2025年5月7日水曜日

中国ヘリ発艦で引き返す  尖閣周辺で飛行の民間機  機長、当時の状況証言—【私の論評】尖閣の危機:中国の領空侵犯と日本の防衛の限界を暴く

中国ヘリ発艦で引き返す  尖閣周辺で飛行の民間機  機長、当時の状況証言

まとめ
  • 尖閣上空飛行と退避:81歳のパイロット志摩弘章さんが自家用機で尖閣諸島上空に接近したが、中国船からヘリが飛び立ったため海保から「危険」と警告を受け、退避して引き返した。
  • 問題関心の背景:2010年の中国漁船と海保巡視船の衝突事件を機に尖閣問題に関心。2015年にはフライトプランを提出し、尖閣上空を飛行して島々の写真を撮影。
  • 飛行の目的:中国は「日本を脅せば屈する」と考えていると指摘。海保任せにせず、国民として問題提起するため今回の飛行を実行した。

81歳のパイロット志摩弘章さんが3日、自家用機で新石垣空港から尖閣諸島上空に向かい、島々まで10数キロに接近したが、中国船からヘリが飛び立ったため海上保安庁から「危険」との無線警告を受け、退避して引き返した。尖閣周辺では中国艦船が日本漁船の操業を妨害しており、民間人の上空接近も困難な現状が浮き彫りになった。

志摩さんは2010年の中国漁船と巡視船の衝突事件を機に尖閣問題に関心を持ち、民主党政権の対応に疑問を抱いた。2015年にはフライトプランを提出し、尖閣上空を飛行して島々の写真を撮影したが、当時は中国船は見られなかった。志摩さんは「中国は日本を脅せば屈すると考えているのではないか」と指摘し、海保に任せきりにせず、国民として問題提起するため今回の飛行を実行したと述べた。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】尖閣の危機:中国の領空侵犯と日本の防衛の限界を暴く

まとめ
  • 領海と領空のルールの違い:領海は無害通航権により外国船の通過が制限付きで認められるが、領空は許可なく飛行できず、主権は絶対。侵犯すれば撃墜もあり得る。
  • 尖閣での中国の挑発:中国公船が領海に侵入し、2025年5月3日には中国海警のヘリが尖閣領空を15分侵犯。海保が対応し、航空自衛隊が那覇基地からF-15でスクランブル発進。
  • 那覇基地の制約:那覇基地から尖閣(約400キロ)への到達に15分以上かかり、中国ヘリが退去後に到着した可能性が高い。地理的制約が防空の課題。
  • 石原慎太郎の尖閣購入計画:2012年、石原都知事が尖閣購入を計画したが、民主党政権が国有化で阻止。都の計画が実現していれば、実効支配が強化された可能性がある。
  • 日中の緊張:中国は尖閣を「釣魚島」と主張し、領海・領空での活動をエスカレート。日本は那覇基地のスクランブルや海保で対応するが、緊張は高まるばかりだ。

領海と領空は、国際法の下でまったく異なるルールに縛られている。領海は沿岸国の主権が及ぶ海域だ。海岸線から12海里、約22キロの範囲で、沿岸国は法を執行し、資源を管理する権限を持つ。外国の艦船には「無害通航権」がある。沿岸国の平和や安全を脅かさなければ、領海を通過できる。ただし、武器の使用やスパイ行為は厳禁だ。尖閣諸島周辺の領海では、中国公船がしばしば無害通航を主張して現れる。しかし、日本はこれを認めない。海上保安庁が毅然と退去を求めるのだ。

対して、領空は領土と領海の上空であり、沿岸国の主権は絶対である。外国の航空機は許可なく飛べない。無許可の領空侵犯は、主権への挑戦だ。警告を無視すれば、国際法上、撃墜もあり得る。領空は国家の核心なのだ。1944年のシカゴ条約は、領空の国家主権を明確に定める。過去、領空侵犯を理由に航空機が撃墜された例は少なくない。1983年、ソ連は大韓航空007便をスパイ機と誤認し、領空内で撃墜。269人全員が命を落とした。1969年には、北朝鮮が米海軍のEC-121偵察機を撃墜し、31人が死亡した。2015年、トルコがロシアのSu-24M攻撃機を17秒間の領空侵犯を理由に撃墜。2025年5月、ウクライナが黒海上でロシアのSu-30SM戦闘機2機を海上ドローンで撃墜。これは戦時中の防空戦だが、新たな技術の脅威を示した。民間機の場合、シカゴ条約の改正により、武力行使は最後の手段だ。警告や強制着陸が優先される。

航空自衛隊那覇基地を飛び立つF!5

尖閣上空での対応は特に厳しい。2025年5月3日、中国海警局のZ-9ヘリコプターが尖閣領空を約15分間侵犯した。海保がこれを検知し、航空自衛隊の那覇基地からF-15戦闘機2機がスクランブル発進した。しかし、那覇基地は尖閣から約400キロ離れている。F-15の最高速度(マッハ2.5、約3000キロ/時)でも、尖閣到達には約8~10分かかる。準備や離陸の時間を加えると、15分以上が必要だ。中国ヘリは低速(Z-9の最高速度は約315キロ/時)で短時間飛行し、侵犯後すぐに退去した可能性が高い。Xの投稿では、「那覇からのスクランブルでは間に合わない」「ヘリが退去してから到達した」との指摘がある。実際、戦闘機が到着した時点でヘリは領空を離れていた可能性は否定できない。この遅れは、尖閣の防空における那覇基地の地理的制約を浮き彫りにする。

那覇基地は南西諸島の防空の要だ。F-15やF-35が常時待機し、中国機の動向を監視する。2023年度、航空自衛隊は669回のスクランブルを実施し、7割以上が中国機対応だった。特に尖閣周辺では、中国の活動が活発化している。Xでは、尖閣に近い下地島や魚釣島への基地建設を求める声もあるが、現状、那覇基地が主力だ。


尖閣をめぐる状況は、2012年に転機を迎えた。石原慎太郎東京都知事が、尖閣の民有地を都が購入する計画を打ち出した。中国の挑発に対抗し、実効支配を強める狙いだった。石原氏は上陸や施設建設を構想し、14億円の寄付を集めた。だが、民主党政権はこれを阻止。

2012年9月11日、国が20億5000万円で尖閣を国有化した。もし都の計画が実現し、港や灯台が建設されていれば、中国公船の領海侵入は抑えられ、実効支配は盤石になったかもしれない。国有化後、中国公船の侵入は日常化し、日中関係は冷え込んだ。石原氏の構想が実行されていれば、日本はもっと強い立場で尖閣を守れたかもしれない。

領海と領空の違いは鮮明だ。領海では無害通航権により、外国船の通過が制限付きで認められる。だが、領空では自由な通過など存在しない。主権は鉄壁だ。領海での違反は海保や海軍が対処し、領空侵犯は空軍が即座に応じる。尖閣では、中国公船が領海に侵入し、無害通航を主張するが、日本は退去を求める。領空では、中国軍機やヘリの接近に対し、那覇基地からのスクランブルで対応する。志摩さんの事例では、中国船のヘリが飛び立ち、危険と判断した海保が退避を促した。領空の緊張と中国の動きが如実に表れている。

領海の外には接続水域や排他的経済水域があり、航行の自由はさらに広がる。だが、領空に緩衝地帯はない。尖閣問題は、領海と領空のルールが日中の対立を複雑にする。中国は尖閣を「釣魚島」と呼び、活動をエスカレートさせている。緊張は高まるばかりだ。日本は主権を守るため、揺るぎない姿勢を貫かなければならない。

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