本田悦朗氏 |
岸田首相は同日の記者会見で「安定財源は将来世代に先送りすることなく、いまを生きるわれわれが将来世代への責任として対応すべきものと考えた。戦闘機やミサイルの購入を借金で賄うということが本当によいのか」と述べ、増税の意義を強調した。
法人税は税額に4~4・5%を上乗せし、たばこ税は1本当たり3円引き上げる。所得税は1%を新たな付加税として課すと同時に、東日本大震災の復興特別所得税の税率を1%引き下げる。だが、2037年までの課税期間を延長するため、結局は増税だ。
増税実施について「24年以降の適切な時期」とするが、財務省出身の本田氏は「決着の単なる先送りは、財務省側が妥協したように見せかける常套(じょうとう)手段だ」と指摘したうえで、財務省が増税に固執する内幕をこう明かす。
「財務省の官僚にとっては、景気回復で税収が増えても誰の業績にもならないが、増税や歳出カットで財政再建すれば、業績として出世に有利になる。真の解決策は、財政出動によって需要を拡大することなのに、短期的な財政収支に気をとられるばかりで、日本経済や政権の動向は考慮しない」
アベノミクスの指南役としてデフレ脱却に取り組んできた本田氏は、防衛力強化についての安倍元首相の思いも耳にしていたという。
「安倍元首相の防衛力強化と防衛費増額への熱意は相当なものだった。財源については『防衛国債』を考えていたが、公共事業に充てられる建設国債を想定していたと思われる。また、経済成長による税の自然増収についても理解していた」と振り返る。
バブル崩壊後の日本経済は、「失われた30年」と呼ばれる低迷を続けてきた。本田氏は「いつも経済が上向いたときに逆行する政策になる」と述べ、増税を強行した場合の日本経済の行く末を懸念する。
「2000年のゼロ金利政策解除、06年の量的金融緩和解除、14年と19年の消費税増税に続く、『5度目の失敗』をするつもりなのか。防衛増税が実施されれば、企業経営者の将来の収益見直しに冷や水を浴びせ、デフレからも脱却できず、一向に賃上げができない世の中になる恐れがある」
自民党の萩生田光一政調会長は同日の党政調審議会で、防衛費増額の財源確保に向け、税以外の財源捻出の在り方を協議する場を来年設置する意向を明らかにした。
本田氏もこれまでの財源論議の中で、国債発行や、毎年度の一般会計に計上されている債務償還費の活用を含む歳出改革を訴えてきたが、今後の策は残されているのか。
「『24年以降』とした増税の実施時期を物価・雇用・成長などの観点から、日本経済が正常化するまで先延ばしすることだ。それまでの間は、成長による税の自然増収を最大限活用し、なお足らざる分は国債で補うしかない。マクロ経済指標を毎年慎重に検証して、増税時期を判断すべきだ」
人脈も財務省に近いとされる岸田首相は、同省の思惑通りに動いたように見える。本田氏はこうも語った。
「財務省は言うことを聞いてくれそうな政権で『国民に不人気なこと』をやってしまおうとする。岸田首相もある意味では被害者かもしれない」
以前のこのブログで述べたように、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。ドイツはEUの中でも、特に財政規律を重んじる傾向があります。その意味では、日本の財務省と似たところがあります。
そのドイツですら、コロナ禍の時は一時的に減税しましたし、連邦軍のために1000億ユーロ(約13兆円)の特別基金を今年創設して、兵員数の増加、兵器の近代化、装備の調達、同盟国との新兵器の共同開発などに充て、基金の財源は、長期国債を発行して賄うのです。
にもかかわらず、日本では政治家はもとより、多くの国民が、防衛費増の財源として国債を発行することには反対しているのです。
このブログでは、マクロ経済に関しては平易に解説することを心がけてきましたが、国債の本質に関しては関しても難しい経済理論など必要ありません。
我が国では新規に発行された国債は、60年で全額現金償還するのがルールです。その財源を調達するため毎年、国債発行残高の約1/60を債務償還費として巨額の赤字国債を発行しています。
これは日本だけのルールであり、国債償還のために全額借換債を発行するのが世界の常識です。借換債を発行するなどというと、すぐに中小企業などの自転車操業のように考える人がいますが、その考えが根本的な間違いです。
中小企業、その中でも規模の小さな企業であれは、その信用力は創業社長が源です。創業者社長は人であり、その生命には限りがあります。その創業者社長が自転車操業を繰り返すのは大変危険なことです。
しかし、この創業者社長が仮に不死身だったとします。そうすれば、自転車操業してもほとんど問題はないでしょう。なぜらないくら自転車操業をしてもいつか必ず借金を返すことができます。もし、創業者社長が不死身なら、金を貸す金融機関は、それを前提として金を貸し付けるでしょう。
不死身ならいつかは必ず返してもらえるので、かなり多額の金を長期間にわたって貸し付けても安心です。不死身というなら、こんな確かなことはなく、金融機関としては、どんどん金を貸し付けたがることでしょう。
そのようなことが現実に行われています。金融機関は、政府が発行する長期国債を買っています。政府は、個人と比較すれば、不死身です。その政府が、借換債を発行することを自転車操業のように考えるのは根本的な間違いです。
日本には亜人(死なない生物)が存在する。それは「日本国政府」。 |
それどころか、長期国債が若干のマイナス金利になっても、多くの金融機関はこれを喜んで買います。なぜでしょう。なぜなら、まずは日本政府の財政破綻確立はかなり低いですし、ドルや米国債などを買えば、為替リスクがありますが、日本国債にはそれがないからです。たとえマイナス金利分損したとしても、大きな為替リスクはありません。
政府発行の国債があたかも個人の借金であるかのようなことを気にして、現実の脅威である中国に対応するため、NATO基準である防衛費GDP2%(+6兆円)を満たしておかないというなら、本末転倒です。
防衛増税なと嫌だといえば、財務省等は「どこかの経費を削れ」と言うかもしれません。ならば真っ先に、「債務償還費(16兆円)を削れ」と言い返すべきです。長期国債の元本は、借換債の発行で賄うのが世界の常識です。過去債務の返済に熱心の余り、日本を中国の支配下において良いはずがありません。
岸田総理に対して、「財務省は言うことを聞いてくれそうな政権で『国民に不人気なこと』をやってしまおうとする。岸田首相もある意味では被害者かもしれない」と語っています。しかし、岸田氏は安倍政権において閣僚をしていた経験もあり、安倍氏の考え方を学ぶ機会はいくらでもあったはずです。
そうして、岸田総理は以下のようなツイートをしています。私にとっても安倍元総理は当選同期であり、同僚議員として、また安倍内閣を支える一閣僚として多くの時間を共にした良き友人でした。
— 岸田文雄 (@kishida230) July 8, 2022
この国を愛し常に時代の一歩先を見通しこの国の未来を切り開くために大きな実績を残された偉大な政治家をこうした形で失ってしまうこと、重ね重ね残念でなりません。
総理は「国民の意思が大切なので、防衛増税を飲め」語っています。しかし、政府は国民負担を最小限にしつつ、国防の有効性を最大にするのが使命です。時期尚早の増税による国民の真の負担は、経済成長の腰を折り、長期停滞が続くことです。総理は道徳を説くのではなく、まともなマクロ経済理論に基づいて発言し政策を決めるべきです。
高山昭和館|岐阜県高山市 |
0 件のコメント:
コメントを投稿