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2020年9月2日水曜日

台湾接近の米国がサラミ戦術で打砕く「一つの中国」―【私の論評】米国のサラミ戦術のサラミは、中華サラミよりもぶ厚い(゚д゚)!

台湾接近の米国がサラミ戦術で打砕く「一つの中国」

じわじわと台湾支援を増強するトランプ政権

台湾を訪問し中華民国総統府でスピーチする米国の
                                       アレックス・アザー厚生長官(2020年8月10日)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 米国政府の台湾への接近が顕著となってきた。台湾への武器売却、米国政府閣僚の訪問、米台自由貿易構想の前進など、トランプ政権や議会の最近の措置はいずれも中国政府の激しい反発を招いている。

 米国の一連のこうした動きは、米中関係の基本を長年、規制してきた「一つの中国」の原則を放棄する展望さえもにじませる。米国はついに「一つの中国」原則を切り捨てるのだろうか。

「一つの中国」原則に縛られないトランプ政権

 米中両国は1979年の国交回復以来、米国は中国側の「一つの中国」原則を支持する立場をとってきた。米国は中華人民共和国を「中国の唯一の合法政権とみなす」という趣旨である。「一つの中国」原則に厳密に従えば、台湾、つまり中華民国は中華人民共和国の一省に過ぎず、政府扱いはできないことになる。米国の歴代政権はこの原則をほぼ忠実に守ってきた。

 しかしトランプ大統領は、就任直前に台湾の蔡英文総統と直接会話した際、「中国が貿易面での合意を守らない以上、米国がなぜ『一つの中国』の原則に縛られねばならないのか」という疑問を呈した。また、それ以降の一連の公式声明でも、トランプ政権は「我々が解釈する『一つの中国』原則」という表現で、同原則に対する米側の解釈は中国側とは必ずしも同一ではないという点を明解にしてきた。

 実際にトランプ政権の最近の言動は、中国側の唱える「一つの中国」原則に明らかに違反しかねない点が多くなった。たとえば、最近米国は以下のような動きを見せている。いずれも中国政府が反対する動きである。

【米国の政府高官が台湾を訪問】米国政府のアレックス・アザー厚生長官は8月に台湾を訪問して蔡英文総統と会談した。この閣僚訪問は、トランプ大統領が議会の法案可決を受けて施行した「台湾旅行法」の結果でもあった。

【台湾に武器を売却】中国政府の全面的な反対を押し切り、トランプ政権は昨年(2019年)から今年にかけてF16戦闘機66機、エイブラムス型戦車108台を台湾に売却した。さらに高性能の魚雷1億8000万ドル相当の売却を決めている。

【台湾との自由貿易協定に前向きな姿勢】米台間の自由貿易協定は台湾側が年来、希望してきたが、米側の歴代政権は中国への懸念などから対応しなかった。この構想にトランプ政権は前向きな姿勢をみせるようになった。とくに現在の米国議会には協定を推進する声が強くなった。

【米軍が台湾支援へ】米国海軍の艦艇が台湾海峡を頻繁に航行することにより、中国軍への抑止の姿勢を明示するようになった。米空軍の戦闘機なども台湾領空周辺での飛行頻度を増して、中国空軍への牽制を示すようになった。

【米国政府高官が台湾支援を表明】トランプ政権のポンペオ国務長官やポッティンジャー大統領補佐官が台湾の民主主義を礼賛し、米台連帯を強調するようになった。すでに辞任したボルトン大統領補佐官は政権外で、台湾政府を外交承認することまで唱えている。

【米国の「台湾防衛」明確化への動き】米国政府は「台湾関係法」により、防衛用の兵器を売却する形で台湾防衛を支援してきた。だが台湾が中国から武力攻撃を受けた際の対応は明確に定めていない。その曖昧な支援を「確実な台湾防衛支援」へ変えようという提案がトランプ政権内外で高まってきた。

 以上のような動きは、トランプ政権が議会の了解を得て長年の「一つの中国」原則を放棄する方向へと進む可能性を示しているともいえる。

 トランプ政権はまだその種の決定的な動きをとってはいない。しかし現在の米国では、とくに中国政府が香港に関する「一国二制度」の国際誓約を破ったことへの非難が高まっている。その動きがトランプ政権の台湾政策変更という可能性を生み出しつつあるというわけだ。

米国が実行している「サラミ戦術」

 トランプ政権の「一つの中国」原則への現在の態度について、中国の政治動向や米中関係の動きに詳しい「戦略予算評価センター(CSBA)」のトシ・ヨシハラ上級研究員は次のような分析を語っている。

 「現在、トランプ政権は台湾政策として『一つの中国』原則をサラミのように切り削いでいるといえる。その原則の実質を少しずつ切り落として、なくしていこうというわけだ。ただし一気に現行の政策を除去するわけではないので、中国は決定的な対抗措置をとることはできない。しかし米側の除去策は、少しずつにせよ中国側に不満やいらだちを生じさせるに足る動きだといえる。だからこのサラミ戦術はきわめて有効だろう」

 ヨシハラ氏の以上の見解は、控えめながら、トランプ政権がもはや従来の「一つの中国」政策は守らず、台湾への支援を着実に増していく流れを明示したといえる。米台関係、そして米中関係はそれぞれの根幹部分で決定的に変化していくことになりそうだ。

【私の論評】米国のサラミ戦術のサラミは、中華サラミよりもぶ厚い(゚д゚)!

中国の得意とするサラミ戦術とはどのようなものなのか、ここで振り返っておきます。これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、印北東州で道路建設 インド側反発「インフラ整備で領有権主張する常套手段」―【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!

この記事よりサラミ戦術の事例を引用します。

"
むかしむかし、小さな駄菓子屋を一人できりもりしているばあさんがいました。その駄菓子屋は広い道路に面していて近くに中学校もあったのですが、売り上げは思わしくなくばあさんは質素な暮らしを強いられていました。 
その中学校は田舎の中学校のため、バスで通学している学生も多かったのです。バス停はばあさんの店から十メートルほど離れたところにあり、登下校の時間になると学生たちで賑わっています。あの学生たちが店に来てくれれば……。そう考えたばあさんは一計を案じました。その日から、毎日夜になるとこっそりとバス停を店の方向に動かしたのです。バレないように、一日に五ミリずつ。 
そして数年後。バス停はばあさんの店の真ん前に移動し、店はバス待ちの学生たちで賑わうようになった、といいます。
この話は、本当なのかどうかはわかりませんが、何かを一気に動かすと多くの人々に気付かれるのですが毎日少しずつ動かしていると意外とバレないものなのです。カツラも同じです。ある日突然、急激に髪の毛が増えるとこれは絶対にカツラだとバレます。だから少しずつ植毛していき、不自然にならないように増やしていくのです。

それはともかく、この現象はやはり人間の認識能力の盲点を突いたものでしょう。大脳の空間識野は、特に急激な変化、すなわち微分情報を抽出するように働きます。それゆえ、微分量が少ない緩やかな変化は認識されにくくなっているのです。

なぜこのような働きをするようになったのかは、進化論で簡単に説明がつきます。ある動物の認識する外界は、動くものと動かないものに大別されます。動かないものというのは、大地・山・樹木などです。これらはその動物にとって、友好的ではないが敵対的でもありません。中立なのです。ゆえに、特殊な場合をのぞいてはこれらの動かないものに注意する必要はないです。

これに対して動くものは要注意です。動くものは、さらに三種類に分けられます。すなわち、敵・餌・同種の異性です。敵からは逃げねばならぬし、餌と同種の異性は追いかけねばならないです。これらを素早く発見することは、生きていくためには重要な能力です。したがって、動くもの、すなわち微分量が大きいものを認識する能力が進化の過程で身についたのでしょう。



これと、似たような話で、「サラミ戦術」というのがあります。サラミ戦術(サラミせんじゅつ、ハンガリー語: szalámitaktika [ˈsɒlɑ̈ːmitɒktikɒ] サラーミタクティカ)とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。

"
中国のサラミ戦術というと、やはり南シナ海の中国による違法支配が筆頭にあげられるでしょう。中国は、1980年代から最初に南シナ海の領有権を主張し、その後に南シナ海の浅瀬に、ほんの数人しか住めないような掘っ立て小屋を建てました。そうして、その掘っ立て小屋に交代で、中国人を住まわせ、実行支配の準備にとりかかりました。

その頃の中国は、現在のように大規模な埋め立ての技術もありませんでした。だからできるのはそのくらいだったのです。それでも、中国は周辺諸国の様子を探りつつ、掘っ立て小屋の数を増やすとか、掘っ建て小屋の規模を大きくしていきました。

この間、無論フイリピンやベトナムなどの南シナ海の周辺国は、これに抗議をしたのですが、中国は艦艇を送り込むなどして南シナ海の掘っ立て小屋を守り抜きました。

南シナ海の中国構築物

そうして、このくらいの規模だと、米国をはじめとする先進国も、これに強く非難をしても、軍事的な手段を講じるということはしませんでした。先進国としては、中国が豊かになれば、自分たちと似た体制になり、もっとまともになるだろうと考えこれを放置しました。それに中国の大きな市場に目がくらみ、中国と大きなビジネスができることに期待し、南シナ海の中国の無法を放置しました。

その後も中国は南シナ海への進出を継続し、最初は掘っ立て小屋だった構築物がだんだんと手のこんだものになっていきました。

そうして、2015年5月21日、米CNNテレビは南シナ海上空を飛行する米海軍P8哨戒機に同乗取材して中国によるサンゴ礁(環礁)埋め立ての様子を放映し、全世界の注目を集めました。

これは9日後、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)における米国防長官による埋め立て即時中止要求と中国人民解放軍参謀副総長の強固な反論の応酬へと続き、米中関係緊張に発展しました。

また6月8日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)首脳宣言には「威嚇、強制又は武力の行使、大規模な埋立てを含む現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対」という文言が盛り込まれ、本件に対する国際社会の厳しい反応を中国に突き付けました。

この頃になってはじめて、米国などの世界の国々が、中国の南シナ海の違法支配に関して、脅威を感じるようになりました。

2016年には、国際司法裁判所が中国の南シナ海支配には、何の根拠もないと裁定しました。しかし、その後も中国は、退く気配をみせず、埋めたてた緩衝を軍事基地にするなどことを強行しました。

さて、冒頭の記事では、米国がこのサラミ戦術を取り始めて、成功していることを指摘しています。そうして、これは有効だと思います。

先にあげたこのブログの記事でも、「逆サラミ戦術」を提唱しました。この記事より、「逆サラミ戦術」に相当する部分を以下に引用します。
私はサラミ戦略に対しては、「逆サラミ戦略」という戦略を採用すべきだと思います。 それは、さきほどのバス停を動かした婆さんのたとえでいえば、バス停が動いたと認識した段階で、それを元に戻すのです。元に戻すにしても、いきなり元の位置に戻すというのではなく、これも一度に5mm程度を戻すのです。 
これは、婆さんが毎日5mm動かしているとすると、ある時点で、婆さんが日々5mm移動しても、バス停は全く動かなくなることを意味します。そうすると婆さんは、動かしても無駄だと思うようになり、諦めてしまいます。 
諦めた後でも、毎日5mmずつ動かすのです。そうして、元の場所に戻ったら動かすのをやめるのです。このやり方を「逆サラミ戦略」とでも名付けたいと思います。
このように実行していけば、中国も米国が台湾を支援することに非難はするでしょうが、逆サラミ的にやられると、非難はしてもすぐに直接何らかの手段に打って出るということはできないでしょう。何か極端なことをすれば、世界中の国々が中国を避難し、米国は、さらに中国に対する制裁を強化することになるだけでしょう。

米国は、これからもサラミ戦術的に、台湾を支援したり、南シナ海の周辺国を支援していくことでしょう。

ただ、米国と中国のサラミ戦術には違いもあります。中国が南シナ海でサラミ戦術を始めたときには、軍事力や経済力や技術力でも、米国にはおよびもつきませんてじた。だから、雄大な戦略はあったにしても、戦術はサラミ戦術を実行するしかなかったのです。

そのサラミ戦術も、毎年ほんのわずかの、本当に薄い透けて裏がみえてしまうようなペラペラのサラミで実行するしかなかったのです。だかこそ、南シナ海を現在のレベルにもっていくのに何十年もかかったのです。

しかし、米国は違います。今でも米国は世界唯一の超大国であり、軍事力は中国などより群を抜いて世界一であり、金融支配力でも群を抜いて世界一であり、その他の技術等も世界一です。

だから、同じサラミ戦術をとるにしても、薄い透けて裏がみえてしまうようなペラペラのサラミで実行する必要はなく、かなり厚めのサラミスライスで実行することができます。

中国が南シナ海を今のレベルまで、違法支配するまでに必要とした年月は、数十年でしたが、米国がこれを無効化するには、数年から長くて10年で十分でしょう。

中国が南シナ海の違法支配を現在のレベルまでに持っていったサラミスライスは数も種類も限られたたので、数十年もかかったのですが、関税や、金融制裁、軍事力、様々な技術の遮断、その他、ありとあらゆる種類の分厚いサラミスライスを駆使できます。

特に軍事力では、日米に潜水艦はステルス性に優れ、中国側に発見されずに、南シナ海の海を自由に航行できますが、中国の潜水艦はステルス性でかなり劣るので、日米はこれを簡単に補足できます。米国などの潜水艦で、南シナ海の中国の緩衝埋立地を包囲してしまえば、中国は手も足も出ません。

南シナ海で、米国は中国に負けるなどと、あらゆる屁理屈をつけて述べている軍事評論家もいますが、そのような人に、「米国は南シナ海では潜水艦を運用しないのですか」と質問してみましたが、未だに返事がかえってきません。私は、米国は空母なみの破壊力のある潜水艦を米軍が使わないということは、ありえないと思います。

そもそも、米国の戦略化ルトワック氏は、中国の南シナ海の軍事基地は、象徴的なものに過ぎず、米国が本気になれば、5分で吹き飛ばせるさ指摘しています。

台湾も、南シナ海や、東シナ海でも、中国は米国の分厚いサラミ戦術で、いずれ八方塞がりになるでしょう。

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2020年8月20日木曜日

中東地政学を変え得るイラン中国同盟はなされるのか―【私の論評】米国の冷静な詰将棋は、対中国だけではなく、中東でも着々と実行されている(゚д゚)!

中東地政学を変え得るイラン中国同盟はなされるのか

岡崎研究所

最近、イランと中国の接近に注目が集まっている。報じられているイランと中国の協定案は、投資と安全保障に関する25年間の包括的戦略パートナーシップを語っている。具体的には、中国はイランの空港、港湾、電気通信、運輸、石油・ガス田、インフラ、銀行に投資し、イランから25年にわたり、1日1000万バレルに達する需要を満たす大量の原油を値引いて受け取るという。


 報じられているイランと中国の協定は、両国の経済にとって重要であるのみならず、地政学的にも大きなインパクトを持ちうる。中国が今後25年にわたりイランから一日1000万バレルの需要を満たす石油を輸入することは、トランプ政権から最大限の圧力をかけられているイランにとってまさに生命線であり、中国にとっては経済の運営に不可欠な石油を確保することになる。中国によるイランの港湾などインフラへの投資はイラン経済に活を入れることになるであろうし、中国は資機材などの輸出で経済の活性化にプラスとなる。兵器開発や情報共有など軍事面でも関係を強化するという。

 中東の地政学への影響について、フィナンシャル・タイムズの国際問題編集長デイヴィッド・ガードナーによる8月3日付けの論説は、「サウジアラビア、エジプト、UAEとバーレーンは3年以上カタールを封鎖してきたが、ここにきて米国はサウジなどにカタールの封鎖を止めるよう言っている。それはイランと中国の同盟の見通しが強まったためである。中国が、バーレーンの米国第5艦隊の基地、カタールのアルウデイドの中東最大の米空軍基地のすぐそばのイランのペルシャ湾岸への進出を考えているとしたら、アラブ諸国の対立は有害である」と解説している。

 ただ、協定はまだ草案の段階である。イランは元来大国との付き合いに慎重であり、どこまで中国との関係に深入りするか分からない。米大統領選挙の民主党候補に確定しているバイデンは、イラン核合意に復帰すると明言しており、バイデンが次期大統領になれば米国の対イラン制裁が再び解除され、イランの西側との経済関係が復活することが予想される。しかし、選挙結果は分からず、イランとしては双方の可能性にヘッジする必要がある。

注:チャートはブログ管理人挿入

 イランの慎重さは2015年のイラン核合意の際にもみられる。核合意締結に際してのイランの第一の選択肢は西側との経済関係の再建であったと思われる。しかし、その一方で、イランは核合意の翌年の2016年に習近平を招聘し、中国との提携を模索している。

 中国にとってイランとの関係強化は経済面のメリットにとどまらず、南西アジア、さらにはペルシャ湾への進出の足掛かりを得ることになる。中国は一帯一路計画の西進を図っており、イランは重要なパートナーとなりうる。また、中国はイランのChahbahar港を支配下の置くかもしれないと報じられている。Chahbahar港はインドが開発したものだが、米国の圧力で手放したものである。中国は、西アジアに足場を築くことは、この地域及びさらにはペルシャ湾での影響力行使に欠かせないと考えているようである。

 ただ、イラン国内では、経済が低迷する中では不利な条件で協定を結び、中国の影響下に立たされるとの懸念も聞かれるとのことで、イラン特有の慎重さも見られるとのことである。イランの内閣は協定案を承認したが、まだ国会には提出されていないと報じられている。

 イランと中国の協定は両国にとってのみならず、中東情勢、中国の外交に大きな影響を与えるものである。中国が乗り気であることは間違いないが、何事にも慎重なイランが最終的にどう対処するか注目される。

【私の論評】米国の冷静な詰将棋は、対中国だけではなく、中東でも着々と実行されている(゚д゚)!

トランプ大統領の就任後、米国はイランに対し継続的に非常に厳しい制裁を行っています。中共はこの協議の中でかなりのことを行っ、すでに米国の制裁に違反している疑いがあります。

以前に複数の中国企業がイランと違法な取引を行って制裁に違反したとして、米国から制裁を受けたことがあります。この点から見ると、中共は米国の対イラン制裁を破壊し、イランの核開発計画を陰で推進する最大の黒幕のようです。

国際社会が制裁を継続する中、イラン政府に経済、外交、軍事分野で支援を提供する国は中共しかありません。

中国とイランは表面的には一種の政治的同盟を結んでおり、経済面では相補互恵の関係にありますが、実際のところは中共が、長年にわたり制裁を受けてきたイランが空前の孤立無援という困難の中にあることを利用して、イランを手中に収めて操ろうとしていると考えるべきだと思います。

最も分かりやすい例が、中共が一帯一路というエサを撒いて、それから交換条件として戦略的価値の高いイランの2つの港を手に入れようとしていることです。

一方、中共が協議に基づきイランに対する巨額の投資を行えば、間違いなくより多くの中国企業が巻き込まれ、米国の制裁対象になるでしょう。

さらに中国がイランと同盟を結んだ場合、米国から大きな打撃を被るほか、中共が中東地域で行っている外交政策全体も大きく損なわれる可能性があります。

何十年もの間、中共はイスラエルから高度な軍事技術を入手してきましたが、そのイスラエルの最大の敵がイランであるため、中国とイランが手を結んだ場合、イスラエルが疎遠になる可能性があります。

2018年王岐山国家副主席がエルサレムを訪れてネタニヤフ首相と会談

さらに同様の状況がサウジアラビアを筆頭とするスンニ派諸国(イランはシーア派)との間にも発生して、中共がこれらの国とのビジネスチャンスを失う可能性もあります。

このパートナーシップは、中国イランの双方にとって良いことばかりではないようです。

中東においては、やはり米国が中国よりは、戦略的に動いているようです。イスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)は、犬猿の仲でした。これを、先日もこのブログに掲載したように、米国が仲介して「歴史的な和平合意」を成立させたのです。

イスラエルとアラブ諸国はもともと対立関係ですが、イランとの対立で共通していました。アラブ人とペルシャ人は共にイスラム教徒ですが、スンニー派とシーア派で対立しています。さらにイラン(ペルシャ人)はアジアに属するので、アラブ諸国から見れば異質な存在です。

それでもアラブ諸国とイランは対イスラエルで共闘していました。そのためイスラエルとアラブ諸国は犬猿の仲でした。それだけにイスラエルとUAE国交正常化は歴史的な転換点です。これは、中東の安定化を意味します。同時に対イランで共通しています。サウジアラビア諸国+イスラエル連合によるイランとの対立です。

米国は中国共産党・イランと対立しています。仮にイラン・中国と米国とが戦争になれば、米軍は中東とアジアに戦力を二分することになるはずでした。これでは米国が不利になります。ところがイスラエルとアラブ諸国が同盟すれば、この状況は変わってきます。

結果的に米軍は、戦略の選択肢を増やすことが可能になります。米軍主力でイラン戦を実行してから、その後の追撃戦はイスラエル・アラブ同盟軍にまかせ、中国共産党との戦争に挑めるし、中国共産党との戦争に専念できます。

状況によっては、イスラエル・アラブ同盟軍とイランが対峙していることを前提として、最初から中国だけと対峙に挑む事が、可能になります。

こうなれば中国共産党は、遅かれ早かれ米国と真正面から対峙することを覚悟しなければならなくなります。これが米国の当面の戦略でしょう。「一帯一路」を掲げながらも具体的戦略に欠ける中国とは大違いです。

トランプ米大統領は19日、イランとの核合意で解除された同国に対する全ての国連制裁の復活を国連安全保障理事会に求める意向を明らかにしました。この動きは、中国とイランのパートナーシップと無関係ではないでしょう。

ポンペオ国務長官がニューヨークの国連本部を20日に訪問し、「スナップバック」と呼ばれる制裁復活手続き開始を正式に申し入れます。

ポンペオ国務長官

トランプ大統領はホワイトハウスでの記者会見で、「イランが核兵器を手にすることは決してない。われわれは、中東和平を不可能にした失敗した構想、失敗に終わった政策に高い代価を支払った」と語りました。

2015年のイラン核合意に盛り込まれたスナップバック手続きを米国が申し立てた場合、国連安保理は制裁緩和継続に向けた決議案を30日以内に採決する必要があります。米国が拒否権を行使し、決議が採択されなければ、イラン核計画の制限と引き換えに緩和された制裁が復活し、核合意の実質的崩壊につながります。

トランプ政権の下で18年に核合意から離脱した米国に国際的制裁を再び発動させる権限はないというのが、同盟国を含む世界の主要国の立場であり、衝突は避けられそうにありません。

この制裁復活手続きは、イラン・中国のパートナーシップに対するさらなる牽制です。できるできないは別にして、イランに対しては相当の圧力になります。

イランとしては、イスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)の和平や、その後の他のアラブ諸国の出方や、上で述べた中国とのパートナーシップの負の部分と、メリットを天秤にかけ、メリットが少ないと考えた場合、慎重なイランは、最終的に中国とのパートナーシップを蹴る可能性もあります。

米国の冷静な詰将棋は、対中国だけではなく、中東でも着々と実行されています。

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2020年8月13日木曜日

「沖縄独立」に中国暗躍! 外交、偽情報、投資で工作…米有力シンクタンク“衝撃”報告書の中身―【私の論評】国民の支持を失い、米国からも否定されれば、安倍政権が窮地に!親中派議員と官僚を成敗せよ(゚д゚)!

「沖縄独立」に中国暗躍! 外交、偽情報、投資で工作…米有力シンクタンク“衝撃”報告書の中身

「日本における中国の影響」の表紙

 沖縄県・尖閣諸島周辺海域に、中国の休漁期間明けの来週16日以降、中国漁船が大量に押し寄せ、日本領海を侵犯する危険性が指摘されている。日本政府は先月、外交ルートを通じて「日中関係は壊れる」と警告したが、中国政府側は「(尖閣は)固有の領土」と反発したという。こうしたなか、米国の有力シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が発表した調査報告書「日本における中国の影響」にある「中国の沖縄工作」が注目されている。新型コロナウイルスの大流行を引き起こしながら、覇権拡大を強める中国の浸透工作とは。ジャーナリストで、日本沖縄政策研究フォーラム理事長の仲村覚氏が緊急寄稿した。


 注目の報告書は、2018年から2年間かけて、約40人の専門家にインタビューするなどしてまとめられた。約50ページの中では、「中国の沖縄工作」にも多くの文字数を割いている。

 日本の安全保障上の重要懸念の1つとして、沖縄の人々が日本政府や米国への不満を理由に「独立を宣言」する可能性を指摘している。中国の最重要ターゲットも、米軍基地が多い沖縄であり、「外交」や「偽情報」「投資」を通じて、この目的(=沖縄独立)を後押ししているという。

 報告書では、「日本の公安調査庁は、2015年と17年の年次報告(=『内外情勢の回顧と展望』)で、中国の影響力により沖縄の世論を分断する可能性の問題を取り上げた」と続く。

 この公安調査庁の『内外情勢の回顧と展望』には、《「琉球帰属未定論」を提起し、沖縄での世論形成を図る中国》というコラムがあり、次のように報告されている。

 《既に、中国国内では、「琉球帰属未定論」に関心を持つ大学やシンクタンクが中心となって、「琉球独立」を標ぼうする我が国の団体関係者などとの学術交流を進め、関係を深めている。こうした交流の背後には、沖縄で、中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられ、今後の沖縄に対する中国の動向には注意を要する》

 CSISの報告書は、慶應義塾大学教授の言葉を借りて、「中国は日本に影響を与えるために間接的な方法を使用している。資金調達を通じて沖縄の動きに影響を与え、沖縄の新聞に影響を与えて沖縄の独立を推進し、そこに米軍を排除するなどの隠れたルートがある」とまとめている。

 現在、日本の対中国の安全保障課題としては、沖縄県・尖閣諸島周辺海域に、中国海警局の武装公船などが連日のように侵入していることが報じられている。だが、「中国主導の琉球独立工作」「沖縄と日本政府の分断工作」も真剣に警戒せざるを得ない。

 中国については16日の休漁期間終了後、尖閣諸島領海に多数の中国漁船を送り込んでくる可能性が指摘されている。海上保安庁と沖縄県警、自衛隊は、尖閣諸島で起きるさまざまな事態を想定して、対処方法を検討し、訓練を続けているとみられる。

 だが、中国による尖閣・沖縄侵略に対峙(たいじ)する「図上演習」は、これだけでは不十分といえる。

玉城デニー知事

 例えば、中国が日本政府を飛び越して、沖縄県と直接、「尖閣諸島と東シナ海の共同開発」を提案し、玉城デニー知事がこれを受け入れた場合、どうなるだろうか?

 常識的には、外交権は日本政府に属する。沖縄県には外交権がないから不可能だ。

 しかし、国連では、沖縄の人々を先住民族として、その権利を保護すべきとの勧告が2008年以来、5回も出ている。琉球独立派は、国連人権理事会などに「琉球の自己決定権がないがしろにされた」「中国と沖縄の外交を認めよ」と訴えかねない。国連も「琉球・沖縄の権利を保護せよ」と、日本政府に勧告を出す危険性がある。

 万が一、日本政府が妥協して、沖縄が中国と独自外交を展開することになった場合、その先がどうなるかは語るまでもないだろう。中国の思惑通りではないか。

 沖縄のマスコミや政治を見る限り、中国の工作活動の影響が広がっているとしか思えない。CSISの報告書が危惧するように、中国は尖閣関連の混乱に乗じて、あらゆる手を使って沖縄を日米から引き剥がしに動いてくるだろう。

 ぜひとも、尖閣有事の図上演習には、沖縄の政治や経済、マスコミ、国連の各組織の動向も、「要素・要因」として組み込んでほしい。それをしっかり米軍と共有して対処することこそ、「中国の野望」を打ち下す最善の策といえる。

 ■仲村覚(なかむら・さとる) ジャーナリスト、日本沖縄政策研究フォーラム理事長。1964年、那覇市生まれ。79年 陸上自衛隊少年工科学校(横須賀)入校、卒業後、陸自航空部隊に配属。91年に退官。企業勤務を経て、2004年にITソリューション会社を設立するとともに、沖縄の基地問題や尖閣問題、防衛問題の取材・執筆活動を続けている。著書に『これだけは知っておきたい沖縄の真実』(明成社)、『沖縄はいつから日本なのか』(ハート出版)など。

【私の論評】国民の支持を失い、米国からも否定されれば、安倍政権が窮地に!親中派議員と官僚を成敗せよ(゚д゚)!

この報告書は、米国で作成されたものであり、日本国内で作成されたものよりは、第三者的な立場から書かれ客観的な内容になっていると思います。まだ読まれていない方は、ぜひとも原点にあたるべきと思います。以下にこの報告書の入手先のリンクを掲載させていただきます。


上の記事では、紙幅の都合があるためか、中国の脅威のみが掲載されていますが、報告書にはこれに対する日本の防護壁についても記載されています。
日本は、中国に対して世界で最もネガティブな考えを持つ国として際立っている。2019年ピュー・リサーチの世論調査によると、日本人の中国に対する否定的な見方は、調査対象となった34カ国の中で最も高く、85%の否定的な見方を示した。 
歴史的な背景からも、長らく中国の権力を警戒してきた日本は、西洋諸国のような競争力ある民主主義国に比べて、中国の浸透工作が効果を出していない。日本は超党派的な中国への警戒心と中国の歴史や文化への親近感から、今日の共産党政権による悪質な活動に危機感を持っている。 
自民党よりもずっと親中とされる民主党政権でさえ、尖閣諸島の領有権では強硬姿勢を見せている。
中国が日本に影響を与えることができないのは、特に2000年代に領土問題が表面化して以来、中国の自称『平和的』な台頭に対する懐疑的な見方を含む、ネガティブな世論によるものである。これは、800万人もの中国人観光客が来て経済効果をもたらしているにも関わらず、好転しなかったことからも伺える。
この厚い壁があるからこそ、中国の浸透工作は日本ではなかなか成功しない部分もあるようです。

       国道246号線と山手通りがぶつかる交差点付近に建造された、
       首都高速道路の大橋ジャンクション「目黒天空庭園」の大壁

一方心配なこともあります。中国は日中関係の融和的な関係構築のために、政治家や大手企業幹部、退役将校などを招いた日中フォーラム「東京・北京フォーラム」を利用していると明かしています。

CSISの報告は、中国との結びつきや思想的背景から、日本の仏教団体である創価学会とその関連政党・公明党が、彼らの提唱する平和主義的な思想から、中国に同調的であると指摘する。

日中関係の回復と改善に向けて、公明党の竹入善勝党首は1971年6月に訪中しました。公表された記録によれば、竹入氏は周恩来首相との会談で、中国共産党側の意向を汲み取り、日中国交正常化の共同声明に反映させました。

メモによれば、声明には日米安保条約や日華(日蒋)条項に触れないと話していました。また、会談では、70年代は日中ともに尖閣諸島領有権をめぐる話題は重視していませんでした。さらに、中国は、日本に戦争賠償を求めておらず、戦後対応には漠然ではあるものの満足していたといいます。

公明党のウェブサイトによれば、1964年の党創立以来、「日中関係の正常化の推進」が優先事項だと主張しています。報告書のCSISの関係者インタビューによると、中国共産党は、創価学会を日本の憲法9条維持のため、政権与党に影響を与えるための「味方」とみていますが、宗教団体であることから距離を置いているといいます。

2018 年9月、公明党の山口那津男現党首は、周恩来氏の母校である天津の南開大学を訪問しました。同月、中国共産党が後援する中国人民対外友好協会は、池田氏の中日関係への貢献を評価して表彰しまし。2016年8月、南シナを巡って日中関係が悪化した際には、中国国営テレビCCTVの子会社ケーブルテレビ番組で、周恩来と池田大作の友好関係についてのドキュメンタリーを放映しました。

思想的に対中融和を促す人物として、CSISの報告は鳩山由紀夫氏を名指しています。贈収賄の記録はないにもかかわらず、鳩山氏は、日米同盟に疑問を投げかけたり、中国主導のアジア国際開発銀行(AIIB)の国際諮問委員会に参加するなどして一帯一路の日本参加を促しています。

いっぽう、CSIS研究員でジョージタウン大学のマイク・グリーン氏は、インタビューに対して、鳩山氏が2009年首相在任中に提案した「東アジア共同体」設立は、中国の情報機関が鳩山氏を通じた対日影響工作だったが、日本の情報機関がその試みを阻止したと語っています。

以上のようなことは、心配な事柄ではあるのですが、ほぼ日本国内では、しかし一番心配なのは、報告書では「安倍晋三首相がコロナウイルス対策で当初、中国に遠慮したのは中国共産党の最も効果的な対日影響力行使の結果かもしれない」としていることです。

報告書では、「日本に影響を及ぼす中国の戦術」という章で今年1月からのコロナウイルスの中国から日本への伝染を取りあげています。

その章では「中国のコロナウイルス利用の試み」という項目で中国当局がコロナウイルス感染を利用して日本側での中国への反応を融和的かつ友好的にしようと努めた実例として鳩山由紀夫元首相が南京の虐殺記念館にマスク1千枚を贈ったことを人民日報などが大々的に報じ、「日中友好」を改めて強調したことが記されています。

そのうえで同報告書はその時期の日本側の対応として以下の諸点を述べていました
・日本政府のコロナウイルスへの初期の対応は控え目だった。その原因は中国に対する畏敬の念だと思われた。日本政府が中国の武漢のある湖北省からの来訪者の入国の規制を始めたのは2020年2月1日だった。 
・その時点ではアメリカ政府は中国からのすべての外国人来訪者の入国を禁じていた。しかし日本には湖北省以外の中国全土からの直行便多数が平常のまま旅客を満載して到着していた。 
・安倍晋三首相はこの危機に対してこの時点では前面に出ず、厚生労働大臣にリーダーシップを委ねるという姿勢だった。
同報告書は以上のような背景を述べたうえで、安倍首相自身の動きについて次のように述べていました。
・安倍首相は4月に予定されていた中国の習近平国家主席への日本への国賓としての来訪計画を前にして中国に不快感を与えることを避けたため、コロナ対策の前面に出ず、中国からの日本入国者の停止の措置をとらなかったといわれる。 
・この解釈が正しければ、この安倍首相の対応は中国共産党の日本に対する影響力行使活動でも近年では最大の効果をあげた結果の一つとなるかもしれない。
同報告書はその「中国の対日影響力行使」の実態として以下のように説明していました。
・日本の時事通信は2月19日の報道で「日本政府関係者によると、中国政府は日本側に『習近平国家主席の国賓を控えて、コロナウイルス感染を大ごとにしないでほしい』と要望してきた」と伝えた。この中国の要望のための日本側の遠慮が日本のコロナウイルスに対する対応を遅すぎるものにしたのだ。
同報告書は以上のような記述を続け、中国側からの習近平主席国賓来訪に関する要請がまさに中国の対日影響力行使の実例であり、安倍首相がその点に配慮し入国者の規制を先延ばしにしたことはその影響力行使工作の「近年では最大の効果をあげた」実例だとの見解を明示したということです

同報告書が引用した時事通信の記事は「中国側からの『大ごとにしないでほしい』という要諦が日本のウイルス対応が後手に回った要因となった」とか「首相側近は『1月時点で中国人すべての入国を止めるしかなかったが、もう遅い』と頭を抱えた」とも報道していました。
習近平

このように、報告書では習近平国賓招聘を重んじたためにコロナの初期対応を誤ったのではないかという点を指摘していることが注目されます。

このブログでは、以前にも掲載させていただいたように、安倍政権の政策に関しては、是々非々でみており、安倍政権のこの路線を批判しましたが、これは米国にとっても好ましいことではないことを示しています。

日本の政府関係者は、この事実を真剣に受け止めるべきです。今のまま日本の政界内特に与党内の親中派を野放しにしておけば、いずれ親中派の与党議員の中にも米国から直接、米国内の個人資産の凍結や、米国内への渡航禁止の措置が取られることになるかもしれません。

いや、それどころか、親中派与党大物議員におもねる親中派企業も制裁の対象となるかもしれません。

安倍政権としては、親中派の議員を党内政治や調整のために無下にできない部分はあるとは思いますが、それにしても今日の時局をわきまえれば、党内の親中派は、排除するか、排除しないまでも、大きな声をださせないようにするべきです。

先にも掲載したとおり、"日本人の中国に対する否定的な見方は、調査対象となった34カ国の中で最も高く、85%の否定的な見方を示し"ていますし、コロナ後には、これが好転するわけもなく、親中派の議員がいまのまま、親中的な行動すれば、安倍政権は多くの日本人から支持を失うことにもなりかねないです。

国民の支持を失い、米国からも否定されれば、安倍政権が窮地に至るのは当然の成り行きです。まさに、安倍総理にとっては正念場です。

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2020年8月10日月曜日

【国家の流儀】中国の“人権侵害”に加担していいのか? 政府は日本企業に注意喚起を促すべき―【私の論評】中共幹部が、米国の「関与」に甘い期待を抱いているとすれば、それは完璧な間違い(゚д゚)!

【国家の流儀】中国の“人権侵害”に加担していいのか? 政府は日本企業に注意喚起を促すべき

習主席率いる中国人民解放軍は、新疆ウイグル自治区でも軍事訓練を続けている

 国際社会では、企業の社会的責任(CSR)が叫ばれるようになって久しい。企業は自らの社会的影響力を踏まえ、法令順守、消費者保護、環境の重視、人権擁護などに取り組むべきだ-という考え方だ。

 このCSRと中国の人権問題を結び付けているのが、ドナルド・トランプ米政権だ。

 トランプ政権は5月下旬、中国に対する総合戦略をまとめた報告書「中国に対する米国の戦略的アプローチ」において、中国の人権侵害についてこう厳しく批判している。

 ◇2017年以降、中国当局は100万人以上のウイグル人やその他の少数民族・宗教団体のメンバーを再教育収容所に収容した。

 ◇キリスト教徒、チベット仏教徒、イスラム教徒、法輪功のメンバーに対する宗教的迫害は、礼拝所の破壊や冒涜(ぼうとく)、平和的な信者の逮捕、強制的な信仰の放棄などを含めて広範囲に渡って行われている。

 トランプ政権のすごいところは、こうした批判が単なる口先だけで終わらないことだ。報告書はさらに続ける。

 ◇19年9月の国連総会において、米国とパートナー国は共同声明を発表し、中国において抑圧と迫害に直面しているウイグルを始めとするトルコ系イスラム教徒、チベット仏教徒、キリスト教徒、法輪功信奉者の権利を尊重するよう中国政府に呼びかけた。

 こうやって中国の人権侵害について国際社会に訴えるとともに、その人権侵害を阻止するために民間企業がなすべきことがあるとして、次のように指摘している。

 ◇米国は、新疆(ウイグル)の人権侵害に加担した中国政府機関や監視技術企業への米国の輸出を停止した。また、新疆で強制労働を用いて生産された中国製品の輸入を阻止する行動を開始している。
◇米国やその他の外国企業は、中国の軍民融合戦略のために、知らず知らずのうちに中国の軍事研究開発に自らの技術を提供しており、国内の反対勢力を弾圧し、米国の同盟国などを脅迫する中国の強圧的な能力を強化している。

 日本を含む自由主義陣営の民間企業の皆さん、中国による人権弾圧に加担したくないのであるならば、人権弾圧に加担している中国企業への輸出の停止、製品輸入の中止、技術提携の中止に踏み切るべきではないか、とトランプ政権は訴えているのだ。

 米国政府がこうした報告書を出すと、CSRを重視する米国では当然、株主やマスコミから「御社は、中国の人権侵害に関与する企業と取引はありますか。あったとするならば今後はどうしますか」と追及されることになる。その矛先は当然、日本企業にも向けられることになる。

 日本政府も、自由と人権を尊重するつもりがあるのならば、首相・官房長官の名前で、日本企業に対してはっきりと注意喚起を促すべきだ。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。自著・共著に『危うい国・日本』(ワック)、『インテリジェンスと保守自由主義-新型コロナに見る日本の動向』(青林堂)など多数。

【私の論評】中共幹部が、米国の「関与」に甘い期待を抱いているとすれば、それは完璧な間違い(゚д゚)!

日本政府もこのことをまず理解すべきです。

5月20日に発表された「中国に対する戦略的アプローチ報告書(以下、報告)」中の中国の脅威と米国の対抗策の部分の概要を以下に示します。

3つの挑戦と4つの対抗戦略

「報告」では,中国が経済,価値,安全保障の3分野で米国に挑戦し脅威となっていると述べています。

①経済
技術移転強制、米企業へのサイバー攻撃など略奪的経済慣行、模倣品による合法的なビジネスの数千億ドルの被害、一帯一路による不透明な融資と受入国の財政悪化などを指摘しています。
②価値
一党独裁制、国家主導経済、個人の権利を抑圧する中国のシステムが西側先進国のシステムに勝ると主張し,米国の価値への挑戦を中国はグローバル規模で行っていると分析している。③安全保障では,東シナ海,南シナ海,台湾海峡などでの中国の行動,軍事民間融合による最新技術を開発し獲得している民間組織への自由なアクセスなどを批判している。
中国の挑戦に対して米国は,2017年国家安全保障戦略の4つの柱で対応しています。す

①米国の国民、国土と生活様式を守る
経済スパイの摘発、外国投資リスク審査現代化法の強化、輸出管理規制の強化
②米国の繁栄の推進
強制的技術移転と知的財産侵害に対する制裁関税、第1段階の経済貿易協定合意で中国が2000億ドルの米国産品を今後2年間で輸入することなどがあげられています
③力を通じての平和の維持
三元戦略核戦力の現代化を進めること、航行の自由作戦、台湾への100億ドルを超える武器売却,
④米国の影響力の向上
宗教的自由を進める閣僚会議の開催、国際宗教自由連盟の発足、香港の高度の自治、法の支配、民主的自由の維持の要求などがあげられています。
これだけ読むと「報告」は中国を批判し、対決策を提示する文書と思われますが、「報告」の意義は米中関係を「大国間競争」と位置づけ、「長期的戦略的競争」にあると認識したことです。

中国を自由でルールに基づく国際秩序に受け入れ、自国市場を開放し企業を進出させ中国の発展を支援すれば、中国は民主化し自国市場を開放しルールを守る国になるだろうという「関与」アプローチは失敗したという過去40年の対中政策の総括に基づいた戦略の転換です。

ピルズベリーのChina 2049』(日経BP社、327頁)の言葉を借りれば、中国を生活保護受給者ではなく競争相手であると認めたのです。



大国間競争という世界認識は、2017年国家安全保障戦略(NSS)に基づきます。NSSは、「競争する世界」というタイトルで中国とロシアが米国のパワー、影響、国益に挑戦しており,自由で公正な経済に反対し、情報を管理し、社会を抑圧し、自国の影響を強めようとしていると分析しています。

競争相手を国際制度とグローバルな貿易に包含すれば、善意の信頼できるパートナーになるという前提は誤っており、そうした前提に基づく政策は再考しなければならないと論じています。

留意する必要があるのは、競争は対決や敵視だけではないことです。「報告」では、競争アプローチは対立あるいは紛争を導くものではないとし、中国の発展の封じ込めを求めないと述べています。

関与と協力も強調されている。競争は中国への関与を含み,米国の関与は選択的,結果志向であり,両国の国益を前進させると説明しています。中国への関与については、2019年10月にペンス副大統領がウイルソンセンターで「中国への建設的な関与を望んでいる」と演説しており、一貫しています。

2019年10月にウイルソンセンターで演説するペンス副大統領

従来型の関与とは当然内容は異なってきており、競争的関与あるいは競争と関与の両面政策というべきものです。意思疎通と協力も重視されており、危機を管理し、紛争へのエスカレーションの防止とともに利益が共有できる分野での協力を進めると述べています。

米国の対中戦略は対立強化と敵視という一面的な見方でなく、関与も求めているという複眼的な見方が必要です。

この「報告」の詳細については、ぜひ下のリンクから原点にあたってください。


米国の国務省も年次の「国別人権報告書」が出されていて、言論の自由、信教の自由など人権に関して多くの報告がなされています。

2018年版は、昨年3月13日に公表されており、マイク・ポンペオ国務長官は人権状況が悪化しているとして、中国、イラン、南スーダン、ニカラグアを名指しして批判した。特に中国については「人権侵害はケタ外れ」と指摘しました。

新疆ウイグル自治区では100万人以上のウイグル人が強制収容され、虐待や拷問によって「中国化への再教育」が進められているといいます。一方、中国政府の新疆ウイグル自治区をめぐる「白書」によると、ウイグル族が不当に拘束されているという外国からの指摘に対して、テロを予防するための職業訓練が目的だ、として事実上拘束を正当化しています。

香港も含め、中国では反政府的とされるジャーナリスト、弁護士、ブロガー、請願デモをした人たちに対して、超法規的な殺害、拉致、厳しい環境下への拘束、拷問が行われています。ネットの検閲やブロッキング、集会、結社の自由の侵害など枚挙にいとまがないです。

現在、中国の決済は顔認証になっていますが、そのデータは共産党政権に渡さなくてはならず、集会を開いた場合、誰がいるかということが瞬時にわかってしまいます。

また、「信教の自由」もありません。共産党という宗教を信じなさい、と言っているだけです。さらに「三権分立」も機能していません。捜査、逮捕、判決まで全部、共産党政権がコントロールしています。それが中国の現実です。

このような中国から、輸入をするということは、ブラック企業から商品を購入しているのとかわりありません。ブラック企業に関しては、景気を良くすれば、特に雇用をかなり良くすれば、誰もブラック企業に務めなくなり、勤めている人も、良い条件の企業に転職しますので、いずれ消えます。

中国ブラック企業のペナティー。湖の周辺を四つん這いで、一周させるというもの

しかし、国はそういうわけにはいきません。政府の体制が全体主義的であれば、一部の特殊な人を除いて、多くの国民は、一生国内で迫害を受け続けなければならないどころか、子孫もそのような目にあうことになるのです。

現在の中国の体制は変えなければなりません。特に中国共産党は、崩壊してもらなわなればなりません。上の「報告書」には"競争的関与あるいは競争と関与の両面政策"についても記載されていますが、ここでいう「関与」とは、中国共産党が崩壊したあとの新しい体制の中国に「関与」することを言っているのであり、現中国共産党に関与するという意味ではありません。

実際、「報告書」では、中国を(ここでは暗に、中国共産党のことと解釈すべき)自由でルールに基づく国際秩序に受け入れ、自国市場を開放し企業を進出させ中国の発展を支援すれば、中国は民主化し自国市場を開放しルールを守る国になるだろうという「関与」アプローチは失敗したと述べています。

2019年10月にペンス副大統領がウイルソンセンターで「中国への建設的な関与を望んでいる」と演説していますが、これも当然のことながら、中国というよりは、中共が崩壊した後の新体制の中国であると解釈すべきです。

中共に懲りた米国は、二度と中共に関与する政策はとらないでしょう。新しい体制ができあがっても、その体制が本質的に人が入れ替わっただけで、現体制と変わらなかったり、あるい一見変わったようにみえても、全体主義を目指すものであった場合も、関与しないでしょう。

これは様々な報告書や、トランプ政権の要人たち、米国議会、米国司法関係者などの発言や行動から明らかです。

中共の幹部たちや習近平が、米国の「関与」に甘い期待を抱いているとすれば、それは完璧な間違いです。たとえば、仮に大統領がバイデンになったとしても、これは変わりません。米国は、中国共産党が崩壊するまで、制裁を継続するでしょう。

日本政府もこのことをまず理解すべきです。

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2020年8月8日土曜日

WTO提訴の韓国に米の鉄槌! 「安全保障上の利益を保護するために何が必要か判断できるのは日本だけだ」 識者「韓国に歩み寄る国はない」— 【私の論評】米国も安倍総理も韓国等眼中になく、中国との対峙の邪魔し続けるなら黙らせるだけ!(◎_◎;)

WTO提訴の韓国に米の鉄槌! 「安全保障上の利益を保護するために何が必要か判断できるのは日本だけだ」 識者「韓国に歩み寄る国はない」

スイス・ジュネーブのWTO本部

 日本政府が韓国向けの輸出管理を強化したことで世界貿易機関(WTO)に提訴した韓国に大逆風が吹いている。米国が日本の判断に理解を示し、韓国の姿勢を痛烈に批判したのだ。WTO事務局長の座も狙う文在寅(ムン・ジェイン)政権だが、もくろみは外れそうだ。

 WTOは3日、先月末に設置された紛争解決機関(DSB)のパネル(案件を審理する小委員会)での会議の要約を発表した。それによると、日本は輸出管理強化は「安全保障上の措置」だとして、韓国の提訴に深い失望を示した。

 日本以上に韓国に強く反発したのは米国だった。「安全保障上の利益を保護するために何が必要か判断できるのは日本だけだ」と見解を示し、このような訴訟はWTOに深刻なリスクをもたらし、国家安全保障問題に組織を巻き込む恐れがあると警鐘を鳴らした。

 米国から何ひとつ賛同を得られなかったことで、韓国メディアは「事実上、日本側の論理を後押しする」「日本の肩を持った米国」などと悲観的に伝えている。

 今後はパネリストの選定や意見書の提出、口頭審理などの訴訟手続きが本格的に進められ、最終判定までには、10~13カ月を要するとみられる。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「米政府が中国に圧力をかけることを最優先に行動している中、アジアで最大の同盟国である日本の足を引っ張っているのが韓国だ。米国は韓国に警戒心を抱き、隊列を乱されていると感じているに違いない。英・仏なども脱中国の動きをみせており、韓国に歩み寄る国などほとんどないだろう」と分析する。

 日本の外務省は3日付で国際法局に経済紛争処理課を新設した。経済局にあった国際経済紛争処理室を課に格上げし、WTOの訴訟などへの対応を強化する狙いがある。昨年4月にWTO上級委員会で、韓国が福島など8県産の水産物の輸入制限措置を取っていることが妥当と判断されたことを受け、設置に至った。

 一方の韓国は、産業通商資源部の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長がWTOの次期事務局長選に立候補しており、図々しくも日本に支持を呼び掛けている。

 前出の島田氏は「ある外務省幹部は『韓国がWTOのトップを務めるのは論外で、日本をつぶすためだけに行動している』と憤っている。WTOの事務局長選は前哨戦で、経済協力開発機構(OECD)のトップを狙って動いているという見方もある。そのためには中国が鍵を握っており、米国は韓国が中国とともに動いているとみている」と指摘した。

【私の論評】米国も安倍総理も韓国等眼中になく、中国との対峙の邪魔し続けるなら黙らせるだけ!(◎_◎;)

麻生太郎副首相兼財務相が強制徴用賠償判決を受けた日本企業に対する資産現金化措置がなされる場合「韓国との貿易を見直したり、金融制裁に踏み切ったり、やり方は色々ある」と話していました。

麻生太郎
麻生副首相は昨年12月9日発売の「文藝春秋」2020年1月号で、「万が一、韓国側が徴用工判決で差押えしている民間企業の資産の現金化などを実行したら」「厳しい例をあえて言えば」と前提を付けてこのように話しました。

その上で「いずれにしても、日本より経済規模の小さい韓国が先に疲弊するのは間違いない。その上で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がどういう判断をするのか、ということ」と話しました。

麻生副首相は「最大の懸案は韓国との関係」としながら「問題は、韓国という国家そのものよりも、国際法を蔑ろにし続ける文在寅政権の姿勢」と主張しました。続けて「1965年の日韓請求権協定で、日本は韓国に対し、無償3億ドル・有償2億ドルの経済支援を行った。結果、『漢江の奇跡』と呼ばれる韓国の経済発展に繋がったわけだ。それを今さら『なかったこと』にすると言われたら、ちょっと待ってくれと言うしかない」とも話しました。

麻生副首相は昨年3月にも強制徴用問題と関連し韓国に対する対抗措置として送金中断、ビザ発給停止などに言及したことがあります。彼の発言そのままではないですが、昨年7月に半導体材料3品目に対する輸出規制、ホワイト国排除措置などの措置を取離ました。今回も実際の措置につながる可能性はかなり高くなってきました。

麻生副首相はまた、「よく『隣国だから韓国と仲良くしよう』と言うような一部の論調があるが、世界中で隣国と仲の良い国などあるのか。そういうことを言うのは、外国に住んだことがない人」と主張しました。

その上で「隣の国とは利害がぶつかるもの。友好は単なる手段に過ぎない。友好を築いた結果、損をしたら意味がない」とも話しました。

今後、日本は韓国に対して、韓国によるWTOへの提訴並びに、日本企業に対する資産現金化措置が実行に移された場合、何らかの厳しい措置をとるのは間違いないです。

日本がなんらかの措置をすれば、韓国は、日本が戦争責任を果たしていない等と主張し始めるでしょうが。そのようなことは、気にせず、黙って『事実上の報復』をすれば良いだけです。

具体的な制裁方式としては、韓国企業に対する日本銀行の保証回収などが挙げられている。元外務副大臣の佐藤正久自民党議員は、先月ある番組に出演し、「サムスン電子の海外資金のうち、大部分は日本のメガバンクから借りたものだ。韓国企業は金融の相当部分を日本に依存している」として金融分野の制裁が最も効果的だと話しました。

 こうした中、自民党内保守系議員の集まりである「保守団結の会」は前日、会議を開き、韓国側が日本企業の資産を現金化する場合、経済制裁の発動を政府に求める方針を決めたと読売新聞がこの日、伝えました。

恒常的にドル資金不足の韓国は、ドルが枯渇するとキャッシュフローが回らず、国家破綻に陥る状況にあります。それに、ドルが枯渇すれば、国際決済もできなくなります。ドル資金に余裕のある日本の銀行は、韓国の銀行に貸し付けて運用していますが、日本の金融機関が超短期のドル資金を融通しなくなるだけで、一日にして韓国の銀行はデフォルト(債務不履行)に陥ってもおかしくありません。

韓国の銀行がデフォルトに陥れば、国家債務が返済できないとみなされ、韓国全体のデフォルト懸念も顕在化することになるでしょう。 

この措置はあくまでも日本の金融機関の与信判断によるもので、日本が制裁の形を取らないことが重要でしょう。例えば日本のメガバンクが韓国の銀行の信用状取引を停止すれば、韓国は貿易ができなくなり、大打撃です。日本政府が直接実施したということなれば、韓国にまた、上げ足を取られ、日本が国際社会で悪者にするでしょう。

そうは言いながら、実質的には韓国を制裁しなければならないです。 しかし、米国の協力が得られれば、そのようなことも気にせずに、すぐにできるでしょう。冒頭の記事のように、韓国がWTOに日本を提訴したことに対して、米国はかなり怒っています。この状況だと、日本が韓国に対して、金融制裁をしたとしても、米国はそれを支持をしたとしても、反対しないでしょう。

8月は韓国の反日を一段とエスカレートさせる日程が目白押しです。 14日には韓国政府が指定した「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」、15日には独立を記念する「光復節」、そして24日には、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長期限を迎えます。

韓国の光復節

世界貿易機関(WTO)の紛争処理機関(DSB)は日本の韓国に対する半導体材料の輸出管理強化がに対して韓国が求めた「一審」に相当する紛争処理小委員会(パネル)の設置を承認しました。

8月以降、パネルが設置される見通しです。 日本としては粛々とカードを切るしかなさそうです。

米政府が対中国冷戦を最優先に行動している中、アジアで最大の同盟国である日本の足を引っ張っている韓国に対して、日本がどのような制裁措置をしても米国は歓迎するだけです。

米国は、中国との対峙を最優先にしています。北朝鮮や韓国、その他の問題は、中国と対峙するにおいては、単なる制約条件に過ぎないと見ているでしょう。

上で、一つ書き忘れていたことがありますが、韓国の対日赤字の大部分は工作機械の輸入によるものです。工作機械とは、製品を製造する機械のことであり、サムスンのスマホも、現代の自動車もこれ無しでは製造できません。

この工作機械の製造技術こそが<先端技術>であり、世界市場を日本とドイツが席巻していますが、その中でも繊細・微細な製品製造のための工作機械は日本の独壇場と言ってよいです。

世界に冠たる日本の工作機械
だから韓国は日本に「工作機械を売っていただいている」立場にあります。もし、日本が工作機機械の禁輸を行ったら、韓国経済の将来は無くなります。

米国によるサムスンに対するファーウェイのような制裁と、日本からの工作機械の禁輸措置を同時に行えば非常に効果的です。

このように考えると、韓国はかなり日本に依存しているにも関わらず、態度だけは大きいです。

しかし、もう米国も、日本も、日本国民も堪忍袋の緒が切れています。米国も、安倍総理もとにかく、中国との対立を最優先に考えたいので、韓国など早く大人しくなって、何もしないで欲しい、特に中国との対峙の邪魔はしないで欲しいと思っているでしょう。

安倍総理も、トランプ大統領も、韓国が邪魔し続けるなら、かなりきつい報復も厭わないでしょう。日本や米国がその気なれば、中共崩壊の前に、文政権が崩壊することになるかもしれません。

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2020年8月6日木曜日

中国とのにらみ合い激化の中、トランプ政権高官が台湾訪問へ―【私の論評】米国は「台湾は全体主義への砦」と認識し行動を始めた(゚д゚)!

中国とのにらみ合い激化の中、トランプ政権高官が台湾訪問へ

<引用元:ワシントン・フリービーコン 2020.8.5

トランプ政権高官によると、中国とのにらみ合いが激化する中で政権高官が台湾への派遣団を率いることになっており、1979年以来で米国閣僚による最高レベルの訪問となる予定だ。

保健福祉省のアレックス・アザール長官は、近日中に台湾を訪問することが予定されており、中国との外交上の戦いが拡大する中、難問を抱えた島に米国が支持を示す動きとなる。中国は台湾を孤立させ、世界保健機関をはじめとする国際的に重要な会議から締め出そうとしてきたためだ。
アザール長官
アザール長官

アザール長官の訪問は、訪問の詳細について匿名を条件に説明したトランプ政権高官によれば、「包括的・戦略的二国関係の多くの面の1つである、ヘルスセキュリティにおける堅固な米台協力関係を裏付ける」ものとなる。

訪問はすでに中国からの反対にあっており、トランプ政権の共産主義政権との敵対関係をさらに悪化させる可能性がある。中国は台湾を自国の統治する領土だと主張しており、米政権は歴史的に、より緊密な経済関係を育成することを目指して北京の主張に異議を申し立てるのを避けてきた。コロナウイルスが世界中に被害をもたらし続ける中、トランプ政権はウイルス拡大に対して中国に責任を取らせようという複数の取り組みを指揮してきた。台湾訪問もまた、多くの人がロシアとの冷戦時代に結び付けているワシントンと北京の間の外交上の戦いにおけるまた1つの攻撃だ。

「台湾はCOVID-19パンデミックの中、そしてそのずっと前から世界の保健における透明性と協調とモデルとなっている。台湾の世界保健でのリーダーシップに対するトランプ大統領の支持を伝え、自由で民主的な社会が健康を保護・推進するための最高のモデルであるという我々が共有する信念を強調できることを心待ちにしてしている」と、アザールは声明の中で述べた。

アザールは、台湾との関係を強化し、コロナウイルスとの戦いで得た経験を共有するために取り組む、と政権高官はしている。アザールは、米国と台湾の間での技術共有を拡大することを目指して、台湾高官、コロナウイルス専門家、そして医療研究者と会う予定だ。また、米高官の表現を借りれば、国際的な舞台に台湾を受け入れることに対して賛成する画期的な演説も行う―中国にとっては大きな苛立ちの種となるものだ。

共産主義政権は、コロナウイルスをめぐる最近のWHO会議から台湾を除外しようと最大限の努力をしていたので、アザールの訪問もトランプ政権からの挑発的な動きだと捉えることになりそうだ。台湾はコロナウイルスの存在を初めて報告した国の1つであり、中国がその病気について世界にオープンだったと主張する中国のプロパガンダと戦う上でのカギとなっていた。

「米国は2020年5月の世界保健総会で台湾が除外されたことを非難する」と政権高官は本紙に語った。「世界がパンデミックと格闘を続ける中、我々は定められた使命を果たし、全ての加盟国の利益のために尽くす国際機関を必要としている―命が危機にさらされている時に策を弄するような機関ではなく」

2018年にトランプ政権は台湾旅行法(Taiwan Travel Act)を成立させ、同地域との関係を向上させた。米高官は台湾を、中国の地域的な警察国家体制と攻撃的な軍事態勢に対抗し得る経済的自由の源と見なしている。

「台湾は2003年のSARS危機の間に中国共産党の不正に対応した。それ以来、台湾の保健当局は保険関連の情報に関して中国政府の言葉を真に受けていない」と高官は語った。

【私の論評】米国は「台湾は全体主義への砦」と認識し行動を始めた(゚д゚)!

トランプ大統領は2018年3月16日米国と台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした超党派の「台湾旅行法案」に署名し、同法は成立しました。
トランプ大統領
トランプ大統領

同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官、行政機関職員など全ての地位の米政府当局者が台湾に渡航し、台湾側の同等の役職の者と会談することや、台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談することを認めることを定めています。

また、台湾の実質的な在米大使館である台北経済文化代表処などの台湾の組織や団体に米国内での経済活動を奨励する条項も盛り込まれています。

米国は1979年の米台断交と台湾関係法の成立後、米台高官の相互訪問を自主的に制限してきました。台湾旅行法の成立で、トランプ大統領の訪台や蔡英文総統のワシントン訪問が理屈の上では可能になります。

米国務省は、台湾旅行法が米台関係の変化を意味するものではないと説明していますが、台湾を不可分の領土とみなす中国が米台の接近に危機感を抱き、「一つの中国」原則に反するとの理由で猛反発してきました。

いずれ実現すると思われるトランプ、蔡英文階段

今回の米国保健福祉省のアレックス・アザール長官の訪問は、米台が国交を断絶した以降では、最高位の高官の訪問ということになります。

トランプ政権は、なにやら詰将棋のように次々と様々手を中国にたいして、打つています。支離滅裂な習近平政権とは違います。

他の国々も米国の「台湾旅行法」と同じような法律を制定・施行して、すべてのランクの政治家や官僚などが、同国を訪問できるようにすべきです。

将来的には、G7はもとより、トランプ大統領、安倍総理、モリソン豪首相、モディ印首相、ダライ・ラマ猊下などが、一同に台湾に集まり会議を開くなどのことをすべきと思います。

台湾の初代蔣介石は「大陸反攻」と共に「反共」を国是とし、東アジアにおける「反共の砦」としての地位をに認めてもらうことで、台湾国民政府の「中国を統治する国家」としての存在を持続させようとしました。

ところが、米国は「反共の砦」としての存在の重要性を認識して軍事・経済的支援は行っていたものの、東アジアの地域情勢を混乱させる「大陸反攻」の実施には断じて反対していました。そのために、蔣介石は、「大陸反攻」を実施する好機をうかがっていたものの、国際環境の影響からそれを実施することなく1975年4月5日に死去しました。

その後台湾は李登輝総統により、民主化され今では「大陸反攻」は、実質的気に消滅しました。その後、中国も統治体制は根本的には変わらなかったものの、実質的に共産主義はやめ、国家資本主義とでも呼ぶべき体制へ移行しました。

李登輝氏(前列左)

鄧小平が改革・開放を行い、その後の中国経済発展の基礎をつくりました。この時点で米国をはじめとする多くの先進国が、中国が豊かになれば、いずれ体制も変わるものと考えていました。そうして、中国の巨大マーケットに期待をいだき、競って中国と通商関係を結ぶことに血道を上げました。

しかし、その後中国はその体制を一切かえず、全体主義的な方向にどんどん進んでいきました。そうして、トランプ政権が誕生し、従来より中国に厳しい姿勢をとるようになりました。

トランプ政権は、中国は米国に変わって、世界に新たな秩序を形成しようと疑うようになりました。習近平はそれに対する答えを2018年に、ある会議の席上で発表しました。その答えは、まさに米国が懸念するように「中国は世界に新たな秩序を形成する」というものでした。

これによって、米国の中国に対する考えは決定的になりました。米国は、中国が体制を変えることを望んでいるのです。具体的にいえば、中国共産党が崩壊して、一党独裁の全体主義体制が崩壊し、中国に新しい民主的な体制ができあがることを望んでいるのです。

ただし、中国共産党は一党独裁制を失えば、自らの統治の正当性を主張できなくなり、崩壊するしかなくなります。これは、中国にもかつてのソ連のゴルバチョフ氏のような人物がでてくれば、可能になるかもしれませんが、現在の中国では、ほぼ不可能です。

中国が体制を崩さない場合の、米国の中国への対応は、金融制裁やさまざまな財務的な措置をとりつつ、中国の経済を疲弊させ、他国に影響力をほとんど行使できなくなるどころか、国内でも影響力を維持できなくなるまで、弱体化させることです。これによって、全体主義の芽を摘むまで、米国は中国への制裁をやめません。

こうした米国の中国への厳しい態度は、トランプ政権がどうのこうのというより、米国議会や司法にまで及び、そうして米国民の多数にまで及び、いまや米国の意思となりました。そのため、次の大統領がトランプだろうとなかろうと、今後の米国の中国に対する態度は変わりません。

米国は今後「全体主義への砦」としての台湾の存在の重要性を認識して軍事・経済的支援を強力に推進することになります。その幕開けが、アザール長官の台湾訪問なのです。

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2020年7月30日木曜日

領事館閉鎖では終わらない…米国が握る「対中最終兵器」 中国の息の根を止めかねない劇薬“ドル取引制限”に一歩近づく — 【私の論評】ドル使用禁止措置は、事実上中国の貿易禁止、輸出入ができなくなる!(◎_◎;)

領事館閉鎖では終わらない…米国が握る「対中最終兵器」 中国の息の根を止めかねない劇薬“ドル取引制限”に一歩近づく 
高橋洋一 日本の解き方

トランプ大統領

 米トランプ政権が、ヒューストンの中国総領事館を閉鎖させた。中国も対抗し、四川省成都の米総領事館を閉鎖させる事態となっている。

 領事館は、大使館と並ぶ在外公館の柱だ。自国民の保護、査証の発行、証明書の発行、他国の情報収集という重要業務を行っている。

 米国内の中国領事館は、ヒューストンのほか、カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルス、イリノイ州シカゴ、ニューヨークに置かれ、ワシントンには中国大使館がある。

 一方、中国にある米領事館は、四川省成都のほか、香港、広東省広州、上海、遼寧省瀋陽にある。

 領事館ではなく大使館の閉鎖を要求するとしたら、それは宣戦布告にも等しい。大使館ほどではないが、外交特権もある領事館の閉鎖は、大使館の閉鎖に次いで強烈な外交的な意思表示であることに間違いない。

 米政府高官の話として、在米中国領事館は米国の知的財産を窃取する一大拠点だったという。米研究機関にいる中国人のスパイにどんな情報を盗むべきかを具体的に指示したり、捜査から逃れる方法を伝授したりしていたという。米研究機関への米国ビザに関し軍歴を隠蔽して不正取得していた中国人4人が訴追されたという報道もあった。

 米中貿易戦争も、中国による米国の知的財産権の窃取がメインテーマであったが、今回のコロナ危機に際し、それが明白になってきている。知的財産権というが、その中心は軍事に転用可能な新技術である。

ただし、軍事転用のあるなしに関わらず、日本を含む外国企業は、中国に進出すると新技術が盗まれるとこぼす。中国国内で、海外のパクリとおぼしき事案は至るところでみられる。

 中国は、海外でも知的財産権の窃取に一生懸命のようだ。ただし、海外では、中国国内のように振る舞えないので、各地にある領事館が中心的な役割を果たしてきたというのが、米政府の見立てだ。米政府から、これからいろいろな「証拠」が提示されるだろう。

 そして、少なくとも11月の大統領選挙までは、米中の報復措置が繰り返されるだろう。当初中国は湖北省武漢市の米総領事館を閉鎖すると伝えられたが、それでは米国への影響も少ないので、ウイグル・チベットの情報収集を担当する四川省成都の米総領事館の閉鎖に至ったともいわれる。

 米中間では、モノ・ヒト・カネのつながりがある。モノで関税引き上げの応酬があり、決着が付かないでヒトの制限に移ってきた。普通はビザ発給の制限になるが、いきなり領事館閉鎖になった。カネについてはドル取引制限が考えられるが、これは中国の息の根を止めかねない劇薬で、米国の「最終兵器」だ。

 世界経済を巻き込むかしれないので、慎重に対応されるべきだが、また一歩、近づいたのは間違いないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ドル使用禁止措置は、事実上中国の貿易禁止、輸出入ができなくなる!(◎_◎;)

中国の企業は、場合に世では米国金融機関との取引ができなくなり,ドル決済が停止されることすらあり得るのです。米国財務省は敵対国に対する制裁対象としてSDN(Special Designated Nationals)リストというブラックリストを設けていますが、その制裁項目の中には米国・国際金融機関との取引停止、ドル送金など外為取引の禁止、米国内資産凍結などの劇薬も含まれています。

貿易に代表される国際取引の多くは米国の通貨であるドルを介して行われています。国際取引の多くは米国政府やFRB(連邦準備制度)の監視を免れない。そして米国政府やFRBは、「ドル利用禁止」等の経済制裁を通じて「望ましくない取引」を止めることができる。以下、現行の国際決済システムを概観し、米国政府やFRBの国際取引における影響力を確認します。



図表1は貿易など国際決済の様子を簡略化した概念図です。ごく一般的な国際決済の例を挙げます。例えばロシアのケチャップ会社がトルコの農業企業からトマトを輸入するとします。ロシアのケチャップ会社からトルコの農業企業への支払いがドルで決済される場合、代金はルーブルからドルに交換された後、ロシアのケチャップ会社の取引金融機関からトルコの農業企業の取引金融機関へと支払わレます(その後、トルコの農業企業がドルをリラに交換して受け取る場合もあります)。

その際、国際資金決済には「カバー」と言われる仕組みがあり、決済を行なう金融機関どうしが通常は決済通貨の母国(ドルの場合、米国)にある金融機関に有する口座を介して決済資金の付け替えが行われています。すなわちドル決済の場合、「ロシアのケチャップ会社の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」から「トルコの農業企業の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」に支払われることになります。トルコ・ロシア間の取引でありながら、決済は在米金融機関の間で行われているのです。

なぜルーブルを(ドルを介さず)直接リラに交換しないのかといえば、ルーブルからリラへの直接交換は、「ルーブル⇒ドル⇒リラ」という間接交換と比較した場合、容易ではないのです。

これは通貨に対する需給の問題です。「ルーブル⇒リラ」という直接交換が成立するためには、その反対取引となる「リラ⇒ルーブル」取引も必要となります。つまり、「ルーブル⇒リラ」あるいは「リラ⇒ルーブル」の取引が成立するためには、双方向の取引が常時相当の規模で行われているような、厚みのある「リラ・ルーブル間の外国為替取引市場」が必要なのです。そしてそのような市場が存在しない場合、図表1で示したように、リラとルーブルはドルを介して決済されることになります。

このようにごく一部の例外を除いて、ほとんどの国際決済は実は「ドルを介して」行われています。そして多くの場合、ドルを介した取引のほうが、マイナー通貨間の直接交換よりも、手数料が少なく済む場合が多いのです。

なぜならドルが絡む外国為替市場では相当額の取引が行われているため、「ドル以外の通貨⇒ドル」「ドル⇒ドル以外の通貨」2つの取引の手数料を合わせても直接交換した際の手数料を下回るからです。このような手数料の安さも「ドルを介した国際決済」の優位性のひとつです。

そうして政治的に重要なのは、この「ドルを介した国際決済」が、図表に示したとおり米国内の決済システムを通じて行われていることです。米国政府やFRBは、米国内の銀行・金融機関の取引を厳しく管理・監督しています。

従って、「ドルを介した国際決済」は米国内の決済システムを通じて全て米国政府やFRBの知るところとなっています。そうして米国政府やFRBが望ましくないと判断した取引は、「ドル利用禁止」といった手段を使って差し止められることになるのです。つまり「ドル利用禁止」とは事実上「貿易禁止」と同じ意味を持つのです。

このように、「ドルを介した国際決済」という制度を通じて、米国政府やFRBは世界全体の取引を監視し、必要に応じて望ましくない取引を止める権力を有しているのです。これは、どの程度の監視なのかといえば、日本のマイナンバーカードなどとは比較にならないものです。金融取引の全部が詳細に監視されているのです。

米国の財務省には金融犯罪を担当する次官(Under Secretary of the Treasury for Terrorism and Financial Intelligence=テロリズム金融犯罪情報分析担当次官)が存在しますが、対ロ制裁でよく名前が挙がるOFAC(米国財務省外国資産管理室)は正にこの次官が管轄しています。


以上、「ドル利用禁止」が持つ意味の大きさを説明しました。一方、最近は中国経済の台頭、米国経済の停滞、米国による経済制裁の多用を受けて、いわゆる「ドル離れ」が進むといった論調が多くみられます。

確かにドル決済の強みである市場の厚みは米国経済の大きさによるもので、米国経済が衰退すればこの相対的優位は長期的には揺らぐかもしれないです。しかし、ドル決済を支えているのは市場の厚みだけでなく、ドルを決済する米国内決済システムの安定性や利便性、透明性による部分も大きいです。このように一定の厚み・安定性・利便性・透明性を併せ持つ市場が、米国以外に新たに出現するとは中期的には考えにくいです。

実際、IMFが1969年に国際準備資産としてSDR(Special Drawing Rights:特別引出権)を創設して50年近く経過しますが、決済手段として使えないSDRの普及は極めて限定的です。米国経済そのものの先行きは別にして、ドル決済の優位性と、そこから得られる情報を通じた米国経済制裁の優位性は、当面揺るぎません。ドルはこれからも基軸通貨であり続けます。
米国が、大々的に中国に「ドル利用禁止」をすれば、それは中国にとって「貿易禁止」と同じ意味になります。無論、貿易ができなくなっても、中国は人口が多いので、内需を喚起することにより、ある程度GDPは拡大できるでしょうが、それにしても、ハイテク関連の部品や、機材など全く輸入できなくなることになるでしょう。

そうなると、いわゆる中国製ハイテク機器等ほとんど作れなくなります。無論このような制裁を今すぐに実施すると、現状では当の米国にまで大きな影響が出ることになるでしょう。

そのため、昨日も述べたようにすぐに、米国が中国に対して、大規模な財務的な制裁措置を実行することはないでしょうが、米国が受ける悪影響とのバランスを図りつつも中共を震撼させるような凄まじい措置が、大統領選挙の前の8月,9月あたりには発動される可能性が高いです。そうなると、中国は経済的にも、技術的にも、社会的にも毛沢東時代に逆戻りすることになります。

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2020年7月28日火曜日

米国、中国に“宣戦布告”…米英が水面下で戦争の準備、テロ支援国家に指定の可能性も— 【私の論評】トランプの5人の騎士が、中共の息の根を止める!(◎_◎;)

米国、中国に“宣戦布告”…米英が水面下で戦争の準備、テロ支援国家に指定の可能性も
文=渡邉哲也/経済評論家

アメリカのマイク・ポンペオ国務長官

 アメリカと中国の対立が、お互いの総領事館を閉鎖し合うという異例の事態に発展している。

 アメリカがテキサス州ヒューストンの中国総領事館を「スパイ活動および知的財産窃盗の拠点」という理由で閉鎖し、対抗措置として、中国は四川省成都の米総領事館を閉鎖した。そのため、今度はアメリカが次に何をするかが注目される。仮に追加の制裁に動けば、中国も再び対抗し、応酬がエスカレートしていくだろう。

 ここで問題になるのは、「タイミング」と「さじ加減」だ。アメリカとしても、自国への悪影響を考えれば、時間をかけて段階的にデカップリング(切り離し)を進める方が得策だと思われる。マスク問題などにみられるように、日本を含む西側諸国は中国に依存している部分もあるため、急激なデカップリングは危険をはらむことになる。生産や調達の代替が可能になってからでないと、国内への影響が大きくなりすぎてしまうわけだ。

 しかし、時間がかかりすぎると、その間に中国はさまざまな方法でアメリカへの対抗手段を確保し、安全保障上のリスクが拡大しかねない。そのため、猶予期間は限られており、今は嵐の前の静けさとも言える状況なのだ。

 これらの背景には、中国が香港国家安全維持法を一方的に施行した問題がある。これは、香港に保障されていた「一国二制度」を反故にすると同時に、自由主義社会への挑戦状とも言えるものである。

 アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は演説で「習近平国家主席は破綻した全体主義思想の真の信奉者」「中国共産党から自由を守ることは私たちの時代の使命」などと語り、対中強硬路線を改めて打ち出した。これは、事実上の宣戦布告といえる発言だろう。

米英と中国の対立が激化、戦争の準備へ

 また、悪化する米中関係に、香港問題の当事者であるイギリスおよびイギリス連邦が加わる形で混迷を極めている。

 イギリスは香港に居住する約290万人の「英海外市民」について、ビザなしでイギリスに滞在できる期間を6カ月から5年間に延長し、市民権の取得を促す緩和策を発表した。また、香港政府と結んだ犯罪人の引き渡し条約の停止を表明し、2027年までに中国企業の華為技術(ファーウェイ)を次世代通信規格「5G」から完全排除する方針を決定した。

 これらの動きに猛反発した中国は、英海外市民が持つ旅券を「有効な旅券として認めない」と表明し、さらに追加措置の行使も示唆している。イギリスおよびイギリス連邦としては自国の旅券を否定されたことになり、これは戦争の理由として十分なものだ。今後は、相互主義に基づき、中国の旅券を無効化するかどうかが注目されるが、その場合は香港市民の出国に大きな制限が課せられることになってしまう。

 また、ポンペオ国務長官はイギリスのボリス・ジョンソン首相、ドミニク・ラーブ外務大臣と会談を行い、香港問題などでの連携を確認し、中国と対峙するための連合構築も示唆した。さらに、アメリカのマーク・エスパー国防長官は年内に訪中し、対話の手段を探る意向を示しているが、これらの動きは戦争の準備行為とみることもできるだろう。


 そもそも、領事館や大使館の閉鎖というのは宣戦布告の正当な理由となる行為であり、戦争の前段階と言える動きだ。


 また、中国が国家的に、全米の領事館を通じて極左暴力集団「ANTIFA」や黒人差別に対する抗議デモ「「Black Lives Matter」を主導し、援助したとの報道も出てきている。アメリカはこれらの動きに対して背後関係を含めて徹底的に調査するとしており、事実関係が確認されれば、国内のテロ行為の陽動および支援ということで、テロ支援国家の指定に向けて動き出すことも考えられる。


 テロ支援国家に指定された場合、輸出管理におけるアメリカ原産の割合が25%から10%にまで引き下げられ、ハイテク関連製品などの輸入はほぼできなくなる。また、金融制裁など追加オプションを発動する大義名分にもなり、中国に対して北朝鮮と同様の処置が可能になるわけだ。

 米中対立は、今後も予断を許さない状況が続きそうである。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】トランプの5人の騎士が、中共の息の根を止める!(◎_◎;)


トランプの5人の騎士が中共をこらしめる?

ここ最近立て続けに、オブライエン補佐官、FBIのレイ長官、バー司法長官が、相次いで対中政策の演説を行ないました。また、中国共産党を厳しく批判してきたポンペオ国務長官も、上の記事にあるように、演説をしました。

オブライエン氏は6月24日、アリゾナ州フェニックス市での講演で、「中国共産党がマルクス・レーニン主義を信奉する全体主義の政党である」「習近平主席は自分をスターリンの後継者としている」と述べ、「米国が中国共産党に対して受動的で未熟な時代は終わった」「中国共産党の信条と陰謀を暴くことは、米国人だけでなく、中国人や世界の人々の福祉のためでもある」としました。

FBIのレイ長官は今月7日、米シンクタンク・ハドソン研究所での演説で、中国共産党の対米攻勢について、民主国家への勢力浸透、秘密情報網の構築、大量のサイバー攻撃などあらゆる手段を用いたことで、米国経済および国家安全に計り知れないダメージをもたらしたと述べました。

同氏によると、中国共産党によるスパイ活動は2500件に達し、この10年で中国がらみの経済スパイは1300%増加したそうです。約10時間ごとに中国人が関わるスパイ事案が発生しているといいます。

バー司法長官は16日、ミシガン州での講演で、中国共産党の世界征服の野望にいかに対応するかが、21世紀に向けて全米ひいては全世界が直面する最も重要な議題であるとし、「世界の偉大な古代文明の一つを鉄拳で支配する中国共産党は、中国の人々の計り知れない力、生産性、創造性を悪用し、ルールに基づいて構築された世界秩序を覆そうとしており、それによって世界で独裁政権が定着することを目指している」と述べました。

それに続き、ブログ冒頭の記事にもある、27日のポンペオ長官の演説です。

米トランプ大統領の元首席戦略官のスティーブ・バノン氏は7月20日、米FOXニュースとのインタビューで、トランプ大統領は中国共産党に対して「一貫性のある計画」を持っており、それによって中国共産党を解体していくとの見解を述べました。

同氏によると、まず中国共産党と「対抗」し、次に中国共産党を「崩壊させる」という2つのステップで計画を進めている。「最初に立ち向かい、それから中国共産党を打ち負かし、彼らの虚勢を暴くという総合的な作戦を目にすることになるだろう」というのです。

バノン氏は、トランプ大統領の陣営が、中国共産党の脅威に対抗するため、ロバート・オブライエン国家安全保障担当大統領補佐官、クリストファー・レイ連邦捜査局(FBI)長官、マイク・ポンペオ国務長官、そしてウィリアム・バー司法長官という「四騎士」を配置していると述べました。

「この4人は、技術や情報戦、経済戦で中国共産党と対峙するほか、同盟国とともに南シナ海で開放的な海洋秩序を構築し、中印国境紛争でインド側を支援するなど、一貫性のある包括的な戦争計画を立てている」

トランプ政権が、中国共産党の脅威に対抗するため、配置した「四騎士」

また、バノン氏は「私は財務長官の参戦を望んでいる」と述べ、「この戦争計画はすでに目の前に浮かんでいる。米国に侵入した中共ウイルス(CCP Virus、新型コロナウイルス)と同じレベルの一貫性を維持する必要がある」としました。

南シナ海では依然として緊張の高まりが続いています。17日付けの米政府系メディア、ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、最新の衛星画像で、中国当局が南シナ海のパラセル諸島最大の島であるウッディー島(中国名・永興島)に、戦闘機8機を配備していることが確認されたといいます。

米軍も南シナ海への軍事関与を強化しています。米海軍の「ニミッツ」と「ロナルド・レーガン」のニミッツ級航空母艦(原子力空母)2隻は17日、南シナ海で2回目の演習を行いました。また、米空軍のE-8C偵察機1機が過去1週間で4回も、中国の海岸に対して接近偵察飛行活動を行ったのは極めて異例のことです。

マーク・エスパー米国防長官は21日、中国共産党が過去1年間に南シナ海で軍事的挑発行為を繰り返し、地域的緊張を高めているとし、中国共産党と対峙する可能性に備え、アジア全域に米軍を配置していると述べました。

このブログでは、様々な根拠から中国は、世界のいずれかで局地戦を行う可能性が高いことを主張してきました。

トランプ政権による、四騎士の配置は、これに対する牽制と、中国が何らかの局地戦や米国へのテロ攻撃、浸透工作などを実施した時の、備えであると考えられます。

安全保障関連だけではなく、司法や、国内の治安維持も含めた総合的対応を目指していることを示すものです。従来は、中国にはサラミ戦術などでしてやられてきた米国ですか、今度はたとえサラミ戦術であろうとなんであろうと、中国が何か行動に出た場合、それを最終的には軍事力を用いてでも絶対に阻止するという意思の現れです。

さて、バノン氏は5番面の騎士としての財務長官の登場を望んでいるようですが、これはどういうことかといえば、中国による対米投資の本格的な制限等を実行することを意味していると解釈できます。いやそれどころか、中国が所有する米債権の無効化や、ドルと人民元の交換停止などの、措置もあり得るかもしれません。

5人目の騎士? ムニューシン米財務長官
ただし、現状では、ブログ冒頭の渡邊氏の記事にもあるように、「タイミング」と「さじ加減」から行って、本格的な財務的措置は、今のところ米国にとっても害が大きすぎると考えているのでしょう。

米国としては、米国と中国デカップリング(切り離し)が進んだ段階で本格的な財務的制裁措置を行えば、米国にとっても害が少なくなると考えているのでしょう。

今の段階では、四人の騎士が、中国が米国外であろうと、米国内であろうと、何か手を打って来た場合、迅速に対応できる体制ができていることを表明したという段階でしょう。そうして、実際に何かが起きれば、迅速に手を打つでしょう。

そうして、何かが起これば、この四人は互いに緊密に連携して対応をするというような、愚かなことはしないでしょう。そんなことをすれば、”Too Late”ということになりかねません。

この四人は、何かが起これば、自分ができる範囲の中ですぐに行動を起こし、その後に連絡を取り合うことになるでしょう。これで、どのような中国の迅速な動きも、制することができるでしょう。

そうして、いずれ5人目の騎士、ムニューシン米財務長官が加わり、米国による中国への本格的制裁が始まることになるでしょう。

最後の財政的制裁措置に関しては、すぐに全部を展開することはないとしても、大統領選挙の前に、かなり衝撃的な手を一つくらいは、打つ可能性があると思います。

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