2022年12月19日月曜日

財務省が完勝した防衛増税、こうすれば「大逆転」でひっくり返る―【私の論評】英国の大政変のように、日本でも安倍派が地獄の釜を岸田政権に向けて開けるときがくるか(゚д゚)!

財務省が完勝した防衛増税、こうすれば「大逆転」でひっくり返る

安倍晋三元首相の葬儀に参列した儀仗隊

自民党政調を飛び越えて

 毎日のようにめまぐるしく状況が変化しているので、今回は防衛増税の経緯をまとめておこう。

 政府内では、9月30日、国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議が設置され、11月22日に報告書が出された。

 同報告書では《防衛力の抜本的強化のための財源は、今を生きる世代全体で分かち合っていくべきである。》とされ、《国債発行が前提となることがあってはならない。》とされている。

 先週の本コラムでは、防衛費増額の財源として、12月8日、岸田首相は与党に対し所得税を除く形で税制措置を検討するよう指示し、10日の記者会見で「国債でというのは、未来の世代に対する責任として採り得ない」と述べたことまで書いた。

 8日の岸田首相の指示は、正確には以下のものだった。

 《来年度からの国民の負担増は行わず、令和9年度に向けて複数年かけて段階的な実施を検討。》

 《税制部分については与党税制調査会において税目、方式など、施行時期を含めて検討するようお願いする。》

 しかしこの手順はおかしい。自民党政調を飛び越えて、税調に検討させているからだ。それに危機感をもった萩生田政調会長が政調全体会議を開催した。そこではかなりの反対意見がでている。こうした議論は政府に伝えられ、それを踏まえて税調での議論となったはずだ。

まだ書かれていない「増税措置」

 13日からは税制小委員会が開催された。ここで防衛力強化基金の創設が政府から説明された。これについては、先週の本コラムで《こうした資金は、防衛費を区分経理するための常套手段であり、財源確保のために増税の一歩手前だ。》と書いた。

 この税制小委員会での政府資料では、《歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金(仮称)の創設に必要な法制上の措置については、次期通常国会に提出予定の財源確保に係る法案に規定。》と書かれている。14日の政府資料でも同じ表現だ。

 16日には、自民・公明両党が2023年度税制改正大綱をまとめた。

 その中で、

 《6.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置

 わが国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保する。税制部分については、令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において、1兆円強を確保する。具体的には、法人税、所得税及びたばこ税について、以下の措置を講ずる。

 (1) 法人税
法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課す。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとする。

 (2) 所得税
所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する。延長期間は、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとする。

 廃炉、特定復興再生拠点区域の整備、特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた具体的な取組みや福島国際研究教育機構の構築など息の長い取組みをしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き、責任を持って確実に確保することとする。

 (3) たばこ税
3円/1本相当の引上げを、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保した上で、段階的に実施する。

以上の措置の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とする。》

 とされている。

 さすがに、2023年度税制改正の具体的な内容に、これらの増税措置は書かれていない。また、小委員会で政府から説明された財源確保にかかわる法案についても書かれていない。

一縷の望み

 さて、防衛増税は決まったかといえば、筆者の感覚では「ほぼ決まり」だ。筆者は、17日大阪朝日放送「正義のミカタ」にリモート出演したが、次のようなフリップを出した。

 これまでは財務省の完勝であり、このままで増税が決まりだ。下段に書いた「大逆転? !」は、はっきりいえば単なる願望にすぎない。

 一縷の望みは、財源確保にかかわる法案の扱いだ。その法案について、政府(岸田政権)は次期通常国会に提出予定としている。実施時期は確定しないが、この法案に増税措置が盛り込まれるはずで、次期通常国会の提出が決まれば、防衛増税は確定する。

 問題は、同法案がどのような政治プロセスで扱われるのか、だ。

 つまり、年末の予算などともに閣議決定されるが、その前に与党プロセスがどうなるか。政調・総務会の了承を得るのが通例であるが、今回のやり方は通常でないほど強引だった。

 政調でどこまで審議できるか。かつての自民党であれば、全議員参加の「平場」でしっかり議論されるはずだが、どうなるだろうか。

 防衛費増について、岸田政権でも一部認めた建設国債対象経費をさらに拡大できるかどうか、先週の本コラムでも指摘した一般会計に計上されている債務償還費(2022年度15.6兆円)を含め特別会計の埋蔵金をさらに出せるか──それで増税は必要なくなるはずだが──そうした議論が自民党内でまともにできるかどうか、岸田政権が問われている。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】英国の大政変のように、日本でも安倍派が地獄の釜を岸田政権に向けて開けるときがくるか(゚д゚)!

高橋洋一氏は、政調でどこまで審議できるか、が重要であるとの認識を示しています。かつての自民党であれば全員参加の「平場」でしっかり議論させるはずだが、どうなるだろうかとしています。

これについては、ただ積極財政派の議員らが、大きな声をあげれば、成就するようなものではないです。ましてや、増税に反対する議員らが、離党して新党をつくるようなことをしたとしても、さざ波程度の動きにしかならないでしょう。

よほどインパクトのあることをしなければ、成就しないでしょう。インパクトがあるといえば、今年は英国内の大政変がありました。ジョンソン首相が、辞任を余儀なくされた後、トラス氏が首相となりましたが、就任からわずか49日で、辞任しました。新首相は、スナク氏に決まりました。


ジョンソン首相の時には、首相の相次ぐ不祥事が明るみに出て、スナク財務相とジャビド保健相が相次いで辞任しました。これは、更迭などで辞めたのではなく、ジョンソン氏に対する抗議をするために自ら辞任したのです。これがジョンソン氏辞任の決定打になったところは否めないです。

トラス政権においては、クワーテング財務相の更迭に続き、重要閣僚ブレーバーマン内相が首相に抗議して辞任ました。もともと、トラス首相の経済政策特にインフレであるにも関わらず、減税するという政策は人気がなく、それで財務相を更迭せざるをえなくなり、そこにき内相が辞任しました。これが、トラス辞任の決定打となりました。

特に大型減税案は、後任であるハント財務大臣により全否定され、これがトラス政権をかなり追い詰めました。重要閣僚がやめることはいずれの国においても、時の政権に大打撃となるのです。日本とて例外ではありません。これについては、このブログでも解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
トラス英首相が辞任を表明―【私の論評】今回の首相辞任は実は経済政策はあまり関係なし、純粋に政治的な動き、日本でもあるかも(゚д゚)! 


この記事では、英国の政変が、政治的な動きであることを強調するために、トラス氏の大型減税策についてはあまり批判的なことを書きませんでしたが、トラス氏の経済対策は間違いであることは、はっきりしすぎていました。

インフレが亢進しているときに、採用すべき政策は減税ではなく増税です。ただ、減税するにしても、英国内の経済とはあまり関係ない、エネルギーや資源に限った減税であれば、さほど問題にはならなかったでしょう。

このように明らかに経済対策を間違い、さらに重要閣僚を罷免さざるをえなくなり、さらに重要閣僚が自らやめしまったということは、政権に大打撃を与えるのです。

さて、英国の経済は、供給不足で減税ではなくて、増税などの緊縮財政などの措置をする必要がある一方、日本は需要不足であり、減税などの措置が必要であるにもかかわらず、岸田首相は増税という明らかに間違えた政策を実行しようとしているという違いはあります。

ただ、どちらも国内の経済対策を間違えいるという点では共通点があります。

そうなると、日本でも閣僚が自らやめるというようなことがあれば、岸田政権に大打撃ということになります。

岸田政権においては、すでに山際経済再生担当大臣、寺田総務大臣、葉梨務大臣の三人の閣僚が辞任しています。これだけでも、大変なのに、さらに数人閣僚が自ら辞任ということになれば、岸田政権は崩壊の危機に見舞われることになります。

このようなことができる派閥が自民党にはあります。それは、最大派閥である旧安倍派です。以下の表でもわかるように、安倍派は四人の閣僚を出しています。自民党三役の政調会長は萩生田光一氏です。

安倍派は、安倍元総理の遺志をひきつぎ、防衛増税には大反対です。そうして、安倍氏により、理論武装もかなりしています。そうして、その理論はあらゆゆる面から、考えてみても正しいです。安倍派は、亡くなった安倍元首相の遺訓でもある「防衛費増は国債で賄う」という考えを実現したいと考えていることでしょう。

ただ、現状では上の高橋洋一氏の記事にもあるように、政調でどこまで審議できるかという状況です。まともに、議論もさせないかもしれないというのですから、最大派閥の安倍派の不満は鬱積していることでしょう。

この状況であれば、安倍派閣僚は、岸田首相を翻意させるために、辞任するという手もあります。いきなり四人が辞任するまでは必要ないですが、まず防衛増税に反対という意見表明をした上で、まずは一人辞める。

それでも岸田首相か翻意しな場合は、もう一人、また一人と辞任するのです。これを実施すれば、岸田内閣はかなりの窮地に追い込まれます。これに同調して、高市氏のような無派閥や他派閥の閣僚の中にも辞任するものがでてくるかもしれまん。

それでもどうしても、岸田首相が翻意しないというのなら、最後に萩生田政調会長が辞めても良いと思います。そうなると、岸田政権は、国会で野党から追求され、党内も蜂の巣をつついたような状況になるでしょう。マスコミも連日報道するでしょう。

国民の信を問うために、解散総選挙をせざるをえなくなるでしょう。しかし、増税の意思を翻意しないままで、選挙をすれば、大敗する可能性も濃厚になります。

やはり、岸田首相ははやいうちに翻意すべきです。そうでないと、まもなく安倍派が岸田政権に向けて、地獄の釜を開くことになります。

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