- 高市政権が守ったのはガソリン価格だけではない。医療、交通、農業、物流まで含めた国家機能そのものであり、危機の中でも我が国の日常が崩れなかった理由がわかる。
- 今回の強さは偶然ではない。我が国が長年築いてきた備蓄、共同備蓄、民間備蓄、LNG確保策といった厚い制度を、高市政権が一気に動かしたことで、危機を他国よりかなり低い水準に抑え込んだ実像が見える。
- マスコミが不安を煽る中でも、政府だけでなく官民が総力を挙げて穴を塞いでいた。誰が本当に我が国を守っていたのか、その答えがはっきり見える内容である。
中東危機でホルムズ海峡の機能が大きく損なわれたとき、世界のエネルギー市場は一気に緊張した。国際エネルギー機関(IEA)は3月11日、加盟国による計4億バレルの緊急放出を決めた。我が国も3月16日から備蓄放出に踏み切り、4月に入っても追加放出と代替調達の強化を続けている。危機は終わっていない。これは一時の騒ぎではなく、現実の供給危機である。 (Reuters)
だが、その中で我が国は崩れなかった。全国平均のレギュラーガソリン価格は3月16日に190.8円まで跳ね上がったものの、その後は4月1日に170.2円、4月8日に167.4円まで下がった。これは市場が自然に落ち着いたからではない。経済産業省が3月中旬の段階で「全国平均170円程度」に抑える方針を打ち出し、補助金を再開し、価格そのものを押し戻しにかかったからである。結果だけ見れば、現時点で高市政権の対策は大成功と言ってよい。 (Reuters)
しかも、成功の中身は価格だけではない。我が国は約50日分の石油を市場に回しながら、なお230日分の備蓄を維持している。しかも5月からさらに20日分を追加放出する方針を示し、同月までに輸入の過半をホルムズ海峡を通らない経路で確保する見通しまで立てた。つまり我が国は、危機の中にはあっても、危機に押し流される位置にはいない。他国と比べれば、リスク水準はかなり低いのである。 (Reuters)
1️⃣高市政権が結果を出せたのは、価格と供給を同時に守ったからである
今回の危機対応でまず見るべきは、価格対策が実際に効いたことである。経産省は補助金を再開しただけではない。3月下旬には卸売業者に対し、ガソリン価格算定の基準をドバイ原油から、より安いブレント原油へ切り替えるよう求めた。ドバイ原油が急騰し、ブレントの方が安くなった局面で、行政が価格指標そのものにまで踏み込んだのである。そこまでやったからこそ、190.8円まで上がった全国平均価格を167.4円まで押し戻せたのである。これは願望ではない。数字が示す成果である。 (Reuters)
供給面でも手は早かった。高市首相は4月10日、米国産原油の輸入が5月に前年同月比4倍となる見込みだとし、調達先をマレーシア、アゼルバイジャン、ブラジル、ナイジェリア、アンゴラなどへ広げていると説明した。さらに、サウジのヤンブー港やアラブ首長国連邦のフジャイラ港のように、ホルムズ海峡を迂回できるルートも使う構えである。これは単なる耐久戦ではない。供給構造そのものを組み替える危機管理である。 (Reuters)
しかも、全体の需給を冷静に見れば、我が国は「総量不足」に陥っているわけではない。4月9日のロイター報道では、経産省資料として、原油とナフサは全体として十分にあり、問題は主として地域的な流通の偏りとボトルネックだと整理されている。総量不足と局地的な配送の詰まりは別物である。ここを混同して「もう駄目だ」と騒ぐのは、現実の危機管理を見ていない。 (Reuters)
2️⃣我が国はもともと制度が厚い。その制度を使い切った高市政権は高く評価されるべきである
ここで見落としてはならないのは、今回の対応が、その場しのぎではないことだ。我が国の石油備蓄制度は、「石油の備蓄の確保等に関する法律」に基づくものであり、その目的は、石油供給の不足に備えて備蓄と適正な供給を確保し、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に資することにある。IEAも、日本の制度は政府備蓄90日分、産業備蓄70日分を柱とする重層的な仕組みだと整理している。我が国は、有事になってから慌てて貯め始める国ではない。平時から制度で備えてきた国なのである。 (Japanese Law Translation)
その制度の中核が三層構造の備蓄である。第一に政府備蓄、第二に民間備蓄、第三に産油国との共同備蓄である。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の公式資料によれば、日本はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートの石油会社に国内タンクを貸与し、平時は商業利用を認めつつ、有事には日本側が優先的に供給を受けられる仕組みを持っている。さらにJOGMECは、国内で10か所の国家石油備蓄基地と5か所の国家液化石油ガス(LPG)備蓄基地を管理している。外交、在庫、施設運営が一体になった、きわめて実務的な安全保障装置である。 (ジョグメック)
しかも民間備蓄は、単なる努力目標ではない。JOGMECの民間備蓄支援制度では、精製会社、特定石油販売業者、輸入業者に対し、直前12か月の実績に基づく70日分の備蓄義務が前提になっている。民間備蓄については、JOGMECが購入資金の低利融資を行い、その融資は国の利子補給金の対象となっている。つまり我が国は、民間に「頑張れ」と言うだけではなく、法的義務と金融支援を組み合わせて、平時から備蓄を維持させる制度を持っているのである。 (IEA)
制度の厚みは石油だけではない。経産省は2023年11月、経済安全保障推進法に基づき、JERAの供給確保計画を承認し、液化天然ガス(LNG)の戦略的余剰LNGを運用し始めた。JERA自身も、この枠組みの下で余剰LNGを確保し、有事には経産省の要請に基づいて供給する仕組みが導入されたと説明している。我が国のエネルギー安全保障は、石油備蓄だけでなく、LPG、LNGまで含めて層が厚いのである。 (経済産業省)
重要なのは、制度があるだけでは意味がないということだ。制度は使われて初めて力になる。その点で高市政権は高く評価されるべきである。三層の石油備蓄、共同備蓄、価格補助、価格指標の見直し、医療や交通向けの優先供給、代替調達の拡大、LNGの戦略的余剰枠――こうした既存制度を縦割りの中で眠らせず、一気に動かしたからこそ、今回の危機は他国よりかなり低いリスク水準に押し込められている。厚い制度だけでも駄目であり、政治判断の速さだけでも駄目である。厚い制度と、それを使い切る政治。その両方がそろったからこそ、今の成果がある。 (Reuters)
3️⃣マスコミが危機を煽る中、官民は総力で穴を塞いだ。そして豊かな国々と比べても、我が国は有利な位置にある
| 西鉄の運転指令所 |
今回、現実を支えたのは政府だけではない。JERAは3月の段階で、中東リスクの深まりに備え、世界の供給者と追加LNG調達の協議に入った。JOGMECは共同備蓄の優先アクセスを維持しつつ、2025年にはサウジアラムコ向け沖縄タンク貸与契約を更新し、約130万キロリットルの原油について緊急時の優先アクセスを日本側に残した。官だけでも、民だけでも、この局面はしのげない。官民がそれぞれの持ち場で一本でも多くの代替ルートを確保しようと動いたから、我が国の日常は崩れずに済んでいる。 (ジョグメック)
高市首相は4月5日、「6月にナフサが確保できなくなる」との報道を「事実誤認」と明言した。これは単なる反発ではない。現実に、政府は中東以外からの調達拡大を進め、全体では原油とナフサの総量を確保している。現場が必死に穴を塞いでいる最中に、危機の断片だけを切り取り、不安だけを肥大化させるなら、それは報道ではなく煽りである。コロナ禍で世界保健機関(WHO)が「インフォデミック」の害を警告したのは、まさにそのためであった。命に関わる話題で恐怖だけを増幅させる行為は、社会を守るどころか、社会を弱らせる。 (Nippon)
しかも、我が国の優位は、豊かな国々と比べた方がいっそう鮮明になる。韓国は4月上旬になっても、湾岸諸国に安定供給と自国船舶の安全確保を要請し、特使をカザフスタン、オマーン、サウジアラビアへ送って、原油とナフサの長期確保に奔走していた。シンガポールも約10億シンガポールドル規模の支援策を打ち出し、現金給付や燃料バウチャー、法人税還付拡大で衝撃を和らげようとしている。米国でさえ戦略石油備蓄の貸し出しを続け、3月の消費者物価ではガソリン価格が急騰した。欧州でも、ドイツ、フランス、英国、イタリアが価格抑制や税軽減、補助の追加に追われている。豊かな国々ですら、それほど追い込まれているのである。これに比べれば、我が国がいかに有利な位置にあるかは明らかである。 (Reuters)
最後に、中国要因にも触れておくべきである。現時点で、中国が日本の報道空間を直接動かしていると断定できる証拠までは確認できない。だが、中国が3月にガソリン、軽油、航空燃料の輸出を停止・抑制し、アジアの需給逼迫をさらに強めたのは事実である。日本国内で不安が過剰に増幅され、消費や企業行動が萎縮すれば、結果として中国に有利な構図が生まれ得る。ここは陰謀論で騒ぐ話ではない。現実の国益の問題として、冷静に警戒すべきである。 (Reuters)
結語
結論は明快である。高市政権は、少なくとも現時点では大成功している。価格は190.8円から167.4円まで押し戻した。約50日分を放出しながら、なお230日分の備蓄を維持した。5月からさらに20日分を追加放出し、輸入の過半を非ホルムズ経路で確保する見通しまで立てた。医療や交通など、止めてはならない部門への優先供給も動かした。官は価格、備蓄、物流、流通を動かし、民はLNG、ナフサ、代替ルート確保に奔走した。その総力で、我が国を他国よりかなり低いリスク水準へ押し上げているのである。
そして、ここで忘れてはならないのは、我が国にはもともと厚い制度があったということである。政府備蓄、民間備蓄、共同備蓄、JOGMECによる基地運営、LPG備蓄、LNGの戦略的余剰枠、事業者間融通の枠組み。こうした層の厚い制度があったからこそ、危機の際に打つ手があった。逆に言えば、制度だけでは駄目である。それを有効に活用し、迷わず、素早く、優先順位をつけて動かした高市政権の判断は高く評価されるべきだ。厚い制度を持つ国はあっても、それを危機の瞬間にここまで総動員できる国は多くない。今回我が国が見せたのは、制度の強さと政治の強さがかみ合ったとき、国家はここまで持ちこたえられるのだという現実である。
それでもなお、一部報道が命の不安などを大書し、全体の需給、備蓄、代替調達、制度の厚み、官民の努力、他国比較を薄く扱うなら、それは現実を伝える報道ではない。現実を歪める煽りである。いま必要なのは、最悪を想定しつつも、誰が本当に動き、誰が社会を止めずに守っているかを見抜く目である。我が国の静かな日常は、偶然でも幸運でもない。制度の厚みと、官民の総力と、それを使い切った政治判断によって守られているのである。
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