まとめ
- 経済的限界: ロシア経済は2024年に4.1%成長したが、2025年には成長率が1.3~1.5%に低下。国家福祉基金の枯渇、財政赤字1.7%、石油収入の26.9~41.7%減、インフレ9.5%、金利21%で戦争資金が2025年中に尽きる(ブルームバーグ、2024年12月;ロイター、2025年1月)。
- 軍事的限界: 半導体など西側技術への依存と労働力不足(失業率2.3%)で軍事生産が制約。2025年2月時点で人的損失70万、装備2万台以上喪失。2025年夏に死傷者100万人、兵器在庫枯渇の予測(CSIS、2025年2月;フィナンシャル・タイムズ、2024年11月)。
- 政治・社会的限界: プーチン支持率80%超だが、経済苦境と人口減少(2024年死亡数59.6万人超)で不満増大。国際的孤立が進み、BRICSや中国は西側の代替にならず、2025年に政権への圧力高まる(ロシア統計局、2024年12月;ガーディアン、2024年10月)。
- 継戦能力: 制裁の累積効果、技術・労働力・財政の限界で、戦争継続は2025年末~2026年半ば(約6~12か月)が限界。専門家も同様の評価(ブルームバーグ、2025年1月;国際戦略研究所、2025年2月)。
- 結論: 戦争経済への依存は一時的な成長をもたらしたが、持続性がない。2025年以降、スタグフレーションやリセッションのリスクが迫る(ワシントン・ポスト、2024年12月)。
経済的限界:資金と資源の枯渇
ウクライナ侵攻以降、西側の厳しい制裁と戦争経済への転換でロシアは複雑な局面に立たされている。2024年、GDPは4.1%成長し、軍事費の急増と政府の財政刺激策で一時的に持ちこたえた。2025年の国防費は予算の41%(約1770億ドル)を占め、装甲車両やドローンの生産を拡大した。しかし、2025年には成長率が1.3~1.5%に低下し、経済は過熱から冷却へと向かう。国家福祉基金は3年間で3分の2が消え、2025年秋には底をつく可能性が高い。財政赤字はGDPの1.7%に達し、エネルギー収入も制裁で大きく減少した。2024年末、石油価格は1バレル64.4ドルに下落、2023年初頭比で26.9~41.7%減という厳しい現実だ。インフレ率は9.5%に跳ね上がり、中央銀行は金利を21%に引き上げたが、民間投資は縮小し、経済の持続性が揺らいでいる。これらの経済的制約は、戦争を支える資金が2025年中に尽きることを示唆する(ブルームバーグ、2024年12月;ロイター、2025年1月;国際通貨基金、2024年10月)。
軍事的限界:兵器と兵力の消耗
軍事面では、兵器と兵力の維持が戦争の生命線であるが、ここにも暗雲が垂れ込める。ロシアは軍事生産を加速させたが、半導体などの先端技術は西側に依存し、制裁で入手が難しく、トルコや中国経由の迂回ルートではコストと時間がかかり、性能も不十分だ。労働力不足も深刻で、動員や徴兵逃れによる人口流出で失業率は2.3%と過去最低だが、技術労働者の不足が軍事生産を圧迫する。ウクライナでの損失は甚大で、2025年2月時点で人的損失は70万人以上、車両・装備は2万台以上と報告される。補充は追いつかず、専門家は2025年後半に主要兵器の在庫が枯渇すると予測する。米シンクタンクCSISは、2025年夏までにロシア軍の死傷者が100万人に達する可能性を指摘し、英米情報機関もこれを裏付ける。人的・物的損失の増大は、軍事能力の限界を2025年以降に露呈させるだろう(CSIS、2025年2月;フィナンシャル・タイムズ、2024年11月;BBC、2025年1月)。
政治・社会的限界:国民の支持と国際的孤立
政治面では、プーチン政権の支持率は未だ高く、戦争への支持は依然強い。しかし、経済的苦境が長引けば、国民の不満が膨らむ危険がある。制裁による国際的孤立は進み、BRICSや中国との関係強化でしのごうとするが、西側の技術や経済的支援の完全な代替にはならない。内部の政治的安定は保たれているが、戦争終結後の経済調整や不平等の拡大が政権に圧力をかける。社会的には、軍事費や契約兵への高額報酬で一部の生活水準は上がったが、インフレによる実質所得の減少と人口減少が不満を醸成する。2024年、死亡数が出生数を59.6万人上回り、社会の耐久力は試されている。戦争の負担が国民の支持を揺らし、2025年以降に動揺が広がる可能性がある(ロシア統計局、2024年12月;ガーディアン、2024年10月;エコノミスト、2025年2月)。
これらの現実を直視すれば、ロシアが戦争を続けられるのはあと約6~12か月、つまり2025年末から2026年半ばまでが限界だ。専門家や情報機関も「継戦能力はあと半年から1年」と評価し、2025年夏以降に経済や社会問題が深刻化すると指摘する。中国やインドとの関係強化や迂回貿易で一時的にリソースを補充できても、制裁の累積効果、技術依存、労働力不足、財政の限界は避けられない。戦争経済への依存は一時的な成長をもたらしたが、持続可能な発展を犠牲にした。プーチン政権は経済と政治の板挟みに苦しみ、2025年以降、スタグフレーションやリセッションのリスクが迫る。戦争終結や制裁緩和がなければ、ロシアの脆弱性はさらに露わになるだろう(ブルームバーグ、2025年1月;ワシントン・ポスト、2024年12月;国際戦略研究所、2025年2月)。あと半年から1年。それがロシアの戦争継続の現実的なタイムリミットである。
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