2022年6月8日水曜日

原発再稼働阻む〝国民の不信感〟 司法も社会的コスト考慮せず…安全と電気供給は両立できる―【私の論評】停電で多数の死者が出る前に、原発を稼働させるべき(゚д゚)!

日本の解き方


泊原発

 電力不足が懸念されるなか、札幌地裁は北海道電力泊原発1~3号機の運転を差し止める判決を出した。一方、島根県の丸山達也知事は中国電力島根原発2号機の再稼働に同意した。

 北電を相手取った訴訟の判決で、谷口哲也裁判長は「基準で求められている津波防護施設が存在しない」と運転差し止めを命じた。廃炉措置については「廃炉まで必要な具体的な事情はない」として認めなかった。

 泊原発の1~3号機は2011年3月の東日本大震災後、順次停止したが、北電は13年7月の国の新規制基準施行と同時に再稼働を申請。現在も原子力規制委員会で審査が続いている。

 原告らは11年11月に提訴、10年余りにわたる裁判で、積丹半島西岸付近に海底活断層があるか、防潮堤が最大想定の津波を防げるかなどが審理された。

 その判決が今回出たが、確定しない限り再稼働を止める効力はない。

 原子力規制委員会も司法も、再稼働しない場合の社会的コストを考慮しているとはいえない。約10年にわたって審査や審理をしているが、その間、再稼働していないので、電力料金の高騰やブラックアウト(大規模停電)のリスクもある。

 本当に安全性だけを考慮するのであれば、原発はない方がいいのだろう。だが、それでは、電力供給という社会的使命が達成できない。

 安全を考慮しながら社会的コストを低減するには、再稼働をさせながら、同時に安全対策を講じるのがいい。原発は稼働中と不稼働中のリスクに顕著な差はない。であれば、稼働させながら安全対策を講じれば、安全と電気供給の両立が可能だ。

 活断層があるかどうかは、今後のリスク対策を考える上で、それほど重要であると思えない。

 これまでの地裁、高裁段階での、差し止め判決や仮処分決定は、以下のとおりだ。

①高速増殖炉「もんじゅ」(03年、名古屋高裁金沢支部)②志賀原発2号機(06年、金沢地裁)③大飯原発3、4号機(14年、福井地裁)④高浜原発3、4号機(15年、福井地裁)⑤高浜原発3、4号機(16年、大津地裁)⑥伊方原発3号機(17年、広島高裁)⑦伊方原発3号機(20年、広島高裁)⑧大飯原発3、4号機(20年、大阪地裁)⑨東海第2原発(21年、水戸地裁)。⑧は大阪高裁、⑨は東京高裁で係争中だが、他はすべて上級審などで判断が覆っている。

 原発に限らず、原子力にはアレルギーが強い。各地の係争をみても全国的な傾向だといえる。福島第1原発事故により安全神話が根底から崩れたので、信頼回復は困難だ。

 一方で、世界的なエネルギー逼迫(ひっぱく)で、原発を再稼働しないことによる社会的コストも大きい。日本の原発再稼働が少なく、天然ガスを余計に輸入することに対し、欧州などから批判も出てくる可能性がある。それらのバランスを取ることが必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】停電で多数の死者が出る前に、原発を稼働させるべき(゚д゚)!

北海道電力泊原発1~3号機の運転差し止めを命じた札幌地裁の谷口哲也裁判長(50)は兵庫県出身で、平成10年に任官。大阪地裁や京都地裁などで主に民事畑を歩み、担当した訴訟で検察を批判することもありました。

令和2年4月に札幌地裁に着任。北海道白老町のマイクロバス横転事故を巡り、刑事裁判で無罪が確定した運転手の男性が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で今年1月、検察側の捜査のずさんさを指摘した上で「起訴は違法だった」と指弾しました。


泊原発の運転差し止めや廃炉などを求めた裁判で、北電は、運転差し止めを命じた一審の判決を不服として、2日、控訴しました。この裁判は裁判として、そろそろ私達は、電力問題についてリアルに考えなければならないのではないでしょうか。

皆さんご存知のように2018年9月6日3時7分の北海道胆振東部地震で、道内最大の石炭火力発電所・苫東厚真発電所が止まってしまい、北海道全域がブラックアウトに陥りました。私は札幌在住ですので、このブラックアウトを経験しました。国内電力史上、最大規模の大停電は復旧にも時間を要し、北海道の私たちは厳しい生活を送らざるを得ませんでした。

これ本当に大変です。水については公園の水が出ていたで、そこから汲んでつかいました。マンションの高層階に住んでいる人は、エレベーターは動かず、それに水汲みが大変なようでした。私は運良く、携帯電話、パソコン、IPadなど複数の端末があったので、電気を節約しながら、サイトなどから情報を得ることができました。

WIFIルーターも所有しているので、これも重宝しました。コンビニ、スーパーでは当然のことながら、商品は品薄状態が続きました。ちなみに我が家の近くの大手スーパは営業停止になりました。地産地表の地元スーパーは営業していたので、助かりました。

透析患者さんの中には、自分の通っている病院では透析ができず、大きな病院で透析をしたかたもいました。それも、大きな病院側の都合があって、人によっては夜中とか、早朝の方もいたそうです。

ただ、2日くらいのことだったので、何とかはなりましたが、これが1週間以上も続けばはとんでもないことになります。

苫東厚真発電所をあえて「石炭火力発電所」と紹介したのは、この発電所が石油でも天然ガスでもなく、石炭を燃焼させ発電している施設であることを思い起こしてほしいからです。

この数年、世界的に「脱石炭」の大きな流れがきています。「地球環境のことを考えるならば、環境負荷が大きい石炭火力はやめるべきだ」という意見が勢いを持つようになり、フランスは2021年までに石炭火力発電を全廃することを決め、ドイツも脱石炭火力に向けた委員会を立ち上げ、2018年末までに廃止時期を含んだ最終案をまとめるといいます。ひところ大気汚染が深刻だった中国も、石炭燃料の使用量削減などで大気の状態はかなり改善しています。

民間企業の側からも「脱石炭」の動きは強まっていました。アップルやフェイスブックは、自社で使うエネルギーを100%再生可能エネルギーにすると表明しています。日本国内でも、日本生命や明治安田生命が石炭火力への投融資から撤退するとしています。日本の世論ももちろん「脱石炭」でした。そう、胆振東部地震の前日までは、です。


胆振の地震で大規模なブラックアウトが起きると、少なくとも日本国内で「脱石炭」を煽るような報道はなくなりました。一刻も早く苫東厚真の石炭火力発電所が再稼働し、以前のように発電できるように、と願うようになりました。

これは、当然のことと思います。

ただ不審に思うのは。北海道には現在停止中の泊原子力発電所があることです。私は、むしろこの泊原発の早期再稼働に向けた準備を今すぐにでも行わせるべきだと思っています。少なくとも、北海道における安価かつ安定的な電力供給のための1つの選択肢ではあるはずです。

ところが、北海道全域を襲った非常事態を前にしても、泊原発の活用についての話が、政治の側からも役所の側からもほとんど出てきませんでした。これは異常な事態と言わざるを得ないです。なぜなら、多くの政治家や官僚は、原発再稼働こそが電力危機を回避する唯一の現実的方法だということを重々理解したはずだからです。

しかし実際には、政府からは菅義偉官房長官(当時)が会見の中で、「現在、原子力規制委員会で新規制基準に基づく安全審査中であり、直ちに再稼働をすることはあり得ない」と述べたのが、唯一「泊原発再稼働」に触れた発言でした。

ただ公の場で泊原発の稼働について発言人はほとんどいません。例外的に「再稼働」を堂々と主張しているのは自民党の青山繁晴参議院議員くらいではないでしょうか。

もちろん霞が関にも声を上げる者はいないし、泊原発を新規制基準に基づいて審査している原子力規制委員会の更田豊志委員長も、「今回の地震で審査が影響を受けることはない。急ぐこともない」と従来の方針を変えようともしませんでした。

では、マスコミはどうだったかとえば、原発再稼働を正面から主張しているのは主要紙では産経新聞のみで、後は再稼働反対の論陣を張っていました。

まるで、日本全体が「原発再稼働」について、強烈な言論統制下にあるかのようです。もちろん誰も統制してはいません。ただ批判を恐れて、自ら口を閉ざしてしまっているとしか思えません。

これではあたかも世の中全体で、「電力については、北海道電力がなんとかするまで、道民はじっと耐えよ」と言っているのと同じです。

規制委員会の新基準に基づく審査の下では、泊原発の再稼働はいつになるかは全く予想できないところにもってきてしかも札幌地裁は北海道電力泊原発1~3号機の運転を差し止める判決を出したのです。しかし旧基準に照らし合わせるならば、その気になれば、2週間もあれば再稼働ができてしまいます。実は、法的にも問題はないです。

あとは地元の知事が同意すれば良いです。この知事同意にも法的な根拠はないのですが、地元自治体と電力会社との間の協定に基づいて、電力会社は知事と議会から了解をもらうことが一般化しているにすぎないです。つまり、本来はその気になれば泊原発の再稼働は今すぐにでも可能なのです。

ところが、政治家も官僚もマスコミもあえてそれに触れようとはしません。批判を恐れて、「触らぬ神に祟りなし」を決め込んでいます。

結局、北海道の電力供給事情は今もいっぱいいっぱいの状態です。苫東厚真に大きなトラブルが起きれば、一気に需給はひっ迫します。その一方で、泊原発がまったく稼働せず管理費ばかりを食い続けている状態なので、肝心の北海道電力の経営が日に日に厳しくなっています。北海道の電力事情は、今も非常事態下にあると言ってよいです。

私は機会があるごとに「泊原発は再稼働させるべき」と発言してきましたしし、自分のツイッターでもたびたびそう主張してきました。それに対して、一部の人からは賛同のつぶやきが返されてくるですが、多くは「福島の二の舞になる」とか「直下型地震が起きたらどうする」といった批判です。

しかし、もしも直下型地震がやってきたとしても、それで原子炉が壊れることはありません。放射能が漏れるわけでもありません。今回の胆振東部地震でも、泊原発は一時、外部電源が失われたが、非常用ディーゼル発電機がきちんと稼働し、事故は起こりませんでした。仮に活断層が多少ずれたところで福島第一原発のような大事故が起こるわけではないのです。

実は政治家や官僚、電力や原子力の専門家もそのことはよく分かっています。それなのに、ごく一部の専門家らを除き、「原発再稼働」については一切口を閉ざしてしまっています。世間の「原発アレルギー」を極度に恐れてしまっているのです。

北海道胆振東部地震の後、北海道の冬を迎えるにあたり、太陽光や風力発電を火力発電に取って代わらせるべき、といったような意見は全く聞かれませんでした。個人の住宅で自分のところの電気の一部を太陽光発電で賄うということは可能ですが、太陽光は夜には発電しないし、社会のインフラを支えるほどの出力も安定性も望めません。胆振東部地震で、そのことがよりはっきりと認知されたのではないでしょうか。

加えて、2018年10月13~14日の2日連続で、九州電力が太陽光発電の出力制御に踏み切りました。需要の減少が見込まれている時間帯に太陽光発電施設から多量の電気が供給されると、大規模な停電を引き起こす可能性があるからです。

専門家の中には、九州では太陽光発電を制御する事態がありえると語る人もいました。そうなったときに、一部の新聞は『玄海原発が再稼働したから太陽光を制御することになる』と書くだろうことが予見されました。

実際、出力制御が発表されると、新聞やテレビの中には、「玄海原発が稼働したので電力供給量が増え、再エネ事業者が割りを食わされた」的な報じ方をした新聞社が多数ありました。

しかし、事実はそうではありません。原発が動いているから太陽光を抑制したのではありません。調整する役割は、普段は火力発電所が担っています。それでも調整しきれなかったから太陽光を抑制したのです。

なにより太陽光の電気はFITという固定価格買い取り制度の下で再エネ事業者から買い取っているのでコストはべらぼうに高くつきます。そのツケは、われわれ一般消費者の電気料金に回されているのですが、そのことはマスコミも積極的に報じようとしませんでした。その姿勢は今も変わっていません。電気代の高騰で危機は煽るものの、その実体を報道はしません。

私はこのブログでは原子力を推していますが、それはコスト面で莫大なメリットが国民にも国家にもあるからです。何と言っても既設原発は発電コストが安いです。実際、大飯、高浜の原発を再稼働させた関西電力は電気料金を引き下げました。九州電力も、2019年4月1日から電気料金を値下げしました。ただ、今年4月からはまたあげています。これについては、詳細は九州電力のホームページをご覧になってください。

コストはインフラにとって極めて大切な概念です。だが、世の中の世論の大勢は「安全性をないがしろにしてまでコストを優先する必要はない」といいます。さらに、「原発は低コストと言っても、放射性廃棄物の処理や最終的な廃炉コストも含めると高くつく」という意見もあります。

しかしそれも正確ではありません。

仮に国内の既存原発をフル稼働させたとして、そこから出てくる使用済み核燃料を管理するコストは、年間10億円にも満たないのです。再処理した後の高レベル放射性廃棄物は、熱を冷ますために地中で50年ほど保管しなければならないですが、そのコストは年90億円ほどです。

一方、福島第一原発の事故後、全ての原発を停止させていた時期に、火力発電用の化石燃料を日本は大量に輸入していた。そのコストは、最大で、2013年当時の為替レートでみると、1日100億円以上だ。単純計算で年間3兆6000億円にもなります。

それに比べれば、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の管理コストはずっと安くつくのです。

それを政治家や霞が関の役人は知っています。であれば、電力供給体制が脆弱化している北海道においては、せめて泊原発の再稼働を推し進めるべきではないでしょうか。

安全性やコストについての正確な情報も提示せず、ただただ世論の反発を恐れて、「規制委員会のお墨付きが出るまでは我関せず」の態度を取り続けるのは、将来に禍根を残すことになりかねないです。

一部の反発を恐れるあまり、環境には多大な負荷をかけ、電力会社には化石燃料の購入に膨大なコストをかけさせ、国民にも余分な電気料金を負担させ続けています。このような異常事態はそろそろ終わりにするべきです。

海道胆振(いぶり)東部地震直後に、撮影された星空

今回の判決で、北海道電力は、火力発電に依存しながらの電力安定供給をさらに強いられる形になりました。今後、災害時はもちろん、電力需要が逼迫する夏場や冬場には、停電リスクがさらに高まったといえるます。

実際、SNSでは、この判決を受け、「北海道の停電危機がさらに高まった」とする声が多いです。 以下に代表的な声をあげておきます。
《北海道の夏も暑くなっているのに…使わずに節電しろと言われる道民が気の毒》
《ここで再稼働できなかったら厳冬期に停電するリスク増えるけど北海道民はそれで良いのだろうか?》 
 《電気需要が上がった時には計画停電でもするのかな?電気が必要なのは冷房暖房だけじゃないぞ。医療関係だと命に関わる。会社も学校も家庭も電気無しで過ごせるのか?》
《今後、当然起こりうる電気代高騰は受け入れるの?》 
現状、北海道電力では約半分が火力となっており、燃料高でコストが上昇しています。ならば、太陽光や風力など、比較的安い再生可能エネルギーなら問題ないかというと、それも厳しいです。というのも、電力の需給バランスが崩れる恐れがあり、先の九州電力の例のように、5月に入って2度、再エネの受け入れを停止しているのです。 

さらに、送電網の増強も目指していますが、こちらも遅々として進んでいません。いずれにせよ、この夏と冬、北海道の電力はかなりの綱渡りになることが予想されます。

停電では死者が出ます。 東日本大震災の停電および計画停電によって関東でさえ 酸素吸入装置の停止で女性1名死亡、蝋燭転倒火災が男女2人が死亡、信号機が停止して死亡事故ふくめ事故は37件というありさまでした。 在宅人工呼吸器だけでなく透析可能な病床が減少することになります。このようなことを長い期間に渡って続けられるとはとても思いません。

車が交通事故を起こすので、車すべて停止ということになったらどうなりますか。原発の稼働停止もこれに近いものがあります。

二度とブラックアウトを起こさないためには、やはり北海道では泊原発の稼働は避けて通れません。

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