2022年8月8日月曜日

英国情報機関が見るウクライナ戦争の行方―【私の論評】ロシア軍が失速寸前とみられる中、戦争は新たな局面に入りつつある(゚д゚)!

英国情報機関が見るウクライナ戦争の行方

岡崎研究所

 7月22日付のワシントン・ポスト紙(WP)は、同紙インテリジェンス・国家安全保障担当リポーターであるシェーン・ハリスなどの「英情報トップが、ロシアはウクライナでまもなく〝勢いを失う〟と言う。MI6の長、リチャード・モアはまたロシアの侵攻を〝壮大な失敗〟と描写した」という記事を掲載した。

MI6の建物とウクライナ国旗

 英国の情報機関MI6のモア長官は、ウクライナでのロシアの軍事作戦は物資と兵員の不足で、ここ数週間で勢いを失うことになりそうであると、アスペン安全保障会議において述べた。彼は控えめに見積もってもロシア軍は1万5000人くらいの兵士を失っており、これはアフガニスタンでの10年の戦争でロシア軍が被った損害とほぼ同数であると指摘した。

 このアスペン安全保障会議でのモアMI6長官の発言は注目に値する。英国の情報機関は情報の収集および分析において一般的に優れており、かつ外部に対する発言には慎重であるからである。もちろん情報源については明らかにしていないが、ロシア軍内の情報も勘案し、総合判断したものであろう。

 プーチンの病気については、パーキンソン病である、血液関係のガンであるなどのうわさがあるが、CIAもMI6も否定しているので、そういう噂は根拠がないと考えてよい。

 ウクライナに対するロシアの攻勢が「勢い」を失う可能性はモア長官の指摘通りあろう。特に兵員の補充が困難になっているのではないか。ウクライナに投入された兵力は通常のロシア軍の兵力の相当な部分であった。例えば、わが国の北方領土、択捉島よりもかなりの数の将校や兵士が行っている。

ロシアの兵力、世論の実態は?

 プーチンは当初から徴兵兵士はウクライナに送っていないと主張し、その真実性については疑問も提起されているが、契約軍人をふくめ職業軍人が主として派遣されているということであろう。戦争を宣言し、総動員令を発出すればこの問題は解決されるが、これまでの経緯に鑑みそうはできず、せいぜい予備役招集にとどまっている。

 武器の枯渇の問題も、イランからの無人機入手に見られるようにある。ウクライナ側がロシアの領土内攻撃を自制しているので、ロシアが戦闘で敗北することはないが、ロシア国内での戦争反対論は経済制裁に起因する困難もあり、徐々に強まっていくだろう。

 例えば、ロシアの大富豪、エリツィンの娘婿のデリパスカが経済的困難が大きすぎると戦争に反対している。世論調査会社レバダセンターの調査結果では、プーチン支持が80%くらいで非常に高いが、この結果に重きはおかない。何故なら、ロシアのような政治体制では世論調査に本音で答えることは、ロシア人はあまりしないからである。

 大祖国戦争で2600万人の犠牲を出しつつ、ナチスドイツに勝利したロシアの粘り強さは、防衛戦争ではなく、かつ兄弟殺しの面もあるウクライナ戦争においては発揮されないだろう。モア長官が言及しているアフガン戦争が先例としての価値が大きいと思われる。

【私の論評】ロシア軍が失速寸前とみられる中、戦争は新たな局面に入りつつある(゚д゚)!

米国のバーンズ中央情報局(CIA)長官は先月20日、ロシアによるウクライナ侵攻でのロシア側の死者数がこれまでで1万5000人に達したとの推計を明らかにしました。負傷者数は4万5000人に上る可能性があるといいます。ロイター通信が報じました。

バーンズ長官は米西部コロラド州で開かれたフォーラムで推計について説明し、ロシア側にとって「重大な一連の損失だ」と指摘。さらに「ロシアよりはやや少ないかもしれないが、ウクライナ側も同様に被害に遭っている」と語りました。

ロシア側の死者数を巡っては、英国防省が5月、約1万5000人が死亡したとされる旧ソ連によるアフガニスタン侵攻(1979~89年)に匹敵するとの推計を公表。ウクライナメディアによると、ウクライナ軍は今月20日現在で「ロシア側の損失」が3万8750人だと発表しています。

一方、ロシア軍は、3月下旬にウクライナ戦線で1351人の自国兵が死亡したと公表した後、死者数の発表を控えています。

最新の数字では、欧米の複数の当局者は4日、2月24日のウクライナ侵攻開始以降、ロシア軍の兵士最大2万人が死亡したとの推計をCNNに示したされています。

 負傷した兵士の数は5万5000人で、死傷者数の総計は約7万5000人に上るといいます。 複数の当局者はCNNの取材に対し、戦闘ペースの鈍化に伴い、死傷者数の増加ペースも落ちていると指摘しました。 

それでも最大2万人の死者が出ている状況であり、総計の死傷者数が7万5000人に上るとの見方は正しいと思われるとしていまする

複数の筋から少なくとも1万5千人の死者が、出ているのは間違いないようです。

オルガ・カチューラ大佐

8月5日付『ザ・テレグラフ』紙(1961年創刊)は、「ウクライナ人殺害を“自慢”していたロシア軍女性将校が死亡」と題して、ウクライナ戦争で初めてロシア軍女性将校が死亡したと報じました。

ロシア地元メディアによると、“ウクライナ人を殺害するのは何と楽しいことかと自慢”していた一個師団司令官が、ロシア軍内で最初に死亡した女性将校となりました。

オルガ・カチューラ大佐(52歳)で、ウクライナ東部ドネツク州ホルリウカ市において車で移動中にウクライナ軍のミサイル攻撃を受けて死亡したといいます。

彼女はロシアの傀儡政権であるドネツク人民共和国(DPR、2014年一方的に独立宣言した親ロシア反政府組織)に所属する大佐で、DPRはウクライナ市民を狙って砲撃しているとして西側諸国から糾弾されていました。

ウクライナ軍の戦略通信部はかつて、ウクライナ軍に汚名を着せるため、彼女が率いる部隊がウクライナ軍の制服をまとって市民を攻撃していたと非難しています。

ドネツク州出身の彼女は、悪名高い親ロシア派の反乱軍指導者のイゴール・ベズラー少佐(56歳)が率いる部隊に所属するまでは、長い間警察官の職に就いていました。

そして今年1月、ウクライナ西部在の裁判所から、彼女が不出頭のまま、市民を巻き込んだテロ行為に加わった罪で禁固12年の有罪判決が出されました。

ウクライナ情報部によると、彼女が2014~2015年の間、ウクライナ東南部ドンバス地方で発生した大規模戦闘の際に市民に向けて大砲を撃ち込むよう命令を下し、多くの犠牲者を出したことが上記の有罪判決に繋がっているといいます。

彼女はかつて、ロシアのテレビ局のインタビューに答えて、“ウクライナ人との戦闘を楽しんでいる”と豪語していました。

しかし、亡くなる1週間前のインタビューでは、自分は“ウクライナと戦っているのではなく、北大西洋条約機構(NATO)軍と戦っている”と主張していました。

なお、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)は8月4日、ロシア軍の最高の栄誉となる“ロシアの英雄賞”を授けることを決めました。

8月4日付『ザ・サン』紙(1963年創刊)は、「プーチン、ロシア軍で初めて女性将校を喪失」と、“邪悪な女性将校”と呼ばれた一個師団女性司令官が死亡したと報じています。

プーチン大統領は8月4日、ウクライナ軍によるロケット弾攻撃で死亡したオルガ・カチューラ大佐に、ロシア軍の最高の栄誉となる“ロシアの英雄賞”を授けることを決定しました。

同大佐は、ウクライナ戦争で死亡した97人目の将校とされています。

ロシアはウクライナでまもなく〝勢いを失う〟可能性もあるなか、米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は23日の日次リポートで、ウクライナ軍は南部ヘルソン州ですでに反転攻勢を開始した可能性があると指摘。今月15日以降にドンバス地方の主要な前線でロシア軍の砲撃が著しく減ったのは高機動ロケット砲システム「HIMARS」の効果だとし、HIMARSがロシア軍の前線に武器を供給していた数十の兵器庫を破壊したと分析した。

HIMARS

ISWは25日、ヘルソン州のロシア軍とドニエプル川東岸の供給ラインを結ぶ全ての橋をウクライナ軍が損傷させたとも報告した。

ゼレンスキー大統領は21日、安全保障担当幹部らとの会合後、「前線で軍を進軍させ、占領者に新たに重大な損失を負わせる大きな見込みがある」と述べた。さらにウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が22日に掲載したインタビューで同大統領は、5-6月には1日100-200人に上っていた戦場での死傷者数が最近は30人前後にまで減少したと説明。ロシアに領土の割譲を認める休戦協定は結ばないと、あらためて強調した。

英スコットランドのセントアンドルーズ大学で戦略研究を専門とするフィリップス・オブライエン教授は、戦争が新たな段階に入りつつあることをこれら全てが示唆していると指摘。ロシア軍が電撃的にキーウ占領を目指し失敗した第1段階、勝利への道を進もうと東部の一部で撤退したのを第2段階と位置付け、「ドンバス地方でロシア軍の軍事力低下が続き、基本的に戦線が膠着(こうちゃく)するなら、ウクライナ軍による撃退は可能になるのかが問われることになる」と語りました。

同盟国から弾薬や装甲車両、対空システムなどの供給をまず確保することなしにロシアの支配地域を奪還できる能力がウクライナ軍にあるのかは判然としません。ロシアの侵攻が2月24日に始まって以来、ウクライナは数多くの反撃を試みてきましたが、総じて小規模にとどまっています。

英国防省は6日、ロシア軍が兵力や装備をウクライナ南部の占領地に集結させてウクライナ軍による反撃強化に備えており、激戦地が南部に移って、双方の攻防が新たな局面に入りつつあるとの分析を明らかにしました。南部ザポリージャ原発では5日、2度にわたる砲撃があり、双方が相手による攻撃だと非難しました。欧州最大規模の原発で大惨事が発生する危険性が増しています。 


英国防省はザポリージャ州付近からヘルソン州にかけてのドニプロ川沿いの約350キロ・メートルの区間を激戦地として挙げました。2月24日の侵略開始以降、主要な激戦地は東部となってきました。

ザポリージャ原発は露軍が占拠し、要塞(ようさい)化を進めています。

ウクライナの国営原子力企業「エネルゴアトム」はSNSで、原発が5日午後2時半頃と夕方、原発を占拠している露軍の攻撃を受け、高圧線や一部施設が損傷したと発表。露軍が、原発に配備した地対空ミサイルで原発が立地するエネルホダル市の変電所なども破壊し、大規模な停電と断水が起きたと訴えました。

6日の投稿では原発の状況に関し、「火災発生や放射性物質飛散の危険性が依然ある」と説明しました。

一方、露国防省は5日、緊急声明で、一連の攻撃はウクライナ軍によるものだと発表し、ゼレンスキー政権による「核テロ」だと主張しました。ウクライナ国防省情報総局は7月下旬、原発付近の露軍駐屯地を自爆型無人機で襲撃したことを認めていました。露軍には反転攻勢をけん制しつつ、ウクライナ非難の世論作りにつなげる思惑があるようです。

今後いずれの時点で、ロシア軍が失速するのかが、注目されます。ただ、失速したとしても、それですぐにウクライナ軍が勝利というわけではなく、ロシア軍は戦線を維持しつつも、新たな攻撃ができない状態に陥り、ウクライナ軍も大攻勢をかけるというよりは、散発的な攻撃で終わり、長い間膠着状態が続くようになるのではないかと思います。

ロシア軍が疲弊しているのは確かですが、ウクライナ軍も疲弊していることを忘れるべきではありません。多くの国民にとって戦争の犠牲者が身近になる中、アレストビッチ大統領府顧問は6月、侵攻開始以降、1万人の将兵が死亡したと認めざるを得ませんでした。

ウクライナが本格的に攻勢に打って出るのは、同盟国から弾薬や装甲車両、対空システムなどの供給をまず確保し終わり、これらのメンテナンスができる体制を整え、弾薬部品の輸送経路を確保し、さらにこれらを扱う兵員の訓練も終えてからということになると思います。そうなると、戦争は年をまたぐことになるでしょう。

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2022年8月7日日曜日

台湾 軍による沿岸での「重砲射撃訓練」開始へ 中国軍に対抗か―【私の論評】大国は小国に勝てないというパラドックスに気づいていない、愚かな中国(゚д゚)!

台湾 軍による沿岸での「重砲射撃訓練」開始へ 中国軍に対抗か


 台湾が陸軍による沿岸での射撃訓練を行うと発表しました。中国の大規模な軍事演習に対抗する狙いがあるとみられます。

  台湾の陸軍は、8月9日と11日に台湾の南部沿岸周辺で「重砲射撃訓練」を行うと発表しました。

  中国軍による台湾周辺での大規模な軍事演習が行われたことを受け、部隊の戦闘能力をテストする予定だということです。

  また、台湾の海軍からは対艦ミサイルの写真が公開され、台湾海峡の状況を24時間体制で監視しているとする声明が発表されました。 

 台湾当局は、中国政府に対して「理性的に自制をするように」と呼び掛け、日本を含めた周辺諸国に台湾への理解と支援を求めています。

【私の論評】大国は小国に勝てないというパラドックスに気づいていない、愚かな中国(゚д゚)!

中国がペロシ米下院議長の訪台に反発し軍事的な圧力を強めていますが、しかしこれはもともと中国が一つの中国を主張するだけではなく、台湾に軍事侵攻する旨を明らかにしており、これに対する対抗措置として、ペロシ氏が実行したものです。

中国はこれを無視して、一方的にペロシ氏を非難しています。これに対して台湾が反発するのは当然で、これは中国も織り込み済みなのでしょうが、中国は、国際政治のパラドックスに関しては、過去の反省も、現状の分析もしていないようであり、今回の台湾を脅す軍事演習は、中国にとってさらに悪い結果を招くであろうことを理解していないようです。

米国の戦略家ルトワック氏は、そもそも昔から大国は、小国に勝てないということを主張しています。確かに、そういわれてみればそうです。米国もベトナムには勝てませんでした。ロシアに侵攻されたジョージアは一部取られたとはいえ、独立を保っています。アフガニスタンからは、過去には英国、ソ連が、昨年は米国が撤退を余儀なくされました。ウクライナ侵攻でロシアは苦戦しています。

米国の戦略家ルトワック氏は、そもそも中国は「大国は小国に勝てない」という「戦略の論理」を十分に理解していないと前から主張していました。

ある大国がはるかに国力に乏しい小国に対して攻撃的な態度に出たとします。その次に起こることは何でしょうか。

周辺の国々が、大国の「次の標的」となることを恐れ、また地域のパワーバランスが崩れるのを警戒して、その小国を助けに回るという現象があらわれるのです。その理由は、小国は他の国にとっては脅威とはならないのですが、大国はつねに潜在的な脅威だからです。

米国はベトナム戦争に負けましたが、ベトナムは小国だったがために中国とソ連の支援を受けることができたのです。

しかも共産国だけではなく資本主義国からも間接的に支援を受けています。たとえば英国は朝鮮戦争で米国側を支援したのですが、ベトナム戦争での参戦を拒否しています。

米国が小さな村をナパーム弾で空爆する状況を見て、小国をいじめているというイメージが生まれ、最終的には米国民でさえ、戦争を拒絶するようになってしまいました。

『戦争の恐怖』1972年6月8日、AP通信ベトナム人カメラマンだった、ニック・ウット氏撮影。
南ベトナム軍のナパーム弾で、火傷を負った子供らが逃げてくる場面を捉えたもの

つまり国というものは、強くなったら弱くなるのです。戦略の世界は、普通の生活とは違ったメカニズムが働いているのです。

こうした事例は、最近でもありました。それは、リトアニアです。

リトアニアと中国の関係が急速に悪化したのは、2021年7月にリトアニアが「台湾」の名称で台湾当局の代表処を設置することを認めた以降です。中国外交部はこれを強く批判、駐リトアニア大使を召還する決定を行っています。

リトアニアは、同年8月23日に国防省の調査報告として国内の5G関連移動通信体(モバイルデバイス)のサイバーセキュリティ上の評価を公表している。その中で、中国企業であるHuawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)及びOnePlus(ワンプラス)について、併せて10のサイバーセキュリティ上のリスクがあるとし、その内4つは製造時に実装されたものであると結論付けています。

2021年9月16日、EUは「インド太平洋戦略」を公表しました。経済の相互依存状況、地球規模の課題解決等を考えると、EUとインド太平洋の未来は密接に結びついているとし、中国の軍事力増強が南シナ海や台湾海峡を緊張状態にしているとの認識のもと、EUが積極的にインド太平洋地域に係るという方針を示しています。

その戦略として、「同じ志を持つパートナー」との協力を強化するとしている。戦略文書では、「同じ志を持つパートナー」として、日本、インド、オーストラリア、米国、韓国と並んで台湾を挙げています。同戦略には、インド太平洋における海洋安全保障のため、EU諸国が同地域に海洋プレゼンスを示すことに加え、「デジタルパートナーシップ」の作成にも言及されています。

EUはインフラ接続に関し、中国の「一帯一路イニシアチブ」の代案となる「グローバルゲートウェイ」を公表している。デジタルガバナンスに関し、インド太平洋方面の諸国と連携を深め、これを足掛かりに、すでにガバナンスが定着しているオーストラリア、韓国、米国、カナダ等との連携を強化することを目指しています。

海洋プレゼンスの強化に関しては、英仏の空母機動部隊やドイツ海軍艦艇のインド太平洋方面行動は、EUの戦略文書を先取りした行動でした。同年11月5日に、ドイツ海軍艦艇が約20年ぶりに日本に寄港したが、ドイツ外務省報道官によれば、ドイツ政府が申し入れていた同艦の上海寄港は中国が受け入れを拒否したとしています。

中国が、ドイツ海軍艦艇のインド太平洋展開を自国に対する圧力と認識し、不快感を示したものでしょう。同年10月21日に、EU議会でEUと台湾の関係を強化すべきという法案が580対26という大差で可決された背景には、EUのインド太平洋戦略の影響があります。

同年10月30日、中国外務省報道官は、リトアニアとEUに対中関係を悪化させるべきではないと警告を発している。中国がリトアニアとEUの動きを結託したものとみている証左です。

それにもかかわらず、同年11月3日、EU議会の代表者は台湾を訪問、蔡英文総統と会談し「あなた方は孤立無援ではない」とのメッセージを伝えたと報道されています。小国リトアニアと大国中国の対立はEU対中国の対立に変化しました。

同年11月3日付のGlobal Times紙(中国環球時報英語版)は、台湾を訪問した代表団は一部の反中国派議員であり、騒ぎ立てることにより自らの存在感を示そうとしているだけであり、相手にするのは時間と資源の無駄であるとの論評を掲載しています。

同紙は、中国政府の方針を代弁することが多く、中国としては、EUとの対立を、控えめに扱うことにより沈静化を図っていく方針であることを示すものでしょう。小国リトアニアに、台湾という名前を冠した連絡事務所を設置させないという中国の目的は果たすことができず、結果的には中国は勝つことができなかったのです。

リトアニアが中国からの圧力に屈しなかった理由は、EUがリトアニア側についたという事が大きいが、中国への経済依存度も低く、距離的にも中国から遠いという背景があることも事実です。

しかしながら、台湾が中国と対峙する場合、教訓とすべき事項も多いです。その一つは、「同じ志を持つパートナーとの連携」強化です。もちろん米台関係が基軸であることは確かですが、EUがインド太平洋戦略において台湾を米国や英国、日本、オーストラリアと並んでEUの「同志」と位置付けていることを重視すべきです。

アフガニスタンからの米軍の撤退に見られるように、最終的な価値基準は国益です。米台、日台のみに依存する安全保障は心もとないです。価値観を共有する国々との関係を強化することはもちろんのこと、軍事だけではなく、経済、外交、科学技術あらゆる分野で安全保障を担保する方策を講じる必要があります。

そうして、台湾はその方向に進みつつあるようです。すでに、中米の島嶼国セントビンセント・グレナディーンのラルフ・ゴンザルベス首相が7日朝、台湾に到着しました。桃園国際空港で談話を発表し、中国に対し台湾周辺での軍事演習をやめるよう呼び掛けました。

ラルフ・ゴンザルベス首相

中華民国(台湾)と外交関係を結ぶセントビンセント・グレナディーン。ゴンザルベス氏は政府の招待を受けて来訪し、12日まで滞在します。談話では、台湾が厳しい状況に直面する中、訪台できたことを喜び、攻撃や暴力による圧力は受け入れられないとの立場を示しました。ゴンザルベス氏の訪台は具体的な行動によって台湾との関係の強固さを示すだけでなく、台湾への支持を示す意義もあるとした。

また、リトアニア運輸通信省のバイシウケビチウテ副大臣らで構成される代表団も7日、台湾入りした。

リトアニア運輸通信省のバイシウケビチウテ副大臣

英下院外交委員会の代表団が、おそらく今年11月か12月初旬に台湾を訪問する計画だと、英紙ガーディアンが1日に報じていました。 報道によると、同委は今年の早い段階で訪台を計画していたのですが、代表団の1人が新型コロナウイルスに感染して延期していました。 報道によると、訪台は当初計画段階で、英国が台湾を支持していることを示す目的があったといいます。

今後、様々な国々の代表が台湾を訪れることになるでしょう。

外務省は6日、中国による台湾周辺での大規模軍事演習を巡り、林外相と米国のブリンケン国務長官、オーストラリアのペニー・ウォン外相が「即刻中止」を求める声明を発表しました。

声明では、中国の軍事演習について、「国際的な平和と安定に深刻な影響を与える」と懸念を表明。中国の弾道ミサイル5発が初めて日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したことに関しては、「緊張を高め、地域を不安定化している」と非難しました。

私は、この日米豪を含む多数の国が、いずれ近いうちに、中国の演習に対抗して、台湾防衛を目的とした、かなり大規模な軍事演習をすると思います。

中国の今回の暴挙に反応して、多くの国々がこれを脅威に感じ、これに備えようとするでしょう。

そうして、大国は小国に勝てないというパラドックスの新たな事例がまた生み出されていくことになるでしょう。

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2022年8月6日土曜日

金正恩、復活した斬首作戦に怯える―【私の論評】金正恩が瀬戸際外交を再開すれば、米国は斬首作戦を発動する可能性は十分ある(゚д゚)!

金正恩、復活した斬首作戦に怯える

28日に開かれた全国老兵大会の参加者に手を振る金正恩氏。金氏のそばで警護員が警護に当たっている


【まとめ】

・北朝鮮外務省韓米の対北朝鮮軍事圧力は高まり、北は「いつ第2の朝鮮戦争に拡大するかは」分からないと述べる。

・それに加え、韓米は斬首作戦を復活させた。

・北朝鮮は異常な警戒心を示し、金正恩氏の動線を隠す動きが顕著になっている。


北朝鮮の外務省は7月26日、ホームページに「戦雲をもたらす好戦狂の群れ」と題した文を掲載し、「韓米が休む間もなく各種名目の戦争演習を強行している」とし「いつ第2の朝鮮戦争に拡大するかは誰にも予測できない」との主張を行った。そして「地域に米軍が存在する限り、朝鮮半島の平和保障は絶対に実現しない」と対決姿勢を露わにした。

こうした露骨な挑発姿勢は、金正恩総書記が7月27日の「停戦(北朝鮮では戦勝)記念」で「アメリカ帝国主義とは思想でもって、武装でもってあくまで立ち向かわなければない」「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権と彼の軍隊は、わが武力の前に全滅するだろう」などと演説したことで公式化された。

 しかしこうした強気の姿勢の裏で、金正恩は強まる韓米の軍事圧力と復活した「斬首作戦」に異常な警戒心を高めている。


1、強まる韓米の軍事圧力

韓国軍関係者は7月31日、韓米日はミサイル発射など軍事挑発を繰り返す北朝鮮に対応するため、米ハワイ沖海上にて8月1~14日の間、弾道ミサイルへの対応能力と連合作戦遂行能力強化の「パシフィック・ドラゴン」訓練に入ると明らかにした。この訓練には米軍、韓国海軍に加え日本の自衛隊を始め、オーストラリア、カナダの軍も参加している。

また尹錫悦政権発足後、初めて実施される下半期韓米合同軍事演習も、有事に備える非常訓練「乙支演習」と統合して、名称をUFS(乙支フリーダムシールド)と変更し8月2日から9月1日まで実施している。

そして、北朝鮮が韓国を核で攻撃する場合、米国本土に対する核挑発と見なして戦略核兵器など「拡大抑止(extended deterrence)」戦力を動員して対抗することなどを議論する韓米高位級拡大抑止戦略協議体(EDSCG)も9月に再稼働されることとなった。

EDSCGでは、原子力空母打撃群、原子力潜水艦など米戦略兵器を韓(朝鮮)半島に展開する時期や規模、方式なども具体的に議論される。EDSCGは2018年1月の第2回会議以降、文在寅政権下では開かれておらず、4年8ヵ月ぶりの再開となる。


2、復活した「斬首作戦」

 韓米は大規模軍事訓練を復活させるだけでなく、文在寅時代に中止させられていた北朝鮮指導部を除去する「斬首作戦」も復活させた。米カリフォルニア州フォートアーウィン基地内の「ナショナル訓練センター(NTC)」では、米韓特殊部隊による共同訓練が6月14日から7月9日まで行われた。「一般歩兵ではなく、特殊部隊が訓練に参加したのは今回が初めて」と韓国軍関係者は説明した。

こうした訓練強化に伴い、韓国では在韓米軍の攻撃ヘリコプター「アパッチ」が、北朝鮮との軍事境界線のすぐ南にあるロドリゲス実弾射撃複合施設で2019年以来となる実弾射撃訓練を再び実施していることが分かった。在韓米軍はツイッターで「昼夜を問わず」訓練を行っていることを明らかにしている。

3、金正恩、「斬首作戦」に異常な警戒心

 米韓軍の「斬首作戦」復活に伴い、北朝鮮では金正恩の動線を隠す動きが再び顕著となり警護が強化されている。

7月2日から6日まで行われた朝鮮労働党各級党委員会組織部党生活指導部門活動家の特別講習会では、異例にも事前報道を一切行わず、講習会が終わった後に報道した。また北朝鮮の国家保衛省は7月10日、「首脳部保衛事業体系」を強化するための指示を各地方保衛局に下達した。

韓国デイリーNKの報道(7月19日)によると、保衛省は今回の指令伝達に先立ち、安倍元首相が7月8日、参議院選挙距離遊勢中に襲撃され死亡したという事実を伝え、「日が経つにつれて激しくなる敵の卑劣な反共和国陰謀策動から敬愛する武力総司令官同志の身辺安全をあらゆる面から保障することにすべての力を総動員せよ」 と指示したという。

続けて7月10日から12月末までを「反スパイ闘争期間」と定め、すべての力と力量を集中して革命の首脳部を狙って策動するスパイ、不純異色分子をすべて摘発、逮捕、粛清する 事業に総力を傾けることを強調した。

そればかりか公開活動の際にも身辺警護を強化したことが分かった。今年の「停戦(戦勝)記念式典」の様子を見ると、警護員の姿をほとんど見せなかったこれまでの公開活動警護とは異なり、金正恩のそばで警護員が警護している姿が確認された。朝鮮戦争に参戦した老兵たちの前を通る際にも屈強な体格の警護員4~5人が緊張した表情で警護に当たっていた。警護員は金正恩が老兵たちと手を握る際も別の参加者が近づかないよう金正恩を囲んだ。昨年の老兵大会ではこうした警護員の姿はなかった。

 折しも現地時間7月31日午前6時ごろ、アフガニスタンの首都カブールで、米軍が国際テロ組織「アル・カーイダ」の指導者アイマン・ザワヒリ容疑者(71)を無人機のミサイル(ヘルフアイヤーと見られる)で殺害した。こうした状況もあり、いま金正恩の「斬首作戦」に対する警戒心はこれまでになく高まっているようだ。

【私の論評】金正恩が瀬戸際外交を再開すれば、米国は斬首作戦を発動する可能性は十分ある(゚д゚)!

北朝鮮外務省は2月8日、米国に対して「世界で水爆やICBM、極超音速ミサイルまで保有する国はわずかである」と前置きしたうえで、「米国と対峙し、米本土を射程に収めて試射まで行い、世界を震撼させている国は地球上で我が国だけだ」と豪語しました。

ところが、その翌日の9日には、在韓米軍特殊作戦司令部(SOCKOR)がフェイスブックを通じ、《昨年11月から12月にかけて米海軍の特殊部隊『ネイビーシールズ』らと共に、極寒期の海上および地上領域で訓練する機会があった》と発表しています。

SOCKORの訓練風景 FBより

訓練場所は明かされていないですが、数カ月前に行われた訓練をこの時期に公表したのは、それなりの理由があるようです。

米国はシンガポールで史上初の米朝首脳会談が行われた18年6月以降、この種の訓練事実を対外的に公開しませんでした。北朝鮮を不必要に刺激するのを避けるためです。それだけに訓練予告ではなく、すでに終了済みの訓練を公表するのは尋常ではありません。

ネイビーシールズは陸海空を問わず、偵察、監視、ゲリラ戦などの特殊作戦に対応できる高い能力を持ち、11年5月には国際テロ組織『アルカイダ』の指導者だったオサマ・ビンラディン容疑者の殺害を遂行しています。

米特殊部隊は朝鮮半島有事の際、主要施設の爆破や爆撃を精密に誘導する任務を帯びています。また、平壌を制圧する『作戦計画5015』には、核兵器承認権者である正恩氏を抹殺する〝斬首作戦〟も含まれています。


さかのぼれば昨年9月、北朝鮮が四度にわたりミサイルを発射したときも、SOCKORは「チークナイフ訓練」を行った事実を公開していました。これは敵陣に特殊部隊を潜ませた空輸部隊を潜入させる訓練を指し、異例なことに90年代から同訓練を実施していたことまで明らかにしました。

SOCKORが情報を公開した背景には、北朝鮮のミサイル発射へのいら立ちがあるのでしょう。ビンラディン容疑者を殺害したネイビーシールズの訓練に、あえて写真付きで触れたのは、これ以上、北朝鮮が挑発を繰り返せば、もう黙っていないとの〝警告〟と言えるでしょう。

北朝鮮が米国の警告を無視し、さらなるミサイルの発射や核実験を強行した場合には沖縄に配備されている世界最強のステルス機である「F―22」や「F―35」を、またグアムに4機駐留している「B―1B」戦略爆撃機を急派し、北朝鮮を軍事的に締め付ける構えです。

核実験後の朝鮮半島の状況は軍事衝突一歩手前まで突き進んだ2017年の状況への回帰となりますが、米韓両国はこうした事態に備え、全面戦争を回避し、核・ミサイルを除去する手段の一つである「金正恩斬首作戦」を復活させ、そのための訓練を早くから実施していたのです。

上の記事にもあるように、先月28日には平壌で行われた第8回全国老兵大会で、 警護員たちが1号行事(金総書記が出席する行事)の報道画面に多数写り込んでいるのが確認されました。同大会で金総書記が手を振り6・25戦争(朝鮮戦争)参戦者たちの前を通り過ぎた時、髪が短い屈強な警護員が4-5人、金総書記に密着して警護していました。

紺色のストライプ柄のネクタイを結び、ワイヤレスイヤホンを装着した警護員たちは、金総書記が退役軍人たちに近づいて手を握ると、非常に緊張した面持ちで金総書記を取り囲みました。

2018-19年の南北首脳会談・米朝首脳会談時、金総書記の警護を総括したキム・チョルギュ氏(国務委員会警衛局長と推定される人物)の姿も見られましたた。

金総書記が屋外の公の行事で密着するような形で身辺警護を受ける様子はここしばらく目撃されていませんでしたた。最近の屋外での行事を見ると、玄哲海(ヒョン・チョルヘ)国防省総顧問の国葬(5月22日)、平壌市内の薬局視察(5月15日)、閲兵式参加者との記念撮影(5月1日)などで、金総書記は警護員なしで行事参加者らと会話したり、身体接触をしたりしています。

報道画面に警護員が多数とらえられるほど金総書記の警護が強化されたのは、執権初期の2012年下半期以来、10年ぶりです。金総書記は当時、「私の警護を保障する事業にまず注意を向けろ」と指示しました。

これにより、1号行事の会場周辺には自動小銃や手りゅう弾で重武装した警護兵力と共に重火器を入れた黒くて長いカバンを持った私服姿の護衛要員が配置されました。金総書記の官邸や別荘をはじめとする専用施設30カ所には装甲車約100台を配備し、特別列車専用駅(1号駅)周辺の警護兵力も大幅に増強しました。

北朝鮮事情に明るい消息筋は「2012年に金総書記が警護に没頭したのは、固め切れていなかった権力に対する不安が強かったからだ」「今は制裁や新型コロナ封鎖長期化に伴う経済難で内部が動揺し、権威が大きく損なわれているため、これにより身辺に脅威を感じているのだろう」と語ったとされています。

このような背景があったところに、日本だの安倍元総理の暗殺、米国による「アル・カーイダ」の指導者アイマン・ザワヒリ容疑者の殺害が重なったので、金正恩は危険を感じたのでょう。米国は、これいがにも過激派組織の幹部を殺害しています。金正恩が5人目にならないという保障はありません。


特に、アイマン・ザワヒリの殺害に関しては、中国もロシアもこれを批判しませんでした。

世界は、ウクライナ戦争に釘付けです。北朝鮮は、過去に何度も弾道ミサイルを発射してきました。どちらが、多くの人の耳目を惹き付けるかといえば、やはりウクライナ戦争であり、その当事者であるウクライナでありロシアです。

北朝鮮への注目度はかなり減っているのが現状です。それを挽回して、少しでも有利になるように立ち回るつもりで、さらにミサイル発射や核実験をすれば、どういうこしとになるのでしょうか。

その答えが、弾道ミサイルへの対応能力と連合作戦遂行能力強化の「パシフィック・ドラゴン」、UFS(乙支フリーダムシールド)、韓米高位級拡大抑止戦略協議体の再開です。そうして、それに先立つ「斬首作戦」の再開です。

米国としては、現在の最優先事項は、やはり中国との対峙です。にもかかわらず、ウクライナ戦争というやっかいな出来事に巻き込まれているわけですから、金正恩が過去のように、ミサイルを頻繁に打ったり、核実験を再開したりして瀬戸際外交を再開すれば、かなり面倒なことになるので、斬首作戦に踏み切るということも十分考えられます。

それに対しての防御策が、金総書記の警護が強化なのでしょうが、そんなことをしても米国が本気になれば、警護の強化など無意味であることを当の金正恩自身が熟知していることでしょう。

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2022年8月5日金曜日

ペロシ米下院議長訪台の徹底検証-未曾有の対米軍事恫喝で「火遊びして火傷した」習近平政権の大失敗―【私の論評】いずれに転んでも、これから丸焼けになる習近平(゚д゚)!

ペロシ米下院議長訪台の徹底検証-未曾有の対米軍事恫喝で「火遊びして火傷した」習近平政権の大失敗

マレーシア・クアラルンプールの議会を出る米国のナンシー・ペロシ下院議長。この後台湾に向かった。


最初はやはりバイデンの不用意発言から

 8月2日から3日にわたって行われた、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問は大きな国際ニュースとなった。と同時に、中国側の激しい反応を引き起こして台湾海峡の緊張を高めたようにも見える。ここでは一度、この一件の経緯を徹底的に検証して、緊張を作り出そうとする中国側の本音を探ってみよう。

 ことの始まりは7月18日に、英紙フィナンシャル・タイムズが、ペロシ氏が8月におけるアシア歴訪の一環として「台湾訪問を予定している」と報じたことにある。しかしそのとき、中国側は外務省の報道官が定例の記者会見では通常通りの「反対」を表明したものの、それほどの強い反応を示さなかった。実際、その時点ではペロシ氏自身が「台湾訪問する」とは一切言っていなかったから、中国政府としてはしばらく様子見するような態度であった。

 転機が訪れたのは7月20日であった。その日、アメリカのバイデン大統領はこの一件に言及し、ペロシ氏の訪台について「軍は良い考えであるとは思っていないようだ。」と発言し、訪台に対する否定的な態度を示した。

 英紙の報道云々ではなくアメリカ大統領の発言であったから、それは当然中国側にきちんと伝わって、事態に対する習近平政権の注意と警戒心を喚起した。さらに重要なのは、バイデン大統領のこの発言は結局、ペロシ氏の訪台に対し大統領自身が否定的な見方を持っていることと、アメリカ軍も消極的な態度であることを中国側に教えてしまったことだ。

 バイデン大統領はその時、アメリカ軍の「考え」を内々にペロシ氏に伝えればそれで良かった。それなのに、一体どうしてそれを公言したのだろうか。大統領の本心が計り知れるものではないが、客観的にみれば、まさにバイデン氏のこの不用意の発言こそは、事態を拡大化させる大きな要素となった。

 というのも、この発言を聞いた習政権としては当然、アメリカ上層部内部の意見不一致を知り、そしてアメリカ軍がペロシ氏の台湾訪問を支援しないだろうとの印象をもったはずだ。

 この件に関してアメリカ政府とアメリカ軍の両方が及び腰であれば、中国にとってそれほどの好都合はない。おそらくその時点から、習近平政権がペロシ氏の訪台に対して超強硬姿勢でいこうと決めたのではないか。

正真正銘の軍事恫喝

 秋の党大会の開催にあたって自らの総書記職の続投を目指す習近平氏にしては、ここで強硬姿勢を貫いてペロシ氏の台湾訪問を阻止して見せることができていたら、それこそ自身の外交的大勝利となって続投への追い風となるに違いない。またペロシ氏自身が、「自分は必ず台湾へ行く」と宣言したことは一度もなかったから、習主席はいっそうのこと、強硬姿勢に対する自信を深めたのではないかと思われよう。

 そしてそれ以来数日間、中国側は内密に米国政府にペロシ訪台に対する絶対反対の意向を伝え、「軍事的手段を使ってもそれを阻止したい」との強い意志を伝えた。そして、おそらくアメリカ政府内部からのリークだったのか、前述のフィナンシャル・タイムズは25日、「中国政府は非公式的にアメリカ政府に対し、ペロシ氏の訪台を阻止するために軍事的対応する考えもあると伝えた」と報じた。非公式であったとはいえ、中国政府がアメリカに対して軍事恫喝を行ったことはこれで明るみに出た。

 もし、中国政府はその時点でフィナンシャル・タイムズのこの危険な報道内容を正式に否定したりして、あるいは否定も肯定もしないような曖昧な態度を取っていれば事態の沈静化が図れる余地は依然として残っているかもしれない。しかし中国政府の示した公式の反応はあまりにも驚きのものであった。

 25日、中国外務省の趙立堅報道官は記者会見で、「中国側は厳重に陣を構えて迎え撃つ」との激しい表現を用いてペロシ訪台を絶対阻止するとの姿勢を示したのに続いて、26日、中国国防省報道官はつい、本来なら口にしては絶対ならない言葉を口にした。彼は何と、ペロシ訪台に対し、「中国軍としては絶対座視しない」と公言したのである。

 仮に中国政府が「座視しない」と宣言した場合、それが何らかの外交的・経済的対抗措置を取る意味合いであるとの解釈も成り立つが、「軍として座視しない」と宣言した場合、それに対する解釈は一つしかない。要するに軍事的行動をとることであろう。こうして中国軍は世界最強の軍事大国のアメリカに対して堂々と、正真正銘の軍事恫喝を行ったのである。私の記憶では、それは1980年代の改革開放以来の初めてのことである。

中国の強硬姿勢、訪台実現を後押し

 しかしこれでは、ペロシ氏にしてもアメリカ政府にしても、もはや訪台を実現させていく以外に選択肢はなくなった。

 もし、上述の中国国防省の報道官が「軍として座視しない」との言葉を発した後に、ペロシ氏の台湾訪問が取りやめられるようなこととなれば、その意味するところはすなわち、アメリカ合衆国は中国の軍事恫喝に屈してしまうことに他ならない。その瞬間からアメリカは世界ナンバ1としての地位を失い、世界の覇権は中国の手に移りはじめることとなろう。アメリカという国は幾らなんでも、自らそんなことは絶対しない。

 今からみれば、ペロシ氏台湾訪問はまさにこの瞬間に、最終決定されたのではないかと思う。習近平ら自身が意識しているかどうかは分からないが、結局のところ、彼らの発した無謀な軍事恫喝は逆に、彼ら自身の嫌がるペロシ訪台の流れを決定づけてしまった。

 その後、バイデン大統領とアメリカ政府はもはや、ペロシ氏の訪台に対して否定的な姿勢を示したことは一度もない。アメリカ軍もその時から、いかにしてペロシ氏の台湾訪問の安全を確保するのか、とのことに重点を置いて動き出した。中国からの空前の軍事的恫喝をうけたアメリカはむしろ、これで一気に結束を固めた。

しょせん捨て台詞「火遊びするものは必ず火傷する」

 アメリカの結束ぶりを習近平側に強く印象付けたのは、7月28日におけるバイデン・習近平の電話会談であろう。この会談おいて、バイデン大統領は米国の台湾政策に変更がないとしながらも、「台湾海峡の安定と平和を損なう如何なる行為にも強く反対する」との強い姿勢を習近平主席に伝えた。もちろん、習主席がペロシ氏訪台の取りやめを暗に求めたのに対し、バイデン大統領は三権分立の原則の上に立ってそれを拒否した。

 その時に習主席がバイデン大統領に対して、「火遊びするものは必ず火傷する」という印象深い言葉を発していることは大きく報じられているが、彼がその時に使った「玩火自焚」という中国語の四字熟語を見ていると、筆者の私はむしろ、習主席がこれを使って米国側に対する警告を発していながら、実際には先日の国防省報道官の軍事恫喝からトーンを下げているとの印象を受けている。

 というのも、「玩火自焚」という四字熟語には、「私は特に何もしなくても、火遊びする貴方自身はのちに大変なことになろう」とのニューアンスが含まれており、チンピラが相手の喧嘩に負けそうになって逃げ出す時の捨て台詞にも使われるからである。

 実際、米中首脳会談の28日を境目にして、中国側のアメリカに対する姿勢に軟化の兆候が色々と見え始めた。たとえば人民日報が30日、米中関係に関する2つの重要論評を第3面に一斉に掲載した。そのうち1つの論評のタイトルは「(米中)両国関係を正しい軌道にのって発展することを推進せよ」、もう1つは「米中間の意思疎通を図り誤った判断を避けよう」である。

 つまり両方ともは、米中関係の改善を訴えるものとなっているが、そこからは米国に対するいかなる恫喝の言葉も消えてしまい、中国の国防省は二度と「座視しない」のような言葉を口にすることはない。習近平政権は一転、対米超強硬姿勢からの軌道修正を自ら行うこととなった。

 おそらくその時点で習政権は、どんなことしてもペロシ氏の台湾訪問を阻止するのはもはや無理であると悟り、そしてアメリカに無謀な軍事恫喝をかけたことの深刻さを分かってきたのではないか。

ペロシが去った後で軍事パフォーマンス

 それからの数日間、中国側はペロシ訪台の一件に対してそれほど際どい行動をとることもなく、事態の推移を見守る姿勢をとっていた。

 中国軍は人民日報が前述の2つの論評を掲載したと同じ日の30日、一応、台湾に近い福建省の平潭島付近の海域で小規模な実弾射撃訓練を実施した模様である。しかし中国軍がその実弾訓練を、ペロシ氏の台湾到着に合わせて行うのではなく、その3日前にやってしまった。中国側はこれで、自分たちの矛先は決してペロシ米国下院議長に向けたわけではないことを、わざと示して見せたのではないか。

 こうした中で8月2日夜、ペロシ下院議長は中国側からの何の妨害も受けることはなく、堂々と台湾の地に足を踏み入れて歴史的な台湾訪問を始めた。ペロシ訪台に対する習近平政権の恫喝が完全に失敗に終わった瞬間である。

 そしてその直後から、中国側はアメリカに対して外務省声明を発表したり、駐中アメリカ大使を呼びつけて抗議したりして、外交上の最大のパーフォマンスを演じて見せながら、4日から7日までに台湾周辺で大規模な軍事演習を行うと発表した。



 問題は、中国側の軍事演習はどうして「4日から」なのかであるが、考えればその理由は簡単だ。ペロシ氏の台湾滞在は3日までであって4日になると彼女はもはや台湾にいない。つまり中国側はわざと、ペロシが台湾から離れたあとのタイミングを選んで軍事演習を行うことにした。

 だが、それはどう考えても、「軍事演習はペロシ氏とアメリカを標的にするものではない」の意思表明であって、中国側がアメリカとの正面衝突を極力避けていることの証拠でしかない。「軍として座視しない」という1週間前の中国国防省の際どい恫喝とは打って変わって、中国政府は今度、ペロシ氏に対して最大限の「配慮」を払ってみせたのではないか。 

結局は張子の虎

 以上は、中国の習近平政権がペロシ訪台の一件に関し、アメリカに対する高飛車の軍事恫喝が完全に失敗に終わったことの一部終始であるが、そこからは、中国という国、あるいは習近平政権の対外姿勢の特質の1つが見えてきたのではないか。

 7月20日、米国のバイデン大統領がペロシ訪台に関して「軍は良い考えではないと思っているようだ」と発言してアメリカ内部の意見不一致とアメリカ軍の消極的な態度を不用心にも「自供」したところ、それがアメリカ政府とアメリカ軍の及び腰の証拠だと理解した習政権はさっそく、未曾有の強硬姿勢で米国に対する軍事恫喝を行ってきた。

 相手は少しでも隙間と弱さをみせてしまうえば、それに突き込んで増上してくるのはまさに中国という国の伝統と習政権の本性であるが、逆に今度、アメリカは結束を固めて不屈の姿勢を示し始めると、習近平政権は一転、自らが及び腰となって「張子の虎」となってしまった。

 このような中国にわれわれがどう対処すべきなのかは、この一件からも色々と学ぶこともできたのではないか。

 関連記事『中国で天安門事件以来の政治反乱か、河南省の銀行取り付け騒ぎが加熱』では、そんな中国の足元で“反乱”が起きていることをレポート。習近平政権を脅かしているという現実について見ていこう。

石 平(評論家)

【私の論評】いずれに転んでも、これから丸焼けになる習近平(゚д゚)!

習近平

習近平の戦狼外交によって今回のペロシ訪台が阻止できなかったことは、結果として戦狼外交の限界を見せつけることになりました。結局習近平の戦狼外交は失敗したのです。今後、習近平の戦狼外交に屈せず、台湾を訪問する政治家が各国で次々と出てくるかもしれないです。すでに英国庶民院議会議員団が年内に訪台すると言っています。

習近平の戦狼外交は、実は外交のように見えて内政です。以前もこのブログで掲載したように、中国は外交でもなんでも中国内部の都合で動く国であることです。中国では、たとえ対外関係であっても、自国の内部の都合で動くのです。普通のまともな国なら、対外関係と内部とは分けて考え、内部の都合により対外関係が動くなどということはありません。

しかし、中国の場合はそうではありません。反習近平派が、台湾問題を中国内部の権力闘争に利用すること等は十分にありえることです。元々中国は、巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に適用することによって信頼を失っています。

ただし、中国は人民の米国や台湾の独立派分裂勢力への敵愾心を煽り、しばし目の前の不満、たとえば銀行預金封鎖や理財商品のデフォルトだとか、ゼロコロナ政策による不自由や生活苦など、ややもすると習近平政権に向きそうな不満の矛先をうまく米国や台湾に転換させたという意味では戦狼外交は成功なのだ、という見方もあります。

しかし、共産党内の反習近平官僚からみれば、戦狼外交で人民の敵意を外国に向けることで党の求心力を強化するより、米国との関係を少しでも改善して関税を撤廃させ、半導体企業への制裁を緩和させる道を探るほうが長期的に党の求心力を回復させることができると言いたいところでしょう。

一時的に人民の不満が米国や台湾をののしることで緩和したしても、それに続く習近平の外交政策が、口で吠えるだけで、実行が伴わない弱腰のままであれば、再びそれは政権への不満に転換されだけです。

過去には、中国では反日デモが頻繁に行わてれいましたが、最近はありません。それはなぜかといえば、反日デモがいつの間にか反政府デモにすり替わったり、最初から反政府デモをするつもりであっても、それではデモの許可が出ないため、反日を装ってデモの届けを出すなどということが頻繁に起こるようになったので、政府が禁じるようになったのです。

反米反日などの外国へ敵意からくるデモは、いつ何時、社会不満、社会不安と結びついて大規模化しコントロール不可能になるかもわからないという危険もあるのです。

戦狼外交が限界点に達した現状次に中国はどのような手を打ってくるのでしょうか。選択肢は2つあります。1つは、戦狼外交から国際協調外交にUターンすることです。もう1つは、戦狼外交をさらにエスカレートさせて北朝鮮のような瀬戸際外交に突き進むことです。核兵器をちらつかせ、ミサイルを発射してみせ、臨戦態勢をみせつけるのです。戦争にまで行かない軍事行動をとり、一触即発の瀬戸際を演じ続けるやり方です。

どうやら、中国は後者の道を選びそうです。中国は、本日15時頃から16時過ぎにかけて9発の弾道ミサイルを発射した模様で、そのうち5発が我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下したものと推定されています。

中国は今後北朝鮮の瀬戸際外交のような路線をとるとみられる

上の記事にもあるように、中国は4日から7日までに台湾周辺で大規模な軍事演習を行っています。

中国はこの秋に5年に一度の共産党大会が控えていて、今は人事の駆け引きの真っ最中です。習近平が今後も米国に対して厳しい措置に出れば、二国間関係は悪化し、中国の国内経済への打撃は避けられないです。

先日も掲載したように、現在の中国経済は、「流動性の罠」に苦しんでいるうえに、「国際金融のトリレンマ」にもはまり、金融緩和政策の効き目がなく、将来的にも中国政府が自由に金融緩和ができない可能性が高く、これから抜け出すためには、「変動相場制」に移行するなどの大胆な改革が必要です。

習近平がこれからも戦狼外交にこだわるなら、四苦八苦している中国経済をこれ以上悪化させて良いのかという議論が党内でも必ず出てくるの必至です。 

一方で、言葉だけで行動が伴わなければ、習近平は口先だけだと判断し、党官僚特に長老たちは人事で好き勝手なことを言うでしょう。せっかく3期目の国家主席続投を揺るぎないものにしても、足元の人事では面従腹背の者ばかりという事態になりかねないです。

中国の駐米大使は出世の登竜門ですが、今回ペロシ訪台を許してしまった現在の秦剛大使が、秋に向けての人事でどうなるのかは一つの注目点です。 

習近平としては、今回のペロシ訪台は本当に苦々しいものだったに違いないです。事前にバイデンと直接話して強く釘を刺したのに、これではメンツ丸つぶれです。丸焼けになるのは米国なのか、習近平自身なのでしょうか。以上で示したことから、丸焼けになる可能性が高いのは習近平自身のようです。

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2022年8月4日木曜日

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心肺停止の中国

習主席の中国では、工期が遅れたり、建設がストップしたマンションが増えている

 「心肺停止」が、中国経済の現状診断である。経済の心臓部はカネの循環、血液にあたる。

 公務員の給与減額、遅配が顕著となった。地方公務員、教員の給与削減、ボーナスなしとなり、教職員が学校前で抗議集会を開いている。日本では、ほとんど報道されていない。

 地方銀行では取りつけ騒ぎ、河南省ではやくざと組んだ不正融資で8000億円が闇に消え、農民、庶民の銀行口座が凍結された。内モンゴル自治区や吉林省では、銀行の国有化という救済措置が取られた。

 コロナ禍によって、人の流れがとまった。恒大、碧桂園、世茂集団など、有名なデベロッパー(不動産開発会社)が、デフォルトの連鎖に陥った。建設現場でクレーンが止まり、労働者が消え、完成のめどがたたないまま風雨にさらされた。

 これは2019年からの中国各地の現象である。足で歩かないジャーナリストたちが公表データだけを頼りに、「中国各地のマンションは値上がりが続いている」と虚報を流していた。

 大手デベロッパーが軒並み倒産すると、下請けや孫請けには自殺も出る。若者の失業率は、実際には40%を超えているという。

 住宅ローンの債務残高は960兆円。当局は外債、米企業債、株式などの売却に転じた。ローンの支払いボイコットにより、中央銀行の損失は47兆円強(ブルームバーグ、8月1日)。

 中国のGDP(国内総生産)の30%を支える不動産ビジネスが壊滅状態となると、規制されていた「融資平台」(=地方政府傘下の投資・事業会社が発行する債券)が復活した。

 社会融資規模は6800兆円。新幹線累積赤字はすでに120兆円。それでも強気で新幹線を2035年に7万キロ達成だと呼号している。新たに73兆円が必要だ。財源をどうするかという議論は真剣になされず、経済政策をつかさどるのは国務院だが、李克強首相ら共青団幹部は冷笑しながら習近平国家主席の失敗をじっと待っている。

 消費者が敏感なのは、ショッピングモールの落日だ。全土に8000近い巨大ショッピングモールのテナントが3割以上埋まっていない。テナントの空きが20%を超えると、そのモールは経営が成り立たない。

 人口の少ない地方都市にも、大都市並みの豪華ショッピングモールができて、客がほとんどいない。売り子があくびしている風景が中国全土に展開されている。

あくびをする中国の売り子 写真はブログ管理人挿入

 「心肺停止」の次は?

 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『歩いてみて解けた「古事記」の謎』(育鵬社)、『日本の保守』(ビジネス社)、『歪められた日本史』(宝島社新書)など多数。

【私の論評】今回ばかりは「変動相場制」に移行する等の改革をしなければ、中国経済は崩壊(゚д゚)!

ほぼ廃墟と化した青島宝龍楽園と呼ばれる巨大ショッピングモール

中国からの資本流出が加速するなか、それを助長する利下げや通貨供給拡大など金融緩和の余地はなくなりつつあるようです。

2022年前半には預金準備率や実質的な政策金利である最優遇貸出金利(LPR)などが引き下げられました。その後も金融緩和による景気の下支えが期待されたのですが、足元にかけて状況が急速に変わっています。

5月に実施された利下げは住宅需要の喚起(5年物LPRは住宅ローン金利の基準金利)に限定されました。人民銀行の易総裁(6月27日付Bloomberg News)と鄒貨幣政策局長(7月13日付Bloomberg News)は、実質金利はすでにかなり低いほか、国内銀行間市場の流動性は十分であることから、中国人民銀行が先行き利下げを実施する可能性が低いことを示しています。

足元にかけて中国経済は持ち直しているものの、ゼロコロナ政策によって大きなダメージを負っています。回復ペースを強めるためには、政策支援が必要です。

しかし、7月19日、李克強首相が「中国が大規模な刺激策を講じたり、通貨を過剰発行したり、あるいは過度に高い成長目標を誇示したりすることはない」とコメントしており、2022年の経済成長率目標「+5.5%前後」に必ずしもこだわらない意向が示唆されました。

以上を総じてみると、中国当局は資金流出が中長期的な経済発展に悪影響を及ぼす事態を回避すべく、当面、景気対策としての金融緩和は実施しないというよりも、緩和しても効き目がいどころか資本流出がさらに加速するだけなので、やりたくてもできないというのが実情のようです。

中国は「流動性の罠」にはまり込んでいるようです。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
中国共産党中央政治局、当面の経済情勢と経済活動を分析研究する会議を開催―【私の論評】「流動性の罠」と「国際金融のトリレンマ」で構造的に落ち込む中国経済!(゚д゚)!

中国共産党中央政治局は28日に会議を開催した

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国共産党中央政治局は28日に会議を開き、当面の経済情勢を分析・研究し、下半期の経済活動を手配したことを掲載しました。

以下にこの記事より一部を引用します。

この会議では、成長押し上げに向けた新たな刺激策、投資と消費に破滅的な打撃を与えているコロナ封鎖の緩和、そして何より重要な不動産市場に対する締め付け解除について、何も決定されませんでした。

それどころか、中国指導部は今年の成長目標について、事実上の撤回に動いた。秋に異例の3期目続投を目指す習近平国家主席にとって政治的に重大な年に、中国経済が直面する逆風を暗に認めたと言えそうです。

以下にこの記事の結論部分を引用します。

流動性の罠」にはまった現在、これを解消しようとして金融緩和をしても現状では効き目がなく、かといって金融緩和を継続し続けると、「国際金融のトリレンマ」によって、資本の海外逃避や、不況下のインフレ(スタグフレーション)が起こったりで、何らかの不都合が起こるため、それもできません。

今後、何かを根本的に変えないと、中国経済は低迷し続けることになります。少しうがった見方かもしれませんが、中国政府はすでにこのことに気付いているため、それをカモフラージュするため、「ゼロコロナ」政策に固執しているようにみせかけ、経済の落ち込みは主にこれによものとみせかけ、時間稼ぎをしているのかもしれません。

ただ、いくら時間稼ぎをしたとしても、何かを根本的に変えないと、中国経済は今後成長する見込みはなさそうです。

この秋に中国共産党第20回党大会を控え、習近平政権は内憂外患の危機に直面しています。国内には習政権の新型コロナウイルス対応に対する不満が噴出し、経済は急減速し回復の見込みもなく、外交面ではロシアのウクライナ侵攻以降、中露の同一視に基づく対中包囲網の形成が進んでいます。

このような、情勢は第20回党大会で異例の3期目を迎えるであろう習近平総書記に、さまざまな試練を突き付けています。
中国が、「国際金融のトリレンマ」から抜け出し自国都合で自由に金融政策である「独立した金融政策」をできるようにするには、固定相場制から「変動相場制」に変えるか、「自由な資本移動」の禁止のいずれかを実行しなければなりません。

中国は現在のところ、中途半端な「資本移動規制」をして、急場をしのごうとしていますが、これは単なる弥縫策にすぎません。海外への資本逃避も含む「資本移動」をできなくすれば、独立した金融政策はできるようになるかもしれませんが、一帯一路などの海外投資もまともにできず、海外からの投資も期待できなくなります。

であれば、「変動相場制」に変えるしかないのですが、それも元がかなり安くなることが予想され、怖くて踏み切れないというのが実情なのでしょう。

しかし、このままでは、たとえコロナが終息したとしても、中国経済が回復する見込みはありません。「変動相場制」に移行するなどの、大胆な改革を行わない限り、金融緩和をしようにも何らかの不都合が起こることになりできないので、雇用は悪化しても対策を打てず、中国経済は「心肺停止」から「死」へと向かうしかありません。

過去には、中国経済は何とか中国政府の弥縫策によって乗り越えてきましたが、今回ばかりは、有効な弥縫策はないようです。このままいくとますば中国がデフォルトすることになるかもしれません。それでも根本的な改革をしなけば、中国経済は崩壊することになるでしょう。

それでも、中国は過去もそうだったように、国民を人民解放軍で弾圧して表向きは何もないかのように装うでしょうが、それにもいずれ限界がくることになるでしょう。

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2022年8月3日水曜日

ウクライナ戦争下でもNATOが意識する中国の動き―【私の論評】将来は、日本等がAUKUSに加入し拡大版AUKUSを結成し、NATOと連携し世界規模の集団安全保障体制を構築すべき(゚д゚)!

ウクライナ戦争下でもNATOが意識する中国の動き

岡崎研究所

 7月5日付のResponsible Statecraftのサイトで、米ケイトー研究所のバンドウが、北大西洋条約機構(NATO)が中国に目を向けるのは早すぎる、欧州は対ロ防衛能力の拡大に焦点を当てるべきだと述べている。


 バンドウ(レーガン政権の大統領補佐官、現在保守系シンクタンクのケイトー研究所に所属)は、先般のNATO首脳会議が中国の脅威を取り上げたことが余程不満なのか、種々批判をする。同氏は、「NATOは対ロシア防衛能力の拡大に焦点を当てるべきだ。このプロセスが完了したならば、中国を潜在的敵対国リストに加えればよい。その時まで、欧州はアジア太平洋パワーだと振舞うことは止めるべきだ」と主張する。

 更に「対ロシア防衛につき未だ真剣にやれないのに、遠くのもっと手ごわい大国に対決することは出来ないだろう」、「NATOはアジア太平洋で何をしようというのか」と言う。その上で、当面、欧州とアジアの協力は、NATOではなくEUや加盟国が、人権、サイバー、供給網、貿易や経済圧迫の分野でやるべきだとする。

 しかし、今年の首脳会議が、日豪韓NZの首脳を招き、中国の「システミックな挑戦」を新たな戦略概念に規定し、アジアとの協力に言及したことは、大きな意味がある。それは早過ぎるどころか、時宜に適っている。

 今日ほど、世界の安全保障が不可分になっていることはない。中国は増大する国力を攻撃的な膨張主義に転化し、ウクライナ戦争で中露は連携を強く維持している。

 仮に台湾有事になれば、それはグローバルな問題でありグローバルな対応が必要になる。NATOが中国とインド太平洋に関心を持つことは、良いことであり、必要なことである。

 バンドウの議論はNATOの優先順位論かもしれないが、今年のNATO首脳会議の意義を過小評価することは適当でない。寧ろここ10年余の欧州の中国への経済傾斜については、NATOがその安全保障上のリスクを指摘しても良かった位だ。

 岸田文雄首相が選挙運動中にも拘わらずNATO首脳会議に出席したことは、良かった。今後米豪等と連携してNATO、欧州との関係を着実に強めていくべきだ。また英仏独等が個別に演習等でアジア太平洋に来ることを一層慫慂(しょうよう)していくべきだ。

 もう一つこの記事で注目したのは、ロシアのウクライナ侵攻に至る冷戦後の西側の対応につきバンドウが批判的であることだ。屡々プーチンが述べてきた安全保障上の懸念を「無視」し、「一連の同盟国の確約に違反して」NATOを東方に拡大した、プーチンとの交渉も拒否してきたと言い、それ故今回ウクライナ侵攻は正当化されるものではないが「驚くべきことではない」と言う。

 「確約」と言うのは恐らくゴルバチョフがNATOは東独以東には拡大しないとの約束があったと後日述べたことを指しているのであろう、しかし、たとえそうであっても書面の約束がある訳ではない。しかしバンドウの指摘は、今回何故ウクライナ戦争が防げなかったのか、抑止できなかったのかという重要な点に関係する。

 いずれ歴史家等が議論するであろうが、過去20年の間双方の間で現実主義的な話し合いや交渉が不十分だったのではないかとの感は否めない。それが二核大国の間の不満であれば尚更である。

欧州の防衛努力は不足している

 議論をすれば、何らかの対応が図られたかもしれない。当時西側はプーチンの不満の彼にとっての深刻さを正しく理解していたのだろうか。

 バンドウの批判は、アジアとの協力というよりも欧州加盟国の防衛努力不足に対する苛立ちから来ているように見える。大西洋主義者や共和党関係者は総じて欧州の防衛努力の不十分さには大きな不満を持ってきた。

 バンドウはオバマ民主党政権によるアジアへのピボット政策を批判しているのかと思ってみた。しかしそうだとしたらバンドウは間違っている。今や中国はロシア以上の構造的リスクになっている。米国とて、持てる資源は有限であり、優先順位に従って行動するしかない。そうであればアジアへのピボットは不可欠だ。

【私の論評】将来は、日本等がAUKUSに加入し拡大版AUKUSを結成し、NATOと連携し世界規模の集団安全保障体制を構築すべき(゚д゚)!

今回の6月の首脳会談について、ここで振り返っておきます。


6月29日北大西洋条約機構(NATO)はマドリードでの首脳会議で、冷戦終結後で最大規模となる欧州での兵力増強に合意しました。

ロシアのウクライナ侵攻に対応し、「即応部隊」を30万人余りに増強するとともに、米ステルス戦闘機F35飛行隊の追加配備などで欧州の防衛体制を強化します。フィンランドとスウェーデンの加盟もほぼ確実となりました。これまで2カ国の加盟に難色を示していたトルコが支持に回りました。

NATO首脳はまた、中国の軍事力増強を「挑戦」だと初めて特定。中国に対抗できるアジア太平洋の民主国家との関係強化を図ります。今回の首脳会議には岸田文雄首相のほか、韓国とオーストラリア、ニュージーランドの首脳が招待されました。

NATO首脳会議に初めて日本が参加した意義としては、ヨーロッパとアジア太平洋の安全保障は密接に結びついているという意識が共有されたことが大きいとです。特に将来、中国の力による現状変更への危機感をヨーロッパが言及したことに意義があるといえます。

そして「ロシア・中国」VS「NATO・パートナー国(日本)」という新たな冷戦構造が構築されたともいえるでしょう。米国がかつてほどのスーパーパワーがなくなりつつある今、新冷戦構造の中での日本の立ち位置が問われているともいえます。

NATOの新たな「戦略概念」は、ロシアがウクライナで戦争を開始し、中国が太平洋で軍事力を強化しつつある新たな時代が始まったことを告げています。


バイデン米大統領は今回の首脳会議を「歴史をつくるサミット」と呼び、ポーランドに常駐部隊を置き、ルーマニアとバルト3国での米軍の態勢を強化すると表明しました。

NATOはウクライナに侵攻したロシアをNATOの安全保障に対する「最も重要かつ直接的な脅威」だとする一方、中国は「体制上の挑戦」と明記。今回採択された戦略概念は今後10年の優先課題を示しています。

新しい戦略概念は2010年に採択して以来約12年ぶりです。これまでの戦略概念はロシアとの関係を「戦略的パートナーシップ」と呼ぶ一方、中国には触れていませんでた。新概念はロシアを「最も重要で直接の脅威」と定義。ウクライナに侵攻し、NATOと対立を深める現状を映しました。

中国について、核兵器の開発に加え偽情報を拡散したり、重要インフラ取得やサプライチェーン(供給網)を支配したりしようとしていると分析。宇宙やサイバー、海洋で、軍事的・経済的な影響力を強めていると主張しくした。中露が、ルールに基づく秩序を破壊しようとしていることは「我々の価値と利益に反している」と強調しました。

ストルテンベルグ事務総長は記者会見で「中国の威圧的な政策は、我々の利益、安全、価値に挑んでいる」と戦略概念と同様の表現で訴えました。中露の位置づけを大きく変えたことで、米欧の軍事同盟であるNATOは歴史的な転換点を迎えました。

戦略概念はインド太平洋地域の情勢が「欧州・大西洋に直接影響することを考えると、同地域は重要だ」として、対話と協力を深める方針を明記した。

トラス英外相は「中国がウクライナを注視していることをわれわれは認識している」と述べ、中国政府がロシアのように台湾侵略など「壊滅的」誤算をし得るという「リアルなリスク」があると指摘しました。

NATOは近年、かなり弱体化していました。だからロシアはウクライナ侵攻を決断したのです。ただ、 欧州がNATOによって、平和が維持されてきたのも事実です。ロシアはNATO加盟国には侵攻していません。

しかしロシアがウクライナを攻めたまさにそのせいで、いまNATOは非常に強力になっています。NATOは大西洋を越え、日本を含む太平洋諸国にまで拡大した安全保障体制に進化しつつあるといえます。

アジア諸国が中国の侵攻を防ぐには、民主主義国家同士で将来的には「環太平洋版NATO」をつくるべきでしょう。いきなり多国間同盟をつくるのは、利害関係が複雑過ぎて統率が取れない東南アジア諸国連合(ASEAN)で明白なように、多大な困難があります。

まずは、2021年9月に米英豪3カ国で結成した「AUKUS(オーカス)」に日本が加盟すべきです。AUKUSは、もともとは豪州が原子力潜水艦を導入するにあたって、米英が技術支援をするための枠組みという触れ込みですが、事実上は中国、ロシアに対抗する軍事同盟です。ウクライナ侵攻をきっかけに、米国は日本を含め参加国の拡大を検討し始めています。

QUAD各国の首脳会談出席のために出発する菅義偉首相(中央、当時)=2021年9月23日、羽田空港

まず、日本単独でAUKUSに加わりJAUKUSを結成するか、もしくはニュージーランド、カナダと共にAUKUSに加わるのです。次いでインド、メキシコ、そして環太平洋パートナーシップ(TPP)のメンバーと加盟国を増やしていくのです。そうすれば太平洋地域にも高い抑止力を持つ集団防衛体制、拡大版AUKUSが出来上がります。

このような世界規模の安全保障体制が出来上がれば、現在の国連など存在意義を失うことになでしょう。というより、今でも実質的に失っています。中露が国連安保理の常任理事国であること事態で、もう国連はおしまいです。

そうして、拡大版AUKUSとNATOが連携して世界規模の集団防衛体制が構築されれば、世界は凶暴な専制国家の侵略の脅威から解放されることになるでしょう。

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2022年8月2日火曜日

台湾と香港の「心をつかめ」、習近平氏が中国共産党に要求―【私の論評】米中の真の戦争は「地政学的戦争」、表のドタバタに惑わされるな(゚д゚)!

台湾と香港の「心をつかめ」、習近平氏が中国共産党に要求

中国共産党中央統一戦線工作部についての会合で演説する習近平氏(中央)

 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は2日までに、中国共産党に対して香港、マカオ、台湾の人々の「心をつかむ」ことを強く求めた。それこそが「国家を再生する」取り組みの一環だとの認識を示した。

 習氏の要求は、週末にかけて開かれた高位の当局者が集まる会合でのもの。中国共産党中央統一戦線工作部(統戦部)に向けて提示された多くの重要任務の一つだった。この組織は中国内外で影響力を獲得する任務を担う。

 国営新華社通信によると、習氏は北京での会合で統戦部について、中共が敵を打ち破るための重要な保証になると指摘。国の統治と再生のほか、国内外の全中国人を結集させ、国家再生を実感させることも請け合う組織だと強調した。

 具体的な取り組みとしては、国内において「共通性と多様性の適切なバランスを取り」「香港、マカオ、台湾、さらに海外の中国人の心をつかむ」ことを含むべきだとの見方を示した。

 香港は民主化を求める大規模な抗議行動を受けて習氏による弾圧の対象となり、現在は中国政府が統治する半自治区として運営されている。マカオでも同様の体制が敷かれる。台湾では民主主義に基づく自治が行われているが、中国共産党はこれを自国の領土とし、「再統一」を目指すと公言している。中国が台湾を統治したことは過去に一度もない。

 「複数の取り組みを通じて海外の愛国者らを強化するほか、より多くの外国人にも理解を促し、中国に対して友好的になるようにするべきだ」(習氏)

 海外に暮らす中国人向けの業務も統括する統戦部の動きについては、近年国際社会が否定的な目を向けていた。背景には、世界的な影響力の増進を図る中国に対する懸念がある。

 他方、統戦部の国内での活動を巡っては、共産党に反発する可能性のある人々を鎮圧する手段と長く目されてきたが、ここにも国際社会からは否定的な見方が出ている。その権限によって特定の宗教や民族に属する集団を弾圧していると考えられているためだ。

 習氏は統戦部の任務として、「民族問題」において「中華民族への強い共同体意識を育てる」ことに言及。また各宗教に関しては「中国的な背景の中で」発展させていく考えを示した。人権擁護の活動家などからは、このような認識の一環として最近特定の宗教や民族に対する弾圧が行われていると非難する声が上がっている。

 習氏はさらに「中華民族の全ての息子たち、娘たちを1つにする」必要性も強調。専門家によるとこの言葉は共産党の構想を指しており、中華民族であればたとえ中国籍を持っていなくても全員を結び付けるというのがその主旨だという。

 この構想に対しては反発する中国系住民もいる。とりわけ物議をかもしているのは、一部の西側諸国で中国系の人々が不当な取り締まりの標的にされているとの見方が出ている点だ。これらの国々では、中国によるものとみられるスパイ行為の封じ込めに取り組んでいる。

【私の論評】米中の真の戦争は「地政学的戦争」、表のドタバタに惑わされるな(゚д゚)!

現在、中国はペロシ氏が実際に訪台すれば軍事的な対応をすると警告を出しています。対応の内容は特定していないものの、2大経済大国の間の危機の引き金になりかねないなどと報道されています。


中国の習近平国家主席は先週の首脳会談でバイデン米大統領に対し、台湾問題で「中国の国家主権と領土の一体性を断固として守る」とし、「火遊びをする者はやけどを負う」と語ったとされています。

中国が全面的な台湾侵攻を計画している兆候はほとんどないですが、外国の当局者による過去の台湾訪問の際、台湾の防空識別圏(ADIZ)に中国軍機の大規模侵入があるなどしました。

台湾のテレビ局TVBSは、多数の中国軍機が1日午前に台湾海峡の中間線に接近したと伝えるとともに、台湾の複数の軍艦も通常任務を展開していると付け加えました。

台湾の複数のメディアによると、中国海軍の空母「遼寧」と「山東」を中心とする2つの艦隊が2日までに、母港のある青島と海南島を離れたという。台湾海峡に向かっているのかどうかは不明だが、ペロシ下院議長の動向に合わせた動きとみられます。

空母「山東」
また、2日午前に台湾の桃園国際空港に対し「ペロシ氏の台湾訪問を阻止するため3つの爆発物を設置した」との脅迫メールが届いたという。これまでのところ爆発物が見つかったという発表はないが、警察が警備を強化しメールの発信元を調べている。
米海軍は2日、台湾東方のフィリピン海に空母を含む艦艇4隻を配備していることを明らかにした。「通常の」配備と説明している。

配備されているのは、空母「ロナルド・レーガン」、ミサイル巡洋艦「アンティータム」、駆逐艦「ヒギンズ」、強襲揚陸艦「トリポリ」。

海軍関係者はロイターに対し匿名を条件に「万一の事態に対応できるが、通常の配備だ」とし、正確な場所についてはコメントできないと述べたそうです。

以上、ペロシ訪台を巡ってのドタバタを掲載しましたが。これは、本当にドタバタです。なぜなら、ペロシが訪台するかもしれないと公表されている最中、習近平(シーチンピン)国家主席は中国共産党に対して香港、マカオ、台湾の人々の「心をつかむ」ことを強く求めているのです。

習近平が、もし本気でペロシが訪台すれば、軍事的報復に打って出ると考えていれば、いずれの会議においても台湾の人々の「心をつかめ」などと言う必要性など全くありません。

習近平として、恫喝は恫喝、本心は本心と使い分けているのかもしれませんが、これは本当に不自然です。それに、中国外務省の華春瑩報道官は2日、予想されるペロシ米下院議長の台湾訪問について、米国と連絡を取り合っていると述べました。

これは、結局米国のペロシ訪問を受けて、中国はこれに対して反対したり恫喝したりするものの、恫喝は恫喝であり、中国も本気ではないし、米国もそれを重々承知しているとみるのが妥当だと思います。

このうよな事実を見聞きしても、私自身はあまり不思議には感じませんが、これを不思議に感じる人も多いかもしれません。そうい人には、ある情報が欠けているのかもしれません。それは、中国は当然のことながら、米国でもあまり報道されませんので、仕方ないことなのかもしれません。

それは一体どのような情報であるかといえば、それはこのブログにもいくつか掲載したことがあります。その代表的なものの記事のリンクを以下に掲載します。
ペロシ米下院議長、アジア歴訪を発表も訪台は明示せず 割れる賛否―【私の論評】ペロシの台湾訪問は米国による対中国「サラミスライス戦術」の一環(゚д゚)!
米オハイオ級攻撃型原潜
中国はASW(Anti Submarine Warfarea:対潜戦)においては日米に著しく劣る中国海軍には、これに対抗する術はほとんどありません。中国軍は、米攻撃型原潜が台湾沖に恒常的に潜むことになり、米軍がそれを公表する事態になれば、第三次台湾海峡危機(1995年-1996年)において、米軍の空母に対応できず、軍事恫喝を継続することができなかったときのように、再度米国の攻撃型原潜に屈服することになります。

これについては、米国の著名な戦略家、ルトワックも台湾有事には米軍は攻撃型原潜を2、3隻攻撃型原潜を台湾沖に派遣(ブログ管理人注:年中休みなしに24時間体制するなら、2〜3隻は必要という意味と考えられる)すれば、十分防衛できると主張しています。台湾有事に、わざわざ空母打撃群などを最初に派遣して、中国軍に大きな標的を与える必要性など全くありません。

一部の米評論家は、この事実を見ようともせず、米国がやっていることはまだ十分ではない、米国は台湾に軍隊を駐留させるか、あるいは習近平氏により明確な公開警告を発するべきと信じているようです。

しかし、米軍の海戦能力が中国を遥かに凌駕している現在、「曖昧戦略」は取り消しても良いかもしれませんが、それ以上は必要があるとは到底思えません。無論、サラミスライス戦術が功を奏して、台湾に米国が軍隊を駐留させても良いとか、習近平にはっきりと警告を出しても良い時期が来た場合には、すべきとは思います。

米軍に中国に比較すると、圧倒的に強い対潜水艦戦能力を有しているので、海戦ということになれば、未だに中国は米国の敵ではありません。

実際に、米中が台湾を巡って武力衝突したとすると、米国は台湾近海に派遣した攻撃型原潜から大量にミサイル、魚雷を発射し、瞬時に台湾海峡に存在する中国艦隊、航空機のほとんどは壊滅、それだけではなく、 中国軍の台湾侵攻に用いる、防空施設、監視衛星要施設を破壊します。

これで、事実上中国の台湾攻撃部隊は、ほとんど壊滅しますが、それでも足りなければ、米軍は、二次攻撃、三次攻撃もするでしょう。これで、中国海軍と関連施設は崩壊するでしょう。

そのようなことになるのは目に見えているので、中国が台湾に武力侵攻できる見込みはほとんどありません。

ただ、米中が台湾を巡って軍事的に対立した場合、米軍によって中国の台湾侵攻を阻止することはできるものの、中国は台湾に向けてミサイルを多数発射するかもしれません。場合によっては、核ということも考えられます。

それどころか、日本や韓国も攻撃するかもしれません。そうなるとかなりやっかいです。ですから、米国としてもできれば、中国とは直接武力衝突をしたくないと考えているでしょう。

このブログでも何度も述べきたように、米国と中国の真の戦場は、経済とテクノロジーの領域にあります。なぜなら、軍事的には中国はいまだ米国に対抗できる力がなく、外交戦略においては、中国に対峙しているのは、米国一国ではなく、すでにより広範な反中国同盟だからです。

さらに、米国も中国を武力で追い詰めれば、中国の核兵器の使用を誘発し、中国が核を使えば米国もそれに報復することになり、エスカレートして終末戦争になることは避けたいと考えているからです。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえば過去に英国がアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

そうして、習近平が、"香港、マカオ、台湾の人々の「心をつかむ」"と語ったことも、これと密接に関係しています。要するにこれらの地域の、漢人はもとより、中国に親和的な人々の心をつかみ、「地政学的な戦い」の強化を図れということなのです。

上の記事の結論部分は、
 習氏はさらに「中華民族の全ての息子たち、娘たちを1つにする」必要性も強調。専門家によるとこの言葉は共産党の構想を指しており、中華民族であればたとえ中国籍を持っていなくても全員を結び付けるというのがその主旨だという。

 この構想に対しては反発する中国系住民もいる。とりわけ物議をかもしているのは、一部の西側諸国で中国系の人々が不当な取り締まりの標的にされているとの見方が出ている点だ。これらの国々では、中国によるものとみられるスパイ行為の封じ込めに取り組んでいる。

と締めくくられていますが、なぜこのようなことになってしまうかとえば、2010年7月1日に施行された『国防動員法』は、「満18歳から満60歳までの男性公民及び満18歳から満55歳までの女性公民は、国防勤務を担わなければならない」「必要な予備役要員を確保する」「公民及び組織は、平時には、法により国防動員準備業務を完遂しなければならない」と規定しており、外国在住の中国人も免除対象ではなく国防勤務の対象者なのですです。

有事の際には、外国の国内の中国資本企業や中国人が所有する土地や建物が中国の国防拠点になる可能性も十分にあるのです。

さらには、中国には厄介な『国家情報法』があります。これは、2017年6月28日に施行されました。

国家の安全・利益の擁護を目的として、「国家情報工作」に関して法的根拠を与え、工作機関や工作員の権限、一般の組織や市民に対する工作活動への協力についても定めています。

『国家情報法』でも、外国国内において中国資本企業や中国人が諜報活動を行うことを、国家が保護するようにも読めます。

これについては、高市早苗氏のコラムに詳しく掲載されています。です。興味のある方は是非読んでみてください。

米中の真の戦いのフィールドは「地政学的戦争」、表のドタバタに惑わされるべきではないのです。ただし、米中双方とも、軍事的な対立が有利とみれば、そちらがわに舵を切ることも十分にありえるので、軍事衝突の可能性も捨てきることはできないですし、中国が台湾を武力で侵攻できる力をつければ、威嚇も何もせずに、速やかに武力で侵攻するでしょう。その後は尖閣でしょう。しかし、現状ではあまりにも武力ばかりが強調されすぎるきらいがあります。

いずれにしても日本を含めた自由主義陣営の国々は、「地経学的戦争」にも本気で備えるべきなのです。特に、日本では台湾有事、尖閣有事ばかりが大きく取り扱われ、「地政学的戦争」は、あまり報道されておらず、無防備、無関心な人や組織が多いことが気がかりです。

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2022年8月1日月曜日

バイデンがサウジアラビア訪問で得たものとは―【私の論評】多極化した世界秩序の中で成功した安倍外交を踏襲しようとしているバイデン大統領(゚д゚)!

バイデンがサウジアラビア訪問で得たものとは

岡崎研究所

 バイデン大統領は、7月13日から16日の日程で中東を歴訪した。ここでは、特に、サウジアラビア訪問について見てみる。


 米国とサウジとの関係は、バイデンが軽率にも大統領選挙期間中に「サウジを『のけ者』にする」と言ったり、カウンターパートはムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)ではなくサルマン国王であると言ったりして、冷え込んでいた。湾岸の米国の最大の同盟国との関係がぎくしゃくしているのは当然望ましいことではない。サウジとの関係改善自体が訪問の一つの大きな目標だったと言っても過言ではない。

 今回のバイデンの訪問で、米国とサウジとの関係は、安全保障、経済協力の両面で絆が再確認された。航空産業、防衛、工業全般、観光、インフラ、クリーンエネルギーなど広範な分野で多くの投資協力がなされることが発表された。

 バイデンの訪問に合わせて、サウジ当局は、イスラエルを含むすべての航空機に領空を開放することも発表した。これは、サウジとエジプトの間で領有権を争っていたティラン島をイスラエルに引き渡す合意において、引き渡しにはイスラエルの承認が必要だったところ、米国の仲介により7月14日にイスラエルが承認したことへの見返りとされる。

 イスラエルとサウジの関係改善を示す象徴的な出来事だったと言える。米国はイランの脅威を念頭にイスラエルとアラブ諸国が関係正常化と協力強化に向かうことを望んでいる。

 原油増産については確約を得ることができなかったが、いずれサウジが75万BD、UAEが50万BD、計125万BDを増産することが了解されているとの説もある。

バイデンのサウジ訪問につき米国内ではメディア、民主党左派、保守党、人権活動家等から強い批判が沸き上がっている。バイデン擁護論はほとんど見られない。

人権だけで外交はできない

 リベラル派は、反体制ジャーナリストのカショギ氏の殺害に深く関与したとされるMBSにバイデンが甘い態度をとったことを非難する。特にワシントン・ポスト紙は激しく攻撃している(例えば、7月17日社説‘In the Middle East, Biden’s policy bumps into U.S. principles’)。

 しかし、今回のサウジ訪問が綿密に計画され大成功だったとは言えないが、バイデンの意図したサウジ訪問の目的は十分に理解できる。バイデンは、7月9日付けのワシントン・ポスト紙への寄稿記事‘Why I’m going to Saudi Arabia’の中で、大きな地政学的問題や世界エネルギー市場の安定化のためにサウジに行くのだと説明していた。

 バイデンとしては、サウジ訪問のリスクを承知の上で最終的に訪問に踏み切ったのであろう。バイデンに他の策があったようには思えない。

 人権の重要性は言うまでもないが、人権だけでは外交にならない。独裁者とディールしないと言うだけでは外交にならない。人権は不可避的に、レアル・ポリティーク(現実政治)と併せて取り扱わなければならない。

【私の論評】多極化した世界秩序の中で成功した安倍外交を踏襲しようとしているバイデン大統領(゚д゚)!

安倍元総理大臣も存命中に、総理大臣としてサウジアラビアを訪れています。

在任中、安倍首相は外交政策、特にアラブ諸国との関係で知られていました。安倍元総理は中東と日本の協力関係、友好関係の強化に大きな役割を果たしました。

2020年、安倍首相はアラブ諸国を視察し、サウジアラビア、UAE、オマーンを訪問しました。

同年1月、安倍首相はサウジアラビアに到着し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談し、両国の二国間関係について協議を行いました。

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談する安倍首相

同地域における日本関係船舶の安全航行のための情報収集を目的とした海上自衛隊の任務について、安倍首相は皇太子から全面的な支持を得ました。

海自のP-3C哨戒機2機は1月に任務に出発し、同じく海自のたかなみ型護衛艦は2020年2月2日に中東に向けて出港しました。

その際、両首脳は地域の安定と平和を確保するための努力を維持することに合意しました。

王国訪問中、安倍氏はナバティア人の遺跡であるアル・ウラーを視察した。これは、UAEとオマーンに向かう前の最後の訪問地となりました。

また、リヤドではサウジアラビアのサルマン国王と会談し、サウジアラビアが主催する「20カ国・地域(G20)」の成功に向けた協力関係を確認しました。国王は約40分間の会談で、日本と同国がエネルギー分野だけでなく、様々な分野で戦略的パートナーシップを深めていくことへの期待を表明しました。

UAEでは、アブダビ首長国の国軍副司令官シェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド皇太子が安倍首相を迎え、地域の緊張緩和のための外交関係強化に向けた取り組みについて協議しました。

安倍首相らはまた、アブダビ最高石油評議会(SPC)との間で交わされた「UAE-日本戦略的エネルギー協力協定」の調印に立ち会いました。

UAE国営通信WAMによると、この協定はアブダビ国営石油会社(ADNOC)と日本の資源エネルギー庁によって提示され、日本国内の貯蔵施設に800万バレル以上の原油を備蓄するためのものでした。

安倍首相のアラブ歴訪の最後の目的地はオマーンであった。スルタン・カブース前国王の死去に伴い就任したハイサム・ビン・タレック国王と会談しました。

ハイサム・ビン・タレック オマーン国王と会談する安倍首相

安倍首相はスルタン前国王の死去に哀悼の意を表しました。また、地域の安定のために協力し、二国間関係を発展させることで合意したと、日本外務省の声明は述べています。

2015年、安倍首相はエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪問し、中東の主要国との友好関係を再確認しました。

安倍首相は、地域の安定に不可欠なイスラエルとパレスチナの和平の実現に向けた働きかけを行いました。

ヨルダンでは、ダーイシュ対策の最前線にいる同国を支援することを約束した。

日本とヨルダンは、皇室と王室の緊密な関係に基づく極めて友好的な関係にあり、両国首脳の間で活発な交流が続けられています。

ヨルダンのアブドッラー2世国王と安倍首相は、両国の戦略的関係をさらに発展させ、平和と安定の推進に協力していくことを再確認しました。

その際、安倍首相はイスラエルとパレスチナにおける暴力と不信の連鎖に懸念を示し、紛争をエスカレートさせる可能性のある行動を避けるよう要請しました。

また安倍氏は、イスラエルが実施しているパレスチナ自治区への税収返還の停止について見直しを強く要請し、国際法に違反する入植活動の停止も要請しました。

2015年に行われたパレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領との会談では、安倍首相は、二国間解決に向けた1億ドルの支援など、パレスチナの国づくりに向けた日本のコミットメントと支援を強化する意向を直接伝えました。

また、国連や国際機関において外交的措置を講じているパレスチナに対し、交渉再開や中東和平に向けた努力を阻害するような行動をとらないよう要請しました。

「アベノミクス」という言葉は、2012年に安倍首相が日本経済をデフレから脱却させるために実施した経済政策から生まれました。日本は、安倍首相在任中にも2度も消費税増税をしたこともあり、デフレから未だ完璧には脱却していないものの、在任中に400万にもの雇用を新たに創造しました。安倍首相が就任した2012年当時、日本はまだ2008~2009年の不況から立ち直っていない時期でした。

また、2020年の東京オリンピックを勝ち取るために大きな役割を果たしたのも安倍元首相です。

人気ゲームのキャラクター「マリオ」に扮し、リオ五輪閉会式に登場した安倍晋三首相

安倍首相は2020年8月下旬、持病を理由に突然の辞任を届け出ました。同氏は、世界中の外国人指導者との個人的な関係や、サウジアラビアのサルマン国王、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子などアラブの指導者との強い結びつきで知られていました。

中東の対立構造はもはや、一昔前のイスラエル対アラブ諸国ではありません。「力による現状変更を現在進行形で実践しているイラン」対「中東地域の安全、安定、国家の主権、独立を保持したいその他諸国」というかたちへの地域再編が進んでいます。

世界は二極化ではなく多極化しています。多極化した世界秩序の中で国益を守るためには、「どちら側」とも取引をしなければならないと考える国が少なくないという現実を直視し、外交を実践したのが、安倍首相であったとえると思います。こうした、従来の外交とは異なる安倍外交を日本もこれからも継承すべきです。

まさに、人権を不可避的に、レアル・ポリティーク(現実政治)と併せて取り扱ったのが安倍元首相であったということができます。

これを実行しようとしている、バイデン大統領の今回のサウジアラビア訪問、一定の評価ができると思います。

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