2022年10月10日月曜日

「円安で儲かった37兆円」を経済政策の財源に充てよ…財務省が臨時国会で触れられたくないこと―【私の論評】潤沢な財源があるのに、岸田政権が今国会でまともな補正予算を組まなければ、全く見込みのない政権とみなせ(゚д゚)!

「円安で儲かった37兆円」を経済政策の財源に充てよ…財務省が臨時国会で触れられたくないこと





経済論戦は、野党は攻めどころ一杯

臨時国会が10月3日に召集された。会期は12月10日までの69日間の予定だ。この臨時国会では総合経済対策と補正予算の策定が見込まれるが、野党は旧統一教会問題で追及を強めるとみられる。会期中にはG20など外交日程もあるが、岸田政権の課題は何か。

岸田首相は所信表明演説で、(1)物価高・円安対応、(2)構造的な賃上げ、(3)成長のための投資と改革の3つの重点目標を掲げた。

(1)の物価高・円安対応では、海外要因のコストプッシュをどうするかが問題だ。そのために、二次補正予算案が臨時国会に出される。

岸田政権は、電気代の負担軽減に取り組むとしている。企業・世帯への現金給付案や電力会社への補助金で価格上昇を抑える案などで対応するのだろう。これはミクロ的には悪くないが、マクロの視点が欠けている。

9日F1を観戦した岸田首相

マクロ的対応では、最終消費者への所得補助を行って有効需要を作り、価格転嫁を行いやすくし、最終消費者も実質負担がないようにするのがベストな政策だ。そのためには、現在あるGDPギャップを解消するような規模の経済対策がまず必要だ。

GDPギャップについて、内閣府では2022年4-6月期2次改訂後、▲2.7%としている。しかし、内閣府の過去のGDPギャップは2%に達しても完全雇用を達成しなかったことから、潜在GDP水準は2%は過大といえる。実際には▲4.7%程度、27兆円程度だろう。

GDPギャップが残ったままだと、余分な失業が残り、人手不足にならないので、賃金の上昇も期待出来なくなる。その結果、(2)の構造的な賃上げもできなくなる。

最終消費者における負担軽減という観点から言えば、事務的に容易なのは消費税減税や社会保険料減免で、効果も大きい。しかし、財務省主導の岸田政権は、こうしたマクロ経済の理解が心許ない。この経済分野で野党は攻めどころ一杯なので、ぜひ有意義な国会論戦を期待したい。

今国会で提出される法案は多くない。

次の感染症危機に向け、個人や病院に対する行政権限を高める感染症法改正案や、一票の格差是正策として衆院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案など18本だ。その他原発再稼働や防衛費増額なども議論になるだろう。

一方、野党からはカルト被害防止法・救済法案を提出する動きがある。これは、安倍元首相の暗殺したテロリストの思う壺だ。宗教法人の主体に着目する規制は邪道である。せめて現行消費者契約法の改正などの行為に着目し、宗教法人に限定しない規制とすべきだ。

筆者としては、特定宗教に限定した国会審議は避けてほしいと思っている。ニュージーランドのアーダーン首相は「(テロリスト)の男には何も与えない。名前もだ」と言ったが、今国会では、その意味でも暗殺者の議論をしてほしくない。そんな話題はテレビのワイドショーにまかせておけばよく、国会に相応しくない。国会は、国家の基本たる安全保障や経済を議論する場だ。

報じられなかった玉木雄一郎の質問

国会の冒頭での代表質問で面白いものがあった。

国民民主党の玉木雄一郎代表が、6日の衆院代表質問で、円安メリットを生かすのなら、外国為替資金特別会計(外為特会)の円建ての含み益37兆円を経済対策の財源に充ててはどうかと提案した。玉木氏は「国の特別会計は円安でウハウハ」と発言した。

これに対し、岸田首相は「財源確保のために外貨を円貨に替えるのは、実質的にドル売り・円買いの為替介入そのもの」などと述べて否定的だった。

実は、玉木氏の外為特会の質問は、彼と筆者とのそれぞれのYouTubeチャンネルでの約束だった(「582回 国民民主玉木代表と緊急コラボ!【後半戦】 )。この約束をやってくれたので、まず評価したい。

こうした国民のためになる面白い議論があったのに、一部を除き一般メディアはとりあげていない。それどころか、どうでもいいような「外貨準備高減少」という記事が各紙に掲載された。

玉木氏の代表質問を取り上げない代わりに、何かネタを財務省がマスコミに配ったのではないかと邪推するほどだった。

「埋蔵金」の再燃を警戒する財務省

かつて「埋蔵金」論争が起こったとき、世論は財務省の批判に向いたので、その再来を財務省は警戒しているのだろう。

実は、外為特会については、筆者はかつて小泉政権の時にやったことがある。小泉政権だったので郵政民営化がまずあったが、もう少し大きなグランドデザインをと言われ、政府のバランスシートのスリム化・効率化を提言した。

郵政民営化は、政府所有株の売却であるのでバランスシートのスリム化だ。政策金融・特殊法人改革もスリム化だ。そうしたコンセプトの中、政府の特別会計を精査していたら、思いの外、余裕資産があることがわかった。

政府のバランスシートを初めて作成したのは筆者であったので、各特別会計の余裕資産を炙り出すのは簡単だった。そこで、それを経済財政諮問会議の議題にした。これが、いわゆる「埋蔵金」である。その絶妙なネーミングとともに、大きな話題になった。

そうした一連の仕事は、2006年「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」という法律でまとめられている。この法律は、全78条であるが、各省にわたっており、霞が関官僚から見れば思い出したくないものだろう。おかげで筆者は「官僚すべてを敵にした男」、財務省からは「3度でも殺したい」とも言われたらしい。

その法律の39条に「外国為替資金特別会計に係る見直し」がある。実際、外為特会から財源が捻出された。

岸田首相の答弁を作成したのは財務省であろうが、当然その当時の議論は知っているだろう。当時、筆者は内閣官房・内閣府におり政権内であったので、財務省からの反論に答えて政策決定した。今回は、その議論の過程が国会審議として行なわれることになる。予算委員会など議論の場はいくらでもある。国民民主のみならず、他党も政府与党をどんどん追及すればいい。

岸田首相の主張する「外貨を円貨に替えるのは実質的に為替介入」という論理はおかしい。円高に対応するためにドル債購入するのが為替介入だ。ドル債は有期なので、例えば3年債なら3年後に償還されるので、その際外貨を円貨に替える。これは、どこの国の介入でも行われる通常の行為だ。それをやらずに再びドル債購入(ロールオーバー)したら、それこそ為替介入になってしまう。

財務省はロールオーバーして「為替介入」しているのに、ロールオーバーしない通常の行為を「為替介入」だとみなしているが、それは本末転倒、きつい言葉で言うと、盗人猛々しい言い方だ。

筆者の言うことを確認するのは簡単だ。先進国は変動相場制であるが、その外貨準備高のGDP比を見ればいい。持っている国でも数%以下だ(下図)。つまり、一時的に介入しても、ロールオーバーせず、途中売却か償還になっているのだ。


こうした議論もかつて行った。その上で、外為特会から埋蔵金を捻出したのだ。はたして今回はどうなるのだろうか。

【私の論評】潤沢な財源があるのに、岸田政権が今国会でまともな補正予算を組まなければ、全く見込みのない政権とみなせ(゚д゚)!

上の記事にもある通り、国民民主党の玉木雄一郎代表が発した「約37兆円を経済対策にあてたらどうか」という提案が、ネット上で注目を集めています。

10月6日、玉木代表は、衆院代表質問でこう述べました。

「緊急経済対策の財源についても提案があります。政府は為替相場への介入原資として、外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会に約1.3兆ドル、日本円にして約180兆円の資産を保有しており、そのほとんどがドル建の米国債です。 

いま記録的な円安なので、円建ての含み益がそうとう出ているはずです。機械的に計算しても約37兆円あります。総理、外為特会の含み益は本年1月に比べて、いくら出ていますか? 

円安で苦しんでいる個人や事業者がいる一方で、国の特別会計は円安でウハウハです。総理、円安メリットを生かすなら、緊急経済対策の財源として、外為特会の円建ての含み益をあててはどうですか」

この発言に関しては、以下のツイートに動画が添付されていますので、是非ご覧になってください。


この発言について、経済学者の高橋洋一・嘉悦大学教授が上の記事で、YouTubeチャンネルの対談で質問すると約束していたことを明かしているのです。2人はともに財務省出身です。 9月21日に公開された高橋氏のYouTubeチャンネルでの対談で、玉木代表はこう述べていた。

「今年のたとえば1月から今にいたって、だいたいドルの価値は3割ぐらい上がっていますから。110円ぐらいが140円ぐらいになっているわけでしょ。ざっと言って少なくとも30兆円ぐらいはすぐ出る。われわれが言っている23兆円の(緊急経済対策をしても)お釣りが出るくらい」

以下にその動画を掲載します。


国民民主党は9月13日、物価高に対応する総額23兆円の緊急経済対策をまとめています。 国民1人あたり10万円を給付する「インフレ手当」、再生可能エネルギーの普及に向けた賦課金の徴収停止による電気代値下げ、ガソリン補助金の継続とガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」凍結解除、消費税の5%引き下げなどを盛り込んでいます。これだけの対策をしても、お釣りが出るほどの含み益が出ているわけです。

 玉木氏の「約37兆円で経済対策」という提案に対して、ネット上でも歓迎する声が上がっています。

《「円安で儲かった37兆円」を特別給付費として、全国民一律30万円を支給すべき》 《とりあえず、2回目の10万円一律給付金を支給してほしいです》 《円安で益が出た37兆円あれば、国民に物価高対策として10万給付しても13兆円だから、余裕だから2.3回出来るな》

上の記事にもあるとおり、岸田文雄首相は10月6日、玉木氏の質問に対しこう答弁し、否定的な見方を示しました。

 しかし、岸田首相のこうした見方は、上で高橋洋一氏が指摘している通り、全くの間違いです。

 玉木氏は高橋氏との対談でこうも発言していました。

「(政府は)ウハウハだから。一方で、(円安で)マイナスの側面が出る産業とか企業・個人もあるので、ウハウハからウハウハじゃないところにちゃんと移転すればいいわけです。国全体でプラスになる」 

現在日本の大手の自動車、電気などの大手輸出企業は、円安により、かなり業績を伸ばしています。一方、輸入企業は中小企業が多く、昨今の円高によりかなり業績が落ち込んでいます。

このようなアンバランスを是正できるのは、政府しかありません。しかも、そのための財源は潤沢に存在するのです。

「聞く力」をアピールしてきた岸田首相。すぐに否定するというのではなく、反論も含めて、真面目に検討すべきです。

今国会において、仮に岸田政権が真水で10 兆円以下の補正予算しか組まなければ、そのような政権は、国民のことなど眼中になく、財務省との関係性と派閥の力学だけで動いているとみなし、全く見込みのない政権として、自民党が大きく毀損される前に、短期政権で終わらせるべきです。

来年の広島G7サミットを花道として、ご優待いただくべきです。そうでないと、国民生活も自民党自体も毀損されることになります。

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