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日銀は20日の金融政策決定会合で、長期金利の上限を従来の0・25%程度から0・5%程度に引き上げることを決めた。事実上の利上げとなる。これを受けて株式市場は急落し、急速な円高が進んだ。
決定会合前の17日には、岸田文雄政権が、日銀との共同声明を改定する方針を固めたと報じられていた。報道の中に、「日銀は2%の物価上昇目標に縛られて身動きできず、急激な円安と歴史的な物価高を誘発するなど、このところ、金利を極めて低い水準に抑え込む大規模な金融緩和の弊害が目立っている」という趣旨の文がある。ここに共同声明を改訂したい側の思惑が透けて見える。日銀の利上げはこうした動きを先取りしたものとみられる。
円安は金融緩和の効果であるが、国内総生産(GDP)を伸ばすので日本経済には好都合だ。実際、法人企業統計で、経常利益が過去最高を記録している。円安で一部の業界が苦しくなるのは事実だが、政府が円安による最大の利益享受者なので、対策さえ施せば日本経済全体の問題にはならない。
物価高というが、2桁程度上昇している諸外国に比べるとまだ楽な方だ。10月の消費者物価指数では、対前年同月比で総合が3・7%、生産食品を除く総合が3・6%、生鮮食品・エネルギーを除く総合が2・5%であるが、消費者物価を含む全体を示すGDPデフレーター(7~9月期)は、前年同期比0・3%下落とまだマイナスである。先進国の物価目標もほとんどが2%で、それらの国でも2%になったら直ちに金融引き締めするわけではない。金融政策の一般則として「ビハインド・ザ・カーブ」があり、金融引き締めはやや遅れて行うものだ。
今回の利上げや共同声明の見直し論は、世界の標準的な金融政策からみてかなり的外れと言わざるを得ない。低金利を日本経済の弊害だと主張する一部の金融機関や、アベノミクスを失敗としたい一部の政治勢力、マスコミなどが後ろで糸を引いている可能性がある。
防衛増税ではっきり国民に分かってしまったが、岸田政権は財務省の言いなりで財政緊縮路線だ。この財政緊縮路線と整合的なのは金融引き締め路線である。白川方明(まさあき)前総裁体制までは、日銀はひどい金融引き締め路線だった。
筆者は、1990年代半ばから日本経済が低成長だったのは、90年頃のバブル後の間違った金融引き締めを間違っていないと言い張り、継続した結果だと思っている。
それを裏付けるデータもある。バブルの前、日本のマネーの伸びはそこそこで経済成長も良かった。84~93年の統計数字をいえば、世界142カ国で相関係数0・94(1が最大)、日本は小さい順でマネーの伸びが26位、成長が25位だった。しかし、94~2013年は世界171カ国で相関係数が0・79、日本は小さい順でマネーの伸びが1位、成長1位だった。つまりマネーの伸びでも成長でも世界ビリになってしまった。
岸田政権のマクロ政策は、増税路線といい、金融引き締めといい、まるで失われた20年の再来のようだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
消費者物価指数が、今年4月以降、世界的な資源高を背景に前年比+2%を超える推移が続いていることで、日本国内でもインフレに関する議論が取り沙汰されています。その一方、もうひとつの重要な物価指標であるGDPデフレーターは、依然としてマイナス圏での推移となっており、二つの指標は大きく乖離しています(資料1)。両者の違いはなぜ生まれているのでしょうか?
GDPデフレーターは、名目GDPと実質GDPの比で表されます。GDPは国内で生産した付加価値の合計ですから、輸入は控除されます。これは、原油高のような海外発の価格上昇によって輸入額が増加した時、名目GDPが減少し、GDPデフレーターの押し下げ要因となることを意味します。
現在、世界的な資源価格高騰で輸入物価は大幅な上昇が続いており、消費者物価はこれを反映して上昇が続いています。一方で、GDPデフレーターはマイナスの推移が続いていることから、足元の物価基調は輸入インフレに留まり、国内における需給バランスの改善による自律的な物価上昇は実現していないことが読み取れます。
上の高橋洋一氏が指摘するように、消費者物価を含む全体を示すGDPデフレーター(第2四半期:7~9月期)は、前年同期比0・3%下落とまだマイナスです。
先進国の物価目標もほとんどが2%で、それらの国でも2%になったら直ちに金融引き締めするわけではありません。金融政策の一般則として「ビハインド・ザ・カーブ」があり、金融引き締めはやや遅れて行うものということを考えると、今回の日銀黒田総裁の事実上の利上げは、やや拙速だったと考えられます。少なくとも、GDPデフレーターがプラスに転じてから、実施すべきであったと考えられます。
円安で企業の経常利益は過去最高となっており、円高が景気悪化につながることになるでしょう。生産拠点の国内回帰の動きにも冷や水を浴びせかねないです。
長期金利の上限を0.5%に引き上げた決定について日銀は、国債市場のゆがみを取り除くためで、金融引き締めではないと説明しています。
財務省の「猿芝居」に騙されてはいけない 「骨太の方針」を巡って「財政再建派」がやっていること―【私の論評】「驕れる者久しからず」の言葉どおり「財務省の終わり」が始まりつつある(゚д゚)!
決定会合前の17日には、岸田文雄政権が、日銀との共同声明を改定する方針を固めたと報じられていた。報道の中に、「日銀は2%の物価上昇目標に縛られて身動きできず、急激な円安と歴史的な物価高を誘発するなど、このところ、金利を極めて低い水準に抑え込む大規模な金融緩和の弊害が目立っている」という趣旨の文がある。ここに共同声明を改訂したい側の思惑が透けて見える。日銀の利上げはこうした動きを先取りしたものとみられる。
円安は金融緩和の効果であるが、国内総生産(GDP)を伸ばすので日本経済には好都合だ。実際、法人企業統計で、経常利益が過去最高を記録している。円安で一部の業界が苦しくなるのは事実だが、政府が円安による最大の利益享受者なので、対策さえ施せば日本経済全体の問題にはならない。
物価高というが、2桁程度上昇している諸外国に比べるとまだ楽な方だ。10月の消費者物価指数では、対前年同月比で総合が3・7%、生産食品を除く総合が3・6%、生鮮食品・エネルギーを除く総合が2・5%であるが、消費者物価を含む全体を示すGDPデフレーター(7~9月期)は、前年同期比0・3%下落とまだマイナスである。先進国の物価目標もほとんどが2%で、それらの国でも2%になったら直ちに金融引き締めするわけではない。金融政策の一般則として「ビハインド・ザ・カーブ」があり、金融引き締めはやや遅れて行うものだ。
今回の利上げや共同声明の見直し論は、世界の標準的な金融政策からみてかなり的外れと言わざるを得ない。低金利を日本経済の弊害だと主張する一部の金融機関や、アベノミクスを失敗としたい一部の政治勢力、マスコミなどが後ろで糸を引いている可能性がある。
防衛増税ではっきり国民に分かってしまったが、岸田政権は財務省の言いなりで財政緊縮路線だ。この財政緊縮路線と整合的なのは金融引き締め路線である。白川方明(まさあき)前総裁体制までは、日銀はひどい金融引き締め路線だった。
筆者は、1990年代半ばから日本経済が低成長だったのは、90年頃のバブル後の間違った金融引き締めを間違っていないと言い張り、継続した結果だと思っている。
それを裏付けるデータもある。バブルの前、日本のマネーの伸びはそこそこで経済成長も良かった。84~93年の統計数字をいえば、世界142カ国で相関係数0・94(1が最大)、日本は小さい順でマネーの伸びが26位、成長が25位だった。しかし、94~2013年は世界171カ国で相関係数が0・79、日本は小さい順でマネーの伸びが1位、成長1位だった。つまりマネーの伸びでも成長でも世界ビリになってしまった。
岸田政権のマクロ政策は、増税路線といい、金融引き締めといい、まるで失われた20年の再来のようだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
【私の論評】日銀黒田総裁は、財務相の日銀に対する非協調的姿勢に屈したか(゚д゚)!
輸入価格の上昇が物価指標の押し下げ要因となることに違和感があるかもしれませんが、次のように考えることができます。すなわち、輸入価格上昇の一方で、輸入コスト増加分がすべて商品に価格転嫁されれば、最終的な消費額も増加するはずです。
そのため、輸入価格上昇によるマイナス分は相殺され、GDPデフレーターは不変となります。一方で、もし価格転嫁が不十分な場合には、GDPデフレーターは下落することになります(資料2)。こうしたことから、GDPデフレーターは「ホームメイド・インフレ(国内主導の物価上昇)を示す物価指標」と呼ばれます。
実際に、経産省が中小企業に向けて行った調査では、コスト上昇分の3割以下しか価格転嫁できていないとする企業が過半数をしめており、国内価格へ波及は十分に進んでいるとは言えません(資料3)。
景気が十分に回復していない中では、消費者の値上げに対する抵抗感も強く、国内企業の値上げ行動が難しいという課題の表れとも言えます。このように、物価の基調を正しく判断する上ではGDPデフレーターに注目することが重要です。
上の高橋洋一氏が指摘するように、消費者物価を含む全体を示すGDPデフレーター(第2四半期:7~9月期)は、前年同期比0・3%下落とまだマイナスです。
先進国の物価目標もほとんどが2%で、それらの国でも2%になったら直ちに金融引き締めするわけではありません。金融政策の一般則として「ビハインド・ザ・カーブ」があり、金融引き締めはやや遅れて行うものということを考えると、今回の日銀黒田総裁の事実上の利上げは、やや拙速だったと考えられます。少なくとも、GDPデフレーターがプラスに転じてから、実施すべきであったと考えられます。
このブログでも以前掲載したように、通貨安は「近隣窮乏化策」とも呼ばれるように、通貨安の国だけのGDPを上げる効果があります。日本も例外ではなく、円安は日本経済全体のGDP押し上げ要因だったのですが、円高になったので、株価が急落したのは当然といえば当然です。
円安で企業の経常利益は過去最高となっており、円高が景気悪化につながることになるでしょう。生産拠点の国内回帰の動きにも冷や水を浴びせかねないです。
長期金利の上限を0.5%に引き上げた決定について日銀は、国債市場のゆがみを取り除くためで、金融引き締めではないと説明しています。
日銀としては、これまで10年物国債のゼロ金利誘導政策(+-0.25%は許容)を長年続けて来た結果、利回り曲線が10年の所で凹み、歪んでしまいました。そこで10年物の許容範囲を+-0.5%に拡大し、同時に、10年物以外も買いオペし、利回り曲線全体を下げようとしているのでしょう。
これは、イールドカーブ・コントロールの一環であると考えられます。しかし日銀の理屈は分かりにくく、実質的な利上げと言われても仕方ないです。市場の圧力に押されたと受け止められれば、今後さらなる修正を見込んだ催促相場につながる懸念があります。
今回の決定は唐突な印象が否めず、黒田東彦総裁の記者会見を聞いても、なぜこのタイミングなのか判然としません。株価は大幅に下落し、円相場も急騰するなど、市場に大きなインパクトをもたらした。日銀の決定が本当に市場の安定に寄与するのかこれから見極めていくことになりますが、いずれにしても、日銀には金融政策運営で丁寧な説明が求められます。
特になぜこのような、理解しにくい、イールドカーブコントロールをしなければならないのか、もっと説明すべきでしょう。問題の根源の奥の奥には財務省の日銀に対する非協調的な姿勢があること、緊縮姿勢があり、国債を発行しなことなどがあることなども説明すべきと思います。ただは、これは 財務省出身の黒田総裁には難しいことなのかもしれません。
今後、マイナス金利政策や長期金利目標のさらなる見直しが行われる可能性はあります。ただ、その大前提となるのは2%の物価目標を安定的に達成できる見通しが描けることです。達成できていない以上、これまでの緩和策を続けるべきでした。
今後、住宅ローンの金利も上昇し、企業が融資を受ける条件も厳しくなるでしょう。一方で、銀行など金融機関の経営には恩恵が大きいです。今回の事実上の利上げは、雇用、GDPなどマクロ経済よりも金融機関を優遇した政策です。
いずれにしても、市場から見れば、従来の発言を翻した「黒田の乱」といえます。しかし、これだけの政策方向の転換について、黒田総裁だけの独断とも考えにくいです。岸田文雄首相の了解があったと考えるのが自然です。
岸田政権は、防衛費増に対して、防衛増税を打ち出しました。あまりに唐突であったので防衛増税については自民党内でも反対が多いです。しかし、自民党税調の税制改正大綱には書きこまれました。
結局、岸田政権は、財務省の言いなりで無理筋の防衛増税を押し込みました。このブログでは増税なしで防衛費を捻出することも出来ることを主張しましたが、にもかかわらず岸田首相はあえて選びました。
今後、住宅ローンの金利も上昇し、企業が融資を受ける条件も厳しくなるでしょう。一方で、銀行など金融機関の経営には恩恵が大きいです。今回の事実上の利上げは、雇用、GDPなどマクロ経済よりも金融機関を優遇した政策です。
いずれにしても、市場から見れば、従来の発言を翻した「黒田の乱」といえます。しかし、これだけの政策方向の転換について、黒田総裁だけの独断とも考えにくいです。岸田文雄首相の了解があったと考えるのが自然です。
岸田政権は、防衛費増に対して、防衛増税を打ち出しました。あまりに唐突であったので防衛増税については自民党内でも反対が多いです。しかし、自民党税調の税制改正大綱には書きこまれました。
結局、岸田政権は、財務省の言いなりで無理筋の防衛増税を押し込みました。このブログでは増税なしで防衛費を捻出することも出来ることを主張しましたが、にもかかわらず岸田首相はあえて選びました。
マクロ経済からみれば、増税も利上げも経済に悪影響しかありません。今のタイミングでやることではありません。おそらく、黒田日銀総裁も、増税をする岸田政権を陽動作戦で側方支援しているのではないかと思います。
黒田日銀総裁は元財務官僚で税畑であるので、基本的に増税指向です。利上げは金融機関には恵みの雨であり、財務官僚も日銀官僚も多く天下っているので、身内の評判は悪くないことも背景にあるかもしれません。
黒田日銀総裁は元財務官僚で税畑であるので、基本的に増税指向です。利上げは金融機関には恵みの雨であり、財務官僚も日銀官僚も多く天下っているので、身内の評判は悪くないことも背景にあるかもしれません。
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