2022年12月22日木曜日

防衛増税で日本を守れるのか 平時の経済を弱体化させれば…有事の前に国が倒れてしまう 鳴りをひそめていた財務省でうごめく「増税虫」―【私の論評】防衛増税賛成派と財務省官僚は、そもそも資本主義を理解していない(゚д゚)!

 日本の解き方

防衛増税で日本を守れるのか 平時の経済を弱体化させれば…有事の前に国が倒れてしまう 鳴りをひそめていた財務省でうごめく「増税虫」

高橋洋一


 2023年度の与党税制改正大綱で、防衛費増額の財源として増税する方針が決まった。

 周辺国の軍拡など国際関係により、防衛費を急増しなければいけないのが今の日本だ。それは、ドイツも同じ事情で、国内総生産(GDP)比1・5%を2%まで高めるために特別基金を作った。財源は国債である。

 その理由は財政学での課税平準化理論にある。今回のような防衛費の急増はいつもあるわけではない。意に反して有事になったときに限られる。その意味では、数十年に一回という大震災と同じだ。

 大震災で経済が大打撃を受けているのに復興財源を増税にしたら、ダブルパンチになってしまう。長期国債により課税負担を平準化しなければいけない。

 有事の際や、有事に備えるための防衛費でも同様に考えることができる。課税負担を平準化するために長期国債で対応するのが正しいとなる。増税した場合、平時において経済を弱めてしまう。万が一有事になったらさらに経済を悪化させ、有事対応すらできなくなってしまう。

 長期国債で対応するのは、負担を現世代だけではなく将来世代にも負わせることになると批判する声もある。しかし、いま防衛費を高めることは戦争確率を減らす。これは将来世代も便益を受けるので。負担するのは理にかなっている。

 安倍晋三元首相は、こうした考えを理解して防衛費を長期国債で賄うべきだと主張し、「次の世代に祖国を残していく」と述べていた。

 しかし、岸田文雄首相は「未来の世代に対する責任」として、国債を否定した。同じ趣旨の発言は公明党の山口那津男代表からも出ている。これらは財務省からの振り付けではないのだろうか。

 その後、防衛費の一部について、財務省は「建設国債対象経費」とせざるを得なくなった。岸田首相はある意味で財務省からはしごを外された形だ。

 また、岸田首相は当初、増税から所得税を除くとしていたが、自民党税制調査会で、復興特別所得税を充てることになった。

 ここでも岸田首相や所得税は増税しないと言った一部の関係者は、財務省の捨て駒にされている。

 結局、財務省が真の主権者であるかのような動きを見せている様子がバレバレだ。東日本大震災の復興財源として長期復興国債でなく復興増税になった際も、〝黒幕〟の財務省に、民主党はいいように操られていた。同じ光景が繰り返されている。

 民主党政権では、増税を自由に行えた財務省も、安倍・菅義偉政権では不自由な身だったはずだ。安倍政権では2度消費税を引き上げたが、何度も延期された。約100兆円のコロナ対策も「政府・日銀連合軍」により増税なしで行われた。

 今回、防衛費の追加分は20兆円程度で、防衛国債も埋蔵金もあるのに増税とはおかしい。安倍・菅政権で鳴りをひそめていた財務省の「増税虫」がうごめいてきたのだ。

 これでは、有事の前に国が倒れてしまう。防衛増税の是非を国民に問うべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】防衛増税賛成派と財務官僚は、資本主義の基"貨幣循環論"を理解していない(゚д゚)!

防衛増税に両手をあげて賛成する人たちは、増税しなければね長期的な視野に立った防衛政策の社会的、財政的基盤をつくりあげることにならないと信じ切っているようです。防衛増税するなという主張はつまるところ「当座しのぎ」に他ならないと考えているようです。防衛力強化には税負担が不可欠という現実を国民に説得するのが政治家の仕事だと思いこんでいるようです。


確かに「当座しのぎ」は良くないです。そうでなく、防衛政策の社会的基盤、財政的基盤をつくり上げるべきという観点は重要です。ただし、5年間で防衛費を倍増するなどという荒療治はそう滅多にないことです。

そうはいっても、ウクライナ戦争や中国習近平体制の動向、米国内政治の混乱などを考えると、この5-10年が非常に危険です。ここで我が国の防衛力を抜本的に強化しないと手遅れになるとの切迫感があります。

したがって、5年で防衛費の倍増は必須です。それでも大型の正面装備は配備されるまでに5-7年かかります。しかし、その荒療治をコロナ禍3年でこれだけ経済が痛んでいる最中に行うわけですから、いきなりこれを増税で賄うということになれば、家計を直撃し消費を萎縮させ、景気は腰折れするのは必定です。

ならば、先ず他に使える財源をかき集め、その上で、恒久財源に議論を移行しても決して無責任ではないです。むしろ、ここでさらに経済を萎縮させることの方が無責任です。増税により、経済が萎縮してしまえば、高橋洋一氏が上の記事で主張するように、有事の前に国が倒れてしまいかねません。

国が倒れるまではいかなくても、それこそ日本国経済が停滞し、社会保障の経費が増大して、防衛費増どころでなくなりかねません。企業には外部経済がありますが、国には外部経済はありません。

企業の場合は、余剰人員などを整理して解雇すれば、それは外部経済に移り企業に悪影響を及ぼすことはなくなります。しかし、政府の場合は違います、政府は国民を解雇して、国から外に追い出すことなどできません。

そのため、増税など無理な政策を実行すれば、貧困層が増えるなどして、結局生活保護などの社会保障費が増えて、かえって出費が増すことになりかねません。これが莫大なものとなれば、防衛費どころでなくなる可能性も高いです。

そのようなことを避けるためにも、特別会計や一般会計の剰余金や国債費など、増税に代わる現実的な選択肢を追求すべきです。

その上で、「安全保障・未来保障」危機突破5か年予算の現実的な財源として
①特別会計剰余金(円安効果で外為特会増加分約30兆円)
②一般会計剰余金(昨年度は6.3兆円)
③自然増収(昨年度は9.5兆円)
④国債60年償還ルール撤廃(毎年の国債費16兆円が浮く)
などを用い、足らざるは長期国債で賄うなどして、増税は極力回避すべきです。

これが、防衛増税賛成派への模範的回答になると思います。ただ、防衛増税賛成派は基本的な経済理論を理解していません。これを理解しなければ、いつまでもこのような論争は絶えなくなります。

これに防ぐには、ブログ冒頭の記事を書かれている、高橋洋一氏が日頃から主張されているように、マクロ経済への理解が必要なのでしょうが、それ以前に資本主義を理解していない人が多いのではないでしょうか。

結論からいうと、資本主義においては、税は、安定財源どころか、財源(貨幣を生み出す源泉)にすらなりえないのです。

日本には、「金は天下の周りもの」という諺がありますが、これを現在の信用貨幣や銀行や、中央銀行が存在する中での文脈で理解すれば資本主義を理解できると思います。しかし、これが覚束ない人が多いのではないかと思います。何というか、教科書的なものを読んで、試験などでは合格できるのですが、その根底を理解できず、現実社会における文脈で理解できない人が多いのではないかと思います。

貨幣循環の過程は、貸し出し先が政府の場合も、企業の場合と基本的に同じです。

ただし、企業と政府とでは、大きな違いがあります。企業に貸し出しを行うためには、その企業に返済能力がある必要があります。しかし、近代国家における政府は、強力な徴税権力を有しており、返済能力は確実にあります。したがって、中央銀行は、政府の需要に応じていくらでも貨幣を創造し、供給することができます(日本銀行による国債の直接引き受けは原則禁止されていますが、市中消化の場合でも、基本的な原理は同じです)。


① 中央銀行制度があるおかげで、政府は、税収を元手にしなくても、中央銀行が「無から」創造した貨幣を得て、支出を行うことができます。
② 貨幣とは負債であり、貸し出しによって創造され、返済によって破壊されます。すなわち、政府が国債を発行して債務を負うことは、貨幣の「創造」です。そうして、政府が税収によって債務を返済することは、貨幣の「破壊」です。
無論、「破壊」とはいっても、本当に日銀がわざわざこれをすぐに全部破壊するという意味ではなく、日銀の金庫に入った時点で市場に流通しなくなるので、事実上の「破壊」ということです。ただし、現実には、日銀は日銀に入った貨幣のうち利用できるものは利用して、金融緩和が必要なときにはこれを市場に流通させるということはあります。

さて、この資本主義の基本原理を踏まえたうえで、昨今の防衛費をめぐる財源の議論を振り返ってみましょう。

防衛支出の財源として、増税が検討されています。しかし、貨幣循環論を理解していれば、防衛支出という政府の需要こそが財源、すなわち「貨幣を生み出す源泉」であることがわかるでしょう。むしろ、税は、安定財源どころか財源(貨幣を生み出す源泉)にすらなりえないのです。

資本主義の仕組みを理解していれば、これが結論になるのです。これが理解できない人が多いようです。これと、現代貨幣理論(MMT)とを混同する人も多いようですが、これは明らかに違います。

MMTでは、政府の需要こそが「貨幣を生み出す源泉」であることから、政府は無限に貨幣を生み出すことができるなどという妄想を是としていますが、そのようなことはなく、政府が貨幣を生み出し続け、供給が需要を超えても際限なく貨幣を生み続ければ、当然のことながらインフレが亢進することになります。

よって、政府が貨幣を無限に生み出し続けることなどできず、自ずと限界はあります。ただ、防衛支出という需要が供給能力の枠内に収まっている限りにおいては、貨幣を生み出し続けてインフレにはなりません。現代の日本は、デフレ気味であり、政府が30兆円超の貨幣を生み出したとしても、インフレになりません。

貨幣を生み出す方法には、政府が紙幣を増刷すること、政府が国債を発行することなど様々な方法があります。ただ、増税では貨幣を生み出すことはできません。需要があるにもかかわらず、貨幣を生み出すことなく、増税して、防衛費増を賄うということになれば、当然のことながらデフレになります。これを理解せずに、政府の支出を家計のように考える人があまりに多いようです。

銀行制度特に中央銀行の存在しない資本主義以前の社会であれば、封建領主は、防衛支出の財源を確保するために、増税によって、領民のもつ財産を没収して防衛費に充てるしかなかったのかもしれないです。しかし、その限界を資本主義によって超えることができるようになったのです。

歌川国芳『武田上杉川中嶋大合戦の図』(部分)

銀行制度が完備された資本主義においては、政府(と中央銀行)は、防衛支出という需要に応じて、新たに貨幣を創造することができるのです。

要するに、増税や歳出削減によって防衛費を確保しようとする考え方は、資本主義以前の前近代的な発想に基づいているということです。これでは、何のための資本主義なのか、何のために日本が資本主義を導入したのか、全く本末転倒の状況に陥っているとしかいいようがありません。

防衛増税派の防衛費の財源を国債の発行に求めるのは無責任だと主張し、増税を容認しました。

残念ながら、防衛増税派の議員の政治家としての、そうして岸田総理や財務官僚の経済観念ならびにそれに基づく責任感は、資本主義以前の、前近代的な封建領主のそれです。まさに、明治時代より前の、江戸以前のそれです。

まずは、資本主義や貨幣について正しく理解するのが、政治家や官僚の果たすべき最低限の責任です。これが理解できないと、マクロ経済も理解できません。

前近代的な政治経済観を抱いたままで、この過酷な世界や社会を生き残れるはずもないです。

仮に、今回防衛増税派の議員が、勝利を収めて、防衛増税に成功したとしても、景気が格段に悪くなり、ふたたび深刻なデフレに陥り、それこそ、次の選挙で自民党は下野して、防衛増税派の議員の政治生命は絶たれるかもしれません。

今は権勢を誇っている財務省も、資本主義が理解できないようでは、強大で絶対的な権力を誇った鎌倉幕府や江戸幕府が滅んだように、いずれ滅ぶでしょう。そのようなことにならないためにも、若手財務官僚やそれを目指す人たちは、少なくとも貨幣循環論を地頭でしっかりと理解すべきです。これを理解した上で、当然のことながらマクロ経済、会計学の基礎(簿記等)も学ぶべきです。

昨年、文芸春秋(11月号)に掲載された財務省の矢野康治事務次官の財政危機を訴える寄稿は「矢野論文」と称され、世の中に波紋を広げました。私は、この論文を読む前までは、まさか財務官僚が資本主義自体を理解していないなどということはないだろうと思っていましたが、理解していないことを確信しました。

資本主義を理解しない政治家や官僚が多く存在し、メディアでも理解しているのは、ほんの一握りというのが、現代日本の第一の不幸の源であるといえます。自民党の、積極財政派の方々も、積極財政をを説く前に、まずは「資本主義」の基礎を説くべきなのかもしれません。

なぜなら、資本主義を理解しない人はマクロ経済を理解できないからです。私は、積極財政派の議員の中でさえ、資本主義をしっかり理解していない議員が存在するかもしれないことを危惧しています。そのような議員は、今は積極財政派であっても、すぐに財政健全派に鞍替えする可能が高いです。

そもそも、積極財政派、財政健全派という分類自体が間違いです。財政とはその時々の経済の状況に応じて、積極財政を実施したり、財政健全化をしたりするのが正しく、その時々の状況に応じて流動的に靭やかに実施すべきであって、どちらか一方だけを推進するのは間違いです。

野党議員の中にも、選挙対策として、増税反対を主張する議員もいますが、そのような議員の中にも資本主義を理解していない人がいるのではと、私は危惧しています。そのような議員がまかり間違えて、政権をとったとしたら、その途端に増税反対の看板を取り下げて、増税に走るということも十分考えられるからです。

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