2022年2月17日木曜日

自民・高市氏、外相対応に懸念 日ロ経済協力会合めぐり―【私の論評】露がどちらに転んでも非常に分が悪いシナリオを米英が描いていることを理解しない能天気な林外相(゚д゚)!

自民・高市氏、外相対応に懸念 日ロ経済協力会合めぐり

自民党の高市早苗政調会長

 自民党の高市早苗政調会長は17日の党会合で、ウクライナ侵攻の可能性が取り沙汰されるロシアとの間で経済協力に関する閣僚会合を開いた林芳正外相の対応を批判した。政府が先進7カ国(G7)各国と連携し、侵攻した場合の制裁発動を検討中だとして「G7の結束を乱そうとするロシアを利することになる。大変強い懸念を覚えた」と述べた。

 外務省側が、閣僚会合を開いたのは事前に予定されていたためだと説明したと言及。高市氏は「臨機応変に会談を延期するなど、いろいろな方法があった」と指摘した。

【私の論評】露がどちらに転んでも非常に分が悪いシナリオを米英が描いていることを理解しない能天気な林外相(゚д゚)!

日ロ両政府は15日、林芳正外相とレシェトニコフ経済発展相が共同議長を務める「貿易経済政府間委員会」をテレビ会議形式で開きました。閣僚レベルで両国の経済関係全般について協議するのが目的。ロシアによるウクライナ侵攻の懸念が強まり、対ロ経済制裁が議論されるタイミングでの開催を疑問視する声もありました。

テレビ会議形式で開いた、日ロ貿易経済政府間委員会の共同議長間会合に臨む林外相=15日午後

政府間委員会は1994年に両国が設置で大筋合意しました。共同議長間会合は2020年12月以来。林氏はロシアとの対話の継続に言及する一方、「現下のウクライナ情勢に重大な懸念を持って注視している」と伝達。緊張を緩和し、外交的解決を追求するよう求めました。レシェトニコフ氏はウクライナには触れず、新型コロナウイルス禍にあっても両国の経済関係は進展しているとして「さらに協力を進めたい」と語りました。

高市政調会長の主張は、当然であり、高市氏のほうがまともな外交感覚を持っていると思います。林外相は完璧に外交感覚がずれているとしか言いようがありません。

自民党外交部会の佐藤正久部会長は16日午前に党本部で開かれた会合で、ウクライナ情勢をめぐる政府の対応について「外務省のチグハグ感と当事者意識のなさが半端ないと言わざるを得ない。この2カ月間、たったの一度も林芳正外相と欧州の外相の会談は開かれていない」と批判しました。

佐藤氏はまた、15日に岸田文雄首相がウクライナのゼレンスキー大統領、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と電話会談した一方、林氏がロシアのレシェトニコフ経済発展相とのテレビ電話形式の会議に出席したことについて「首脳会談の裏で、制裁を検討している相手に対しなぜ経済協力なのか。このチグハグ感は批判されてもしようがない」と述べました。

岸田政権は何をしているのか、本当に理解しているのでしょうか。今話すべきは、ロシアに対する制裁をどうするかであって、経済協力ではないはずです。

このずれまくりでは、ウクライナ情勢を本当に理解しているのか、心配になってきました。

このブログにも過去に示してきたとおり、現在ロシアはウクライナに侵攻して、ウクライナを屈服させて、ロシアの思い通りにさせることは不可能です。できるのは、たとえハイブリット戦を駆使したとしても、ウクライナの東のいくつかの州、それも州全部ではなく、一部しか占拠できないでしょう。

プーチンは、2000年の就任演説以降「大国ロシア」という言葉を頻繁に使用してきましたが、現在もそうして将来も「大国ロシア」になる可能性はほとんどありません。現在のロシアは、NATOと正面から対峙する力もありません。NATOとロシアが戦争になれば、ロシアには全く勝ち目はありません。

昨年6月22日対ドイツ戦争の開始から80年を迎えたことを受け、モスクワのクレムリン宮殿脇にある戦没兵士をまつる「永遠の炎」に献花し「ロシアは偉大で強力な大国であり続ける」と表明した。 

にもかかわらず、バイデン米大統領やボリス・ジョンソン英首相が、ロシアが今すぐにでもウクライナに侵攻すると煽っています。

これはなぜかといえば、まずはロシアがハイブリット戦を駆使して、本格的な軍事侵攻をせずにウクライナの一部をかすめ取ることに対する危惧でしょう。実際、ロシアはクリミアを独立させたという前科があります。こういうことを中国が得意のサラミ戦術のように何度も繰り返せば、やがてウクライナの大きな部分が、ロシアの手に落ちることも十分に考えられます。

それだけは、絶対に許さないぞという強い決意を示すために、バイデンやジョンソンがロシア侵攻を煽っているという側面は否定できないでしょう。

戦争を回避できれば、それは粘り強い交渉で平和をもたらしたという米やNATOの功績となります。そうなれば、バイデンにとってはアフガン撤退の失敗等の失地回復につながることになります。それで、秋の中間選挙が少しは有利になるかもしれません。

英国では、昨年12月16日にボリス・ジョンソン首相に近い与党・保守党の下院議員が議会規則に違反するロビー活動で辞職した問題で、空席になった議席の補欠選挙が行われ、保守党は200年近く維持してきた牙城ノース・シュロップシャー選挙区の議席を争い、野党・自由民主党に敗れました。

さらに、英国の首相官邸で新型コロナウイルス対策の行動規制下にあった時期にパーティーが開かれていた不祥事をめぐり、ジョンソン首相が窮地に立たされています。新疑惑の発覚がとどまらず、自身の参加も認めて謝罪しました。ところが、有権者は、厳しい規制を求めてきた政府の規則違反に不満を高め、与党・保守党内で首相の進退を問う声が強まってきています。

ジョンソン首相も、戦争が回避できれば、失地を回復できるチャンスがあります。

     主要7カ国(G7)首脳会議が開かれる英南西部コーンウォールで、
     ボリス・ジョンソン英首相とジョー・バイデン米大統領が初めて対面

一方、内政面では年金改革、人口減少、平均寿命の 引き上げ、出生率の減少、フルシチョフ時代に建てられた住宅(フルシチョフカ)修繕問題、 地方と都心との格差や貧困問題などの問題を抱えているプーチンはさらに支持率の低下に悩むことになるでしょう。

一方、ロシアが耐え切れずに開戦に踏み切れば、それはロシアにとって自殺行為となるでしょう。バイデン氏やジョンソン氏は、何のためらいもなく、ロシアに対する厳しい制裁を発動するでしょう。現在予想されるのは、ドル・ポンドとルーブルの交換停止です。

そうして、EUもすぐにこれに追随して、ユーロとルーブルの交換停止に踏み切るでしょう。こういうことを言うと、ロシアの資源量が圧倒的なのに対し、EUはエネルギー資源に乏しく、そEUはロシアの強引な天然ガスを利用した外交攻勢や価格引き上げ構成に悩まされるから、EUは対ロ経済制裁に慎重にならざるを得ないという人もいるでしょう。

しかし、現実の天然ガスの長距離パイプラインによるビジネスでは、供給国と需要国の間で、一方的な立場の有利、不利は存在しません。パイプラインでの取引では、物理的に取引相手を変えられないからです。

その一方で、天然ガスは石油・石炭・原子力・新エネルギーでいつでも代替可能なものであり、供給国が人為的に価格を引き上げたりすると、たちまちに需要不振になってしまいます。なによりも、供給カットなどを行うと、供給国は国際社会での信頼を一挙に失ってしまいます。

要するに、ロシアなど供給国が、需要国に対して価格引き上げや供給カットで外交攻勢をかけることは事実上不可能なのです。現実の天然ガスビジネスでは、供給国と需要国の交渉力は、ほぼ対等の関係にあるのです。

そのため、EUも米国、英国に続いてユーロとルーブルの交換停止に踏み切るでしょう。ドイツと日本も、マルク・円とルーブル交換の停止に踏み切るでしょう。これですべての基軸通貨とルーブルの交換が禁止され、ロシアは貿易がかなりしにくい状況に追い込まれます。

どちらにしても、ロシアにとって非常に分が悪いシナリオが描かれているようにしか見えません。

ロシアが弱体化すれば、領土問題はかなり交渉しやすくなります。先日も述べたように、ロシアが戦争に踏切り、厳しい制裁を受ければ、今でも韓国なみのGDPしかないロシアが、北朝鮮なみになることも十分に考えられます。そうなれば、ロシアは北朝鮮のようにミサイルを発射し続けるようになるかもしれません。しかし、現在の領土を守り抜くのは困難になるでしょう。

その時には、北方領土が日本に帰ってくる可能性はかなり高くなるはずです。日本としても、ロシアに対してどのような制裁を課すのが北方領土返還に有利なるかを考えるのが、いまやるべきことです。

このような時期に、日本の外務大臣が、ロシアとの間で経済協力に関する閣僚会合を開くなど、林芳正外相と外務省には本当に外交センスがあるのか本当に疑わしいくなってきました。いや、外務省には元々外交センスがないのがわかっていましたが、林外相にもそれがないことが明らかになったと思います。

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