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防衛費の増額をめぐり、財源論や、海上保安庁の予算を含めて計上するといった議論が出ている。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の第1回会合の議事要旨が公表されたが、防衛力の強化を適切かつスピード感をもって進めることができるのか。
16日放送されたフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、「日本はどれほどの反撃能力を持つべきか」との問いに対し、「強力な反撃能力が必要」が87%、「必要最小限でいい」が10%、「保持すべきでない」が3%だった。視聴者投票なので一定のバイアスはあるが、大きな差がついた。
同日放送のNHK「日曜討論」では、「反撃能力」保有の是非をめぐり各党が激論した。自民党と日本維新の会は、持つべきだという立ち位置が明確だった。立憲民主党、国民民主党、公明党は、総じてやや専守防衛という範囲内で行うべきだとしており、共産党とれいわ新選組は否定的だった。
こうした世論を反映し、有識者会議の議論も、防衛力を高めるという点で意見は一致しているようだ。ただし、有識者会議のメンバーをみて、財務省の息のかかった人が多いと思ったが、案の定だった。防衛力について「NATO(北大西洋条約機構)基準を参考」など、国内総生産(GDP)比2%目標との関係で、数字のかさ上げにつながるNATO基準が当然のように扱われていた。
NATO基準は、海上保安庁予算や軍事関連の研究開発予算を防衛省予算と合わせて防衛費とするものだ。ただし、厳密なNATO基準では、海保に相当する湾岸警備隊が軍隊の組織下で活動できることが必要だが、日本では海保は国土交通省の機関であり、そうなっていない。
NATO基準というなら、海保を自衛隊傘下の組織とする法改正が必要だ。そうでなければ、NATO基準なら国防関連費から外れるというべきだ。
さらに財源となると、有識者会議は一致して増税志向で、財務省のまさに思うつぼだ。「現在の世代の負担が必要」「財源を安易に国債に頼るのではなく、国民全体で負担する」「自分の国は自分で守るのだから、国民負担」「恒久的な財源」などと、有識者の意見は増税一色だった。
そのロジックは、国防だから国民負担というもので、11年前の東日本大震災後の「復興増税」をほうふつさせる。あの当時、復興増税が財務省主導で行われたが、震災時の増税は古今東西前例のない愚策だった。
防衛の便益は将来世代にも及ぶので、国債も選択肢としてあり得るのに、財務省は増税ありきだ。
NATO基準で海保予算を合算したいなら、海保の船の財源は国債であるので、増税だけをいうのは、財務省のご都合主義と言わざるを得ない。復興増税と同じで「特別会計」や「つなぎ国債」と言い出したら要注意だ。
今は外国為替資金特別会計(外為特会)などで埋蔵金もある。当面は埋蔵金でしのぎ、その後、成長軌道に乗せ対応するという戦略もあるが、財務省は増税一本やりだ。
復興増税は財務省の言いなりだった民主党政権で行われたが、防衛増税はどうなるのか。岸田文雄政権も民主党政権と同じなのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
「GX経済移行債(仮称)」としては、将来の償還財源を明確にして発行する「つなぎ国債」としての発行が議論されているとされ、そうであれば、政府債務残高を中長期的に一段と悪化させることは回避できますが、これは財源確保の手段を事実上先送りするものであり、償還財源が十分に確保できずに将来にわたって国民の負担となり、実質増税となってしまいます。
防衛費については今後5年で国内総生産(GDP)比2%以上に倍増させる議論があり、単純計算で11兆円に迫る予算が必要になる。政府内では赤字国債の発行で当面つないで、法人税やたばこ税を念頭に将来的な増税で財源を確保する案が浮上しています。
こうした世論を反映し、有識者会議の議論も、防衛力を高めるという点で意見は一致しているようだ。ただし、有識者会議のメンバーをみて、財務省の息のかかった人が多いと思ったが、案の定だった。防衛力について「NATO(北大西洋条約機構)基準を参考」など、国内総生産(GDP)比2%目標との関係で、数字のかさ上げにつながるNATO基準が当然のように扱われていた。
NATO基準は、海上保安庁予算や軍事関連の研究開発予算を防衛省予算と合わせて防衛費とするものだ。ただし、厳密なNATO基準では、海保に相当する湾岸警備隊が軍隊の組織下で活動できることが必要だが、日本では海保は国土交通省の機関であり、そうなっていない。
NATO基準というなら、海保を自衛隊傘下の組織とする法改正が必要だ。そうでなければ、NATO基準なら国防関連費から外れるというべきだ。
さらに財源となると、有識者会議は一致して増税志向で、財務省のまさに思うつぼだ。「現在の世代の負担が必要」「財源を安易に国債に頼るのではなく、国民全体で負担する」「自分の国は自分で守るのだから、国民負担」「恒久的な財源」などと、有識者の意見は増税一色だった。
そのロジックは、国防だから国民負担というもので、11年前の東日本大震災後の「復興増税」をほうふつさせる。あの当時、復興増税が財務省主導で行われたが、震災時の増税は古今東西前例のない愚策だった。
防衛の便益は将来世代にも及ぶので、国債も選択肢としてあり得るのに、財務省は増税ありきだ。
NATO基準で海保予算を合算したいなら、海保の船の財源は国債であるので、増税だけをいうのは、財務省のご都合主義と言わざるを得ない。復興増税と同じで「特別会計」や「つなぎ国債」と言い出したら要注意だ。
今は外国為替資金特別会計(外為特会)などで埋蔵金もある。当面は埋蔵金でしのぎ、その後、成長軌道に乗せ対応するという戦略もあるが、財務省は増税一本やりだ。
復興増税は財務省の言いなりだった民主党政権で行われたが、防衛増税はどうなるのか。岸田文雄政権も民主党政権と同じなのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
【私の論評】異様なカルト集団 「財務真理教」に与する岸田政権は短期で終わらせるべき(゚д゚)!
政府が6月31日に公表した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の原案には、子育て支援、防衛力強化、脱炭素投資など長期的な歳出拡大につながる項目が並んでいました。一方で、政策継続に不可欠な安定財源の確保については軒並み議論を先送り。岸田文雄首相も参院選を控え、国民や企業の負担増に口をつぐんていました。
口をつぐむ岸田総理 |
財源のあいまいさは成長戦略にも及んでいました。脱炭素社会の実現に向け、原案は10年間に官民で150兆円超の投資を実現するとし、そのための政府資金を「将来の財源の裏付けを持った『GX経済移行債』により先行して調達する」としました。
首相は必要な政府資金の額を20兆円規模と表明していました。ただ、GX移行債の償還財源などの詳細は夏以降に首相官邸に設置する「GX実行会議」で議論するとしており、参院選後に先送りされた形でした。
この頃から、増税を懸念する人たちも多かったのですが、この頃には安倍元総理もご存命で、岸田総理に対して睨みをきかしていたので、まだ安心感がありました。
安倍元総理が亡くなられてから、しばらくたってから状況は変わりました。まるでタガが外れたように岸田政権内で、増税論議がなされています。
自民党税制調査会は11日に「インナー」と呼ばれる幹部の非公式会合を開き、2023年度税制改正に向けた議論を始めました。会長は岸田派の宮沢洋一氏が続投することに決定しました。
宮沢洋一会長は17日、共同通信などのインタビューに応じ、年末の検討課題となる防衛費増額の財源について、歳出削減で賄えない場合は増税が選択肢になるとの認識を示しました。税目は「所得税、法人税を含め白紙で検討する」と述べました。2023年度税制改正で、株式投資などを対象とする金融所得課税の強化を議論する意向も表明しました。
自民党税制調査会宮沢洋一会長 |
防衛費については今後5年で国内総生産(GDP)比2%以上に倍増させる議論があり、単純計算で11兆円に迫る予算が必要になる。政府内では赤字国債の発行で当面つないで、法人税やたばこ税を念頭に将来的な増税で財源を確保する案が浮上しています。
赤字国債の発行で当面つなぐとは、つなぎ国債のことを意味すると思われるのですが、つなぎ国債は3年の償還が必須で、実質増税と同じです。これとともに、「防衛費を上げるために消費税を12%にする」などという観測も出てきているようです。
増税で防衛費を賄うということなれば、日本経済はまた低迷して、防衛費が増大したにしても、日本の国力は落ち、いざ有事というときに戦費を賄うこともできず、まさに本末転倒と言わざるを得ないような状況に追い込まれるのは間違いありません。
宮沢洋一氏は、自民党税制調査会に再選されたためか、意気揚々と意気軒昂に、増税・緊縮の権化が前面に出てきました。この見解は防衛増税への布石ということでしょう。社会保障を人質に増税を迫るという姑息な手法ですが、宮沢氏は、単にお金のプール論、金本位制脳に囚われているだけです。上の記事で高橋洋一氏が語っているように、社会保障を現状維持したまま防衛費増は可能です。
安倍・菅政権のときには、安倍政権のときには2回の消費税増税をしましたが、その他の増税は抑制気味でした。三党合意のためさすがの安倍総理も防げなかった、消費税2回の増税に成功で満足すれば良いものを、とにかく増税で各省庁や外郭団体、民間企業への差配の強化で財務省の権力を増大すること、こそが、省益と考える財務省の増税や緊縮への欲望は未だ旺盛です。
その彼らの目的は、財務省を引退後天下り先で、超ウルトラリッチな生活を満喫することだけです。官僚としての矜持も何もありません。日本経済が良くなろうが、悪くなろうが、国民のことなど全く関心がありません。
以上の表で、複数の企業に天下りしていますが、これは天下りした後に別の会社に移っていることを示しています。他社に移るときには、無論高額な退職金も得ることができます。
岸田政権下で実施済みと、これから実施される可能性のある緊縮財政を以下に列挙します。
75歳以上医療費1割→2割たばこ税増税雇用保険料0.2%→0.6%引き上げ防衛増税炭素税導入高額医療負担政府はゼロへ長期脱炭素電源オークション、費用は国民東西の電源融通増強、一部国民負担という方向相続税、贈与税の見直し、中間層からの徴収強化金融所得課税実質増税と同じ「つなぎ国債」
本当に驚くばかりです。現在のような状況なら、普通なら減税、積極財政をするのが当たり前です。しかし、財務省に逆らえないとみられる、岸田政権はこれだけの増税・緊縮を一部は実行し、さらに俎上に載せているのです。
これを全部実施されてしまうと、日本はまた確実に「失われた30年」に突入することになります。岸田政権が長期政権になれば、これらを全部実現する可能性は十分にあります。
この状況について、高橋洋一氏は動画で以下のように述べています。
この動画簡単にまとめると、防衛増税には党内の保守派が難色をみせるのは当然であり、いずれ自民党内の政局になる可能性がでてきたということです。
このブログでも、何度か岸田政権が財務省との関係性と、派閥の力学だけで動けば、短期政権で終わると主張してきましたが、岸田政権はまさにその通りの動きをしています。
一連の増税・緊縮財政の動きは、まさに財務省との関係性で動いていることを示しています。
内閣改造では、正式の公表の前にほとんどの人事が漏れており、これは昭和時代によくあったことで、人事のほとんどが派閥との話し合いの中で行われたことを示しています。これは、まさら、派閥の力学で動いているということです。
さらに、悪いことに内閣改造は露骨に安倍派外しをしたということがわかる内容であり、これは、派閥第4位の弱小派閥がこれを行ったということで、安倍派以外の主流派派閥からも反発をかったのは間違いありません。
これでは、党内政局で、岸田政権は長期政権にはなりえないことがはっきりしたものと思います。
特に、防衛増税では自民党内の保守派は無論のこと、それ以外の保守派からかなりの反発を買ったのは間違いないです。
野田政権による消費税増税の動きに賛成の意思を示して、保守派内でも物議を醸していた、あの櫻井よしこさんですら、防衛増税にははやばやと反対の意見を公表しています。保守派にとっては、防衛増税は寝耳に水であり、とうてい受け入れられないです。
岸田政権は、長期政権にしてしまえば、自民党はもとより、日本国そのものを毀損することが明白になりました。日本国、日本国民のために短期で終わらせるべきです。
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