まとめ
- コメ価格高騰の解決策: 供給不足によるコメ価格高騰に対し、備蓄米50万トン以上の放出で価格を50%下げられると提案。
- JA独占の課題: 農水省の備蓄米放出条件(買戻し義務、玄米仕入量5000トン以上)がJA全農の落札独占(93~94%)を招き、参加業者はわずか10社。
- 直接販売の提案: 条件撤廃と一般国民へのコメ直接販売を推進。官公庁オークションサイトや造幣局の事例から技術的に実現可能。
- 直接販売のメリット: JA独占を是正し、国民ニーズに直接応える。農家や国税庁の直販サイトが参考に。
- 財政健全性と国債: 日本の財政はG7で2番目に健全。国債の直接販売(特に物価連動国債)を国民に開放すべき。
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米の収穫 |
前回コラムでは、経済理論に基づき、コメ価格高騰の原因が供給不足にあるとし、備蓄米を50万トン以上放出すれば価格が約50%低下すると提案した。
今回はその実務的実現策として、農水省の備蓄米放出条件(買戻し義務や玄米仕入量5000トン以上の基準)を撤廃し、JA全農が落札量の93~94%を占める独占状態(3回入札で参加業者は10社のみ)を改善することを提案する。
一般国民への直接販売を導入すべきで、官公庁オークションサイトや造幣局の記念通貨販売のような既存の仕組みを活用すれば、技術的障害はない。これにより、JAの買い手独占を是正し、国民のニーズに直接応えるメリットが大きい。
また、財政危機は誤解で、統合政府のバランスシートで見れば日本の財政はG7
で2番目に健全であり、国債は優良投資対象。アメリカでは普通の国債直接販売が日本では金融機関経由に限られ、筆者が関わった物価連動国債も国民が入手しにくい。コメと国債の直接販売を推進し、国民本位の政策を進めるべきだ。
で2番目に健全であり、国債は優良投資対象。アメリカでは普通の国債直接販売が日本では金融機関経由に限られ、筆者が関わった物価連動国債も国民が入手しにくい。コメと国債の直接販売を推進し、国民本位の政策を進めるべきだ。
この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。
【私の論評】コメ価格高騰の真相!JA独占と輸出補助金の闇、政府直販で解決なるか?
まとめ
- コメ価格高騰の原因: 高橋洋一氏は2024年のコメ価格高騰(単価830円/60kg、価格指数2.3倍)が超過需要(需要>供給、超過需要率6%)に起因し、価格上昇率60%と連動(相関係数0.86)すると分析。
- 備蓄米放出の効果: 備蓄米50万トン以上を放出すれば、理論的には、年間生産量約700万トンの6%(約42万トン)の不足が解消され、単価が50%下落(830円/60kg→約415円/60kg)すると試算。ただし、過去事例からは30~40%下落にとどまる可能性も。
- JA独占と直販の提案: 上の要因として、JAの独占(落札シェア93~94%)が供給を制限するため、政府直販を提案。消費者価格の安定と国民が直接コメを手に入れられるメリットを強調。
- 輸出補助金の影響: 輸出補助金が国内供給を減らし、超過需要を増大(2024年輸出急増、2025年2月3割増)。価格高騰の一因だが、JA独占やインフレなど他の要因のほうが大きいが、将来的な悪影響が懸念される。
- 国債直販と政府の役割: コメと同様に国債の直販を提案。IT化で実現可能であり、JAや金融業者への依存が国民の利益を損なう「公金チューチュー」構造を防ぐべき。政府は硬直した考えを捨て、柔軟に対応すべき。
高橋洋一氏は、このコラムの政府直販提言の根拠となるツイートと、それに付随して、二つのグラフをXにポストしている。それを以下に掲載する。
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グラフ1 |
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グラフ2 |
では、どうすればいいのか。高橋氏は、備蓄米50万トン以上を放出すれば、年間生産量約700万トンの6%(約42万トン)の不足が解消され、超過需要がほぼゼロになると試算する。これにより、2024年の単価830円/60kgが50%下落(約415円減)し、約415円/60kgまで下がるという。確かに、2019年の単価650円/60kg程度に戻る過程で、需給調整が進むことで大幅な価格低下が可能だと高橋氏は見ている。しかし、過去の事例(2010年代の備蓄米放出)では、10%の供給増で価格が20~30%下落したケースもあり、実際は30~40%の下落にとどまる可能性もある。
なぜこうなるかといえば、JAの独占が価格抑制を妨げている面があるからだ。JAは備蓄米の落札シェアで93~94%を占め、一般消費者への供給を制限していると見られる。高橋氏は、この状況を打破するため、JAを介さず国民に直接販売する仕組みを提案する。政府が直販に踏み出せば、消費者価格の安定が実現するだけでなく、国民が求めるコメを直接手にできるメリットが生まれる。
さらに、米の輸出業者への補助金が価格高騰の一因となっている可能性も見逃せない。2024年以降、輸出が急増(1~7月で過去最高、2025年2月で3割増)し、グラフ2の超過需要率(6%)と価格上昇率(60%)に影響を与えている。補助金が農家を輸出向け生産にシフトさせ、国内供給が減少するからだ。無論現状ではJAの独占やインフレ、減反政策の影響も大きいが、将来的に輸出補助金がさらに悪影響を及ぼす可能性は否定できない。
高橋氏は、コメの直販と同じく、国債の直販も提案している。かつてこれらの直販は技術的に不可能だったが、IT化が進んだ今、それは現実的な選択肢となった。コメをJAや輸出業者に、国債を金融業者に任せきりにすれば、国民全体が享受すべきメリットが一部の業者の利益にすり替わる。いや、それどころか、公金が意図的に搾取される「公金チューチュー」構造に悪用される危険すらある。無論、農協や輸出業者だけが悪いとは言わない。高橋洋一氏もそのようなことは言っていない。むしろ政府の制度設計などに問題があると言える。
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農協ビル |
これでは本末転倒である。政府は従来の仕組みや硬直した考え方を捨て、柔軟に社会に対応すべきだ。国民が求めるコメを安く手に入れられる社会、国債を金融業者を介さず直接購入できる仕組みを構築すべきである。これは、何も、なんでも国営化し、社会主義を目指せと言っているのではない。
政府は、民間だけに任せるとうまくいかないどころか、国民の利益に反することになってしまいかねない事業について、従来の仕組みだけで対処するという硬直した姿勢や考え方を捨てて、柔軟に社会に対応できる能力を養うべきだと主張しているのだ。これは、経済安全保障の観点からも重要なことである。それこそが、今、政府に求められている真の役割である。
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2023年2月25日
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