基装備している。
■潜水艦「そうりゅう」型
全長 84メートル
全幅 9.1メートル
排水量 4200トン
最大速度 13ノット(水上) 20ノット(水中)
乗員 65人
武装 魚雷発射管×6

しかし、現行のままでは、エンジンを動かすことに変わりなく、日本の工作技術が優れているため、現行のものでも、エンジンの音はかなり低くく、おそらく世界で最も静かな潜水艦ですが、それでもどうしてもその音が出ます。そこで、それをなくすために、リチウムイオン電池を搭載し、電気で動かす仕組みに行きつきました。

簡単に言えば、自宅で携帯電話を充電するように入港中に充電します。外では本体内の電池で動作し、帰ってきて再び充電、といった具合です。電池の持ちは良く、数週間の活動が可能だそうです。

新型の「そうりゅう」型潜水艦には、鉛蓄電池とAIPを設置している空間に大型のリチウムイオン電池を積むことで、これまで最大2週間程度だった潜航期間が「格段に伸びる」(防衛省関係者)といいます。リチュウムイオン電池は鉛電池に比べ蓄電量が2.5倍あり、高速航行に適しています。

AIP艦の艦長は、作戦行動の今後の展開と、AIP、蓄電池それぞれの使用場面を想定し、場面に応じて動力を選定しなければなりません。しかし、これがリチウム電池だけの艦になれば、高速・低速を必要に応じて使い分け、電池の残量のみを考慮すれば良くなります。運用者にとってどちらが使いやすいか、言うまでもないことです。

建造費や維持管理費を含めて、15年間使用した場合のライフサイクルコストは、現行の1000億円よりも安くなる見込みだそうです。

防衛省は、国産のリチウムイオン電池が、短時間で大容量の電力を蓄えられるようになったことから、2015年度予算で要求する潜水艦から、リチウムイオン電池を導入し、AIPシステムを廃止することを決めました。リチュウムイオン電池は、20年以降に誕生する改「そうりゅう」型で採用されます。

ちなみに、リチュウムイオン電池の技術は日本の独壇場で、iPhoneや他のスマートフォンに使用されている、リチュウムイオン電池はほとんどが日本製です。リチウムイオン電池は性能的にはメモリー効果もなく最適ですが、可燃性の電解液を用いているので過充電時に電池の温度が上昇すると発火する可能性があります。特に電池が大型化すると冷却が難しい為、安全性の問題があります。

そのため、海外では潜水艦用の大型のリチュウム電池を製造することはほぼ不可能で、は今のところ日本しか製造できません。

「そうりゅう」型潜水艦 「うんりゅう」
上の記述は、ほとんどがこの「そうりゅう」型潜水艦の技術的に側面について述べました、以下に簡単に軍事的な意味を掲載しておきます。

日本はもともと、技術水準が高いため、潜水艦の推進装置もあまり音は出ませんでした、しかしスターリングエンジンを搭載してから、格段に音が静かになり、そのため、ソナーなどで敵から発見されにくいという利点がありました。

現行の「そうりゅう」型潜水艦ですら、さらにかなり音が小さいのと、潜行時間が長いので、かなり隠密行動がとりやすいという利点がありました。敵に気づかれず、索敵行動や、攻撃ができます。これに比較すると、アメリカの最新鋭の原潜ですら、推進音が大きく、「ゴー、ゴー」という推進音がします。これだと、現在の技術水準の高いソナーでは、発見されやすいです。

中国の最新鋭の原潜の場合は、もともと工作技術がお粗末なので、水中で進むときには、まるでドラム缶をガンガン叩いているような音を出しながら推進するということになり、すぐに敵に発見されてしまいます。

敵側からすると、「そうりゅう」型ですら脅威なのに、リチュウムイオン電池を用いた改「そうりゆう」型は、無音と言って良いくらい音が静かなので、何をもってしても発見することができず、攻撃を受けるときには、前もって準備などできません。

全く察知できないところから、いきなり魚雷などで攻撃されるという状況になります。これを防ぐ手段はありません。海で、これほど強力な武器はありません。さらに、このブログでも以前掲載したように、日本の対潜哨戒能力は、世界トップ水準ですから、現行の「そうりゅう」型潜水艦と束になって挑まれたら、中国海軍は全く歯が立たないことでしょう。

もし、戦争になれば、中国海軍は、空母も戦艦もあっという間に海の藻屑になって消えます。はっきりいえば、自殺行為です。だからこそ、中国は尖閣付近でも、本格的に駆逐艦や空母を派遣できず、せいぜい機関砲付きの艦船をおっかなびっくり派遣する程度のことしかできないのだと思います。

現在、中国を含めて、いくつかの国が原潜を運用していますが、ご存知のように原潜は、原子力を推進力に用いています。しかし、これは言うまでもなく、非常に危険です。放射能汚染の危険といつも隣り合わせです。

日本以外の国には改「そうりゅう」型のような潜水艦を建造する技術はありませんが、数十年後には、原潜は姿を消し改「そうりゅう」型のような潜水艦が主流になるかもしれません。



この改「そうりゅう」型を買いたいと手を挙げた国が、事実上の「準同盟国」とされるオーストラリアです。次期潜水艦として改「そうりゅう」型は、要求性能はすべて満たしており、交渉はうまく進んでいました。

日本は武器の輸出を進めるため、防衛装備庁という新たな役所も立ち上げ、武器輸出三原則を緩和した防衛装備移転三原則へ改定しまた。自衛隊初の武器輸出のため、賛成派も反対派も大騒ぎしましたが、土壇場で“買い手”から待ったがかかりました。

日本ですべてのパーツを製造し、オーストラリアで組み立てる「ノックダウン生産」が不満のようです。国内生産の比率を70%にしたいそうです。

そこで、フランスが提案する「バラクーダ」型潜水艦が採用される可能性が出てきました。これは、原子力潜水艦がベースで、ディーゼルエンジンに乗せ換えるそうで若干無理のあるプランですが、「ライセンス生産」で国内生産の比率は100%になります。これが、かなりオーストラリアの心を揺さぶっているようです。

しかし、これにすると、技術的にはかなり劣り、ディーゼルエンジンを搭載するというのですから、現行の「そうりゅう」型よりもさらに、性能は落ちます。

結論は、来年3月に出る予定です。私自身は、オーストラリアは改「そうりゅう」型にすべきものと思います。

中国側は、モンスターである改「そうりゅう」型など、導入されてはオーストラリア海軍にも全く歯がたたなくなることは、わかりきっているので、絶対に導入されたくないと考えているに違いありません。

だからこそ、ブログ冒頭の記事で、米政府筋は、改「そうりゅう」型が選ばれなければ、日本案に反対する中国が外交的に勝利することを意味するとしているのです。

オーストラリアは、数年前までは、対輸出先として、中国への依存がかなり高い国でした、いまでも親中派の勢力は強いです。

オーストラリアが「そうりゅう」を選ばないということになれば、日米もアジアにおける安全保証の問題を見直す必要があります。

私は、そう思います。みなさんは、どう思われますか?

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2015年7月1日水曜日

【世界を斬る】オバマ政権の対中弱腰外交で米政府は危機的状況 相次ぎ辞任する専門家―【私の論評】世界の平和はオバマに脅かされている!日本も現実に真摯に向き合い、まともな安保論議を(゚д゚)!

2015.07.01

2年前の米中首脳会談。9月会談の中身は…

米国防総省から最近、ハドソン研究所に移ってきた中国専門家が私にこう言った。

「この9月、2年ぶりに米国で米中首脳会談が開かれる。オバマ大統領が、習近平主席に対して中国の不法な領土侵略やサイバー攻撃を厳しく非難し、『止めなければ断固たる措置をとる』と警告しなければ、米国の国際的な指導力は一挙に失われる」

ワシントンでこうした意見が出始めているのは、習主席の訪米の前触れともいえる中国の恫喝外交がすでに始まっているからだ。

6月23日から2日間にわたって、ワシントンの国務省で開かれた米中経済戦略会議の席上、米側が米政府機関に対する中国の無法なサイバー攻撃について抗議したところ、中国側は強圧的な態度でこう反撃した。

「米国は事実をしっかり調査したのか。感情的にならず、対応策を考えてから提案を行うべきだ。一方的に中国を攻撃し続ければ、事態は悪くなるだけだ」

米側は最新技術を駆使して、一連のサイバー攻撃が民間企業を装った中国軍の情報機関によって行われたことを突き止めている。そのうえで、抗議したが、中国側は傲慢な姿勢を崩さなかった。

このように中国が、国際法から、とうてい認められない行動をとり続けているにもかかわらず、オバマ大統領は中国との友好関係を強調し、迎合的な姿勢を崩そうとしない。この結果、米政府内では深刻な混乱が始まっている。

オバマ大統領は、基本的に米国の経済的な利益のみを考えて中国との協力関係を強化しようとしている。中国とのビジネス関係が悪化すれば、立ち直り始めた経済が再び後退すると心配しているのである。そのうえ、米国には、中国と肩を組んで世界秩序を維持するのが現実的な国際政策であると考えている指導者も少なくない。

中国の脅威に直面している日本や東南アジアの国々は、米国に頼るだけでなく、まず中国の不法行為を阻止するという確固たる政治的姿勢を示し、自らその能力を持つ必要に迫られている。

■(ひだか・よしき)

この記事の詳細は、こちらから!

【私の論評】世界の平和はオバマに脅かされている!日本も現実に真摯に向き合い、まともな安保論議を(゚д゚)!

このブログでも何度か、オバマの弱腰については指摘してきました。結論から言うと、ウクライナ問題を複雑化させ、ロシアのプーチンをして軍事的冒険にださせたのはオバマです。

ISISに対しても、煮え切らない態度を取り続け、対応が遅れてしまったため、結果としてISISを台頭することになってしまったのもオバマのせいです。

上記の問題に関しては、多くの専門家が、早めに対応すべきとしてきたものをオバマはすべて後手、後手にまわって、結局問題をより複雑化させてしまいました。

尖閣問題もそうです。本来オバマは、より問題が複雑化する前に日中間にはもともと、領土問題などないとはっきり声明を発表すれば良いものを、またまた時期を完璧に逸したタイミングで懸念は示したものの、未だに日中間に領土問題は存在せずという声明は発表していません。

そもそも、アメリカは第二次世界大戦の戦勝国であり、終戦直後の国連の分類では、第二次世界大戦に参加し、勝利した第一国であるはずです。日本は、第二次世界大戦に参加し、負けた第二国です。

現在の中韓は、この分類でいえば、第二次世界大戦に参加しなかった国、すなわち第三国です。

第二次世界大戦で、ドイツや日本と真っ向から戦い、多大な犠牲を出して、戦後体制が築かれ、アメリカはその戦後体制の中でダントツのトップの座を占めているはずです。

にもかかわらず、オバマ大統領は、第三国の今の中国風情に、はっきりとモノが言えないのですから、呆れて二の句が継げないです。

完璧にレイムダックと化したオバマ
一体どうなっているのかと言いたいです。日本はいわば、残念ながらアメリカの持ち物のようなものであり、自分の持ち物なら持ち物で、それなりの対応をとるべきです。中国が尖閣周辺で示威行動をするようになった時点で、はっきりと声明をだし「俺の持ち物に手を出すな」という意思表示をはっきりして、軍事的にもそれ相当の対応をしていれば、尖閣問題の恒常化、より一層の複雑化は防げたはずです。

中国の軍事力など、アメリカには到底及ばないことははっきりしており、もし米中が戦争にでもなった場合、中国はなすすべもなく負けてしまうことははっきりしています。空母や艦船も、戦闘機も、戦車も、前近代的なものばかりで、日本近海での海戦、空戦では、中国は日本の自衛隊にも惨敗してしまう程度の実力です。

サイバー部隊も、アメリカのほうがはるかに優秀です。優秀な人材の、奥行きも幅も、到底中国には及びもつきません。

中国は将来の有望な市場になるという考えもありますが、そんなのはいつのことになるやらわかりません。それにもともと、アメリカのGDPに占める輸出の割合など、数%に過ぎません。

その数%のうちのさらに中国向けということになれば、ほんの微々たるもので、世界一の経済大国のアメリカからすれば、中国向け輸出があろうが、なかろうが、そんなものは誤差の範囲に収まる程度のものです。

アメリカの対中国輸出は誤差の範囲内


たとえ、これから10倍に伸びたとしても、誤差の範囲のようなものが10倍に増えたからといって、そんなものは微々たるものです。そのようなものを当て込んで、中国にモノが言えないとしたら、本末転倒も甚だしいです。

それに、このブログでも何度も掲載しているように、中国の現体制はとうていこれからも継続するとは考えられません。おそらく、中国は分裂するとみるのが妥当です。分裂しなかったにしても、現体制は近い内に崩れます。昨日も示したように、中国の西端には第二イスラム国の脅威が忍び寄っています。

そんな現体制の中国に、遠慮したりおもねたりするのは、全く愚かなことです。そんなことは、インテリジェンス面でも、優れたアメリカはしっかりと認識していると思います。しかし、オバマは理解していないようです。

それにしても、オバマの前まではまだ良かったです。たとえば、ブッシュ大統領のときは、悪いこともありましたが、少なくとも中国に対しては、一線を引いていしました。

ブッシュ大統領は、少なくとも年一回くらいは、会見を開いて、中国に対して、民主化、政治と経済の分離、法治国家化に関して、注文をつけ、まともになるように促していました。

ブッシュ大統領

このまま、オバマが中国の習近平と9月の会談にのぞめば、またまた及び腰で、まともな対応は期待できません。

このブログでも示したように、アメリカは今後しばらく、軍事費を削減します。その記事のリンクを以下に掲載します。
「米国の抑止力、とりわけ日本に対するそれを低下させる」中国軍の戦力増強に危機感-米委員会が年次報告書―【私の論評】国内の増税見送り、解散総選挙で見逃され勝ちな世界の動き、アメリカ議会の動きを見逃すな!アメリカは、日本の改憲を望んでいることを忘れるな(゚д゚)!
海岸防衛から大洋海軍を目指す中国海軍
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にアメリカの軍事予算はすでに減っているし、これからしばらくは削減されることはあっても、増大することはないことを示す部分のみ引用します。

 

この、グラフを見てもわかるように、アメリカの国防予算は、減少傾向です。 
米国防総省(ペンタゴン)のヘーゲル国防長官は昨年2月24日、陸軍の兵力を現在の約52万人から44万─45万人規模に削減、実現すれば、米陸軍の規模は第2次世界大戦に参戦する前の規模に縮小すると発表しました。今後10年間で約1兆ドル(約102兆円)の歳出を削減する案を模索中で、2015年度の国防予算は約4960億ドル(約51兆円)といいます。 
昨年の3月1日、オバマ大統領は予算管理法(Budget Control Act)によって規定されていた「sequestration」条項の発動に追い込まれました。 
この「sequestration」という用語は、多くのアメリカ国民にとってもなじみの薄い言葉であり、もちろん日本ではさらに聞きなれない言葉です。英和辞典にはこの単語の訳語として「隔離、流罪、隠遁、(法)係争物第三者保管、財産仮差し押さえ、接収、(医)腐骨化、(化)金属イオン封鎖」といった訳語が列挙されていますが、今回発動された「sequestration」には、「強制歳出削減」あるいは「自動歳出削減」といった訳語が与えられています(本稿では「強制削減」と呼称します)。 
強制削減は、アメリカにおいて史上初めて実施されることになりました。そのため、その本当の影響はなかなか理解しにくいと言われています。 
アメリカでは、今回の強制削減の発動は金融・経済界ではすでに織り込み済みであり、アメリカや世界の株式市場や経済動向に対する影響はそれほど深刻なものではないといった見方がなされています。しかし、最大の削減対象となる国防関係は極めて甚大な影響を受けることになり、アメリカ軍事戦略そのものの修正を余儀なくされかねない状況に直面しています。
及び腰のオバマはこれからも任期中は、まともな外交は期待できません。さすがに、9月の習近平との会談では、一方的におもねるようなことはないでしょうが、さりとて、厳しく抗議するということもないでしょう。

オバマ大統領の任期は2017年1月までです。まだ結構あります。これまでの期間、アメリカはまともな外交はできないでしょう。

尖閣問題では、オバマはこれからも、結局何もしないでしょう。そうなると、日本は今国会でも論争になっている安保法案を成立させて、米国だけではなく、インド、オーストラリア、ASEAN諸国なども含めて、集団的自衛権を行使できるようにして、中国を封じ込めなければならないはずです。

次の大統領はオバマよりはましでしょうが、それでも、どの程度まともに中国に対峙するかはまだ見えません。及び腰オバマの在任中にどれだけ、中国がつけあがり、何をしでかすかなど分かったものではありません。

転ばぬ先の杖という言葉もあります。かねてより、このブログでは集団的自衛権は、人権と同じく、自然権であり、憲法や法律が成立する以前の根源的な権利であることを主張してきました。日本でも、これを当然として、議論をすすめなければなりません。

オバマにより、世界の平和は危機にさらされています。今こそ、野党もマスコミも、そうして無論国民も、日本の安全保証に関する問題を真摯に論議し、日本の平和や安定はもとより、アジアの平和と安定と繁栄を確かなものにするため、現実に真摯に向き合うべきだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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米国防長官が辞任 シリア政策で大統領と対立―【私の論評】レームダック化したオバマの振る舞いは危険ではあるが、アメリカ議会が超党派で動き出しているし、日本にとってはアジアでの存在感を高め「戦後体制から脱却」を推進する良いきっかけになると心得よ(゚д゚)!

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