2025年5月8日木曜日

カシミール地方 インドの攻撃にパキスタン反発 報復が焦点—【私の論評】イン・パ衝突、中国の野望と日本の決断

カシミール地方 インドの攻撃にパキスタン反発 報復が焦点

まとめ
  • インドがカシミールでのテロ(26人死亡)報復として、パキスタンの過激派拠点9カ所をミサイル攻撃。31人死亡、46人負傷。人口密集地も標的だ。
  • パキスタンは市民犠牲を非難し、報復を表明。核保有国間の緊張が高まり、エスカレーションが懸念される。
  • トランプ大統領が攻撃停止と仲介を提案。ルビオ国務長官も自制を促す。

インド政府は、2025年4月22日にカシミール地方のインド実効支配地域で起きたテロ事件(インド人観光客ら26人死亡)への報復として、5月7日、パキスタン実効支配地域にあるイスラム過激派組織の拠点9カ所をミサイルで攻撃。

ロイター通信によると、31人死亡、46人負傷。2019年の空爆と異なり、人口密集地も標的となり、被害が拡大。パキスタン政府はテロへの関与を否定し、市民の犠牲を理由に「主権侵害」と強く非難。シャリフ首相は報復を表明し、両国の緊張が急激に高まる。

核保有国間の対立エスカレーションが国際的に懸念される中、トランプ米大統領は「ひどい状況」と述べ、攻撃の即時停止と緊張緩和のための仲介協力を提案。ルビオ国務長官も両国の安全保障担当者と会談し、自制を呼びかける。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】イン・パ衝突、中国の野望と日本の決断

まとめ
  • 南アジアの危機:2025年4月22日、カシミールのパハルガムでテロが発生、26人(主にインド人観光客)が死亡。インドは5月7日、パキスタン実効支配地域をミサイル攻撃(31人死亡)。パキスタンは管理ラインで砲撃報復(民間人12人死亡)。核保有国同士の衝突で、1999年以来最悪の危機だ。核戦争のリスクが迫る。
  • 中国の暗躍:中国はパキスタンにJF-17戦闘機やミサイル技術を供与し、インドを牽制。南アジアの覇権を狙い、クアッドを揺さぶる。日本の石油ルートと日米同盟に脅威を与え、核リスクを増幅する。
  • 核のトリレンマ:中国、インド、パキスタンは核抑止、安全性、不拡散の三課題(核のトリレンマ)に直面。抑止力強化は軍拡を招き、安全性は運用を縛り、不拡散は戦力を制限する。インドはアグニVミサイル配備、パキスタンは戦術核増強、中国はICBM拡大で不安定化が進む。
  • 日本の対応:外交でインドを経済・インフラ支援、パキスタンと対テロ協力で関与。クアッド活用で中国を牽制。防衛ではミサイル防衛(SM-3、THAAD)強化、核武装の国民的議論、極超音速ミサイル開発で自主防衛力を高めるべき。
  • 安倍氏の遺志:安倍元首相は現実主義を貫き、2017年の北朝鮮危機で米国の核の傘とミサイル防衛を重視。2022年に核共有議論を提起し、インド連携、中国対抗、抑止力強化を訴えた。日本の覚悟を世界に示す。
カシミール発!核危機の火薬庫

パハルガムでテロ

カシミールが血に染まった。2025年4月22日、パハルガムでテロが起き、26人、ほとんどがインド人観光客が銃撃で死んだ。インドは黙っていない。5月7日、「オペレーション・シンドゥール」を発動し、パキスタン実効支配地域のテロ拠点9カ所をミサイルで叩いた。31人死亡、46人負傷。パキスタンは「主権への冒涤」と叫び、シャリフ首相が報復を宣言。管理ラインで砲撃を開始し、民間人12人が犠牲になった。

両国は空域を閉鎖、300便以上がキャンセル、25の空港が停止。インドは核攻撃を想定した訓練を200都市で展開。1999年のカルギル戦争以来、最悪の危機だ。核保有国同士の衝突は、一歩間違えれば世界を焼き尽くす。2019年、プラワマでインド治安部隊40人がテロで死に、インドはパキスタンを空爆。パキスタンは戦闘機を撃墜し、核の準備を始めた。

ポンペオ元米国務長官は「あの夜、世界は核戦争の縁に立った」と振り返る。今、トランプ大統領が仲介を申し出るが、両国の怒りは収まらない。日本の石油ルート、日米同盟、すべてが脅かされる。核の火蓋が切られれば、誰も逃れられない。

中国の暗躍と核のトリレンマ

中国は裏で糸を引く。パキスタンの盟友として、JF-17戦闘機やミサイル技術を供与。2025年4月28日、「自制」を口にしつつ、パキスタンの「独立調査」要求を後押し。インドとは、2020年のガルワン谷衝突や2022年の基地攻撃で火花を散らす。中国の狙いは明白だ。インドを封じ、南アジアの覇権を握る。日米豪印のクアッドを揺さぶり、日本への圧力を強める。

インド、パキスタン、中国は互いに国境を接しており国境紛争が絶えない

この地域の不安定さは、「核のトリレンマ」によってさらに悪化する。中国、インド、パキスタンは、核抑止力の維持、核の安全性、核不拡散という三つの課題に直面する。抑止力強化は軍拡を招き、安全性は運用を縛り、不拡散は戦力を制限する。インドは中国やパキスタンに対抗し、射程5000kmのアグニVミサイルを配備。パキスタンは戦術核を増強。中国はICBMを拡大。この三すくみの緊張は、地域を不安定に突き落とす。

日本の対応と安倍の遺志

日本はこの危機を傍観できない。石油ルート、日米同盟、核戦争のグローバルリスクが日本の命運を握る。外交では、クアッドを通じインドとの絆を深める。経済援助やムンバイ-アーメダバード高速鉄道の拡大を進める。パキスタンには人道支援や対テロ協力で関与し、緊張を和らげる。トランプの仲介を支持し、国連やG7で「核の自制」を訴える。中国の暗躍には、日米同盟を基盤に南シナ海や台湾海峡で共同演習を増やし、インド太平洋戦略で野心を抑え込む。

防衛では、非核三原則を堅持しつつ、日米安保の核の傘に頼る。SM-3やTHAADでミサイル防衛を強化し、早期警戒衛星を配備。核武装の議論もタブー視せず、国民的議論を始めるべきだ。技術的には核弾頭製造が可能だが、国際的孤立や非核三原則の壁がある。NATO型核共有も視野に入れる。核武装に至らなくとも、極超音速ミサイルや長距離巡航ミサイルを開発し、敵基地攻撃能力を整えるべき。

安倍元首相

安倍晋三元首相は現実主義者だった。2017年の北朝鮮危機で米国の核の傘とミサイル防衛を重視。2022年には核共有議論を提起し、「安全保障の変化に対応せよ」と訴えた。南アジアの危機に直面すれば、インド連携、中国対抗、抑止力強化を推しただろう。核の議論を恐れず、日本の覚悟を世界に示しただろう。

日本は南アジアの核危機に立ち向かい、外交でインドを支え、パキスタンを抑え、中国を牽制。防衛ではミサイル防衛を固め、核の議論を進めるべきだ。安倍の現実主義を胸に、日米同盟を基軸に動くべきだ。核のトリレンマが南アジアを揺さぶる今、日本は秩序を守る使命を果たすべき。傍観は許されない。決断し、行動する時だ。

(参考:CNN、The New York Times、Al Jazeera、DW、National Security Archive、テリス『インドの核政策』)

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