まとめ
財務省によると、2024年度末の「国の借金」(国債、借入金、政府短期証券の合計)は1323兆7155億円で、前年度比26兆5540億円増、9年連続で過去最高を更新。税収不足で借金が増加。
- 国の借金総額:2024年度末1323兆7155億円、前年度比26兆5540億円増、9年連続最高更新。
- 内訳:普通国債1079兆7344億円(GX債含む)、借入金46兆9310億円(1兆6303億円減)、政府短期証券93兆8996億円(2兆4003億円増)。
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新川財務次官 |
普通国債残高は1079兆7344億円(前年度比26兆818億円増)で、GX経済移行債3兆7028億円を含む。借入金は46兆9310億円(1兆6303億円減)、政府短期証券は93兆8996億円(2兆4003億円増)。
【私の論評】政府の借金1300兆円の真実:日本経済を惑わす誤解を解く
まとめ
- 「政府の借金」は誤解を招く表現である。 個人や企業の借金とは異なり、自国通貨建ての国債を発行する日本は通貨発行権を持ち、デフォルトリスクがほぼなく、恐れる必要はない。
- 国債は民間の資産として機能する。 国債は政府の負債であると同時に、国民や銀行が保有する財産であり、国内で9割以上が保有され、国民の預貯金で賄われている。
- バランスシートと統合ベースで負債は相対化される。 国のバランスシートでは資産(金融資産など)が1000兆円を超え、統合ベース(政府と日銀を一括分析)では日銀保有の国債が負債を相殺し、対GDP比150%程度に圧縮され他国と比較すれば低い水準。
- 「借金」危機論はプロパガンダとして使われる。 財務省の「1300兆円の借金」強調は増税や緊縮財政を正当化し、過去の緊縮政策(1990年代、日本、ユーロ圏)は経済停滞を招いた。
- 経済成長が負債を軽減する。 戦後の日本は高度経済成長で債務を大幅に減らした。適度なインフレと成長こそが財政を健全化する鍵である。
個人や企業の借金とは別次元の仕組みで動く政府の「借金」は、恐れるべきものではない。このブログの過去の記事"安倍元首相「日銀は政府の子会社」発言は完全に正しい…批判するマスコミと野党は無知―【私の論評】「政府の借金」という言葉は間違いだが「政府の小会社」は、政府と日銀の関係を適切に表している"においては直接このテーマを扱っていない。だが、経済や国家運営の議論を通じて、単純な「借金」の枠組みでは語れない財政の真実を浮かび上がらせた。
この記事では、このブログ記事を糸口に、日本の財政の実態を解き明かす。「政府の借金」という言葉がなぜ正しくないかを証明する。さらに、国のバランスシートと、EUで標準の統合ベースの視点を取り入れ、真実を明らかにする。
個人や企業の借金は、返せなければ破滅だ。借りた金を返す義務があり、失敗すれば全てを失う。しかし、日本のような国は違う。自国通貨建ての国債を発行し、必要なら円を供給できる。デフォルトのリスクはほぼ存在しない。
日本銀行は国債の約半分、600兆円以上を保有する。買い入れで金利を低く抑えている(日本銀行「国債保有残高データ」、2024年)。利払い負担は驚くほど軽い。2023年のデータでは、利払い費は年間約8兆円、歳出全体のわずか7%だ(財務省「国債発行状況」、2024年)。
長年のゼロ金利政策がこの軽さを支える。コロナ禍の2020年から2021年、政府は百兆円の財政支出を国債で賄った。市場は動じず、円の価値も揺るがなかった。この事実は、「借金」が国の信頼を損なわないことを物語る。ブログ記事では、経済の力が国家を動かすと示唆する。日本の国債は、その柔軟性を体現している。
国債とは何か。「借金」と呼ぶのは簡単だが、それは民間の資産でもある。国債は政府の負債であると同時に、銀行、投資家、国民が持つ財産だ。日本の国債は9割以上が国内で保有される。国民の預貯金が銀行を通じて国債購入に回る。
麻生太郎はこう語った。「政府の借金は国民の預貯金で賄われている」(X投稿、2023年)。国民は政府に「貸している」側だ。日本の家計金融資産は約2100兆円、いわゆる国の借金1300兆円を大きく上回る(日本銀行「資金循環統計」、2024年)。国債は「国民が返さねばならない借金」などではない。
市場もその安全性を認め、10年物国債の利回りはわずか0.5〜1%(財務省「国債金利情報」、2024年)。年金積立金管理運用独立行政法人は資産の2割を国債に投資する。その安定性を信頼している(2024年データ)。
英国の歴史を見れば、19世紀のナポレオン戦争で発行した国債を、200年以上経った今も全額返済していない。借り換えを繰り返し、経済成長で負担を軽減してきた。日本も同じだ。先のブログでの議論は、経済の仕組みが単純な収支を超えることを示す。国債が経済を支える資産であることを裏付ける。
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ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト |
国の財政を深く見るために、バランスシートの視点を取り入れよう。国のバランスシートは、政府の資産と負債を整理したものだ。負債側には国債1300兆円が並ぶ。だが、資産側には見過ごされがちな巨額の財産がある。
政府は金融、土地、インフラ、国有企業株、そして日銀が保有する資産を持つ。2023年の財務省試算では、政府の純資産は約500兆円のマイナスだ。しかし、資産総額は1000兆円を超える(財務省「国の財務書類」、2023年)。しかもその7割以上が、金融資産だ。
特に、日銀が保有する国債は、統合ベースで見れば政府の負債を相殺する。EUで標準の統合ベースでは、政府と中央銀行を一つの主体として分析する。この視点では、日銀が保有する600兆円の国債は、政府が自分自身に借りているようなものだ。実質的な負債は大きく減る。
英国やドイツもこの方法で財政を評価する。単純な「借金」の数字を相対化するのだ。日本の場合、統合ベースの負債は対GDP比で120%未満に圧縮される。これは、米英より低い水準であり、G7では日本より低いのはカナダだけである。危機的とは言えない(OECD「政府財政統計」、2024年)。この視点は、「借金」の恐怖を過剰に煽る誤解を解く鍵だ。
「政府の借金」という言葉自体が問題だ。増税や歳出削減を正当化する道具として使われることがある。財務省は「国の借金が1300兆円を超えた」と繰り返す。国民に危機感を植え付ける。
しかし、低金利と国内保有の構造を考えれば、即座に危機などない。Xの投稿では、「財務省の『借金』話は増税のためのプロパガンダだ」との声が響く(X投稿、2024年)。経済学者の高橋洋一は、日本の国債が自国通貨建てで外国からの借金ではないため危機ではないと断言する(『日本の「借金」1200兆円は嘘である』、2021年)。
1990年代後半、「財政危機」を理由に消費税増税と歳出削減を進めた。結果、デフレが悪化し、経済は停滞した(藤井聡『デフレと円高の何が悪いのか』、2012年)。2008年の金融危機後、ギリシャなどユーロ圏諸国は緊縮財政で経済を縮小させた。自国通貨を持つ日本にはそんな制約はない。「借金」危機論は、誤った政策を導く罠だ。
先のブログ記事では、情報の解釈が国家を左右すると示唆した。このプロパガンダの危険性を浮き彫りにした。日本の財政をもう一度見つめ直そう。国債は100%近く円建てだ。通貨発行権を持つ政府は円を供給できる。
日銀は国債だけでなく、株式ETFも購入する。2024年時点で約60兆円の株式を保有する(日本銀行「金融政策決定会合資料」、2024年)。これは、経済を支える柔軟な財政運営の証だ。「借金」の規模は1300兆円と大きい。しかし、経済全体とのバランスで見れば、危機的ではない。
対GDP比は250%だが、統合ベースでは120%程度に下がる。負債の数字だけで判断するのは誤りだ(IMF「World Economic Outlook」、2024年)。適度なインフレは名目GDPを増やし、債務負担を軽くする。
戦後の日本は、債務がGDP比200%を超えていた。だが、高度経済成長で1970年代には40%以下に減らした。経済が成長すれば、「借金」は問題ではなくなる。
結論だ。「政府の借金」という言葉は、通貨発行権を持つ政府の低いデフォルトリスク、国債が民間の資産として機能する事実、バランスシートや統合ベースでの実質負債の小ささ、そして危機論がプロパガンダとして使われる現実を無視している。だから正しくない。
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安倍首相(当時) |
先のブログ記事では、経済の柔軟性が単純な収支を超えることを示唆した。日本の円建て国債と日銀の支援がその証だ。アベノミクスは2012年から金融緩和と国債発行で経済を刺激した。さらに、コロナ禍においては、安倍・菅両政権で、合計100兆円の補正予算を組み、コロナ対策にあたったが、制御不能なインフレは起こらなかった。日本はいわゆる「借金」を自由に操れるのだ。
だが、過度な国債発行がインフレや金利上昇を招くリスクは忘れてはならないなどともっともらしく語る御仁もいるようだが、インフレの対処は日本ならしやすい、過度のインフレになれば、政府は緊縮財政、日銀は金融引き締めをすれば良いだけだ。金利上昇は、適度なインフレ状況を保つ限りは、あり得ない。「借金」という言葉が国民を惑わせ、古いタイプの政治家や官僚の判断を誤らせ、公共投資や社会保障を縛ってきた。真実を見極め、国の未来を切り開く。それが今、必要なことだ。
【私の論評】
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安倍元首相「日銀は政府の子会社」発言は完全に正しい…批判するマスコミと野党は無知―【私の論評】「政府の借金」という言葉は間違いだが「政府の小会社」は、政府と日銀の関係を適切に表している 2022年5月13日
日銀保有の国債は借金ではない 財務省の見解が変わらないなら国会の議論に大いに期待―【私の論評】高校の教科書にも出てこない「政府の借金」という言葉を国会で使わなければならない、日本の現状 2022年4月16日
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