トランプ大統領が「相互関税」を発表したことでアメリカの株価が急落した。だが、トランプ氏はこれを「予想されたこと」と冷静に受け止め、関税導入を「重病患者の手術」に例えた。アメリカ経済は手術を終えた病人であり、今後は静養を経て好景気になると強気だ。株価下落にも関わらず関税政策を緩める気はなく、近いうちに半導体や医薬品への新たな関税を発表する意向も明らかにした。
【私の論評】トランプ関税の衝撃と逆転劇!短期的世界不況から米エネルギー革命で長期的には発展か
- トランプ氏は関税で米国の貿易赤字を解消し、製造業を守り、「経済自立」と「競争力回復」を目指す。1980年代から貿易赤字にこだわり、関税を切り札と信じている。
- 短期的には関税が世界不況を招く。貿易コストが上がり、輸入品価格が高騰、消費が冷え込み、輸出産業が報復関税で打撃を受け、1~2年で経済が停滞する。
- 長期的には米国のエネルギー戦略が鍵。シェールガス、SMR、核融合でエネルギー価格を下げ、3~5年後に経済を立て直し、不況を帳消しにする可能性がある。
- 日本は関税で自動車や電子機器が標的となり、消費税批判も受けているが、報復せず消費税減税や米国とのエネルギー協力、CPTPPで米国抜きの貿易を進めるべき。
- 短期混乱は確実だが、長期的なエネルギー戦略でトランプの賭けが成功する可能性がある。日本としても、冷静に勝ち筋を探すべき。
トランプ氏が選挙でぶち上げた公約が、世界を震撼させている。目的は明確だ。米国の貿易赤字をなくし、国内製造業を守ることにある。トランプ政権の関税の本音は、ズバリ「米国経済の自立をぶち上げること」と「世界での競争力を取り戻すこと」だ。トランプ氏は1980年代からずっと、貿易赤字にムカついてきた男だ。関税こそがその切り札だと、頑なに信じてきた。
この関税が短期的にもたらすものは何か。世界が不況に突っ込む可能性だ。経済の常識で考えれば、関税は貿易のコストを跳ね上げる。輸入品の値段が上がれば、消費者の財布は締まり、輸出産業は報復関税でボコボコにされる。結果、世界の貿易量がガクンと落ち込む。
米国内では、輸入品の値上がりでインフレが燃え上がり、家計は冷え込む。部品を輸入に頼る製造業はコストが跳ね上がり、競争力がズタズタになる。中国や欧州は経済成長が鈍り、日本も巻き込まれる。
過去に米国の成長率が関税で2%も落ち込んだ事実がある。2025年も同じような衝撃が待っているだろう。この不況は、関税を引き上げた直後の1~2年でハッキリ顔を出す。短期的には経済が停滞する泥沼から逃れられない。それでもトランプ政権は、この混乱を逆手に取る気だ。他国との外交交渉を有利に進めるための武器にしようという腹だろう。
だが、長期的には話がガラッと変わる。米国のエネルギー戦略がはまれば、形勢は逆転する。トランプ政権はシェールガスや石油をガンガン増産し、安全な原子炉スモール・モジュール・リアクター(SMR)や、核融合っていうクリーンな技術に巨額の投資をする。これでエネルギー価格を下げる算段だ。
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SMRの1ユニットはトレーラーで運べる程度の大きさ |
トランプ氏は気候変動対策や脱炭素には冷ややかだ。当面は化石燃料をフル回転させ、3年後にはSMRでコストを下げ、5年後には核融合の実用化で製造業をブーストする気だ。欧州や日本が脱炭素に拘泥している間に、米国はエネルギー安をバネに経済を活性禍させるだろう。エネルギー価格が下がればインフレは収まり、国内生産は勢いづく。エネルギー輸出が増えれば貿易収支も上向き、ドル高の圧力も和らぐ。こうして関税の不況を帳消しにし、米国経済は成長のレールに戻る。この逆襲は3~5年以上の時間がかかる。鍵はエネルギー技術のブレイクスルーだ。
日本はどうなるか。米国に輸出の自動車や電子機器が関税の標的た。トランプ氏は日本の消費税を「ズルい」とケチをつけてきた。その真偽はともかく、日本の消費税を関税と同じような、輸出障壁というのだ。どう対応するべきか。報復関税なんてバカな真似はせず、消費税を下げてみせろって話だ。これだけでも日本の景気は良くなる。
それに、エネルギー政策で米国とタッグを組む手もある。米国の原子力技術を取り入れ、エネルギーコストを下げる策を進めれば、経済のダメージを抑えられる。さらに、日本にはCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)という切り札がある。米国抜きの世界貿易をガンガン推し進める道だ。トランプ関税で米国市場が危うくなるなら、CPTPPを盾にアジア太平洋で貿易網を固め、米国以外の国とガッチリ手を組む。これで関税の衝撃を和らげ、日本主導の貿易圏をぶち上げる戦略が浮かんでくる。
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建築中のトカマク型核融合炉の内部 核融合炉は従来の原子炉と異なりクリーンなエネルギー源 |
関税で米国内でインフレが燃え上がれば、米連邦準備制度は利上げに追い込まれ、ドル高が進むだろう。日本の円安が加速し、輸出産業に救いの手が伸びる。短期的には、トランプ関税で世界経済がガタガタになるのは確実だ。だが、長期的にはエネルギー戦略が筋が通ってる。そのためトランプの「賭け」が大当たりする可能性だってある。
結論だ。トランプ関税は「短期的には痛いが、長期的には米国の力を強める政策」だ。その成否はエネルギー政策の実行力と他国の動きにかかっている。関税の嵐にビビりすぎず、長い目で経済を見ろ。日本だって冷静に立ち回れ。CPTPPで米国抜きの貿易をぶち上げつつ、柔軟に勝ち筋を探るべきだ。
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