2022年2月14日月曜日

原発が最もクリーンで経済的なエネルギー―【私の論評】小型原発と核融合炉で日本の未来を切り拓け(゚д゚)!

原発が最もクリーンで経済的なエネルギー

岡崎研究所

 ロバート・ハーグレイヴス(ThorCon International共同創立者)が、1月26日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、「もしきれいな電力が欲しいのなら、核分裂を利用せよ。核事故は起こるが、害のリスクは極めて小さい」との論説を寄せ、原子力発電を推奨している。


 この論説の筆者はダートマス大学で教えている人物で、原子力エンジニアリング会社、ThorCon Internationalの創立者である。そういう彼の立場からの論説と言えるが、同時に原発の利用を推奨して、それなりに説得力のある論を展開していると言える。

 地球温暖化と、それに伴う気候変動は、すでに台風やハリケーン・サイクロンの巨大化、山火事の多発と巨大化などで、人類に大きな災害をもたらしている。多くの死者も出ている。

 これから脱炭素社会を作っていく必要ははっきりしているが、その中で、「(火力のように二酸化炭素を排出しない)クリーンで(再生可能エネルギーより)経済的な」原子力発電を重視していく事が必要であろう。再生可能エネルギーで世界のエネルギー需要をまかなえればそれでもいいが、今後も増え続ける発電の断続性など、克服すべき課題は多い。これに対し、原発は既に確証された技術である。事故が起きたときに、被害を限定するために原子炉の小型化、地下への設置などの方策も考えられるだろう。

 世界的には、ハーグレイヴスが言うように、原発をさらに作る方向が、EUでの原発のグリーン認定の動きや中国の原子炉建設計画などで出てきている。世界では、現在、57の原発が建設中であるという。

 欧州では、英国のジョンソン首相、フランスのマクロン大統領が国内での新しい原発の建設を承認した。中国は1年当たり10基の原発を約束しているというし、中東等でも原発建設が予定されている。

 ドイツの原発ゼロ政策はこの動きに反するが、気候変動への懸念が広がるにつれ、原発は増える方向にあると判断される。

日本も科学的、建設的な議論を

 日本に関しては、2011年の東日本大震災による福島原発の事故により、それまで54基あった原発はほとんどが稼働停止となった。10年経った21年3月現在で、定期検査中も含めて稼働中のものは9基のみである。また、21基につては既に廃炉することが決まっている。今後、現在停止中の原発をどのように再稼働して行くのか、廃炉の決まった原子炉の放射能物質の処理をどうするのか、具体的道筋がまだ見えて来ない。

 日本の中長期的エネルギー政策をどうするか、脱炭素社会の経済構造をどうするかなど、感情的短絡的議論ではなく、より冷静で科学的、建設的かつ世界的視野をもった論議を期待したい。

 21年夏には、持続的エネルギーとされている太陽光パネル設置の土地開発で、水害による人的被害が大きくなったという指摘もあった。ただ、論説でも指摘された通り、事故があったから使用ゼロではなく、事故の再発防止を徹底して行く方向で、技術が人間の生活にもたらす恩恵には真摯に向き合って行く姿勢が大事ではないだろうか。飛行機にしても、車の交通事故、ロケットなどにしても、そうして継続されているのだろう。

【私の論評】小型原発と核融合炉で日本の未来を切り拓け(゚д゚)!

原発を巡っては現在主に2つの動きがあります。

一つは上の記事にもある通り、小型化です。

ざっくりと言ってしまうと、小型原発は、従来の原理の原発を小型化したものです。従来の出力100万キロワット超の原子力発電所と異なり、1基当たりの出力が小さい原子炉のことです。大型の原子炉に比べ冷却しやすく、安全性が高いとされます。

2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに欧米を中心に「原発離れ」が進みました。しかし脱炭素の機運が高まる中、温暖化ガスをほぼ出さず、大型炉よりも安全で低コストの小型炉に注目が集まっています。小型原発は規模が小さいがゆえに、たとえ電源がなくても、冷却ができるため、より安全とされています。

これは、従来の原発より出力が小さい「小型モジュール炉(SMR)」として、脱炭素社会に適した次世代技術として注目を集めています。米国など主要国の後押しを受け、メーカーが開発を加速。発電量が天候に左右される風力、太陽光など再生可能エネルギーの弱点を補う「安定性と柔軟性」(米企業)に期待が高まる一方、コスト面から専門家の間には商用化に慎重な見方もあります。

1年の多くが氷で閉ざされるロシア北東のチュコト自治管区ぺベクの港に、全長144メートルの巨大な「船」が停泊している。船内では小型原発2基(出力計7万キロワット)が稼働し、地域の電力源を担う。開発したロシア国営企業ロスアトムは、既存の火力発電所などに取って代わることで「年間5万トンの二酸化炭素(CO2)排出を削減できる」と説明しています。

ロシア国営企業ロスアトムが開発した小型モジュール炉を搭載した船

SMRは、脱炭素の機運が急速に高まる中で、小回りの利く安定電源の候補として浮上しました。米国やカナダ、英国が開発資金を拠出しているほか、昨年10月にはフランスのマクロン大統領も巨額投資の方針を打ち出しました。日本でも萩生田光一経済産業相が今月6日、SMR開発をめぐる国際連携に政府が協力する方針を明らかにしました。

開発を競うメーカーで、商用化に最も近いと目されるのが米新興企業ニュースケール・パワーです。出力7.7万キロワットのSMRは米当局の許認可手続きで先行し、2027年の稼働開始を目指します。同社は「需要に合わせて供給量を調整できる」と、発電量が不安定な自然エネルギーの補完的役割を強調。外部電源や注水に頼らず、原子炉を自然冷却する「これまでにない性能」を持つと安全性をうたいます。

半面、原発が避けて通れない核廃棄物の処理問題や、事故のリスクは解消されていません。SMRは安全性やセキュリティー面を考慮すると、発電コストが割高になり、商用化のハードルはかなり高くなる可能性も指摘する識者もいます。

ニュースケール社が設計したSMRの上部約3分の1の実物大模型=米オレゴン州コーバリス

もう一つの動きは、核融合炉です。これは、原子核融合反応を利用した、原子炉の一種です。発電の手段として2022年時点では開発段階であり、21世紀前半における実用化が期待される未来技術の一つです。

これに関しては、「核大国」米国の現状を把握しておくべきでしょう。 米国は原子力発電所の国内での新設はもちろん、輸出もできないデッドロックに直面していました。ところが 豪州に対する原潜の技術供与により、オーストラリア原潜向けに発電所用の小型原子炉を「輸出」できる展望が開け、デッドロックから脱出する道筋が見えてきたのです。

それは原子力関連の技術維持にも役立ちます。 米国の国益にとって決定的なブレイクスルーであり、原子力産業と軍産複合体にとっては「光明」とも言えます。 原潜向けの小型原子炉は、発電所に使われる「加圧水型原子炉(PWR)」とほぼ同じもので技術的な差はありません。

米国は上記でも述べたように、部品を現地に運んで組み立てる「小型モジュール炉(SMR)」を開発中で、オーストラリア南部アデレードで組み立てるとみられます。

一方核融合は水素などの軽い原子核どうしが融合して新しい原子核になる反応で、太陽など恒星の中心部で生み出される膨大なエネルギーの源。発電にあたり温室効果ガスや、高レベル放射性廃棄物を排出しないことから、エネルギー問題や環境問題の解決につながるとして期待がかかります。

核融合炉の詳細については、以下を御覧ください。


核融合炉の利点・欠点は以下のようなものです。

〈利点〉
  • 核分裂による原子力発電と同様、温暖化ガスである二酸化炭素の排出がない。
  • 核分裂反応のような連鎖反応がなく、暴走が原理的に生じない。
  • 水素など、普遍的に存在する資源を利用できる。
  • 原子力発電で問題となる高レベル放射性廃棄物が継続的にはあまり生じない(もっとも古くなって交換されるダイバータやブランケットといったプラズマ対向機器は高い放射能を持つことになる。ただし開発が進められている低放射化材料を炉壁に利用することにより、放射性廃棄物の浅地処分やリサイクリングが可能となる)。
  • 従来型原子炉での運転休止中の残留熱除去系のエネルギー損失や、その機能喪失時の炉心溶融リスクがない。
〈欠点〉
  • 超高温で超高真空という物理的な条件により、実験段階から実用段階に至る全てが巨大施設を必要とするため、莫大な予算がかかる。
  • 炉壁などの放射化への問題解決が求められる(後述)。
核融合関連の技術開発に取り組む京都大発のベンチャー、京都フュージョニアリング(KF社、東京)は2月2日までに、核融合発電の実証実験プラントの建設を計画していることを明らかにしました。2023年中にも着工し、核融合反応で生じたエネルギーを発電用に転換する技術開発を進めます。同社によると、核融合を想定した発電プロセスの実証施設は世界でも例がないといいます。


核融合炉内の反応で生み出されるエネルギーはそのままでは発電に使えず、転換には特有の技術が必要とされます。

計画するプラントでは、核融合反応でエネルギーが放出される状況を疑似的に再現し、同社が開発する装置で熱エネルギーに変換。さらに発電装置を駆動することで、実際に電気を起こします。プラントは十数メートル四方に収まる規模で、想定している発電能力も数十キロワットとごく小規模といいます。

核融合発電を巡っては、現在、実用化できる規模の反応を安定的に維持するための開発競争が繰り広げられています。KF社は、こうした技術的ハードルが近い将来に克服されることを見越し、さらにその先の技術を確立させることでスムーズな実用化につなげます。長尾昂社長は「核融合発電を実用化するにあたって将来、避けては通れない部分。知見を重ねて技術的に先行したい」といいます。

同社は2日、三井住友銀行や三菱UFJ銀行といった大手金融機関やベンチャーキャピタルから総額約20億円の資金を調達すると発表。技術開発の加速や人員体制の強化などに充てるとしている。

プラントは23年中の着工を目指し、現在、建設候補地の検討を進めています。実証プラントに設置する装置の製造は国内のメーカーに依頼する方針といい、国内で技術やノウハウを蓄積することで、将来的な国際的競争力も確保します。

小型原発も、核融合炉も日本も手がけており、日本でも将来的には両方とも実用化される可能性は高いです。まさに、日本は小型原発と核融合炉で日本の未来を切り開きつつあるといえます。

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