2022年2月12日土曜日

米バイデン政権が「インド太平洋戦略」を発表 「台湾侵攻の抑止」明記 高まる日本の重要性―【私の論評】現在バイデン政権は、ウクライナ問題に対処しているが、最優先はインド太平洋地域の安定であることを、改めて明らかにした(゚д゚)!

米バイデン政権が「インド太平洋戦略」を発表 「台湾侵攻の抑止」明記 高まる日本の重要性

バイデン大統領

 アメリカのバイデン政権は11日、最重要と位置づけるインド太平洋地域での外交や安全保障、経済政策の指針となる「インド太平洋戦略」を発表しました。中国に対抗する姿勢を強調し、台湾への軍事侵攻を抑止する方針も明記されています。

■中国の台頭へ警戒感 同盟国と連携強化

 「インド太平洋戦略」では、バイデン政権が「唯一の競争相手」と位置づける中国について、「経済、外交、軍事、技術力を結集して、世界で最も影響力のある大国になろうとしている」と指摘。「今後10年間のアメリカの努力次第で、中国が現在のルールや規範を変えてしまうかどうかが決まる」として、アメリカがインド太平洋地域への関与を強める方針を明確にしました。

 そのために、日本とアメリカ、オーストラリア、インドの枠組み、いわゆる「クアッド」や、ASEAN(=東南アジア諸国連合)などとの関係を強化し、地域の様々な問題に、各国が共同で対処する能力を高めることが重要だとしています。

■「台湾海峡の平和・安定維持」明記 日韓関係の改善も促す

 安全保障面では、「台湾海峡の平和と安定」を維持し、「台湾海峡を含むアメリカや同盟国などへの軍事侵攻を抑止する」ことが明記されました。また経済面では、バイデン政権が打ち出したインド太平洋地域の「新たな経済枠組み」を、今年の早いうちに立ち上げるとしています。

 一方、地域内外の連携構築の重要性にも触れ、日本と韓国を名指しして「互いに関係を強化するべきだ」と指摘。冷え込みが続く日韓関係の改善も促しています。

■日本への言及増加 専門家の見方は

 米中関係に詳しいCSIS(=戦略国際問題研究所)のマシュー・グッドマン上級副所長は、今回の戦略で同盟国などとの協力強化が強調されていることについて、「気候変動や新型コロナ対応など、この地域の重要な課題への対応には、各国の助けが必要だというメッセージだ」と分析しています。

 さらに、日本や「クアッド」への言及が多く、アメリカにとっての重要性が増していると指摘。「サイバーセキュリティーや、重要技術の保護など対中国のあらゆる分野でアメリカは日本に支援してほしいと考えている」と指摘しています。

【私の論評】現在バイデン政権は、ウクライナ問題に対処しているが、最優先はインド太平洋地域の安定であることを、改めて明らかにした(゚д゚)!

バイデン政権が公表したインド太平洋戦略の5本柱は以下のようなものです。


この戦略は、ホワイトハウスのサイトに掲載されています。そのリンクを以下に掲載します。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2022/02/11/fact-sheet-indo-pacific-strategy-of-the-united-states/

以下に、日本語の機械翻訳を掲載します。翻訳は、Deeple translatorを用いました。一部、手直しをいれています。

ファクトシート: 米国のインド太平洋戦略

「私たちは、開かれた、つながった、繁栄した、弾力性のある、安全なインド太平洋を思い描いており、その実現のために皆さんと協力する用意があります」。
ジョー・バイデン大統領
            東アジアサミット
2021年10月27日

バイデン=ハリス政権は、インド太平洋における米国のリーダーシップを回復し、その役割を21世紀に適合させるために、歴史的な前進を遂げました。昨年、米国は、中国との競争から気候変動、パンデミックに至るまで、緊急の課題に対応するため、長年の同盟関係を近代化し、新興のパートナーシップを強化し、その間に革新的なつながりを構築した。世界中の同盟国やパートナーがインド太平洋地域への関与をますます強めており、米国議会でも米国が関与すべきとの超党派の幅広い合意が得られているときに、米国はこれを実現したのである。インド太平洋は世界で最もダイナミックな地域であり、その将来は世界中の人々に影響を与える。

この現実が、米国のインド太平洋戦略の基礎となっている。この戦略は、インド太平洋において米国をより強固に位置づけ、その過程でこの地域を強化するというバイデン大統領のビジョンを概説するものである。その中心的な焦点は、地域内外の同盟国、パートナー、機関との持続的かつ創造的な協力関係である。

米国は、次のようなインド太平洋地域を追求する。

1.自由で開かれた地域

私たちの死活的利益と最も近いパートナーの利益は、自由で開かれたインド太平洋を必要とする。自由で開かれたインド太平洋には、政府が独自の選択をすることができ、共有領域が合法的に統治されることが必要である。我々の戦略は、米国で行ってきたように個々の国の中でも、国同士の間でも、弾力性を強化することから始まる。我々は、以下を含む、自由で開かれた地域を推進する。

・民主的な制度、自由な報道機関、活気ある市民社会に投資する。

・インド太平洋地域の財政の透明性を高め、汚職を明らかにし、改革を推進する。

・この地域の海や空は、国際法に従って管理され、利用されるようにする。 
・重要な新興技術、インターネット、サイバー空間に対する共通のアプローチを推進する。
2. 地域内のつながり

自由で開かれたインド太平洋は、新しい時代のための集団的能力を構築してこそ実現できるものです。米国とそのパートナーが構築に寄与してきた同盟、組織、規則を適応させなければならない。われわれは、この地域の内外で、次のような方法で集団的能力を構築する。

オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、およびタイとの 5 つの地域条約同盟をさらに深める。

・インド、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ニュージーランド、シンガポール、台湾、ベトナム、太平洋諸島など、地域の有力なパートナーとの関係を強化する。

・パワーアップした統一ASEANへの貢献 
・クアッドの強化と公約の実現
・インドの継続的な発展と地域のリーダーシップを支援する 
・太平洋諸島のレジリエンス(回復力)構築のための提携 
・インド太平洋地域と大西洋地域の結びつきを強化する。 
・インド太平洋地域、特に東南アジアと太平洋諸島における米国の外交プレゼンスを拡大する。

3.地域の繁栄

毎日のアメリカ人の繁栄は、インド太平洋とつながっています。この事実は、イノベーションを奨励し、経済競争力を強化し、高賃金の仕事を生み出し、サプライチェーンを再構築し、中流家庭のための経済機会を拡大するための投資を必要とする。インド太平洋地域では、この10年間で15億人が世界の中産階級の仲間入りをすることになる。我々は、以下を含め、インド太平洋の繁栄を推進する。

・インド太平洋の経済的枠組みを提案し、これを通じて以下を行う。
高い労働・環境基準を満たす貿易への新たなアプローチを開発する。
新しいデジタル経済の枠組みを含め、オープンな原則に従って、デジタル経済と国境を越えたデータの流れを管理する。
多様で、オープンで予測可能な、弾力的で安全なサプライチェーンの推進
脱炭素化、クリーンエネルギーへの共同投資
・2023年の開催年を含め、アジア太平洋経済協力(APEC)を通じて、自由、公正、かつ開かれた貿易・投資を促進する。
・G7パートナーとのBuild Back Better Worldを通じて、地域のインフラギャップを解消する。

4. 安全保障

米国は75年間、地域の平和、安全、安定、繁栄を支えるために必要な、強力で一貫した防衛プレゼンスを維持してきた。我々は、その役割を拡大、近代化し、我々の利益を守り、米国の領土や同盟国、パートナーに対する侵略を抑止する能力を高めている。我々は、侵略を抑止し、強制に対抗するために、以下を含むあらゆる力の手段を駆使して、インド太平洋の安全保障を強化する。

・統合的抑止の推進 
・同盟国・パートナーとの協力関係の深化と相互運用性の向上
・台湾海峡の平和と安定の維 
・宇宙、サイバースペース、重要技術・新興技術分野など、急速に進化する脅威環境において活動するための技術革新。 
・拡大抑止と韓国・日本の同盟国との連携の強化、朝鮮半島の完全な非核化の追求 
・AUKUSの継続的な実現 
・米国沿岸警備隊のプレゼンスとその他の国境を越える脅威に対する協力の拡大 
・太平洋抑止イニシアティブと海上安全保障イニシアティブに資金を提供するため、議会と協力すること。

5. 対応力強化

インド太平洋地域は国境を越えた大きな課題に直面している。気候変動は、南アジアの氷河が溶け、太平洋諸島が海面上昇という存亡にかかわる問題に直面する中で、かつてないほど深刻さを増している。COVID-19の大流行は、この地域全体に人的・経済的損害を与え続けている。そして、インド太平洋地域の政府は、自然災害、資源不足、内戦、ガバナンスの課題に取り組んでいる。こうした力を放置すれば、この地域は不安定化する恐れがある。我々は、21世紀の国境を越える脅威に対する地域の回復力を、以下を含む方法で構築する。

・同盟国やパートナーと協力して、2030年および2050年の目標、戦略、計画、政策を策定し、世界の気温上昇を1.5℃に抑制する。

・気候変動や環境悪化の影響に対する地域の脆弱性を低減する。

・COVID-19の流行に終止符を打ち、世界の健康安全保障を強化する。

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米国が現状のように、ロシアによるウクライナ侵攻の危機が叫ばれている時にこのような戦略を公表する意図は何なのでしょうか。ちなみに、バイデン政権のこの戦略の中には、ロシアもウクライナも一切でてきません。

インド太平洋戦略について述べているわけですから、出てこないのは当たり前といえば、当たり前なのかもしれませんが、それにしても、インド・太平洋地域というと、ロシアもオホーツク海を介して太平洋と繋がっているのですから、何らかの影響力があれば、言及されるはずです。

米国としては、ロシアのインド・太平洋地域における影響はなしとみているといえると思います。実際そうなのでしょう。ロシアの太平洋艦隊も、ロシアの原潜等も、米国には脅威とみなしていない、少なくとも米国のコントロール下にあると見ているのだと思います。無論、それには日本の強力な対潜水艦戦闘力(ASW)等が関係していると思います。

そうして、この地域における最大の脅威はとりもなおさず、中国であるということです。そうして、これこそが米国にとって大きな脅威であると認識しているのです。しかも、軍事力だけではなく、経済力や技術力などによるこの地域への浸透と不安定化を懸念しているでしょう。

これについては、バイデン政権がこのような戦略を改めて打ち出さなくても、ある程度は認識することができました。それについては、このブログでもすでに述べています。その記事のリンクを以下に掲載します。
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  共同訓練を行う、米原子力空母「エーブラハム・リンカーン」(中央)と、
  海自護衛艦「こんごう」(左から5番目)など(海自提供)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

ロシアは戦争を起こしたとしても、クリミアのときのように短期で局所戦のみでしょうが、中国は現在はともかく将来は長期的な総力戦も遂行できるようになる可能性があります。米国もこれには、長期に渡る対応が必要になります。

バイデン政権か優先しているは、やはり中国への対峙なのでしょう。インド太平洋地域にベトナム戦争意向最大数の空母などを結集させていることがそれを示しています。そうして、日本の海自もこれらと行動をともにしているのです。直近の2回の日米合同演習がそれを示していると思います。

これは米国が日米の協同が、中国対応への一つの鍵だとみている証拠です。日本は米国に頼りにされているのです。日本のマスコミはこれを報道しませんが、日本としてはこれをしっかり認識すべきです。重い責任を担うことにもなりますが、日本の存在価値を高めるチャンスでもあるととらえるべきです。
私は、これがバイデン政権の本音であり、それがバイデンの「インド太平洋戦略」にも色濃く反映されていると思います。

最近マスコミでは、ロシアによるウクライナ侵攻ばかりがクローズアップされており、それを裏付けるように、米国防総省のカービー報道官は9日の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻に備え、米軍がウクライナに駐在する米国人の退避支援を検討していると明らかにしたことが報道されています。

米軍の大規模部隊が6日、ポーランドの空港に到着した

米メディアによると、バイデン大統領が支援計画を承認しました。米国が増派した隣国ポーランドの国境近くに一時的に避難所を設けて対応するとしています。

これでマスコミなどは、ロシアによるウクライナ侵攻をさらに煽るのでしょうが、米国としてはロシアがウクライナに本当に侵攻するしないは別にして、退避勧告をしたり、退避支援を検討するのは当たり前のことでしょう。

しかし、米国のこうした対応には、隠された意図があるかもしれません。

2020年1月19日付朝日新聞デジタル版は、北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返していた2017年の秋、アメリカ政府が日韓に在住する米市民の退避を真剣に検討していたとしています。

その内容を明かしたのは、退避が検討されていた当時に在韓米軍司令官であったビンセント・ブルックス元陸軍大将です。

記事によると数十万人規模の退避計画で、「早期退避」を目的としていたそうです。つまり、北朝鮮が攻撃を仕掛ける前に、あるいはその気配が濃厚になる前に退避させるというものでした。これに対して当時のブルックス氏は、この計画が実施に移された場合には、北朝鮮側が状況を読み間違えて戦争につながる恐れがあるとして反対したというのです。

ブルックス氏は実際の早期退避行動を行うためには、①敵意から身体に危害を加える状況へと変わっている②北朝鮮への戦略的圧力として効果がある――のいずれかが必要だと考えていたといいます。検討の結果、いずれの条件も満たされていないうえ、退避行動を行えば北朝鮮が「米国が開戦準備をしている」と受け止め、「読み違えによって容易に戦争が起こり得る」と判断し、実施に反対したというのです。

今回のロシアへの対応では、ロシアによる「読み違え」をあまり意識していないように見えます。ロシアのウクライナ方面での行動に関しても、米国のコントロール下にあると考えているのかもしれません。

米国からすれば、ロシアはウクライナに侵攻しないだろうし、侵攻したとしても部分的であり、大戦争にはならないと見ているのでしょう。さらに侵攻すれば、それを理由にし、ウクライナをNATOに編入して、ウクライナにNATO軍を進駐させたり、中短距離ミサイルを配備できるようになるとみているのでしょう。

これは、憶測ですが、これが当たっていようがいまいが、現在バイデン政権は、ウクライナ問題に対処はしていますが、最優先はインド太平洋地域の安定であることを、改めて明らかにしたというのが、今の時期にわざわざ「インド太平洋戦略」を公表したことの背景にあるのは間違いないでしょう。

バイデン政権としては、旧ソ連の核や軍事技術を継承しているロシアは決して侮ることはできないものの、今や一人あたりGDPが韓国を大幅に下回るロシアに、振り回されることなく、インド太平洋地域の戦略を第一義に考えていることをアピールするという目的もあったのではないかと思います。

そうしなければ、マスコミはウクライナ問題ばかり報道し、バイデン政権はウクライナ問題に忙殺されているように国民から受け取られ、同盟国からもインド太平洋地域を軽視していると受け取られかねません、それだけは避けたかったのでしょう。

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