2018年12月9日日曜日

機密戦争勃発! 米英が中国駆逐へ、ファーウェイ&ZTEの5G覇権“徹底排除” 識者「中国通信分野の『終わりの始まり』」―【私の論評】現代のコミンテルン、中国の5G世界制覇(゚д゚)!

機密戦争勃発! 米英が中国駆逐へ、ファーウェイ&ZTEの5G覇権“徹底排除” 識者「中国通信分野の『終わりの始まり』」

トランプ氏(右)と習近平氏の戦いが本格化してきた   写真はブログ管理人挿入

 ドナルド・トランプ米政権の主導で、世界各国で中国IT企業を締め出す動きが加速化している。背後には、中国製通信機器などを通じて、政府や軍事、企業の機密情報が盗まれ、共産党独裁国家が「軍事・ハイテク分野での覇権」を握ることを阻止する、強い決意がありそうだ。米国で今年8月に成立した「国防権限法」と、機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」の存在とは。中国排除の動きは民間企業にも広がりつつある。

 カナダ西部バンクーバーの裁判所は7日、中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の創業者の娘で、同社副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟容疑者の保釈の可否をめぐる審理を開いた。

孟晩舟容疑者

 カナダ検察当局は、孟容疑者が2009~14年に子会社のスカイコムを利用して、米国がイランに科している制裁を逃れた疑いがあると指摘。有罪なら禁錮30年以上の刑が科される可能性があるとした。

 今回の逮捕劇が、単なる「イラン制裁逃れ」で終わらないことは、世界中が認識している。

 ファーウェイの創業者は人民解放軍出身の任正非・最高経営責任者(CEO)であり、同社は「完全否定」しているものの、中国政府や情報当局との密接な関係が指摘されてきたからだ。

任正非

 中国の習近平国家主席は、国家戦略として「中国製造2025」を掲げている。米国の最先端のハイテク技術などを吸収して、25年までに中国を製造強国にするもので、トランプ政権は「中国の軍事的覇権に拍車をかける」と警戒している。

 米国が、この「ハイテク技術吸収の先兵」と受け止めているのが、ファーウェイであり、同じく中国通信機器大手「中興通訊(ZTE)」なのだ。中国が、第5世代(5G)移動通信システムで世界の主導権を握ろうとすることを断固阻止する構えといえる。

 トランプ大統領は今年8月、「近代史において、最も重要な投資だ」と語り、国防権限法案に署名し、同法が成立した。この法律は、ファーウェイやZTEなど、中国IT5社を「米国の安全保障上の脅威」と名指しし、米政府機関や米政府と取引のある企業・団体に対し、5社の製品を使うことを禁止している。

 まさに、「米中新冷戦」の一環であり、孟容疑者の逮捕は、米国による「事実上の宣戦布告」と受け止められなくもない。

 この「中国ハイテク排除」の動きは、米国の同盟国中心に広がっている。特に注目されるのが、米英両国を中心に情報機関の相互協定を結び、最高の機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」(米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の存在と動きだ。

 英秘密情報部(SIS、通称MI6)のアレックス・ヤンガー長官は3日、孟容疑者の逮捕が公表される前に行った講演で、「われわれの仲間が行っているように、中国政府と密接な関係にあるファーウェイの次世代高速通信システム(=5G)に依存すれば、情報網を危機にさらす危険がある。とりわけ軍事関連の通信を傍受されれば、戦略が筒抜けとなって安全保障上の脅威となる」と述べていた。

アレックス・ヤンガー長官

 米国とオーストラリア、ニュージーランドでは、すでにファーウェイ排除の動きが進んでいる。英国の通信大手グループも、5Gについてファーウェイ製品排除の方針を表明した。孟容疑者はカナダで逮捕された。

 日本は2013年に特定秘密保護法が成立したことで、米国などから防衛やスパイ、テロなど、安全保障に関わる機密情報が入るようになってきた。日本政府も7日までに、ファーウェイやZTEの排除方針を決めた。将来の「ファイブ・アイズ+1」もありそうだ。

 中国情報に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は「中国共産党は、ファーウェイとZTEを競争させながら、世界の覇権を握ろうとしている。これに対し、ファイブ・アイズを中心に『中国が、世界の移動通信システムの拠点を握ることを絶対に許さない』という強い方針がある。5Gの覇権を握られたら、政府の機能がダウンするぐらいのことをやられる可能性もある。いまや、『自由主義陣営vs中国共産党』という構図になっている。自由主義陣営は本気になり、不退転の決意で動いているだろう。中国の通信分野での『終わりの始まり』が見えてきたのではないか」と語っている。

【私の論評】現代のコミンテルン、中国の5G世界制覇(゚д゚)!

すでにアメリカでは、8月の国防権限法の成立によって、米政府機関および米政府と取引がある企業でのファーウェイとZTEの機器の使用が禁じられるようになりした。ファーウェイの携帯にはバックドアが組み込まれ、個人情報が抜かれていることが明らかとなったからです。

トランプ大統領の安全保障チームは、今年1月に3年以内に政府による5Gのネットワークの構築を検討するとしていました。中国の諜報活動に対抗するために、AT &T、ベライゾン、Tモバイルなどのモバイル通信会社の仕事を引き継ぐ形で行うといいます。

危惧されるインフラへのサイバー攻撃

日本政府は、日本の通信インフラに与える影響を考慮して、ファーウェイやZTEを規制すべきだが、対応は後手に回っています。

一方、アメリカは、議会を中心に着実な手を打ってきました。

最終的には外国投資委員会(CFIUS)によって阻止された3Comに対する買収案件に見られるような、ファーウェイの技術獲得を疑問視した米議員は、徹底的な調査を開始。6年前の2012年、米下院情報委員会は、その調査に基づく詳細なレポートを発表しています。

このレポートにおいて、とりわけ危惧されているのが、送電網など重要な社会基盤(インフラ)の通信を握られることです。

海外での事業収益が全体の6割を占めるファーウェイは、アメリカでの国防権限法の成立直前に、ロビー活動を展開。アメリカからファーウェイを排除すれば価格競争の制限となるため、消費者が不利になり、かつ、イノベーションも妨げると主張しました。

ところが、「安ければいいだろう」ということで、送電網にファーウェイの機器が使用されている場合、電気、ガス、金融機関、水道や鉄道など、サイバー攻撃を簡単に仕掛けられる危険と隣り合わせになります。9月に北海道で起きた地震の際の「停電パニック」を、中国は簡単に引き起こせるということです。

アメリカが国防権限法に基づいて成立させた対米投資強化法において、重要なインフラへの投資も規制の対象とするなど、商業の論理より、安全保障を優先したのはこのためです。

国防権限法成立以前の2017年12月、米上下両院の情報委員会のメンバーである議員がFCC(米連邦通信委員会)を通じ、AT&T社がファーウェイの携帯を顧客に提供することを断念させています。私企業の事業計画を、国民の安全保障を理由として変更させた事例として参考になります。

監視カメラ産業に群がる投資家たち

また、次世代の大容量通信を可能にする5Gが、監視カメラの顔認証技術などと結びつけば、監視社会がより一層強化されます。

現在のところ、中国政府は2020年までに6億2600万台の監視カメラを設置する予定です。

監視カメラの技術で有名なのが、中国のハイクビジョンとダーファ・テクノロジー。この2社で世界の監視カメラ市場のシェアの4割を超えます。

ハイクビジョンは、中国の治安当局に対し、「少数民族に属するかどうか」を判定する技術があるとして自社の製品を売り込んできました。新疆ウイグル自治区のウルムチで、3万台の監視カメラを設置する計画を受注するなどし、昨年だけで売上を30%伸ばしています。

ハイクビジョンに関しては、株式の4割を国有の軍需企業のCETCが保有するなど、中国共産党と密接な関係がある企業。2018年4月に米インテロス・ソルーションズが公表したレポートでも、ファーウェイやレノボとともにアメリカが警戒すべき企業の一つとして挙げられています。

しかし金融業界は、倫理的なリスクのある中国のテクノロジー企業を「買い」だと推奨し、間接的に一般の投資家たちを中国の人権弾圧に加担させています。投資家たちも知ってか知らずか、「人種主義」の片棒を担いでしまっているのです。

日本に目を転じれば、ソフトバンクがファーウェイと5Gの実証実験を行い、中国の5Gの規格化に手を貸しています。だがファーウェイが次世代通信規格の開発に成功すれば、ウイグル人等の弾圧、中国人の総監視社会の完成を間接的に支援することになります。

監視カメラと5Gがつくる全世界監視

それだけでないです。中国は、スマートシティを国内で構築し、そのネットワークを巨大経済圏構想「一帯一路」の沿線地域である東南アジアなどに輸出します。つまり中国の5G戦略は、中国の監視モデル体制の世界への輸出でもあるのです。

これは現代版コミンテルンともいえます。1919年にレーニンが発足させた共産党の国際組織であるコミンテルンは、全世界の共産主義化と全世界同時革命をその使命としました。実際大東亜戦争中には、米国の中枢、そうして日本の中枢にもソ連のスパイであるコミンテルンが深く浸透していて、日米戦争のきっかけを工作しました。現代は、それが5Gや監視カメラ、AIの技術によって可能となるのです。

第5回コミンテルン(共産主義インターナショナル)のプラカード。
1924年6月17日-7月8日 モスクワで行われた。

中国のスパイ進出の先進国ともなったオーストラリアでは、ファーウェイに対し、次世代通信規格である5Gを使った同国の無線ネットワークへの参入を禁止しました。第4世代(4G)では、5割超の通信設備にファーウェイを採用しているのにもかかわらず、です。

日本は中国の5G覇権を迎え撃つ戦略を持て

イギリス、オーストラリア、さらにロシアでも規制に向けて動き始めている。

10月12日付のロイター紙のスクープによると、中国の海外投資や国内工作に対抗するために、年初よりアングロサクソンの国際諜報同盟「ファイブ・アイズ」に日本とドイツとを加え、情報が共有されているといいます。

アングロサクソン圏では、早くから対中包囲網の構築の必要性が共有され、そこに日本もドイツも加わってほしいという要請があったと見て良いでしょう。

ところが、日本にはスパイ防止法がないために秘密保全の措置がまだ不十分です。一刻も早くスパイ防止法を制定する必要があります。

さらに中国のサイバー攻撃から国民を守るためにも、中国製の監視カメラや次世代通信規格を日本の産業から排除すべきです。

先にも述べたように米通信大手AT&TはFCCの警告を受け、ファーウェイの携帯を顧客に提供するのを断念しています。日本も、「国民の安全」を守るために、政府が私企業の事業計画を変更させることも視野に入れるべきです。

日本は、来年からポスト5G の研究開発に乗り出すといいます。欧米諸国と協調しつつ、6Gで中国を迎え撃つ戦略が急務となります。

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2018年12月6日木曜日

【コラム】文大統領専用機はなぜ米国で給油できなかったのか―【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?


朝鮮日報

チェコを訪問した文大統領

文在寅(ムン・ジェイン)大統領はチェコ・アルゼンチン・ニュージーランドの3カ国を訪問し、おととい夜帰国した。8日間にわたる海外歴訪だ。アルゼンチンは韓国のちょうど地球の裏側に当たる位置にある。これを対蹠点という。韓国から地球の中心に向かって井戸を最後まで掘っていくと、アルゼンチンに達する。

 ところが、1つ謎がある。文大統領はなぜチェコに行ったのだろうか。あいにくチェコには同国の大統領もいなかった。あるじのいない家に客が立ち寄ったのだ。あるじのいない家になぜ行ったのか。当初は、文大統領のチェコ訪問目的は「原発セールス」だと言っていたが、後に「原発は議題ではない」と言葉を翻した。苦しいことこの上ない。チェコ大統領はいなかったので当然会えず、代わりに首相に会ったが、それもチェコ側が要請して「非公式面談」として処理された。あるじのいない家に招待状もなく立ち寄ったので、公式の外交記録に残すのはやめようという意味だ。その過程で、文大統領歴訪のニュースを伝える韓国外交部(省に相当)公式英文ツイッターに、チェコを26年前の国名「チェコスロバキア」と誤記する恥までかいた。

 右往左往しながら言葉を翻したあげく、政府はついに「専用機の中間給油のため」と言った。文大統領専用機の空軍1号機は油を入れる場所がなくて、あえてチェコに行かなければならなかったのだろうか。当初は給油地として米ロサンゼルスを検討したが、直前にチェコに変えた。もしそうなら、文大統領が乗った空軍1号機は米国に着陸できない事情でもあるのだろうか。本紙社説も「本当に公表できない極秘の事情でもあったのか非常に気になるところだ」と書いている。

 では、文大統領と空軍1号機はなぜチェコに行ったのか。最大野党「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)前代表は次のように語った。「北朝鮮は首脳会談をタダでしたことがない。DJ(金大中〈キム・デジュン〉元大統領)の時もそうだったし、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の時もそうだった。MB(李明博〈イ。ミョンバク〉元大統領)も2億ドル(現在のレートで226億円)を要求され、MBが首脳会談を断念したことがあった。(文大統領は)先日送ったミカン箱の中に入っているのはミカンだけだろうか? (金正恩〈キム・ジョンウン〉朝鮮労働党委員長の叔父)金平一(キム・ヨンイル)が大使として駐在しているチェコに行ったのはなぜだろうか? 給油が目的だったと言っているが、それは正反対の飛行ルートではないのか?」

 すると、保守系野党・正しい未来党の李俊錫(イ・ジュンソク)最高委員が洪準杓前代表を批判した。「地球が丸いということを理解できていないある政治家が的外れなあら探しをした」というのだ。李俊錫最高委員は、仁川国際空港からチェコのプラハを経由してアルゼンチンのブエノスアイレスに行った場合は距離が2万75キロメートル、仁川空港から直接ブエノスアイレスに行った場合は1万9484キロメートルなので、500キロメートルほどしか差がないと言った。だから、「正反対の飛行ルート」という洪準杓前代表の発言は「的外れ」と言ったのだ。

 それなら、本当に文大統領が乗った空軍1号機はなぜチェコに行ったのか。トランプ大統領が乗る米大統領専用機は米空軍所属だ。管制塔コールサインも「エアフォースワン」だ。機長は空軍大佐で、乗務員も米空軍に所属している。トランプ大統領が乗る米大統領専用機は軍用機なので、海外歴訪時は米空軍基地に着陸する。シンガポールで行われた米朝首脳会談の時、金正恩委員長が乗ったエアチャイナは民間航空機なので民間国際空港のチャンギ空港に着陸し、トランプ大統領が乗ったエアフォースワンは空軍機なので軍事空港のパヤレバー空軍基地に着陸した。

 トランプ大統領が乗るエアフォースワンが米空軍機なのに対し、文大統領が乗る大韓民国空軍1号機は言葉こそ「空軍1号機」だが、実際には軍用機ではなく、民間から賃借したチャーター機だ。文大統領専用機は民間航空機なのだ。朴槿恵(パク・クネ)大統領が2014年末に大韓航空から1421億ウォン(現在のレートで約144億円)で5年間借りたものを文大統領がずっと使っている。ほぼ唯一、積弊(前政権の弊害)清算リストに載っていないのがこの「朴槿恵専用機」だ。文大統領専用機は管制塔コールサインも「エアフォースワン」ではなく、ただの「コードワン」だ。民間航空機だからだ。ならば、今年9月に北朝鮮の平壌に行った民間航空機・文大統領の「コードワン」はそれから6カ月間、米国に入国できない「制裁」に引っかかっているのではないか、という合理的な疑問が生じる。

民間航空機・文大統領の「コードワン」と同型機

 今年7月の南北統一バスケットボール競技大会に参加するため、韓国の選手たちが北朝鮮に行った時、空軍輸送機C-130Hに乗って行った。韓国のバスケットボール選手があえて軍用機に乗って行った理由は、民間機が北朝鮮を往復すればすぐに国際社会の対北朝鮮制裁に引っかかるからだった。

 さあ、韓国の当局者は答えなければならない。文大統領専用機、つまり民間機「コードワン」が米ロサンゼルスで給油せずにチェコで給油したのは、対北朝鮮制裁違反で米国に入国できなかったためではないのか。それとも別の理由があるのか。

キム・グァンイル論説委員

【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?

文大統領の外遊日程は先月27日から5泊8日でチェコ、アルゼンチンのG20首脳会議、最後にニュージーランド訪問でしたが、文大統領がG20首脳会議前になぜチェコを訪問したかで韓国メディアは騒いでいます。

ちなみに、文大統領がニュージーランドを訪問したときに、迎えたのは、首相でも、長官でもなく「海軍中佐」 だったというおまけもついてしまいました。

ニュージーランドを訪問した文大統領。迎えたのは、
首相でも、長官でもなく「海軍中佐」だった。

韓国中央日報や朝鮮日報は「文在寅大統領はG20首脳会議に出席するためアルゼンチンに向かう途中チェコに立ち寄ったが、これについて疑惑がいまだに収まらない」と報じています。

そこで文大統領のチェコ訪問に関わる疑問点を整理します。
①文大統領の訪問のチェコ側のホストはプロトコール上、ミロシュ・ゼマン大統領だが、同大統領はイスラエルを国賓訪問中で、文大統領がプラハ入りした時は不在だった。そのため、文大統領は28日、チェコではアンドレイ・バビシュ首相と会談している。 
②韓国政府は米ロサンゼルスで大統領専用機の給油をすると発表したが、10月中旬、急きょ変更され、給油目的のためチェコを訪問することになった。 
③韓国側は文大統領とチェコ首相との会談を「会談ではなく、面会」と説明してきたが、チェコ側の要請を受けて「非公式な面会」となった。両国間で訪問の綿密な準備がなかったことが伺える。 
④チェコ訪問の目的は政府の説明では「原発セールス」だったが、韓国大統領府は「原発は全く議題ではなかった」と弁明するなど、関係者の説明がコロコロ変更している。中央日報の先月29日報道では文大統領は韓国の原発の安全性をアピールしたという記事を流している。

韓国外務省は大統領のチェコ訪問を公表する時、チェコを旧名「チェコスロバキア」と表記するなど、初歩的外交ミスを犯しています。この記事の冒頭の朝鮮日報3日付の社説は「文大統領のチェコ訪問は本当に給油が目的だったのか」と報じ、疑惑視しているほどです。

一国の大統領の外国訪問でこれほど杜撰(ずさん)な準備は考えられないです。文大統領のチェコ訪問には「何かある!?」と韓国メディアが考えても可笑しくはないです。

そこで文大統領のチェコ訪問の「ナゾ」を考えてみました。直ぐに頭に浮かぶことは、チェコの首都プラハには文大統領の南北首脳会談の相手、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の叔父、金平一氏が北大使として赴任しているという事実です。

金平一大使(64)は故金日成主席と金聖愛夫人の間の長男で、金正恩氏の父親、故金正日総書記とは異母兄弟です。その上、政敵でもあったため、金大使は平壌の中央政界から追放され、欧州各地を転々とする外交官となりました。金大使の外交官キャリアは1982年、駐ユーゴスラビア武官時代から始まり、駐ハンガリー大使、駐ブルガリア大使、駐フィンランド大使、そして1998年から17年間余り駐ポーランド大使を務めた後、2015年から駐チェコ大使です。

金平一氏

すなわち、文大統領は金正恩氏の親戚が住んでいるチェコを急きょ、訪問したことになります。少なくとも、10月中旬までは予定ではありませんでした。給油地を変更し、ホスト国の大統領不在中という外交上異例の時、チェコを訪問しました。それほどチェコを訪問しなければならない理由が文大統領にあったことになります。

文大統領の金正淑夫人がプラハ城を見学中、文大統領は単独行動を取っています。そこで大胆に推測しました。文大統領は金平一大使とプラハ市内ないしはホテルで密かに会合したのではないでしょうか。目的は、①金正恩氏に依頼され、そのメッセージを伝言するか、②金大使を南北融和路線に加え、朝鮮半島の再統一を話し合うことでした。

①は非現実的ですが、問題は少ない、②は金正恩氏を困惑させるでしょうしし、ひょっとしたら、金正恩氏を激怒させるかもしれないです。

ちなみに、②は金平一大使を北朝鮮の暫定指導者にするといったラジカルなシナリオも考えられます。換言すれば、文大統領は金正恩氏の報道官ではなく、独自の南北再統一構想を描き、その線で動いているということになります。

この記事の冒頭の朝鮮日報の記事で、「今年9月に北朝鮮の平壌に行った民間航空機・文大統領の「コードワン」はそれから6カ月間、米国に入国できない「制裁」に引っかかっているのではないか、という合理的な疑問が生じる」とあります。

そこで、米国の北朝鮮に対する独自制裁について調べてみました。米国版のWikipediaを調べると、以下の記事がありました。
Sanctions against North Korea
この記事の中に以下のような文書がありました。
Also any aircraft or ship upon entering North Korea is banned for 180 days from entering the United States.
これを訳すと、「北朝鮮に入ったいかなる航空機も船舶も、180日間米国に入国できない」です。これによれば、民間であろうが、軍用機であろうが、北朝鮮に入った航空機は、180日間米国に入国できないことになります。

確かに、このような制裁が存在するのです。

平昌オリンピックでの北朝鮮選手団の移動には、韓国の民間航空会社アシアナ航空のチャーター便が使われました。そのためアシアナ航空がアメリカの独自制裁の対象になる恐れが指摘されましたが、韓国政府が側と事前に調整し、今回に限り認められました。

今回の文大統領のチェコ訪問が、米国の制裁にひっかかっためチェコで給油のためと仮定したとして、おそらく韓国政府は今回も米国側と事前に協議して、これを認めて貰おうとしたのですが、直前だったため調整が不可能だったのか、あるいは米国側が意図的にこれを認めなかったのかいずれかだと考えられます。そうして、私は後者のほうが可能性が高いと思います。

私としては、文大統領が金平一大使と密かに面談したという説よりも、こちらのほうがより筋が通ると思います。

現在、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は悪の帝国の一画である北朝鮮の番犬になり下がり、制裁破りともとられかねない言動を繰り返しています。トランプ大統領は北朝鮮を手なずけようとしているのですが、「しつけ」をしている最中に、横からエサを放り投げられたら激怒するのも当然です。韓国の銀行や企業に対して米国が制裁を発動する日も近いのではないでしょうか。これは、その前触れなのではないかと思います。

私は、米国との調整がうまく行かなかったので、焦った文大統領は、代替の他の給油地を探したのでしょうが、その時にチェコが浮かんだのではないかと思います。
他ならぬチェコに行けば、北朝鮮の大使である金平一大使がいるので、何やらそれに関係した動きととられ、まさか米国の制裁にひっかかったとは思われないだろうと、世間体を考えて姑息な皮算用をしたのではないかと思います。そうだとしたら、最悪というか醜悪です。

朝鮮日報の記事も本当は、これを言いたかったのではないでしょうか。ただし、韓国は言論の自由があるようで、ないというのが実情ですから、言えなかったのでしょう。
やはり、米国は意図的に文大統領を米国内に入れなかったのだと思います。北朝鮮制裁を厳格に適用し、いずれこのような制裁が続く可能性を示唆したのだと思います。そうして、このやり方はなかなか良い方法だと思います。日本も、慰安婦問題や徴用工問題で、韓国に対してまずはこのような方式で、韓国に接するべきだと思います。その後徐々に圧力を強めていくという方式が良いと思います。
いずれにしても、文大統領のチェコ訪問の「ナゾ」は、朝鮮半島の政情が動いていく中で次第に解けていくことでしょう。

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2018年12月5日水曜日

米国から飛び込んできた日本人拉致事件への朗報―【私の論評】年明け早々「安倍首相の電撃訪朝」というニュースが飛び込んでくるかもしれない(゚д゚)!

米国から飛び込んできた日本人拉致事件への朗報
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北朝鮮に拉致された米国人青年、トランプ政権が本格調査開始へ



 米国の議会と政府が、北朝鮮による米国人拉致疑惑の解明に動く気配をみせている。日本人拉致の解決に向けて意外な側面支援となりそうな新たな状況が生まれてきた。

 米国議会上院本会議は2018年11月末、中国雲南省で14年前に失踪した米国人男性が北朝鮮に拉致され、平壌で英語の教師をさせられている疑いが強いとして、米国政府機関に徹底調査を求める決議を全会一致で採択した。下院でも同様の趣旨の決議がすでに成立している。今回の上院での決議によって、トランプ政権が北朝鮮による米国人拉致疑惑の解明に本格的に動く見通しが生まれてきた。

デービッド・スネドン氏が消息を絶った中国雲南省の虎跳峡(

 この米国人男性の失踪は、北朝鮮による日本人拉致事件とも関連しているとされる。米国での今回の新たな動きは日米合同の捜査も求めていることから、日本の拉致事件解決への予期せぬ側面支援となる可能性が浮んできた。

スネドン氏は今も拘束されている?

 米国連邦議会上院本会議は11月29日、「デービッド・スネドン氏の失踪への懸念表明」と題する決議案を全会一致で採択した。

 同決議案は上院のマイク・リー議員(共和党)やクーンズ・クリストファー議員(民主党)ら合計9人により共同提案され、今年(2018年)2月に上院外交委員会に提出されていた。今回、その決議案が上院本会議で採決に付され、可決された。

 2004年8月、当時24歳だったスネドン氏は中国の雲南省を旅行中に消息不明となった。同決議によると、スネドン氏は、当時、雲南省内で脱北者や北朝鮮の人権弾圧に抗議する米人活動家を追っていた北朝鮮政府工作員によって身柄を拘束されて平壌に連行され、北朝鮮の軍や情報機関の要員に英語を教えさせられている疑いが濃厚だという。そのうえで同決議は、トランプ政権の国務省や中央情報局(CIA)などの関連機関に、徹底した調査の実施を求めている。

 スネドン氏は韓国に2年ほど留学した後の帰国途中、中国を旅行し、雲南省の名勝の虎跳渓で行方不明となった。当初、中国当局は同氏の家族らからの問い合わせに対し、同氏が渓谷に落ちたと答えていた。だがその後、家族の現地調査でスネドン氏は渓谷を渡り終えていたことが確認された。

 また、日本の拉致問題の「救う会」は、中国側から「当時、雲南省の同地域では北朝鮮工作員が脱北者などの拘束のために暗躍しており、米国人青年も拉致した」という情報を得ていた。その情報をスネドン家などに提供したことで、北朝鮮拉致疑惑が一気に高まった。

 決議案はこの展開を受けて提出されていた。米国務省は決定的な証拠がないと主張してこの案件に消極的だったが、今回の同決議の採択で本格調査を義務づけられることとなる。

 同決議は、スネドン氏が北朝鮮に拉致され、今なお拘束されている公算が高いと断定する。その主な根拠は以下の通りである。

(1)中国領内では同氏の事故や死亡を示す証拠は皆無だった。
(2)失踪当時、北朝鮮工作員の雲南省内同地域での活動が確認された。
(3)日本の「救う会」関係者が「スネドン氏は確実に北朝鮮工作員に拉致され、平壌に連行された」という情報を中国公安筋から得た。
(4)北朝鮮では当時、軍や情報機関の要員に英語を教えていた元米軍人のチャールズ・ジェンキンス氏が出国したばかりで、新しい英語教師を必要としていた──など。

 2016年には、「スネドン氏は平壌で現地女性と結婚して2児の父となり、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を含む要人らに英語を教えている」という証言が韓国から伝えられ、米国のメディアもスネドン氏拉致説を一斉に報道していた。

調査が進まなかったオバマ政権時代

 今回の上院決議は拘束力こそないが、国務省やCIAをはじめとする関係省庁がスネドン氏の行方の本格調査を実施することや、日本や韓国の政府と協力し合って北朝鮮のスネドン氏拉致の可能性について合同調査を始めることを、米国政府に明確に求めていた。

 米国議会ではオバマ政権下の2016年9月に、下院本会議がスネドン氏の北朝鮮拉致説に関連して同趣旨の決議を採択した。しかし、当時はオバマ政権の中国への配慮などからスネドン氏の行方調査が実際には進まなかった。

 この間、日本側では元拉致問題担当相の古屋圭司衆院議員が、米側上下両院に決議案の提出と採択を一貫して訴えてきた。古屋議員は、超大国である米国が自国民の北朝鮮による拉致の可能性を認識し、その行方調査を本格的に始めれば、必ずや日本人の拉致事件の解決にも有力な材料になると主張して、米議会が動くよう働きかけてきた。

 今回の上院での決議採択は、上下両院がそろって同趣旨の決議を採用したこととなる。トランプ政権がついに腰を上げる確率が高くなってきた。

【私の論評】年明け早々「安倍首相の電撃訪朝」というニュースが飛び込んでくるかもしれない(゚д゚)!

8月28日付の米紙ワシントン・ポストは、7月に日本と北朝鮮の当局者がベトナムで極秘会談を行ったと報じました。これに関しては、このブログでもお伝えしました。この会談は米国にも秘密にされていたとのことで、トランプ米大統領は安倍晋三首相に対して非常に立腹しているらしいとされていました。

トランプ氏は米朝首脳会談で日本人拉致問題に言及したと言っているから、「日本が北朝鮮と抜け駆けするのはけしからん」という理屈なのでしょうが、米メディアの報道によると、トランプ氏は金正恩朝鮮労働党委員長に「安倍が『日本人拉致被害者を返してくれるよう、金委員長に言ってください』と私に泣きついているんだ」という程度しか触れていないというのですから、日本が本気で拉致被害者を取り返すには北朝鮮との直接交渉するしかないです。日朝当局者の秘密接触は当然のことです。

問題は首相官邸などごくわずかの人間しか知り得ない極秘情報を、誰がワシントン・ポストの記者に漏らしたかです。同紙の記事を読むと、ニュースソースとして「北朝鮮問題に詳しい人」という漠然とした表現を使っています。また、「米政府高官(複数)」が日朝の秘密協議について「苛立ちをあらわにした」と書いているので、日本側が意図的に複数の米政府高官に情報をリークしたのは間違いないでしょう。

北村滋内閣情報官

日本政府を代表して交渉に臨んだのは、安倍首相の側近中の側近といわれる北村滋内閣情報官ですが、彼は北朝鮮の専門家ではありません。本来ならば、北朝鮮問題のエキスパートである外務省担当者、あるいは高官が北朝鮮当局者と接触すべきところですが、外務省ルートが機能しないことから、北村氏が出てきたとみるべきでしょう。読売新聞は今年6月、外務省が動かないため、安倍首相が北村情報官を主軸とする情報担当者を通じ、北朝鮮との接触を模索していると報じています。

それを裏付けるように、北村氏が接触した相手が北朝鮮の情報機関といわれる朝鮮労働党統一戦線部の金聖恵(キム・ソンヘ)策略室長だったことも、外務省関係者が外された理由とみられます。このため、なんらかのかたちで、この秘密接触の情報を入手した外務省関係者が北村・金接触をつぶそうとして、旧知の米政府高官にリークした可能性も考えられます。



それでは、金聖恵氏とはどのような人物なのでしょうか。

韓国メディアによると、金日成(キム・イルソン)総合大学出身とされる50代のエリート官僚で、南北閣僚級会談など「対南(韓国)交渉」に長く関わっており、「いつも自信満々」「柔らかく落ち着いた言動が普通の人ではない印象」とされています。

金聖恵氏

統一戦線部はCIA(米国中央情報局)とともに、米朝首脳会談への事前交渉を主導した工作機関であり、同部トップの部長はポンぺオ米国務長官のカウンターパートである金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長であることから考えると、金聖恵氏は同部ナンバー2の実務責任者で、金正恩氏の妹の金与正・党副部長の側近ともされます。

金聖恵氏の対外的肩書は党中央員会室長ですが、裏の肩書が統一戦線部策略室長であり、2013年には祖国平和統一委員会書記局部長という肩書で紹介されるなど、これまでは主に対韓、統一部門を担当してきたのですが、ここにきて対米、対日部門にも責任分野が拡大したとみてよさそうです。

いずれにしても、金正恩指導部を支える有力幹部といえ、北朝鮮の女性指導者としては、金氏の妻の李雪主氏、金与正氏、外務官僚としては崔善姫・外務次官とならんで4本柱の一角を占めているといえそうです。

それでは、北村・金接触を受けて日朝関係はどうなるのでしょうか。両者がベトナムで接触したのが7月14日午後から17日午前の間だったとみられます。というのも、北村氏はほぼ毎日、官邸などで安倍首相と会っているのですが、この期間は安倍首相とは接触していないからです。ちなみに、北村氏は17日午後に官邸で安倍首相と会っています。時事通信の首相動静では次のようになっていました。

「午後2時45分、谷内正太郎国家安全保障局長、北村滋内閣情報官、浦田啓一公安調査庁次長が入った。同56分、谷内、浦田両氏が出た。同3時25分、北村氏が出た」

日本の重要な情報関係者3人が雁首をそろえて、安倍首相に会いに行っているのですから、よほど重要な案件であることは間違いないです。つまり、北村氏が上司に当たる谷内氏、部下の浦田氏とともに、北村氏の対北接触の報告を行ったとみることができます。

その後、8月10日に観光ツアーで北京から空路で平壌入りした日本人男性が北朝鮮の秘密警察組織である国家保衛省要員に拘束されましたが、その2週間後に電撃的に釈放されています。わずか2週間で釈放というのはこれまでで最短期間です。以前には日本人男性が2年間も拘束されていたこともあっただけに、極めて異例の措置といえます。

なぜ釈放されたのかを考えると、日朝の秘密接触が今も継続中であり、北朝鮮が「日本側を刺激するとまずい」という判断を下したとの推論が成り立ちます。そう考えると、日朝交渉は水面下で続いているのは間違いないです。

拉致問題に関しては、他にも動きがあります。それは、モンゴルのフレルスフ首相が日本を来週訪れ、安倍晋三首相と会談する方向で調整に入ったことです。

モンゴルの第30代首相フレルスフ氏

モンゴルは北朝鮮と関係が深いです。安倍首相は日本人拉致問題の早期解決に向けた協力を要請する考えです。両国外交筋が5日、明らかにしました。

安倍首相はモンゴルに拉致問題を巡る仲介役を期待。9月にロシアで国際会議に出席した際にはバトトルガ大統領と会談し、連携を確認しました。ハイレベルの対話を重ねることで、北朝鮮への働き掛けや情報収集を強化する狙いがあります。

さて、2019年初頭にも2度目の米朝首脳会談が実現する可能性が高まるなか、拉致問題解決に向けた日朝首脳会談の道筋は見えないままです

それどころか、北朝鮮メディアは相次いで日本批判を展開しており、慰安婦問題などを引き合いに、日本を「拉致王国」呼ばわりするほどです。

北朝鮮がやり玉に上げているのは、日本が国際社会に対し拉致問題解決に向けた協力を求めている点です。朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は18年12月2日付の論評記事で、安倍晋三首相が東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議のためにシンガポールを訪問した際、ASEAN首脳に対して協力を求めたことについて、
「日本軍性奴隷犯罪をはじめ、過去の日本の特大反人倫犯罪行為を上書きしようという卑劣な策略」

などと非難。朝鮮出兵として知られる文禄・慶長の役(1592~93、1597~98)、大韓帝国最後の皇太子、李垠(リ・ウン、1897~1970)の訪日、慰安婦問題などを引き合いに、
「世界的に公認された特大型の拉致犯罪国家は、まさに日本だ」
などと主張した。さらに、
「日本の当局者が、すでに解決された拉致問題を持ち出して卑屈な請託外交を繰り広げていることこそ、盗人猛々しい妄動」
だとして、「拉致問題は解決済み」だとするこれまでの立場を繰り返し、
「国際社会は、拉致王国である日本の図々しさに憤怒を感じている」
としました。

12月4日付の論評記事では、15年末の慰安婦合意に基づいて設立された財団の解散について、「南朝鮮の各階層は、これを一斉に歓迎」しているとして、韓国は合意を「完全に廃棄」すべきだと主張。「日本の永遠の罪を決算するための闘争をさらに果敢に展開」すべきだとした。

菅義偉官房長官は12月3日の会見で、米朝首脳会談が日朝首脳会談の実現に与える影響について聞かれ、
「日朝首脳会談については、その時期を含め、決まっていることは何もない。北朝鮮との間では、北京の大使館ルート等、様々な手段を通じてやり取りを行っているが、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、詳細については控えたい」
などと述べるにとどめました。

このようなことは、北朝鮮では良くあることです。第一回米朝会談の直前にもあったことです。トランプ氏はこれに応酬し、「金正恩はチビのロケットマン」などと揶揄していました。このようなことでは、米朝会談が開催されないなどということはありませんでした。

というより、北朝鮮側が日朝首脳会談など全く考えていないというのなら、余計な期待を与えたりしないように、沈黙を保つはすです。北としては、拉致被害者問題を少しでも自らに有利にするため、敢えて罵詈雑言を放っているのでしょう。

ある日突然「安倍首相の電撃訪朝」というニュースが飛び込んでくるかもしれないです。

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2018年12月4日火曜日

国民の理解得られる対中防衛「2つの秘策」 トランプ氏の影響で防衛費GDP1%超―【私の論評】日本のあるべき防衛論を組み立て、それに見合った防衛予算を組め(゚д゚)!

国民の理解得られる対中防衛「2つの秘策」 トランプ氏の影響で防衛費GDP1%超

永田町・霞が関インサイド

海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」

安倍晋三政権は12月中旬、新しい「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を閣議決定する。日本を取り巻く東アジア情勢の激変に基づくもので、5年ぶりである。これに伴い、防衛装備品などの導入計画「中期防衛力整備計画」(中期防)も大きく見直される。

 それだけではない。これまで日本政府が防衛費を国内総生産(GDP)比で1%以内に収めてきた「原則」も変更する。防衛費とは、防衛装備品の取得費や自衛隊の人件費など、防衛省が所管する予算のことである。

 これにも、実はドナルド・トランプ米大統領の存在が影響している。トランプ氏はこの間、フランスや英国、ドイツなど、北大西洋条約機構(NATO)の主要加盟国に対し、繰り返し防衛費の増額を求めてきた。

 ちなみに、2017年度の米国の防衛費6100億ドル(約69兆1600億円)はGDP比3・1%に対し、フランスの578億ドル(約6兆5500億円)は同2・3%、英国の472億ドル(約5兆3500億円)は同1・8%、ドイツの443億ドル(約5兆200億円)は同1・2%。

 日本は5兆1911億円の0・92%(18年度)であり、トランプ氏が求める「応分の負担」の対象国になっている。つまり、防衛省所管以外の旧軍人遺族らの恩給費や国連平和維持活動(PKO)分担金などを合算して、NATO基準にするということである。これでGDP比1%超となり、安倍首相はトランプ氏に顔が立つ。

 これだけではない。防衛大綱の閣議決定を経て19~23年度の中期防に超高額な防衛装備品の取得方針を盛り込む。

その目玉が、米ロッキード・マーチン社の最新鋭ステルス戦闘機「F35」の購入だ。それも半端ない数である。これまでに導入が決まった42機に加えて、1機100億円超を100機追加購入するというのだ。総額1兆5000億円に達する。これもまた、トランプ政権が強く求める対日貿易赤字解消を念頭に置いたものだ。

 新防衛大綱と次期中期防は、トランプ氏のために策定するのではと勘繰りたくなる。それはともかく、筆者が注目する防衛装備品が2つある。

 1つは最新の早期警戒機「E2D」(ノースロップ・グラマン社)の9機導入。中国が配備した最新ステルス戦闘機「J20」を意識したものだ。

 2つ目は、産経新聞が報じた「中国空母2020年末にも進水-国産2隻目、電磁式射出機を導入」に関係する。海上自衛隊のヘリ搭載型護衛艦「いずも」の空母化を新防衛大綱に明記することである。この2つは国民の理解が得られるはずだ。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】日本のあるべき防衛論を組み立て、それに見合った防衛予算を組め(゚д゚)!

防衛費に関しては、他国との相対的な要素が強い点が大きいことに留意しなければならないです。一国の防衛費が増加したからといって、その周辺国との比較の上で、その増加がどういう意味を持つのかを考える必要があります。そこで防衛費の質的な比較・検討が重要となるが、まずは防衛費の総額そのものを主眼において解説します。

防衛費の総額といっても、各国の防衛費の考え方や組織の違いもあり、単純な比較が難しいです。例えば、中国で公表されている防衛費には、技術開発関連の費用は含まれていないとされている。また、現在の日本では、海上の警備・水路業務は海上保安庁が担当しているが、独自の沿岸警備隊を有さず海軍がその職務を行っている国もあり、そうした国々とは単純に比べることはできないです。

そこで、国際紛争研究で著名なストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が集計・公開しているデータベースを用いて、日本周辺国の防衛費の20年分(1997年~2016年)の推移を見ていこう。SIPRIのデータを元に、日本、中国、韓国、台湾、ロシアといった日本周辺国(北朝鮮はデータ無しなので除外)の防衛費の推移をグラフ化したものを以下に掲載します。

出典:SIPRI Military Expenditure Database

一見して明らかなのは、2000年代に入ってから中国の防衛費が各国を引き離していることと、韓国・ロシアの増加傾向、そして日本・台湾の横ばい傾向です。1990年代の一時期、日本はアメリカに次ぐ世界2位の防衛費であった時期もあったのですが、今や周辺国の間では中程度と言っても良いです。

今や、経済成長を背景に中国の防衛費が周辺国を圧倒している状況にあります。周辺国の増加ペースを遥かに超えており、2016年の段階で日本の防衛費の5倍以上になっています。昨年の防衛費から1%程度増えて過去最大と騒がれる日本の状況とは、天と地ほどの開きがあるかもしれないです。

残念ながら上のグラフでは中国の伸びが他国を引き離しすぎて、中国以外の伸びが分かりにくいです。そこで、中国を除外した各国のグラフを見てみます。

出典:SIPRI Military Expenditure Database

1990年代に防衛費が大きく落ち込んでいたロシアは、原油高を背景とした経済立て直しにより持ち直し、2000年代後期には日本を抜いています。また、韓国も右肩上がりの増加を続けており、日本の防衛費を抜くのは時間の問題です。

韓国の防衛費が日本を上回ることは、多くの人に意外性を持って受け止められるかもしれないです。しかし、これはある意味必然なのです。この20年間、日本のGDPに占める防衛費の割合は1%で推移しており、同じく韓国のGDPに占める防衛費の割合は2%台で推移しています。

その他、韓国とロシアについては、もう一つ意外な側面があります。それは、韓国のGDPは東京都と同程度ということです。ロシアのGDPは韓国を少し下回る程度です。

ロシアは例外としても、GDPが東京都程度の韓国の防衛費が、日本のそれを上回る日も近いかもしれないという事実は多くの人々にとって衝撃的だと思います。

一方、「失われた20年」と呼ばれる経済停滞の真っ只中にあった日本に対し、韓国は経済危機を経たものの成長を続けています。今後、日本の経済が停滞しGDPが伸び悩む中、日本の防衛費の支出割合が変わらない以上、韓国のGDPが日本の4割近くに達した時点で、韓国が日本の防衛費を抜くのは必然なのです。

恐らく、このペースでいけば、10年以内に韓国が日本の防衛費を抜くことは十分に考えられることでしょう。結局のところ、日本が抱える多くの問題と同様に、日本の経済停滞に根本要因があります。「過去最大の防衛費」とはいいつつも、実態としては日本の相対的な退潮を示していると見ることもできます。

日本の防衛費の個々の項目を見てみます。

本年3月28日、参院本会議で平成30年度予算が可決・成立しました。この予算に関するマスメディアの報道を見ると、過去最大の97兆7000億円にものぼる一般会計総額とともに、陸上設置型ミサイル防衛システムのイージス・アショアや長距離巡航ミサイルの取得費が計上され、過去最大となる5兆1911億円となった防衛費に言及がされていることが多いです。

この防衛費の中でも新規に行われる事業として目新しいものは、多様な任務に対応しつつコンパクト化を両立させた3,900トンの新型護衛艦2隻の建造(992億円)、イージス艦に搭載する新型対空ミサイルのスタンダードSM-6の試験弾の購入(21億円)、長距離を飛翔する巡航ミサイルであるスタンド・オフ・ミサイルの導入(22億円)、将来の経空脅威・弾道ミサイルに対応する次期警戒管制レーダ装置の開発(87億円)などがあります。

ここで、新規事業の中で主だったものをリスト化してみます。


こうして改めて新規事業とその費用を見てみると、メディアで注目されたイージス・アショアや長距離巡航ミサイル導入が今年度予算に与えた影響自体は実は小さく、金額だけ見れば新型護衛艦2隻の金額が大きいです。しかし、組織別に見れば海上自衛隊の今年度予算は29年度予算より減額しています。新規事業全体を見ると、今年度以降に大きな出費を伴うものもありますが、今年度予算に与えるインパクトはそれほどでもありません。

今年度の防衛予算を見渡すと、従来からのミサイル防衛・島嶼防衛の重点化が継続していると言えます。イージス・アショアやスタンド・オフ・ミサイルなど、具体的な装備品の名前が出ただけで、実質的には従来路線のままといえるでしょう。

一方で、重要項目とは言われつつも、2年連続で減額された項目があります。それがサイバー関連経費です。29年度に124億円だったサイバー関連経費は、今年度は110億円に減少しています。大幅な増額があった28年度は監視機材・分析装置といった費用のかかる機材整備が行われたのですが、それが落ち着いた29年度の減額はまだ理解できるものでした。しかし、今年度も引き続き減額になった点は解せないです。

今年度はサイバー防衛隊の隊員を110名から150名へ増員する計画である。その一方、北朝鮮でサイバー戦に携わる兵士は2016年の推計で6,800人を超え、近い将来1万人に達するとみられている。実際、北朝鮮が関与しているとみられるサイバー攻撃が世界で相次いで発生している中、日本のサイバーの分野の取り組みが明らかに遅れてはいまいか。

今年度の防衛予算をめぐる報道を見ても、イージス・アショアのような目で見える・実態のあるものに注目が集まりやすい。だが、目に見えない部分での戦いが深刻化している今、目に見えない部分がもっと注目されてもいいと思うのですが・・・・・。

さて、来年以降の防衛予算についても掲載しておきます。

財務省は24日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、平成31~35年度の5年間の中期防衛力整備計画(中期防)について、調達改革によるコスト削減の推進を提案しました。5年間で最低でも1兆円の削減が可能だとみています。北朝鮮による弾道ミサイルの脅威などを受け、第2次安倍晋三政権発足後の25年度以降、毎年度増加を続けている防衛費ですが、無駄の排除や効率化の徹底でさらなる財源を捻出するとしています。

中期防は防衛力の整備、維持、運用に関する基本指針「防衛大綱」に基づき5年ごとに部隊規模や経費を明示するものです。政府は年末までに、31年度からの計画を策定します。 

26~30年度の中期防でも5年で計7千億円のコスト削減を行う計画で、すでに計画を上回る7710億円が削減できる見通しです。特に防衛装備庁が発足し、調達改革が本格化した29、30年度は年2千億円程度の削減ができていることから、財務省は「(次期中期防でも)この水準は最低限達成したうえで、さらなる上乗せを目指すべきだ」とし、5年で1兆円以上のコスト削減を求めました。

財務省が調達コストの大幅削減を提案するのは、市場価格がなく、原材料費なども不透明な防衛装備品には、まだコストを削減する余地が残されているとみているからのようです。

特に防衛装備品の取得単価をみると、計画段階の価格と比べて高額になっているものも少なくないです。一般的に量産が進めば生産効率が上がるため価格は下がるのが普通ですが、財務省が調査したところ、26~30年度の5年間で87両を購入した機動戦闘車は1両あたり4億8千万円の計画だったのですが30年度に実際に購入した際の単価は7億6千万円と58%も上昇。地対艦誘導弾も計画では85億2千万円だったのですが同年度の取得単価は129億4千万円に上ったといいます。

部品の輸入単価の上昇や原材料費の高騰などが要因と考えられますが、詳細は公表されていません。財務省は「計画単価を公表し、取得単価が計画を上回った場合は優先順位を決め、調達計画を見直すことも必要だ」と提言。世界の防衛産業が大規模化していることを踏まえ、国内防衛関連企業の再編の必要性も指摘しました。

過去の防衛費の推移や、今回の「5年間で最低でも1兆円の削減が可能」という発言からみても、どうも財務省は防衛費を増やしたくないようです。

なぜ財務省主計局は国防費削減に拘るのでしょうか。答えは簡単です。それが仕事だからです。財務省主導の与太話で、財政赤字で日本は破産するのではなどとまことしやかなことが言われています。

そうなると、建前上緊縮財政で少しでも予算を削らなければならないことになります。そうなると国防費を削るのは主計官の仕事になってしまうのです。少なくとも、余程の条件、たとえば戦前の満洲事変以降の事態のようなものがない限り、国防費増額などまともには無理でしょう。主計官にとって「過去につけた予算をいかに削るか、無駄な予算を認めないか」が腕の見せ所になるのです。

なぜ他の予算と違って、防衛予算は一方的に削られやすいのでしょうか。理由は二つあります。一つは額が大きいからです。戦車一台約十億円、戦闘機一機約百億円、軍艦一隻数千億円。分割できない一つの単位でこれなのですから、額が小さい予算を細かく見るより効率の良い査定ができます。

こういうと、しかしダムや道路だって規模が大きいではないか、他にも公共事業など色々あるではないか、という疑問をお持ちの方も居るでしょう。そこで二つ目の理由であり、表題の疑問への解答です。

結局抵抗力が弱いからです。額が大きくて抵抗力が弱い、これほど削りやすい項目が他にあるでしょうか。例えば公共事業費や農林関係費を削ろうとすると、国土交通省や農水省の応援団である族議員があの手この手で圧力をかけたりしつこく陳情に来たり、と説得が大変なのです。

福祉予算を削ろうものなら同じく社労関係族議員が押しかけてきたり、マスコミに人でなし呼ばわりされたり、と大義名分を探すだけでも一苦労になります。あと社労関係は法律が特に難解で、という大変さもあります。

それに引き換え、防衛省はどうでしょうか。経済財政諮問会議に呼ばれていましたか。何を主張していましたか。

官僚はしばしば権限争奪に奔走しすぎると、批判されます。しかしこと防衛省自衛隊に関してはそれは当てはまらないでしょう。

これだけ周辺諸国の脅威がある中で、防衛費の増額を実現できない防衛省自衛隊、官僚機構の論理としては無能者の烙印をおされてしかるべきでしょう。

その代わり、先に再反論しておきます。「今の予算で間に合っているのですか。あなた方がまともな防衛費を獲得できないことで日本の国防は危機に瀕していないと言えますか。99条や国民の無理解無関心は同情に値しますが、それを改善するためにどれだけの努力をしましたか」と。

田母神騒動以来、防衛省自衛隊は、ただでさえ設立以来肩身が狭いのに、ますます萎縮しています。しかしそれに関しては私は納得できません。

内局の背広組はもちろん、将校以上の高級軍人は政治のことも認識していなければならないのは古今東西自明の理です。ましてや官僚機構の論理を知ってしかるべきです。戦前の陸海軍は予算獲得が自己目的化して組織がおかしくなりましたが、戦後の自衛隊はまともな予算を取れずに組織がおかしくなっています。

高速道路を走る自衛隊の車輌

ちなみに、上記の予算の折衝の話の中には、含めませんでしたが、自衛隊では高速道路の料金を削減する努力をしているそうです。そもそも、高速道路の料金を自国防衛の重要機関である自衛隊が支払ってるってことですら呆れてしまいます。

米軍では、公用であるということで、高速代金は無料になっています。当然自衛隊の公用もそのように扱うべきです。

自衛隊が高速道路代をゼロとするとどうなるでしょうか。演習や訓練にいく日程のほとんどが下道を走り、演習場にたどりつくっ時間に費やされ、演習や訓練時間が短縮されてしまいます。何をするにしても迅速に対処したくても移動に時間がかかるので早く対処はできません。

演習や訓練にたどりついたころには長時間の下道移動でクッションのない自衛隊車両での移動で足腰がガタガタになっていて、ふらふらになるわけです。元気いっぱい訓練するということもできないのです。

ちなみに自衛隊の訓練場や演習に使う場所など自衛隊の土地も、予算削減のために売り払われているので演習地もどんどん遠くになり不便になっていっています。それも含めて予算を削減し、安くすませるために自衛隊の能力をどんどん削ってしまうのがこの高速道路代削減です。

デフレ脱却について自民党の「日本の未来を考える勉強会」が提言書を7月6日に出しました。この中には、防衛予算を増やすことも明記されています。

防衛予算については、上記で示した通り、まだまだ足りない状況ですが、それでも増やせることについてきちんと言及してくれる存在は嬉しいです。

消費税増税などとんでもないです。消費税増税をすれば、個人消費が冷え込み、景気が低迷し、税収が減り、ますます防衛予算の削減に拍車がかかりかねません。今、必要なのは財政支出の拡大ですし、最も重要な国の安全についてはしっかりお金をかけるべきです。

中国は全力でありえないほどの防衛予算を費やし、領土拡大に本気で準備しているのに国そのものがなくなったら財務省の大好きな節約もできなくなります。

現状は、中国の脅威、北朝鮮の脅威など、誰にでも理解できる脅威が日本に迫っています。今の自衛隊で、本当に日本を守れるのでしょうか。

安易に核武装論を唱える論者にも一言いいたいです。財務省主計局を説得できる理論武装をしましょう。政治家や国民を煽るのも結構ですが、核を何発か持てば国防は終わり、ではないのです。むしろそこから先が大変なのです。

最後に、クラウゼヴィッツ「戦争は、国民と軍隊と政府が三位一体で行うものである」と語っています。誰かのせいにするのではなく、今後どうあるべきかを禁忌抜きで議論すべきなのです。

「九条への批判は許さない」と同様、「自衛隊は可哀想だから批判するな」も禁忌にしてはいけないでしょう。戦後の特殊事情というあらゆる呪縛から自由な議論こそが求められるでしょう。

そこから、日本のあるべき防衛論を組み立て、それに見合った防衛予算を組むべきなのです。

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2018年12月3日月曜日

G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう―【私の論評】トランプが目の敵にしてる日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!

G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう

この変化に気付けるか…それが重要だ

 アルゼンチンで開催されていたG20が終わった。「保護主義と闘う」との言葉が、アメリカの反対で無いものとされた、といったことが中心に報道されているが、米中首脳会談で互いの追加関税が猶予され、一時的な休戦になったことにもっと注目すべきだろう。

 G20を経て、世界情勢はどうなるのか。その中では日本は立ち位置をどこに定めるべきなのか。また、G20首脳会合に合わせて行われる、日米、日中、日ロなどの首脳会談は、どのような成果があったのか。今回はそれを見ていきたい。

立ち位置に関する、シンプルなルール

 まず、G20などの国際的な首脳会議での一つの楽しみ方は、「集合写真での各国首脳の立ち位置」である。

 今回のG20、前列の中心にいるのはアルゼンチンのマクリ大統領だ。向かって左に、マクリ大統領から、安倍首相、トランプ米大統領、マクロン仏大統領などが並び、向かって右に、習近平中国主席、プーチン・ロシア大統領らが並んだ。

 中心が議長国であるアルゼンチンのマクリ大統領なのは当然だが、その隣にいるのが安倍首相だ。

G20での各国首脳の立ち位

    実は、国際会議の立ち位置については各国首脳が競い合うのではなく、次のようなシンプルなルールがある。

①議長国の首脳が中央、
②首相よりも大統領が内側、
③在任期間の長い首脳が内側

というものだ。

    もちろん立ち位置は議長国がその都度決めてよいのだが、大体この原則になっている。このルールにより、各国首脳の位置は事前に決められているのが通例だ(もっとも、アルゼンチンはお国柄なのか、マクロン大統領の到着時に、その出迎えに遅れた国なので、どこまでこうした通例が意識されたのかはわからないが)。

    さて、G20では、次期議長国の首脳が開催国首脳の隣に来るのが慣例なのだが、それを割り引いたとしても、安倍首相の立ち位置は目立っていた。写真にはメルケル独首相が写っていない。これは専用機のトラブルで、G20の開催に間に合わなかったためだ。それによって、安倍首相は写真に写る中で、先進国の首脳として最も在任期間の長い首脳になった。

    議長国の右側を見ても興味深い。議長国の隣に習主席、シェンロン・シンガポール首相、プーチン大統領と並んでいる。シェンロン首相の位置は通例で考えればちょっとありえないのだが、同氏は英語のほか中国語もロシア語もできるらしいので、それで中ロの間に呼ばれたのかもしれない。

    そのほかにも、集合写真を見ると面白いことがわかる。G20 には、サウジアラビアからサルマン皇太子が参加した。同氏はジャーナリストのカショギ氏暗殺を指示した人物だ、と国際社会から断定されている。

    その根拠となった情報はトルコから提供された。トルコは、オスマン帝国時代からサウジアラビアとは長年の因縁の関係があるので、カショギ氏の事件はトルコとサウジアラビアの間で非常に敏感なテーマとなっている。

   それを頭に入れて写真を見ると、トルコのエルドアン大統領は向かって前列の左端、サルマン皇太子は後列の右端に位置している。これは両国の関係から、無難にことが進むように、事前にそう決めたのだろう。そういったことも写真からは読み取れるので、眺めているだけでも結構面白いのだ。

G20の認識も随分変わった…?

   さて、今回のG20の集合写真における安倍首相の立ち位置は、今の日本の世界における位置を表している、と言っていい。

   安倍首相は今回のG20で、トランプ大統領、習主席、プーチン大統領と会談した。またトランプ大統領、インドのモディ首相と日米印三者による初の首脳会談も行った。中ロも、これに対抗するために、インドを取り込む中ロ印首脳会談を行った。まさに、G20の場で国際政治が動いているのだ。

    日中首脳会談を行いながら、中国の一帯一路に懸念を表する米印と日米印首脳会談を同時に行う、という動きは、これまでの日本の指導者にみられなかったものだ。こういう国際舞台では、誰と会談できたか、がいちばん重要だ。安倍首相は、米中ロという主要3ヵ国と会談したのだから、世界のトップリーダーとして存在感を見せたと言っていいだろう。

     その一方で、韓国の文在寅大統領との首脳会談は行なわれなかった。日韓関係は、日韓合意に基づいて設立した「和解・癒やし財団」の解散や元徴用工訴訟の韓国最高裁判決など、韓国が一方的に国家間の約束を破る暴挙に出ているので、最悪の状況にある。

    その韓国は、国際的に孤立を深めつつある。米韓関係において、トランプ政権は非核化協議をしないまま北朝鮮との協力関係の構築に前のめりになる文政権を信頼していない。文大統領はトランプ大統領との本格的な会談を望んだが、トランプ大統領は文氏との会談は簡単に済ませていた。どうやら、安倍首相との差をつけたようだ。

    さて、冒頭述べたように、アメリカの反対もあって今回のG20では共同宣言がまとめられるかどうか、危ないところであったが、なんとか共同宣言はまとめられた。自由貿易に関する記述は、前回のハンブルグG20と比較しても少ない。しかし、経済政策に関する部分は、概ね前回と同じである。その中で、財政政策に関する記述は「よくなっている」と筆者にはみえる。


    これをみると、従来の財政再建重視という路線から、財政政策の役割を重視するように、と少し考え方が変化しているようだ。「債務残高対GDP比」を絶対視しその水準に着目するよりも、「債務残高が持続可能かどうか」を問題としているのはいい。というのは、10月5日の本コラム(<IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する> https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978)で指摘したように、債務残高対GDP比より、資産も考慮した純債務残高対GDP比のほうが、財政の実情を表すのに適切だからだ。

    つまり、債務残高が持続可能かどうか、というのは、債務残高対GDP比が大きくても、日本のように純債務残高対GDP比が低ければ問題ない、ともいえるのだ。

やっぱり消費増税、なんですね

    G20内でも少しずつ意識の変化が現れているが、こうした観点から日本国内の状況をみると、相変わらず、財務省が発信源と思われる酷い情報が流布されている。

たとえば12月1日の夜に放送された、日本テレビの「世界一受けたい授業」(http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/181201/03.html)で、<このまま日本の借金が増え続けると、実は、「未達」という問題が起きます。一体この、「未達」とは、どういう問題のことでしょうか?> という問いが流れていた。

     解説をしていたのは、元財務官僚で、ニュースゼロのキャスターだった村尾信尚氏だ。筆者は同氏を個人的に知っているが、熱血漢でナイスガイであるものの、ある意味で財務省の広告塔として、財務省の意見を忠実に述べる人でもある。日本テレビは、最近は財務省事務次官が天下る組織でもある。財務省の意向が反映しやすのはやむを得ないだろう。

財務省の広告塔として、財務省の意見を忠実に述べる人村尾信尚氏
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

     この放送内容については大いに違和感があったと言わざるを得ないだろう。財政危機についての村尾氏の説明は財務省と寸分違わぬもので、ストックでは、バランスシートの右側の債務だけに着目し、その大きさを強調していた。またフローでは、政府の一部にすぎない「一般会計」の収支についてだけを説明していた。まさに財務省的な手口である。

    日本が財政危機でないことは、本コラムで何回も述べている。つまり、民間企業でいうところのグループ決算に相当する「統合政府のバランスシート」では、実質債務がゼロになっている。ストックで実質債務ゼロというのは、グループ決算で収支が均衡していることをほぼ意味している。

     財務省のように、一般会計だけのフローは赤字にして、グループ会社で利益を「資産化」して隠すことは、会計の専門家であれば容易にできる。しかしこれは見破るのも容易だ。いわゆる「埋蔵金」がそれにあたるのだが、筆者(をはじめ専門家ら)が「埋蔵金」を探し出せるということをまだ財務省はわからないみたいだ。

    また、番組で扱われていた「未達」とは、国債入札において、目標とする国債発行収入が得られない場合をいうが、そもそもいまの日本は国債が「品不足」となっている状態で、もっと政府は国債を発行すべきとき、なのだ(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51394)。

     「未達」がたいした問題でないことを理解するために、筆者と金融機関勤務経験のある民間投資家のぐっちーさんとの対談(2017年7月20日付け「消費増税なんて必要ナシ!?日本経済の本当の話をしよう」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52109)を読んでほしい。日本が財政危機でないことを簡潔に説明しており、一般読者にも有益だろう。

     なお、「未達」の問題を世に広めた作家の幸田真音氏は、財務省のお気に入りらしく、政府の各種審議会委員を歴任して、財務省の天下り会社であるJTの社会取締役をやっている(https://www.jti.co.jp/corporate/outline/officer/index.html)。

 いずれにしても、こういう話題がメディアで取り上げられるのは、財務省が必死になって、財政危機キャンペーンを続けている、ということの表れだろう。背景には、是非とも消費増税を進めたいという彼らの意地と焦りがあるのだ。

 さて、先進国と大国が参加するG20は、いまや国際政治の大舞台になっている。来年6月28日及び29日には大阪で開催されるので、これは日本の存在感を世界に示す絶好のチャンスである。その一方で、国内では消費増税に向けた動きが進行中である。来年、G20の後に行われる参院選挙が、国際政治にとっても国内政治にとっても、天王山であるのは間違いない。

【私の論評】トランプが目の敵にしてる日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事にもあり、国際的評価が高まる安倍総理ですが、高橋洋一氏が結論ではっきり言わないことがあります。

それは、安倍総理が消費税増税を再延期する可能性です。私自身は、おそらく安倍総理は再延期すると思っています。増税すれば、8%増税のときと同じように、個人消費が再び落ち込み経済が低迷することになるのは明らかです。

そうなると、今後安倍内閣はレイムダックになり、安倍総理の残りの任期中には、憲法改正どころではなくなる可能性がかなり高いです。安倍総理は任期中に憲法改正を実施したいと考えています。いや考えるどころか、それを至上命題としています。

私は、そのような安倍総理が安易に増税するとは、とうてい思えないのです。

憲法改正を別にしても、私は安倍総理は増税しないと思います。

それには、主に3つの理由かあります。まずは、2019年には、4月に統一地方選挙、7月に参議院議員選挙という、2つの大きな選挙があります。これは、消費税を上げることを確約した状態で臨めばかなり不利になるのはわかりきっています。

それと、安倍政権が掲げる軽減税理は、頭の悪い財務省が考えたせいでしょうか、とても現実的ではなく、これは各方面からかな不興を買っています。これを本当に実行すれば、嫌がおうでも、安倍政権の評判は落ちることになります。

しかし、これらは、安倍総理が消費税増税を延期する理由の最大のものではありません。最大の理由は、「消費税引き上げには、アメリカのドナルド・トランプ大統領が大反対する」というものです。

トランプ大統領は、日本の消費税は輸出産業への補助金だと見なしています。アメリカが日本に対して貿易赤字を抱えているのは、日本が輸出産業に消費税という名の補助金を出し、消費税のないアメリカで有利にクルマなどを売るからであって、日本はダンピングしているとさえ言っています。

日本では、輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」があります。たとえば、自動車を1台生産する場合、部品をつくる会社は部品を売ったときの消費税を国に納め、その部品を買って組み立てて製品にした会社は、それを親会社に売るときに消費税を納めます。そうやって、いくつもの会社が払ってきた消費税が、最終的に製品を輸出する企業に還付される仕組みになっています。


本来なら、部品をつくる会社、それを組み立てる会社と、消費税を払うそれぞれの業者にも出されてしかるべきですが、最終的に輸出されるときには輸出業者は免税で、そこにまとめて還付されることになっています。

この輸出業者に還付されるお金は、全国商工新聞によると約6兆円。つまり、消費税徴収額約19兆円のなかで、主に輸出業者に戻される還付金が約6兆円もあるということです。みんなから集めた消費税の約3割は、輸出企業に戻されているのです。

これに対してトランプ大統領は、アメリカに輸出する日本の企業は政府から多額の補助金をもらっていると怒っていて、だからダンピングでクルマなどが売れるのだと考えているようです。消費税を「輸出を促すための不当な補助金」だと非難しているわけです。

そもそも、米国には消費税がありません。州単位では「小売売上税」という消費税に似たような税金を徴収していますが、国としてはないのです。1960年代から何度も消費税導入の議論はされていますが、ことごとく却下されています。

なぜ米国の議会が消費税導入を却下するのかといえば、彼らは消費税というのは不公平な税制だと思っているからです。アメリカには、儲かった企業がそのぶんの税金を払うのが正当で、設備投資にお金がかかるので儲けが出にくい中小企業やベンチャー企業からは税金を取らないという考え方があります。儲かっていない中小企業の経営を底支えし、ベンチャー企業を育てて、将来的に税金を払ってくれる金の卵にしていく。それが正しい企業育成だというのです。

しかし、消費税は、儲かっていても儲かっていなくても誰もが支払わなくてはいけない性質の税金です。さらにいえば、儲かっているところほど相対的に安くなる逆進性を持っているので、アメリカでは不公平な税制だというのが議会や経済学者のコンセンサスになっています。

そのため、これまで米国では儲かっている企業が支払う法人税率が38.91%とバカ高かったのです。ただし、この高かった税金をトランプ大統領は選挙公約通りに下げ、現在は21%程度になっています。

一方で、トランプ大統領は、新たに「国境税調整」を税制改革要素のひとつとして盛り込みました。これは、輸入品には20%の関税がかかり、アメリカ企業が輸出して得た利益は無税になるというもの。貿易面だけで見れば、日本の消費税に当たる要素を持っており、これで日欧などの消費税や付加価値税に対抗しようと考えたのでしょう。

しかし、議会では、公平な税制の機能が不十分で国内消費に低迷をもたらすということで見送られてしまいました。そんななか、日本がさらに消費税を引き上げるということになれば、許せないと思うのは当然でしょう。

9月26日(日本時間27日未明)、ニューヨークでトランプ大統領と安倍首相が会談し、2国間の貿易交渉を始めるという共同声明を発表しました。

9月の日米首脳会談

これについて、安倍首相は「アメリカから要求された自由貿易協定(FTA)ではない」と言い切り、マスコミでは「物品貿易協定(TAG)の締結に向けた交渉」という文字が躍りました。しかし、出された共同声明を見ると、これはFTA以外の何物でもありません。

しかし、政府はあくまで「TAGだ」と言い張り、外務省のホームページでも「日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定 (TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する」という日本語訳を出しています。

ところが、アメリカ大使館の日本語訳を見ると、「米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する」とあります。さらに、物とサービスの交渉が成立したら「投資に関する他の項目についても交渉を開始する」というのですから、これがFTAでなくてなんなのでしょう。

加えて、アメリカ側は、マイク・ペンス副大統領が「日本と歴史的な自由貿易交渉(Free trade deal)を始める」と明言しています。折しも、この共同声明が出た後に、アメリカ政府は、新しい北米自由貿易協定(NAFTA)で通貨安誘導への報復措置を認める「為替条項」を盛り込んだと公表しました。これは、貿易相手国が為替介入で不当に自国通貨を安くした場合、米国が報復しても文句は言わせないという条項です。

ペンス副大統領は、FTAをの交渉を始めると名言

当然ながら、この「為替条項」は日本とのFTA交渉にも入るはずです。そうなれば、トランプ大統領から「為替操作国」の疑惑をかけられている日本は、「為替条項」で徹底的に痛めつけられる可能性もあります。

トランプ大統領は1日、メキシコ、カナダの首脳と北米自由貿易協定(NAFTA)に替わる新協定に署名しました。大統領はこの協定を「手本」だと自賛。「国有企業への巨額の補助金と為替操作に、3カ国全ての労働者は痛めつけられている。こうした不公正な貿易慣行と闘うための基準を劇的に上げることができた」と述べています。

仮に安倍総理が消費税をあげたとして、トランプ大統領がこれにより輸出企業への補助金が増えたとみなした場合、日本は何らかの形で報復される可能性もあります。

そうなった場合、消費税増税で、個人消費が低迷し、日本国経済はふるわず、国民からの支持が低迷するでしょう。そこに米国による報復措置が日本の輸出企業に課せられた場合、まさに安倍政権は泣き面に蜂で、レイムダック化します。

安倍総理が、トランプ大統領が目の敵にしている日本の消費税の引き上げを断行できるのかどうかは、はなはだ疑問です。

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2018年12月2日日曜日

米、新たな対中関税を90日延期 首脳会談 不公正取引の改善へ協議継続―【私の論評】90日後にトランプは一気に本丸に攻め込み、中国に内部改革と長年の悪行の放棄を迫る(゚д゚)!

米、新たな対中関税を90日延期 首脳会談 不公正取引の改善へ協議継続

中国の習近平主席(左端)との会談に臨むトランプ大統領(右端)=1日

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が1日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで会談した。焦点の貿易分野では、米国が来年1月に予定した制裁関税の引き上げを90日延期。中国による知的財産権侵害の改善策に関する協議の継続で合意した。中国は農産物を中心に米国からの輸入拡大も進める。米国は90日以内に中国の改善策に合意できなければ、関税引き上げを実施するとしている。

 トランプ氏は会談後、ホワイトハウスが発表した声明の中で、「米中双方に無限の可能性をもたらす生産的な会談になった」と評価した。会談は20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて実施された。

 声明によると、米中は最大90日間、中国の知財侵害や外国企業に対する技術移転の強要、サイバー攻撃などの改善策を集中的に協議。貿易不均衡の是正に向けて、農産物やエネルギーなど、中国が購入を増やす具体的品目についても詰める。

 米国は知財侵害などの不公正貿易を問題視。中国からの輸入品に高関税を課す制裁を段階的に発動し、これまで中国からの輸入額のほぼ半分に当たる計2500億ドル(約28兆円)分に関税を適用。このうち2千億ドル分の税率を来年1月から現行の10%から25%に引き上げる予定だった。

 米政府は、中国の不公正取引が改善されていないとして、さらに2670億ドル分に対する新たな制裁関税を実施する準備があると表明し、圧力をかけていた。

 外交・安全保障分野では、北朝鮮の非核化問題に関し「大きな進展があった」との認識で米中が一致したとした。また、トランプ氏と習氏が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と朝鮮半島の非核化実現に向けて一緒に取り組んでいくことで合意したとしている。

 トランプ氏はさらに、金氏に対する「友情と敬意」を表明したという。

 一方、トランプ政権が掲げる「インド太平洋戦略」の推進に向けた最大懸案の一つとなっている、中国による南シナ海の軍事拠点化に関しては、声明では言及はなかった。

【私の論評】90日後にトランプは一気に本丸に攻め込み、中国に内部改革と長年の悪行の放棄を迫る(゚д゚)!

2018年G20にあわせて設定されたトランプ大統領と習近平国家主席との米中首脳会談が終わりました。結論としては、上の記事にもある通り、米国側が追加関税導入を90日間猶予するというものです。

中国側はこの期間に、知財保護、技術移転の強要問題、サイバー攻撃などの分野で改善策を示す必要があるとのことです。しかし、これはほとんど無理というものでしょう。

今回の米中首脳会談では、米国側から
トランプ大統領、ナバロ大統領補佐官(通商担当)、ライトハイザー通商代表、ムニューシン財務長官、カドロー国家経済会議議長、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ポンペオ国務長官、ケリー大統領首席補佐官、クシュナー大統領上級顧問
中国側から
習近平・国家主席、劉鶴・副首相、楊潔篪・共産党政治局員(外交担当)、王毅・国務委員兼外相、何立峰・国家発展改革委員会主任、丁薛祥・共産党中央弁公庁主任、鐘山・商務相、崔天凱・駐米大使、王受文・商務次官
が出席しました。

今回の会議で注目すべきは、ライトハイザーとナヴァロという超強硬派が出席し、そのうえで協議が一応成立したということです。

対中タカ派のライトハイザーUSTR代表(左)とナバロ国家通商会議委員長

この二人が出席することから、市場ではそもそも協議が成立しない可能性もあるのではないかと懸念されていました。

中国側は90日以内に、知的財産権保護、技術移転の強要、サイバー攻撃、非関税障壁、サービスと農業の市場開放の分野でさらなる改善策を示す必要があります。

90日間で合意できない場合、米国側は中国からの輸入品2000億円分にの関税を25%に引き上げるとしています。

中国は米国から農産物(大豆など)やエネルギー(原油、LNG)、工業製品(航空機など)を輸入することで対米貿易黒字を減らす必要があります。

今回の米中首脳会談の最重要ポイントは、「中国製造2025」への言及がなかったことです。中国製造2025は、中国が国を挙げて産業を保護、育成する政策で、その根幹にあるのが「自前で用意できるものは何でも自前で用意しよう」という思想です。

『中国製造2025』の5大プロジェクト


中国は半導体分野で大幅な貿易赤字を抱えており、これはエネルギー分野における貿易赤字よりも大きいのが実情です。

中国は大量の最新鋭半導体露光装置を導入することで、この輸入に頼り切った状況を打破しようとしています。

中国の半導体メーカー合肥長鑫(睿力集成電路/イノトロン)が、オランダのALMSから7nmプロセス用EUV(極端紫外線)露光装置の調達めざして交渉中とのことです。

ASMLは欧州、オランダの半導体製造装置メーカーです。ASMLが強みとするのは半導体製造装置でも上流部にあたる部分、とくに半導体露光装置(ステッパー、フォトリソグラフィ装置)の業界において世界の最先端を走る企業です。

このことが、米国側の利害と非常に大きな衝突をもたらしています。


今回、この中国製造2025への言及がなかったのは、米国は「製造2025」の根底にある中国が「自前で用意できるものは何でも自前で用意しよう」という考え自体には反対ではないということを示しているのだと思います。

確かに、このような考え方自体は、中国であろうが、他の国であろうが、それは当該国の任意で実施すべきことであり、それに対して反対することは、内政干渉です。

ただし、自前で用意するときに、窃盗とか強制技術移転、その他の不公正な方法で実行することに対しては、米国は断じてこれを許さないとしているのです。

米国側は論点を明確にするために、敢えて「中国製造2025」という言葉を使わなかったのでしょう。

中国側としても中国製造2025の破棄だけは、絶対に応じるわけにいかない部分でした。もし米国側が破棄を要求すれば、首脳会談は決裂していたことでしょう。

それにしても、中国は米国からの工業製品の輸入拡大や農産品の即時輸入開始を約束してやっと、米国から追加関税引き上げの90日猶予を得ました。しかし今から約3ヶ月間、米国の要求に応じて構造改革を断行しなければならないのは中国です。これはほとんど不可能だと思います。

習近平の首の皮の一枚はこれで、一応繋がったようですが、彼に与えられた猶予時間はわずか90日、90日以内に今までの悪行 を改めて米国の要求を受け入れなければ今度こそは「斬首」ということでしょうか。

これは、全く対等の交渉ではありません。まるで戦勝国と敗戦国との暫定的休戦協定のようです。米国の絶対的優位です。

今度の米中合意は貿易戦争の収束や緩和などではなく、前哨戦に次ぐ本戦の開始を意味するものでしょう。中国に追加関税引き上げの90日猶予を与えたことで、トランプ大統領は、この90日間で中国がどのように出るのか見極める腹です。

90日間は短いですが、この期間にすべてはできないものの、どのくらいの期間で何をどのように変えるかとなどは決定することができるはずです。90日後に中国は米国にこれらを、すぐにできることとともに回答することになるでしょう。

トランプ大統領としては、この反応をみてから、一気に本丸に攻め込む勢いで、中国に内部改革と長年の悪行の放棄を迫っていくことになるとみられます。トランプ大統領の戦いはこれからです。

【私の論評】

2018年12月1日土曜日

日米印で中国牽制! 初の3カ国首脳会談で「自由で開かれた太平洋」打ち出す―【私の論評】日米印壕英仏はインド太平洋で中国を迎え撃つ(゚д゚)!

日米印で中国牽制! 初の3カ国首脳会談で「自由で開かれた太平洋」打ち出す

首脳会談に臨む(左から)安倍晋三首相、トランプ米大統領、インドのモディ首相

 日本と米国、インドが「対中包囲網」強化をアピールした。11月30日にアルゼンチンで開幕したG20(20カ国・地域)に合わせて、安倍晋三首相と、ドナルド・トランプ米大統領、インドのナレンドラ・モディ首相は3者会談に臨み、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を確認したのだ。日米印3カ国の首脳会談は史上初で、海洋での覇権拡大を狙う中国への対抗姿勢を打ち出した。

 「日本と米国、インドは(自由、民主主義、人権、法の支配といった)普遍的価値と戦略的利益を共有している。われわれ3人が協力することで、この地域(インド太平洋)と世界にさらなる繁栄と安定をもたらすことができるだろう」

 安倍首相は会談冒頭、こう述べた。

 モディ氏は、日米印3カ国(Japan、America、India)の頭文字を合わせた「JAI」が、インドで「成功」を意味する言葉だと紹介し、緊密連携の重要性を強調した。

 日本と米国、インドの3カ国は最近、協力関係を深めている。

 日本の航空自衛隊は今月、インドのアグラ空軍基地で、同国空軍と初めてとなる共同訓練を予定している。派遣される空自隊員は、同時期に行われる米印両空軍の共同訓練「コープ・インディア」にもオブザーバー初参加する。

3カ国が協力を深める背景には、習近平国家主席率いる共産党一党独裁の中国の存在がある。中国は東シナ海の沖縄・尖閣諸島の周辺海域に公船を連日侵入させ、南シナ海では軍事拠点化を進めている。さらに、スリランカやパキスタンなどインド洋各国で港湾建設を支援し、海軍の寄港地を確保している。ウイグルやチベットでは人権弾圧を続けている。

 自由・民主主義陣営の日米印3カ国としては、放置できないのだ。

 史上初の日米印首脳会談が行われる前には、トランプ政権が行動で、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を示した。

 米海軍のイージス巡洋艦「チャンセラーズビル」が11月26日、中国が軍事拠点化を進める南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島の付近を通過する「航行の自由」作戦を実施したのだ。さらに、米海軍は28日にも、イージス駆逐艦と補給艦の2隻に台湾海峡を通過させた。

 中国は「貿易戦争」中の米国だけでなく、日本とインドからも追い詰められようとしている。

【私の論評】日米印壕英仏はインド太平洋で中国を迎え撃つ(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事にもあるように、「自由で開かれたインド太平洋」など、最近「インド太平洋」という言葉が、脚光を浴びています。本日は、なぜそのように脚光を浴びるようになったのか、その背景を掲載します。

5月30日、ハワイの真珠湾で行われた米太平洋軍の司令官交代式  胸に手を当てるマティス国防長官

ジェームズ・マティス米国防長官は2018年5月30日、ハワイの真珠湾で行われた米太平洋軍の司令官交代式に出席し、太平洋軍(PACOM)の名称を同日付で「インド太平洋軍」(INDOPACOM)に変更したと発表しました。

米太平洋軍は、1947年に創設され、米軍が有する9つの統合軍(うち6つの地域別統合軍を含む)の中でも最も古い地域別統合軍で、ハワイ州・オアフ島の海兵隊キャンプ・H・M・スミスに司令部を置いています。

太平洋軍は、当初、アフリカ最南端の喜望峰から米本土の西沿岸までを担任区域としていました。

その後、1983年に中央軍(CENTCOM)、1995年にアラビア海を中心に中東を担当する第5艦隊(5F)、そして2008年にアフリカ軍(AFRICOM)が、それぞれ創設・編成されたことに伴い、関係地域別統合軍との間で担任範囲が調整されました。

現在は、インドとパキスタンの国境から真南に引いた線以東から米本土の西沿岸までを担任区域とし、ほぼインド洋から太平洋全域の北東アジア(5+1地域)、東南アジア(11)、オセアニア(14)、南アジア(6)の36カ国1地域をカバーしています。

このように、太平洋軍は、創設当初から、インド洋を含めて管轄しており、かねてインド太平洋軍への改称が取り沙汰されていました。

マティス長官が演説で、「インド太平洋軍は米西岸からインドまでの広大な地域と密接なかかわりを持つ主要な戦闘部隊である」と述べたように、この改称はまず、太平洋軍の担任地域をより正確に反映する狙いがありました。

さらに、マティス長官は、「インド洋と太平洋の連結性が増していることに鑑み、今日、米太平洋軍をインド太平洋軍に改名する」とも述べました。

米国は、中国が東シナ海、特に尖閣諸島周辺での不法行動を活発化させ、南シナ海を軍事拠点化し、インド洋に向けてシルクロード経済圏構想「一帯一路」を強力に進めているのに対抗するため、日本やインド、オーストラリアなどとともに「自由で開かれたインド太平洋構想」を推進する考えを打ち出しています。

つまり、インド太平洋地域では、今後、中国の覇権的拡大の動きが強まって対立の危険性が増大するとの認識のもと、それに対し地域の連結性をもって対処する必要性が高まったことを受けた措置です。

もともと、アジア太平洋諸国がインド洋から太平洋に至る地域を相互に結びつけて概念化する「インド太平洋」という用語は、2007年にインド国家海洋財団(NMF)会長で海洋戦略家のGurpreet S. Khurana氏が提示したのが初めてとされます。

インド国家海洋財団(NMF)会長で海洋戦略家のGurpreet S. Khurana氏

オーストラリアも、2016年の「国防白書」で「Indo-Pacific region」という用語を使い、自国がインド洋と南太平洋の間に位置し両海洋に跨る「インド太平洋」国家であるとの認識を示し、直近のシーレーンと両海洋へのアクセスが国益に直結することを明示しています。

また、中国の海洋覇権の野望を念頭に、安倍晋三首相が発表した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、そのようなインド太平洋を維持することにより、地域全体の安定と繁栄を促進することを目標とした戦略指針です。

日本、米国、インドおよびオーストラリアを戦略構築の4本柱(Quadrilateral)として、中国の東シナ海・南シナ海~インド太平洋への侵出抑止に主眼を置いています。

マティス長官は「太平洋とインド洋にわたる同盟国や友好国との関係は、同地域の安定を維持する上で極めて重要だ」と強調しました。

その言葉の通り、米国はかねて、上述の考えを持つ日本やインド、オーストラリアなどと防衛協力などの分野で連携を強化してきました。

このたびの改称は、そうした方針に沿ったものと見ることができ、これからのインド太平洋地域における安全保障取組みのあり方を裏付ける出来事なのです。

伝統的な大陸志向を修正し「海洋国家」を目指すインド

NATO軍最高司令官を務めた経験を持つ、米海軍提督ジェイムズ・スタヴリディスの書籍『海の地政学/Sea Power』では、インド洋を「未来の海洋」と表現しています。これには歴史的意味が込められています。

米海軍提督ジェイムズ・スタヴリディス  TEDより

インド洋は、紀元前3000年以来の長い交易や交流の歴史があり、その間に略奪や襲撃があったのも事実ですが、概して平和な「交易の海」でした。

欧州とインドとの交易が本格化したのは、いわゆる15~16世紀にかけた大航海時代に、ポルトガルの国王マヌエル1世(幸運王) の命でバスコ・ダ・ガマが喜望峰を回り、アラビア人の水先案内人に導かれて 1498年5月インド西岸のカリカットに達し、インド航路が開かれて以来です。

インドが政治的実体としての国の形を成したのは、16世紀の「ムガル帝国」以降とされていますが、安全保障上の脅威は、中央アジアのステップ地帯や現在のイランとアフガニスタンの高原地帯からもたらされました。
 
その脅威が、伝統的にインドを大陸に釘づけにしてきたのです。

今日に至っても、カシミール問題を巡るパキスタンおよび中国との領土紛争や、マクマホンライン(インド東北の辺境地区)を巡る中国との国境紛争が続いています。

そのように、インドは、近年まで外洋に囲まれ陸地に縛られた国でした。しかし、中国が経済力を高め、大規模な艦隊を建設し、インド洋へ侵出するに及んで、インド洋周辺の事情は様変わりしたのです。

中国は、単にインド洋沿岸の友好国に最新式の港湾を作って自国の海上交通路を保護しようとしていると主張するかもしれないですが、インドは「真珠の首飾り」によって包囲されたように感じています。



中印国境紛争などによる脅迫観念と台頭する中国への対抗意識などがその感覚を一層鋭くさせています。

そればかりか、中印は、共に核兵器保有国であり、重複するミサイル射程圏という新しい地政戦略的環境、強いて言えば、「恐怖の均衡」の中に投げ込まれているのです。

インドは、2004(および2009)年に「海洋ドクトリン」(2015年改訂)、2007年に「海洋軍事戦略」、そして2015年に「海洋安全保障戦略」を立て続けに発表しました。

その中で、中国(海軍)は「インド洋地域に戦略的足掛かりを獲得」し、インド洋への進出と域内におけるプレゼンスを拡大しているとの脅威認識を示しています。

そしてインドは、伝統的な大陸志向を修正しつつ、自らを「歴史的に海洋国家」と規定し、インドの安全と繁栄のために「インド洋が死活的に重要である」との立場を明確に打ち出しました。

インドは、海洋安全保障への取り組みの出遅れを取り戻そうと懸命に努力しています。

また、2014年に発足したモディ政権は、南アジア諸国との近隣諸国優先政策を維持しつつ、 「アクト・イースト」政策に基づき関係強化の焦点をアジア太平洋地域へと拡大し、ベトナムや日米との協力関係を強化しています。

インド洋は、西は湾岸諸国からアフリカ東岸、中央はインド亜大陸、東は島嶼部東南アジアからオーストラリアを含む地域で世界の海の5分の1を占めます。

中東には石油の主要供給元があり、ペルシャ湾~アラビア海~インド洋を経て世界へ供給されます。

また、インド洋は世界貿易の東西航路(大きな通商路)となっており、世界のコンテナ輸送の半分、世界の石油関連製品の70%が運ばれています。

さらに海上交通路(シーレーン)を制するマラッカ海峡、ホルムズ海峡、バブエル・マンデブ(マンダブ)海峡、喜望峰などのチョークポイントがあり、まさに世界を動かし、左右する「未来の海洋」と呼ぶに相応しいのです。

今後、ユーラシアやインド太平洋地域の経済の最も強力な牽引役となるのは、台頭著しい中国とインドでしょう。

なおそのうえ、中国とインドの経済圏や勢力圏は、次第に重なり始めています。さらに、富の創造と戦争技術の向上には密接な関係があり、また、軍事ハードウェアとソフトウェアの技術進歩によって地政学的距離が接近します。

そのため、両国の「恐怖」意識はいやが上にも高まり、今後、特にインド洋を舞台にした摩擦や対立の危険性は増大することはあっても、減少することはないと見ておかなければならないです。

「4+2」構想を支える「基地ネットワーク・システム」の構築を急げ!

いま、東シナ海、南シナ海そしてインド洋の帰趨が、インド太平洋地域における安全保障確保の上で最大の課題となっています。

米国は、2010年の「4年ごとの国防計画の見直し」(QDR)において、インドに「安全保障提供者」(net provider of security)としての役割を期待し、インドもこれを引き受けました。

安全保障提供者には、国際的規範と法を遵守し、海軍力に裏打ちされた強い協力関係を維持して「航行の自由」の確保と海洋における国際法レジームの強化が求められています。

その具体的な行動は、プレゼンスと即応、関与、能力構築支援、海洋状況把握(MDA)、海上安全保障行動、排他的経済水域(EEZ)哨戒、共同パトロール、 海賊対処、人道支援・災害救助活動(HA/DR)、 非戦闘員退避活動(NEO)、海上阻止、平和作戦、捜索・救難などです。

インド洋で、インドがその役割を果たすのであれば、東シナ海は日本、南シナ海はオーストラリアと米国が同じ役割を果たさなければならないです。

そして、世界の海を守る意思と能力のある米国のプレゼンスをもってインド太平洋全域をカバーするのです。

南シナ海にオーストラリアとともに米国を加えたのは、「力の空白」地帯である南シナ海に空母機動打撃群を中心とする大きな戦力を展開できるのは米国だけであるからです。

この際、米国は、南シナ海で軍事同盟を結ぶ台湾とフィリピンとの関係を再調整し、また相互基地アクセス協定を締結して、台湾(高雄)、フィリピン(スービック湾)、ベトナム(カムラン湾)そしてシンガポール(チャンギ海軍基地)に基地を確保し、各基地のネットワークを構築すれば、自由に活動できます。

同じように、基地ネットワーク・システムをインド太平洋地域の同盟国・友好国間にも拡大する必要があります。

英南部のポーツマスで、入港した空母「クイーン・エリザベス」を見物に訪れた人々

それもって日米印豪を4本柱とした安全保障体制にインド太平洋地域に重大な利害関係を有する英仏を加えた「4+2」構想の活動を支えれば、この地域における安全保障確保のための課題を解決する有力な応えとなり得るのです。

まさに、日米印壕英仏はインド太平洋で中国を迎え撃つ体制を整えつつあるのです。

一国の外交は、広く国民世論の理解に支えられなければならないです。日本にとって望まし  いインド太平洋像を現実のものとし、将来のアジア戦略の柱としていくためには、日本国 民の間に自らの日本国が「インド太平洋地域」に属しているとの理解と感覚を醸成してい くことも不可欠です。

そのためには、首相をはじめとする政治指導者が、この新しい地 域概念の日本にとっての必要性や妥当性について、国民に語りかけていく努力を強化しな ければならないです。

 政府は、これからの日本にとって、なぜこの新しい地域秩序像が必要とされ、インド洋 方面諸国との関係強化が求められているのかについて、首相による施政方針演説や所信表明演説の機会、さらにはメディアへの積極的な啓蒙活動も利用しつつ、国民に丁寧に説明 し、説得していくべきです。

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