2022年6月19日日曜日

日銀の金融緩和策、「現状において変えるべきでない」-岸田首相―【私の論評】現在日銀が利上げすべきと主張する人は、金融政策の本質を何もわかっていない(゚д゚)!

日銀の金融緩和策、「現状において変えるべきでない」-岸田首相

中小企業の金利負担に考慮が必要、日本は他国より物価高抑制
財政は国際社会や市場の信認が重要、健全化の旗「掲げ続ける」

  岸田文雄首相は19日、円安抑制に向けて日本銀行の金融緩和政策を転換するべきだとの意見に対し、中小企業の金利負担への影響も考慮する必要があると述べ、「現状においては変えるべきではない」と語った。午前のフジテレビの番組で述べた。

岸田総理

  金融政策運営は「為替にも影響を与えるが、中小企業の金利等の負担にも影響を与える。こうしたことも考えなければならない」とし、景気全体の動向も考えた上で総合的に判断するべきものだとの見解を示した。その上で、「急速な円安によって物価に影響が出ている。ここが問題だ」とし、エネルギーや食料品に特化した物価対策をしっかり行うことが取るべき政策だと主張した。

  日銀は17日の金融政策決定会合で、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の維持を賛成多数で決めた。海外の中央銀行がインフレ高進に対応するために金融引き締めに踏み出している中で、外国為替市場では24年ぶりとなる一時1ドル=135円台まで円安が進行。事前の市場では金融緩和政策の修正観測が広がっていた。

  岸田首相は19日午後には「令和国民会議」(令和臨調)の発足大会に参加し、財政の持続可能性について「国際社会やマーケットの信頼をつなぎ留めることができる財政政策を日本が維持できるかが大変重要なポイントになる」と指摘。今後も「財政健全化の旗はしっかり掲げ続けていかなければならない」と述べるとともに、「経済成長あっての財政再建という考え方も大事にしたい」と語った。

【私の論評】現在日銀が利上げすべきと主張する人は、金融政策の本質を何もわかっていない(゚д゚)!

他の発言は別にして、日銀の金融緩和策、「現状において変えるべきでない」という発言は正しいです。財政健全化に関する発言はいただけませんが、金融政策に関する発言は全く正しいです。岸田首相にはぜひともこうした姿勢を崩さず、来年の日銀総裁人事に取り組んでいただきたいものです。

そもそも、世の中で識者と言われるような人でさえ、どうして通貨安になったり通貨高になったりするのか、その要因が理解できていません。特に長期的にはどのように決まっていくのか、全く理解していません。

為替は簡単に言ってしまうと、以下のような数式で決まります。

世界中に出回っている円の総金額➗世界中に出回っているドルの総金額=(単位:円/ドル)

中短期では、他の要素もあります。ただ、長期的にはこの方向に向かって円ドル相場が決まります。


日本が金融緩和を継続し、米国が利上げなどで金融引き締め的な姿勢をとれば、円安になるのは当然です。要するに、ある国の金融緩和の度合いが強いほど、他国に比較すると通貨安になります。

そうして、このブログにも掲載したように、円安になると日本はGDPが伸びる傾向にあります。というより、ある国が通貨安になるとその国経済は伸び、他国に比較して有利になります。これについては、高橋洋一氏が動画でわかりやすく説明しています。その動画を以下に掲載します。


世界的なコストプッシュインフレに対し、質素倹約や節電を説く「アドバイザー」が増えています。しかし、そのような事は、賢明な日本国民は誰に言われなくても実行します。問題は豊かな消費生活ができる所得環境をいかに造るかということです。財政出動で資金循環を拡大し、国民所得を増やす事が第一です。

しかも上の動画でもわかるように、円安は日本経済にとってプラスです。しかし、円安によって輸入価格が押し上げられているのは確かで、その対策として、消費税やガソリン税の減税や高コストに苦しむ中小企業への給付金等を実施すべきなのです。輸入品の価格の上昇は、所得が伸びなければそれ以外の価格の下落を招き、デフレに戻る危険性あります。

世の中には為替戦争などという言葉があり、意図的に自国の通貨を安くして有利にすることができると考える人もいるようですが、そんなことは不可能でしょう。なぜなら自国通貨を安くするために、自国内の経済とは無関係に緩和を続けていれば、国内は大インフレになります。だから自ずと、金融緩和政策をやめざるを得なくなります。

ただ、 以前もこのブログで述べたように、4月時点ではコアコアCPIが未だ0.8%の日本では、金融緩和を継続する必要があるのです。

上記で述べたような一連の事柄を知らずに、ただただ日銀は利上げせよと主張する人もいますが、これは良いリスマス試験紙になります。要するに今回利上げせよと主張するような人はまるで金融政策というものを理解していないということです。

緩和継続を支持する与党に対し、立憲民主、共産両党が見直しを求めています。国会は15日に閉会し、与野党は事実上の選挙戦に突入しました。

「欧州中央銀行が来月の利上げ方針を決定して、日本だけが金利においては取り残されている状況でさらに円安が進む。この状況をいつまで岸田政権は放置するのか」。立憲民主党の泉健太代表は10日の会見で、金融緩和を維持する政府・日銀の対応を批判しました。 

立憲民主党代表 泉健太氏

円安は輸入価格の上昇をもたらすことから、同党は物価高を「岸田インフレ」と称し、国会で首相や日銀の黒田東彦総裁の姿勢をただしてきました。参院選公約では「異次元の金融緩和」は円安進行と「悪い物価高」をもたらす、として政府・日銀の共同声明見直しを求めました。

立憲民主党、代表がこのような発言をして、円安そのものを争点にしているようですが、かなり無理があります。円安を容認した上で、中小企業やそれらの勤労者に対する支援を強化すべきとという主張をするならわかりますが、円安そのものを争点にするというのでは、ワイドショー民とあまりレベルは変わりません。共産党も似たようなものです。

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