2022年10月22日土曜日

習氏、3期目へ権威確立 李首相は最高指導部退く 中国共産党大会が閉幕―【私の論評】習近平の独裁体制構築までには、まだ一波乱ある(゚д゚)!

習氏、3期目へ権威確立 李首相は最高指導部退く 中国共産党大会が閉幕

22日、中国・北京で開かれた共産党大会の閉幕式に出席した習近平総書記(国家主席)

 中国共産党の第20回党大会は22日、北京の人民大会堂で、習近平総書記(国家主席)の権威を確立する文言を盛り込んだ党規約改正案を採択して閉幕した。

  今後5年の指導部を構成する中央委員に習氏を含む205人を選出。これにより、習氏の3期目入りが確実となった。李克強首相は同委員から外れ、最高指導部を退くことが決まった。次期最高指導部は、23日の第20期中央委員会第1回総会(1中総会)で発足する。

  李氏は、来年3月に任期切れで首相を退任した後も別のポストで最高指導部にとどまるという観測が出ていた。完全引退せず、名誉職などに就く可能性は残っている。

 党規約改正案の説明では、習氏の地位と思想に忠誠を誓うスローガン「二つの確立」について、「党が新時代に収めた重要な政治的成果」と強調。全党がその決定的意義を把握しなければならないと指摘しており、新たな党規約に盛り込まれるという見方が強い。また、党規約に「『台湾独立』に断固反対し、食い止める」と明記することも決まった。 

 党規約全文は後日、公表される。かつて建国の父、毛沢東に使われた呼称「領袖(りょうしゅう)」を習氏に適用したり、習氏の思想を「毛沢東思想」に並ぶ形で「習近平思想」に格上げしたりする案は見送られたもようだ。個人崇拝につながるという批判が強く、習氏が譲歩したことも考えられる。 

【私の論評】習近平の独裁体制構築までには、まだ一波乱ある(゚д゚)!

中国の党大会を、日本のマスコミなどは日本の国会のようなものと報道したりしていますが、それは全く違います。中国の党大会は、民主的であるかのようにみせかけていますが、ほとんどの内容が中国共産党の中で、派閥争いの結果決まっていることを公表しているにすぎません。


そのため、中国共産党にとっては、ただのイベントのようなもので、政治的にはほとんど意味を持ちません。このようなイベントをしなくても、中国の政治は中国共産党が派閥争いの結果決めたとおりに動くだけです。しかし、あたかも民主的に決めているかのように装うために、わざわざ少数民族まで集めて党大会を開催するのです。

実際、中央委員名簿も発表されますが、それは中国共産党が決めたものを発表するだけで、選挙によって選ばれているわけではありません。そういう意味では、中国にはに日本をはじめとする民主国家における政治家など一人も存在しません。すべてが官僚だともいえます。日本でも官僚は選挙で選ばれるのではなく、人事によって定められます。

では、なぜこれに多くの報道機関が注目するかといえば、本来派閥争いで決まったこと、特ににその機微に触れるようなことなど、表には出てきませんが、党大会で発表されたことによってその片鱗を知ることができ、中国の数年以内の将来をある程度予見できるからです。

今回の党大会では、党最高指導部の政治局常務委員(現行7人)のうち 李克強リークォーチャン 首相以外にも、 栗戦書リージャンシュー 全人代常務委員長、 汪洋ワンヤン 人民政治協商会議主席、 韓正ハンジョン 筆頭副首相の4人の名前が中央委員名簿になく、退任が明らかになりました。李克強が名簿から姿を消したことにより、李克強は失脚したとみるのが妥当です。

「68歳定年」が適用された場合、中央委員を退くとみられていた 王毅ワンイー 国務委員兼外相(今月69歳)は中央委員として留任しました。

23日にも開かれる党の重要会議・第20期中央委員会第1回総会(1中総会)で、総書記を含む最高指導部の政治局常務委員(現行7人)の顔ぶれが正式に決まり、3期目政権が始動する。

今回の退会では、理由は謎ですが、胡錦濤氏が退席させられる以下のシーンもあり、これ中国共産党大会の象徴的な場面になるかもしれないです。


以下に22日の党大会の主な出来事やポイントをまとめました。

胡錦濤氏が退席:閉幕式の途中、習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)の前任者、胡錦濤(フーチンタオ)氏が男性2人によって会場から連れ出される予想外の一幕があった。退席の状況は不明だが、胡氏は不本意なように見えました。胡氏は近年、公の場で体調不良の様子を見せることが増えていました。

新たな中央委員会:党大会では党の主要指導機関である中央委員会の新たな顔ぶれが発表された。名簿に記載された205人のうち、女性は11人のみでした。全体に占める割合は約5%にとどまりました。

李克強氏が退任へ:新中央委員会の名簿には習氏に次ぐ序列2位の李克強(リーコーチアン)首相の名前がありませんでした。これは李氏が党の役職から退くことを意味します。専門家の間では、これにより権力のバランスが習氏優位に大きく傾く可能性があるとの声があります。

党規約改定:党大会では党規約の改定が承認され、「闘争」や「闘争精神」など習氏の支持する表現が複数盛り込まれました。中国の指導者は対外的な課題や脅威とみなす事象に言及する際、しばしばこうした表現を使います。富の再分配や大企業の引き締め強化を掲げる習氏の国家キャンペーンを反映して、「共同富裕」の表現も加わりました。

台湾への言及:党規約の文言を「台湾独立に断固として反対し、抑え込む」とする改定も行われました。中国共産党は台湾を実行支配したことは一度もないものの、自国の領土だと主張しています。

新たな称号なし:習氏に新たな称号などは付与されず、既に規約に明記されている習氏の政治思想にさらなる重要性が与えられることもありませんでした。専門家の間では党大会に先立ち、このどちらかが行われ、習氏の権力固めが一層進むとの見方も出ていました。

指導部の顔ぶれ:中央委員会は23日に初会合を開き、政治局員25人やさらに少人数の政治局常務委員を指名する。政治局常務委員会は中国の最高意思決定機関。習氏は党トップとして3期目入りを果たし、終身統治に道を付けるとみられている。

毛沢東に使われた呼称「領袖(りょうしゅう)」を習氏に適用したり、習氏の思想を「毛沢東思想」に並ぶ形で「習近平思想」に格上げしたりする案は見送られたということで、習近平の権力掌握は未だ完璧とはいえない状況のようです。ただ、それに向けて大きな一歩を進めたのは明らかなようです。

「習近平思想」の書籍は日本語版も出ているが、党規約にその言葉は掲載されていない

以前このブロクでも述べたように、党規約の中の習近平の思想が「習近平思想」と書かれるようになれば、そうして習近平が現役のうちにそうなれば、習近平の独裁体制が成立したとみなせるでしょうが、まだそうはなっていません。

習近平の独裁体制が確立できるかどうか、それまでにはまだ一波乱ありそうです。また、習近平が権力を握るにしても、握れないにしても、中国経済は以前このブログでも述べたように、国際金融のトリレンマと、米国による半導体の〝対中禁輸〟という2つの構造要因でこれから、従来のように伸びることありません。それどころか、かなり落ち込むことになります。

中国経済が誰の目からみても、かなり落ち込み続けることが明らかになる前までに、習近平が独裁体制を整えなければ、それは不可能になるでしょう。期限は来年中でしょう。

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