2023年1月31日火曜日

遂に減少し始めた中国の人口 背景に儒教の影響も―【私の論評】中国では「人口減」は大きな脅威!日本ではこれを大きな「機会」と捉えることができる(゚д゚)!

遂に減少し始めた中国の人口 背景に儒教の影響も

岡崎研究所


 1月17日付の英フィナンシャルタイムズ紙(FT)に、FTのEleanor Olcott在香港中国特派員とSun Yu中国経済担当レポーターが 「中国の人口が歴史的変化の減少になる。60年で最初の減少は国内および世界経済に長期的な影響を持つ」との記事を書いている。

 2022年、中国の人口は数十年で初めて減少した。中国は世界最大の人口を有する国家として、長い間、中国と世界の成長を支える労働力と需要の重要な源であった。2023年1月 17日、中国の国家統計局は、全人口が60年ぶりに2022年に85万人減り、14億1175万人になったと発表した。

 中国のゼロコロナ政策が出生率の減少を加速させたと見られている。昨年、出生数は956 万になり、一昨年の1062万を下回った。2022年の出生率は70年以上前に記録がとられるようになってから最低で、1000人当たり6.77人であった(2019年は10.41人)。

 国家統計局長は、15歳から49歳の出産可能年齢の婦人の数が100万以上減ったと述べた。赤ちゃん商品や産科関連株はこの発表で売られ、8.5~11%も値下がりした。

 この人口減少は1980年に課された一人子政策に根を持つ。当局はこの政策を2016 年に撤廃したが、その後も出生数は減りつづけている。2022年の死亡率は1000人当たり7.37人で 1970年代以降最大であった。

 中国のゼロコロナ政策の先月の突然の廃止とその後の感染増は病院を急速に逼迫させた。中国の人口上の転換点は、日本(2010年より人口が減り始め、その後毎年減り続けている)と同じ道筋に中国を置いている。

 国連は中国の人口は 2050 年までに13.1 億人に、世紀末には7.67億人になると予想している。インドの人口は今14億660万人で、今年インドが中国を追い抜き世界第一になるとされる。

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 2022年に中国の人口が減り始めるという事は予想されていたことである。が、実際に起きてみると、それは世界経済、世界政治にとり大きなニュースになった。日本も少子高齢化に悩んでいるが、中国の場合その悩みはさらに大きなものになるだろうと考えている。

 第一に、2021年の特殊合計出産率は日本は1.33であるが、中国は1.15であり、日本より低い。ちなみに韓国は1.0以下であり、さらに低い。

 第二に、儒教の影響力が強い中国と韓国には女子より男子を優先する傾向があり、1人しか子供を持てないとなると女子は中絶し男子を生む傾向が出てくる。韓国の小学校を見学してみると、運動場で整列している子供は、男子の列の方が女子の列よりずっと長いことが多いようだ。中国でも同じ傾向があると聞いた。

 要するに、人口が男子に偏り、結婚相手たる女子が不足することがある。ベトナムから女子が中国側にさらわれたというような話があるが、そんなことで是正される問題ではない。問題の規模が違う。さらに婚外子に対する差別感情が強いように思われる。

 先進国は大概少子高齢化に悩んでいる。フランスとスウェーデンは子供の出生数が多く、少子化をある程度克服している。しかし生まれている子供の過半数は婚外子である。そういうことにすることには中韓両国ともに抵抗がある。

 日本は出生者数の男女比はほぼ同じで、中国や韓国とは異なる。日本の少子化問題の克服は中韓両国よりは易しいのではないか。シングルマザーの許容、支援をすれば、フランスやスウェーデンのような効果が得られるかもしれない。

 中国の人口減少は経済、政治の面で大きな影響を今後世界に与えていくだろう。注視していく必要がある。

 1978~89年の中国最高指導者であった鄧小平は、共産党指導者の任期制や集団指導制や外交での国際関係の処理などで新しい路線を打ち出した賢人であったと考えられる。今、習近平がそれを逆回転しているのを残念に思っているが、鄧小平の一人っ子政策は、長い目でみれば誤りであったように思う。

今年にもインドが「人口世界一」の座に

 上記のFTの記事にもあるように、今年にも、インドが中国を抜いて世界第一の人口を抱える国家になる。世界第一の民主主義国でもあり、若年層の人口割合の高いインドが、今後、世界経済や国際政治で、存在感を増して行くことは間違いないだろう。

 日印関係は、今までも良好に推移してきたが、さらに緊密化して行く余地がある。日米豪印のクワッドの枠組みが出来たことも、日本にとってプラスに働くだろう。

【私の論評】中国では「人口減」は大きな脅威!日本ではこれを大きな「機会」と捉えることができる(゚д゚)!

中国の人口減少しますが、日本もその傾向は続いています。2022年1月1日時点の日本人の人口は1億2322万人あまりで、2021年からおよそ62万人減り、13年連続で減少しました。新型コロナの影響で都市部への流入が減ったことなどから、東京は26年前の平成8年以来の減少に転じました。

出生数を、都道府県ごとにみると、増えたのは沖縄県のみで、神奈川県はほぼ横ばいでした。人口に関する統計には、生命表という「どのくらいになると死ぬか」という安定的な指標があります。これは、生命保険などに利用されています。

出生率の予測は難しくないですし、死亡率の予測はさらに簡単で、両者をあわせてみると、日本の人口の減少は、今後10年~20年は続きます。その後は、どうなるのかはわかりません。

そこから先は出生率がどうなるのかというこに依存します。日本の人口は約1億2000万人であり、減っていけばいずれ1億人を切るのは間違いありません。しかし、たとえ8000万人くらいになっても、世界のなかで20番以内には入るくらいの大きい国です。

ちなみに、大東亜戦争の時の日本の人口は「一億総火の玉」というキャッチフレーズがあったことから、多くの人が漠然と、一億人くらいと考えているようですが、実際には7000万人台でした。

昭和17年〈1942年〉大政翼賛会ポスター

7000万人台の人口の国が、最終的には負けたとはいえ、米英を相手に戦い、当時のソ連と対峙して、中国大陸や東南アジアにも兵を送り、豪州を爆撃したのですから、人口が8000万人になったからといって、特に大きな問題だとはいえないのではないでしょうか

それに、人口爆発は対応が難しいですが、人口減少には機械やロボットを導入することによって対応できます。

ロバート・マルサスの「人口論」でも指摘されているように、幾何級数的に人口爆発が起こるとほとんどコントロールができなくなって、対応策がありません。人口減少より、人口爆発のほうがはるかに脅威です。

人口減少の場合は、幾何級数的に人口が減少が起こることはなく、漸減していくので、これには対応策があります。要するに、機械化やロボットを増やすという単純な回避方法です。これは、経済学で言うところの、「装置化」するということです。

日本の産業ではロボット化が進んでおり、これとAIが結びつけばさらに生産性は向上する

さらに、人口について予測するのは比較的簡単です。予測するのが簡単であれば、それに合わせて社会制度を変えることも簡単です。人口減少を単に大問題と考え、目の前の問題を解決すれば、良いという考え方であれば、あまりうまくはいかないかもしれません。

それはマイナスの状態をゼロにするにすぎません。人口減少をマイナスと考えるのではなく、プラスの状態を起こすためには、機会に焦点を合わせなければならないです。

経営学の大家ドラッカー氏以下のように語っています。
問題ではなく、機会に焦点を合わせることが必要である。もちろん問題を放っておくわけにはいかない。隠しておけというわけではない。しかし問題の処理では、いかにそれが重大なものであろうとも、成果がもたらされるわけではない。損害を防ぐだけである。成果は機会から生れる。
ただし、人口が減ることによって、内需が縮小していくから経済が減速するので「人口オーナスだ」などといわれます。ただ同時に作る人も減るのですから、これはあまり関係ないです。現在でも、人口が減っている国は世界のなかで20ヵ国~30ヵ国あります。しかし、それらの国が大変になったという話はありません。


国内総生産(GDP)をみれば、「給与×人口」なのでGDPは減りますが、1人あたりGDPでみると、人口の増減はほとんど関係ないということがわかっています。

「人口オーナス・ボーナス」は一人あたりのGDPや、生産性など長期にわたって、全く同じという条件の下でのみ当てはまる現実にはあり得ない限定的な理論といえます。

これらを勘案すると、人口減少の何が問題なのかといえます。特にこれからは、AI(人工知能)の活用により装置化がやりやすくなります。

人口減少への対応は多くの人に思われているよりは簡単で、先ほど言った装置化するというようなことなのですが、「AIが出てくると仕事が減って大変だ」と言いつつ、「人口減少も大変だ」と言うのは大いに矛盾しています。

かつて日本では高度経済成長時代に「人手不足だ」と言われたときは、まさに装置化によって飛躍的にイノベーションが起こりました。

さらに、こうしたことをただ問題の解消として捉えるのではなく、機会として捉えるべきです。機会としては、賃金を現在の倍どころか3倍にすることも可能になるかもしれません。それこそ、学費の無料化、研究費などの倍増、軍事費のさらなる増額と高度化、新たな産業の創生など様々な機会が目の前に広がります。

これらのことは、人口減少しなくても実現すれば良いのですが、何かの変化があって、それに対応しようとして努力するというほうが、周りのコンセンサスが得られやすいです。

人口減少を単なるマイナスであり、この問題を解消するためだけに努力するというのでは進歩はありません。

経営学の大家であるドラッカー氏は以下のようにも述べています。
問題に圧倒されて機会を見失うことがあってはならない。ほとんどの組織の月例報告が第一ページに問題を列挙している。しかし、第一ページには機会を列挙し、問題は第二ページとすべきである。よほどの大事件でも起こらないかぎり、問題を検討するのは、機会を分析しその利用の仕方を決めてからにすべきである。

このように考えると、「少子化」「高齢化」は問題ではなく、機会になる可能性が大きいです。そうして、産業界は実際その方向に向けてすで動いています。

ただ、一つ心配なのは、日本の硬直的な財政金融政策です。人口が減って、それに対応しつつ生産性をあげているときに、それに対応して、政府が日銀や財務省に対して柔軟な対応をさせなければ、需要か供給のギャップが必ず発生します。このギャップに対応して、金融緩和+積極財政、金融引締め+緊縮財政のいずれかを柔軟に実行できる体制でなければなりません。

そうでないと、せっかく装置化をすすめても、深刻なインフレか、深刻なデフレを招くだけになってしまいかねません。人口減少は機会になるどころか、大問題となり、日本人を苦しめることになるかもしれません。

かつての平成年間の日本のように、景気が悪くても、デフレであっても、政府は緊縮財政を繰り返し、日銀は金融引締めを繰り返すという硬直的な姿勢では、人口減にも適切に対応できないでしょう。

今後の人口減は、いままでにない未曾有の経験です。装置化とは生産性を高めることを意味します。人口減による生産性の低下を装置化によって生産性を高めることのバランスをとることはさほど難しいことのようには思えないのですが、過去の日銀の金融政策をみているとは、そうとは言い切れません。

産業界は「人口減少」に対応していますし、これからもできるでしょうが、日銀や財務省がこれに適切に対応できるかどうかは、未知数です。これが日本の少子化に対応していく上での、唯一心配なところです。

さて、中国の場合も、「人口減少」は、それに対応できれば、大きな問題にはならないでしょう。それどころか日本と同じく「機会」となる可能もあり得ます。

ただし、中国には日本の問題よりもさらに大きな問題があります。それは、中国は日本などの先進国と異なり、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていないことです。

そのため、現在の中国は全体主義国家でありり、このような国では無意味な「ゼロコロナ政策」をやめるのですら、時間がかかりました。それに、やめるにしても、それに対して柔軟に対応しつつやめるのではなく、なし崩し的にやめてしまいました。

私は、中国共産党は、国民がどれだけ亡くなろうとも、集団免疫が獲得できれば、それで良いと、ほとんど何も対応策を講じずに、政策転換をしたとしか思えません。

そのため「人口減少」に対する対応も、柔軟にはできず、「人口ボーナス」を最大限に活かす体制をこれからもしばらく変えることができず、弊害が誰の目にみても明らかになってから、ようやっと転換するか、結局できないのではないかと思います。

特に、このブロクでも以前指摘したように、現在中国は国際金融のトリレンマにはまっており、その結果として、独立した金融政策が行えない状況になっています。

独立した金融政策が行えないとは、たとえば国内の失業率の増加などに対応して、金融緩和を行うと、深刻なインフレに見舞われたり、キャピタルフライト(資本の海外逃避)などが起こってしまうので、金融緩和したくてもできない状況のことです。

この状況を緩和するには、資本の移動を自由にするか、人民元の固定相場制を変動相場制にするという大胆な改革が必要なのですが、中国は未だにそれを実行していません。これを実行すれば、中国共産党の当地の正当性が脅かされるので、やりたくてもできないのかもしれません。

中国では「人口減少」がおこり、それに対応して、「装置化」をすすめるために、積極財政はできるかもしれませんが、独立した金融政策はできないのです。いくら積極財政をしても、金融緩和しなれば、全体の貨幣の流通量は変わらないので、金融緩和ができなければ、デフレが進行するかもしれません。あるいは、「装置化」が進みすぎて、逆にインフレが亢進するかもしれません。

いずれの場合も、金融政策を適切にすれば、それを克服することができるはずですが、中国はこれができないのです。金融政策をしようとすると、不都合がおこり、なかなか実施できないのです。

ただし、中国としててはまだできる手はあるかもしれません。それは、たとえば中国がデフレ傾向になれば、日銀が従来のように金融引締を続ける政策に戻させることです。そうなると、従来のように円高になり、中国は日本から部品や素材を安く買い、それを組み立てて安い製品を輸出することができます。そのため、中国は日本政府の高官や日銀官僚に工作をかけるかもしれません。

さらに円高が亢進して、超円高になれば、日本企業は国内で製品を製造して、輸出するよりも、中国で製造して日本や、海外に輸出するほうが安くなり、日本の中国への産業移転がすすみ、過去の円高時のように日本で産業空洞化が進むかもしれません。

しかし、これには伏兵もあるでしょう。中国に経済制裁を加えている米国がこれを見逃さないでしょう。現状では、米国は軍事転用できるうる先端的な半導体等を中国が製造したり、輸入できないようにしていますが、日本が超円高になれば、中国は先端的でない技術を用いた製品の製造でもかなり有利になるため、これを防ぐ方向に動くでしょう。

そうなると、中国は日本がどのような金融政策をとっても、無関係になります。

逆に中国がインフレになれば、理屈上は、日本に工作をかけ、日本をさらにインフレ傾向に持っていけば中国はインフレを克服できるかもしれませんが、さすがにこれは無理でしょう。

デフレは、少しずつ悪くなっていくので、ゆでガエルのように多くの人がすぐには気づきにくいですが、インフレ、それも超インフレの場合は、日々物価がかなりあがるので、多くの人がすぐに異変に気づきます。これは、すぐに大騒ぎになるので、日銀がインフレ政策を取り続けることはできないでしょう。


中国はいずれにしても、民主化や資本の自由な移動、人民元の変動相場制への移行などをすすめなければ、独立した金融政策ができず、「人口減少」に対応できなくなります。

日中ともに、「人口減少」そのものは本来さほど脅威ではないはずなのですが、独立した金融政策ができない中国では「人口減」は大きな脅威となります。独立した金融政策が可能な日本ではこれを大きな「機会」と捉え、社会変革を実現すべきです。

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2023年1月30日月曜日

岸田政権、韓国に「反省表明」の懸念 「元徴用工」訴訟めぐる賠償肩代わり「存在しない『責任』に『謝罪』するのは日本人の悪癖」藤岡信勝氏―【私の論評】日米ともに、戦時中の「徴用工」募集は、戦後の女性の社会進出を促した!この事実を歪める韓国に謝る必要なし(゚д゚)!

岸田政権、韓国に「反省表明」の懸念 「元徴用工」訴訟めぐる賠償肩代わり「存在しない『責任』に『謝罪』するのは日本人の悪癖」藤岡信勝氏

昨年8月24日リモート・ワークの「ぶら下がり」でモニター画面に映し出された岸田首相

対韓外交に新たな〝暗雲〟が浮上した。いわゆる「元徴用工」訴訟をめぐり、韓国の原告側が求める日本企業の賠償を韓国財団が肩代わりする解決案を韓国政府が正式決定すれば、日本政府は過去の政府談話を継承する立場を改めて説明して「痛切な反省」や「おわびの気持ち」を示す方向で検討に入ったというのだ。共同通信が28日、「独自ダネ」として報じた。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権への後押しが狙いというが、原則を軽視した妥協には懸念が深まりそうだ。

【写真】無関係写真が「徴用工」写真と掲載された韓国の小6教科書

「政府『おわび』継承説明へ」「韓国肩代わり案後押し」

共同通信は、このような見出しで記事を配信した。

日韓政府は30日、韓国・ソウルで外務省局長協議を開き双方の取り組み状況を話し合う予定。韓国側は日本の「誠意ある呼応」を求め、岸田首相は、「韓国政府と緊密に意思疎通していく」としている。

冒頭の妥協案は、政府関係者が28日、明らかにしたという。

だが、日韓間の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」している。日本政府は当時、無償・有償を合わせて計5億ドルを韓国政府に提供した。元徴用工に資金が渡らなかったのは、一方的に韓国政府の問題であり、「肩代わり」という言葉自体が不適切だ。

さらに、韓国側の「肩代わり」を受け、有志の日本企業が財団への「寄付」を容認する案も浮上しているというが、「二重賠償」「迂回(うかい)賠償」と批判されても仕方ない。

そもそも、徴用は、戦時下の労働力不足に対処するため、1939年に制定された「国民徴用令」に基づき、日本国民すべてを対象とした義務だった。給与も法律で決められていた。

新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝副会長は「存在しない『責任』に『謝罪』するのは日本人の悪癖だ。相手国が自国と同じ思考との前提で外交交渉するのは誤っている。近年、韓国を『戦略的に放置』する日本の方針は成功してきた。韓国が『反日』を繰り返してきた経緯を踏まえれば、原則を外した外交は得策ではない」と強調した。

【私の論評】日米ともに、戦時中の「徴用工」募集は、戦後の女性の社会進出を促した!この事実を歪める韓国に謝る必要なし(゚д゚)!

日本に限らず、世界中の国々で戦争の時、特に総力戦の最中には、労働力が不足し、徴用工を募集することは珍しくありません。無免、賃金は支払われます。日本でも徴用工には、賃金を支払っていました。下の写真は、徴用工に支払うための賃金台帳の表紙の写真です。


歴史の古い会社などでは、こうした賃金台帳などが、倉庫の隅に資料として保続されているのが、発見されることがあります。

日本が大東亜戦争時に、当時は日本の領土であった、朝鮮で徴用工を募集することは、当然ありえることで、それ自体は犯罪でも何でもありません。

44年11月に徴用され、東洋工業(現マツダ)で働いた鄭忠海(チョン・チュンへ)氏が著した『朝鮮人徴用工の手記』(河合出版)には、手厚い待遇の様子が描かれています。

徴用工は清潔な寮で、絹のような布団で寝起きし、食事も十分だった。当時では破格の月収140円という給料をもらい、終戦後には日本人と別れを惜しんだといいます。

危険が伴う職場では、さらに待遇は良かったそうです。九州の炭鉱では月収で150~180円、勤務成績の良い徴用工には200~300円が支払われました。屈強な朝鮮人の給与が、体力に劣る日本人を上回ったとされます。

高賃金にあこがれ、多くの朝鮮人青壮年が、内地に密航したことも分かっています。徴用工が「強制連行」でないことは、数々の資料や証言から判明している「歴史的事実」です。

無論、日本でも当時も裏社会があり、いまでいうところ、反社勢力も存在しており、そういう反社勢力の人間が、朝鮮人を非合法に雇い、強制労働をさせたということは、あったかもしれません。それは、あくまで非合法であり、犯罪であり、厳しく追求されるべきです。

ただ、それは、少数事例であり、そのようなことは、今でもみられることです。米国等でもありますが、それはあくまで犯罪です。

ただ、上の記事にもある通り、このような事例も含めて、日韓間の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」しています。このことで、韓国にいまさら、言いがかりをつけらるようなこと等ありません。

米国でも、第2次世界大戦中には、徴用工を募集しました。労働力が不足していたので、男女問わずに募集しました。下の写真は、鉄工所で働く、米国の女性徴用工です。


当時は、女性が様々な分野で徴用され、航空機づくりや、原子爆弾製造ブロジェクトにも女性が動員されていました。下の写真は航空機製造に徴用された女性の写真です。


米国では、こうした多数の女性の徴用により女性が男性と同じく様々な分野で労働力となりえることが示され、女性たちも自信をつけ、戦後の女性の社会進出を促したといわれています。

日本でも同じようなことが起こりました。

戦後、男性が復員してくると、女性は「家庭への復帰」を呼びかけられます。1945年(昭和20年)12月、厚生大臣の芦田均は、女性や高齢・若年者は速やかに男性に職を譲るようにと述べましたが、すでに戦争で一家の稼ぎ手を失った女性も多く存在しました。

その後、復興の中、軍需工場の民需転換や繊維産業の復活で女性の雇用は再び広がり始めました。

また、戦争中の女性の働きぶりから、性別による能力の差がないことがわかると、男女間の賃金格差が当然ではなくなりました。

そうして、1947(昭和22)年に制定された労働基準法第4条では「使用者は労働者が女子であることを理由として、賃金について男子と差別的取扱をしてはならない」と規定し、世界で最も早い男女同一賃金法が誕生しました。

一方、「女子保護規定」により生理休暇も世界に先駆けて認められましたが、この規定は、「弱い女性を保護する」という意味で、過酷な労働から女性を守ることができた反面、男女の平等雇用の点では問題がありました。

この解決には1985年の男女雇用機会均等法の制定を待つことになります。

現在、「女子保護規定」は、育児や介護に男女平等の負担が求められていく中、1999年に改定されました。

このようなことを考えると、戦時中の「徴用工」の募集は、米国においても日本においても、男女平等や雇用機会の均等化、女性の自立など、戦後の社会に変革をもたらしたといえます。

この変革は、現在の男女参画事業や、最近問題になっていcolaboのようなNPOの事業より、余程現実的であり、実効的であり、日米ともにこの歴史を誇っても良いと思います。戦争自体は、悲惨なものでしたが、それを遂行するために女性を活用したことが、後々の社会変革にもつながっていったのです。もし、このことがなければ、日米ともに女性の地位の向上が図られるには、かなり時間がかかったかもしれません。

現在韓国内で、行われている「元徴用工」訴訟など、以上のことを無視した暴挙以外の何ものでもありません。これは姑息な歴史修正以外の何ものでもありません。

韓国のやっていることは、米国の戦時中の女性徴用工の募集は、男女差別だと批判しているようなものであり、全く意味のない馬鹿げたことであり、このようなことを平気でする人たちの資質を疑わざるをえません。

日本政府としては、「徴用工問題」では韓国政府のいうことなど無視すべきです。岸田総理は、間違っても「痛切な反省」や「おわびの気持ち」を示すような愚かな真似はやめるべきです。

もしそのようなことをすれば、自民党の保守岩盤支持層が離れていき、統一地方選は自民の惨敗になるでしょう。

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2023年1月29日日曜日

自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 岸田首相は心が痛まないのか 小笠原理恵氏―【私の論評】横田めしの「ししゃも」は「樺太ししゃも」!糧食を疎かにされる軍隊は勝てない(゚д゚)!

自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 岸田首相は心が痛まないのか 小笠原理恵氏

航空自衛隊横田基地の公式ツイッターに投稿された「朝食」の写真 クリックすると拡大します

 岸田文雄政権が「防衛力強化」「防衛費増加」を進めるなか、危険を顧みず、国防や災害派遣に日々邁進(まいしん)する自衛官の待遇改善を求める声が高まっている。GDP(国内総生産)比1%程度の防衛費を長年強いられたため、老朽化した官舎や隊舎がたくさんあるうえ、給与も警察官や消防士に比べて高いとはいえないのだ。さらに、国防ジャーナリストの小笠原理恵氏が、自衛官に提供される「食」の貧しさについて、驚きの現状を明らかにした。 (報道部・丸山汎)


 小笠原氏は25日、インターネット番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送あさ8時!」にゲスト出演した。そこで紹介した、航空自衛隊横田基地の公式ツイッターの写真が衝撃的だった。

 「空自横田基地の栄養バランスのとれた昨日の食事 #横田飯を紹介します」という説明文とともに投稿されたのは、白米とみそ汁、ししゃも2尾、一握りの切干大根と明太子が並んだ「朝食」の写真だ。粗食をはるかに通り越している。これで激務に耐えられるのか。

 小笠原氏は「おかずのお代わりは許されず、カロリーを補うのはご飯のお代わりだけなんです」と語る。

 さらに驚くのは、小笠原氏が明かした自衛官らの反応だ。

 「『横田飯』の写真を見た、別の基地に勤務する20代後半の隊員は『ししゃもが2本も付くなんてすごいな。普通、朝食は1本ですよね』が感想でした。幹部自衛官は『皆さんが驚かれたことに驚いた』と語っていました。これが国民が知らない実情なんです」

 小笠原氏は2014年から「自衛官守る会」代表として、自衛官の待遇改善を訴え続けてきた。息子が入隊したある父親は怒り心頭だという。

 「私は真面目に税金もずっと払ってきた。でも、入隊した息子が電話で口にするのは、『おなかが空いた』『おかずが食べたい』と食事のことばかり。自衛官がこんな状況を強いられていることは許せない、と」

 横田基地には在日米軍も基地を置くが、米軍の食堂はビュッフェ形式だ。ある自衛官は「向こうは好きなものを自由に食べられる。あまりの差に悔しさが抑えられない」と本音を吐露したという。

 自衛隊では、食をめぐる〝不祥事〟も表面化している。

 21年10月には、空自那覇基地(沖縄県)の食堂で、40代の3等空佐が、規定の分配量を超える食パンと納豆を不正に複数回、取ったとして停職10日になっている。

 昨年6月には、空自入間基地(埼玉県)の食堂で、50代の1等空尉が、「パン2個」か「ご飯茶碗(ちゃわん)1杯」を選択する朝食で両方を手にして、停職3日の懲戒処分となった。

 ルールと違うかもしれないが、国民の負託に応えるために危険を顧みず任務を完遂する自衛官には、おなかいっぱい食べさせてあげたい。

 実は、ししゃも2尾の「横田飯」の写真が投稿されたのは21年11月のことだ。当時、ネット上で「病院食ですか?」「これで戦えるんですか。たくさん食べさせてあげて」と批判が殺到した。

 投稿の3日後には、当時の河野太郎防衛相が「自衛隊の糧食費」というタイトルでブログを更新した。隊員の「『栄養摂取基準』の見直しに着手」したとして、肉類を100グラムから160グラムに増量するなど改め、隊員(陸上勤務員)1人当たり1日899円だった糧食費を932円に増額したことも強調した。23年度予算案では、現在の物価高を受けて947円が計上されている。

 河野氏が動いたおかげか、その後、横田基地の食堂には「サーロインステーキ」ランチ(昨年4月)や、「照り焼きハンバーグ付き〝朝カレー〟」(同10月)など、ボリューム感あるメニューも登場している。

首相は「横田飯」に心が痛まないのか

 ただ、「問題の根本は変わっていない」と指摘するのは、元陸上自衛官である拓殖大学防災教育研究センター長、濱口和久特任教授だ。

 「現在、自衛隊では民間業者に食事を外部委託をしている基地も少なくない。問題が起きたのは、味や内容よりも金額を重視した結果だ」「岸田政権が昨年末、防衛費増額を含む『安保3文書』を閣議決定したのはいいが、自衛官の待遇改善や人員確保などについて実効性を伴う方策が書かれなかった。いくら高額な武器を購入しても、扱う人員やその糧食の部分がおろそかになるリスクは非常に大きい」

 夕刊フジでは、冒頭の「横田飯」を踏まえて、自衛官の糧食費や食事面の待遇改善などについて、空自広報と防衛省報道室に質問した。ともに1日あたりの糧食費の単価や、栄養摂取基準などを説明したうえで、次のように回答した。

 空自広報「隊員食堂での食事については、精強な隊員の育成及び部隊の士気高揚を図るため、各部隊の栄養士を中心に、隊員のし好に合わせた魅力的な献立を作成しています」

 防衛省報道室「引き続き、隊員が任務遂行に当たって必要な栄養を摂取できるよう、適切な食事の支給に努めてまいります」

空自や防衛省に大きな非があるとは思えない。

 月額129万4000円の歳費や、同100万円の「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の支給を受け、都心の一等地に高級ホテル並みの議員宿舎を持つ国会議員は、自衛官の待遇を認識しているのか。岸田首相は「横田飯」の写真に心が痛まないのか。

 小笠原氏は「自衛官は国を守るための体をつくる食費さえも切り詰められている。一般企業でこれをやったら、訴えられてもおかしくないのではないか。人を大切にしないで、どうやって国を守るのか」と語っている。

【私の論評】横田めしの「ししゃも」は「樺太ししゃも」!糧食を疎かにされる軍隊は勝てない(゚д゚)!

上の記事を読んだとき、最初は漠然と、「ししゃもが2尾」というなら、そんなに悪くもないと思ってしまいました。なぜなら、「ししゃも」は「本ししゃも」だろうと漠然と思ったからです。

ただ、それにしても変だと思いました。「ししゃも」をおかずにするくらいなら、他の魚や肉や卵にすれば、もっと沢山おかずが付けられると思ったのです。

しかし、上記の写真をみて、納得がいきました。これは、「本ししゃも」ではありません。明らかに「樺太ししゃも(カペリン)」です。「樺太ししゃも」は、キュウリのような匂いがすることから、北海道では「キュウリ」と呼ぶ人もいます。

本物のししゃもと樺太ししゃもは、見た目が良く似ているからという理由で代用品に選ばれた過去があります。そのため、普段魚をよく見ていない人には、見分けが付きにくいかもしれません。

本物のししゃもと樺太ししゃもを見分けるにはいくつかのポイントがあります。
本物のししゃも
鱗が大きくクッキリして見える
干物の状態だと口が大きく開いている
生の状態では、ふっくら丸みを帯びて背中は黄色がかった魚体。お腹側は銀白色だったり赤みがかっている。


樺太ししゃも(カペリン)

全体的に青みがかった銀色で、シュッと細長いスタイルをしており、まるで小さいサンマのように見えるものが多い。
干物のなると見分けが難しいですが、生の状態でよく見比べてみると違いが分かりやすいです。

本物のししゃもの代用品である「樺太ししゃも」は100g当たり200円程で取引されています。一方、本物の「ししゃも」は100g当たり600円程の値段がつきます。大きさや、その年の漁獲量によっては更に高騰することもあります。

「ししゃも」というと私自身は、この「ほんししゃも」のほうを思い浮かべてしまうのです。そうして、「ししゃも」といってもオスとメスでは、また違った味わいがあります。

オスのししゃもは、卵を産まない分全身がふっくらとして栄養豊富で旨味が強く感じられます。ししゃもの風味や旨味を感じたいのであればオスを選ぶのがおすすめ。

ししゃも独特の風味を感じやすいので生で食べる際にはオスを使う事が多いです。


メスの魅力は何といってもお腹に抱えた卵でしょう。ししゃもを食べるなら子持ちししゃもが良いと言う人も多いです。

樺太ししゃもは卵がプチプチとしていますが、本物のししゃもの卵は全く違います。卵のとろけるような食感が特徴で口当たりが滑らかです。メスのししゃもは水揚げ時期の中でも、10月前半~半ばは身と卵が半々程で、魚肉の旨味と卵の風味両方を味わえます。また、11月に入るとたっぷりと卵を持ち、濃厚な子持ちししゃもになります。

私自身は、どちらも好きで、どちらとも酒の肴にはピッタリです。

ただ、子持ちししゃもは、美味しいのですが、このほかコレステロールが多いので、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪値が高いと指摘された人は気をつけたほうが良いでしょう。 なお、本ししゃもより、代用魚のからふとししゃもに多くのコレステロールが含まれています。

随分話がそれてしまいましたが、最初この記事を読んだとき、「ししゃも」という言葉から、2尾とはいえ、朝から随分良いものを食べていると思ったのですが、写真をみてこれは「ししゃも」ではなく「樺太ししゃも」であると気づいて、事の重大さに気づいた次第です。

上の記事にふれられているとおり、「樺太ししゃもが2尾」という状況は改善されたようではありますが、食費さえ切り詰めなければならないというのは異常です。しかも、平時においてこの有様なのですから、もし戦争にでもなったらどうなるのか暗澹たる気持ちになります。

実際、日本でも戦争中に南方戦線では、餓死した兵士が多いと聞いています。しかし、このような状況になったのは戦争末期のことです。特に、米軍は潜水艦等をもちいて、大々的に通商破壊を行ったため、日本自体が物資不足に陥り、軍隊ですら食糧にさえ事欠くようなったのですが、平時、戦中もそのようなことはありませんでした。

実際、昔の兵隊の写真などをみると、結構ふっくらした人もいたのに驚くことがあります。日本軍では、戦前・戦中では一人一日あたり最大で6合の米が食べられたといいます。当時米をこれだけ食べられたということは、貧乏な世帯では米も満足に食べられなかったことを考えると破格だったと思います。

これは、強い軍隊を作るには、まず兵隊に満足な食事を与えなければならないと考えたからでしょう。

これについては、ネットにも掲載されているので詳細はそちらをあたってください。おかずやデザートなど、結構種類も豊富であったことに驚かされます。

そのようなことよりも、軍隊とその食事の重要性は、切っても切り離せないところがあります。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍元首相、台湾のTPP参加を支持 中国へは自制ある行動呼び掛け―【私の論評】中国が台湾に侵攻すると考える人は、兵站のことを考えていない(゚д゚)!

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事より一部を引用します。 

戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、その著作『補給戦――何が勝敗を決定するのか』(中央公論新社)の中で、「戦争という仕事の10分の9までは兵站だ」と言い切っています。
マーチン・ファン・クレフェルト
実は第2次世界大戦よりもはるか昔から、戦争のあり方を規定し、その勝敗を分けてきたのは、戦略よりもむしろ兵站だったのです。極言すれば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧をどれだけ前線に送り込めるかという補給の限界が、戦争の形を規定してきました。そう同著は伝えています。エリート中のエリートたちがその優秀な頭脳を使って立案した壮大な作戦計画も、多くは机上の空論に過ぎません。

現実の戦いは常に不確実であり、作戦計画通りになど行きません。計画の実行を阻む予測不可能な障害や過失、偶発的出来事に充ち満ちているのです。

史上最高の戦略家とされるカール・フォン・クラウゼビッツはそれを「摩擦」と呼び、その対応いかんによって最終的な勝敗まで逆転することもあると指摘しています。 
そのことを身を持って知る軍人や戦史家たちの多くは、「戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を語る」と口にします。
この記事では、中国が台湾に侵攻することを想定して文章を書いています。中国は海上輸送力が未だ脆弱なため、一度に数万人の兵隊と、それに対応する食糧、武器弾薬しか台湾に送ることができません。

しかも、台湾軍はウクライナ軍より現代的な軍隊であり、中国がたとえ台湾に兵を送り込めたにしても、その後船舶で食糧などの物資を送り込もうにも、台湾の強力な対艦ミサイルで輸送船がことごくと撃沈されることが想定されるため、兵站が途絶えることが予想され、かなり中国の台湾侵攻は難しいのです。

それは守備の側も同じことです。台湾が中国に攻め入られた場合も、同じく兵站は重要ですし、特に守備する兵隊に日々3000kcalの食糧を提供し続けなければ、戦争に負けてしまうのです。ただし、台湾側は、中国の侵攻に備えて、物資も蓄えているので台湾側は有利なのです。

こういうことをいうと、中国は核もあるので、すぐに台湾など落とせると語る人もいるかもしれませんが、それは破壊と侵攻を取り違えているのです。

侵攻と破壊は別ものです。中国が台湾を武力で破壊するのは比較的簡単にできるでしょう。しかし、侵攻となると兵隊を送り込んで、制圧しなければならず、難易度はかなり高くなるのです。

上の記事では「高額な武器を購入しても、扱う人員やその糧食の部分がおろそかになるリスクは非常に大きい」としていますが、まさにその通りです。

「糧食の部分」をおろそかにする軍隊は、侵攻も守備もできないのです。

そのことは、ウクライナ戦争でも明らかになりました。ウクライナを10日で落とせると考えたプーチンは、兵站のことなどあまり考えていなかったようです。兵站が脆弱なロシア軍は初戦においては最前線の兵隊の糧食もままならない状態であったとも伝えられています。

現代でも、糧食をおろそかにする軍隊は勝てないのです。自衛隊もそうです。岸田首相はそのことを理解すべきです。

結局、このような状態になったのは、財務省が何かというと緊縮をしたがるからなのでしょうが、岸田首相はこうした財務省の緊縮姿勢にあらがって、自衛隊の兵站を満足なものにすべきです。

また、財務省の安全保障を理由に必要のない増税をすれば、日本経済が落ち込み、将来の安全保証にも事欠く事態に陥るのは明白であり、このような馬鹿真似をする財務省と対峙して、防衛増税もやめるべきです。

そもそも財務省はいずれの国でも、防衛費は節約したがるのが常であり、英国等においては、戦時の戦略会議には財務大臣は入れません。日本は、戦時ではありませんが、現在は新たな防衛3文書ができあがり、それを実行に移していかなければならない時期にあります。これを絵に描いた餅にしてはならないです。

このような時には、安全保障に関しては、財務省の主張などは、全部話半分に聞いた上で、すすめるべきなのです。なんでも財務省の言うことを聞いていれば、とんでもないことになります。それこそ、先の「横田めし」の「樺太ししゃも」が一尾ということになりかねません。

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2023年1月28日土曜日

岸田首相「再調査踏まえ必要な対応」 Colabo不正会計問題―【私の論評】colabo問題を追っていくと、財務省の「財政民主主義」にまでたどり着く(゚д゚)!

岸田首相「再調査踏まえ必要な対応」 Colabo不正会計問題

岸田首相

   岸田文雄首相は27日の参院本会議の代表質問で、東京都監査事務局が都の若年被害女性等支援事業を受託している一般社団法人「Colabo(コラボ)」の経費精算に一部不当な点があるとして都に再調査を指示していることについて、「再調査結果などを踏まえて必要な対応を行いたい」と述べた。同事業は国が経費の一部を負担している。

【私の論評】colabo問題を追っていくと、財務省の「財政民主主義」にまでたどり着く(゚д゚)!

岸田首相のColabo不正会計問題に対する発言は、悪くはないですが、それにしても具体的にどうすべきかは見えてきません。colaboというミクロの現象をどうやって政府がマクロ的に捕らえ、政府として具体的にどのように行動していくのが見えてきません。まさに「検討師」的な発言です。発言するなら、マクロ的な観点からある程度発言してほしかったです。

Colabo問題が未だはっきりしていないのに、厚生労働省は、困難に直面する女性への対応を手厚くするため「女性支援室」を4月に新設します。ドメスティックバイオレンス(DV)や性被害、貧困など女性を取り巻く問題は複雑化している実態を踏まえ、問題の解決や自立の促進につながる体制を目指すそうです。 

厚労省は従来から女性支援に前のめりだが・・・・・

現在は、厚労省の子ども家庭局に所属する職員3人が中心となり、生活困窮に苦しむ母子家庭の女性の問題などに対応しています。一方、アダルトビデオ出演の強要といった性的搾取に遭う若い人も増えてきました。 

このため、社会福祉を担う社会・援護局に女性支援室を4月に設け、問題に総合的に対処。専任の担当を10人確保するそうです。

こうした組織、結局またおかしげなことに活用されかねないと思います。女性支援という趣旨は結構だとは、思いますが都道府県などで実際に政策へ下ろしていくときは、このブログでも以前述べたようにいろいろな補助金を出します。その補助金が正しく使われているかどうかを、確認するのは至難の技です。その記事のリンクを以下に掲載します。
ネットで大騒ぎ「Colabo問題」めぐる税金の不適切な使われ方 国は〝弱者ビジネス〟助長させる「困難女性支援法」を見直せ―【私の論評】Colabo問題の本質は、日本の経済・支援政策のほとんどが減税ではなく、補助金で実行されること(゚д゚)!
結局、日本の経済政策や支援政策などの多くが、減税ではなく、補助金等で実行されることが、Colabo問題のような数々の問題を助長しているのです。

補助金等にばかり頼っていれば、補助金等のための審査は際限なく増え必然的に甘くなるというか、事実上できなくなり、Colabo問題のような問題を生み出し、さらに執行漏れが多数出るのは最初から判りきったことで、余った大量の補助金等は財務省が特別会計等として溜め込み、「死に金」となるのです。

このような不合理なことは、一刻もはやくやめて、日本でも減税を多用すべきです。減税であれば、補助金等と異なり、税金をとらないだけですから、簡単に実施できますし、それに不正の温床となることもあまりありません。それでいて、確実にしかも素早く効果があります。

このような、政策転換をしない限り、Colaboのような問題は防ぐことは難しいでしょう。

colaboのようなNPOでも、女性を助けるためには、様々な物品を購入するはずです、そのときに消費税が減免されれば、かなりの補助になるはずです。

しかし、支援のほとんどが税金ではなく、補助金や助成金ということなれば、それを実行するのは最寄りの地方自治体ですし、補助金は女性支援だけではなく、コロナから、失業対策から、から子供支援などもあり、地方自治体の事務量は莫大なものになります。 

そうなると、補助金・助成金の審査は十分にはできず、形式的なものになってしまいます。様々な書類などが型どおりに揃っていれば、それでOKという事にならざるを得なくなります。また、あまりにも数が多いので、監査もおざなりにならざるを得ないです。

このことが白日のもとに晒されたのは、まさに一般社団法人「Colabo(コラボ)」の件であるともいえます。

補助金などの使い道に関する、住民監査請求権がありますが、とにかく補助金には様々なものがあり、地方自治体もそれに関わる余裕がなく、住民監査請求は95%が門前払いで、「こんなものは請求に値しない」ということで終わってしまうのが、通例です。

ところが、Colaboに対する住民監査請求は2月末までの再調査になっています。とても珍しい例です。

今回のColaboの件については、以下の監査結果で、請求内容も見られます。
東京都若年被害女性等支援事業について 当 該 事 業 の 受 託 者 の 会 計 報 告 に 不 正 が あ る として、当該報告について監査を求める 住 民 監 査 請 求 監 査 結 果
この結果では、監査請求の内容もみることができますが、不正会計とみられる内容があまりに酷いのです。これは、本来補助金を出す時に、東京都の福祉保健局が十分対応すべきだったと思われますが、先にも述べたように、おそらくコロナの影響などでコロナ関係補助金や補助金が山積しており、十分に審査できなかったのでしょう。

岸田政権の経済対策や、事業支援対策など、ほぼすべてが、補助金によるものなので、地方自治体や政府なども実質上モニタリングできないような状態になるでしょう。

そのため、Colabo問題を住民監査請求に委ねるとしても、第三者が見るのにも限界があるでしょう。だから補助金などを配るにしても、方法を変えるべきです。

行政が手間をかけて審査や、監査を徹底するという考え方は事実上パンクしているのですから、全体の仕組みを変えるべきです。

まずは、政府の経済対策や事業支援対策などは、補助金・助成金主体から、減税主体とするのです。これで随分地方自治体の手間が減り、補助金の審査や監査がかなりやりやすくなります。

それともう一つの方法としては、補助金を配るのではなく、寄付したい人が、直接NPO法人などに寄付してもらう形式にするのです。補助金は税金を吸い上げて役所が配る仕組みです。それであれば、直接NPOなどに寄付してもらうようにするのです。

直接寄付してもらい寄付金額に応じて、税金を控除する方式にするのです。税収はその分減るのですが、効果は一緒です。それに税金を控除すれば、それが寄付へのインセンティブにもなります。

これが、欧米などで行われている方式であり、欧米では寄付金文化が根付いています。日本で、こうした寄付金文化が根付いていなかったのは、こうした仕組みがなかったことが大きな原因です。

このブログでもかつては、良く掲載していたことなのですが、日本ではNPOというと、奇特な人たちが手弁当で集まり、実施する奇特な事業ということで、あまり期待される存在ではありませんでした。

一方米国では、たとえば、低所得者住宅提供を、就業支援プログラムなどを含む、包括的パッケージとして提供する事業などがあります。それを実行するNPOに建設会社、銀行なども加わり大々的な事業を展開したりしています。こんなことを言うと、日本ではなんのことやら、わからないという人もいるかもしれません。

そのため、NPOは米国では立派な事業と考えられており、大学院を卒業した将来を嘱望されるような優秀若者が、就職先に選ぶということも普通のことです。また、民間営利企業でやり手だった企業経営者が、営利企業に嫌気をさして、非営利企業のNPOの経営者に転身して、大事業をやり遂げるということも珍しくはありません。

かつてドラッカーも評していたのですが、米国の優秀な非営利事業のNPOにおける、マネジメントは利益という指標がないからこそかなり厳しく、徹底的に使命(ミッション)やそれに関わる目的や目標を追求しているとされ、民間営利企業はこれを見習うべきと述べています。

米国のように、寄付したい人が、NPO法人などに寄付すれば、寄付した人が自分が寄付したお金がきちんと使われているかどうか監査することになります。この方法なら、寄付した人はより関心がありますから、よりきちんと監査することになるでしょう。

そういうこともあってか、米国では毎年、星の数程のNPOが生まれる一方、星の数程のNPOが消えていきます。

米国では、税金では自分の寄付したお金がどう使われているかをよく見ることができなので、なるべく税金を支払わないようにして、NPOになるべく多く寄付するという人もいます。

日本では、colaboの資金源は補助金の他どこからお金が拠出されているかを調べると、いろいろな名前が上がった中に、「赤い羽根共同募金」もありました。

colaboに寄付できますの間違いか・・・・・・

日本では、NPOへの寄付が根付いておらず、寄付金は少額なのが通例です。しかし、米国式に大きな金額の寄付も受け付けられるようにして、寄付した人達自身が監視するという方式にすべきです。無論、NPO側も、インターネット上で財務内容を公表するのが前提です。そうした方が、政府や自治体が監視するよりも監視は効くと考えられます。

ただ、こうしたことを推進する上でネックになるのが財務省です。財務省は、個人の意向でNPOに寄付をしそのお資金でNPOが社会事業を推進することは、「財政民主主義」に反するとみているようです。

日本では社会事業に関しては、全部税金という形で一旦国庫に入れて、それを国が分配するという形をとります。財務省は、これを「財政民主主義」と主張しています。しかし、もし先にあげたように、税金を控除されるしくみがあれば、国民は今より多く民間のNPOに寄付をすることになるでしょう。

そうすれば、国の財政として国民に選ばれた国会議員が何にいくら使うということを決めないで、民間のNPOが社会事業を実施することになります。財務省は、これだと財政について民主主義が崩れると考えているようです。

しかし、この「財政民主主義」という考え方によれば、社会事業に関する財政は、全部公務員が進めていくことになります。この考え方だと、減税や寄付よりは補助金・助成金のほうがより民主的ということになります。これらは、単なる手段であり、どのような手段を取ろうと、場合によって効率的、非効率等の違いはありますが、民主・非民主的の指標とはなりえません。


この論理はおかしいです。現状のNPOは業務に関して官庁や地方自治体の認可を受けかつ官庁等に詳細な報告義務を持つはずですが、先にも述べたように、すべての社会事業を官庁や地方自治体が事前審査し、事後監査することなど不可能です。

こうした財務省による「財政民主主義」の間隙をぬって、これを活用して、社会事業を餌に、公金をチューチュー吸い上げよういう人達も多数でてくるのでしょう。

無論、ミクロ的に見れば、様々な個人や組織が結びついたり、ついたりで、さながらアメーバのようにして、その時々で、最も公金を吸い上げやすいように変幻自在に形を変えているものとみられます。

そうして、官僚は補助金によって自ら差配をしたがります。このような仕組みをつくろうとする人はたくさんいます。官僚でも助成に限らず、NPO関係の補助金の仕組みをつくろうとする人は多いです。

今後も女性支援を強化していくなら、きめ細やかな対応が必要なことから、NPOの数が増えると思います。

これを全部行政が対応するとなると、先の述べたようにマンパワーも何もかも足りないです。そこで専門性のあるNPO法人に委託するにしても、監査を全部行政がやるのは非効率です。

東京都であれば、女性支援を担当している部署は福祉保健局になりますので、まさにコロナと正面で向き合っているところです。マンパワーも予算もそちらに割かれることになります。

先にも述べたように、厚労省で別の組織をつくるということですが、「女性支援室」の10人では、いくら何でも全国の話をそこでチェックするのは無理です。政策は良いにしても、公金を使うときには何らかの仕組みを考えなければなりません。

日本でも、NPOの基盤を強くし、今回のcolabo問題のような問題をなくすためには、官庁や自治体、NPOの自助努力だけでは限界があります。まずは寄付文化が根付くように、今後の税制改正も実現すべきです。

そうして、寄付金を元に、まともなNPOが活動しやすくするとともに、大口寄付者等がNPOの審査や、監査ができる体制も整えるべきです。財務省や他省庁の官僚たちも、すべての社会事業を自分たちが差配できるなどという幻想は捨てるべきです。

そうでないと、colaboのような問題はモグラ叩きのようになって、いつまでたってもなくならないでしょう。

このような問題については、随分前には、このブログに掲載していたのですが、最近はほとんど掲載していませんでした。それは、ブログに掲載しても、多くの人に関心を持ってもらえなかったからです。

しかし、今回Colabo問題が起こったことにより、日本の寄付金文化の問題やNPOの問題は従来よりは、はるからに多くの人に理解してもらえるきっかけになると思います。まさに、暇空茜さんの功績は大きなものです。

さらに、もし安倍元総理がご存命であれば、この問題の全容を岸田総理のようにミクロ的な見方しかしないのではなく、マクロ的な観点から理解し、暇空茜さんの功績を、行政に活かす試みがスムーズにできたと思います。それを思うと、残念でなりません。

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2023年1月27日金曜日

気候学者:今、地球規模の冷却サイクルに突入している―【私の論評】地球温暖化CO2説は「仮説」に過ぎないが、世界中に様々な弊害や対立を生み出している(゚д゚)!

気候学者:今、地球規模の冷却サイクルに突入している

2023年1月26日掲載 文:トム・ネルソン


原文:https://principia-scientific.com/climatologist-were-going-into-a-global-cooling-cycle-now/


デービッド・デイリー教授


政府機関は、二酸化炭素のレベルが上昇しているのは、すべて人間の活動と化石燃料の燃焼が原因であると言っている。しかし、本当にそうなのでしょうか?

デービッド・ディリー教授は、今日の気温と二酸化炭素のレベルが、過去の周期に基づいたあるべき姿に非常に近いことを示します。

また、長期的な地球寒冷化のサイクルに移行しつつあることも紹介します。地球温暖化は極地で始まり、極地で終わる。そして、地球寒冷化は北極と南極で起こっている。

#第64回 デイヴィッド・ディリー 「ついに証明された、大気中の二酸化炭素の増加は、ほとんど自然なものである」 - YouTube



ディリー教授は、気象学者、気候学者、古気候学者であり、元NOAA国立気象局の気象学者である。

自然界の気候・気象サイクルを予測する技術の研究開発に大きく関わるGlobal Weather Oscillations(GWO)社の創設者兼CEOを務めている。
ディリー教授は、空軍からNOAA国立気象局、GWOに至るまで54年の経験を有している。

GWOの上級研究員兼予報官として、ディリー氏は地球-月-太陽の地磁気サイクルに基づき、これらのサイクルが歴史的、現在的、そして将来の気候・気象のサイクルとどのように整合するかを研究するクライメートパルステクノロジーを開発しました。

【私の論評】地球温暖化CO2説は「仮説」に過ぎないが、世界中に様々な弊害や対立を生み出している(゚д゚)!


日本全国が、寒波に見舞われています。現在、野菜などが値上がりしていますが、今後もこの状況は続きそうです。以下に、これに関する動画を掲載します。


このブログでは、10年くらい前までは、良く地球温暖化CO2説への疑問などを、掲載したものですが、最近では、世界的に「地球温暖化CO2」説は、当然のこととされ、特に先進国では、それを前提として動くようになったのでほとんど掲載したことはありません。

ただ、これだけ日本国内でも、全国的に寒さが続けば、さらに世界中から寒波のニュースが入ってくると「地球温暖化」に疑問を持つ人も多いのではないかと思います。


元々「地球温暖化説」や「地球温暖化二酸化炭素説」は、「仮説」に過ぎません。そのことは、わかっているのですが、それにしても仮説が当たっている場合もあり得るし、限りある化石燃料を節約するということでも意義があり、今では世界の多くの国々、特に先進国がこの「仮説」を正しいものとして、様々な政策を立案したり、外交をしたりしています。

ただ、「仮説」に過ぎないものを「真説」として動くことには、様々な弊害もあります。これについては、以前このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!
これは、昨年8月19日の記事です。詳細は、粉の記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。


"
スリランカの経済が破綻し大規模デモがおきて政権が転覆したのは、数々の失政が重なった結果ですが、とどめの一撃となったのは燃料費の高騰でガソリンが輸入できなくなったことでした。


スリランカの最大都市コロンボで最近みられる、ガソリンスタンドでたくさんの車やバイクが行列をつくる光景

いまの開発途上国でのエネルギー危機は、単にウクライナの戦争のせいではありません。近年になって、欧米の圧力によって化石燃料事業への投資が停滞していたことが積み重なって、今日の破滅的な状態を招いているのです。

インド人の研究者である米国ブレークスルー研究所のビジャヤ・ラマチャンドランは科学雑誌Natureに書いています。
「近代的なインフラを最も必要とし、世界の気候変動問題への責任が最も軽い国々に制限を課すことは、気候変動の不公正の極みである」。
ラマチャンドランは、国際援助において、気候変動緩和をすべての融資の中心に据えるという近年の方針について、偽善であり、二枚舌だとして、猛烈に抗議しています。
「それは、経済開発に使える資源を必然的に減らすことになり、しかも地球環境にはほとんど貢献しない。・・なぜそのような努力をするのか。世界銀行とIMFの主要株主である富裕国は、これまでのところ、エビデンスや合理的なトレードオフに基づく気候変動政策の策定にはほとんど関心を示していない。 
それどころか、天然ガスを含む化石燃料への融資を制限し、自国では思いもよらないような制限を世界の最貧国に対して課すことを、自画自賛しているのである。その規制の中には、化石燃料への開発金融をほぼ全面的に禁止することも含まれている。 
世界銀行は、気候変動緩和政策と貧困削減の間の急激なトレードオフを最もよく理解しているはずである。しかし、国内の環境保護団体を喜ばせたい資金提供者が課した条件には従うしかなかったようだ。・・欧州連合は、自分たちはクリーンエネルギーの原子力発電所を停止し、天然ガスの輸出入を増やし、国内の石炭発電所を新たに稼働させる一方で、開発金融機関に対しては、貧困国でのすべての化石燃料プロジェクトを直ちに排除するよう主張している。」
「さらに悪いことに、EUの官僚たちは現在、『何がクリーンエネルギーか』をめぐって一進一退の攻防を繰り広げている。燃料不足に直面する加盟国から、原子力や天然ガスまで定義(タクソノミー)を拡大するよう圧力がかかっている。その一方でEUの広報担当者は、“EUの柔軟な分類法は、開発政策に反映されることはない”と明言した。つまり天然ガスはヨーロッパ人にとってはグリーンだが、アジアやアフリカの人々にとっては事実上禁止されるということだ。」
何十億人の人々が、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない、貧困に満ちた未来へと組織的に強制されているのです。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国の化石燃料使用を抑圧しているからです。哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいます。

残念ながら、日本もこれに加担しています。

6月22日に、日本の外務省はバングラデシュとインドネシアに対する政府開発援助(ODA)による石炭火力発電事業支援の中止を発表しました。CO2の排出が理由であり、G7の意向に沿った形です。

ちょうどその同日、この夏の電力不足に対応するため、停止していた火力発電所の再稼働を急いでいる、とのニュースが流れました。千葉県の姉崎火力発電所5号機、愛知県の知多火力発電所5号機などです。

自分の国で電力不足になると火力発電に頼る一方で、途上国の火力発電所は見捨ててしまうというのは道義にもとります。日本がいま電力不足なのは事実だですが、バングラデシュほど慢性的に電力が不足し停電が頻発し経済に甚大な悪影響を及ぼしている訳ではありません。

開発途上国の化石燃料利用を禁止する一方で、今後は経済開発を再生可能エネルギーで実現しろと命じるのは、発電の物理的現実と何十億人もの貧困を否定する傲慢さを示すもの以外の何ものでもありません。
"


温暖化になろうと、寒冷化になろうと、日本は南北に長い国ですから、暑い所から涼しいところへ、寒いところから温暖なところへと国内で移住することができます。国内で移住できるということは、言語の問題も生活習慣の問題もなく、外国に行く思いをすれば、やりやすいです。

さらに、日本は原発もありますし、CO2をほとんど出さなくても発電できる石炭火力発電所をつくる技術もあります。このようなことができない国々も世界には多数あります。

発展途上国からみれば、恵まれているといえます。私達は、「気候植民地主義」によって、被害を受ける人たちのことなど、気に留めることもなく、「暑い」「寒い」と語っています。ただ、日本でもエネルギー価格が上昇しているのは事実ですし、この世界的な状況はなんとしても変えなければならないでしょう。

以下に、さらにこの記事より引用します。


"
2017年11月に開催された「東アジアサミット」、2017年9月に開催された「ASEAN+3エネルギー大臣会合」においても、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及がありました。また、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もありました。

2017年11月に開催された「東アジアサミット」中央は安倍総理(当時)

日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています。日本は、石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本ができる貢献として、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっているのです。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、アジア地域全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。
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この「東アジアサミット」には、当時安倍首相も参加していました。安倍元首相は、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及があったことや、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もあったことを覚えていたことでしょう。

ウクライナの戦争があって以来、先進国はエネルギー獲得のために奔走し、何とか冬を越せるだけのエネルギーの獲得には成功したようです。

経済力が劣る発展途上国はグーローバル・サウスといわれるように、ほとんどが南に位置しているため、エネルギー不足であっても、日常生活はなんとかできるということはあるのですが、それにしてもスリランカのように、その影響を受けて、財政難になる国も多いでしょう。

エネルギー問題は、先進国の都合だけで考えるべきではありません。発展途上国が成長できるように、全世界レベルで考えるべきです。

先の引用記事にも書いたように、日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています。

日本は、石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっています。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、グローバルサウス全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。

もし、安倍総理がご存命であれば、こうした問題にも真剣に取り組み、新たな概念を打ち出し、「気候植民地主義」に対抗したのではないかと思います。それは、また世界を動かすことになったかもしれません。

昨年9月、ドナルド・トランプ前米政権の国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏が「ウクライナの戦争は、なぜ世界が米国の『エネルギー・ドミナンス(優勢)』を必要とするのかを明らかにした」という論説を発表しました。これは米国共和党の考えをよく要約しています。

《バイデン米政権は、米国の石油、天然ガス、石炭、原子力を敵視してきた。これがなければ、米国も欧州も戦略的にはるかに有利な立場にあり、プーチンのウクライナでの戦争を抑止できた》《欧州はロシアのエネルギー供給に依存して脆弱(ぜいじゃく)性をつくり出してきた。だが、本来は、そのエネルギーは米国が供給すべきものだったのだ》

《われわれは、米国のエネルギーの力を解き放たねばならない。天然ガスやクリーンコールなどのクリーンエネルギーを、欧州やインド太平洋地域の同盟国に輸出する努力を倍加させねばならない》《われわれ共和党は秋の中間選挙で大勝し、民主党の環境に固執したエネルギー政策を覆し、米国のエネルギー・ドミナンスを取り戻す》

力強い発言なのですが、グローバル・サウスのことはあまり考えていないようです。先進国が、グローバル・サウスを無視して、動けば世界はますます混乱することでしょう。エネルギー欲しさのために、ロシアに近づく国々もでてくるでしょう。

さらには、西側同盟と中露枢軸の競争激化は、ミドルパワー(中級国家)に機会とともに脅威をもたらしています。米欧や中露は、大国の中間にいるトルコ、サウジアラビア、インドネシア、南アフリカなどに一層の注意を払わねばならなくなっています。

これらの国々がグローバル・サウスに大きな影響力を行使することも考えられます。西側同盟国は、ミドルパワー国を数多く、味方にひきいれる必要があります。そのためか、このポンペオ氏の論説は、あまり多くの人の心を打つこともなく、世界に多大な影響を及ぼすこともなく、単に昨年の中間選挙の共和党への応援で終わってしまったようです。

やはり過去にエネルギー問題で苦しんできた日本のような国が、エネルギー安全保障においても、グローバル・サウスを含めた世界のエネルギー安保を打ち出していくべきです。無論、エネルギー安保でも、今の世界は、中露と対峙しなければならないことは言うまでもありません。中露にエネルギー覇権を握られてしまえば、とんでもないことになります。

安倍元総理が亡くなられたことが、残念でなりません。しかし、これはいずは誰かが必ずやらなければならない避けて通れない問題です。


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2023年1月26日木曜日

金氏、在韓米軍の駐留許容に言及 18年、トランプ氏特使と会談で―【私の論評】ポンペオ回顧録で金正恩が、中国の朝鮮半島への浸透を嫌がっていることが改めて浮き彫りに(゚д゚)!

金氏、在韓米軍の駐留許容に言及 18年、トランプ氏特使と会談で

 回顧録 表紙

 ポンペオ前米国務長官は24日出版の回顧録で、2018年に当時のトランプ大統領の特使として極秘訪朝した際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記から「中国共産党から自分を守るため在韓米軍は必要だ」と伝達されたことを明らかにした。北朝鮮が敵視してきた在韓米軍の駐留を許容する発言として注目されている。

 中央情報局(CIA)長官だったポンペオ氏は18年3月30日に米国を出発し、北朝鮮の首都平壌で金正恩氏と会談した。

 金正恩氏は「中国は朝鮮半島をチベット、新疆ウイグル両自治区のように扱うため、米軍撤収が必要なのだ」と述べたという。

【私の論評】ポンペオ回顧録で金正恩が、中国の朝鮮半島への浸透を嫌がっていることが改めて浮き彫りに(゚д゚)!

回顧録によると、ポンペオ氏は2018年、CIA局長の資格で平壌(ピョンヤン)を訪問し、金委員長に会いました。この席でポンペオ氏が「中国共産党は以前から『在韓米軍が韓国を離れれば金委員長は喜ぶはず』と主張している」と話すと、金委員長は「中国人は嘘つきだ。中国共産党から自分たちを守るために韓国内の米国人が必要であり、中国共産党は朝鮮半島をチベットや新疆のように扱うために米軍の撤収が必要だと話す」と答えたといいます。

ポンペオ氏(左)と金正恩

「中国は朝鮮半島をチベット、新疆ウイグル両自治区のように扱うため、米軍撤収が必要なのだ」と述べたといいます。

金正恩氏の言葉に出てくる中国の本音については事実と合致する側面もあります。中国の習近平・国家主席はトランプ前大統領に「韓半島は中国の一部だった」と語ったことがあり、実際に北朝鮮はチベットや新疆ウイグル自治区と同じ道を歩んでいます。

北朝鮮は貿易の90%以上を中国に依存しており、中国からの食料支援や石油支援なしには存立そのものが難しいです。「北朝鮮は(中国の)東部4省」という言葉もあるほどです。この中国を「高い山のいただき」などと仰ぎ見ていたのも文前大統領でした。

ポンペオ氏は「金正恩が(中国の脅威から朝鮮半島が)保護されることを望んだ」とし「朝鮮半島に米国のミサイルや地上戦力が増強されることを北朝鮮は全く嫌がっていない」と記録しました。

回顧録には2018年6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談での対話も詳細に伝えました。当時、トランプ大統領は金委員長に「エルトン・ジョンを知っているか」と尋ね、彼のヒット曲「ロケット・マン」に言及した。

そして金委員長のあだ名「リトルロケットマン」を曲名にしたと語った。この言葉に金委員長を含む出席者の大半が笑い、金委員長は「ロケットマンはよい。しかしリトルはよくない」と冗談を言ったと、ポンペオ氏は振り返りました。

2019年2月にハノイで行われた米朝首脳会談の決裂について「金正恩氏が寧辺核施設解体の見返りに北朝鮮制裁の全面解除を求めたため」と明かしています。金正恩氏の要求が通れば北朝鮮は名実共に核保有国となっていました。この北朝鮮の要求を飲むよう求めていたのが文前大統領でした。当時文在寅政権の青瓦台(韓国大統領府)はボルトン氏の回顧録について「歪曲」と主張し強く否定しましたが、青瓦台のこの主張もやはり嘘だったのです。

2019年6月30日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ大統領、金委員長が板門店(パンムンジョム)軍事境界線で会った「板門店会談」(写真下)のエピソードもあります。


ポンペオ氏は「当時、北朝鮮はもちろん米国も文大統領の同行を望まなかった」と強調しました。ポンペオ氏は「(当時)私たちが直面すべき最も大きな挑戦について知っていた」とし「その挑戦とは文大統領が歴史的事件の一部になることを要求することだった」と伝えました。

また「金委員長はトランプ大統領と2人で会うことを望んだ」とし「金委員長は文大統領のための時間も敬意もなかったため、我々は正しい判断をした」と回顧しました。

互いに核保有国である、インド・パキスタン関係については、「2019年2月にインドとパキスタンの対立が核戦争に突入する寸前まで行ったことを、世界が正しく理解しているとは思わない」と述べています。 

「真実は、私も正確な答えは知らないが、あまりにも寸前だったことは知っている」 また、ヴェトナムの首都ハノイで「核兵器について北朝鮮と交渉していた」首脳会談の夜、「インドとパキスタンが、数十年にわたる北部国境地帯カシミール地方の紛争に関連して互いに脅迫し始めた」ことを「決して忘れないだろう」と述べました。 


このブログては、北朝鮮に関して、金正恩は中国を嫌っていること、さらに、北朝鮮およびその核が結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることを主張してきましたが、このことをポンペオ氏の回顧録でも裏付けられたと思います。

最後に、回顧録に安倍元首相のことが書かれているかどうかについては、ここに掲載するとネタバレになってしまいますので、興味のある方は是非、ご自分で直接書籍をご覧になって下さい。

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2023年1月25日水曜日

ウクライナ情勢が大きく動く…独「レオパルト2」米「エイブラムス」主力戦車を供与へ―【私の論評】戦車を戦地に配備するまでは数カ月を要する。ウクライナ戦争はこれから1年は続く(゚д゚)!

ウクライナ情勢が大きく動く…独「レオパルト2」米「エイブラムス」主力戦車を供与へ

ショルツ首相

 ドイツのショルツ首相が、主力戦車「レオパルト2」の供与を決めたと、ドイツメディアが報じている。一方、アメリカも、主力戦車を供与する方向で、最終調整に入ったという報道もある。

■北欧諸国など“同盟国”も連携 供与する計画

 ウクライナが求める“主力戦車”の供与が大きく動き出した。

 ドイツのショルツ首相が、自国製戦車「レオパルト2」をウクライナに供与することを決めたと、現地メディアが報じた。

 ドイツからは、少なくとも「レオパルト2」を1台供与し、ポーランドなどからの供与も、許可することを決定したという。

 また、北欧諸国など、他の同盟国もドイツと連携し、ウクライナに「レオパルト2」を供与する計画だと伝えている。

■米国が一転…主力戦車「エイブラムス」供与へ

 一方、アメリカにも新たな動きがあった。

 主力戦車である「エイブラムス」を供与する方向で、最終調整に入ったと複数のアメリカメディアが報じている。

 「エイブラムス」を巡っては、これまでアメリカ国防総省が、ウクライナでの運用はメンテナンスやコストの点で理にかなわないとして、供与しない方針を示してきた。

 しかし、ここにきて一転、供与に向け動き出したアメリカ。そして、慎重姿勢から、ついに転換したドイツ。侵攻から11カ月、ウクライナ情勢が大きく動いている。

【私の論評】戦車を戦地に配備するまでは数カ月を要する。ウクライナ戦争はこれから1年は続く(゚д゚)!

なぜレオパルト2が重要視されるのでしょうか。シンクタンク「欧州外交評議会」によると、ポーランドやフィンランドを含む欧州13カ国は既に、近代的なドイツ製レオパルト2を保有しています。レオパルト2は1979年に導入された後、数回にわたって改修が行われてきました。

レオパルト2

保有国の多くはウクライナへの再輸出に同意したものの、ドイツの承認が必要な状況だ。ポルトガル国防省によると、ドイツのラムシュタイン空軍基地で開かれた会合では、こうしたレオパルト保有国の関係者が協議する場面がありました。

合計では約2000両のレオパルト2が欧州各地に散らばっており、準備状態にはばらつきがあります。

レオパルド2は120ミリ滑腔砲や7.62ミリ機関銃を搭載。オフロードで時速70キロを出せる高い機動性が特徴です。製造元であるドイツのクラウス・マッファイ・ベクマンによると、即席爆発装置(IED)や地雷、対戦車砲などの脅威に対する全周防御機能も持ちます。

多数の車両が既にウクライナの近くに配備されていること、他のモデルに比べ整備の必要性が少ないことから、専門家はレオパルト2が供与されればすぐさまウクライナの追い風になる可能性があると見ています。

米大手兵器メーカー、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)は2022年10月9日、次世代主力戦車のコンセプトモデル「エイブラムスX(AbramsX)」を公開

一方、第二次世界大戦(WW2)後の最強戦車と称されるのが、米軍のM1エイブラムスです。無論単純比較、特にレオパルト2と単純比較はできませんが、第二次世界大戦後の冷戦期、朝鮮戦争やベトナム戦争に本格的な戦車戦はありませんでした。中東紛争でも、当事国に武器供与はあったのですが、逆に東西双方の兵器が混在し、米国のM46/47〜60パットンや、旧ソ連のT-54/55〜62、そして独・仏・英の主力戦車も大戦車戦を経験していませんでした。

こうした中、本格戦車戦となったのが、1991年に勃発した湾岸戦争で、1981年に採用された主力戦車M1が初めて、ソ連製のT-62や72と真っ向から対峙しました。それまで西側諸国の戦車は常に、ソ連のT-54/55・62・72を「脅威」として追従してきた経緯がありました。

M1エイブラムスは半ば伝説化されていたT-62や72を、圧倒的な火力と装甲で一方的に撃破し、地上戦勝利の立役者となりました。その後のイラク戦争やアフガニスタン紛争でも、イスラム側のT-55〜72に対しても一方的な戦いをし、WW2後の実戦における最強戦車として評価されました。

WW2から米陸軍は、M4中戦車、M26重戦車とも二流品であることを承知していました。戦後第1世代戦車のM46〜48パットン シリーズが、ソ連のT54/55と何とか互角に戦えれば良いという状況でした。これは、米軍にとって本土が戦場と化すことはないという前提があり、戦車の出番は主に同盟国の支援に過ぎなかったためです。

第2世代のM60パットンが旧式化する頃、西ドイツと共同開発を行っていた第3世代戦車/MBT-70計画が頓挫。ここから生まれたのが、M1エイブラムス(1981年採用)と、ドイツのレオパルド2(1979年配備。M1と並び現代最強とされる)でした。

火力と装甲に関しては他のメディアでごらんいただくものとして、M1の最大の特徴は機関にガスタービンエンジンを採用したことです。ガスタービンはジェットエンジンの派生形。航空機ではお馴染みの機関で、吸気タービンの前にシャフトを出しプロペラを装着すればターボプロップ。排気タービンの後方にシャフトを出せば、ターボシャフトエンジンとなります。

吸気-圧縮-燃焼-排気を行程ではなくブロックで行う構造があり、次の特長があります。
■小型軽量・高出力。
■高品質の燃料を必要としない。ジェット燃料・軽油・ガソリンとも使用可能。
■振動・低周波騒音が少ない。
■過給機・冷却補器類が不要。
■オーバーホール期間が長い。
このように航空機や船舶に最適な理由で、レシプロエンジンにとって代わったわけです。また、米軍は伝統的に武器装備や燃料の共有化と互換性を重視しており、M60の前期型まで戦車もガソリンエンジンでした。航空機や艦船でガスタービンエンジンが一般化すれば、同じ燃料が戦車にも供給できる理屈になります。

しかし、常時タービンを回す(駐車待機時は、補助の小型ガスタービンエンジンを作動して車内電力を確保している)ため、毎時約45Lもの燃料を消費し、小型軽量化されても燃料をバカ食いする燃費のため、第3世代ディーゼル戦車の2倍もある巨大な燃料タンクが搭載されています。

ガスタービンは、加減速のレスポンスこそレシプロエンジンに劣りますが、一度パワーに乗ると爆発的で、非常時は約2万2500rpmのタービン軸から3500rpmを出力し、100km/h走行も可能とされています。無論駆動系がもてばの話です。

M1エイブラムス戦車はシステムとして世界最高品質の戦車です。レオパルド2より防御力などが優秀です。しかしながら、それは、いわばスイス製の高級腕時計のようなもので、実に繊細で、手のかかる戦車だ。米軍というゆりかごの中でこそ実力を発揮する戦車といえます。ウクライナ軍が運用できるようになるまでは、ある程度の期間が必要ですし、米軍のサポートは欠かせないでしょう。

一方、ドイツのレオパルド2の最新型は、レオパルト2A7Vです。これは、2021年9月15日に実戦部隊に配備されたばかりです。運用を開始したことを明らかにしました。

レオパルト2A7Vは、ドイツが40年ほど前に開発したレオパルト2シリーズの最新型で、「V」とは改善を意味する略語とのことです。従来型と比べて防御力、機動力、火力などが大幅に向上しているのが特徴で、加えてエアコンや補助電源装置、新型のNBC(核兵器・生物兵器・化学兵器)防護装置、最新のネットワーク通信システム(C4I)なども搭載されています。

また、エンジンとトランスミッションが一体化したパワーパックは新型に換装されており、これにより装備が増えても機動力は向上しているといいます。そうして、何と言っても運用面では、M1エイブラハムより簡単です。ウクライナ軍も運用しやすいでしょう。

M1エイブラハムはバージョンアップの度に追加装備が増え、現在は64トン弱もありますが、これはドイツのレオパルド22A7Vも同じです。むしろ両者とも40年間更新しながら配備されていることが、最強伝説といえます。

独政府は声明で、レオパルト2を保有する他国と合わせて「2個の戦車大隊」編成を目指すと表明。独メディアによれば、計80台程度の規模が想定されています。

ドイツは第1弾として14台を供与。これとは別にポーランドが、自国保有の14台をウクライナへ引き渡す手続きに入っています。フィンランドやオランダなども追随する姿勢。製造国ドイツが供与を認めたことで、こうした動きがさらに広がりそうです。

米国からはエイブラムス数十台が送られる可能性があります。英国は既に戦車「チャレンジャー2」14台の供与を決め、フランスでも戦車「ルクレール」供与の可能性が取り沙汰されています。いずれもウクライナ兵の習熟訓練や整備に時間が必要で、実際に戦地へ配備されるまでは数カ月を要する見込みです。

領土奪還を目指すウクライナは、ロシアによる大規模な攻勢に警戒感を強め、欧米諸国に戦車供与を強く要望してきました。AFP通信によると、イェルマーク大統領府長官はドイツの決定を歓迎するとともに「次は『戦車連合』形成だ。多数のレオパルトが必要になる」と主張しました。

欧米製の主力戦車は地上戦で敵陣を突破する破壊力を持ち、こう着が続く前線で大きな威力を発揮すると期待されています。とりわけレオパルト2は「最も成功したモデル」(英シンクタンク)と評され、欧州諸国が計約2000台を保有。部品の調達も容易で、ウクライナ軍には最適と見なされてきました。

ドイツのレオパルト2が、ウクライナに提供されることになれば、20、30両では戦況を変えることはできませんが、少なくとも100両あれば、重要な作戦で正面に配置し、かなり戦況は有利になると考えられます。

ただし、実際に戦地へ配備されるまでは数カ月を要することから、それまでの間ロシアの反攻が続く可能性があります。これをどれくらい持ちこたえるか、あるいは反攻されて後退したとしても、なるべく多くの損害をロシア軍に与えることが鍵となりそうです。

実際、ウクライナがロシア軍に占領された地域を奪還するための戦いは、今年中には終わらないとの見通しをアメリカ軍の制服組トップが示しました。

米軍ミリー統合参謀本部議長(制服組トップ)「軍事的な観点から言えば、(ウクライナから)今年ロシア軍を追い出すことは非常に困難であると考えています」と述べました。


軍の制服組トップ・ミリー統合参謀本部議長は20日、このように述べたほか、戦闘によるロシア側の死傷者は10万人をはるかに上回るとの見方を示しました。

米軍制服組トップがこのような発言をするのは、無論レオポルト2のような戦車を投入したとしても、その戦場への配置には数ヶ月はかかることから、そのくらいはかかるとみているからでしょう。

兵器一つを導入するにしても、それを操作する乗員の訓練、弾丸、部品などの消耗品のロジスティクス、メンテナンスの体制を整えなければならず、わたしたちが新車を購入して、運転するのとは全く違い、多大な時間と労力を必要とするのです。

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