2022年6月25日土曜日

太平洋関与へ5カ国連携 日米豪などグループ設立―【私の論評】グループ結成は南太平洋の島嶼国に札束攻勢をかけ、駆け引きを強める中国を牽制するため(゚д゚)!

太平洋関与へ5カ国連携 日米豪などグループ設立

 米国、日本、オーストラリア、ニュージーランドと英国は24日、太平洋地域への関与強化に向けた協力枠組み「青い太平洋におけるパートナー(PBP)」を立ち上げた。米ホワイトハウスが発表した。太平洋の島嶼(とうしょ)国などを民主主義の5カ国が連携して支援。中国への対抗を念頭に、ルールに基づく自由で開かれた地域秩序を後押しする。

 5カ国はPBPを通じ、気候変動や海洋安全保障など地域各国が抱える課題の解決に協力し、外交的な関与を強化する。中国が南太平洋のソロモン諸島と協定を結ぶなど、海洋進出を強めており、地域諸国が過度に中国に傾斜するのを防ぐ狙いもある。

ホワイトハウス

 ホワイトハウスは声明で「太平洋地域の繁栄と強靭(きょうじん)性、安全を支え続ける」と表明し、5カ国の協力強化の重要性を強調した。

 米政府によると、5カ国の高官が23、24両日、米首都ワシントンで太平洋諸国の代表団と会合を開いた。会合にはフランス、欧州連合(EU)もオブザーバー参加した。会合を受けて24日に立ち上げたPBPについて「包摂的で非公式なメカニズム」と位置付けた。

 PBPは「地域主義や主権、透明性、説明責任」を重視するとした。会合では運輸や海洋保護、保健衛生、教育分野も議論した。

 米国の太平洋関与をめぐっては、国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官が23日の講演で、多国間で開放的な「太平洋の地域主義」を支えると表明していた。

 バイデン米大統領が5月下旬に訪日した際には、日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合が開かれ、違法漁業を取り締まる新たな仕組みの発足で合意した。中国漁船による乱獲が一部で問題視されていた。

【私の論評】グループ結成は南太平洋の島嶼国に札束攻勢をかけ、駆け引きを強める中国を牽制するため(゚д゚)!

米国家安全保障会議(NSC)報道官は4月19日、NSCのキャンベル・インド太平洋調整官らが同月18日にホノルルで、日本やオーストラリア、ニュージーランド(NZ)の政府高官と会談し、中国が南太平洋の島国ソロモン諸島と締結した安全保障協定について、懸念を共有したと発表しました。

キャンベル・インド太平洋調整官

安保協定をめぐっては、ソロモンでの中国の軍事拠点構築につながるとして、米国や豪州、NZが警戒を強めていました。中国外務省の汪文斌・副報道局長は19日の記者会見で、協定に最近、署名したと発表した。ソロモン側は沈黙していましたが、ロイター通信によると、ソロモンのソガバレ首相も現地時間の20日、国会で追及され、両国外相が協定に調印していたと認めました。

これに先立ち、NSC報道担当官は19日、中国・ソロモン安保協定は「透明性に欠け、性格も不明だ」と懸念を表明しました。地域との協議もほとんどない状態で中国が協定締結を進めたと非難した上で、「この地域との強固な関係に対する米国の関与が変わることはない」と述べ、引き続きソロモンなどとの関係強化を図っていく考えを示しました。

その後中国は、南太平洋を中心にした10カ国との安全保障協定の締結を提案しましたが、反対意見が出て合意に至りませんでした。

ミクロネシアのデイヴィッド・パニュエロ大統領は、中国と南太平洋を中心にした10カ国との外相会議に先立ち、周辺国に書簡を送り、「協定案への反対」を表明していたといいます。

オーストラリアの公共放送ABCによると、中国の王毅国務委員兼外相は先月 30日、訪問先のフィジーで開いた外相会議で、安全保障や警察、貿易、データ通信で協力する新たな協定案を示しました。

習氏も「中国と太平洋島嶼(とうしょ)国の運命共同体を構築したい」という書簡を寄せていたのですが、一部の国の合意を得られず提案をいったん棚上げしました。

フィジーのジョサイア・ヴォレンゲ・バイニマラマ首相兼外相は会議後の記者会見で、「これまで通り、各国のコンセンサスを最優先する」と述べました。10カ国すべての賛同が得られていないことを示唆しました。


中国外務省の趙立堅報道官は30日、「各国はより多くの共通認識に達することを目指して努力することに同意した」と語りました。今後も協議を継続する意向を示したかたちですが、現実には簡単ではありません。

南太平洋の島嶼国をめぐっては、中国と西側諸国の駆け引きが続いています。

中国は4月にソロモン諸島と、安全保障協力に関する2国間の協定を締結しました。ソロモン政府が要請すれば中国が海軍艦艇を寄港させたり、軍の部隊や警察を派遣したりできる内容です。

これに対し、日本や米国、オーストラリアは「中国の軍事拠点化につながりかねない」と懸念しています。

バイデン氏は訪日中の先月23日、インド太平洋地域で台頭する中国に対抗する、新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足を宣言しました。フィジーはIPEFへの参加を明らかにしています。

こうしたなか、米国は台湾シフトを強化しています。

ダックワース上院議員が率いる訪問団が先月30日、台湾入りしましまた。蔡英文総統らと31日にも会談しインド太平洋地域の安全保障や経済貿易関係について、話し合いました。

米大使館のSNSによると、ダックワース氏は米陸軍のパイロットとして勤務中の2004年、ヘリの墜落で両脚を失った「イラク戦争の英雄」です。

ダックスワーク氏(左)の表敬訪問を受けた蔡英文相当(右)

米台接近に、中国は軍事的威嚇を仕掛けてきました。

台湾国防部は30日、中国軍の戦闘機「殲16」や早期警戒機「空警500」など軍用機計30機が同日、台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)に進入したと発表しました。

南太平洋は、台湾有事の際に、米国とオーストラリアの海軍艦船が通過する重要な地域です。中国はこれを阻止するため、軍事拠点化を狙っていまます。

米国もIPEFで、太平洋島嶼国を自由主義圏の枠組みに入れ、軍事、経済両面でつなぎ留める考えです。今回の協定合意失敗は、中国にブレーキがかかったかたちで、習氏の焦りにつながるでしょう。

ダックワース議員は、アジアや軍事問題にも精通し、民主党内でも影響力もあります。バイデン政権と議会が一致しているという米国意思を示すもので、連動した動きです。中国は今後、島嶼国に札束攻勢をかけ、駆け引きは強まるでしょう。警戒を緩めるべきでないです。

だかこそ、今回米国、日本、オーストラリア、ニュージーランドと英国は太平洋地域への関与強化に向けた協力枠組み「青い太平洋におけるパートナー(PBP)」を立ち上げたのです。

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