ロシア「米潜水艦が領海侵入」 米軍は否定
ロシア国防省は12日、クリル諸島(北方四島と千島列島)近くのロシア「領海」で米海軍の潜水艦を探知したと発表した。ロシアのインタファクス通信などが報じた。米軍はロシアの発表を否定し、米ロ対立がインド太平洋地域でも改めて浮き彫りになった。
ロシア国防省によると、同国の太平洋艦隊が軍事演習を実施していたクリル諸島近くの海域で米海軍の攻撃型原子力潜水艦を探知したという。ロシアは「しかるべき措置」を講じたところ、潜水艦が領海内から出たと主張した。
米国のインド太平洋軍の報道担当者は12日の声明で「ロシアの領海で我々が活動していたという主張は真実ではない」と反論した。「潜水艦の正確な位置についてコメントはしないが、我々は国際水域で安全に飛行し、航行し、活動している」と強調した。
米国とロシアはウクライナ情勢をめぐり対立を深めている。バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は12日に電話協議したが、米政府高官は記者団に対し「数週間前からの状況に根本的な変化はなかった」と説明した。米政権はロシアがウクライナに侵攻すると懸念し、ロシアは否定している。
【私の論評】日本は新冷戦においても冷戦時と同じくロシアを封じ込め、東・南シナ海で米軍に協力し、西側諸国に大きく貢献している(゚д゚)!
ロシア側は、どのような報道をしているかは、以下のリンクをご覧ください。
https://ja.topwar.ru/192232-istochnik-raskryl-podrobnosti-obnaruzhenija-amerikanskoj-podlodki-v-rajone-kurilskih-ostrovov.html
これは、ロシア語のソースを機械翻訳をしたもののようで、ロシアのどの艦艇がどの潜水艦(バージニア型)を発見したかなどの詳細は記述されているものの、大筋では上の記事で示されている内容と同じであり、ここでは特に内容を掲載はしません。
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米バージニア型原潜 |
潜水艦の行動は、各国海軍とも極秘だ。米国大統領でも、米原子力潜水艦の動きは知らさていません。これは、世界共通です。日本も例外ではありません。
ただ、日本でも例外はあります。
それは、このブログにも掲載したことがあります。海上幕僚監部は2020年9月15日、当時実施中の「2020(令和2)年度インド太平洋方面派遣訓練」に、潜水艦1隻を追加派遣すると発表しました。
潜水艦の行動は先にものべたように、「極秘中の極秘」であり、この公表は極めて異例でした。同盟国・米国も了解しているとみられます。国際法を無視して、南シナ海の岩礁を軍事基地化している中国への牽制とともに、中国の具体的行動への“警告”と分析する関係者もいました。
米中貿易戦争が激化するなか、中国の軍事的挑発を阻止する狙いだったのでしょうか。中国は反発しましたが、動揺を隠しきれないようでした。
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海自の「そうりゅう型」潜水艦 |
当時安倍晋三首相は同年9月17日夜、テレビ朝日系「報道ステーション」に生出演した際、「自衛隊の訓練は、練度を向上させるためで、どこか特定の国を想定したものではない。南シナ海における潜水艦の訓練は15年前から行い、昨年も一昨年もしている」と説明しました。
重ねて、当時の安倍首相は「事実上、そうした訓練は(近隣国である)相手方も、十分に承知していることが多い」とも述べており、中国を意識したメッセージであることは、間違いありませんでた。
中国は南シナ海のほぼ全域に歴史的権利があると主張し、独自の境界線「九段線」を引いています。
国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は2016年、こうした主張を否定したにもかかわらず、中国は、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の岩礁を勝手に埋め立てた人工島に滑走路やレーダーを建設したほか、パラセル(同・西沙)諸島に地対艦ミサイルを配備し、軍事拠点化を進めています。
当時防衛省がリスクを侵してまで潜水艦派遣公表したのには意図があったと考えられます。これはあくまで推測ですが、中国が南シナ海で何らかの許容できない行動をしたのではないでしょうか。
中国は現状を少しずつ変更して、軍事的覇権を強める戦術を取っています。自衛隊がそれを察知し、米国と情報共有したうえで、中国側にメッセージを伝えたとみるのが自然でしょう。
自衛隊の哨戒能力は世界最高です。日本周辺で各国艦船や潜水艦の動向をリアルタイムで把握しています。当時の中国の抑制的な反応を見る限り、日本のメッセージは伝わったのではないでしょうか。
中国がいくら艦艇数を増やしてみたところで、現代の海戦の主役は潜水艦です。水上に浮かぶ艦艇は、今やミサイルや魚雷で破壊される標的にすぎません。
中国は無論攻撃型原潜や、通常型潜水艦も建造していますが、それでも日米の世界トップクラスの哨戒能力で中国の潜水艦の行動は逐一日米に把握されてしまいますが、日米の潜水艦の行動、特にステルス性に優れた日本の潜水艦の行動は全く把握できていません。
ASW(対潜水艦戦闘力)では、日米に到底及ばない中国は、海洋戦においては日米に勝つことはできません。実際に日米あるいは、日本と単独とでも真っ向から海戦になった場合には、中国は勝てません。
だからこそ、防衛省は上記のようなメッセージを発信したのでしょう。そうして、この強いメッセージに対しても、中国は抑制的な反応しかしませんでした。これは、日本を下手に刺激すると、日本がさらに南シナ海に多数潜水艦等を派遣して、中国海軍の動きを完璧に封じる挙に出ることを恐れたためと考えられます。
そうして、ロシアが今回「米潜水艦が領海侵入」を公表したことにも何らかのメッセージが込められていると受け取るのが普通でしょう。
それは無論のこと、米国に対する牽制でしょう。実際米国は現在アジア太平洋地域に空母3隻のほか2隻の強襲揚陸艦も派遣しており、これはベトナム戦争以降最大数の派遣です。
米国としては、ウクライナ情勢に関しては、無論米国も関与するつもりでしょうが、それにしても大部分はウクライナに任せいざというときは、NATOにかなりの部分を任せるつもりなのでしょう。
それよりも、中国・北の脅威に対処するとともに、ロシアに対して東側から圧力を加えることによって、ロシアの軍事力を分散させることを狙っているのでしょう。実際、ロシアは戦車や歩兵戦闘車、ロケット弾発射機などの軍事装備を極東の基地から西方へ移動し始めています。米当局者やソーシャルメディアの情報で明らかになっています。
実際、ロシアは広大な国土を守備しなければならず、国土の東側の部分で日米が大々的に軍事演習などを実施されると、こちら側にも兵力を割かなければならなくなります。
ロシアはこうした動きを牽制するためにも、「米潜水艦が領海侵入」 したことを公表したのでしょう。
ただ、昨日このブログに掲載したように、バイデン政権はインド太平洋戦略をホワイトハウスのサイトに公表しましたが、その中でロシアについては一言も言及していません。
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新たにインド太平洋戦略を公表したバイデン政権
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昨日のブログでは、このあたりについて以下のように言及しました。
米国としては、ロシアのインド・太平洋地域における影響はなしとみているといえると思います。実際そうなのでしょう。ロシアの太平洋艦隊も、ロシアの原潜等も、米国には脅威とみなしていない、少なくとも米国のコントロール下にあると見ているのだと思います。無論、それには日本の強力な対潜水艦戦闘力(ASW)等が関係していると思います。
そうして、この地域における最大の脅威はとりもなおさず、中国であるということです。そうして、これこそが米国にとって大きな脅威であると認識しているのです。しかも、軍事力だけではなく、経済力や技術力などによるこの地域への浸透と不安定化を懸念しているでしょう。
実際、上の記事にもあるとおり、米国のインド太平洋軍の報道担当者は12日の声明で「ロシアの領海で我々が活動していたという主張は真実ではない」と反論したのみです。
ロシアに関しては、冷戦中に日本がそうしたように、日本の優れた対潜哨戒能力で、ロシア海軍特に、潜水艦の動きを封じ込めるだろうと考えており、さらには今や一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回るロシアにできることは限られているので、特に脅威とはみなしていないのでょう。
日本の対潜戦闘力(ASW)は、はやばやと潜水艦22隻体制を整えるとともに、日本独自の新型哨戒機P1も多数導入したうえ、対潜ヘリコプター搭載護衛艦を各種導入し、冷戦時よりもさらに強化されており、当然のことながら中国とともにロシアの動きも監視しており、米国としてはインド太平洋地域でのロシアの動きはさほど脅威とは感じていないのでしょう。
ただ、だからといって、ロシアは旧ソ連の核兵器と軍事技術を継承しており、決して侮れる相手ではないものの、インド太平洋地域においては当面大きな脅威になるとはみなしていないのでしょう。そんなことよりも、この地域への中国の浸透のほうが、かなり大きく深刻であると判断しているのでしょう。
ロシアの動き封じるという意味では、日本は新冷戦においても冷戦時に旧ソ連を封じ込めたのと同じくロシアをオホーツク海で封じ込めています。さらに東シナ海、南シナ海でも米軍に協力し西側諸国に大きく貢献しているといえます。
ただ、軍事に疎いマスコミがこれを報道しないのと、先に潜水艦の行動は「極秘中の極秘」であり、政府も防衛省もほとんど公表しないので、あまり注目されないだけです。
日本はこうした動きを継続拡大し、新冷戦でも西側諸国にさらに貢献すべきです。これには、岸田政権そのものにはあまり期待できそうもありませんが、岸防衛大臣には期待できそうです。そうして、新冷戦に日本が勝利すれば、日本の国際的地位は飛躍的に高まり、国内でもこれを評価しないわけにはいかなくなるでしょう。
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