2022年6月13日月曜日

クアッドが注力すべき中国の違法漁業と海上民兵―【私の論評】違法漁業と海上民兵には飢餓戦略が有効か(゚д゚)!

クアッドが注力すべき中国の違法漁業と海上民兵

岡崎研究所

 5月の東京における日米豪印4カ国によるクアッド首脳会議では、IPMDA(海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ)が発表された。世上あまり注目されていないようであるが、意義のある重視すべきイニシアティブと考えられる。


 その内容は、ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗するために、違法漁業、瀬取り、密輸など、違法な活動を継続的にモニターすることを目的とするものである。衛星技術によってこの地域の幾つかの既存の監視センターを繋ぎ包括的な追跡システムを作るとしている。

 念頭にあるのは中国の漁船団による収奪的な漁業である。米国の当局者は「この地域における違法漁業の95%は中国によるものだ」と述べている。南シナ海その他海域におけるその活動はつとに報道されているが、2020年夏には300隻近い漁船団がエクアドル領ガラパゴス諸島の周辺海域に出現し、荒っぽい漁業を行い環境破壊の懸念を惹起する事件を起こしている。

 しかし、それだけではない筈である。中国の漁船には偽装漁船もあり、その実態は解明されていないが、海警の船舶と連動して、いわゆる海上民兵として政治目的のために行動する例がある。

 昨年3月からほぼ1カ月の間、中国の海上民兵とおぼしき多数の船舶が南沙諸島のウィットサン礁(フィリピンの排他的経済水域内にある)に集結する奇怪な行動をしたのも、その一つである。クアッドの共同声明には「海上保安機関の船舶及び海上民兵の危険な使用」を含む「威圧的、挑発的又は一方的な行動」に反対するとの文言はあるが、IPMDAと関連付けることは(恐らくは意図的に――反カ国色が強過ぎるとパートナーを募ることに支障が生ずる)避けている。しかし、海上民兵は最も警戒を要する問題の一つであり、これがIPMDAの継続的モニターの対象を外れることはあり得ないだろう。

海洋秩序維持で他国への広がりも

 今後、クアッド諸国はインド・太平洋の諸国と協議してIPMDAによる海洋秩序維持の態勢を整えるようである。どの程度の下工作が行われたものか分からないが、このイニシアティブのパートナーとなることに関心を持つ諸国は少なからず存在するだろう。IPMDAは、これら諸国が自らの能力の足らざるところを補い、「威圧的、挑発的又は一方的な行動」に対処する上での助けになるに違いない。

 IPMDAは安全保障、経済権益の保全、環境保護などインド・太平洋の諸国が関心を有する分野において、これら諸国の需要に応えることを狙いとするものと考えられる。そういう形でクアッドは活動の裾野を広げることも出来る。その着眼点は高い評価に値すると思われる。

【私の論評】違法漁業と海上民兵には飢餓戦略が有効か(゚д゚)!

IPMDAの継続的モニターで中国の違法操業や海上民兵の動きを封殺することはできるでしょぅか。私は、できないと思います。最初は警戒するかもしれませんが、これに対して何もしないということであれは、中国は図に乗って、海上民兵を有効に使い、場合によっては島嶼を手に入れるなどのことを平気でするでしょう。

それも、南シナ海でやったように、サラミ戦術で少しずつ実行支配し、これに対して有効な手を打たなければ、少しずつ支配地域を拡大し、いつの間にか多くの部分や、島嶼などを実行支配すなどのことを行うでしょう。

なぜそのようなことを自信を持って言えるかといえば、米国と中国の真の戦場は、軍事力ではなく、経済とテクノロジーの領域であり地政学的な戦いだからです。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業、海民兵を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

中国が南シナ海の環礁を埋め立てて、実行支配したのも、地政学的戦いの一環です。従来であれば、環礁を領地とするためにでさえ、軍隊を派遣して戦争をして、敵を排除して手に入れたものです。

南シナ海の環礁を埋め立てて作った中国の軍事基地

実際第2次世界大戦中の日米はそうでした。大量の兵器や兵隊を送り込み、真正面から戦争して、敵を排除して、日米は太平洋の島々を自らの支配下に置きました。

しかし、中国は違います、軍隊ではなく、環礁を埋め立てるための道具や、人員を送り込み、環礁を埋め立て、他国が危機感を感じながらも、結局軍事的には何もせず、中国が環礁を埋め立ててそこを実行支配することを許してしまいました。

中国が民兵を場合によっては軍事目的にも使おうとしているのは明らかです。例えば2014年、東シナ海において、横、あるいは縦に並んで航行しながら、タンカーからフリゲート艦に燃料を給油する訓練が行われました。次いで、2019年には、洋上において横に並んで航走しながらコンテナ船から駆逐艦や補給艦にコンテナなどの貨物を移送する試験が行われました。

また2020年に行われた民間企業等を動員した大規模な統合軍事演習では、普段はカーフェリーとして利用されているRo-Ro船が、車両搭載用ランプ(傾斜路)を強襲上陸作戦用に改造されて参加していました。

そもそもタンカーであれ、コンテナ船であれ、Ro-Ro船であれ、商業目的に用いられる船舶は、できる限り大量の物資や車両、燃料などを積載して、仕出し港から仕向け港にできるだけ早く、安全かつ経済的にそれらの荷物を届けることにより利益を上げることを目的とするものです。

本来、そのような目的に合致しない洋上で貨物や燃料を移送する装置などを設置することは、設置に必要な区画や重量の分だけ積載可能な貨物の量が減るばかりか、船自体の重量を増加させ、速力や燃料効率に影響を及ぼすなど経済コストは悪化します。

とくに、Ro-Ro船の車両搭載用ランプの改造については、そのランプを水面下まで下げることにより、水陸両用車両や舟艇を船内から洋上に、あるいは洋上から船内に積み下ろしできるようにしています。一般的なランプとは強度や重量など構造が大きく異なるものです。

このような取り組みは、漁船についても同様です。外洋で操業する漁船が新造される場合には、「海上民兵」として必要な武器庫と弾薬庫を設置することが一部の地方政府の条例により義務づけられていることも明らかにされています。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎(とが)め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

中国は国営企業、民間企業、民兵を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったり、周辺諸国などにお構いなしに、環礁を埋め立てたり、埋め立てた環礁を実行支配したり、世界各地て違法操業したりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

中国漁船による違法漁協や民兵とおぼしき多数の船舶が南沙諸島のウィットサン礁(フィリピンの排他的経済水域内にある)に集結する奇怪な行動をしたのもこれは従来の戦争は異なる、「地政学的戦争」の一環なのです。

そうして、こうした戦争に対して、、IPMDA(海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ)などで監視を強めるだけでは、中国の戦争を止めることはできないでしょう。これは、海軍力では日米などに格段に劣る中国による地政学的戦争なのです。

簡単にはやめないですし、監視するくらいでは、絶対にやめません。

ただ、これらに対する有効な手立てはあります。それは、こうした海域や島嶼付近に日米およびEUなどの潜水艦隊を派遣することです。

海上民兵が上陸した島嶼や、違法漁業をする海域で、これらを潜水艦で取り囲み、行動できなくしてしまうのです。そうして、船舶や航空機による補給を絶ってしまうのです。

こうしたことを実施されると、ASW(対戦戦闘力)が劣る中国は何もできなくなります。そうして、日米EUの潜水艦隊は中国軍に対して警告し、海上民兵に対して補給をしようとする船舶、航空機は撃沈すると、警告し、実際中国軍が艦艇などで補給しようとした場合、それを撃沈すれば良いのです。無論このようなことは、最終段階であり、いくつかの段階を踏み、途中で警告などをしながら、最後の段階でこれを実行するということになります。

水も、食糧も、弾薬も補給させないようにします。そうなれは、海上民兵は島嶼か海上で餓死することになります。そうなる前に降伏するでしょう。こうしたことにより、中国の地政学的戦いを封じることができます。こういうことをすると、警告しただけでも相当効き目があると思います。

それでも、実行しようとした場合は、補給する艦艇や航空機を攻撃し、無力化すれば良いのです。ASWその中でも、対潜哨戒能力に劣る中国は、これに対抗する術はなく、このようなことを米国等が実行したとしても、ほとんど被害を被ることはないでしょう。このくらいのことをしないと、中国の海上民兵による地政学的戦争はこれからも続き、世界が不安定化するだけになります。日米EU諸国もこれを覚悟して、いずれ踏み切るべきでしょう。

鳥取飢え殺し

そうして、これは昔からある戦法です。はやい話が兵糧攻めです。織田信長の家臣であった羽柴秀吉は,播磨三木城や鳥取城を,兵糧攻めにより落城させたと伝えられています。ご存知のとおり、兵糧攻めとは、城を包囲し城内へ食料を持ち込ませないことで、城内にいる兵士や馬などを飢えさせる戦法で,直接武器を使うわけではないですが、残酷な方法です。

大東亜戦争末期の日本に対して米軍は「飢餓作戦」を実施しています。米軍が行った日本周辺の機雷封鎖作戦作戦名です。この作戦米海軍が立案し、主に米陸軍航空軍航空機によって実行されました。日本の内海航路朝鮮半島航路に壊滅的打撃を与え、戦後海上自衛隊戦術思想や日本の海運に影響を残しました。

飢餓作戦のためB-29爆撃機から投下されたパラシュート付きのMk26機雷

中国の海上民兵はプロの軍人ではありませんし、日米EUなどがこのような試みをすることを警告しただけでも、無謀な振る舞いをやめる可能性も高いです。鳥取城に立て籠った人たちやかつての皇軍のように、飢えてもなお最後の最後まで低抵抗戦する者はいないでしょう。

ただ、これは中国による地政学的戦いの一環なのですから、海上民兵の中に人民解放軍が紛れている可能性もあります。その場合は万難を廃して、使命を遂行しようとするかもしれません。そうなった場合は、餓死するまで包囲を続けるしかないでしょう。ただ、人民解放軍でもそこまでする人間はいない可能性のほうが高いです。

降伏すれば、手厚く保護してあげれば良いのです。

通常の戦闘のほかにも、海上民兵による地政学的戦闘に備えるためにも、AUKUSが結成されたのでしょう。

上で述べた「飢餓戦略」など、物騒に思われるかもしれませんが、「地政学的戦争」の観点からすれば、こうしたことも考えておくべきです。そうして、これに近いことがすでに、世界の海のいずれかで行われているかもしれません。

ただ、潜水艦の行動に関しては、従来からいずれの国も公にしないのが普通であり、米国では軍のトップですら、米国の戦略原潜の所在を知らないくらいですから、何か大きな事件でも起こらない限り表には出てこないだけかもしれません。

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