2022年10月29日土曜日

焦点:新たな中国軍最高機関、「対台湾」で結束とスピード発揮か―【私の論評】中国が台湾を破壊するのは簡単だが、侵攻するのはかなり難しい(゚д゚)!

焦点:新たな中国軍最高機関、「対台湾」で結束とスピード発揮か

中国の人民革命軍博物館のモニターに映し出された習氏

中国共産党トップの総書記に再任された習近平氏の下で陣容を新たにした軍の最高指導機関のメンバーは、いずれも習氏への忠誠心が選ばれた第一の理由かもしれない。そうした関係性は、台湾侵攻を計画する場合に軍事上の重要な目的の1つをかなえるのに役立つ。一糸乱れぬ結束力と、強い決断力の確保だ。

実際に台湾に侵攻する場合、最終的な決定を下すのは共産党最高指導部の政治局常務委員会だが、戦闘計画の策定と実行は軍最高指導機関の中央軍事委員会に委ねられる、とアジアや西側の中国駐在武官は説明する。

23日に中央軍事委員会に新たな3人のメンバーが選出されたのに先立ち、習氏は共産党大会の政治報告で、台湾に対する「武力行使の放棄は決して約束しない」と発言した。

4人の安全保障専門家と4人の駐在武官は、ロシアがウクライナで「泥沼」に陥っている状況を挙げ、中国が台湾侵攻を計画する場合、台湾軍や国際社会の支援の機先を制するという意味からも、侵攻の準備と実行を迅速化することがいかに大事か証明されたと述べた。

シンガポールを拠点とする戦略アドバイザーのアレクサンダー・ニール氏は「習氏が台湾侵攻の引き金を引こうとするなら、中央軍事委員会からの反対意見を聞いている余裕はない。優位に立ちたければ素早く、電撃的に行動しなければならず、ためらう余地はない。これが台湾について中国側が常に考えていることだ。ウクライナの事態で、補給態勢の構築が遅れて身動きできなくなるのを避ける必要性が確かめられた」と指摘する。

【私の論評】中国が台湾を破壊するのは簡単だが、侵攻するのはかなり難しい(゚д゚)!

何やら、多くの人は中国による台湾侵攻がすぐにもありそうだと考えているようです。極端なと人だと、今年中とから来年早々にもありそうだと考えている人もいるようです。

中国の軍備増強に欧米諸国は警戒を強めているが(2019年の建国70周年式典)

これは、本当でしょうか。戦争をするには準備が必要 です。中国が本格的台湾侵攻を行う場合にも数カ月の準備が必要です。台湾が気に入らないことをしたり、言ったからといって、すぐに明日から攻撃をするというわけにはいきません。

実際、元CIAアナリストのジョン・カルバーは10月3日、中国が将来、台湾を侵攻するとしても、それは「戦略的なサプライズ」にはなりえない、と指摘しました。台湾侵攻を開始するとなれば、それに先立って全国的な動員が行われるため、数カ月から1年前にそれとわかる可能性が高いと、彼は語りました。

ただ、これは従来から軍事上の常識です。まともな軍事アナリストであれば、誰もがこのように考えています。

攻撃計画を立て十分な準備をした上で成功の見込みを得てから攻撃は行われます。現時点で中国が準備を始めた兆候はないです。年内、来年初の侵攻はあり得ないです。

準備に数ヶ月から、1年もかかるのですから、中国による台湾侵攻とは、言葉で言うのはやさしいですが、それを実行するのはただごとではないということです。

中国が台湾を破壊するだけというのなら、さほど困難ではないかもしれません。核ミサイルを打ち込めば、良いだけです。ただ、中国が台湾に侵攻ということになると、そうはいきません。侵攻するためにある程度の破壊はするでしょうが、その破壊の後に人民解放軍を上陸させ、台湾を占拠しなければなりません。

このブログで指摘してきたように、中国軍には多くの兵隊をのせて台湾に運ぶ船舶の数が足りません。一度に数万人しか送れません。台湾を制圧するには、少なくとも十万人以上の人民解放軍を上陸させなければ、なりません。

ところが、台湾海峡というのは狭い所で130キロ、広い所は200キロを超える海岸線の長い海峡です。潮の流れは速いし海底は浅く潜水艦の運用は難しいです。加えて冬場には強風が吹き濃い霧も発生するので、航空機の運用も困難です。

そもそも台湾側の海岸で大部隊の上陸に適した海岸は数カ所しかなく、もちろんそこは台湾軍が守備を固めているでしょう。だから台湾海峡は、上陸侵攻を行う側にとってきわめて厳しい地形・気象であるということができます。

にもかかわらず、一度に数万人しか送れないということになるとどうなるかといえば、その数万の兵隊は台湾軍により撃破させられることになります。たとえ中国が数十万の人民解放軍を台湾に送ることができたにしても、船舶の数に限りがあるので一度に数万人を送り、それを何回も繰り返すという方式で送ったとすれば、一回ずつ数万の人民解放軍が、台湾軍に個別撃破されることになります。

台湾海峡というのは狭い所で130キロ、広い所は200キロを超える海岸線の長い海峡。潮の流れは速いし海底は浅いので潜水艦の運用はなかなか難しい。加えて冬場には強風が吹き濃い霧も発生するので、航空機の運用も困難。だいいち台湾の中央には急峻な山岳地帯であり、台湾側の海岸で大部隊の上陸に適した海岸は西側の数カ所しかなく、もちろんそこには台湾軍が守備を固めています。だから台湾海峡は、上陸侵攻を行う側にとってきわめて厳しい地形・気象であるということができます。

台湾軍はウクライナと比べ、はるかに戦闘能力が高いです。最新兵器を備えていて、中国の空母をたたけるような精度が高く、破壊力も強い対艦ミサイルもあります。空対空ミサイルもあります。防空能力はウクライナなど比較にならないほど強力です。サイバー作戦に関しても、かなり力をつけてきています。

有事になった場合、むしろ台湾側から爆撃機が中国本土に向けて飛び立ったり、内陸の奥深くまでミサイルを飛ばすことも考えられる。台湾には、F16VというF16を基本として、改修を加えた強力な戦闘機があります。中国奥地まで射程に収める長距離ミサイルもあります。

台湾軍の長距離ミサイル「雲峰」

「絶対安全」と思い込んでいた北京の市民が、台湾のミサイル攻撃に驚愕するシーンなどもあり得ます。

一人あたりのGDPが中国を遥かに上回る台湾は米国の最新兵器をいろいろ購入しているだけでなく、米国と武器を共同生産しようという計画もあるくらいです。ロイター通信は19日、米国バイデン政権が台湾と武器を共同開発する計画を報じています。ミサイル技術の提供などが焦点にされているとされています。

さらに、台湾には2018年まで徴兵制度があったので、軍の訓練を受けた人間は166万人も存在するといわれています。正規軍10万人に166万人もプラスとなると、陸上兵力は中国軍とあまり変わらない。ウクライナ軍とは次元の異なる防衛能力です。

これに、日米が加勢するとなると、特に対潜哨戒能力が低い中国海軍は、開戦の初戦で、ほとんどの艦艇を失うことになります。

さらに、これは意外と知られていないのですが、中国大陸の重要企業は、ほとんど台湾系か台湾人が要職に就いているとされています。人によっては、中国の大企業の約7〜8割が台湾人が深く関与しており、経営面でも技術面でも中国企業は台湾なしには事業の継続が難しいです。

そのような中国が台湾を戦争を始めるということになれば、多くの台湾人は中国から出ることになるでしょう。

台湾軍女性兵士

このようなことを考えると、中国が台湾に侵攻するのはかなり難しいといえます。ロシアがウクライナに侵攻するよりはるかに難しいでしょう。

私自身は、いまやGDPが韓国を若干下回る程度のロシアがウクライナに侵略するのはかなり難しいと考えていました。だから、ロシアがウクライナに侵攻するにしても、もっと小規模ものと考えていましたから、本当にかなり大規模に侵攻したときは驚きました。

ただ、予想通りロシアはかなり苦戦しています。私は、中国が台湾に侵攻した場合、ロシアがウクライナで受けた打撃よりもはるかに大きな打撃を中国は受けると思います。

だから、中国が台湾に侵攻することは、あり得ないとは思います。

ただし、習近平がおかしくなってプーチンと同じような過ちをする可能性は否定できないです。さらに、中国が台湾に侵攻しないまでも、中国が台湾をミサイルや核兵器で破壊するということは十分あり得ることと思います。

ウクライナでもロシアは、ウクライナの多くの都市を破壊しました。しかし、破壊しつくされた都市をウクライナに奪還されつつあります。これからも、侵攻と破壊とは異なることが理解できると思います。侵攻は、かなり難しいことなのです。

台湾の独立が維持できたにしても、国民の生命や財産が危険にさらされるというのであれば、それを予防できるような体制を整えるべきです。その意味でも、台湾はさらに軍事力を強化すべきです。特に、中国が台湾を破壊すれば、中国も破壊されるという反撃能力を強化すべきです。

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