2016年1月25日月曜日

「日本以外なら中国の勝利意味する」豪潜水艦共同開発で米政府―【私の論評】世界の海から原潜が消える日も?中国が最も恐れる怪物 改「そうりゅう」(゚д゚)!


日本の「そうりゅう型」潜水艦
25日付のオーストラリアン紙は、日独仏が争うオーストラリアの次期潜水艦の共同開発相手選定で日本が選ばれなければ、日本案に反対する中国が外交的に勝利することを意味するとの米政府筋の見解を報じた。

ターンブル首相は1月中旬に訪米した際、潜水艦選定についても協議したとされる。米政府は公式には中立の立場を強調しているが、事務レベルではこうした懸念をオーストラリア側に伝えているとみられる。

米政府筋は、海上自衛隊の「そうりゅう型」ベース案を支持する理由を(1)海洋進出する中国への対抗上、最も性能が高い(2)最も相互運用性がある(3)日米豪の戦略的協力が加速される(4)日本の敗北は中国の外交、戦略的勝利を意味する-とした。

【私の論評】世界の海から原潜が消える日も?中国が最も恐れる怪物 改「そうりゅう」(゚д゚)!

上の記事を読まれても、なぜ米政府がこのような見解を発表するのか、理解できない人も多いのではないかと思います。なぜ、わざわざ、米政府がまるで日本のセールスマンでもあるかのようなことをするのでしょうか?

このようなことは、今回に限りません。随分前から、米専門家はそのような声明を出していました。そうして、今月22日も、米保守系外交誌ナショナル・インタレスト(電子版)に、アボット前豪首相の外交アドバイザーだったアンドリュー・シアラー氏と、米戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン上級副所長が寄稿していました。

その内容は、「米政府は(公式には)いずれの国にも肩入れしていないが、そうりゅう型は卓越した性能を持ち、米国製の戦闘システムを搭載して日米豪で相互運用すれば長期の戦略的利益になることに疑いはないと、米政府高官や米軍幹部はみている」との内容でした。

では、そうりゅう型潜水艦の卓越した能力とはどのようなものなのでしょうか。今日はこれについて掲載します。

日本の海上自衛隊は、今年3月には、7番艦「じんりゅう」が就役予定で、2020年までに11隻を保有する計画です。
従来はシュノーケルで空気を取り入れ、ジーゼルエンジンを稼働させ
電気を発電し、それを蓄電池に蓄え、水中ではそれを推力にもちいた
そうりゅう型潜水艦の最大の特徴は、これまで海上自衛隊が配備してきた潜水艦と異なる動力を搭載したことです。それは、AIP(Air-Independent Propulsion)、非大気依存型推進です。

これまではディーゼルエンジンを動力としていたため、大気中の酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する必要がありました。

そのためには、時々、海面近くまで浮上しなければなりませんでした。潜水艦は潜っていてこそ真価を発揮します。定期的に浮上をすれば、敵に見つかる可能性が高くなります。

一方、「そうりゅう」型はスターリングエンジンを動力としました。これは気体を温めて膨張させてピストンを持ち上げ、海水で気体を冷やして収縮しピストンを下げます。この繰り返しでエンジンを動かします。これにより、燃費もかなり良く、吸排気を必要としないため、長期間にわたる潜航が可能になりました。

09年に1番艦「そうりゅう」が就役した時点では、このエンジンは、原子力潜水艦に次いで長く海中に潜っていられため、最も無駄のない優れたエンジンとも言われていました。

現在の「そうりゅう」型潜水艦の、大型電動機には電源が三種類あります。ディーゼルエンジン、主蓄電池、AIPエンジンです。ディーゼルエンジン運転には大気が必要なので浮上中またはシュノーケルで蓄電池に急速充電します。

AIPエンジンは少量のディーゼル燃料と液体酸素を使用し長時間低速の潜航移動が可能です。その間に蓄電池は完全充電されます。蓄電池は超静粛移動や高速水中機動に使うが急速に消耗してしまいます。

以下に現行の、「そうりゅう」型潜水艦の模式図などを掲載します。

AIPを搭載した「そうりゅう」型潜水艦
スターリングエンジンを4基装備している。
■潜水艦「そうりゅう」型
全長 84メートル
全幅 9.1メートル
排水量 4200トン
最大速度 13ノット(水上) 20ノット(水中)
乗員 65人
武装 魚雷発射管×6

しかし、現行のままでは、エンジンを動かすことに変わりなく、日本の工作技術が優れているため、現行のものでも、エンジンの音はかなり低くく、おそらく世界で最も静かな潜水艦ですが、それでもどうしてもその音が出ます。そこで、それをなくすために、リチウムイオン電池を搭載し、電気で動かす仕組みに行きつきました。

簡単に言えば、自宅で携帯電話を充電するように入港中に充電します。外では本体内の電池で動作し、帰ってきて再び充電、といった具合です。電池の持ちは良く、数週間の活動が可能だそうです。

新型の「そうりゅう」型潜水艦には、鉛蓄電池とAIPを設置している空間に大型のリチウムイオン電池を積むことで、これまで最大2週間程度だった潜航期間が「格段に伸びる」(防衛省関係者)といいます。リチュウムイオン電池は鉛電池に比べ蓄電量が2.5倍あり、高速航行に適しています。

AIP艦の艦長は、作戦行動の今後の展開と、AIP、蓄電池それぞれの使用場面を想定し、場面に応じて動力を選定しなければなりません。しかし、これがリチウム電池だけの艦になれば、高速・低速を必要に応じて使い分け、電池の残量のみを考慮すれば良くなります。運用者にとってどちらが使いやすいか、言うまでもないことです。

建造費や維持管理費を含めて、15年間使用した場合のライフサイクルコストは、現行の1000億円よりも安くなる見込みだそうです。

防衛省は、国産のリチウムイオン電池が、短時間で大容量の電力を蓄えられるようになったことから、2015年度予算で要求する潜水艦から、リチウムイオン電池を導入し、AIPシステムを廃止することを決めました。リチュウムイオン電池は、20年以降に誕生する改「そうりゅう」型で採用されます。

ちなみに、リチュウムイオン電池の技術は日本の独壇場で、iPhoneや他のスマートフォンに使用されている、リチュウムイオン電池はほとんどが日本製です。リチウムイオン電池は性能的にはメモリー効果もなく最適ですが、可燃性の電解液を用いているので過充電時に電池の温度が上昇すると発火する可能性があります。特に電池が大型化すると冷却が難しい為、安全性の問題があります。

そのため、海外では潜水艦用の大型のリチュウム電池を製造することはほぼ不可能で、は今のところ日本しか製造できません。

「そうりゅう」型潜水艦 「うんりゅう」
上の記述は、ほとんどがこの「そうりゅう」型潜水艦の技術的に側面について述べました、以下に簡単に軍事的な意味を掲載しておきます。

日本はもともと、技術水準が高いため、潜水艦の推進装置もあまり音は出ませんでした、しかしスターリングエンジンを搭載してから、格段に音が静かになり、そのため、ソナーなどで敵から発見されにくいという利点がありました。

現行の「そうりゅう」型潜水艦ですら、さらにかなり音が小さいのと、潜行時間が長いので、かなり隠密行動がとりやすいという利点がありました。敵に気づかれず、索敵行動や、攻撃ができます。これに比較すると、アメリカの最新鋭の原潜ですら、推進音が大きく、「ゴー、ゴー」という推進音がします。これだと、現在の技術水準の高いソナーでは、発見されやすいです。

中国の最新鋭の原潜の場合は、もともと工作技術がお粗末なので、水中で進むときには、まるでドラム缶をガンガン叩いているような音を出しながら推進するということになり、すぐに敵に発見されてしまいます。

敵側からすると、「そうりゅう」型ですら脅威なのに、リチュウムイオン電池を用いた改「そうりゆう」型は、無音と言って良いくらい音が静かなので、何をもってしても発見することができず、攻撃を受けるときには、前もって準備などできません。

全く察知できないところから、いきなり魚雷などで攻撃されるという状況になります。これを防ぐ手段はありません。海で、これほど強力な武器はありません。さらに、このブログでも以前掲載したように、日本の対潜哨戒能力は、世界トップ水準ですから、現行の「そうりゅう」型潜水艦と束になって挑まれたら、中国海軍は全く歯が立たないことでしょう。

もし、戦争になれば、中国海軍は、空母も戦艦もあっという間に海の藻屑になって消えます。はっきりいえば、自殺行為です。だからこそ、中国は尖閣付近でも、本格的に駆逐艦や空母を派遣できず、せいぜい機関砲付きの艦船をおっかなびっくり派遣する程度のことしかできないのだと思います。

現在、中国を含めて、いくつかの国が原潜を運用していますが、ご存知のように原潜は、原子力を推進力に用いています。しかし、これは言うまでもなく、非常に危険です。放射能汚染の危険といつも隣り合わせです。

日本以外の国には改「そうりゅう」型のような潜水艦を建造する技術はありませんが、数十年後には、原潜は姿を消し改「そうりゅう」型のような潜水艦が主流になるかもしれません。



この改「そうりゅう」型を買いたいと手を挙げた国が、事実上の「準同盟国」とされるオーストラリアです。次期潜水艦として改「そうりゅう」型は、要求性能はすべて満たしており、交渉はうまく進んでいました。

日本は武器の輸出を進めるため、防衛装備庁という新たな役所も立ち上げ、武器輸出三原則を緩和した防衛装備移転三原則へ改定しまた。自衛隊初の武器輸出のため、賛成派も反対派も大騒ぎしましたが、土壇場で“買い手”から待ったがかかりました。

日本ですべてのパーツを製造し、オーストラリアで組み立てる「ノックダウン生産」が不満のようです。国内生産の比率を70%にしたいそうです。

そこで、フランスが提案する「バラクーダ」型潜水艦が採用される可能性が出てきました。これは、原子力潜水艦がベースで、ディーゼルエンジンに乗せ換えるそうで若干無理のあるプランですが、「ライセンス生産」で国内生産の比率は100%になります。これが、かなりオーストラリアの心を揺さぶっているようです。

しかし、これにすると、技術的にはかなり劣り、ディーゼルエンジンを搭載するというのですから、現行の「そうりゅう」型よりもさらに、性能は落ちます。

結論は、来年3月に出る予定です。私自身は、オーストラリアは改「そうりゅう」型にすべきものと思います。

中国側は、モンスターである改「そうりゅう」型など、導入されてはオーストラリア海軍にも全く歯がたたなくなることは、わかりきっているので、絶対に導入されたくないと考えているに違いありません。

だからこそ、ブログ冒頭の記事で、米政府筋は、改「そうりゅう」型が選ばれなければ、日本案に反対する中国が外交的に勝利することを意味するとしているのです。

オーストラリアは、数年前までは、対輸出先として、中国への依存がかなり高い国でした、いまでも親中派の勢力は強いです。

オーストラリアが「そうりゅう」を選ばないということになれば、日米もアジアにおける安全保証の問題を見直す必要があります。

私は、そう思います。みなさんは、どう思われますか?

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