2025年5月3日土曜日

中国車にエコカー補助金も問題だが一番は不当な為替レート 元安は世界経済混乱の元凶—【私の論評】元安の裏に隠された中国の為替操作とは? 世界経済混乱の真相

中国車にエコカー補助金も問題だが一番は不当な為替レート 元安は世界経済混乱の元凶


髙橋洋一氏が「髙橋洋一チャンネル」第1265回で、中国製電気自動車(EV)へのエコカー補助金支給問題と人民元の過度な安さ(元安)を厳しく批判した。2025年5月2日に公開された動画では、日本政府が環境性能を基準に支給するクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)が、中国のBYDなど外国車にも適用されている現状に疑問を投げかけた。

立憲民主党の藤岡隆雄議員が国会で国産メーカーを保護すべきだと是正を求めた際、政府が「難しい」と回答したことに対し、疑問を投げかけた。補助金が中国メーカーの日本市場拡大を後押しし、国産車との競争で不利になると訴えた。動画では、中国のEVが補助金込みで約200万円という低価格で販売されている例を挙げ、「安すぎる」と問題視した。

中国は国内でもエコカー普及策を講じている

さらに髙橋氏は、補助金以上に深刻な問題として元安を取り上げた。人民元が不当に安く抑えられていることで、中国製EVが低価格で日本市場に流入し、日中貿易の不公平な構造を生み出していると主張。元安は市場原理に基づかず、中国政府による為替操作が背景にあるとし、資本取引の制限がその要因だと説明した。この状況が続けば、日本の自動車産業のみならず世界経済全体に混乱をもたらす「元凶」になると警告した。

日本の政策対応についても苦言を呈した。現政権が補助金廃止や元安是正に積極的でない姿勢を批判し、「難しい」と繰り返す政府の態度に「何が難しいのか」と疑問を投げかけた。解決策として、補助金制度を見直し、中国車への支給を制限する一方、関税や税金を課す「マイナスの補助金」を導入するよう提案。

元安是正に向けては日本単独では難しいとし、アメリカと連携して中国に圧力をかけるべきだと訴えた。具体的には、アメリカが元安是正を強く主張すれば、日本がその流れに乗る形で効果的な対応が可能だと述べた。補助金に頼る政策よりも、ガソリン税減税など直接的な国民支援策を優先すべきとの考えも示した。

最後に、髙橋氏は視聴者に対し、エコカー補助金や元安問題の裏にある国際的な経済競争の「アンフェアな構造」を理解するよう呼びかけた。政府やメディアの情報を鵜呑みにせず、データや事実に基づいて問題の本質を見極める重要性を強調し、日本の経済政策がこのままでは産業競争力や国民生活が脅かされると警鐘を鳴らした。

この記事は、高橋洋一氏のYouTube番組「高橋洋一チャンネル」の内容を新聞記事風にまとめたものです。詳細を知りたい方は、動画をご覧ください。

【私の論評】元安の裏に隠された中国の為替操作とは? 世界経済混乱の真相

まとめ
  • 高橋洋一氏は、人民元の過度な元安が市場のルールに反すると批判し、中国政府の為替操作と資本取引の制限が原因だと指摘する。
  • 元安になっても外国投資家の買いが制限され、高くなっても国内の売りが抑えられるため、市場で自然なバランスが取れない。人民銀行が人民元を売買し、意図的に安く保つ構造が元安を維持。
  • 人民元の価値が市場より安くなり、中国製品が輸出先で安く売れる。エコカーや太陽光パネル、低価格な鉄鋼製品が世界市場を席巻し、各国の産業に打撃を与えている。
  • 高橋氏は、元安が政府の操作によるもので、日本の自動車産業など他国の競争力を損ない、世界経済に混乱をもたらすと警告する。トランプ政権の高関税を彷彿とさせる指摘だ。
  • 解決策として、米国と協力し、中国に資本取引の自由化を求める圧力をかけるべきだと高橋氏は訴える。真実を見極め、立ち向かう姿勢が必要だと強調する。
人民元

高橋洋一氏は、人民元の過度な元安が市場のルールに反すると鋭く批判する。中国政府が為替を操作し、資本取引に厳しい制限を設けていることがその原因だ。中国では、個人や企業が人民元をドルや円に換える金額に年間の上限があり、たとえば個人は年間5万ドルまでと決められている。それを超える場合や、海外への資金移動、投資には国家外為管理局の事前承認が必須だ。
たとえば、子どもの留学費用を送るにも目的を証明する書類が必要で、企業が海外投資のために資金を動かすにも当局の許可が欠かせない。違反すれば罰則が科される。この仕組みが、人民元の価値を市場の需要と供給で自然に決まるのを邪魔しているのだ。
人民元が安くなりすぎれば、普通なら外国の投資家が「安い」と感じて人民元を買い、その結果、人民元の価値が上がるはずだ。しかし、中国では海外からの投資が厳しく制限されている。金融や不動産など特定の分野では外資の参入が禁止されたり制限されたりしており、上海自由貿易区のような一部地域でしか緩和されていない。
逆に、人民元が高くなりすぎた場合も、国内から人民元を売って外貨に換える動きが制限されるため、市場のルールで自然にバランスを取ることができない。こうした状況下で、中国の中央銀行である人民銀行は、為替市場で人民元を売ったり買ったりして、意図的に人民元を安く保つ政策を進められるのだ。上の
その結果、人民元の価値が市場の実情よりも安く抑えられ、中国製品が輸出先で驚くほど安く売れるようになる。高橋氏が動画で題材としたエコカーでは、中国の電気自動車が日本で安く売られている背景にこの元安が大きく影響しているが、他にもひどい例は少なくない。たとえば、中国製の太陽光パネルや鉄鋼製品が、元安による価格競争力で世界市場を席巻し、日本のメーカーが太刀打ちできない事態が続いている。
中国のゾンビ企業の敷地に置かれた鉄鋼製品の山

特に鉄鋼製品は高付加価値のものではないが、大量生産される低価格な粗鋼や鋼板が多く、これが各国市場に溢れかえっているのだ。安価な中国製品が大量に流入することで、各国の産業が打撃を受け、雇用の喪失や貿易赤字の拡大を招いている。
しかし、この元安は市場のルールではなく、政府の操作によるものだと高橋氏は断言する。日本の自動車産業をはじめとする他国の競争力が損なわれ、世界経済に混乱をもたらしていると警鐘を鳴らす。高橋氏は、トランプ政権が中国に高関税を課した背景、つまり為替操作や不公正な貿易慣行への対抗措置を直接支持しているわけではないが、元安が不公平な貿易構造を生むという指摘は、それを彷彿とさせるものだ。
この問題を解決するには、米国などと協力して中国に資本取引の自由化を求める国際的な圧力をかけるべきだと高橋氏は訴える。真実を見極め、立ち向かう姿勢が求められているのだ。

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