G7がロシアへの経済制裁を用意 中国は反対を明言 |
日本やアメリカなどG7各国は14日、ロシアがウクライナに侵攻した場合は経済・金融制裁を科す用意があると発表しました。
これに対し、ロシア寄りの姿勢を続ける中国は15日、外務省の会見で「中国は、制裁を科したり制裁を通じて他国を脅すことに一貫して反対している」と述べました。
さらに、「一方的な制裁は分裂と争いをエスカレートさせる」と主張し「話し合いを通じた問題解決」を呼び掛けました。
ただ、ウクライナに侵攻しないようロシアに働き掛けたのかとの質問には、明確な回答を避けています。
【私の論評】プーチンにとっても今回のウクライナ侵攻は紙一重で地獄をみることになるかもしれない、大きな賭け(゚д゚)!
中国のロシアに対するG7による経済制裁への反対は、当然といえば当然でしょう。自らも米国から制裁されているのですから、その痛みもわかっての発言でしょう。
こうした発言は当然といえますが、ロシアへの経済制裁は効かないというような論調もみられます。これは、ロシアによる工作の可能性があります。もし「今の程度の制裁では効かない。もっと強力な制裁を」という意味で言っているなら良いですが、もし制裁は効かないので効かない路線をやめてロシアに譲歩しようという意味なら世論誘導とみるべきです。
G7によるロシアへの制裁は、今でも効果があります。実際ロシアのインフレ率は8%以上です。これは、コロナ禍のためだけではありません。明らかに制裁が効いています。
この現状に加えて、新たな制裁が加えられれば、ロシアにとってはかなりの重荷になるでしょう。
ロイターによれば、ロシアの特定の企業や個人を米国人との取引制限や米資産凍結の対象とする財務省特定国籍業者(SDN)リストへの掲載も想定しています。SWIFT廃止とSDNリストの合わせ技です。どこまで指定するかが焦点となるでしょう。
これに加えて、英国及びEUでの ロシア人 ゴールデンパスポート廃止が実施されるでしょう。 これが実施されると、ロシア(主にオルガリヒなど)富裕層の国際送金や海外への入国ができなくなります。ロシアは、プーチン大帝による帝国であり、プーチン大帝を支えるのが軍産複合体オルガリヒであり、ここの資金を凍結する事でプーチンの力の源泉が失われることになります。
G7は特にプーチンとその関係者への絞り込み制裁を実施するでしょう。プーチンは、個人資産22兆円以上ともいわれ、すべて自分の名義で蓄財しているわけではなく、家族や友人、関連企業など支持母体を利用して蓄財していると考えられます。それに関する口座を凍結することなどの制裁で締め付けることになるでしょう。
そうなると、プーチンの支持基盤がガタガタになる可能性が高いです。
パナマ文書の分析により、プーチン・サークルと呼ばれるプーチンによる錬金術の仕組みが明らかになっています。これについては、以下の記事をご覧になってください。
明らかになった「プーチン・サークル」の錬金術 「パナマ文書」で
パナマ文書で明らかになったプーチンの裏金資金ネットワーク クリックすると拡大します |
パナマ文書が有名になったのは、2016年のことです。その後も、米国ではプーチンを巡る資金の流れがかなり詳細に分析されています。プーチンを標的にした、制裁は可能であり、プーチンの退陣につながるかもしれません。
このほか、先日このブログで述べましたが、米国がシェールガス・オイルの増産をすれば、ロシアに対して制裁になるしEUのエネルギー危機を救うことになるし、秋の中間選挙にも有利なるということで、一石三鳥になることを述べましたが、似たようなことは日本でもいえます。
日本は、産油国ではありませんから石油を増産することはできませんが、現在停止している原発を稼働させれば、これはロシア制裁にもなります。
欧州のエネルギー危機が続く限り、ガスも原油も価格は上がり続けることになります。そこで、日本が原発完全再開すれば、欧州のガス危機が緩和され、ガス石油の国際価格が下落し、日本の電気代も半減することになります。
これも、ロシアに対する制裁になりますし、EUのエネルギー危機を救うことになりますし、原発を稼働しようがしまいが、そこには核燃料が存在し、危険であることには変わりなく、であれば、稼働させたほうが良いということが理解されれば、岸田政権は参院選を有利に戦えることになります。これも、まさに一石三鳥です。
ただ現状では、残念ながら、米国はシェールガス・オイルを増産しようもありませんし、日本も原発を再稼働させそうにもありません。
それでもエネルギー問題はロシアの鬼門となるかもしれません。原油価格やガス価格など、、ロシアなどのエネルギー産出国がそれを戦略的に活用してしまっているという現実があります。
だからロシアも非常に強気な態度なのでしょう。ロシアのウクライナに対する侵攻についてもエネルギー問題があるからG7は制裁がかけにくいところがあります。
ウクライナ侵攻を本格的に実行に移した場合、ロシアに対しG7がドルやポンドなどの基軸通貨などによる取引停止といった金融制裁を科すことになるでしょう。そうすると、ロシア側は天然ガス生産供給を停止する対抗措置をとるでしょうが、世界の景気停滞を招き、逆に資源安を招いてロシアの首を絞めることになるでしょう。
現在ロシアのウクライナ侵攻はまだ初戦の中でも最初の一撃に過ぎません、以前も述べたように、ロシア軍の兵站は鉄道に頼るところが大きいので、鉄道網は容易に破壊されるため、ウクライナ奥地に進撃するにつれて、兵站が追いつかなくなります。そうなると、ウクライナ軍の反撃を押さえられないことになります。
ロシア軍は、国境付近ではパフォーマンスの高い攻撃ができますが、ウクライナ内部に侵攻するにつれて、パフォーマンスが低まり、ウクライナ軍の反撃にさらされ、多数の犠牲者を出すことになります。多数の犠牲者がでれば、ロシアでもウクライナ攻撃に反発が広まることになります。
ドル・ポンドなどの基軸通貨による取引停止をされてしまうと、ロシアの企業は取引がかなり制限されることになります。そこまでして、ウクライナ奥地まで踏み込んでも、プーチンにとっては良いことは一つもありません。奥地に踏み込む前に、いずれかで進撃を止めることになると思います。
おそらく、ドネツ州、ルンガスク州の一部をロシア軍が占拠することになり、それもどれくらい広げられるかということがロシア側の焦点になるでしょう。キエフなどへのミサイル攻撃は、陽動作戦でしょう。
現在以上に戦線を広げれば、基軸通貨による取引停止は確実に実施されることになります。日本では、このようなことはあまり報道されていませんが、ロシアというかプーチンにとっても今回のウクライナ侵攻は紙一重で地獄をみることになるかもしれない、大きな賭けなのです。
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