2022年10月9日日曜日

北朝鮮の弾道ミサイルについて 岸田首相「今後の挑発行動を注視」―【私の論評】日本が抑止力を高める決断をすれば、その過程でいくつもの外交カードを手にすることができる(゚д゚)!

北朝鮮の弾道ミサイルについて 岸田首相「今後の挑発行動を注視」

 北朝鮮が、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の可能性があるミサイルを発射したことについて、岸田首相は、「今後の挑発行動について、注視していかなければならない」と警戒感を示した。

 岸田首相「引き続き、今後の北朝鮮の挑発行動については、注視していかなければならないと思う」

 北朝鮮は9日未明、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射していて、SLBMだった可能性があるとみられている。

 岸田首相は、訪問先の三重・鈴鹿市で記者団に対し、「弾種については、まだ確認中」と述べ、「確認でき次第、防衛相などから報告することになるだろう」との見通しを示した。

 また、2週間で7回という異例の頻度の発射に言及したうえで、「日米・日韓・日米韓といった関係国との関係も、密にしていかなければならない」とあらためて強調した。

【私の論評】日本が抑止力を高める決断をすれば、その過程でいくつもの外交カードを手にすることができる(゚д゚)!

SLBM が発射される懸念については、北が弾道ミサイルを発射した4日のこのブログですでに公表していました。その記事のリンクを掲載します。
北朝鮮、SLBM発射兆候も確認“核実験へ向け軍事的挑発の段階高める”との見方も―【私の論評】これから発射されるかもしれない北朝鮮のSLBMのほうが、日本にとってはるかに現実的な脅威に(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただものとして、この記事より北朝鮮のSLBMの現実的驚異に触れた部分をこの記事より下に引用します。

SLBMの脅威は潜水艦の航続距離次第でどんどん高まります。北朝鮮が保有する「ロメオ級」は約7000キロの航続距離を持つとみられ、片道ならハワイ近くまで到達できます。
 2014年金正恩第1書記が、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)のロメオ級潜水艦を視察
このロメオ級は、北朝鮮では最大の潜水艦ではありますが、旧ソ連で作られその後中国でも100隻建造された主力潜水艦ですがいまではすべて退役している代物です。北朝鮮では、1973年に2隻を中国から取得し、1995年までに24隻を国内で建造したとされます。

ロメオ級のエンジンはディーゼル式で非常に音が大きいので、探知されやすいです。特に日米は旧ソ連の潜水艦に数十年も対処してきたという経験があり、対潜哨戒能力ではトップクラスにあることから、北朝鮮の潜水艦を探知するのはさほど難しいことではありません。

ただし、日米の哨戒機や、哨戒船が存在しない海域に予め水中に潜み、そこから急に、ミサイルを発射ということになれば、防ぐのは難しいです。さらに、エンジンをとめた状態で、潮流に乗って移動されると発見は難しいです。

ただ、どちらの場合も一度ミサイルを発射して、そこから離脱行動をとれば、かなり発見しやすくなります。

ただ、いずれの場合も、食料・水・燃料も片道分だけで、潜水艦の乗組員が自滅覚悟ということになれば、防ぐ手立てはありません。特に、すぐ近くから発射されれば、防御手段はありません。ロメオ級は、たしかにボロ船ですが、一度に数発核ミサイルを発射して、それで沈んでも本望と考えるなら、金正恩の野望を叶えることができるかもしれません。

こうした北朝鮮の脅威に対して、 岸田首相は、「今後の挑発行動について、注視していかなければならない」と警戒感を示しだけというのですから、驚きです。

岸田首相は9日午後、鈴鹿サーキット(鈴鹿市)で開催される自動車F1シリーズ日本グランプリのスタートセレモニーに参加のため、訪問していた三重・鈴鹿市で記者団の取材に応じ、北朝鮮の弾道ミサイル発射について「9月末からの短期間だけ考えても今回で7回目」と述べ、「私からは、情報収集、情報提供、安全確認を徹底するように指示した」と強調しました。

その上で、「引き続き、今後の北朝鮮の挑発行動については注視していかなければならない」と警戒感を示しました。

また、「日米、日韓、日米韓といった関係国との関係も密にしていかなければならない」と語りました。

一方、今回のミサイルは、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の可能性があると見られていますが、岸田首相は「弾種はまだ確認中だと報告を受けている」と述べるにとどめ、「確認でき次第、防衛大臣等から報告することになるだろう」との見通しを示したそうです。

注視するだけなら、誰でもできます。岸田総理にはもっと具体的な対策案を語っていただきたいです。

今回の弾道ミサイルがSLBMなのか否かは、まだわかっていないようですが、SLBM である可能性も視野に入れて、具体的な対応策を語っていただきたかったです。

9月下旬から弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応で、日本政府の手詰まりが鮮明になっているという報道があります。

岸田文雄首相は6日の衆院本会議で「国際社会とも協力して関連する安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の非核化を目指す」と強調していました。

北朝鮮は4日、5年ぶりに日本上空を通過する弾道ミサイルを発射。首相は同日にはバイデン米大統領、6日は韓国の尹錫悦大統領と抑止力強化を確認したが、政府関係者は「北朝鮮は対話に応じる気配がない」と指摘していました。 

首相が目指す国際社会の連携も揺らいでいます。安保理では5月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けた制裁強化案が、中ロの拒否権行使で否決されました。両国は4日の弾道ミサイル発射後も、安保理で非難声明を目指す動きに同調しませんでした。 

ロシアのウクライナ侵攻で繰り広げられた安保理内の対立が北朝鮮対応でも再現された形で、林芳正外相は7日の記者会見で、「一部の国々の消極的な姿勢により、行動できていないことは遺憾だ」と批判しました。政府関係者も「北朝鮮は国際社会の分断の隙を狙って、好き勝手にやっている」と指摘、打開策は見当たらないそうです。 安保理は2016~17年にかけて、北朝鮮によるICBM発射や核実験に対し、制裁決議を計6回採択したのですが、現状は様変わりしています。北朝鮮が7回目の核実験に踏み切るとの見方が強まっているのですが、政府関係者からは「安保理が、核実験は駄目だと言ってくれればいいが」との悲観論も出ているそうです。

これは、まさに私がこのブログで予想したとおりになりました。この予想を掲載した記事のリンクを以下に掲載します。
バイデン政権をかき乱す文在寅の北朝鮮交渉―【私の論評】文在寅5年間の対北融和政策の失敗等で、北・韓国が派手に外交の表舞台にでてくることはなくなる(゚д゚)!
2018年に開催された〝太陽節〟金日成主席の生誕祭

これは、2月1日の記事です。この記事より一部を引用します。
文在寅や金正恩は、結局何も変えられませんでした。何一つ世界に貢献することはありませてでした。プーチンもそうです。結局、韓国・北朝鮮、ロシアは米中対立を複雑にしただけです。

今後、韓国や北朝鮮が、外交の表舞台に出てくることはなくなるのではないでしょか。あるとすれば、北や韓国が直接ということではなく、北は中国やロシアが仲介することになるでしょう。韓国の場合は米韓の首脳級の会談などあまりなくなり、事務方の話し合いが中心になるのでないでしょうか。日本も韓国に力添えすることもないでしょう。

そもそも、北や韓国が派手に外交の表舞台に立っていたことこそが、異常だったのかもしれません。今後はそのようなことはなくなるかもしれません。

文在寅と金正恩は、結託して様々な工作をして、北朝鮮米国首脳会談などを実現させましたが、結局北は交渉のための材料となるようなものも提示せず、結局この会談はほとんど意味がありませんでした。その後も何の進展もありませんでした。

金正恩は、しばらくの間は制裁逃れなどのために文在寅を利用しましたが、結局その役にもほとんど役にたたなかったので、最終的には文在寅を見捨てました。文在寅は、結局金正恩にのせられて、金正恩の手のひらでピエロのように弄ばれただけでした。

このようなことはわかりきっているので、金正恩などまともに相手にしても、何も変わらないことを悟った米国を含む多くの国々が北や韓国などもまともに相手にしなくなったのです。

米国としては、たしかに北のミサイルは危険ですが、それにしても、ICBMは米国に到達するまでに撃墜できる可能性は高いですし、SLBMにしても、現段階では米国にある程度近づかなければ、発射しても届かない考えらます。

仮に近づこうとしたとすれば、ある程度長い期間航行しなければならず、そうなると通常型潜水艦であることから何度も浮上しなければならないことになり、米国はこれを容易に発見することができます。となると、これを阻止するのも容易です。

要するに米国にとって北のSLBMは日本にとっての危機ほど深刻ではないのです。

この記事では、「北は中国やロシアが (外交を)仲介することになるでしょう」としましたが、この当時はまだウクライナ戦争が始まっていなかったので、ロシアをあげましたが、現在ではロシアはウクライナ戦争でそれどころではなくなったので、北朝鮮の外交は中国を通じてしか行えなくなったとみても良いでしょう。

そうして、これは北にとっては、かなり都合の悪いことになりました。北は中国の干渉をかなり嫌っています。これについては、以前のブログでも述べたことがありますが、朝鮮半島に北朝鮮とその核があることが、結果として朝鮮半島全体が中国に浸透されるのを防ぐことになっています。そのためもあって、北の核廃絶がすぐに出来るとは米も考えていないでしょう。

北は、中国より金正男を金正恩が暗殺したことでもわかるように、中国の浸透を嫌っています。現在の北は、その大嫌いな中国を介してしか他国と外交をするしかない状態に追い込まれたともいえます。

今回の一連のミサイル発射はこの状況を打開するという目的もあったと考えらます。しかし、先にもあげたように、安保理は2016~17年にかけて、北朝鮮によるICBM発射や核実験に対し、制裁決議を計6回採択したのですが、現在ではそのような動きはありません。もはや、多くの国々がそのようなことをしても無駄だと悟ったからだと考えられます。

 日本の独自制裁について、政府関係者は「弾がほとんど残っていない」と語り、圧力には限界があるとの認識を示しているそうです。一方では、別の政府関係者は「当面は抑止力強化を進めるしかない」と漏らしたとされています。

        北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことを受け、報道陣の取材に
        応じる岸田文雄首相(右端)=4日午後、首相公邸


確かに「当面は抑止力を進める」しかないのです。であれば、先日も主張した通り、日本の潜水艦もSLBMを搭載できるようにし、長距離ミサイルなども掲載できるようにすること、さらに、核シェアリングも検討すべきです。

さらに、原子力潜水艦の開発や、核開発を進めても良いです。これらのことをすべて一度にするということではなく、少しずつ検討して、検討する旨を公表し、北の態度が変わらなければ、検討から実行に移すという具合にすれば、日本はいくつもの外交カードを持つことになりなす。

従来とは変わり、世界の多くの国々が、そもそも北とまともに交渉したり、外交をしたりできると考えていないのですから、日本も変わらなければなりません。交渉したり外交したりできない国に対しては、日本の抑止力を高めるしかないですし、高める過程でいくつもの外交カードを手にすることができるのです。

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