2022年10月24日月曜日

「32年ぶりの円安」が日本にとって大チャンスである理由…バブル期との決定的な違い―【私の論評】安倍元総理が亡くなってから、急にせり出してきた財務省に要注意(゚д゚)!

「32年ぶりの円安」が日本にとって大チャンスである理由…バブル期との決定的な違い

メディアの印象操作に欺されるな

 為替が1ドル150円近辺と、1990年以来の水準と報じられ、大騒ぎになっている。地上波の大阪朝日放送『正義のミカタ』で、筆者もこれを解説した。

 そもそも、円安はGDPプラス要因だ。古今東西、自国通貨安は「近隣窮乏化政策」(Beggar thy neighbour)として知られている。

 通貨安は輸出主導の国内エクセレントカンパニーに有利で、輸入主導の平均的な企業に不利となる。全体としてはプラスになるので、輸出依存度などに関わらずどのような国でも自国通貨安はGDPプラス要因になる。

 もしこの国際経済常識を覆すなら、世紀の大発見だ。

 このため、海外から文句が来ることはあっても、国内から円安を止めることは国益に反する。本コラムで書いてきたように、これは国際機関での経済分析からも知られている。ちなみにOECD(経済協力開発機構)の経済モデルでは、10%の円安であれば1~3年以内にGDPは0.4~1.2%増加する。


 それを裏付けるように、最近の企業業績は好調である。直近の法人企業統計でも、過去最高収益になっている。これで、法人税、所得税も伸びるだろう。

 しかしマスコミ報道は、こうしたマクロ経済ではなく、交易条件の悪化などごく一部の現象のみを取り上げて「円安が悪い」という印象操作をしている。

 円安がGDPプラスになるということだけで、経済全体の事情は示されている。そこで経済学的な議論はおしまいだ。しかしテレビ番組では、一般の人にもわかってもらう必要がある。筆者が番組スタッフに「円安で起こる悪いニュースと良いニュースを探してくれ」と頼んだところ、次のような資料になった。


 円安の結果で、一世帯あたりの年間負担8.6万円と経常収益28.3兆円という数字が並んでいる。

 日本の世帯数は5400万なので、家計全体の負担は4.6兆円になる。一方、企業収益は28.3兆円で、前年比17.6%増なので5兆円プラスで家計全体の負担を相殺できる。
 
 バブル期は酷いインフレではなかった

 実際の番組では話はこの通りでないが「まだ政府の儲けがあるので、日本経済全体では大丈夫」と言った。儲けているカネで、困っている人への対策に回せばいいのだ。それは政治の問題でもある。

 そもそも、今回の円安は32年ぶりだという。32年前というと1990年バブル絶頂・崩壊時だ。その当時のマクロ経済指標はどうだったのか。名目GDP成長率7.6%、実質GDP成長率4.9%、失業率2.1%、CPI上昇率3.1%だ。文句のつけようもない数字だ。バブル期というと酷いインフレと思い込んでいる人もいるが、そうでない。

 テレビ番組でも、MCの東野さんから「32年前はウキウキしていたが、今は違うではないか」との質問があった。これはまともな質問なので、「バブル時に取られた政策が間違いで、今になっている」と答えた。バブル潰しのための金融引き締めだった。

 頭の体操だが、その当時に今のインフレ目標2%があったらどうなのか。

 昨今の欧米の例をみても、4%くらいまでは金融引き締めをしないのが通例なので、金融引き締めをしてはいけないことになる。

 当時、マスコミは日銀の三重野総裁を「平成の鬼平」ともてはやして、金融引き締め(金利引き上げ)を後押しし、日銀も従ったが、それは間違いだった。筆者の見解では、日銀はこの間違いを「正しい」といい続け、間違いが繰り返され、失われた平成不況の元凶になった。

むしろ円高・デフレがまずかった

 それを示すのが、次の図だ。カネの伸びと名目経済成長はかなり関係している。


 バブルの前、日本のカネの伸びはそこそこで経済成長も良かった。しかし、マスコミはバブルを悪いモノとしていた。


 そしてメディアの論調に押されて、バブル潰しのために金融引き締めをして、それが正しいと思い込んだ日銀は金融引き締めを継続した。その結果、日本のカネの伸びは世界最低級となり、成長も世界最低級になってしまった。

 ちなみに、カネの伸びが低いとモノの量は相対的に多くなり、その結果、モノの価値が下がり、デフレになりがちだ。バブル潰しの結果、金融引き締めを継続したのが、デフレの原因である。

 アベノミクスは、それを是正するものだった。カネの伸びは世界最低級からは脱出したが、まだ十分とはいえない。

 また、日本のカネの伸びは、他国のカネの伸びに比べて低い傾向になるので、結果として円の他国通貨に対する相対量が少なくなり、円高に振れがちだ。なので、バブル以降、デフレと円高が一緒だったのは、カネの伸びが少なかったことが原因だ。

 GDPをドル換算して日本のGDPランキングが下がったといい、円安を悪いものとして煽る論調があるが、円払いの給与のほとんどの日本人には無意味なことだ。むしろこれまでの円高・デフレで成長が阻害された結果を表していると見たほうがいい。

 もっとも、1990年と今との違いに対外純資産がある。1990年末は44兆円だが、2022年6月末(一次推計)は449兆円。円安メリットは大きくなっている。その中でも最大のメリットを享受しているのは外国為替資金特別会計(外為特会)で外貨資産を保有する日本政府だ。
 
  どんどん為替介入を

 筆者からみれば、外為特会は霞が関埋蔵金の一つであり、かつて小泉政権の時に、財源捻出した経験がある。その当時は政府内で調整が行われたが、岸田政権で埋蔵金を指摘するようなスタッフはいないので、国会で議論されたのだろう。いずれにしてもできないという理由は分からない。

 国民民主党の玉木雄一郎代表が10月6日の衆院代表質問で、外為特会の含み益が37兆円あることを指摘し、円安メリットを生かすのなら、その含み益を経済対策の財源に充ててはどうかと提案した。

 これに対し岸田首相は「財源確保のために外貨を円貨に替えるのは実質的にドル売り・円買いの為替介入そのもの」などと述べ、否定的だった。

 18日の衆議院予算委員会では、鈴木俊一財務相も、外貨資産の評価益を経済対策の財源とする提案について「その時々で変動する外国為替評価損益を裏付けとして財源を捻出することは適当でない」と語った。

 一方、円安に対し、鈴木財務相は「円安を食い止めるための為替介入も辞さない」と繰り返して主張している。

 財源とするのは否定するが、介入は行うとの発言であるが、この二つの発言は矛盾している。

 というのは、含み益を実現益とするためには、外為特会で保有しているドル債を売却するわけだが、その売却行為自体が為替介入そのものだからだ。実現益は出したくないが、為替介入するという発言を同一本人が言うとは理解できないし、マスコミや国会はこのような矛盾点を指摘しなければいけない。

 為替介入は1回あたり大きくとも数兆円程度の規模だ。1日の為替取引は大きい。国際決済銀行の2019年のデータでは、1日の平均取引量は6.6兆ドル(1ドル140円とすれば約1000兆円)である。ドル・円の取引はシェア13%なので130兆円程度だ。これでは、当局が介入しても、量的には雀の涙であり、1~2日の間、介入効果はあるように見えてもすぐになくなる。

 であれば、どんどん為替介入すればいい。そのたびに為替評価益は実現益に変わる。その実現益を財源対策にすればいいだけだ。

 含み益を実現益にするためには、ドル債の売却は金融機関相手でなく政府内の特会会計間取引でもいい。その場合、為替介入は事後的にわかるがその時にはわからない。国際的な為替操作を気にするのであれば、この手法でもいい。

 いずれにしても、外貨債を持っている日本人にとって円安メリットは現実のものだ。最近の円安によるGDP増加要因で、日本経済は1~2%程度の「成長ゲタ」を履いており、他の先進国より有利になっている。1990年の失敗を繰り返さず、この好機を逃してはいけない。

 以上の記述を含めバブル崩壊をはさんだ戦後経済史に興味のある方は、筆者の『戦後経済史は嘘ばかり 日本の未来を読み解く正しい視点』(PHP新書)をご一読いただきたい。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】安倍元総理が亡くなってから、急にせり出してきた財務省に要注意(゚д゚)

「1990年以来、32年ぶり」とよく言われますが、1990年の経済状況はどうだったかと言うと、名目経済成長率が大体8%ぐらいで、実質経済成長率が5%でした。失業率が2%台で、インフレ率が3%台でした。このどこが悪いことなのでしょうか。32年前に戻れるなら、それは日本経済にとって良いことです。


多くの人が、これを「悪い」と思っているようですが、かなり良い状態です。上の記事にもでてきた、近隣窮乏化は、普通は他の国から苦情が出るのが普通ですが、現状ではそのようなことがないので、非常に良い状況です。 

このようなことは、初めてかもしれません。 それどころか、バイデン大統領はドル高容認発言をしています。 IMFの世界経済見通しでも、来年(2023年)の日本は先進国のなかでも高い成長率が予測されています。日本経済は、円安によって下駄を履かせてもらっている状況です。これは様々な産業の日本回帰への絶好のチャンスです。

超円高のときには、日本で部品を組み立てて、海外に輸出するよりも、中国や韓国で組み立てて、そこから輸出したほうがはるかにコストを低減できるという状況でした。中国や韓国がぬるま湯に浸かっていたような状況の一方、日本企業は手足を縛られたような状態でした。様々な産業が日本国外に出ていきました。

今度は、円安で「サプライチェーンを中国や韓国から奪う」という時代に入ることになります。

サプライチェーンの見直しは、まさに経済安全保障の議論のなかでずっと言われていたことですが、ここまでの為替水準になると、いろいろな産業をの国内回帰させることができますし、、実際にそのような企業も増えつつあります 。

経済安全保障推進法などは、高市早苗氏の活躍も実際に法律になっていますが、この考え方も「中国からサプライチェーンを奪う」というところまでにはなっていません。現実が追い越してしまったので、法改正はもちろんのこと、追い付かなければいけません。

 すでに、現実に「サプライチェーンを奪う」という時代になっているのです。あの法律は、「なるべく中国に日本のサプライチェーンを獲られないようにしましょう。この法律は、「サプライチェーンの中軸は中国なので、なるべく防ぐべき」という考え方の法律に留まっています。 

経済安全保障推進法は。 現実にあわせてさらに、前に進まなければなりません。現実にあわせて自ら法改正をすべきです。

安倍元総理は、総理大臣時代に日本戻ってくる企業に補助金を出しました。現在国会で審議されてる対策も、この補助金はあります。今後は、そのような企業がもっと増えるはずです。実際、戻りたいという人も多いです。

かつてアジア通貨危機のときに、「カントリーリスク」ということがずいぶん言われました。最近はやや死語のようになっていますが、中国はカントリーリスクの塊です。そのようなところにサプライチェーンを依存したくないという思いは、日本だけではありません。

 カントリーリスクは日本貿易保険(NEXI)が発表しています。A~Hまでカテゴリーがあって、ロシアはHぐらいなのですが、中国はCです。全くあり得ないことです。 日本政府は中国に対して甘すぎます。 

中国に技術を盗まれてしまうリスクもありますし、罰金のようなものを科せられたり、人が拘束されるなど、様々なことがあり得ます。 

中国のカントリーリスクは、アジア通貨危機のときに言われた諸国よりも根深いですし、いまの中国共産党大会を見ていても、改善される見通しがないどころか悪化しています。 

現在の中国は、ますます習近平に対する個人崇拝の道に進んでしまい、誰も何も言えなくなっています。そのようななかで、経済だけがうまく資本主義で回るはず等ありません。

中国の経済政策は、独裁の手助けをさせようとしているだけです。本来の「自由意志によって経済を司る」という考え方がまったくないので、巨大なカントリーリスクです。何があってもおかしくありません。

アジアで本当に資本主義国として自立できる可能性があるのは、日本しかありません。円が安くなったと言っても日本のGDPは世界3位なのですから、発想の逆転が必要です。 

為替について、日本ではマスコミなどを筆頭に、「円高のときにネガティブに考えるし、円安のときもネガティブに考えます」本当に不思議です。GDPが減ってしまうので、円高のネガティブは理解できるところがありますが、円安でネガティブになるべきではないです。

最近の、企業の実績を見ても、「税収は70兆円までいくのではないか」と言われています。法人企業統計でも、企業の収益は過去最高です。

ただ、「なぜ円安になるとGDPが伸びるのか」という説明はほとんどされません。 簡単に言ってしまえば、円安では輸出関連が有利になって、輸入関連が不利になります。

世界の檜舞台で競争するので、輸出関連企業には優良企業が多いです。優良企業の業績に、他の円高によるデメリットを平均的に与えたにしても、総合的にプラスになるということで日本全体のGDP は伸びるのです。

よって、いずれの国においても実は自国通貨安の方がGDPは伸びるのです。これは輸出依存度に関係ない世界であり、世界貿易の常識です。もしこの常識を破るような理論がでてきたとすれば、その理論でノーベル経済学賞を獲れると思います。

日本人が日本で、普通に生活していると、円安になった場合、特に輸入しているものの物価が高くなってしまうので、デメリットになります。そこは政策でカバーできます。 

国全体が経済がプラスになります。大事なことは、「国のなかで誰が最もプラスになったのか」を探すことです。そうなると、日本国政府が最もプラスです。日本国政府は約180兆円の外債投資をしているので、含み益だけで40兆円ほどあります。

上の記事にもあるとおり、小泉政権のときに、高橋洋一氏はこれを埋蔵金と呼びましたが、今回もまた同じことを言っているだけです。 小泉政権のときにあった埋蔵金は、60兆円ほどでしたか。それに外為特会も入っていたので、財源として捻出しました。

当時はそこまで円安ではなかったので、さほどではありませんでしたが、今回の円高は当時よりも規模が大きいです。いまでも40兆円ほどあります。現在円高で最も儲けているのは誰かといえば、それは日本国政府です。

為替特会の財源化等も含めて、当然、消費減税も考えるべきです。岸田総理は消費税は、「社会保障の財源」と主張していますが、これはこのブログても過去に主張してきたように、明らかに間違いです。社会保障は保険であり、消費税をこれにあてるなどという考えは、根本から間違えています。

円安を活用するためには、消費税減税も含めて、いままで財務省が否定してきた政策を取らなければなりません。そうしなければ岸田政権は反転攻勢はできないです。 高橋)心強いですね。 

岸田総理にそれができるかどうか。岸田総理は、安倍元総理が亡くなってから、より財務省に近くなっているともいわれています。ただ、岸田総理が財務省に寄って行ったというよりは、財務省が「グッ」と身を乗り出してきた感じが明らかにあります。

安倍元総理が亡くなってから、急にせり出してきました。 防衛予算の話でいくと、法人税や所得税など、税金を上げる、いわゆる防衛増税すり替わってしまっているのは、まさにそういうところです。


ただ、この防衛増税は、自民党の保守派の怒りに油を注いでしまったようです。先程も述べたように、政府は円高で潤っており、これを防衛費にあてるとともに、他の施策も実施すべきです。

以前もこのブログで述べたように、財務省で出世するにはできるだけ、多くの緊縮・増税をするかが決め手になります。これこそ、「財務真理教」です。

彼らは国益よりも省益、自分の出世と天下りが大事なのです。財務省入省後に厳しい洗脳が始まります。円安で政府が儲かった分を防衛費に廻すなどのことはせずに、防衛増税をしてその結果日本が再び失われた30年に見舞わて、国民が苦しもうが、全く頓着しないのですから、異様なカルト集団といわざるをえないです。

日本では、統一教会が問題視されていますが、一番問題なのはカルトの財務真理教です。このようなカルトになぜ、大勢の政治家が恭順するのか、理解できません。

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