- 中国軍のJ15戦闘機が、海上自衛隊のP3C哨戒機に6月6日と8日、太平洋上で異常接近し、衝突リスクを伴う挑発的な飛行を行った。両機の最短距離は45メートルで、国際航空安全基準を下回る危険な状況だった。
- 日本は国際法を遵守し、冷静に対応。防衛省は中国に厳重抗議し、再発防止を求めた。中国外務省は日本の偵察がリスクの原因と反論したが、国際法を無視する中国の行動は信頼醸成を損なう挑発だ。
- 現代海戦では対潜水艦戦(ASW)が鍵であり、日本はP-3C、P-1哨戒機や護衛艦、潜水艦で世界最高水準のASW能力を持つ。2021年のマラバール演習でその実力を示した。
- 中国のASW能力、特に敵潜水艦の探知力は日本に大きく劣る。2020年の米国防総省報告書や2018年の演習失敗、2016年の無人潜水艇拿捕事件がその限界を露呈する。
- 中国はASWの劣勢を補うため、J15による牽制や対艦弾道ミサイルに頼る。今回の異常接近は日本のASW能力を封じる狙いだが、中国の挑発は対話を拒否する行為であり、緊張緩和には中国の行動変容が必須。
日本の冷静な対応と中国の反論
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P3Cは監視任務では攻撃用の武装を搭載しない。情報収集に特化したセンサーやカメラで運用される。対潜水艦戦(ASW)や対艦攻撃能力を持ち、魚雷や対艦ミサイルを搭載可能だが、今回は武装の報告はない。国際法を遵守し、冷静に対応した。対して、J15は機動性の高い戦闘機だ。空自のパイロットは、意思疎通がない状況で高度差なく接近すれば、衝突事故の確率が極めて高いと警告する。複数回の接近は中国軍の組織的な指示による可能性が高い。防衛省は11日、「山東」の艦載機が7、8日にP3Cに異常接近したと発表。日本政府は深刻な懸念を表明し、再発防止を申し入れた。浜田靖一防衛相は「極めて遺憾」と述べ、外交ルートで中国に厳重抗議した。2014年に中国のSu-27が自衛隊機に約30メートルまで接近した事案以来の異常接近だ。
P3Cは監視任務では攻撃用の武装を搭載しない。情報収集に特化したセンサーやカメラで運用される。対潜水艦戦(ASW)や対艦攻撃能力を持ち、魚雷や対艦ミサイルを搭載可能だが、今回は武装の報告はない。国際法を遵守し、冷静に対応した。対して、J15は機動性の高い戦闘機だ。空自のパイロットは、意思疎通がない状況で高度差なく接近すれば、衝突事故の確率が極めて高いと警告する。複数回の接近は中国軍の組織的な指示による可能性が高い。防衛省は11日、「山東」の艦載機が7、8日にP3Cに異常接近したと発表。日本政府は深刻な懸念を表明し、再発防止を申し入れた。浜田靖一防衛相は「極めて遺憾」と述べ、外交ルートで中国に厳重抗議した。2014年に中国のSu-27が自衛隊機に約30メートルまで接近した事案以来の異常接近だ。
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P3C |
中国外務省の林剣報道官は12日の記者会見で、「日本の艦艇や軍用機が中国の正常な軍事活動に接近して偵察することがリスクの根本原因」と反論した。日本に「危険行為」をやめるよう求め、中国軍の活動は「国際法と国際慣例に合致している」と主張した。両国の国防部門が意思疎通を保っているとも述べた。しかし、この発言は国際法を無視し、衝突リスクを高める中国の行動と矛盾する。信頼醸成を自ら踏みにじる挑発だ。
現代海戦の鍵:対潜水艦戦
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現代の海戦では、対潜水艦戦(ASW)が主力を担う。潜水艦はステルス性が高く、対艦ミサイルや魚雷で空母や艦隊を脅かす。ASWに優れた軍隊が海洋の覇権を握る。日本は世界最高水準のASW能力を持つ。P-3CやP-1哨戒機、SH-60K対潜ヘリ、ソナー搭載の護衛艦、静粛性に優れるおやしお型やそうりゅう型潜水艦を運用する。P-1は磁気探知装置、高性能ソノブイ、合成開口レーダーを備え、潜水艦探知に優れる。2021年のマラバール演習で、米国やインドと高度なASW戦術を披露した。日本のASW網は、米国の海底音響監視システムや無人機と統合され、太平洋での支配力を強化している。
現代の海戦では、対潜水艦戦(ASW)が主力を担う。潜水艦はステルス性が高く、対艦ミサイルや魚雷で空母や艦隊を脅かす。ASWに優れた軍隊が海洋の覇権を握る。日本は世界最高水準のASW能力を持つ。P-3CやP-1哨戒機、SH-60K対潜ヘリ、ソナー搭載の護衛艦、静粛性に優れるおやしお型やそうりゅう型潜水艦を運用する。P-1は磁気探知装置、高性能ソノブイ、合成開口レーダーを備え、潜水艦探知に優れる。2021年のマラバール演習で、米国やインドと高度なASW戦術を披露した。日本のASW網は、米国の海底音響監視システムや無人機と統合され、太平洋での支配力を強化している。
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海洋観測船「あかし」の進水式 |
潜水艦を支えるために、極めて高性能な海洋観測機器を搭載する海上自衛隊の海洋観測艦。逆に言うと海洋観測艦の性能がわかってしまうと、日本の潜水艦の活動限界についてもわかってしまう可能性もある。
ゆえに、海洋観測艦は潜水艦以上の機密保持性が求められる。実際、護衛艦や潜水艦は一般公開されることがある一方、海洋観測艦の内部が公開されることはまず二位。海洋観測艦は、海上自衛隊で潜水艦以上に秘匿性の高い艦と言える。
ASWは、単に兵器の性能、探索能力などで向上できるものではない、ハード・ソフト、マンパワーなどを含めた国家による総合力であり、短期間に養えるものではないし、ましてや技術やノウハウを剽窃したからといってすぐに高められるものではない。
中国のASWの遅れと挑発の狙い
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中国はASW能力、特に敵潜水艦の探知で日本に大きく劣る。Y-8Q哨戒機は約20機で、日本のP-3CやP-1に比べ数が少なく、センサー性能も劣る。2020年の米国防総省の報告書は、中国のASW能力を「地域的な作戦に限定され、遠洋での潜水艦追跡は困難」と評価する。054A型フリゲートや052D型駆逐艦のソナーは、日本の護衛艦のソナーに比べ精度が劣る。2018年の南シナ海の演習で、模擬潜水艦の探知に失敗した。2016年、米国の無人潜水艇を南シナ海で拿捕した事件は、中国の対潜哨戒能力の限界を露呈した。2023年の演習でも、空母戦闘群のASW防御が不十分だった。いかに優れた兵器を持ったとしても、発見できない敵を効果的に攻撃することはできない。
中国はASW能力、特に敵潜水艦の探知で日本に大きく劣る。Y-8Q哨戒機は約20機で、日本のP-3CやP-1に比べ数が少なく、センサー性能も劣る。2020年の米国防総省の報告書は、中国のASW能力を「地域的な作戦に限定され、遠洋での潜水艦追跡は困難」と評価する。054A型フリゲートや052D型駆逐艦のソナーは、日本の護衛艦のソナーに比べ精度が劣る。2018年の南シナ海の演習で、模擬潜水艦の探知に失敗した。2016年、米国の無人潜水艇を南シナ海で拿捕した事件は、中国の対潜哨戒能力の限界を露呈した。2023年の演習でも、空母戦闘群のASW防御が不十分だった。いかに優れた兵器を持ったとしても、発見できない敵を効果的に攻撃することはできない。
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中国のY-8Q哨戒機 |
中国はASWの劣勢を補うため、対艦弾道ミサイルやJ-15による牽制に頼る。今回の異常接近は、P3Cの監視を妨害し、日本のASW能力を封じる狙いがあったと見るのが妥当だろう。特にP3Cに、「山東」を含む空母打撃群の脆弱性を発見されたくないという考えがあったものと見られる。中国は日米などの訓練において監視することもあり、これに対して、日米が中国の航空機や艦艇に対して、今回のような妨害行為をしたことはなく、今回の事案は中国側の身勝手な行動と言える。2007年に中国の039型潜水艦が米空母近くに浮上した事例があるが、これは静粛性の低さから見ると偶然もしくは米軍に発見され追い詰められた可能性すらある。中国は新型096型潜水艦を開発中だが、2020年代半ばでは日本のASW網に対抗できない。
日本のASW能力は中国の海洋覇権封じ込めの鍵だ。中国の今回の挑発事案は、短期的な牽制にすぎない。日中の信頼醸成は重要だが、中国は今回の行動で対話を拒否した。国際法を無視し、信頼を踏みにじる行為は、中国自身の責任だ。日本のASW能力を脅威とみなしたこの事案は、中国が対話ではなく挑発を選んだことを示す。ASWに優れる日本は戦略的優位を保つ。緊張緩和は必要だが、それは中国が挑発をやめることから始まる。
日本のASW能力は中国の海洋覇権封じ込めの鍵だ。中国の今回の挑発事案は、短期的な牽制にすぎない。日中の信頼醸成は重要だが、中国は今回の行動で対話を拒否した。国際法を無視し、信頼を踏みにじる行為は、中国自身の責任だ。日本のASW能力を脅威とみなしたこの事案は、中国が対話ではなく挑発を選んだことを示す。ASWに優れる日本は戦略的優位を保つ。緊張緩和は必要だが、それは中国が挑発をやめることから始まる。
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