2022年12月7日水曜日

ロシア空軍基地爆発相次ぐ プーチン政権 事態深刻に受け止めか―【私の論評】ウクライナ戦争は、双方の弾薬不足等で塹壕戦になりかねない(゚д゚)!

ロシア空軍基地爆発相次ぐ プーチン政権 事態深刻に受け止めか


ロシア国内の複数の空軍基地で起きた爆発をめぐり、プーチン政権は、ウクライナとの国境から遠く離れた基地が攻撃された事態を深刻に受け止めているものとみられ、ロシア側の今後の対応が焦点です。

ロシア中部と南部の空軍基地で5日、爆発が相次ぎ、ロシア国防省は、ウクライナ側が無人機を使って、駐機中の軍用機に攻撃を仕掛けたと主張しました。

また、6日には、ウクライナと国境を接するロシア西部の飛行場に近い石油施設が、無人機による攻撃を受けたと、地元の州知事がSNSで明らかにしました。

ウクライナ政府は、これまでのところ公式な発表を出していませんが、アメリカの有力紙ワシントン・ポストは6日、ウクライナ政府の高官が、3つの攻撃は、すべてウクライナの無人機によるものだと認めたうえで「非常に成功し、効果的だった」とコメントしたと伝えています。

この無人機について、ロシアの複数のメディアは、ソビエト時代に製造された偵察用の無人機を改良したものだとする見方を伝えています。

ロシアの新聞「イズベスチヤ」は7日、「空軍基地は、いずれも強力な防空システムが機能しているはずだが、当時、ウクライナの新兵器の攻撃を撃退する準備が万全だったとは思えない」と疑問を呈しています。

また、独立系のネットメディア「メドゥーザ」は7日、国境から600キロ以上離れた基地が攻撃されたとしたうえで「局面の大きな分岐点だ。ロシア軍は、ウクライナの前線と国境だけでなく、ロシア領の奥深くまで防空網の構築に対応する必要に迫られている」と伝えるなど、プーチン政権にとって打撃になるという見方も出ています。

こうした中、プーチン大統領は6日、安全保障会議を招集しました。

ロシア大統領府の報道官は、一連の爆発を受けて、急きょ対応を協議したことを示唆していて、政権が今回の事態を深刻に受け止めているものとみられ、ロシア側の今後の対応が焦点です。

ウクライナ大統領府顧問 関与を示唆するツイート

ロシアの空軍基地で5日、爆発が相次ぐ中、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、5日の夕方、ツイッターに「地球が丸いことは、ガリレオによって発見された。しかし、クレムリンでは天文学を研究していないのが残念だ」などとしたうえで、「他国の空域に何かを発射すれば、遅かれ早かれ飛行体は発射地に戻ってくる」と投稿しています。

これについて、ウクライナのメディアは「ウクライナ政府は、基本的にロシアの領土内への攻撃についてはコメントはしないが、攻撃の報告を受けたあとのポドリャク大統領府顧問の投稿によって、間接的に確認されている」として、ウクライナ政府の関与を示唆する形で伝えています。

また、アメリカのワシントン・ポストは6日、ウクライナ政府高官が、3つの攻撃はすべてウクライナの無人機によるものだと認めたうえで「非常に成功し、効果的だった」とコメントしたと伝えています。

“ロシアの核戦力の拠点として重要な場所” 英有力紙


5日に爆発が起きたのは、ロシア中部と南部の2つの空軍基地です。

一つは、ロシア中部のリャザンにある空軍基地です。首都モスクワから南東におよそ200キロ、ウクライナの首都キーウからは、およそ800キロ離れています。

ロシアの国営通信は、燃料を積んだ車が爆発し、3人が死亡し5人がけがをしたと伝えています。

もう一つは、ロシア南部サラトフ州のエンゲルスにある空軍基地で、ウクライナの首都キーウからは1000キロ以上、ウクライナ東部の国境からは、およそ500キロ離れています。

ロシアの複数の独立系メディアは、長距離戦略爆撃機ツポレフ95、2機が損傷したほか、兵士2人がけがをしたとしています。

イギリスの有力紙ガーディアンは、この空軍基地には核兵器貯蔵施設があり、ウクライナへの空爆の拠点としてだけでなく、ロシアの核戦力の拠点としても、重要な場所だと伝えています。

また、6日には、ウクライナと国境を接するロシア西部クルスク州の知事が、州内の飛行場近くにある石油施設が、無人機による攻撃を受けたと明らかにしています。

ロイター通信によりますと、攻撃を受けたのは、ウクライナとの国境から90キロほどの場所にある施設で、映像では、石油の備蓄施設とみられる建物から炎と煙が勢いよく上がっている様子が確認できます。

【私の論評】ウクライナ戦争は、双方の弾薬不足等で塹壕戦になりかねない(゚д゚)!

以上のような記事をもって、マスコミはウクライナが大勝利と報道していますが、それは本当なのでしょうか。私は、まだ2つの点から慎重になるざるを得ません。

まずは、一つ目はロシアのミサイルが枯渇ということが語られていますが、ウクライナも枯渇傾向にあるのは間違いないです。

なぜなら、米国自体が枯渇傾向にあるからです。今年6月には、ウクライナ東部でロシア軍との激戦が続く中、ウクライナ側の弾薬不足が急速に深刻化していました。主力である旧ソ連型兵器の砲弾が払底、ロシアとの火力差は10対1に悪化したとの情報もありました。

米欧は相次ぎ高性能兵器供与を決めたのですが、前線配備や訓練に時間を要していました。ロシアによる東部ルガンスク、ドネツク2州制圧阻止に間に合うかどうか微妙な情勢ともいわれていましたが、これには何とか間に合わせることができたようです。

ただ、米国は、ロシア軍の侵攻と戦うウクライナにとって不可欠な弾薬を供与していますが、生産ペースが消費に追いついていないことから、10月には近く一部の弾薬を提供できなくなる見通しとも言われていました。現状のウクライナ軍は、自分たちで備蓄している弾薬を用いている可能性があります。

米国はウクライナに対する最大の武器供給国となっており、これまでに168億ドル(約2兆4500億円)以上の軍事支援を行ってきました。だが米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンシアン氏は最近の分析で、一部軍需品の備蓄量が「戦争計画や訓練に必要な最低レベルに到達しつつある」と指摘。侵攻前の水準まで補充するには数年かかるとの見方を示しました。

米デラウェア州の空軍基地で、ウクライナに向けた兵器や弾薬を準備する兵士ら

米国は、ウクライナ紛争から教訓を学んだようです。それは、必要な弾薬数は予想より「はるかに多かった」ことです。

米国では1990年代、ソ連崩壊を受けた国防費の削減により、国内の軍需企業が大幅な減産を余儀なくされ、その数は数十社から数社にまで激減しました。だが米政府は今、軍需業界に増産を促し、2020年以降製造されていない携帯型対空ミサイル「スティンガー」などの生産を再開させる必要に迫られています。

米国がウクライナに供与した軍需品の中には、ウクライナ軍がロシア軍の首都キーウ進軍を阻止するために使用した対戦車ミサイル「ジャベリン」や、東部・南部で現在進めている反攻作戦で重要な役割を果たしている高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」など、ウクライナ戦争の象徴となっているものも含まれています。

ハイマースが使用する誘導型多連装ロケット発射システム(GMLRS)弾は80キロ以上離れた標的を正確に攻撃できますが、米国内の在庫は減少しています。

米政府の武器調達官を務めていたキャンシアン氏は、米国がジャベリンとスティンガー同様にハイマース用ロケット弾の備蓄の3分の1をウクライナに供与した場合、その数は8000~1万発に相当すると説明。「これは数か月持つだろうが、在庫が尽きると代替手段がない」と指摘しました。ハイマース用ロケット弾の生産ペースは年間5000発程度で、米政府は増産を目指して予算を割り当てているものの、それには「何年もかかる」といいます。

米国はウクライナに約8500発のジャベリンミサイルを供与していますが、その生産ペースは年間約1000発にとどまります。米政府は5月、3億5000万ドル(約510億円)分を発注しましたが、備蓄の補充には数年かかるとみられます。

ジャベリンを発射する兵士

同国はまた、北大西洋条約機構(NATO)規格の155ミリりゅう弾を80万発以上ウクライナに供与しています。米国防総省によると、この数は西側諸国からの供与分全体の4分の3に当たるとされています。

キャンシアン氏は、米国の供与量は「おそらく自国の戦闘能力を損なうことなく提供できる限界に近い」との見解を示しました。155ミリりゅう弾の米国内での生産能力は月間1万4000発ですが、国防総省はこれを3年以内に3万6000発まで増やすと発表。しかしそれでも年間生産量は43万2000発となり、ここ7か月でウクライナに提供された数の半分に満たないのです。

ロシア軍は、確かに高精度のミサイルは枯渇しているようです。イギリス国防省は先月26日、ロシア軍がウクライナのインフラ施設への攻撃に、核弾頭の代わりに重りを付けた巡航ミサイルを使用しているという分析を発表しました。

このミサイルは冷戦中の1980年代に開発された物で、老朽化したミサイルを使わなければならないほど、高精度の長距離ミサイルが枯渇していることを示すものだとしています。ミサイルに用いる半導体なども枯渇しているようです。

ただ、高精度ミサイルは別にしても、弾薬等は、北朝鮮と中国からも調達できる可能性はあります。

米軍からの支援が滞れば、これは、ロシアに有利になります。

そうして、米国にはもう一つの懸念があります。それは、米国議会です。

中間選挙で議会下院を共和党が奪還し、ウクライナ支援の継続性が問題視され始めています。米南部ジョージア州の上院選の決選投票が6日に投開票されました。

米主要メディアによると、与党・民主党現職のラファエル・ウォーノック氏がジョージア州上院議員選で当選を確実にしました。トランプ前大統領が推薦した野党・共和党新人のハーシェル・ウォーカー氏を破り、上院で多数派を固めた民主が過半数となる51議席目を確保しました。

ただ、下院は共和党のほうが議席数は、多く、上院も民主党は圧倒的多数とは言い難い状況です。

去る5月に400億ドルのウクライナ支援が下院で表決に付された際、57名の共和党議員が反対(149名の共和党議員と219名の民主党議員が賛成)したことがあります。

11月初め、マージョリー・テイラー・グリーンという下院議員は「共和党支配の下では一文もウクライナには渡らない」「民主党が心配する国境はウクライナの国境だけで、米国の南の国境ではない」とトランプの集会で言い放ったのです。

下院の民主党進歩派にも交渉を要求する勢力が30名ほどはいます。バイデン政権はいずれ議会との関係で危機管理を迫られることになるかも知れないです。

以上のような状況を考えると、ウクライナが今後すぐにも勝利するとは言い難い状況です。

それよりも、何よりももっと私が最も恐れているのは、ウクライナ、ロシアともに高精度のミサイルなどが枯渇して、従来のあまり精度の高くないミサイルや火力が中心となり、それこそ、第二次世界大戦どころか、第一次世界大戦のような塹壕戦のような戦いになってしまう可能性があることです。

第一次世界大戦の塹壕戦

両軍とも、銃や機関銃、大砲の弾丸も不足気味になり、銃剣や刀剣を用いた戦いも交えられるようになるかもしれません。

そうなると、第一次世界大戦がそうだったように、なかなか戦争の決着がつかないうちに、多くの兵の命が失われることになりかねません。

ウクライナ戦争がこのような戦争になる可能性はあると思います。そうなれば、戦争は長引くことになります。

第一次世界大戦では、ロシアでは革命が起こったため、ロシアは戦線から離脱せざるを得なくなりました。

そのようなことでもおこらない限り、戦争は長引く可能性があります。

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