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岡崎研究所
ウクライナへのロシア侵略の状況を見ていれば、もしウクライナがかつて保有していた核兵器の一部でも今日保有していれば、現在のようなウクライナへのロシア軍による軍事侵攻を防ぐことが出来たかもしれない、と Taipei Times紙の社説が述べている。
本社説は、「今日のウクライナが明日の台湾」にならないために、国防上核兵器を含む高度の抑止力を保持すれば、中国が将来、「台湾統一」を目指して台湾に軍事侵攻することを躊躇することとなるかもしれないと述べ、台湾にとっての今後の課題に言及している。実行は容易ではないであろうが、検討に値する興味深い内容である。
本社説によれば、台湾は秘密裏に核兵器開発計画(新竹計画:Hsinchu Project)をもち、1964年に最初のテストを実施した。しかし、88年、米国からの圧力でこれを中止した。その結果、台湾は今日、核兵器を保有していないだけではなく、米国の核の傘にも入っていない。
これに反し、中国は急速に核兵器の近代化を進め、昨年後半には、衛星写真が新しい核ミサイル格納庫を映しだしたりしている。北京はプーチンに倣い、将来、中国が台湾に侵攻する場合に、もし第三者(米国)の介入があれば、彼らは核の報復を受ける、と威嚇するだろう。このようなシナリオであれば、米太平洋艦隊に台湾海峡に入るよう命令を下すことは、「米国大統領にとって相当の勇気を要することとなるだろう」という。
本社説の述べる今後の台湾にとっての抑止力向上の選択肢は次の3点である。
(1)台湾にとって、1つ目の選択肢は、現在、台湾の保有する中距離ミサイル(「雲峰」)の射程距離(2000キロメートル)を延長し、重要な通常戦力による抑止力として使用することだ。こうすれば、北京、上海なども射程距離内に入る。
(2)第2の選択肢は核兵器の「持ち込み」である。米国の核ミサイルを台湾に配備することは、もう一つの選択肢となる。米台間に外交関係のあった時期ではあるが、62年まで米空軍は TM-61マタドール・核搭載ミサイルを台南空軍基地に配備していた。
(3)台湾自身が、米国の支援のもと、あらためて核兵器開発計画を再開することは、第3の選択肢である。
ロシアのウクライナ侵略が中国の「台湾統一」に今後如何なる影響を及ぼすかは、現段階では想像の域を出ない。しかし、あらゆる可能性に対峙できるように準備を行うことは台湾の防衛にとって、喫緊の課題だろう。
最近の台湾の世論調査を見る限り――世論調査は変わりやすいものではあるが――ウクライナ危機のあと、台湾の多数の人々の、第一の関心事項は「いざとなった時、米国は来てくれるだろうか?」という問いかけであるように思われる。
本社説は、「今日のウクライナが明日の台湾」にならないために、国防上核兵器を含む高度の抑止力を保持すれば、中国が将来、「台湾統一」を目指して台湾に軍事侵攻することを躊躇することとなるかもしれないと述べ、台湾にとっての今後の課題に言及している。実行は容易ではないであろうが、検討に値する興味深い内容である。
本社説によれば、台湾は秘密裏に核兵器開発計画(新竹計画:Hsinchu Project)をもち、1964年に最初のテストを実施した。しかし、88年、米国からの圧力でこれを中止した。その結果、台湾は今日、核兵器を保有していないだけではなく、米国の核の傘にも入っていない。
これに反し、中国は急速に核兵器の近代化を進め、昨年後半には、衛星写真が新しい核ミサイル格納庫を映しだしたりしている。北京はプーチンに倣い、将来、中国が台湾に侵攻する場合に、もし第三者(米国)の介入があれば、彼らは核の報復を受ける、と威嚇するだろう。このようなシナリオであれば、米太平洋艦隊に台湾海峡に入るよう命令を下すことは、「米国大統領にとって相当の勇気を要することとなるだろう」という。
本社説の述べる今後の台湾にとっての抑止力向上の選択肢は次の3点である。
(1)台湾にとって、1つ目の選択肢は、現在、台湾の保有する中距離ミサイル(「雲峰」)の射程距離(2000キロメートル)を延長し、重要な通常戦力による抑止力として使用することだ。こうすれば、北京、上海なども射程距離内に入る。
(2)第2の選択肢は核兵器の「持ち込み」である。米国の核ミサイルを台湾に配備することは、もう一つの選択肢となる。米台間に外交関係のあった時期ではあるが、62年まで米空軍は TM-61マタドール・核搭載ミサイルを台南空軍基地に配備していた。
(3)台湾自身が、米国の支援のもと、あらためて核兵器開発計画を再開することは、第3の選択肢である。
ロシアのウクライナ侵略が中国の「台湾統一」に今後如何なる影響を及ぼすかは、現段階では想像の域を出ない。しかし、あらゆる可能性に対峙できるように準備を行うことは台湾の防衛にとって、喫緊の課題だろう。
最近の台湾の世論調査を見る限り――世論調査は変わりやすいものではあるが――ウクライナ危機のあと、台湾の多数の人々の、第一の関心事項は「いざとなった時、米国は来てくれるだろうか?」という問いかけであるように思われる。
日本にも訪れつつある危機
ロシアがウクライナへの侵攻を続けるなか、蔡英文政権は軍事訓練体制を強化するなど戦力向上に力を入れはじめた。台湾の陸、海、空軍は3月から金門、東沙諸島などで軍事訓練を行い、また有事の際に動員する予備役の訓練期間を例年より倍にした、と報じられている。
台湾ばかりではない。日本の周辺でも、危機は高まっている。北朝鮮は、今年に入り既にミサイル発射実験を9回行っているが(3月13日現在)、そのうち、最近の2回は、射程の長い大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)級と言われている。
ロシアは、3月10日から11日、軍艦10隻を津軽海峡を通過させるなど、不穏な動きを続けている。一方、中国は、武装もした海警局の船が、尖閣諸島を取り巻く日本の領海を侵犯するなど、緊張状態を引き起こしている。日本も台湾以上に抑止力を向上させる必要に迫られている。
【私の論評】結局我が国は自ら守るしかない!危機に備えよ(゚д゚)!
中国の台湾侵攻は現状では、無理であることは、このブログに何度か掲載してきました。その最大の根拠は、中国の海上輸送能力が脆弱であり、一度に台湾を制圧できるくらいの軍隊を台湾に送り込むことができず、結果として軍隊をいくつかにわけて逐次投入しなければならなくなります。
中国最大の075型強襲揚陸艦 兵員の収容能力は約1,600名 |
そうなると逐次投入した中国軍は、台湾軍によって個別撃破されるため、中国には勝ち目がなく、よって中国が台湾に侵攻することは当面ないだろうというものでした。これに、米軍などの攻撃力が大きい攻撃型原潜が加勢することなども考えると、中国には全く勝ち目はなく、ほとんどありえないというものでした。
それに、中国海軍は米海軍と比較して、海戦能力には徹底的に劣ります。これは、このブログにも何度か掲載してきましたが、米国の戦略化ルトワック氏の記事をみてもわかることです中国が台湾を侵攻する素振りをみせれば、米国はまずは攻撃型原潜を台湾付近に配置するでしょう。そうなると、中国は米軍には太刀打ちできません。
だから、この読みは今でも正しいと思います。実際、年初に毎年恒例の、ユーラシア・グループによる、今年の地政学的リスクの予測にも、中国の「ゼロコロナ政策の失敗」によるリスクや、ロシアによるウクライナ侵攻については、予測さていましたが、中国による台湾侵攻については、予測はされていませんでした。
ただ、現状ではロシアのウクライナ侵攻は現実のものになった今は見方をかえなければならないと思います。未来永劫にわたって、中国が台湾に侵攻しないとは言い切れないからです。
特にロシアがウクライナに侵攻、それもドネツク方面だけではなく、南部や首都キエフなどにも侵攻しはじめたことは衝撃でした。
何しろ、このブログには何度か掲載してきたように、現在のロシアのGDPは韓国を若干下回るほどであり、一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回る程度であり、さらにロシア軍の兵站は、鉄道に頼るところが大きいく、脆弱であることが知られていました。
そうなる、元々軍隊の力には限りがありますが、旧ソ連の軍事技術や核兵器を受け継いだロシアを侮ることはできないものの、国境付近では高いパフォーマンスを発揮できるにしても、奥地に進撃するにつれて、パフォーマンスが低下することが予想され本格的な侵攻には相当無理があることが予想されました。
そのため、私は東のドネツク方面だけの侵攻はあり得るだろうとは思っていましたが、キエフや南の方の侵攻はないだろうと思っていました。
ウクライナ・キーウ中心部で攻撃に備えるウクライナ兵(2月25日) |
しかし、それ以上のことをプーチンが実行したのは、様々な思い違いが重なったのだと思います。
その思い違いとは、まずは、ドンバスだけではなく、キエフや南の方からも侵攻することにより、ウクライナ政府は怖気づき、ゼレンスキー政権は海外逃亡するなどで、すぐに崩壊するだろうと思ったのでしょう。
次にウクライナ軍や市民も、ロシアの本格的侵攻ということで、これも怖気づきすぐにロシアの軍門に下ると考えていたのでしょう。
よって、3日から長くても1週間から、10日もあれば、ロシア軍はキエフではウクライナ軍は戦うこともなく、軍門に下り、キエフにロシア軍は無血で進軍して、キエフ市民もそうなるであろうと考えていたのでしょう。
NATOはロシア軍の素早い動きについていくことができず、手をこまねいているうちに、あっと言う間にロシアはキエフを掌握し、南や東でも勝利をおさめ、軍隊を進駐させたうえで、みせかけの選挙などを実施し、ウクライナに傀儡政権を樹立して、武装解除などもして、安全保障は当面ロシアが実施するとして、いずれはロシア・ウクライナ連合軍が行う形を模索したことでしょう。
しかし、これらはことごとく裏切られ、ロシア軍はウクライナで大苦戦しています。米国防総省高官は22日午前、ウクライナに展開するロシア兵の一部は適切な防寒具がないために凍傷になっている兆候があると明らかにしました。
ロシアによるウクライナ侵攻は開始から1カ月を超えました。同高官によると、ロシア軍は兵たんや維持の問題に悩まされる状況が続いており、適切な装備の欠如に加え、食料や燃料の不足も追い打ちをかけているという。
同高官は記者団に「一部の兵士については個人装備の面ですら問題がある」と指摘し、凍傷になって戦闘から外された兵士もいるとの兆候をつかんだことを明らかにしました。
ロシア軍は指揮統制の問題から連絡が難しい状況にあり、それが兵たんや維持の問題をさらに悪化させているといいます。ウクライナは今月、寒波に見舞われていました。
ロシアによるウクライナ侵攻は開始から1カ月を超えました。同高官によると、ロシア軍は兵たんや維持の問題に悩まされる状況が続いており、適切な装備の欠如に加え、食料や燃料の不足も追い打ちをかけているという。
同高官は記者団に「一部の兵士については個人装備の面ですら問題がある」と指摘し、凍傷になって戦闘から外された兵士もいるとの兆候をつかんだことを明らかにしました。
ロシア軍は指揮統制の問題から連絡が難しい状況にあり、それが兵たんや維持の問題をさらに悪化させているといいます。ウクライナは今月、寒波に見舞われていました。
このような状況になることは最初からわかっていました。にもかかわらず、ロシアはウクライナに侵攻したのです。
この状況を打開するため、プーチンは戦術核を用いたり、化学兵器を用いることは十分にありえます。
2020年6月24日(水)、ロシア・モスクワの勝利の日パレードで、戦略核ミサイル 「RS-24ヤース」を通り沿いに運搬する車両 |
そうして、もし用いたとすれば、これが悪しき前例になる可能性は十分にあります。それを台湾は危惧しているのです。
中国が、最初から戦術核を台湾軍に狙いをつけて、民間人の犠牲が出ることも厭わず、台湾に打ち込み、台湾軍の力を十分に削いでから、中国軍を送り込んだ場合には、台湾はこれを防ぐ手立てはありません。台湾には潜水艦はありますが新型潜水艦は建造中であり、現在稼働しているのは、旧式のものであり、これでは中国軍に対峙できません。
プーチンが勘違いしたように、中国主席も勘違いして、台湾の新型潜水艦が完成すれば、これは中国軍の潜在的脅威となり、台湾に二度と侵攻できないかもしれないと考え、今がチャンスとばかり、侵攻するかもしれません。
米国大統領は同盟国でもない台湾を救うにしても、最初から戦術核を用いた中国に対して、直接対峙することをためらうかもしれません。中国に対して厳しい経済制裁をしたり、台湾に対して経済支援や武器供与をするかもしれません。
それで、戦況が台湾に有利になるかもしれません。中国は苦戦するかもしれません。しかし、苦戦しても、さらに台湾軍に対して戦術核を打ち込み、台湾軍の力を削ぎ、目的を達するかもしれません。シナリオとしては、まったくあり得ないことではありません。
このようなことが予想されるため、台湾は核兵器を持つことも検討しているのです。もし、ウクライナが核兵器を今でも持っていれば、プーチンも核を使うことをためらうかもしれません。何しろ、自らウクライナで核を用いれば、ウクライナはこれに報復して、モスクワは焼け野が原になるかもしれません。
中国が台湾や日本を侵略した場合も同じです。確かに、日本には米軍が駐留しているので、日本を攻撃すれば、米国も攻撃することになり、そうなると最終的には米国と核戦争にエスカレートするのを恐れるため、攻撃しにくいところがあります。
しかし、それに怯まず日本を攻撃した場合、しかも最初から戦術核を用いたりした場合、米軍はどの程度戦うのか、あるいは自国への攻撃のリスクをかえりみずに、核で反撃するのか、それは判然としません。
結局我が国は自ら守るしかないのです。しかし総理などの軍拡の決意が見えないです。我が国も危機に備えるべきです。
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