2022年10月5日水曜日

臨時国会は2次補正予算案が焦点 特定宗教の主体に限定した審議はテロリストの思う壺になる―【私の論評】今のままだと、岸田首相は来年5月の広島G7サミットを花道に勇退か(゚д゚)!

日本の解き方


 臨時国会が10月3日に召集された。会期は12月10日までの69日間の予定だ。

 この臨時国会では総合経済対策と補正予算の策定が見込まれるが、野党は旧統一教会問題で追及を強めるとみられる。会期中には20カ国・地域(G20)サミットなど外交日程もあるが、岸田文雄政権の課題は何か。

 岸田首相の所信表明演説では、(1)物価高・円安対応(2)構造的な賃上げ(3)成長のための投資と改革―の3つの重点目標を掲げた。(1)の物価高・円安対応では海外要因のコストプッシュをどうするかが問題だ。そのために、2次補正予算案が臨時国会に出される。

 岸田政権は、電気代の負担軽減に取り組むとしている。企業・世帯への現金給付案や電力会社への補助金で価格上昇を抑える案などで対応するのだろう。

 これはミクロ的には悪くないが、マクロの視点が欠けている。最終消費者への所得補助を行って有効需要を作り、価格転嫁を行いやすくして最終消費者も実質負担がないようにするのがベストな政策だ。

 そのためには、現在あるGDPギャップ(総需要と総供給の差)を埋めるような規模の経済対策がまず必要だ。GDPギャップが残ったままだと、余分な失業が残り、人手不足にならないので賃金の上昇も期待できなくなる。その結果、(2)の構造的な賃上げもできなくなる。

 最終消費者における負担軽減という観点からいえば、消費税減税や社会保険料減免が事務的に容易であり、効果が大きい。債務償還費のカットや外国為替資金特別会計(外為特会)における円安含み益の吐き出しなどでGDPギャップを埋めるほどの財源があるのだから、大型の補正予算案に手をこまねくこともないはずだ。

 しかし、財務省主導の岸田政権では、こうしたマクロ経済の理解が心もとない。この経済分野で野党は攻め所がいっぱいなので、ぜひ有意義な国会論戦を期待したい。

 今国会で提出される法案は多くない。次の感染症危機に向け個人や病院に対する行政権限を高める感染症法改正案や、1票の格差是正策として衆院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案など18本だ。その他原発再稼働や防衛費増額なども議論になるだろう。

 一方、野党からカルト被害防止法・救済法案を提出する動きがある。これは、安倍晋三元首相を暗殺したテロリストの〝思う壺〟だ。宗教法人の主体に着目する規制は邪道である。せめて現行の消費者契約法の改正など、行為に着目し、宗教法人に限定しない規制とすべきだ。

 筆者としては、特定宗教に限定した国会審議は避けてほしいと思っている。

 ニュージーランドのアーダーン首相は2019年3月のモスク襲撃事件後、議会で「(テロリストの)男には何も与えない。名前もだ」と述べた。今国会では、その意味でも暗殺者についての議論をしてほしくない。そんな話題はテレビのワイドショーにまかせておけばよく、国会にふさわしくない。国会は、国家の基本たる安全保障や経済を議論する場だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今のままだと、岸田首相は来年5月の広島G7サミットを花道に勇退か(゚д゚)!

このブロクでは、すでに掲載していますが、岸田政権の支持率は下がっています。理由無くして支持が減り、不支持が増えることはありません。最大の理由は、何をしようとしているのかが、まったく見えないことでしょう。

原発問題もその1つです。国民の間で原発の再稼働や新たな建設に強い懸念を示す声は多いです。岸田首相も先の通常国会では、「再稼働はしっかり進める」としつつ、新増設や建て替えは「現時点で想定していない」と明言していました。

ところが「この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保する」。7月14日の会見での岸田総理の“原発9基稼働”発言と、その報道をめぐって論争が起きていました。


現在日本には、検査中も含めた稼働予定の原発と廃炉予定の原発を除いて、残りの16基の原発があり、トータル33基動かせる可能性がある原発があります。

岸田首相は、この残り16基の原発には触れずじまいで、新たな原発の建造等について語りました。現状では新原発建造にはかなりの年月を要します。既存の原発はすべて数十年を費やしています。

電気料金もそうです。9月29日、岸田首相は唐突に今後見込まれる電気料金の値上げに備え、激変緩和を目的とした新たな制度をつくると表明しました。首相によれば、来春以降2割から3割の値上げになる可能性があるといいます。

現在の国内の電力販売額(2021年度)は約14兆円です。2割なら2.8兆円、3割なら4.2兆円の値上げになります。1割を国が負担すれば1.4兆円の財政負担になります。

さらに、意味不明な「新しい資本主義」などとほざく前に、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、GDPギャップをどのように埋めていくのか、その展望を語ることこそ首相の責任ではないでしょうか。

高橋洋一氏の試算によれば、現在の日本経済には30兆円超のGDPギャップがあるそうです。内閣府の試算はそれよりも低めで20兆円超のGDPギャップがあるとされています。内閣府がこのような試算をしているのであれば、岸田内閣は少なくとも真水で20兆円超の補正予算を組むべきです。

それでも、来春にまた、需給ギャップ相当分の10兆円程度の予算を組めば、日本はデフレから完璧に脱却できるかもしれません。

しかし、岸田政権が、今回の第二次補正で真水で10兆円以下の補正予算を組めば、 今後需給ギャップを解消できず、デフレ傾向は続き、せっかくコロナ禍にありながらも、安倍・菅政権で合計で100兆円の補正予算で、維持してきた雇用や経済を毀損してしまいかねません。

そうして、財源は外為特会などをあてることも考えれば、潤沢に存在します。今更、財務省期限の国の借金一人あたり1000万円説などを言ったとしても、自民党内積極財政派を納得させることはできません。

すべてがこの調子で、行き当たりばったりで整合性もありません。説明も十分に首相自身ができないです。これでは不信がつのって当然です。

10月から多くの生活必需品の値上がりが始まりました。円安やロシアのウクライナ侵攻によって輸入商品が大きく値上がりしているからです。一方国内に目を転じてみれば、コアコアCPI前年同月比は1.6%の上昇にすぎず、日本経済にはGDPギャップが存在していることは明らかで、日本銀行が現行では、金融緩和を続けていくべきは明らかです。そうなると、しばらくは、円安は続いて行くことになります。

円安により、輸出企業は空前の好景気にわいており、これはGDPを押し上げることになりますが、円安の影響で輸入物価が高騰し、家計は、物価は上がるが、賃金は上がらず生活が苦しくなっています。企業も原価の高騰を販売価格に転嫁しにくい状況です。特に中小企業はそうです。

この状況を解決するためにも、政府は是が非でも、需給ギャップを埋める対策を実行すべきなのです。まずは、比較的中小企業の多い輸入企業に対する大型対策や、物価対策などを行い輸入価格高騰の軽減策を行うべきです。さらに、減勢や給付金などの大型対策を打つべきです。

アベノミクスのもとで続いてきた金融緩和を継続しつつ、いかにGDPギャップを埋めていくか、岸田首相の本気度が問われています。


岸田首相は、旧統一教会問題も意識してというか、それを利用して、安倍派排除のための内閣改造・党人事を前倒しで行いました。ところが、改造後の内閣の閣僚にも、統一教会との関係者がでる始末で、大ブーメランを受ける結果となってしまいました。

特定の宗教を排除することは憲法違反になるのは明らかであり、実施するなら、統一教会が重大犯罪をおかしているなら、この訴訟をすすめ、さらに多額の献金などが問題であれば、法の整備をすすめるべきでした。そのようなことをせず、いきなり統一教会の排除を進めてしまいました。

さらに、内閣改造中に、中国が日本のEEZ内にミサイルを発射したのですが、内閣改造で頭がパンパンだったとみえる岸田総理は国家安全保証会議(NSC)を開催しませんでした。北朝鮮のミサイル発射時には、すぐにこれを開催していました。中国のミサイルは安全で、と北のミサイルは安全だとでもいうのでしょうか。全く矛盾しています。

国葬儀に関しても、岸田首相は煮えきらない態度をとっています。国葬儀の根拠については、内閣設置法によるもので、これは明白すぎるくらい明白であるにもかかわらず、それを押し通そうとはせず、反対の声に迎合するような態度をとってしまいました。

統一教会でも、国葬儀でも、岸田総理は野党やマスコミの土俵の上に自ら乗った形となり、とんでもないことになってしまいました。

かつての中選挙区制時代の自民党なら、自民党内で侃々諤々の議論が巻き起こったはずです。自民党は派閥の集合体のようなもので、派閥が違えば同じ選挙区で激突していました。

「物言えば唇寒し」などということはありませんでした。これこそが自民党の活力の源泉でした。それが小選挙区制の導入によって、党の公認さえもらえれば地道な選挙活動を行わずとも当選できる仕組みになってしまいました。党執行部の顔色ばかり見ている議員が増えてしまったようです。小選挙区制の害悪にあらためて目を向ける必要がありそうです。

いまの岸田内閣の現状を見れば、本来なら野党は様々な問題で自民党を追求できるはずです。以前もこのブロクで「青木率」(青木幹雄、元官房長官・参院議員)を紹介したことがあります。

これは内閣支持率と与党第一党の支持率を合わせて50%を切ると内閣は倒れるというものです。毎日新聞と社会調査研究センターが9月17日と18日に行った調査結果では、内閣支持率はわずか29%、与党第一党の自民党の支持率は23%でした。合わせて52%なので、50%切りにひたすら近づいているということです。

しかしいまの野党の現状では、この「青木率」も残念ながら通用しないです。これもまた異常事態です。

先に紹介した朝日新聞の世論調査では、「成長と分配の好循環を目指す『新しい資本主義』を掲げている」岸田首相の経済政策に期待できるかを尋ねると「期待できる」は25%、「期待できない」は69%となっています。

物価対策では「評価しない」が71%にもなっています。ところが、野党への評価も厳しいです。野党に期待できるかという問いには、「期待できない」が81%にもなっているのです。

平成30年「桜を見る会」で演説する安倍首相

本当は野党に奮起してもらいたいところですが、それも無理なようです。結局過去の「もり・かけ・桜」の延長線上で、今度は「統一教会・国葬」等、元々問題でないものを問題として、エネルギーを費やし、与党もそれでエネルギーをとられることになるものの、野党はさらに大きなエネルギーを使いさらに党勢を衰えさせることになるでしょう。

このままの状態が続けば、岸田首相は、来年5月に広島市で開催する先進7カ国首脳会議(G7サミット)を花道として勇退することになるかもしれません。そうして、この動きには野党はまったく関与できないでしょう。ただ、統一教会、国葬で退陣に追い込んだと思い込み、悦に入るかもしれません。そうではないことが、その後の選挙で明白になると思います。

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