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2018年9月19日水曜日

海上自衛隊の潜水艦「隠密作戦」に中国狼狽 南シナ海で中国に“強烈メッセージ”か 同盟国・米国も了解―【私の論評】日米同盟は北朝鮮問題を解決するつもりのない中国の喉元にあいくちをつきつけた(゚д゚)!


海自潜水艦「くろしお」

南シナ海で軍事的覇権を強める中国への“強烈なメッセージ”なのか。防衛省は17日、海上自衛隊の潜水艦を南シナ海に派遣し、護衛艦部隊とともに対潜水艦を想定した訓練を実施したと発表した。潜水艦の行動は「極秘中の極秘」であり、今回の公表は極めて異例。同盟国・米国も了解しているとみられる。国際法を無視して、南シナ海の岩礁を軍事基地化している中国への牽制(けんせい)とともに、中国の具体的行動への“警告”と分析する関係者もいる。米中貿易戦争が激化するなか、中国の軍事的挑発を阻止する狙いなのか。中国は反発したが、動揺を隠しきれない。

 「自衛隊の訓練は、練度を向上させるためで、どこか特定の国を想定したものではない。南シナ海における潜水艦の訓練は15年前から行い、昨年も一昨年もしている」

 安倍晋三首相は17日夜、テレビ朝日系「報道ステーション」に生出演した際、海自の対潜水艦訓練について、こう説明した。

 重ねて、安倍首相は「事実上、そうした訓練は(近隣国である)相手方も、十分に承知していることが多い」とも述べており、中国を意識したメッセージであることは、間違いない。

 中国は南シナ海のほぼ全域に歴史的権利があると主張し、独自の境界線「九段線」を引く。

 国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は2016年、こうした主張を否定したにもかかわらず、中国は、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の岩礁を勝手に埋め立てた人工島に滑走路やレーダーを建設したほか、パラセル(同・西沙)諸島に地対艦ミサイルを配備し、軍事拠点化を進めている。

 共産党一党独裁による中国の覇権拡大に対し、「自由と民主主義」「人権」「法の支配」といった価値観を共有する自由主義諸国は、警戒感を強めている。ドナルド・トランプ米政権は「航行の自由作戦」を展開し、英海軍も揚陸艦を航行させて圧力をかける。

 こうしたなか、今回の海自の訓練は、九段線の内側、フィリピン西側の公海上で行われたという。

 海自などによると、南シナ海に派遣したのは、海自呉基地(広島県)を母港とする潜水艦「くろしお」。13日までに護衛艦「かが」「いなづま」「すずつき」の計3隻と合流し、護衛艦や艦載ヘリコプターがソナーを使って敵の潜水艦を探索する一方、潜水艦は探知されないように護衛艦への接近を試みる実戦的内容だった。

 「くろしお」は、全長82メートル、幅8・9メートルで乗員約70人の潜水艦(排水量2750トン)。「かが」は、海自最大の護衛艦で、空母化の構想もある「いずも」と同型だ。

「かが」

 これに対し、中国の反応は、従来のような激烈な反発ではない。

 中国外務省の耿爽報道官は17日の記者会見で、「現在、南シナ海の情勢は安定に向かっている。域外の関係国は慎重に行動し、地域の平和と安定を損なわないよう求める」と述べた。

ドナルド・トランプ米大統領は17日(米国時間)、中国からの輸入品に追加関税を課す制裁第3弾を24日に発動すると発表した。中国の“軟化”は、対米貿易戦争での苦境を反映しているのか。このタイミングで日本側が対潜水艦訓練を公表した狙いを、専門家はどうみるか。

 米国事情に精通する拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司教授は「訓練の公表が、中国への牽制(けんせい)であることは間違いない。米国の対中関税制裁は強力で、日本は米国と歩調を合わせ、軍事面から後方支援するという意味があるのだろう」と話した。

 これと符合するように、官邸に近い永田町関係者は次のように語った。

 「米中貿易戦争が激化するなか、中国が軍事的緊張状態を演出する懸念がある。今回の公表は、日米による『軍事的緊張を許さない』というメッセージだった可能性が高い。潜水艦『くろしお』は最新鋭潜水艦ではなく発見しやすいが、中国の哨戒能力では把握できなかったのではないか。このため、『われわれは南シナ海でも自由に行動できる』『挑発はダメだ』と伝えるため、異例の公表に踏み切ったとみる。軍事的挑発で懸念されるのは、弾道ミサイルを搭載した中国原潜の太平洋進出だ。米中の軍事的緊張が一気に高まる」

 中国の具体的行動を受けたメッセージとの分析もある。

 防衛関係者は「防衛省の今回の動きは異例だ。表向きのメッセージとは違う可能性が高い」といい、続けた。

 「潜水艦の行動は、各国海軍とも極秘だ。トランプ大統領でも、米原子力潜水艦の動きは知らされない。防衛省がリスクを侵して公表した意図がある。あくまで推測だが、中国が南シナ海で許容できない行動をしたのではないか。中国は現状を少しずつ変更して、軍事的覇権を強める戦術を取っている。自衛隊がそれを察知し、米国と情報共有したうえで、中国側にメッセージを伝えたとみるのが自然だろう。自衛隊の哨戒能力は世界最高だ。日本周辺で各国艦船や潜水艦の動向をリアルタイムで把握している。中国の抑制的な反応を見る限り、メッセージは伝わったのではないか」

【私の論評】日米同盟は北朝鮮問題を解決するつもりのない中国の喉元にあいくちをつきつけた(゚д゚)!

小野寺五典(いつのり)防衛相は18日午前の記者会見で、海上自衛隊の潜水艦「くろしお」が南シナ海で13日に行った訓練について「戦術技量の向上を図るもので、特定の国を念頭に置いたものではない」と述べ、軍事拠点化を進める中国への牽制(けんせい)ではないと強調しました。その上で「南シナ海での潜水艦が参加する訓練は15年以上前から幾度となく行っている。昨年、一昨年にも実施している」と述べました。



秘匿性が高い潜水艦の訓練を公表したことについては「過去も適切に公表している。特に意図があってのことではない」と語りました。

ただし、海自は南シナ海での実任務に就く潜水艦の訓練を公表したのは、今回の事例が初めてだと説明しています。

日本の海自の潜水艦や、米軍の潜水艦が南シナ海で訓練をしたり、哨戒任務にあたっているのは、以前から知られていることで、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【世界ミニナビ】中国ご自慢の空母「遼寧」は日米潜水艦隊がすでに“撃沈”?―【私の論評】中国の全艦艇は既に海上自衛隊により海の藻屑に(゚д゚)!
実戦ではほとんど役立たずといわれる空母「遼寧」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。
日本の海上自衛隊と米国海軍の潜水艦艦隊が演習で遼寧を“撃沈”しているようだと明らかにしたのは、米誌「ナショナル・インタレスト」だ。同誌は6月18日(ブログ管理人注:2016年)のウェブサイトで、「撃沈している」との断定的な表現は微妙に避けながらも、日米の潜水艦艦隊は遼寧が出航するたびに追尾し、“撃沈”の演習を繰り返しているとしている。
・・・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・・ 
 ナショナル・インタレストは海軍艦艇の中で最も強力なのは潜水艦戦力で、空母をはじめとする水上艦艇を沈めるのに最も有効な手段だとしている。遼寧についてもその配備先は当初、海南島や台湾やベトナム近くの海軍基地ではないかとの観測もあったが、山東半島の付け根にあり、黄海に面した北海艦隊の根拠地となっている青島に配備された。 
ナショナル・インタレストは、中国が遼寧の母港を青島にした理由として、通常動力型の宋級潜水艦と漢級原子力潜水艦が配備されているためだとしており、宋級潜水艦と漢級原子力潜水艦が日米の潜水艦隊に対抗するうえで有効なためだと分析している。 
ナショナル・インタレストは潜水艦戦力の例として、2006年10月に宋級潜水艦が沖縄近海で米空母キティホークに魚雷攻撃ができる距離まで近づき、浮上したことを紹介。また、2013年に中東のオマーン湾で行われた演習で、米海軍の攻撃型原潜が英海軍の空母イラストリアスに魚雷で攻撃できる距離まで近づいたことを明らかにしている。 
水上艦や潜水艦をはじめとする中国海軍の動向は人工衛星や偵察機によって把握され、艦艇が出港すると、海上自衛隊や米海軍の本格的な監視・追跡が始まる。もちろん、まさにこの時間帯にも中国の軍港の近海や東シナ海や南シナ海から西太平洋に抜ける海峡などのチョークポイントに日米の潜水艦隊は潜んでおり、中国の海軍艦艇をにらんでいる。
ちなみに、チョークポイント(英: choke point)とは、海洋国家の地政学における概念のひとつであり、 シーパワーを制するに当たり、戦略的に重要となる海上水路をいいます。 見方を変えれば、例えば、シーレーン防衛において、重要な航路が集束している部位であったり、あるいはスエズ運河やパナマ運河など、水上の要衝を意味します。

地理的チョークポイント

日米の潜水艦は、隠密裏にこれらのチョークポイントに潜み、協同あるいは単独でも、監視や訓練を以前から実施しているのです。そうして、「遼寧」やその他の艦艇を何度となく、訓練で撃沈しているのです。

日本は第2次世界大戦後に憲法で平和主義を掲げる一方で近代的な軍事力を築き、中国や北朝鮮の行動に対する懸念が高まる近年は、さらなる増強に取り組んでいます。日本はブルネイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、台湾やベトナムとは違い、南シナ海に直接領有権を主張しているわけではないですが、東シナ海では中国と台湾と尖閣諸島の領有権を争っています。

日本は一番の軍事同盟国であるアメリカと共に、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で中国が岩礁の軍事拠点化を進めていることについて、より厳しい姿勢で臨む構えを示しています。アメリカは「航行の自由」を主張して、これまで周辺海域に数多くの巡視船を派遣しているが、中国は同海域での建設作業は「主権国家としての権利」だと主張し反発しています。

海上自衛隊は8月にも南シナ海での訓練を実施しており、これには北朝鮮も反発を表明しました。北朝鮮は南シナ海の領有権争いに関与していないですが、海上自衛隊がアジア太平洋地域で米海軍と合同で訓練を実施したことを、中国と共に強く非難。国営通信社の朝鮮中央通信は「日本は平和を破壊した行為の代償を払うべきだ」と主張しました。

北朝鮮は9月15日にも、政府系メディアを通じて、陸上自衛隊が8月26日に静岡県御殿場近郊で実施した国内最大規模の火力演習を強く非難。政府機関誌の民主朝鮮はこの演習について、日本が「チャンスがあれば他国を侵略・占領できるように軍事力の強化を目指している」ことを裏付ける証拠だと主張しました。

中国と北朝鮮は長年、社会主義的な絆とともに、両国とも第2次世界大戦下で日本と一度も戦ったことがないにもかかわらず、あたかも抗日戦争で日本に勝利したかのような演出をし、日本を悪魔化することによって、国内で統治の正当性を主張しているということでも共通点があります。

北朝鮮は2011年に金正日の死去を受けて息子の金正恩が最高指導者となって以降、それまで後ろ盾となって影響力をふるってきた中国との関係悪化が囁かれてきたものの、金は今年に入って習近平国家主席の元を3回にわたって訪問し、関係の強化をアピールしています。

中国は、金が6月の米朝首脳会談で体制保証と引き換えに約束した非核化の実現を北朝鮮に求めていくという点で、アメリカなどの主要国を支持しているように装っています。しかし、それはみせかけだけに過ぎないということをトランプ大統領は見破ったのです。

昨日のブログにも掲載したように、北朝鮮問題の根本的な解決を急ぐトランプ政権に対し、中国はあくまでもそれが「解決されない」方向へと持っていこうとするので、北朝鮮問題をめぐっての米中連携は最初から成り立たなかったのです。

トランプ政権は、とうとう中国を頼りにしての北朝鮮問題の解決は不可能であるどころか、中国こそが北朝鮮問題解決の邪魔であるとわかったようです。

だからこそ、昨日のブログにも掲載したように、米国は今のタイミングで中国に対して対貿易戦争を仕掛けたのです。無論それだけが目的ではなく、最大の目的は中国が知的財産権をないがしろにすることに対しての制裁です。

そうして、それだけではなく、日米同盟の同盟国日本を通じてこれからも、中国が北朝鮮問題を解決するつもりながなく、北朝鮮の日本に対する内政干渉などを許容するようであれば、南シナ海で何かがおこるかもしれないこと周知させるため、中国の喉元にあいくちを突きつけたのです。これは米国が直接実施すれば、大事になりかねないので、日本を通じて実施したものだと思います。

実際、日米が協力すれば、中国を相手に南シナ海の海上封鎖などすぐにできます。中国は今更ながら、その可能性に気づき、南シナ海を中国の戦略原潜の聖域にするのは不可能であることを悟ったことでしょう。南シナ海の日米の潜水艦隊に対して軍事行動を起こせば、中国艦隊はなすすべもなく、海の藻屑と消えます。

実際、中国がそのような動きを見せれば、米国は何のためらいもなく、場合によっては軍事衝突の危険をおかしてでも、南シナ海を海上封鎖することでしょう。日英はこれに監視などで協力することになるでしょう。

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2016年1月25日月曜日

「日本以外なら中国の勝利意味する」豪潜水艦共同開発で米政府―【私の論評】世界の海から原潜が消える日も?中国が最も恐れる怪物 改「そうりゅう」(゚д゚)!


日本の「そうりゅう型」潜水艦
25日付のオーストラリアン紙は、日独仏が争うオーストラリアの次期潜水艦の共同開発相手選定で日本が選ばれなければ、日本案に反対する中国が外交的に勝利することを意味するとの米政府筋の見解を報じた。

ターンブル首相は1月中旬に訪米した際、潜水艦選定についても協議したとされる。米政府は公式には中立の立場を強調しているが、事務レベルではこうした懸念をオーストラリア側に伝えているとみられる。

米政府筋は、海上自衛隊の「そうりゅう型」ベース案を支持する理由を(1)海洋進出する中国への対抗上、最も性能が高い(2)最も相互運用性がある(3)日米豪の戦略的協力が加速される(4)日本の敗北は中国の外交、戦略的勝利を意味する-とした。

【私の論評】世界の海から原潜が消える日も?中国が最も恐れる怪物 改「そうりゅう」(゚д゚)!

上の記事を読まれても、なぜ米政府がこのような見解を発表するのか、理解できない人も多いのではないかと思います。なぜ、わざわざ、米政府がまるで日本のセールスマンでもあるかのようなことをするのでしょうか?

このようなことは、今回に限りません。随分前から、米専門家はそのような声明を出していました。そうして、今月22日も、米保守系外交誌ナショナル・インタレスト(電子版)に、アボット前豪首相の外交アドバイザーだったアンドリュー・シアラー氏と、米戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン上級副所長が寄稿していました。

その内容は、「米政府は(公式には)いずれの国にも肩入れしていないが、そうりゅう型は卓越した性能を持ち、米国製の戦闘システムを搭載して日米豪で相互運用すれば長期の戦略的利益になることに疑いはないと、米政府高官や米軍幹部はみている」との内容でした。

では、そうりゅう型潜水艦の卓越した能力とはどのようなものなのでしょうか。今日はこれについて掲載します。

日本の海上自衛隊は、今年3月には、7番艦「じんりゅう」が就役予定で、2020年までに11隻を保有する計画です。
従来はシュノーケルで空気を取り入れ、ジーゼルエンジンを稼働させ
電気を発電し、それを蓄電池に蓄え、水中ではそれを推力にもちいた
そうりゅう型潜水艦の最大の特徴は、これまで海上自衛隊が配備してきた潜水艦と異なる動力を搭載したことです。それは、AIP(Air-Independent Propulsion)、非大気依存型推進です。

これまではディーゼルエンジンを動力としていたため、大気中の酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する必要がありました。

そのためには、時々、海面近くまで浮上しなければなりませんでした。潜水艦は潜っていてこそ真価を発揮します。定期的に浮上をすれば、敵に見つかる可能性が高くなります。

一方、「そうりゅう」型はスターリングエンジンを動力としました。これは気体を温めて膨張させてピストンを持ち上げ、海水で気体を冷やして収縮しピストンを下げます。この繰り返しでエンジンを動かします。これにより、燃費もかなり良く、吸排気を必要としないため、長期間にわたる潜航が可能になりました。

09年に1番艦「そうりゅう」が就役した時点では、このエンジンは、原子力潜水艦に次いで長く海中に潜っていられため、最も無駄のない優れたエンジンとも言われていました。

現在の「そうりゅう」型潜水艦の、大型電動機には電源が三種類あります。ディーゼルエンジン、主蓄電池、AIPエンジンです。ディーゼルエンジン運転には大気が必要なので浮上中またはシュノーケルで蓄電池に急速充電します。

AIPエンジンは少量のディーゼル燃料と液体酸素を使用し長時間低速の潜航移動が可能です。その間に蓄電池は完全充電されます。蓄電池は超静粛移動や高速水中機動に使うが急速に消耗してしまいます。

以下に現行の、「そうりゅう」型潜水艦の模式図などを掲載します。

AIPを搭載した「そうりゅう」型潜水艦
スターリングエンジンを4基装備している。
■潜水艦「そうりゅう」型
全長 84メートル
全幅 9.1メートル
排水量 4200トン
最大速度 13ノット(水上) 20ノット(水中)
乗員 65人
武装 魚雷発射管×6

しかし、現行のままでは、エンジンを動かすことに変わりなく、日本の工作技術が優れているため、現行のものでも、エンジンの音はかなり低くく、おそらく世界で最も静かな潜水艦ですが、それでもどうしてもその音が出ます。そこで、それをなくすために、リチウムイオン電池を搭載し、電気で動かす仕組みに行きつきました。

簡単に言えば、自宅で携帯電話を充電するように入港中に充電します。外では本体内の電池で動作し、帰ってきて再び充電、といった具合です。電池の持ちは良く、数週間の活動が可能だそうです。

新型の「そうりゅう」型潜水艦には、鉛蓄電池とAIPを設置している空間に大型のリチウムイオン電池を積むことで、これまで最大2週間程度だった潜航期間が「格段に伸びる」(防衛省関係者)といいます。リチュウムイオン電池は鉛電池に比べ蓄電量が2.5倍あり、高速航行に適しています。

AIP艦の艦長は、作戦行動の今後の展開と、AIP、蓄電池それぞれの使用場面を想定し、場面に応じて動力を選定しなければなりません。しかし、これがリチウム電池だけの艦になれば、高速・低速を必要に応じて使い分け、電池の残量のみを考慮すれば良くなります。運用者にとってどちらが使いやすいか、言うまでもないことです。

建造費や維持管理費を含めて、15年間使用した場合のライフサイクルコストは、現行の1000億円よりも安くなる見込みだそうです。

防衛省は、国産のリチウムイオン電池が、短時間で大容量の電力を蓄えられるようになったことから、2015年度予算で要求する潜水艦から、リチウムイオン電池を導入し、AIPシステムを廃止することを決めました。リチュウムイオン電池は、20年以降に誕生する改「そうりゅう」型で採用されます。

ちなみに、リチュウムイオン電池の技術は日本の独壇場で、iPhoneや他のスマートフォンに使用されている、リチュウムイオン電池はほとんどが日本製です。リチウムイオン電池は性能的にはメモリー効果もなく最適ですが、可燃性の電解液を用いているので過充電時に電池の温度が上昇すると発火する可能性があります。特に電池が大型化すると冷却が難しい為、安全性の問題があります。

そのため、海外では潜水艦用の大型のリチュウム電池を製造することはほぼ不可能で、は今のところ日本しか製造できません。

「そうりゅう」型潜水艦 「うんりゅう」
上の記述は、ほとんどがこの「そうりゅう」型潜水艦の技術的に側面について述べました、以下に簡単に軍事的な意味を掲載しておきます。

日本はもともと、技術水準が高いため、潜水艦の推進装置もあまり音は出ませんでした、しかしスターリングエンジンを搭載してから、格段に音が静かになり、そのため、ソナーなどで敵から発見されにくいという利点がありました。

現行の「そうりゅう」型潜水艦ですら、さらにかなり音が小さいのと、潜行時間が長いので、かなり隠密行動がとりやすいという利点がありました。敵に気づかれず、索敵行動や、攻撃ができます。これに比較すると、アメリカの最新鋭の原潜ですら、推進音が大きく、「ゴー、ゴー」という推進音がします。これだと、現在の技術水準の高いソナーでは、発見されやすいです。

中国の最新鋭の原潜の場合は、もともと工作技術がお粗末なので、水中で進むときには、まるでドラム缶をガンガン叩いているような音を出しながら推進するということになり、すぐに敵に発見されてしまいます。

敵側からすると、「そうりゅう」型ですら脅威なのに、リチュウムイオン電池を用いた改「そうりゆう」型は、無音と言って良いくらい音が静かなので、何をもってしても発見することができず、攻撃を受けるときには、前もって準備などできません。

全く察知できないところから、いきなり魚雷などで攻撃されるという状況になります。これを防ぐ手段はありません。海で、これほど強力な武器はありません。さらに、このブログでも以前掲載したように、日本の対潜哨戒能力は、世界トップ水準ですから、現行の「そうりゅう」型潜水艦と束になって挑まれたら、中国海軍は全く歯が立たないことでしょう。

もし、戦争になれば、中国海軍は、空母も戦艦もあっという間に海の藻屑になって消えます。はっきりいえば、自殺行為です。だからこそ、中国は尖閣付近でも、本格的に駆逐艦や空母を派遣できず、せいぜい機関砲付きの艦船をおっかなびっくり派遣する程度のことしかできないのだと思います。

現在、中国を含めて、いくつかの国が原潜を運用していますが、ご存知のように原潜は、原子力を推進力に用いています。しかし、これは言うまでもなく、非常に危険です。放射能汚染の危険といつも隣り合わせです。

日本以外の国には改「そうりゅう」型のような潜水艦を建造する技術はありませんが、数十年後には、原潜は姿を消し改「そうりゅう」型のような潜水艦が主流になるかもしれません。



この改「そうりゅう」型を買いたいと手を挙げた国が、事実上の「準同盟国」とされるオーストラリアです。次期潜水艦として改「そうりゅう」型は、要求性能はすべて満たしており、交渉はうまく進んでいました。

日本は武器の輸出を進めるため、防衛装備庁という新たな役所も立ち上げ、武器輸出三原則を緩和した防衛装備移転三原則へ改定しまた。自衛隊初の武器輸出のため、賛成派も反対派も大騒ぎしましたが、土壇場で“買い手”から待ったがかかりました。

日本ですべてのパーツを製造し、オーストラリアで組み立てる「ノックダウン生産」が不満のようです。国内生産の比率を70%にしたいそうです。

そこで、フランスが提案する「バラクーダ」型潜水艦が採用される可能性が出てきました。これは、原子力潜水艦がベースで、ディーゼルエンジンに乗せ換えるそうで若干無理のあるプランですが、「ライセンス生産」で国内生産の比率は100%になります。これが、かなりオーストラリアの心を揺さぶっているようです。

しかし、これにすると、技術的にはかなり劣り、ディーゼルエンジンを搭載するというのですから、現行の「そうりゅう」型よりもさらに、性能は落ちます。

結論は、来年3月に出る予定です。私自身は、オーストラリアは改「そうりゅう」型にすべきものと思います。

中国側は、モンスターである改「そうりゅう」型など、導入されてはオーストラリア海軍にも全く歯がたたなくなることは、わかりきっているので、絶対に導入されたくないと考えているに違いありません。

だからこそ、ブログ冒頭の記事で、米政府筋は、改「そうりゅう」型が選ばれなければ、日本案に反対する中国が外交的に勝利することを意味するとしているのです。

オーストラリアは、数年前までは、対輸出先として、中国への依存がかなり高い国でした、いまでも親中派の勢力は強いです。

オーストラリアが「そうりゅう」を選ばないということになれば、日米もアジアにおける安全保証の問題を見直す必要があります。

私は、そう思います。みなさんは、どう思われますか?

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2016年1月10日日曜日

海自哨戒機、南シナ海飛行拡大へ…中国をけん制―【私の論評】これは中国にとってはかなりの脅威、南シナ海の中国の艦船と潜水艦の動きが丸裸に(゚д゚)!

海自哨戒機、南シナ海飛行拡大へ…中国をけん制



防衛省・自衛隊は、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に参加したP3C哨戒機が日本に帰還する際の飛行ルートを見直し、フィリピンやベトナムなど南シナ海に面する国の基地を優先的に経由させる方針を固めた。

高度な監視能力を持つP3Cの飛行範囲が、中国が「領海」と主張する南シナ海で拡大する見通しだ。「上空飛行の自由」の保護にもつながり、米軍が中国の人工島周辺で実施している巡視活動を日本が独自に支援する活動といえる。

海上自衛隊のP3Cは、アフリカ・ソマリア沖での多国間の海賊対処活動に参加し、約3か月ごとに日本とアフリカを往復している。これまではシンガポールやタイなど南シナ海から比較的離れた基地を給油地に利用してきた。これを、往路は従来通りだが、復路についてベトナムやフィリピン、マレーシアなど南シナ海周辺の基地を優先的に利用するようにする。訪問先では防衛交流も進める予定だ。

【私の論評】これは中国にとってはかなりの脅威、南シナ海の中国の艦船と潜水艦の動きが丸裸に(゚д゚)!

このニュースあまり大きく日本ではあまり大きく報道されませんが、これは、いずれ日本の海上自衛隊が、南シナ海の中国の動き、特に艦船や潜水艦の監視を定期的に行うための前触れではないかと思います。中国にとっては大きな脅威だと思います。

これを予感させる出来事として、昨年は、海自のP3Cは、南シナ海でフイリピンと共同訓練を行っています。それに関連する記事を以下に掲載します。
海自P3C機、南シナ海上空を飛行 フィリピン軍と共同訓練 連携の強さ誇示
流氷観測に向かう海上自衛隊第2航空群の哨戒機P3C=青森県八戸市
 フィリピン軍との共同訓練のため同国西部パラワン島入りしている海上自衛隊のP3C哨戒機が23日、南シナ海上空での飛行を開始した。中国が岩礁埋め立てを進めるスプラトリー(中国名・南沙)諸島にも近い同島で自衛隊部隊が活動するのは初めてで、南シナ海の実効支配を強める中国に対し、存在感とフィリピンとの連携の強さを誇示する機会となった。 
 海自隊員14人とフィリピン軍の3人が乗り込んだP3Cは23日午前6時(日本時間同7時)すぎ、パラワン島を離陸。同島西80~180キロの南シナ海で実施される本番の訓練は24日の予定で、この日は周辺をフィリピン空軍機と一緒に飛行した。 
 海自鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)の第1航空群所属のP3Cと隊員約20人は、21日に現地入り。27日に帰国の途に就く。
この記事は、昨年6月23日のものです。

この対潜哨戒機あまりここ北海道とは関係のないものと思っていましたが、そんなこともはありません。昨日は以下のような記事が掲載されていました。
海上自衛隊P3C哨戒機、今冬初の流氷観測 
オホーツク海の流氷を観測する海自のP3C
 海上自衛隊第2航空群(青森県八戸市)は警戒中のP3C哨戒機が9日、オホーツク海上で、この冬初めて流氷を観測したと発表した。 
 流氷は北海道網走市から北へ約280キロの海上をゆっくり南下。大きさは幅約5キロの帯状で、薄く南北方向に広がっているという。 
 昨冬の初観測は12月31日だったが例年、1月上旬に観測され、今年も平年並みという。 
 札幌気象台によると、オホーツク海沿岸から肉眼で見える「流氷初日」は平年並みの今月中旬になりそうだという。
このオホーツク海の海自PC3の流氷観測は、おそらく冷戦時代の旧ソ連に対する対潜哨戒活動の名残であると思われます。

もちろん、P3Cの役割は流氷観測や海賊の監視だけではない。「対潜哨戒」つまり、日本周辺海域を航行する潜水艦の警戒・監視が主要な任務です。

これに関しては、昨年5月8日に産経ニュースが以下のような記事を掲載しています。
【メガプレミアム】哨戒機P3C 職人芸で敵潜水艦を追い詰める「世界一いやらしい部隊」
海上自衛隊第2航空群所属の哨戒機P3Cの機窓
から見える別のP3C=3月4日、青森県八戸市
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、実際にP3Cがどのようなことをしているのか、海自の対潜哨戒活動の凄さを示す部分を以下に掲載します。

捜索用レーダー、熱源を探知する赤外線暗視装置、鉄の塊である潜水艦が航行することで生じる磁場の乱れをつかむ磁気探知機(MAD)、敵が発する電波を手がかりに位置を特定する電波探知装置(ESM)、そして海中に投下し潜水艦のスクリュー音をとらえる音響探知機(ソノブイ)。ハイテク機器を駆使して敵潜水艦を追い詰めるP3Cだが、海自関係者は「最後は人間の目がものを言う」と口をそろえる。
訓練では海自の潜水艦が“敵”としてP3C部隊と攻防戦を繰り広げる。ある海自の潜水艦乗組員は「日本のP3C部隊は世界一いやらしい部隊だ。米国の部隊と比べても、逃げるのが難しい」と明かす。P3Cパイロットは「一度発見した潜水艦を見失うなんてことがあれば、恥ずかしくて基地に帰れなくなる」と語り、こう続ける。 
「レーダーや音響のデータを分析して敵潜水艦を見分ける技術は職人芸のように徒弟制度で伝えられる。こういう分野は日本人が得意とするところだ」 
P3C部隊は2人のパイロットのほか、警戒・監視に必要な情報を集約して指示を出す戦術航空士(TACCO)、音響やレーダーなどを分析する対潜員ら11人で構成される。このチームワークで敵潜水艦を捜索し、追い詰め、有事となれば攻撃するのだ。 
流氷観測を行う第2航空群の担当地域は日本海北部や北海道周辺海域。冷戦時代は旧ソ連海軍の動向を探る最前線と位置付けられていた。近年になって再びロシア海軍の動きが活発になっているとはいえ、冷戦後の焦点は中国が海洋進出を進める南西方面に移っている。
東シナ海南部をカバーする第5航空群(那覇航空基地)には全国各地のP3C部隊がローテーションで応援に駆け付けている。第2航空群も例外ではない。ある隊員は「しょっちゅう沖縄に行っているので、沖縄土産を買って帰っても家族があまり喜ばなくなった」と苦笑する。 
“出張先”は沖縄だけではない。P3C部隊はアフリカ東部ソマリア沖・アデン湾で海賊対処活動も行っており、これも各航空群が順番で派遣される。北方海域の警戒・監視、流氷観測、沖縄派遣、海賊対処活動。これに遭難船舶の救助活動も加わる。 
海自はP3Cの後継機として最新鋭国産哨戒機P1の導入を進めているが、約70機の入れ替えが完了するまでは四方の海に目を光らせ、耳を澄まして敵の動向を探ることになる。
昨年の観艦式に初参加した最新鋭の国産哨戒機「P1」。
「IRフレア」と呼ばれる防御装置を発射。昨年10月18日
旧ソ連に対する対潜哨戒活動は、当時アメリカからの依頼で始められたものです。この哨戒活動に関しては、当時日本への依頼を担当した当事者の人が、数年前にテレビでこのときのことを振り返って「日本には憲法9条もあることだし、安全保障に関して他国と比較すれば、制限があることから、依頼はしてみたものの、まさか本当に実現するとは思っていなかった」と述懐していました。

アメリカ側も、日本がこの哨戒活動を本当に実行し、しかもかなり大規模に実行し、その活動も世界トップレベルにまで上達させるとは思っていなかったようです。

しかし、日本の対潜哨戒能力は冷戦の間にかなり上達し、事実上世界のトップレベルになりました。

ソ連の原潜等に対する日本の海自の長期にわたる対潜哨戒活動は、様々なノウハウを海自にもたらし、今日に至っています。このようなトップの世界一の能力を持つ日本の海自にとって、ソマリアの海賊の監視など本当に朝飯前というところでしょう。

確かに、数年前までは、ソマリア沖の海賊に関してはかなり危険であるとされていましたが、最近はほとんど耳にしなくなりました。実際、ほとんど海自に事前に察知されるので、海賊活動などなかなかできなくなっているのだと思います。

この海自が南シナ海の対潜哨戒活動に参加するということになれば、中国にとってはかなりの脅威です。南シナ海における、戦闘艦、輸送艦、潜水艦、航空機その他の動きが詳細まで丸裸にされ、海自によって把握され、米国や周辺国に逐一知らされることになります。

中国の原潜も、海自の対潜哨戒活動で丸裸にされる
特に中国の潜水艦は、工作技術がかなり劣っているので、その水中での推進は、まるでドラム缶を目一杯ハンマーか何かを叩きながら、すすむような音がするので、日本の海自の対潜哨戒能力からすれば、簡単に把握することができます。

中国が何か不穏な動きを見せれば、今度は間髪を入れずにすぐに妨害されることになります。日本としても、せっかく情報を提供しても、米国あたりが何も行動をしなければ、厳しく詰め寄るべきです。

そうして、このようなことは、冷戦時代の日本が過去旧ソ連に対して実行したように、確実に南シナ海や、東シナ海でも実行できることでしょう。

戦争や武装などにアレルギーの強い日本ですが、なぜか、このような監視活動に関しては、過去の冷戦においては日本でもあまり多くの国民違和感なく受け入れられました。南シナ海や東シナ海の監視活動もそうなることでしょう。

これによって、日本は日本のライフ・ラインを自らの手で守ることも可能です。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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