2019年2月19日火曜日

バブル崩壊後の日本がマシに見える中国のこれから―【私の論評】中国のディストピアはさらに苛烈になり地獄をみることになる(゚д゚)!

バブル崩壊後の日本がマシに見える中国のこれから

政治体制はそのまま、悲惨なディストピア時代へ

2017年2月27日、中国の新疆ウイグル自治区ウルムチで
1万人以上の武装警官が大規模な軍事パレードを行った

崩壊すると言われながら長い間崩壊しなかった中国経済がついに崩壊し始めた。一時は、「中国崩壊説の崩壊」などと揶揄されていたが、やはり不自然なことはどこかで限界に突き当たる。

 バブル崩壊後の中国について考えてみたい。それには日本のバブル崩壊がよい教材になる。

 中国の経済発展と日本の発展はよく似ている。(1)官僚主導、(2)低賃金労働を武器にした輸出主導、(3)技術を盗んだと欧米から非難されたこと(中国は日本からも非難された)、(4)末期に不動産バブルや過剰融資、それに伴う金融不安が問題になったこと、(5)いずれ米国を抜いて世界最大の経済大国になると言われたことまで、そっくりである。

 そう考えれば、中国が今後どのような道を歩むかを考える上で、日本のバブル崩壊後の歴史が大いに参考になる。

ワンレンボディコンが踊り狂った日本のバブル

 中国経済成長は日本より25年から30年程度遅れている。中国の2019年は日本の1989年から94年に相当する。歴史に完全なコピーなどはないから、5年程度の誤差は仕方がない。

 現在の中国が日本の90年代前半と同じような段階にあると考えると、“爆買いから、こと消費”などと言われていることも合点がゆく。プラザ合意(85年)で円が強くなると、多くの日本人はヨーロッパに出かけて、ルイ・ヴィトンやグッチ、セリーヌなどブランド製品を買いあさった。しかし、90年代の中頃に入ると買い物には飽きて、秘境(たとえば電波少年と猿岩石、96年から)やヨーロッパの田舎を訪ねることがブームになった。

 日本のバブルを語る上で忘れてはならないのはディスコの「ジュリアナ東京」であろう。若者、特に女性がワンレンボディコンと呼ばれるバブルを象徴するファッションで「お立ち台」と呼ばれる舞台に登り、朝まで踊り狂った。

 ジュリアナ東京は91年に開店し94年に閉店している。経済的なバブル崩壊は90年なので、ジュリアナ東京が開店したのは厳密にはバブル崩壊後である。だが、多くの市民はバブルが崩壊しても、バブルは永遠に続くと思っていた。

コンサートとディスコを合体させたパーティーの「お立ち台」で、
思い思いの衣装を着て踊る女性たち =1994年8月29日、東京ドーム

 しかし、さすがに94年になると皆がこれはおかしいと思い始めた。日本人全員がバブル崩壊したと確信したのは山一証券などが倒産した97年であろう。

経済が変曲点を迎え、政治も官僚機構も変革した日本
 昨今、中国の電子工業界からの受注が急減したと言われるが、その一方で、日本製の高級化粧品の売り上げは伸びている。また、訪日客も増えている。この現象は、日本の1990年代初頭を思い浮かべれば、容易に説明がつく。

 あの時期、日本政府は景気を回復させようと躍起なって公共事業を行ったが、中国も同じことをやっている。だから、鉄鋼やセメントなどの需要は底堅い。

90年代の日本を語る上で最も重要なことは、政権が大きく揺れ動いたことだ。55年の保守合同以来、初めて非自民政権(細川政権、93年)が誕生した。94年には、現在の政治状況を昭和とは大きく異なるものにした衆議院の小選挙区制度が作られた。その後、自民党は政権を取り戻すために長年の政敵である社会党と連立を組み、首班が社会党の党首になるという驚愕の事態が出現した(94年)。

 高度経済成長を牽引したとして絶賛されてきた官僚機構が、新たな状況に対応できていないとして批判にさらされた。ノーパンしゃぶしゃぶ事件(98年)などによって、多くの官僚が処分され、官僚は地位も権力も失っていった。官僚の中の官僚と言われた大蔵省は特に強く攻撃された。金融部門を分離されて、名称も歴史と伝統を誇る大蔵省から財務省という一般的な名称に変更させられた(2001年)。もはや多くの官僚にとって、昭和の日本では当たり前だった「天下りで美味しい老後」など、夢のまた夢だろう。

 経済が変曲点を迎えると、政治も官僚機構も変革を余儀なくされた。日本は21世紀の日本にふさわしい理念として「官から民へ」「規制緩和」「内需主導」などを選び、それに対応する体制が求められた。

中国のバブル崩壊が政治変革につながらない理由

 中国共産党による経済運営は、地方政府の財政赤字、無駄な公共事業、非効率な国営企業などによって立ち行かなくなっている。そのあり様は、見方によっては昭和の日本にそっくりである。そのために、その改革の方向は日本と同様に「官から民へ」が主要な課題になろう。

 ただし、中国の今後を考える上で重要なことは、体制の受益者が日本とは異なることだ。

 日本には曲がりなりにも民主主義が定着していた。政治の受益者は国民である。選挙がある以上、国民に不人気な政権は存続できない。だから、バブルが崩壊した時に国民から大きな変革を求められると、政治も官僚機構も変革せざるを得なかった。

 現時点において、我が国において改革が十分に進んだと思っている人はいないと思うが、それでも多くの制度は昭和とは異なったものになっている。現在を生きる日本人にとって「平成」は不本意な時代であったが、後世において、それほどの混乱なくして新たな体制を作り上げた偉大な時代と評価されるのかも知れない。

 一方、共産党独裁が行われている中国はここが大きく異なる。中国の政治体制の受益者は約9000万人とされる共産党員である。共産党員の中の有力者は、政府、地方政府、人民解放軍、武装警察、そして国営企業の幹部として美味しい思いをしている。その幹部は日本のサラリーマンが想像できないほどの所得を得ており(反汚職運動が喧伝されているが、それでも相変わらずグレーな収入が多い)、かつ各種の特権を謳歌している。そんな共産党幹部(全共産党員の5%と仮定しても450万人もいる)を支持基盤として習近平政権が成立している。

 選挙がない中国では、バブルが崩壊しても、それが政治変革につながることはない。経済が低迷すれば習近平のやり方に文句のある連中(非主流派である共青団や江沢民派)の発言権は増すことにはなろうが、彼らが政権を取ったところで、共産党員が享受している利権を台無しにするような改革はできない。習近平が国営企業を重視する所以もここにある。ゴルバチェフがソ連を改革できなかった理由もまたここにある。

民衆の不満を徹底弾圧、ディストピア化する中国

しかし、何もできずに手を拱いていると、共産党員でさえも共産党ではダメだと悟るようになる。そうなれば、旧ソ連のように共産党体制が崩壊することになろう。

 とはいえ、それには時間がかかる。それまでは習近平、あるいは次の独裁者が無理矢理にこれまでの体制で突っ走って行かざるを得ない。

 今後、不動産価格が下落し、企業倒産が増え、給料が上がらず、失業者が増えれば、多くの人々が政権に不満を抱くだろう。しかし、選挙はないから民衆は政権を変える手段を有さない。デモを行うことも、政治集会を行うことも許されていない。

 習近平は自分と自分の家族、そして共産党を守るために文句を言う人々に対して徹底的に強硬な手段に出る。中途半端では、かえって反発が強くなる。そして、一度、強硬な手段を取ると後戻りできない。ある中国人は、現在、新疆ウイグル自治区で行われている非人道的な政治は、実験であり、いずれ中国全土に波及することになろうと言っていた。

 今年の春節は700万人もの中国人が海外で過ごした。日本各地を呑気に観光してバブル末期の生活を謳歌していた中国人たちも、バブル崩壊に伴い所有する不動産価格が下落したり経営する会社が破綻したり、また失業する可能性がある。その際に、政権への不満をちっとでも漏らそうものなら、インターネットを監視して盗聴器を張り巡らしている当局によって拘束されて、学習施設(収容所)に連れて行かれることになろう。そこで習近平思想を徹底的に学ばされる。これから中国に、とんでもないディストピアが出現する。

 これは悪意に満ちた予想だと思われるかも知れない。しかし、独裁の欠点を知れば、それほど的外れな予測とは言えない。今後、中国で大きな悲劇が発生した時、我々はウインストン・チャーチルの名言「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば」という言葉を思い起こすことになろう。

【私の論評】中国のディストピアはさらに苛烈になり地獄をみることになる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、納得できる部分もありますが、納得できない部分もあります。納得できない部分は、上の記事ではこれから中国のディストピアが始まるということですが、中国は元々ディストピアだということです。

中国は、建国以来毎年平均2万件もの暴動が発生したと言われています。2007年くらいからは、10万件以上ともいわれていますが、あまりの多さに政府は暴動の発生件数の統計をこのあたりから公表しなくなりました。最近では20万件ともいわれています。

中国の人口は13億、日本の人口は1億2千万人ですから、中国の人口は日本の約10倍です。毎年2万件といえば、日本に置き換えると毎年2千件の暴動が起きていたという計算になります。365日で割ってみると、毎日どこかで5件暴動が起こったということになります。

中国で10万件なら、日本では1万件ということになます。1万件を365日で割ってみると、1日27件暴動が起こったことになります。

これは、半端な数ではありません。もし、日本がこのような状況になれば、最早暴動ではなく内乱状態といっても良いくらいです。これは、最早ディストピアと呼んでも良い状況です。

ちなみに、澁谷 司(しぶや つかさ)氏によれば中国の暴動発生件数は以下のようなものです。
1993年が   約8700件   (一日あたり約24件)
1994年が  約10000件
1999年には 3万2000件
2004年には 7万4000件
2005年には 8万7000件
2006年には 9万件を超えた。
 それ以降、共産党は件数を公表しなくなりましたが、内部情報によると2011年には、約18万件の集団的騒乱が発生したそうです。

数値の信憑性はともかく、とにかく、とてつもないほどの件数の暴動が中国では発生しているということです。日本での状況を考えると、これはもうディストピアと呼ぶに十分です。

2012年10月27日 中国の遼寧で起こった数千人規模のデモ

それと、日本経済についてですが、ブログ冒頭の記事には何も出てきませんが、日本の平成年間では、ほとんどの期間において、マクロ経済政策が間違えていました。積極財政をすべきときに、緊縮財政を行い、金融緩和すべきときに、金融緩和を行うというとんでもないことをしてきました。

平成の終わり頃に、安倍政権が登場して、金融緩和はまともになり雇用は大幅に改善されましたが、財政に関しては相変わらず緊縮財政で、2014年には8%の消費税増税を実施して、大失敗しました。

これほどまでに、長期間マクロ経済政策を間違えた事例は、古今東西どこにもありません。日本だけがこのような愚かなことをしてしまったのです。そのため、日本の潜在的に成長能力はまだまだあると考えられます。

ここが、中国とは全く異なるところです。それにしても、中国の官僚ですら、マクロ経済政策をある程度まともにやってきたというのに、日本の財務省の官僚は一体どうなっているのでしょう。このあたりは、このブログではよく扱っていますので、詳細を知りたいかたは、ぜひそちらを読んでください。

さて、ブログ冒頭のような「中国経済大失速」のニュースが、世界を騒がせています。今後、さまざまなひずみが、一気に噴出してくることでしょう。

中国政府が2019年の経済運営方針を打ち出した、昨年12月開催の「中央経済工作会議」の内容が、意外に率直な自己分析であり、しかも中国経済の「患部」に比較的バランスよく触れています。



中国経済の理解や頭の整理に役立つと思うので、一部をご紹介しようと思います。

第一に、同会議では冒頭、正直に"弱音"が語られています。
今年、経済で結果を出すのは難しかった。同時に、経済運営が変化して不安定化し、外部環境は複雑で深刻であり、経済は下押し圧力に直面している。
「外部環境は、複雑で深刻」とは、もちろん「米中貿易戦争」のことを指しています。「稼ぎ頭」である輸出を干されているのですから、大ダメージです。

「下押し圧力」になっているのは、それだけではありません。

中国共産党は「アフリカ豚コレラ」の蔓延に頭を悩ませています。何百万頭、何千万頭もの豚が殺処分され、一時、豚肉の値段が急騰。現在ではそれにつられて、羊肉と牛肉も高騰しています。

こうした内憂外患により、景気が大きく落ち込もうとしています。

第二に、同会議では、その打開策として「マクロ政策は、積極的な財政政策と健全な金融政策を継続して実施する」と表明されました。

しかし、その実現性の低さが、また、中国経済の危うさをあぶり出しています。

前者の「積極的な財政政策」とは、「減税等による消費喚起」「輸出補助金(輸出還付金)で輸出を伸ばす」などを指すと思われます。しかし政府の借金は、地方政府と国有企業の負債を合わせれば、国内総生産(GDP)の300%以上もあります。カネは国庫にほとんどないのです。

そこで北京は、輪転機で人民元を盛んに刷っています。これが後者の「金融政策」です。その裏付けとして、中央銀行は米国債などの外貨準備高が豊富にあるように見せています。

しかし元はどんどん安くなっています。「1ドル=7元」が、人々が元の先行きに不安を感じて、さらに元を手放す「心理的節目」と言われています。当局は、その水準を割らないよう、腐心しています。しかしどこかで限界は来るでしょう。

つまり、落ち込む景気を下支える余力が、当局にはあまりないのです。

第三に、同会議では、「サプライサイド構造改革は清算を加速するために過剰設備産業を促進する。より質の高い企業を育成する」としています。

大づかみに言えば、売れない鉄鋼などをつくっている工場はつぶし、稼ぐ力を失った企業には退出してもらう。代わりに、本当に競争力のある企業を増やしていく。

そのために習近平政権は元来、官から民へという"小さな政府"を目指す「サプライサイド経済(学)」を標榜してきました。

しかし実際の政策は国有企業を優先し、民間企業を圧迫しています。"真逆のこと"をしているので、構造改革による経済成長など望めないでしょう。

第四に、同会議では、2019年の重点政策として7項目が挙げられました。それらは抽象的なので、一部具体策を挙げてみましょう。当局も自覚している焦りを、裏表で表しています。
(1)「ゾンビ企業」の処理を速める
本来なら倒産すべきだが、銀行や政府機関の支援で生きながらえている「ゾンビ企業」が、中国には最低でも2000社存在すると言われています。

それらが中国経済の足を引っ張っています。

しかし、「ゾンビ企業」を倒産させることは決して容易なことではありません。仮に1社当たり、5万人が勤めているとします。「ゾンビ企業」を全部倒産させたら、たちまち1億人が失業します。さらに、1人の労働者につき家族が3人いるとすれば、3億人が路頭に迷うことになります。
(2) 5G(第5世代移動通信システム)の商業ペースを加速する
ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)が、中国の発展に欠かせないことが、改めて分かります。

翻って、米国の要請で、ファーウェイの孟晩舟副会長(CFO)がカナダで身柄を拘束されたり、同日、ファーウェイと関係が深い、天才物理学者、張首晟が自殺(他殺説も浮上)したりしたのが、北京にとっていかに痛手だったかも分かります。
(3) 大学卒業生、農民工、退役軍人や他のグループの雇用状況の解決に重点を置く
彼らの雇用状況を改善しなければ、北京政府にとって脅威となります。とりわけ、退役軍人の生活改善が急務です。

習政権は新しい産業を興し、雇用を増やさねばならないです。ところが、実際、これは容易ではないでしょう。経済的な苦境は、体制の不安定化にもつながってしまうのです。

これは、このブログでは過去に何度ものべてきたことですが、中国は他の先進国のように、民主化、政治と経済の分離、法治国家がされていません。

そもそも、このようなことが確立されていないからこそ、ディストピアになってしまうのです。

中国ではAIを駆使した監視システムも開発され、一部実用化されており、まさに
ジョージ・オーエルの小説「1984」の世界が中国で実現されることになる

ただし、中国が構造改革をして、これらを推進してしまえば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊し、中国の共産党一党独裁は終焉することになります。ただし、そうなれば中国はしばらくは混乱するかもしれませんが、その混乱の後に、構造改革が成功すれば、またかなり経済発展することも可能になります。

今日の先進国といわれる国々は、国民国家を設立し、はやい時期にこれらをすすめ、経済を発展させ、強国になっています。中国は、そうなる前に、海外から多くの資金が流れ込んだため、経済だけが発展して他はなおざりで、歪な社会構造になっています。

このようなことは、中国共産党はできません。しかし、米国はそれを迫り、制裁を課しています。中国が体制を変えないなら、米国は中国が経済的に弱体化し他国に影響を及ぼすことができなくなくなるまで、制裁を続けます。

中国はそれでも体制を変えないならば、かつてのソ連のようにいずれ経済は崩壊します。そうして、中国のディストピアはますます苛烈になり、いずれ地獄をみることになります。

中国では最新のAIを駆使した、監視システムも開発しつつあり、一部実用化もしています。経済的に疲弊しつつ、とてつもない監視社会にもなるわけで、まさにジョージ・オーエルの小説「1984」で予言された、ディストピアが中国で実現されるのです。

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2019年2月18日月曜日

「台湾は中国からの武力行使にどう対処するか」古くて常に新しい問題―【私の論評】日本には、中、露、韓は放置し、台湾を支援すべき時がやってきた(゚д゚)!

「台湾は中国からの武力行使にどう対処するか」古くて常に新しい問題

岡崎研究所

 1月2日に中国の習近平国家主席は、台湾政策に関する包括的な演説を行い、「一国二制度による台湾統一」を打ち出すとともに、いざとなれば「武力行使を排除せず」との姿勢を明確にした。今のところ、中国が台湾に対し、直接武力侵攻を行う可能性は決して高いわけではないが、ここ20年間で中国と台湾の軍事バランスは大きく中国の側に傾斜した。軍事費だけとってみても、1996年には辛うじて台湾の2倍だったのが、今や15倍になっている。


台湾海岸にて。台湾への日本人観光客が増えている。特に修学旅行で行くケースが急増。

 台湾においては、中国からの武力行使の可能性に備え、いかに対処するかは古くて常に新しい問題である。一つの有力な戦略として「ヤマアラシ戦略」がある。これは、大型の戦闘機や軍艦ではなく、安価で機動力の高い小型兵器(自動制御機雷、武装ドローン、ミサイル等)により、接近してくる中国軍を沿岸部で疲弊させることを目指すものである。米国による勧奨もあり、台湾は2017年に「ヤマアラシ戦略」を含む包括的な防衛構想を打ち出している。

 他方、最新の大型兵器の保有にも意味がある。戦車、大型艦船、戦闘機は、それ自体が抑止力として働き得る。台湾人の士気を高める効果も期待できる。しかし、こうした大掛かりな武器は費用がかかる。例えば、潜水艦は、国産であっても1隻10億ドル以上するが、台湾の国防費は年110億ドルである。徴兵制から志願兵制に移行中の台湾軍は、人件費の高騰にも悩まされている。その結果、兵士は削減され、1996年と比べると15万人以上も減り、現在は21万5千人である。

 結局、台湾の防衛のカギとなるのは、台湾関係法を持つ米国と台湾との安全保障上の特別な関係ということになる。米国の潜水艦8隻により中国の水陸両用艦隊の40%を戦争開始から1週間で撃沈できるというシミュレーション結果もある

 台湾関係法に基づき、米国は台湾に防禦用の武器を売却することにコミットしている。同法に加え、昨年、トランプ政権下において、米国議会は、ほぼ全会一致で「台湾旅行法」(米台高官の交流を勧奨)、「国防授権法」(台湾の防衛力強化にコミット)を可決した。

 今後の米国の台湾に対する武器輸出が、これまでより航続距離の長い攻撃用戦闘機などを含むようになるのか、米国の軍事演習やリムパック軍事演習に台湾が参加できるようになるのか、米国の軍艦が台湾の港を使用するようになるのか、米国の海兵隊員が台湾に駐留するようになるか、というような諸点が今後の注目点となろう。

 今や、毎年3500人から4000人の米国防省関係者が台湾を訪問し、2010年以降の米国の台湾への武器売却の総額は150憶ドルを超えたという。これらのことは、米国の台湾の安全保障へのコミットメントが、着実に深まりつつあることを示している。

 なお、1月2日の習近平の演説に対し、蔡英文は直ちに「一国二制度」の受け入れを断固拒否するとともに、台湾にとって「防衛力の構築が重要政策のなかでも最優先だ」と強調した。そして、同時に「台湾の防衛力強化に協力してくれるすべての国と協力したい」と述べ、米国だけではなく、日本を含むすべての国々との安全保障協力にも期待感を表明した。この蔡英文のスピーチが特に日本の名前を挙げている点は注目を要することである。台湾の現役の指導者が、安全保障関係で日本の協力に期待する、との趣旨の発言を行ったのは、恐らく今回が初めてであろう。日本にとっては、これまでの防衛関係者同士の交流、意見交換等に加え、台湾の安全保障のために何をすべきか、何ができるか等について、台湾、米国の関係者らとよく擦り合わせ検討すべき段階に来ていると思われる。
【私の論評】日本には、中、露、韓は放置し、台湾を支援すべき時がやってきた(゚д゚)!
馮世寛前国防部長(左)

台湾で昨年5月に発足した政府系シンクタンク「国防安全研究院」は12月13日までに、中国軍が進める組織改革について「国土防衛型から外向進攻型への転換を意図している」と指摘し、台湾海峡や東シナ海、南シナ海の周辺諸国にとって「深刻な脅威」になると警告しました。

同研究院は中国や地域情勢の専門研究を目的に発足、馮世寛前国防部長(国防相)がトップを務めています。今回は「中国共産党の政治と軍事」「インド太平洋地域の安全情勢」「国防科学技術産業」に関する三つの報告をまとめました。

陸海空軍の統合作戦指揮化を柱とする中国軍の改革について、海外での国家利益の確保、軍事技術の向上、習近平国家主席の絶対的指導力確立などの思惑があると指摘。軍改革は2020年までの完成をめどにしており、それまでは軍隊の調整期にあるため台湾海峡で大規模な危機が起きる可能性は低いと分析としています。

さて、今日本が真っ先にすることは「台湾と事実上の『同盟』をいかに結ぶか」です。

日本の保守派からは、20年以上も前から「台湾との連帯の重要性」が諭されてましたが、一向に「世論」は盛り上がりませんでした。その理由は、メディアが台湾に目を向けず、ひたすら「日中・日韓」との友好・連携ばかりを言い立ててきたからですが、今、日本政府が「台湾との連携」を言い出したとしても「反対」を叫ぶ国民はごく少数に違いないです。

すでに多くの日本国民が「台湾こそが日本にとって最も大事な『友人』だ」と認識しています。特に、東日本大震災後(3・11)の台湾国民からの熱い支援は、多くの日本人の胸に刻まれています。3・11のとき、世界最大の支援をしてくれたのは台湾でした。マスコミで報じられた以外にも民間レベルで、国家レベルに匹敵する支援が行われました。

3.11の時に最大の支援をしてくれたのは他ならぬ台湾だった

高名な画家は自分の個展を開き、その売上金をそっくり岩手県の病院再建に寄付しました。日本と台湾を結ぶ航空会社と言えば、中華航空が真っ先に浮かびますが、今は台湾民族資本の「長栄」(エヴァ・エア)の便数が一番多いです。3・11の折には、長栄の長栄発会長は個人で20億円をカンパしています。

その機体には「キティちゃん」が描かれ、機内食用のプラスチック製ナイフやフォークもキティちゃんでそろえるほど日本大好きなのです。

キティちゃんが描かれた長栄航空の機体

台湾の人たちが大切にする価値観は「親切」「誠実」「清潔」「勤労」「公に尽くす」などで、こうした価値観を台湾の人々は「日本精神」、台湾語で「リップンチェンシン」と常に口にします。神奈川・座間の海軍工廠に徴用で来日した台湾少年工は、補償を要求するどころか、感謝の意を表すため高齢となってまで家族ともに来日しています。

そこへ行くと韓国は、台湾とは反対に日本に対して徹頭徹尾「怨恨」しかありません。加えて「解決済みの賠償問題を蒸し返し=たかり」「経済失政を日本にツケ回し=失業大学生を日本企業に輸出」する有様です。「徴用工判決」で痛めつけている日本企業に、韓国の「就職難民」を雇ってくれと言っているのだから、呆れてもモノも言えない。さらには、最近では自衛隊の哨戒機にレーダー照射をするという、とんでもないことをしでかしました。

「怨恨」は単なる憎悪感情ではありません。心理学者によると、「強者に対する弱者の憎悪や復讐衝動などの感情が内向的に屈折している状態」といいます。こんな国と仲良くなどと、たわけたことを言っている場合ではないです。今、日本が極東アジアで組むべき相手は台湾しかないです。

ブログ冒頭の記事にもあった、米国が昨年3月に成立させた『台湾旅行法』と同じ法律を成立させるべきです。同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官を含む米政府当局者全員が台湾に渡航し、台湾側の同等役職者と会談することや台湾高官が米国に入国し国防総省や国務省の当局者と会談することを定めた法律です。

米国は中国との国交樹立以降、台湾とのこうした交流を自粛してきましたが、これをトランプ大統領は反故にしました。ラブコールを送る友人に日本も応えるべきです。

台湾に対する支援は、覇権主義の中国、「怨恨」感情を露わにする韓国や、強欲ロシアとの北方領土返還交渉にカネを使うより費用対効果は高いはずです。

日本政府は、過去40年にもわたり合計3兆円も、中国への途上国援助(ODA)をしてきましたが、今年度を最後に終了します。

北方領土に関しては、昨日のこのブログにも掲載したように、米国の対中制裁が継続されれば、中国が弱体化し、そうなれば現在は影を潜めた中露対立が高まることになり、それでロシアは疲弊することになり、その時がまさに交渉のベストタイミングです。今はベストではありません。

本当は、ベストタイミングは以前もありました。それは、無論ソ連崩壊のときです。あのときに、日本が強力にロシアと交渉すれば、あの時点で北方領土が戻ってきた可能性は十分にありました。

中露対立が高まった場合には、その機を逃さず日本はロシアに対して強力な交渉をすべきです。

現在は、交渉の時ではないです。将来を見越して、ロシアに経済援助するなどのことは絶対にすべきではありません。

日本は、ここしばらく、中露対立が高まるまでは、中国、韓国、ロシアなどへの支援はせずに、台湾に対して支援すべきです。それが、日本の将来を左右することになります。

台湾への支援もいろいろあります。まずはTPPに加入してもらうべきです。さらに、軍事的にも、技術的にも様々な支援を行っていくべきです。ただし、台湾にも大陸中国に親和的な勢力もあるので、それらを利することによって大陸中国を間接的に利するようなことだけは、避けながら、細心の注意をしながら支援すべきです。

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対ロ交渉、長期化色濃く=北方領土の溝埋まらず―【私の論評】北方領土は今は、返ってこなくても良い(゚д゚)!




2019年2月17日日曜日

対ロ交渉、長期化色濃く=北方領土の溝埋まらず―【私の論評】北方領土は今は、返ってこなくても良い(゚д゚)!

対ロ交渉、長期化色濃く=北方領土の溝埋まらず



【ミュンヘン時事】河野太郎外相は16日(日本時間17日)、ロシアのラブロフ外相と、平和条約交渉の責任者に就いてから2度目となる会談に臨んだ。

【図解】日本の北方における領土の変遷


だが、焦点の北方領土問題で双方の溝は埋まらず、長期化の気配が濃厚。日本政府が描いてきた「6月大筋合意」のシナリオは崩れている。

「双方が受け入れ可能な解決に向け、かなり突っ込んだやりとりをした」。河野氏は会談後、記者団にこう説明した。今回は、前回1月14日の外相会談や同22日の首脳会談を踏まえ、相手方の主張に対する反証を述べ合ったもよう。日本側の同席者は北方四島に対する主権をめぐり「激しいやりとりになる場面はあった」と明かした。

河野氏は会談で、ロシア側の期待が大きい医療やエネルギー、極東開発など8項目の協力プランに触れ「(日ロの)貿易額が伸びている」と強調し、ロシアからの訪日客増加にも言及。4島での共同経済活動も取り上げ、経済分野の関係強化をてこに交渉の前進を図る姿勢をにじませた。

会談する河野太郎外相(左手前から2人目)とロシアのラブロフ外相
(右手前から2人目)=16日、ドイツ南部ミュンヘンのロシア総領事館

ただ、ラブロフ氏は会談後、北方領土の主権はロシアにあるとの立場を改めて強調した。交渉スケジュールについても、プーチン大統領が1月の首脳会談の際に「辛抱強さを要する作業が待っている」と長期化を示唆したのに続き、期限を切らない立場を鮮明にした。

「不法占拠」「固有の領土」といった表現を控える日本政府の配慮にもかかわらず、ロシア側が軟化する兆しはない。安倍晋三首相は12日、国会答弁で「期限を切るつもりはない」と表明。政府内には「6月まで数カ月でまとめるのは無理だ」(高官)と悲観論が広がった。

「70年間続いている問題だから、そう簡単に一足飛びに前へというわけにはいかない」。打開のめどが立たない現状を踏まえ、河野氏は16日、記者団にこうも語った。 

【私の論評】北方領土は今は、返ってこなくても良い(゚д゚)!

北方領土に関しては、現実的に考えれば「二島どころか一島でも返してもらうのが現実主義」とうそぶく現“状”主義者の言っていることも、「四島どころか千島全部返せ!」とできもしない空論を叫ぶ空想主義者の言っていることも正しくはありません。

「北方領土は今は返っ来なくて良い」というのが一番現実的な考えだと思います。なぜなら、十九世紀的帝国主義者的ロシア、プーチンのことを考えれば、基本的に国境不可侵の原則など外交の道具としか思っていないだろうし、一方日本の現状主義者も空想主義者など全く現実的ではないからです。

現状の予想外に好転するかに見えた状況を見据えつつも、現実だけを見るべきであって、空想など顧みるべきではありません。

その上で、昨年9月12日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの壇上で突如、同席した安倍晋三首相に「すべてを棚上げして日本と平和条約を結ぼう」と提案した、プーチン大統領の思惑は、どこにあるのでしょうか。これをどう捉えるべきなのでしょうか。

そもそも、ウラジミール・プーチンとは何者なのでしょうか。プーチンは国内を秘密警察により掌握し、事実上の独裁体制をしいています。暗殺した人間は数知れません。「人を殺してはならない」という価値観が通じない相手です。

対外政策では、欧州では強気ですが、中国にはいっさい逆らったことがありません。この前の「ハチミツ」騒動(下の動画参照,プーチンが習近平にロシアの蜂蜜をお土産に持たせた件)程度のシャレで済む意趣返しレベルはしても、基本的にはシナの従属国と言っても良いくらいの現状です。


せいぜい、中国共産党の権力闘争のバランスで立ち位置を変えるが、江沢民や習近平個人にはともかく、プーチンがロシアの独裁者である以上、ロシアが中国に逆らうことは無いでしょう。

この状況は現在の北朝鮮問題をよく見れば、わかるはずです。北朝鮮は元々はロシア(当時のソ連)が建国させた国であるにもかかわらず、現在の北朝鮮問題は米中で話あわれることはあっても、ロシアは蚊帳の外です。

米国も、北朝鮮というと、中国とは話をしても、ロシアと話をすることはほとんどありません。これは米国も現状のロシアは中国のいいなりであることを理解しているからでしょう。北朝鮮で米中が何らかの取り決めを行ったにしても、ロシアがそれを反対することはないからです。

そんなプーチンの「すべてを棚上げして日本と平和条約を結ぼう」という先の台詞を翻訳します。
「クリル(北方領土)なんか一島も返す気は無い。さっさと平和条約結んで業績らしきものにしてやるから、少しは金寄越せ」
そもそも1956年の日ソ共同宣言以来、二島返還は無条件で平和条約を結び、もう二島はその後の交渉だったのが、プーチンにひっくり返されています。これで二島どころか一島でも返ってくると考えたらよほどの愚か者かプーチンの回し者だとしか言いようがないです。ここまで読めば、タイトルの「北方領土は今は返ってこなくても良い」の意味がわかるでしょう。

今は、中国に従属するプーチン政権の間は、ということです。むしろ現状ではプーチンと交渉すること自体が、禍根を残すことになりかねません。現に、交渉するたびにプーチンは過去の日露合意を反故にしています。

北方領土を取り返したいなら、中露対決が再び高まった時まで待つべきなのです。現在ロシアのGDPは韓国なみです、ということは東京都のGDPとほぼ同じです。人口はあの広大な領土に一千四百万人しかありません。これは、日本より若干多い程度です。中国は13億人です。これでは、ロシアは本当はそうしたくなくても、中国に従属するしかありません。

今でもシベリアには中国人が大量入植しています。これを国境溶解と呼ぶ人もいるくらいです。プーチンは欧州方面でNATOと張り合わなければならないですから、極東では強気に出れないのです。だから中国にやられたい放題になっているのです。

ロシア人女性が中露国境の街で、長い冬に向けた生活必需品の買い出しに熱を入れている。写真は
黒河市の露店市場。国境のロシア人にとっては中国の物資はなくてはならないものになっている。

結局、戦争で取られた領土は軍事力で取り返すしかない以上、今は日本は、防衛力増強に努めるしかないのです。そしてロシアが本当に弱った時には四島どころか千島に樺太まで取り返しに行って良いのです。領土交渉ではそれ位の時間軸で考えるべきなのです。

北方領土、何島返還論が正しいのかという議論がしばしば聞かれますが、現在は「一島もいらん」で構わないのです。いかなる正論も、時宜にかなっていなければ、愚論よりもたちが悪いのです。

ただし、今は「一島もいらない」のですが、これを取り返せる時が従来よりは近づいているのは間違いありません。なぜなら、現在では米国の対中国冷戦が勃発しているからです。

これは単なる貿易戦争ではありません。ハイテク覇権や安全保障が絡んだ米中のガチンコ対決だ。中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の事件は、そんな対決の本質を如実に示しています。

このブログでは、米国は中国が体制を変えるか、体制を変えるつもりがないなら、経済的に相当弱体化するまで、制裁を続けます。これには、短くて10年、長ければ20年の年月がかかることでしょう。

中国が体制を変えて、共産党1党独裁をやめ、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などすすめて構造改革を行うことにした場合には、政治的には激変しますが、経済的にはさらに発展する可能性があります。この場合、ロシアは中国に対して強気にでることはできません。おそらく、北方領土が返還されることはないでしょう。

しかし、中国が米国の圧力に屈することなく、現状の体制を貫き通したとしたら、米国の制裁は継続され、それこそかつてのソ連が疲弊したように、中国も疲弊することでしょう。

そうなった場合、中露対決が再度深まることになります。そうなると、ロシアも疲弊することになります。その時こそが、まさに日本がロシアに対する北方領土交渉の好機が訪れるのです。

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2019年2月16日土曜日

米「反日」韓国にいら立ち 日韓関係改善の糸口見えず―【私の論評】日本バッシングの背後に、韓国の脱米と対中従属の加速あり(゚д゚)!

米「反日」韓国にいら立ち 日韓関係改善の糸口見えず

会議の前に握手する河野太郎(左)と韓国の康京和外相=15日,ドイツ・ミュンヘン市内のホテル

 1月に続く今年2回目の日韓外相会談は、いわゆる徴用工判決やレーダー照射事件など昨年来の問題に、韓国国会議長の不適切発言も加わり、日韓関係が一段と悪化した中で開かれた。河野太郎外相は康京和外相に一連の問題への誠実な対応を求めたが、康氏は韓国側の主張を譲らず、関係改善の糸口は見えなかった。米朝首脳再会談を控え、米国では北朝鮮問題での連携をよそに「反日」路線にひた走る韓国・文在寅(ムンジェイン)政権へのいら立ちも表面化してきている。

 河野氏「1965(昭和40)年の日韓請求権協定に基づく2国間協議にぜひ応じてほしい」

 康氏「そのことについては綿密に検討している」

 河野氏は会談冒頭から、2国間協議に応じるよう強く求めた。徴用工判決は日韓関係の根幹を覆しかねないだけに韓国政府の適切な対応が不可欠だが、康氏は従来の主張を繰り返すばかりだった。同席者の一人は「議論は平行線だった」と振り返った。

 関係悪化の原因となった一連の問題は韓国側がつくったものだが、文大統領は支持率下落に歯止めをかけようと「南北統一に向けた取り組みと『反日』で支持率回復を狙っている」(日本政府関係者)とされる。このため、日韓間の一連の問題について外相会談で韓国側が歩み寄ってくる可能性はそもそも低かった。

 それでも日本外務省幹部は「北朝鮮問題への日韓協力を外相同士で確認する意味はあった」と語る。

 河野氏が会談で「北朝鮮関係に関してもしっかりと意見交換したい」と切り出し、連携の重要性を強調したのも、日韓関係がこれ以上悪化すれば、北朝鮮の完全な非核化に向けた日米韓3カ国の連携に深刻な影響が出かねないからだ。

 すでに米議会では超党派議員が「建設的で前向きの日韓関係」の重要性を強調する決議案を上下両院に提出するなど、不満を募らせている。

 日本外務省幹部は「米国議会の決議案は韓国にとってインパクトのあるメッセージになっている」と指摘し、対北朝鮮での韓国との連携維持に期待を示す。

 ただ、関係改善の展望はなお見えないのが実情だ。河野氏は、来月に「3・1独立運動」から100年を迎える懸念を伝え、文政権が反日ムードを盛り上げようとする動きを牽制(けんせい)した。(ミュンヘン 力武崇樹

【私の論評】日本バッシングの背後に、韓国の脱米国と対中従属の加速あり(゚д゚)!


いわゆる慰安婦問題を巡って「天皇陛下の謝罪」を求めた韓国の文喜相国会議長。米国の首都ワシントンを皮切りにニューヨークや西海岸のロサンゼルスを訪問し、在米韓国人との交流を行ったほか、米国の政治家に韓国側の立場を説明しました。

安倍総理が文議長の発言に対して抗議し「謝罪と撤回」を求めた翌日ワシントン郊外の焼き肉店に文議長は韓国メディアを集めて会見を開き「確実で明らかなのは謝る事案ではないということ」などと開き直りました。

日本に対する非礼ともいえる一連の言動は何を意味するのでしょうか。韓国文政権で今、何が起きているのでしょうか。

これらは、一見すると戦後補償の問題のようですが、本当の狙いはそれではなかもしれません。韓国側の行動を長期的にみると、慰安婦、徴用工、旭日旗、自衛隊機へのレーダー照射など、文政権になってそれら全部が計画的ともいえるように一つ一つ積み上げられてきました。

サンデー・モーニングで提示されたフリップ

韓国国会議長による「天皇陛下の謝罪」要求にしても、日本政府は抗議したうえで発言の撤回を求めていますが、韓国政府は文氏の発言を擁護するなど事態を収束させようとする意思は見られないです。まるで収束することを望んでいないかのようです。ここで、一つ考えられるのは韓国側が意図的に日本との緊張を高めているのではないかということです。

これには、韓国が考える世界の将来像と関係しているかもしれないです。韓国は日本とは世界の将来像に対する考え方が根本的に違うようです。今後、世界で米国の影響力が落ちていったらどうなるかと考えた時、日本では米中で世界の覇権を争う「G2論」と、一方で米中以外の多くの国が登場し、世界はいろんな形で争う、または協力する「多極化」の時代に入るという2つの考えがあります。

日本ではこの、「多極化」が進むという考え方が強いです。ところが、韓国は「G2論」のほうが人気があります。韓国は朝鮮戦争という存続にかかわる大きな歴史的な出来事を経験しました。その時、100万の軍隊を入れて北朝鮮を守った中国と、韓国を支援した米国が戦いました。韓国にとって当時から今日に至るまで、米中とどのように関わっていくかは永遠のテーマとなっています。

韓国では「G2」論が優性なようだが・・・・・・

韓国の立場に立って考えると、韓国は過去には米国側にどっぷりと“漬かってきた国ですが、今後米国の影響力が落ちてくると、G2時代に突入すると見ているのでしょう。だとすると、米中に挟まれた韓国はその二つの国の間でバランスをとるべきではないかという考えに帰着します。

しかし、あからさまに米国と距離を置き中国との関係にシフトすれば、米国を怒らせることになります。そこで、米国の同盟国であり、多少緊張を高める行為をとっても無害な日本に、意図的に仕掛けている可能性は排除できないです。

日米韓の協力関係にすきま風を吹かせることで、韓国は中国に対し「私は米国の子分ではありませんよ」というメッセージを送っているのかもしれません。韓国にとって、日本との緊張を高めることは、外交の観点からこうしたメリットが考えられます。

また、内政面でも、日本と対峙する大統領は人気が上がる傾向があるため、人気回復手段となっているというのはこれまでもよく言われてきたことです。ただし、これは最近文在寅の支持率が落ちてきたことをみても、あまりうまくは行っていないようです。

なぜ韓国が日本をバッシングしても良いと考えるのかという、背景には韓国の軍事力の伸びもあると思われます。

ストックホルム国際平和研究所のデータによると、韓国の国防費は過去10年で30%近く伸びています。一方日本は4.4%しか伸びていないです。このままの勢いで行くと、韓国の国防費が日本の国防費を上回る状態が近い将来に起きるということです。

韓国は「日本に追いついて追い越すのだ」という雰囲気の中で日本への政策を決めているのではないでしょうか。日本との間で、もし何か間違いが起きて緊張が高まったとしても、韓国にとってそれほど怖い相手ではないという判断がなされる可能性が、この韓国の国防費の伸び率と関係しているということも言えると思います。

ちなみに、以下にそのデータをあげておきます。
■出処:スウェーデンのストックホルム国際平和研究所 
10年間の国防費の伸び率(2008年~2017年) 
韓国 29%UP 392億ドル(2017年国防費)
日本 4.4%UP 454億ドル(2017年国防費)
韓国は、米国と少し距離を置き、中国とのチャンネルを太くしようとする目的のために日本が利用しているという可能性が高いです。こうした動きは米国が弱体化していくことを見越したうえでの対応で、単純に日本軽視という問題ではなく米国の国力が見下されているということです。

しかし、この見方は正しくないと思います。現在の世界の超大国は米国一国だけです。現状は超大国でもない中国が、超大国である米国に冷戦を挑まれているのです。中国に勝ち目はないです。このような歪んだ見方は、朝鮮では昔から中国に従属しようとする姿勢があったことによるものでしょう。

ただし、このブログにも過去に何度か掲載しているように、北朝鮮の金正恩は、中国を文在寅のようには見ていないようです。

そもそも、金正恩は、中国の影響力を極力排除しようとしています。北朝鮮の核は日米だけではなく、中国にも向けられています。北朝鮮の核は、結果的に中国の浸透が朝鮮半島全体に及ぶことを阻止しています。北朝鮮がこのようになったのは、やはり建国の頃から中国に干渉を受け、特に金一族は滅亡の危機を感じていたからでしょう。

中国がは、国が北の核を脅威と感じる以上に、はるかに大きく脅威を感じています。北の核は、ICBMでなくても、中短距離のミサイルだけで中国の大部分を標的にすることができます。

この状況と中国に接近しようとしている韓国が半島の南に存在するという状況は、対中国冷戦を挑んでいる、米国側から見れば、戦略的には非常に良い状況です。最悪なのは、朝鮮半島全体が中国の覇権の及ぶ範囲になることです。これだけは、米国は何としても防ぎたいと考えていることでしょう。

2月27、28日に2度目の米朝首脳会談の開催が決まりました。北朝鮮の非核化は進展するのでしょうか、日本にとって拉致問題の進展につながるのでしょうか。

トランプ米大統領はこれまで大統領選での公約を実行してきましたが、北朝鮮問題は大統領選当時、米国民に意識されていなかったので争点にならず、公約はありません。

ただ、米国の歴代政権は北朝鮮に軍事オプションなしの宥和策を取ってきたために、北朝鮮が核兵器や大陸間弾道ミサイルをほぼ手中にするまでになりました。

これまでのトランプ政権は、北朝鮮の非核化が達成されるまで最大限の圧力をかけるというセオリー通りの行動でした。しかし、上記で述べたような現実もあるため、その戦略がここに来て変化があるのかもしれないです。

日本にとって最悪のシナリオは、北朝鮮は米国の領土に到達する核兵器を廃棄するが、それ以外には縛りがないという状況です。

中距離核については、米露の協定が破棄されました。冷戦時には、存在しなかった、中国や北朝鮮の中距離核が今や100以上も存在しています。これでは、米露だけでの協定では意味がないからです。

少なくとも米露中で新たな合意策でもあればいいのですが、そうした兆候はないです。こうした世界情勢では、北朝鮮の中距離核だけを規制しにくいのが現実です。

日本としては、北朝鮮の非核化について何らかの関与をしたいところです。非核化には多額の費用がかかるので、極東アジア諸国も相応の負担を求められるかもしれないです。日本は積極的に応じるという選択が適切でしょう。

軍事力を行使できない日本でも経済力で補うことで北朝鮮の非核化に関与できるからです。その延長線で北朝鮮の中距離核の非核化までを展望すべきでしよう。そうして、北の中距離核が非核化できるまでは、日本も何とかして、米国の中距離核をドイツのように、日本にも設置できるようにして、これもドイツのように日本の許可がないと米国は発射できないようにするとともに、その核について日本側も発議できるような状態にすべきです。

これは、すぐにはできなくても、まともに論議するようにすれば、それだけでもかなりの抑止力になります。中国、北朝鮮、韓国もこれを警戒するようになるでしょうし、韓国によるレーダー照射のような挑発はこれだけでなくなるかもしれません。

このような、日本の関与は結果として拉致問題への取り組みにも役に立つでしょう。日本は米国頼みで北朝鮮問題を解決するのは無理であり、相応のリスクと負担を持って、当事者として北朝鮮に対応しなければいけないです。

そうして、韓国に対しては無視を貫き通すことです。韓国が傍若無人な態度を取れば、韓国に対して抗議は当然すべきですが、韓国の歴史修正主義も含め、国際世論に訴えていくべきでしょう。韓国に対しては、抗議をするだけであとは無視、北朝鮮とは交渉するという姿勢で臨むべきです。

ただし、中国、北朝鮮、韓国の軍事的挑発はこれからも増すことはあっても、減ることはないでしょうから、防衛予算の1%枠など取り払い、軍事力を強化すべきでしょう。

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2019年2月15日金曜日

米中交渉の根本的な食い違い、中国を打ち負かす秘策とは?―【私の論評】米国による中国制裁は最早トランプ政権ではなく米国の意思となった(゚д゚)!


トランプを読み解く(4)

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

 米中貿易戦争をめぐる交渉期限の3月1日まで残りわずか2週間。果たして交渉が妥結し、貿易戦争は終了となるのだろうか。本稿の仮説が成立すれば、答えは「NO」になる。



 昨年12月9日付けの寄稿「休戦あり得ぬ米中貿易戦争、トランプが目指す最終的戦勝とは」にも書いた通り、90日間の交渉期間は、休戦でも停戦でもなく、激戦の先送りに過ぎない。さらに少々大胆な仮説として、トランプ氏が目指しているのは、最終的な「戦勝」であって、当面の妥協や平和といった短期的利益を前提とする「休戦」や「終戦」ではないはずだと説いた。この論点はいまでも変わらない。

交渉は必ずしも妥結するためのものとは限らない

 「君主は、自らの権威を傷つけるおそれのある妥協は、絶対にすべきではない。たとえそれを耐えぬく自信があったとしても、この種の妥協は絶対にしてはならない。なぜならほとんど常に、譲歩に譲歩を重ねるよりも、思いきって立ち向かっていったほうが、たとえ失敗に終わったとしても、はるかに良い結果を生むことになるからである」(『マキアヴェッリ語録(新潮文庫) 訳・塩野 七生』

 仕掛けられた衝突は基本的に回避できない。それを回避しようと一方的に譲歩に譲歩を重ねれば、相手に足元を見られる。相手は往々にして欲が出て予定よりもさらに過酷な要求を突きつけてくる。こういう弱腰で交渉の場に出ると、相手に敬意をもってもらえない。交渉にあたっては、まず原則を貫く手ごわい敵として相手に敬意をもってもらうことが大前提だ。このイメージを維持できなければ、衝突や交渉にすでに負けていると言っても過言ではない。

 交渉は、必ずしも妥結するためのものとは限らない。日本人の弱点(美点でもあるのだが)は、「話せば分かる」と思いこんでいるところにある。国際政治などの場合、話しても分からないどころか、分かっていても分からないふりをするのが常。一方的な誠意や妥協ではただただ相手につけ込まれるだけ、という場面が多々ある。

 米中貿易戦争はトランプ米大統領が仕掛けたものだ。中国が望んでいない争いであり、しかも中国は全般的に劣勢に立っている。中国が次々と譲歩しているため、交渉成立する可能性があると見ている学者や専門家も少なくない。私は当初から、この交渉は妥結する見込みがほとんどないと見ていた。この持論はいまでも変わらない。理由を言おう。

米中交渉の根本的な食い違い

 現時点の米中交渉の中身をよく見ると、中国が譲歩しているのは貿易の「量」であるのに対して、米国が求めているのは、中国の構造改革という「質」であった。中国は「おたくの農産品輸入をもっと増やす」と言っているが、米国は「うちの技術を盗むな」と要求している。量と質の食い違いがあり、そもそもこんな交渉は妥結するはずがない。
 大豆の輸入増などで騙されてはいけない。輸入の減少で困っているのは中国だ。国民食である豚肉の供給は、豚の餌の原料となる大豆に頼っている。豚肉の供給に支障が出て豚肉の価格が上がれば、中国人民の不満が一気に噴出する。ただでさえ今、豚コレラで大問題になっているくらいだから、泣き面にハチで大豆の輸入が減れば、豚肉の問題はただの食糧問題でなく、政治問題になる。故に米国からの大豆輸入を増やすのは何も譲歩ではない。中国の国益に合致しているのである。
習近平主席は2018年12月18日に開かれた中国改革開放40周年大会で、意味深長な一言を語った――。

「改めるべき事で改められる事は我々は断固改める。改めべからざる事で改めてならぬ事は我々は断固改めない」

中国改革開放40周年大会

 これはトランプ氏に語り掛けているようにも聞こえる。さて、何が「改めるべき事で改められる事」か、何が「改めべからざる事で改めてならぬ事」かは言及していない。この言葉をトランプ氏はどのように受け止めるのだろうか。「すべき事でできる事」と「すべからざる事でしてはならぬ事」をわきまえたうえで交渉に臨めと、至って真っ当なリマインドだ。

 これは要するに「量」の交渉には応じてもいいが、「質」の変更要求には応じられないという明確なメッセージとみていいだろう。「質」の変更は政権の統治基盤を揺るがすものである以上、習氏はそんな妥協をするはずがない。

 一方、トランプ氏が貿易戦争を仕掛けた根本的な意図は、中国の本質的な構造変更にある。そこで貿易の量を若干積み増しされたところで妥協するのなら、それこそ権威を傷つけられるだけで、応じるはずがない。

貿易交渉を決裂させたほうが有利だ

 フーヴァー研究所が昨年11月29日付けで発表したレポート「中国の影響力と米国の利益 積極的な警戒」はある意味、現在のトランプ政権の対中戦略を裏付けるものとみていいだろう。昨今の米中交渉は、少なくとも、大豆の輸出を少し増やしたところで、トランプ氏が「Our farmers are going to be very happy(我が国の農民は喜ぶでしょう)」と微笑んで応酬することで済む話ではない。

 貿易戦争とそれにまつわる双方の交渉はあくまで戦術レベルのものであり、特に最近報じられている一進一退の様子は、カモフラージュにすぎない。トランプ氏が仕掛けた変化球で本質を見失ってはいけない。

 中国側としても「質的部分はアンタッチャブルで、量の交渉ならいくらでも応じる」という原則を手放すことはあり得ない。いってみれば、「戦争賠償をしても、敗戦は受け入れられない」。なぜなら、敗戦を受け入れると、中国はそれ以上の賠償を支払わなければならなくなる可能性があるうえに、国内における政治的正統性まで失いかねないからだ。それなら、最後の一兵卒が息絶えるまで戦い抜き、「玉砕」したほうがマシだ。

 中国の戦術は引き延ばし戦術。2年弱引き延ばして、次の大統領選でトランプ氏が降板すれば挽回できる。そう目論んでいるだろう。

 この企みをトランプ氏はすでに見破っている。だから、何としてでも2020年夏頃までに、中国問題を片づけたいわけだ。このターゲットを達成するためにも、貿易戦争の交渉を決裂させ、関税を引き上げるのが得策だ。

トランプの対中政策、弱体化させてから取引を

 オーストリアの保守紙「Die Presse」は2017年1月20日付けで、「トランプは中国経済を傷つきやすくした(弱体化させた)」(Trump macht Chinas Wirtschaft verwundbar)という記事を掲載した。見出しはトランプ大統領の対中姿勢を本質的に捉えたものだった。

 記事は中国経済の現状について、当時発表されたばかりの2016年の経済データを挙げ、「この26年来の最悪を記録した」と述べ、さらに、ここ数年の経済低迷によって大きな恐慌が引き起こされなかった原因をも分析した。

 数十年にわたって続く中国の高速経済成長はいよいよペースを落とし始めた。中国政府は輸出から内需牽引に切り替えようと懸命だった。ところが、企業の負債率は改善が見られず、個人消費も一向に振るわない。

 タイミング悪く、その時期に米大統領に就任したトランプ氏は中国批判を繰り返し、為替操縦国と断じたうえで、保護的な通商政策を厳しく批判した。記事はこう指摘する。「トランプ氏は中国製品に対し45%の関税をかけると言っているが、これが現実になれば、中国は深刻なダメージを受けるだろう」。

 中国税関総署の黄頌平報道官は同年(2017年)1月13日、トランプ氏の保護主義的な通商政策によって中国の輸出が抑制される可能性を示し、記者団に対し、中国は反グローバル化政策の最大の被害者になると認めた。

 45%どころか、25%でも大変なことになる。いや、25%の前段階である10%だけでも、2018年後半の中国経済はすでにひどく弱ってきている。

計算ずくの貿易戦争

 2年前、2017年1月号の当社顧客向けレポートに私が寄稿した米中関係の分析記事の一節を抜粋する――。

 「トランプ政権が中国製品に高関税を課した場合、中国は対米報復に乗り出す。中国の対米輸出は年間4000‐5000億ドル規模、これに対して対米輸入は1500億ドル規模。貿易戦争になれば、中国は断然不利な立場に置かれる。中身を見ると、中国の対米輸出品は労働集約型製品が中心で、米国の対中輸出品の多くが技術集約型製品である。製品代替性の度合からしても中国に不利だ。中国は人件費の上昇で製造業の優位性を失いつつあるなか、貿易戦争になれば、むしろベトナムなどの新興国に大きな商機が舞い込む。一方で中国が受ける影響は深刻だ。労働集約型製品の受注が低迷すれば、雇用問題が浮上し、社会や政権の安定を脅かす事態になりかねない。通商・経済問題が一気に政治問題に発展する」

 僭越ながら、2年前に書いた予想はほぼ的中した。そして、トランプ氏が正確にシナリオを描けたことに感心せずにいられない。彼は決して無謀な貿易戦争を仕掛けたわけではない。さらに上記の当社レポートから次の一節を抜粋する――。

 「これ(貿易戦争)によって、米国は対中取引で優位に立てば、政治的攻勢を強めるだろう。対台関係や南シナ海問題、あるいは中国の政治的構造問題に踏み込むかもしれない。ふたを開けてみると、一連の取引によってチャイナ・パワーの抑制に成功すれば、もともとTPPに期待されていた対中けん制機能も実現できる」

 このくだりは今後の展開から徐々に見えてくるだろう。

人権カードの使い方

 トランプ大統領と中国の駆け引きは必ずしも、整合性の取れた形を見せているわけではない。議論の焦点を取り上げる際の濃淡も一定ではない。とりわけ具体的な案件として注目されるのは、「南シナ海問題」、「中国の為替操作国認定問題」と「中国製品に対する関税問題」だった。

 人権問題だけはあまり触れていない。オバマ時代でも、米国の立場上人権問題は幾度となく提起されてきたが、中国への攻撃に熱心なトランプ大統領なら、人権ほど都合のよい材料を看過するはずがない。では、なぜ触れようとしなかったのか。

 人権問題は最強カードであるだけに、中国の反発も強い。これを切り口にしてしまうと、対中交渉それ自体が行き詰まりかねないからだ。政治体制ないし政権の正統性といった根幹部分に触れる問題を交渉のカードにしてはいけない。それをやってしまうと、ビジネスの交渉で相手企業の社長に対しその地位の正統性を問題視するのと同等の愚策になる。しかし、トランプ氏は決して人権カードを捨てたわけではない。そのカードを出すタイミングを見計らい、しかもできれば他人にそのカードを出してもらおうと画策していた。

 後日談になるが、2018年夏頃からトランプ氏はようやく人身売買やウイグル人の弾圧問題を持ち出し、スポット的に人権外交を強化する姿勢を見せ始めた。時期的には、米中貿易戦争の展開に呼応したアクションであると見て間違いないだろう。

 さらについ数日前(2月9日付け報道)、トルコは中国のウイグル族に対する人権侵害がひどくなっているとして中国を批判し、ウイグル族の収容所の閉鎖を求めた。なんとも絶妙なタイミングではないか。

中国のウイグル族に対する人権侵害に関して懸念を表明したペンス米副大統領

 人権については、まず人権の定義・射程と計測尺度という問題がある。いくら普遍的な価値観とはいえ、いわゆる米国をはじめとする西側諸国における人権の計測尺度は必ずしも地球上唯一のものとは限らない。

 たとえばシンガポールの場合、公共秩序法の改正で当局の権限が拡大し、公的な集会を規制あるいは禁止できるようになった。司法当局を非難する弁護士や学者が起訴されたことが、表現の自由の権利に大きな打撃となった。報道の自由も制限された(「アムネスティ・レポート2017/2018より)。このような状況を欧米流の定義に照らせば、人権問題にされてもおかしくない。さらに、シンガポールの奇跡的な発展それ自体が開発独裁とも言える政治体制のもとで遂げられたものだという批判もある。米国はなぜシンガポールを非難せずに矛先を中国に向けるのか。

 この類の議論になると、トランプ氏も決して得意なほうではない。そもそも他国の人権問題は米国の国益に直接的な利害関係があるのか、ひいてはこれに強い関心を示す米国民はどのくらいいるのか。ここまでくれば、トランプ氏にとっての他国人権問題はある意味で国際政治や外交、通商面の交渉カードに過ぎないのである。

 サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件についても、トランプ氏は事件への関与が疑われるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の責任を不問にする姿勢に徹していた。サウジへの1100億ドル相当の武器輸出合意を維持するために、つまり金で殺人行為も許されるのかというメディアの批判には、トランプ氏は動じる気配すら見せていない。

 トランプ氏は他国への介入について、理想主義的な介入はしないが、実利に基づく現実主義的な介入は辞さない、という姿勢である。人権問題も然り。

<第5回へ続く>

【私の論評】中国制裁は最早トランプ政権ではなく米国の意思となった(゚д゚)!

私も、ブログ冒頭の記事のように、交渉が妥結し、貿易戦争は終了となることはないと思います。

中国側は米中首脳会談を提案し、トランプもこれに前向きのようです。中国側は経済が急失速しており、トランプの方は2020年の大統領選挙を控え貿易面で何らかの得点を挙げたいと考えているものと思われます。

中国から何らかの具体的譲歩を引き出し、それをトランプの駆け引きの勝利と宣伝し、米中の冷戦の一時的休止がもたらされる可能性は否定できないでしょう。

ただ、仮に首脳会談が開かれ短期的に妥協が成立したとしても、長期的には米中の経済競争が終わることはないでしょう。中国との対決は貿易から始まり、今や先端技術における覇権争いをはじめ、全面対決の様相を示しています。

米中の対決が先端技術にまで及んでいるのは、米国が、中国の挑戦は米国の卓越した地位を脅かしているとの危機感を抱いているからです。例えば、中国は、通信速度が現行の4G携帯電話の100倍となる、次世代の社会基盤となると見込まれる5G技術で、米国に引けを取らない開発をしていると言われます。

そういうわけで、米国は先端技術における中国の台頭の「封じ込め」にかかっており、中国が先端技術の開発を国策として推進する「中国製造2025」を非難するとともに、中国の先端技術製品の調達を禁止し、同盟国に対しても同様の措置を取るよう要請しています。米中の経済対立は、構造的に非常に根深いものです。

こうした根深い対立が、3月1日などに決着がつくはずもないし、仮にトランプ大統領が幕引きをはかりたいと思うことがあったとしても、トランプ政権内のドラゴンスレイヤー(帯中国強硬論者)たちが、なかなか"Yes"とは言わないでしょうし、仮にトランプ氏が政権内をまとめることができたとしても、今度は議会や、司法当局が"Yes"とは言わないでしょう。

米国は明確な三権分立制が樹立されていて、米国の大統領といえども、議会の了承がないと何もできません。米司法当局による、孟容疑者との司法取引が成立すれば、司法当局も中国によるあらゆる不正を暴き、ファーウェイやZTEだけに限らず、あらゆる中国による米国を毀損するような工作を処断することになるでしょう。米国議会は、「アジア再保証推進法」を超党派で成立させ、中国と対立する姿勢を露わにしています。

トランプ大統領


米国の大統領には強力な権限があると思い込んでいる人が日本には多いようですが、実際はそうではありません。米国では明確な三権分立が設立されているので、平時においては、世界で最も権限の少ないリーダーといわれています。

平時には、救急車一台ですら、大統領の意図で動かすことはできないと揶揄されているくらいです。ただし、戦時(特に第二次世界体制んのような総力戦) の場合には、大統領に大きな権限が集中するようなシステムになっています。

多くの人は、戦時の米国大統領を思い浮かべて、強大な権限があると思い込んでいるのかもしれません。もしそうなら、国境の壁などのトランプの意のままにすぐに予算を得て建設されているはずです。

このようなことから、トランプ氏が仮に幕引きを図りたいと考えたにしても、議会や司法当局は中国への処断を継続します。これでは、トランプ氏が仮にある程度のところで、幕引きを図りたいと考えても、到底無理です。もう米国の中国に対する経済制裁は容易にとどまることはなく、トランプ大統領の任期などとは関係なく、一定の結論が出るまで、継続されるとみて間違いないでしょう。最早、米国の対中国制裁は、トランプ政権の意思ではなく、米国に意思になったとみるべきです。

ただし、トランプ政権によって一時的に制裁が緩むということはあったとしても、ブログ冒頭の記事にもあるように、現時点の米中交渉の中身をよく見ると、中国が譲歩しているのは貿易の「量であるのに対して、米国が求めているのは、中国の構造改革という「質」なのです。中国は「おたくの農産品輸入をもっと増やす」と言っているのですが、米国は「うちの技術を盗むな」と要求しています。量と質の食い違いがあり、そもそもこんな交渉は妥結するはずがないのです。

特に「質」といった場合、これを中国が全面的に受け入れることにしたとしても、現状の体制ではほぼ不可能です。

これを受け入れるためには、中国は抜本的な構造改革をしなければなりません。このような構造改革のためには、中国政府が掛け声をかけて、資金を投下して、米国の技術を盗むななどと号令をかけても不可能です。

それには、中国の遅れた社会構造を改めなければなりません。米国などの先進国と比較して、圧倒的に遅れている、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめないことには、何も変えられません。

もし、これらを進めてしまえば、中国共産党はあっという間に統治の正当性を失い、崩壊することになります。

習近平が語った、「改めるべき事で改められる事は我々は断固改める。改めべからざる事で改めてならぬ事は我々は断固改めない」ことばのうち、「改めべからざる事で改めてならぬ事」とはまさにこのことです。
トランプ政権、米国議会、米国司法当局に追い詰められる習近平
中国が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推し進めれば、中共は崩壊し、中国は全く新しい体制にならざるを得ないことを習近平は周知しているのです。
であれば、この経済対立はどうなるかといえば、米国はあらゆる制裁を続け、短くても10年、長ければ20年は続き、その果てに中国が構造改革をして体制を変えるか、さもなくば経済的にかなり弱体化して、他国に影響を及ぼせなくなるといういずれかの結論が出ることによって終焉することになります。
もし、中国が経済弱体化の道を選べば、経済は現在の韓国レベルにまで落ち込むでしょう、これは東京都と同じくらいの規模であり、ロシアと同程度です。
現在のロシアや韓国がいくら頑張っても、米国と直接対峙できないのは明らかです。ロシアはソ連の核や軍事技術を継承しているため、侮ることはできず、大国とみられがちですが、実体はいくら強がって見せても、他国に大きな影響力を及ぼせる主体ではなくなっています。

そうなれば、中国は図体が大きいだけの、アジアの凡庸な一独裁国家と成り果てることになります。

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2019年2月14日木曜日

大嘘がバレた韓国国会議長。なぜ韓国は天皇侮辱を繰り返すのか?―【私の論評】日本にとって最良の韓国対処は無視すること(゚д゚)!

大嘘がバレた韓国国会議長。なぜ韓国は天皇侮辱を繰り返すのか?

天皇陛下に対する「戦争犯罪の主犯の息子」との発言が日本側に問題視されるや「戦時の日本の国王の息子という意味」と釈明も、インタビューを行なった通信社に音声データを公開されて言い逃れができない状況に追い込まれた韓国国会議長。2012年にも当時の韓国大統領・李明博氏が天皇に土下座を求め日本が強く反発したことが記憶に新しいですが、なぜこのような発言が繰り返されるのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』でその理由について詳しく記しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年2月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

黄文雄氏

【韓国】「日本に国王を奪われた」と嘘の主張で天皇侮辱を正当化する韓国


韓国国会議長「戦争犯罪の主犯の息子、天皇が謝罪を」発言に河野外相「発言には気をつけて」

韓国の文喜相国会議長が、ブルームバーグのインタビューに対して、現在の明仁天皇を「戦争犯罪の主犯の息子ではないか」とし、「天皇が一度おばあさんの手を握って『本当に申し訳なかった』と一言いえば(問題が)すっきり解消される」と話したことに対して、日本の河野太郎外相が「発言に気をつけてほしい」と批判しました。

さらに2月12日の国会答弁では、安倍首相がこの韓国国会議長発言に対して、謝罪と撤回を要求したと述べました。それほど日本人の虎の尾を踏むような内容だったということです。

【速報】韓国国会議長発言の謝罪・撤回要求 安倍首相が国会答弁

文議長は「戦争犯罪の主犯の息子」とは言っていないと反論していますが、いずれにせよ天皇に対して謝罪を求めるという非礼な態度には変わりがありません。

米ブルームバーグが“証拠”突きつけ 韓国・文議長「天皇は戦争犯罪の主犯の息子」音声公開

もちろん文氏は、天皇ではなく、「日王」という表現を使っていました。

この文喜相国会議長は、文在寅政権が誕生したときに特使として日本を訪問し、慰安婦合意について「世論が反対している」と伝えた人物です。日韓議連でもありますが、たびたび反日的な言動をしています。
天皇は日本人にとって「日本統合の象徴」であり、天皇を侮辱されることに対して強い拒否感があります。2012年には、李明博大統領が竹島に上陸したうえで、「日王が韓国を訪れたければ、日本が犯した悪行と蛮行に対して土下座して謝罪しなければならない」などと発言し、日本の世論が強く反発したことがありました。

竹島に上陸した李明博大統領(当時)

韓国が日本の皇室をたびたび侮辱するのは、理由があります。韓国は、日本が朝鮮半島から七つのものを奪ったという「七奪」の一つとして、「韓国の王族を日本が奪った」と主張しているからです。日韓併合(合邦)によって李氏朝鮮の王家を滅ぼしたというのです。

しかし、それは全くの歴史の捏造です。日本は日韓合邦時、朝鮮王朝の王家に皇族に準じる地位を与え、さらに皇族である梨本宮家の方子女王を、李氏朝鮮国王かつ大韓帝国初代皇帝・高宗の世子である李垠(イウン)へ嫁がせました。

日本が韓国を植民地にしたというなら、皇族を植民地の王に嫁がせるなどということは、ありえないことです。イギリスはビルマ王朝の男子を処刑、女子は兵士に与えて王朝を滅亡させましたし、1,000年以上も宗主国であった中華王朝にしても、皇帝の親族を朝鮮王朝に嫁がせたということはありませんでした。親族になるということは、同等の地位になることを意味しますから、属国や植民地の王族に嫁がせるなどということは、宗主国にとってありえないことなのです。

梨本宮家の方子女王(当時)

ところが日本はこうした国々と異なり、朝鮮半島に気を使って王族を残し、しかも皇族に準じる地位とし、親戚関係まで築いたのです。李垠の父・高宗は、日本に抵抗する意味で1897年に国号を李氏朝鮮から大韓帝国に改め、さらに自ら皇帝となりました。1907年にはオランダのハーグで開催されている万国平和会議に密使を送り、国際社会に対して日本批判とともに自国の外交権回復を訴えるという暴挙に出ています。しかし、東アジアのトラブルメーカーであり、財政的にも実質的に破綻していた大韓帝国の外交自主権を停止し、日本が保護国化するというのは、国際社会が望んでいたことであり、高宗の訴えは完全に無視されたのです。

このように、高宗は日本に対して敵対的な行動を取っていたものの、日本は朝鮮王室を断絶させることなく、李垠が皇太子となることを認め、さらに日本の皇室と親戚関係になって庇護したわけです。

しかし日本敗戦後、韓国大統領となった李承晩は、日本に留学していた李垠の帰国を認めませんでした。王室が復活し、政治の実権を握ることを恐れたからです。李垠は朴正熙の時代の1960年代になってようやく韓国へ帰国できましたが、王室が復活することはありませんでした。要するに、韓国国民が王室復活を望まなかったわけです。

ですから、韓国から国王を奪ったのは日本ではなく、李承晩であり、韓国国民なのです。ところがそのことは全く無視して責任を日本になすりつけ、「国王を奪われた恨み」として、天皇を「天皇」と呼ばず、わざわざ「日王」と呼んで軽んじているわけです。

もちろん、2000年以上も事大主義(大国に仕える)を続けてきた小中華の韓国にとって、「皇帝」とは中華帝国に君臨する存在であって、日本の「天皇」を認めていないという潜在意識もあるのだと思います。

李垠のお付き武官に安秉範(アン・ビョンボム)大佐という軍人がいましたが、彼は戦後、韓国で首都防衛を任されました。ところが朝鮮戦争が勃発、北朝鮮軍の猛攻撃によってソウルは陥落、安秉範はその責任を取って割腹自殺を果たします。

朝鮮戦争では李承晩大統領が真っ先にソウルから逃げ出し、しかも敵が追いつけないように橋を爆破、そのために逃げ遅れた多くのソウル市民が犠牲となりました。軍のトップが早々に敵前逃亡した一方で、旧帝国軍人だった安秉範は最後まで自分の任務を遂行したわけですが、現在の韓国では旧日本軍で大佐まで昇格したことから、「親日名簿事典」にその名が刻まれ、売国奴扱いされています。



また、旧日本軍時代に多くの軍功を立て、戦後は北朝鮮の侵攻を予知していた武人に、金錫源将軍がいます。その勇名は北朝鮮軍にも聞こえていたため、彼と対戦することを北朝鮮軍は非常に恐れていたといいます。日本刀を振りかざして前線で指揮する姿は軍神そのもので、朝鮮戦争では彼の名を慕って、かつての戦友である朝鮮人軍人が多く集まったといいます。まさに「救国の士」ですが、そんな金錫源も現在では、「親日名簿事典」に入れられています。

かつて日本の皇軍で働いた過去のある人物は、たとえ戦後に救国戦士だったとしても、売国奴扱いされるのが韓国です。その一方で、日本と敵対した人物は、徹底的に義人扱いします。

最近では、閔妃(びんひ)(明成皇后)が「悲劇の王妃」として、ドラマなどで美化されているようです。1895年10月、日本の三浦梧楼を首謀者とする一団が王宮になだれ込み、反日派だった閔妃を殺害したと言われていますが、その実態はよくわかっていません。

一説では、閔妃と嫁舅の争いを続けていた興宣大院君が暗殺の黒幕だったと言われていますが、いずれにせよ、閔妃は王宮内で政争に明け暮れ、浪費によって李氏朝鮮の財政を破綻状態にまで追い込んだ張本人として、つい最近までは韓国でも「悪女」の代名詞のような存在でしたが、「日本に殺された」ということから、悲劇的なストーリーがでっち上げられ、「国母」のような扱いを受けるようになりました。

閔妃

このように、現在の韓国の歴史はすべて「反日」が基本となっているのです。強盗殺人を犯した過去があり、多くの同士をテロで葬った金九などは、三・一運動失敗後、上海で大韓民国臨時政府主席に就任して日本に宣戦布告を行ったものの、国際的にまったく認められませんでした。にもかかわらず、現在では「抗日活動家だった」という理由から、義人として顕彰されています。盧武鉉(ノ・ムヒョン)などは、リンカーンと並び称しているほどです。

文国会議長が「天皇が謝罪すれば、慰安婦問題はすぐ解決する」というのは、まったくの嘘です。もしもそのようなことがあれば、さらなる日本批判の道具にすることは目に見えています。

もともと慰安婦問題からして、韓国側から「強制性があったことを言ってくれれば、問題は一区切りできる、未来志向の関係が築ける」と言われ、慰安婦証言の裏付けも取らないまま、「河野談話」を発表してしまったことが、「慰安婦問題」を現在まで続く大問題にまで発展させてしまったのです。そのことは、2014年4月2日に国会で行われた、石原信雄元官房副長官の証言でも明らかです。

河野談話の作成時「韓国から要望」 石原元副長官

韓国側の「こうしてくれれば問題は解決する」という提言は、決して信じてはいけないのです。「泣く子は餅を一つ多くもらえる」ということわざがある国です。一つの要求に応じれば、それを既成事実としてさらなる要求をしてくるのが韓国という国であることを、日本人は忘れてはいけません。

かつて李明博大統領は「日本はかつてほど強くない」という発言をしましたが、事大(強国に仕える)の国からすると、弱い国に対しては徹底的に嫌がらせをするのが普通のことなのです。

【私の論評】日本にとって最良の韓国対処は無視すること(゚д゚)!

上の黄文雄の語るようことは、おそらく80歳以上の日本人や韓国人なら、周知の事実だったと思います。実際、私も亡くなった祖父などから聴いて、上記のようなことは知っています。

しかし、日韓の両方で、まともな歴史教育をしなかったので、上記のような事実があたかも闇にでも葬られたかのように、多くの人々の記憶から消えたのです。それ以前は、両国の年配の人々の記憶に残っていたものが、これらの人々の人数が少なくなるとともに、日本では過去の歴史が正しく伝承されることなく、韓国では反日という形で歴史が歪められてしまいました。しかも、それが本格的に行われたのは1990年代になってからです。

上記のような内容は、日本人も韓国人の歴史上の事実として知っておくべきです。

さて、あくまで中国へ従属しようとする韓国は、現在の日米にとっても、かなり厄介な存在です。



最近エドワード・ルトワック著・奥山真司訳の『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』を読みました。北朝鮮の非核化は現実に可能なのでしょうか。ルトワック氏によれば、現時点で、北朝鮮が進む道は三つあるといいます。

まず、非核化した北朝鮮がアメリカの戦略的な保護の下で、経済的に発展するというシナリオ、いわゆる「ベトナム・モデル」です。この「北朝鮮のベトナム化」は、日本にとっても最善の選択肢といえます。

次の選択肢は、意外にも「現状維持」だといいます。金正恩の独裁体制が続き、もし米国による先制攻撃などによって強制的な非核化が実現しても、ダメージを受けた北朝鮮の政権が生き残る可能性はあります。それでも、第三の道、北朝鮮が非核化し、朝鮮半島が中国の支配下に入るよりは遥かにマシなのです。

北朝鮮の核兵器は、日本の安全保障にとって最大の脅威です。ところが、戦略面では日本にとってポジティブな要素なのです。なぜなら、それが北朝鮮の中国からの戦略的な独立を保障し、中国による朝鮮半島の支配を防いでいるからです。北京が平壌を制御できる状態になれば、韓国も支配下にされる可能性があります。

なぜなら韓国内には中国の冊封体制を受け入れたい勢力があるからです。換言すれば、平壌は中国から朝鮮半島の独立を実際に保障しているのですが、韓国政府、文在寅はその独立にまったく貢献していません。日本にとって核武装した北朝鮮は最悪ですが、中国に支配された朝鮮半島は、さらに最悪の安全保障上の脅威となります。

ここで問題となるのは、韓国という国の戦略的な脆弱さです。ソウルは北との国境線である非武装地帯から近く、対空防衛システムや防空シェルターなども十分ではないという脆弱性を晒しており、韓国の軍隊は自国をまったく守れない状態にありました。というのが40年前の状況でしたが、実は今も全く同じなのです。

政府機能や民間企業の本社などを、ソウルから遠くに分散するなどの対策を一切実行していません。空襲に対応するシェルターも不十分です。40年前と違うのは、北朝鮮が核兵器や長距離ミサイルを開発したことだけです。もし戦争が起きれば、北朝鮮は最初の一撃で韓国の指揮所や対戦車兵器などを潰せます。

40年前にアメリカが提案した、首都機能を南に移すことや、企業の光州への移動や、軍事面での72項目にものぼる細かい変更など、ほとんどなされていません。半島有事の際に作戦を指揮する権限は、いまだに韓国軍ではなく在韓米軍司令官にあります。米国側が長年、返還を示唆しても逃げ口上を駆使して延期し続けています。さらに韓国は、北朝鮮の核開発を阻止する動きは全く見せていません。

ルトワック氏は韓国を強く批判し、次のように述べています。
韓国は北朝鮮の非核化には殆ど興味がなく、金正恩体制の崩壊は望んでいない。日米が直面しているのは「朝鮮半島問題」で、二つの国で構成されている。一つは北朝鮮であり、どんな手段でも核武装解除を進めるべき国である。そしてもう一つは、韓国という無視すべき国である。
確かに、韓国は放っておいても日本にとって実害はほとんどないですし、静観するのが最も賢明な選択といえます。ただし、静観、ルトワック氏の言葉を借りれば、無視するにしても、日本としては韓国が日本に関する歴史の修正をすれば、それが事実ではないこと国際社会に訴えつつ、直接韓国と関わることはなるべく避けるべきです。
日米にとっては、たとえ韓国が中国に従属しようとしているにしても、そこに独立国として存在し、さらにその北に北朝鮮が存在し、核で中国も威嚇しているという状態は、決して最悪の状態ではないのです。
この状況のなかでは、韓国は日米にとって安全保障上は空地のような存在ではありますが、それでもこの空地があるという状態は決して悪い状況ではないのです。
最悪の状況は、北朝鮮が非核化し、朝鮮半島全体が中国の支配下に入ることです。こうなると、38度線は、対馬海峡になることになります。これだけは、避けるべきでしょう。韓国には何も期待できないですが、そこに安全保障上の空地があるということが重要なのです。
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2019年2月13日水曜日

中国によるアジア植民地構想、ほぼ頓挫へ―【私の論評】一帯一路は巨大な不良資産の山を積み上げて終わるだけ(゚д゚)!


1MDB事件への中国の関与が濃厚になり、反発強めるアジア各国


世界約70か国で進む中国の一帯一路プロジェクト。空港など各国の国の要所に、大きく
プロパガンダを張る中国政府(マレーシアのクアラルンプール国際空港、2019年2月)

 「(私の右肩が)いつでも風や雨からあなたを守り、(私の左肩も)あなたの支えになり続けるから、困難な山々を手を携えて乗り越えましょう!」

 2月5日の春節を目前に、中国政府がこう歌った友好国ソングを公表した。

 その友好相手国とはマレーシア。

 この歌は、今年が両国の国交45周年記念にあたり、中国政府が永遠の友好関係を切望して作ったという。

 言い換えれば、こんな陳腐なラブソングを作らざる得ないほど、両国関係において中国は切羽詰まった状況に置かれているといえるだろう。

 5年前の5月31日、中国・北京の天安門広場に面した人民大会堂では、「マレーシア・中国国交樹立40周年記念式典」が行われた。両国を代表して、マレーシアは親中のナジブ首相(当時)、中国は李克強首相が出席、両国は蜜月だった。

 それを象徴するかのように、式典にはマレーシア華人商工会などの経済団体代表約300人の大経済ミッションがナジブ首相に随行。

 さらに、生ドリアン輸入は禁止されているが、ナジブ首相からの大量のドリアン土産を中国政府はあっさりと「特例許可」、ドリアン外交が炸裂した。

(参考記事:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52186「中国がドリアン爆買い マレーシア属国化への序章」)

 しかし、あれから5年。事態は急変した。

 不正や腐敗政治の一掃とその関連で中国主導の一帯一路の大型プロジェクト見直しを掲げたマハティール政権が昨年5月に誕生。「新植民地主義は受け入れない」と習近平国家主席や李首相に大型プロジェクトの延期や中止を次々に表明してきた。

 これまで小国から屈辱的な扱いを受けたことのない中国は、動揺を隠し、静観を標ぼうしてきた一方で、「内心は怒り心頭だった」(中国政治学者)らしい。

 しかし、マハティール・ショックは止まることはなかった。
マレーシアのマハティール首相

 ナジブ政権の汚職体質にもメスを入れ、昨年、米国やシンガポール、スイスなどでも捜査が続くマレーシアの政府系投資会社「1MDB」の巨額不正横領事件に関連し、ロスマ夫人ら家族や関係者ともども、ナジブ氏をマネーロンダリングや背任罪など、実に42の罪で起訴したのだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53479「アジアを腐敗まみれにして属国化する中国の罠」)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54307「天国から地獄へ マレーシア・ロスマ前首相夫人に司直の手」)

 同事件では、ナジブ氏が首相在任中に同投資会社から約7億ドルを不正に受領していた疑惑だけでなく、家族や関係者を含め約45億ドルにも上る公的資金を横領したと見られてきた。

 本コラムでは、2015年3月、日本のメディアとして第1報を報じて以来、同事件の真相や背景について追及してきたが、ようやく、ナジブ氏の初公判が近く開かれることになっている(当初は、2月12日だったが、延期となった)。

 この時期に中国政府が面子そっちのけでマレーシアにラブソングを捧げるもう一つの理由が、実はこの裁判にある。

 公判での証拠、証言(約50人が証言台に立つ予定)いかんでは、ナジブ政権を支え、1MDBに深く関わってきたと疑惑のある中国にとって国際的に大きな信用を失墜させる事態に陥るからだ。

 「米国史上最大の泥棒政治による横領事件」(セッション米前司法長官)と称された世界を舞台に大胆に、かつ、複雑な手法で実行された国際的公金不正横領事件。
今年の春節の中国人の海外渡航先一番人気のタイのプーケットには、相変わらず、
お騒がせ中国人観光客が大挙して、地元の不評を買っている(タイのプーケット島、2019年2月)

 習国家主席肝いりの一帯一路の目玉プロジェクトであるECRLは、総工費550億リンギをかけ、南シナ海側のタイ国境近くからマラッカ海峡まで、マレー半島を東西横断する、すなわち「南シナ海とマラッカ海峡を結ぶ鉄道」だ。

 クアラルンプール近郊と東西の重要港を結ぶ総距離約700キロになる一大プロジェクトで、2024年7月の完成を目指していた。

 しかし、マレーシアの与党関係者によると「工事は約20%ほどでとん挫している状態だ」という。
 しかし、中国は、自国の輸入原油の80%が通過するマラッカ海峡の安全保障を、米国が管理するという「マラッカ・ジレンマ」を抱えている。

 南シナ海のシーレーンが脅かされた場合のバックアップとして、マレーシアとの協力関係を築き、マラッカ海峡のルートを確保したい考えだ。

 ECRLは、(米海軍の環太平洋の拠点がある)シンガポールを封鎖された場合、中東、アフリカ地域からマレー半島東海岸側に抜ける戦略的な鉄道網で、地政学的に極めて重要拠点となるマレーシアを取り込む中国の「一帯一路」の生命線である。

 しかし、マハティール首相は筆者との単独インタビューでも「ECRLは、マレーシアにとって国益にならない。凍結するのが望ましい」と発言している。

(参考記事: http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53065「マハティールの野党勝利 61年ぶりマレーシア政権交代」)

 一方、1月末の計画廃止の発表後、「中国政府は、融資の利子や工事費などを半額にするなど、計画の廃止を再考させるようあの手この手でマレーシア政府と交渉している」(マレーシア政府関係者)とされる。

 このこと自体、中国の劣勢状況を反映しているといえる。
また先月には、米メディアなどが、中国がこの件に深く関与していたとされる2016年の会議の議事録を暴露している。

 それによると、中国が1MDB関連の巨額流用汚職疑惑の渦中にあったナジブ政権に対し、一帯一路への協力と引き換えに1MDBの救済を申し出たとされる。

 さらに、不正事件の捜査を中止させるよう、中国政府が米国政府に対して影響力を行使できると提案していたことも明らかにした。

 これに対しナジブ氏は、数カ月以内に中国の銀行がその資金を融資し中国人労働者が建設作業に従事することを条件に、中国国有企業との約350億ドルの鉄道・パイプライン建設契約に署名したという。

 そのプロジェクトには、マハティール政権が廃止を先月いったん決定したとされる「東海岸鉄道計画」や、ボルネオ島・サバ州に建設予定のパイプライン事業が含まれていたという。

 また、同会議では中国の軍艦をマレーシアの2つの港に停泊させるための極秘協議もされたと議事録に記されているという。

 中国が一帯一路を通じ、過剰債務に陥っている新興国や発展途上諸国への影響力や支配を強め、融資の罠をはびこらせ、軍事的目的を果たそうとする思惑が浮き彫りになった。

 折しも、マレーシアと中国の国交樹立は、今から45年前の5月31日。

 ナジブ首相の父親、ラザク首相(マレーシア第2代首相)と周恩来首相(当時)の間で、同じく中国の人民大会堂で調印されたものだ。

 実は、ASEAN(東南アジア諸国連合)と中国との国交樹立は、マレーシアが先陣を切る形で始まり、その後、各国が続く形となった。

 しかし、マレーシアのマハティール首相が中国へ反旗を翻したいま、ほかのアジア諸国も追随する勢いを見せている。

 中国は“新植民地時代”を友好国ラブソングに期待を込めたのかもしれないが、あまりに前途は多難である。

【私の論評】一帯一路は巨大な不良資産の山を積み上げて終わるだけ(゚д゚)!

中国主導の現代版シルクロード構想「一帯一路」は、関係国のインフラ建設で、返済能力を度外視する融資を結ばせているとして、英語圏有力紙は酷評しています。

中国官製紙は最近、この「債務トラップ外交」と呼ばれる批判をかわすため、発展途上国に借款を結ぶ日本を例にあげ「なぜ西側諸国は日本を責めないのか?」と矛先を日本に向けました。専門家は、「日本と中国の手法は違う」と反論しました。

ブログ冒頭の記事では、マレーシアを事例にしていましたが、スリランカでも、マレーシアに先駆けて一帯一路構想に基づくインフラ整備を受け入れ、巨額融資を受けて同国第3の国際港コロンボ港を建設しました。

しかし、国の経済規模にふさわしくない巨大港の未熟な運営計画により、返済目途が立てられないでいます。このため政府は2017年7月、同国主要の国際港であるハンバントタ港を、中国側に99年契約で運営権を貸し出したのです。

共産党機関紙・環球時報は昨年7月15日、中国国内シンクタンクの中国現代国際関係研究所のワン・シー準研究員のオピニオン記事で、このスリランカの債務過多問題について「西側メディアは誤解を招いている」と反論しました。

ワン氏は、インドの戦略研究家ブレーマ・チェラニー氏が、一帯一路は債務トラップ外交だと批判していることを例にあげて、「中国陰謀論は、欧米メディアの根拠のない誇大広告だ」と主張しました。

ブレーマ・チェラニー氏

負債過多はスリランカの政治的不安定さと低収入、福祉政策などによるもので、「中国はその責任を負えない」としました。

さらに、2017年の同国統計を引用して、スリランカの借款(国家間の融資契約)は日本が12%、中国が10%だが、「日本を批判しない西側メディアはダブルスタンダード(二重基準)だ」と述べました。

2017年1月、スリランカのハンバントタ港近くに建設される中国資本の工業区域の設置に反対する、仏僧ら抗議者たち (AP Photo/Eranga Jayawardena)

中国側の主張には共感が得られていません。ブレーマ・チェラニー氏は、同日中にSNSで返答しました。「環球時報さん、私の名前が挙がった以上、答えますね。あなたはスリランカが中国により背負わされた負担を過小評価しています。日本によるプロジェクトの金利は0.5%に過ぎないのに、中国は6.3%です」。

ほかにも、ワシントン拠点のシンクタンク南アジア遺産基金の研究員ジェフ・スミス氏は、中国の一帯一路に関する問題を列挙しました。

ジェフ・スミス氏

「日本は(外国における)インフラ計画の取引で、機密を犯したり、主権を侵害したりするような内容を盛り込まない。腐敗を促す違法な政治献金や、債務をほかの港の見返りに差し出させるようなことはしていない。コロンボ港のような高額計画にも、(政治)宣伝に利用したりしない」。

環球時報の記事のコメントには、中国側の意見に反論がほとんどを占めました。「日本は友好を築こうとしている、中国は支配しようとしている」「日本は、植民地主義に基づいて海洋戦略上重要な位置にある地域を借金漬けにし、港を99年契約で貸し出させるよう迫ってない」「普通の融資国なら、情報提供や共有を要求したり、返済できないことが明らかな、腐敗しきった国のリーダーと融資を結んだりしない」。

あるユーザは「中国は、一帯一路の評判が悪くなっていることに焦っているのではないか」と指摘しました。

インドのメディア、ポストカードは2017年7月、スリランカの国の債務は6兆4000億円にも上り、全政府収入の95%が、借金の返済にあてられていると伝えました。そのうち中国からの借入は8000億円。同国財務相は「完済に400年かかる、非現実的だ」と同紙に答えました。

そもそも、一帯一路構想とはかつて日本がやっていた「円圏構想」のパクリです。「円圏構想」とは、「東アジア共同体構想の目的として、アジア共通通貨単位の導入による為替レート安定」を目指すものでした。

主に大蔵省を中心として1980年代の後半に本気で検討されていたようです。しかし、この構想には大きな問題があります。早稲田大学教授の若田部昌純氏は次のように指摘している。
これが経済学的にいかに問題かは、通貨バスケット制やドルペッグ制のような広い意味での固定相場制の問題点を考えてみればよい。国際経済学には、安定的な為替相場、国際間の資本移動の自由、および金融政策の自立的な運営の三つが確立しないという「不整合な三角形」と呼ばれる関係がある。この関係のもつ政策的な意味はきわめて大きい。すなわち、固定相場制(安定的な為替相場)を維持しようとすれば、資本移動を規制するか、金融政策の自立性を放棄するしかない。そして、固定相場制というのは投機攻撃にさらされやすいのである。(若田部昌澄『経済学者たちの闘い』東洋経済新報社)
産経新聞の北京支局に9年勤務し、2016年末に帰国した矢板明夫記者によると、中国共産党幹部は総じて元高を歓迎しているといいます。なぜなら人民元の価値が高い方が外国企業を買収するのに都合が良いと考えているからだそうです。まさに円圏構想的な発想にとらわれていると言っていいでしょう。

彼らは基軸通貨というものの本質が全く分かっていないようです。為替レートを高く維持することと、その通貨の利便性が高いことは必ずしも一致しないからです。実際に、彼らが頭でっかちに考えているほど、プロジェクトは進んでいないです。フィナンシャル・タイムズは次のように報じていました。
中国商務省のデータによると、一帯一路の沿線国家に対する中国からの直接投資は昨年、前年比で2%減少し、今年は現時点で18%減となっている。沿線53カ国に対する昨年の金融を除く直接投資は総額145億ドルで、対外投資全体のわずか9%だった。しかもこの投資の減少は、中国の対外直接投資が前年と比べて40%も増え、過去最高を更新する状況の中で起きた。中国当局が資本流出を止めるために対外取引の制限に動いたほどだ。(日本経済新聞 2017.5.12)
それともう一つ、海外直接投資の常識として、自国よりも経済成長が相当高い国に対して投資すれば利益が多くなるというものがあります。1〜数%の成長率の先進国等が、10%以上も成長をしている発展途上国に投資すると利率もかなり高いということです。日本の高度成長期やかつての中国がそうでした。

現在の中国のGDPの伸び率は6%台などとされていますが、実際はかなり低いようです。最近、唯一信じられる貿易統計をもとに高橋洋一氏が計算した中国のGDP成長率は1.5%としています。

最新の統計数値だと、各国のGDPの伸び率は、スリランカ3.1%、マレーシア5.9%、インドネシア5.1%、シンガポール3.6%ですから、もし中国のGDPの統計が正しかった場合は、全く儲からないということになりますし、仮に高橋洋一氏の計算が正しいとすれば、利益はあるはずですが、それにしてもかつての中国ようなわけにはいかないです。

このようなことを考えると、やはり一対一路は最初から収益率が少ないことがいえそうです。元々儲けがすくないところに、たとえ中国人労働者を働かせたりして、利益を根こそぎ奪おうとしても、あまり儲けにはならないということです。一帯一路がかつての中国のように、大成長するための起爆剤となることはないということです。

やはり、一帯一路は巨大な不良資産の山を積み上げて終わるだけになるのは目に見えています。かつて、日本が円圏構想でバブル崩壊を迎え、その後長期停滞に陥った歴史が被って見えてきます。

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